(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5657989
(24)【登録日】2014年12月5日
(45)【発行日】2015年1月21日
(54)【発明の名称】組織試料を処理する装置
(51)【国際特許分類】
G01N 1/28 20060101AFI20141225BHJP
【FI】
G01N1/28 J
G01N1/28 K
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2010-229553(P2010-229553)
(22)【出願日】2010年10月12日
(65)【公開番号】特開2011-85585(P2011-85585A)
(43)【公開日】2011年4月28日
【審査請求日】2013年10月7日
(31)【優先権主張番号】10 2009 049 375.1
(32)【優先日】2009年10月14日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510048233
【氏名又は名称】ライカ インストルメンツ(シンガポール)プライベート リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Leica Instruments(Singapore)Pte. Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(72)【発明者】
【氏名】クラウス ハーベルコルン
【審査官】
▲高▼見 重雄
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−005144(JP,A)
【文献】
特開平05−248920(JP,A)
【文献】
米国特許第03526203(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0220468(US,A1)
【文献】
米国特許第05560956(US,A)
【文献】
特開2001−194276(JP,A)
【文献】
特表2005−504323(JP,A)
【文献】
特開昭59−183333(JP,A)
【文献】
特開平06−120193(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00−1/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Science Direct
Thomson Innovation
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織試料を処理する装置であって、
組織試料を取り入れ、処理するプロセス空間(22)と、
該プロセス空間(22)と連通する室(34)とを有すること、
該室(34)は、プロセス空間(22)の壁部に形成されており、穴あき板(24)によりプロセス空間(22)とは区切られていること、
該プロセス空間(22)内の液体の充填レベルを表す測定値を検知するための少なくとも1つの充填レベルセンサ(28、30、32)が該室(34)に配置されていること、
該充填レベルセンサの縦軸線がプロセス空間(22)の壁部と50°よりも大きく60°よりも小さい規定角度をもって交わること、
充填レベルセンサ(28、30、32)は、ガラス製レンズを含んだ光学センサであること、及び、
加熱装置(31)が設けられており、該加熱装置(31)は、前記ガラス製レンズを加熱し、充填レベルセンサ(28、30、32)における液体の凝縮を防止するよう構成されていること
を特徴とする装置。
【請求項2】
加熱装置(31)は、室(34)の壁部の穴に配置されていること
を特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
加熱装置(31)は、充填レベルセンサ(28、30、32)の上方に配置されている第1加熱要素、及び/又は充填レベルセンサ(28、30、32)の下方に配置されている第2加熱要素を含んでいること
を特徴とする、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
少なくとも3つの充填レベルセンサ(28、30、32)が上下に配置されていること
を特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記少なくとも3つの充填レベルセンサ(28、30、32)の上方に1つの充填レベルセンサ(26)が配置されていて、該充填レベルセンサが、プロセス空間(22)のオーバーフローを回避するための安全センサとして設けられていること
を特徴とする、請求項4に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織試料を処理する装置に関する。該装置は、組織試料を取り入れ、処理するプロセス空間を有する。
【背景技術】
【0002】
(背景技術とその問題点)
特に組織試料である試料は、基本的に試薬を用いて処理され、その後、顕微鏡を使って検査できるように薄片へ切断される。これらの組織試料は、好ましくは組織処理装置(ないし組織プロセッサ)内で部分自動又は完全自動で処理され、特に相前後して異なる試薬につけられる。この際、組織試料は、組織試料を処理する装置、特にレトルト(ないし処理容器)内へ取り入れられる。それに続いてレトルトは、組織試料が適切な試薬に浸漬されるように、組織試料の洗浄、脱水、固定のために相前後して異なる試薬で満たされる。ほぼ各プロセスステップにおいて、組織試料が完全に試薬で覆われ、それにより各々の試薬に完全に浸漬されることが重要である。従ってレトルト内には基本的に充填レベルセンサが配置されている。これらの充填レベルセンサは、洗浄工具、又は組織試料を収容する籠状部材により損傷されることがある。更に籠状部材により充填レベル測定が誤った測定値を生ずることがある。
【0003】
関連する背景技術を示す文献としては、以下のものが知られている。
特許文献1は、プロセス空間を有する組織処理装置を示し、この組織処理装置は、充填レベルセンサが配置されている室と連通している。充填レベルセンサは、該室の異なる側面に各々配置されている超音波送信機と超音波受信機を含んでいる。
【0004】
特許文献2からは、組織試料を固定、脱水、浄化する組織処理装置が公知である。組織試料を収容するためにこの組織処理装置は、試薬が貯蔵されている容器と連通するプロセス室を有している。また所定量の試薬をプロセス室へ供給可能とする液体管理ユニットが設けられている。
【0005】
特許文献3には別の組織処理装置が記載されていて、この組織処理装置は、2つのレトルトと、ワックス槽と、試薬容器と、ポンプと、バルブとを含んでいる。バルブを使い、組織処理装置のプロセス空間への試薬の受容が制御される。プロセス空間の壁部には充填レベルセンサが配置されている。
【0006】
特許文献4は、プロセス室と、プロセス試薬を受容する少なくとも1つの容器とを有する組織処理装置を示している。試薬を容器から補助容器へ、この補助容器からプロセス室へと送る手段が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】JP 2001 194276 A
【特許文献2】US 3,526,203
【特許文献3】US 2008/0220468 A1
【特許文献4】US 5,560,956 A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、組織試料を処理する装置のプロセス空間内の液体の充填レベルが特に正確に検知可能である、組織試料を処理する装置を創作することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の
一視点に基づき、
組織試料を処理する装置であって、組織試料を取り入れ、処理するプロセス空間と、該プロセス空間と連通する室とを有すること、該室は、プロセス空間の壁部に形成されており、穴あき板によりプロセス空間とは区切られていること、該プロセス空間内の液体の充填レベルを表す測定値を検知するための少なくとも1つの充填レベルセンサが該室に配置されていること、該充填レベルセンサの縦軸線がプロセス空間の壁部と50°よりも大きく60°よりも小さい規定角度をもって交わること、充填レベルセンサは、ガラス製レンズを含んだ光学センサであること、及び、加熱装置が設けられており、該加熱装置は、前記ガラス製レンズを加熱し、充填レベルセンサにおける液体の凝縮を防止するよう構成されていること。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明において、以下の形態が可能である。
(形態1)組織試料を処理する装置であって、組織試料を取り入れ、処理するプロセス空間と、該プロセス空間と連通する室と、該室内の液体の充填レベルを表す測定値を検知するための少なくとも1つの充填レベルセンサと、該室内の液体の充填レベルに依存し、プロセス空間内の液体の充填レベルを検出する計算ユニットとを有すること、該室は、プロセス空間の壁部に形成されていること、及び、該室は、穴あき板によりプロセス空間とは区切られていること。
(形態2)組織試料を処理する装置であって、組織試料を取り入れ、処理するプロセス空間と、該プロセス空間内の液体の充填レベルを表す測定値を検知するための少なくとも1つの充填レベルセンサとを有し、該充填レベルセンサの縦軸線がプロセス空間の壁部と90°よりも小さい規定角度をもって交わること。
(形態3)前記形態2の装置において、規定角度は、50°よりも大きく60°よりも小さいことが好ましい。
(形態4)組織試料を処理する装置であって、組織試料を取り入れ、処理するプロセス空間と、測定値が該プロセス空間内の液体の充填レベルを表す少なくとも1つの充填レベルセンサと、該充填レベルセンサを加熱する加熱装置とを有すること。
(形態5)前記形態4の装置において、加熱装置は、プロセス空間の壁部の穴に配置されていることが好ましい。
(形態6)前記形態4又は5の装置において、加熱装置は、充填レベルセンサの上方に配置されている第1加熱要素、及び/又は充填レベルセンサの下方に配置されている第2加熱要素を含んでいることが好ましい。
(形態7)前記形態1〜3のいずれか一形態の装置において、充填レベルセンサは、前記室においてプロセス空間の壁部に対して規定角度で配置されていることが好ましい。
(形態8)前記形態2〜6のいずれか一形態の装置において、充填レベルセンサは、プロセス空間の壁部に対して規定角度で配置されていて、加熱装置を使って加熱されることが好ましい。
(形態9)前記形態1、2、4〜6のいずれか一形態の装置において、充填レベルセンサは、前記室に配置されていて、加熱装置を使って加熱されることが好ましい。
(形態10)前記形態1〜9のいずれか一形態の装置において、充填レベルセンサは、前記室においてプロセス空間の壁部に対して規定角度で配置されていて、加熱装置を使って加熱されることが好ましい。
(形態11)前記形態1〜10のいずれか一形態の装置において、少なくとも3つの充填レベルセンサが上下に配置されていることが好ましい。
(形態12)前記形態11の装置において、少なくとも4つの充填レベルセンサが上下に配置されていて、そのうちの最上位の充填レベルセンサが、プロセス空間のオーバーフローを回避するための安全センサとして設けられていることが好ましい。
【0011】
(本発明の各々の視点と各々の効果)
本発明は、第1の視点に従い、プロセス空間と連通する室(凹部ないしチャンバ)により特徴付けられている。該室内の液体の充填レベルを表す測定値を検知するために少なくとも1つの充填レベルセンサが設けられている。計算ユニットが、該室内の液体の充填レベルに依存し、プロセス空間内の液体の充填レベルを検出する。この際、特に、該室は、プロセス空間の壁部に形成されていること、及び、該室は、穴あき板によりプロセス空間とは区切られていることが好ましい。
【0012】
プロセス空間内の液体の充填レベルを表す前記室内の充填レベルを充填レベルセンサが検知することは、充填レベルセンサをプロセス空間以外で特にその感知領域を用いて該室内に配置することを可能にする。このことは、測定がプロセス空間内の対象、例えば組織試料を備えた籠状部材により誤った測定値を生じることがないこと、及び/又はプロセス空間の洗浄時又は籠状部材の交換時に充填レベルセンサが損傷されないことに寄与する。それによりプロセス空間内の充填レベルを特に正確に検出することができる。組織試料を処理する本装置は、レトルト(ないし処理容器)と称することもできる。
【0013】
本発明の有利な一展開形態において、前記室はプロセス空間の壁部に形成されている、及び/又は穴あき板によりプロセス空間とは区切られている。プロセス空間の壁部に該室を形成することは、該室内にプロセス空間内と同じ充填レベルがあることを簡単な方式で保障することを可能とし、このことは中でもプロセス空間内の充填レベルの特に簡単な検出に寄与する。前記穴あき板は、該室に付設され、充填レベルセンサの保護に寄与すると共に、該室内にプロセス空間内と同じ充填レベルがあることを保障する。
【0014】
本発明は、第2の視点に従い、充填レベルセンサが、該充填レベルセンサの縦軸線がプロセス空間の壁部(ないし壁面)と0°よりも大きく90°よりも小さい規定角度をもって交わることにより特徴付けられている。規定角度に従い充填レベルセンサをプロセス空間の壁部に対して斜めに取り付けることにより、充填レベルセンサの感知先端部と、プロセス空間内に配置されている籠状部材との間のセンサ信号の進行経路(ないし進行距離)が拡大され、その結果、籠状部材がレトルト内に取り入れられている場合、この籠状部材は、充填レベルの測定に誤った測定値を生ずるとしても無視できる程度であり又は誤った測定値は全く生ずることがない。規定角度は、例えば50°よりも大きく60°よりも小さく、特に55°である。
【0015】
本発明は、第3の視点に従い、充填レベルセンサを加熱する加熱装置により特徴付けられている。このことは、充填レベルセンサの感知領域内に、充填レベルの誤測定を生じさせうる凝縮物が形成されないことに寄与する。この関連では、加熱装置がプロセス空間の壁部の穴に配置されていると特に有利である。
【0016】
本発明の有利な一展開形態において、加熱装置は、充填レベルセンサの上方に配置されている第1加熱要素、及び/又は充填レベルセンサの下方に配置されている第2加熱要素を含んでいる。複数の充填レベルセンサが設けられている場合には、各充填レベルセンサに対し、各々1つの及び/又は2つの加熱要素が設けられている。加熱要素は、例えば内部に加熱巻線が形成されているヒーティングロッドである。ヒーティングロッドは、例えば壁部の穴へ差し込んで配置することができる。
【0017】
組織試料のために様々な数量の籠状部材をプロセス空間内で上下に配置することを可能にし、それにも拘らずプロセス空間の経済的な充填状況を可能とするためには、上記3つの視点の1つ又は複数における有利な一展開形態において、籠状部材の各位置に少なくとも各々1つの充填レベルセンサが設けられていて、有利な一展開形態では、特に少なくとも3つの充填レベルセンサが上下に配置されている。プロセス空間の(液体の)オーバーフローを回避するためには、前記3つの充填レベルセンサの上方に、安全センサとして用いられる少なくとも1つの第4の充填レベルセンサを設けることが有利である。
【0018】
第1及び第2の視点が互いに組み合わされて、充填レベルセンサが前記室内の充填レベルを検知し、プロセス空間の壁部に対して規定角度で配置されていると特に有利である。それに対して選択的に又は追加的に第2及び第3の視点が組み合わされて、充填レベルセンサがプロセス空間の壁部に対して規定角度で配置されていて、加熱装置を使って加熱されることも可能である。それに対して選択的に又は追加的に第1及び第3の視点が組み合わされて、充填レベルセンサが前記室内の充填レベルを検知し、加熱装置を使って加熱されることも可能である。充填レベルのほぼ最適な測定は、全ての3つの視点が互いに組み合わされて、充填レベルセンサが前記室内の充填レベルを検知し、充填レベルセンサがプロセス空間の壁部に対して規定角度で配置されていて、加熱装置を使って加熱されると達成される。
【0019】
以下、添付の図面に基づき、本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】組織試料を処理する装置を第1の方向(前方斜め上方)から見た図である。
【
図2】前記装置を第2の方向(後方斜め上方)から見た図である。
【
図3】カバーの取り外された前記装置の部分切欠き図である。
【
図4】前記装置を第3の方向(後方斜め下方)から見た図である。
【0021】
同じ構成要素又は同じ機能要素には、全図に亘り同じ符号がつけられている。以下の実施例は、本発明の理解の容易化のためのものであって、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲において、当業者により実施可能な付加や置換、開示された各要素の選択ないし選択的組合せ等を排除することを意図するものではない。尚、本願の特許請求の範囲に付記されている図面参照符号も、専ら本発明の理解の容易化のためのものであり、本発明を以下の実施例に限定するものではないことを付言する。
【実施例】
【0022】
図1は、組織試料を処理する装置20を示している。装置20はレトルト(ないし処理容器)と称することもできる。好ましくは該レトルトは組織処理装置(ないし組織プロセッサ)内に配置されている。該レトルトは、組織試料を収容し、これらの組織試料を、1つ又は複数の液体、特に試薬及び/又はプロセス媒体を用いて処理するために用いられる。そのために該レトルトは、プロセス空間22と、1つ又は複数の入口及び出口を有し、これらの入口及び出口を介し、前記液体を該レトルトのプロセス空間22内へ充填することができる。更に該レトルトは非図示の蓋を有し、それにより該レトルトを組織試料の処理中には閉じることができる。該レトルトは、プロセス空間22に加え、カバー24と、最上位の充填レベルセンサ26とを有している。カバー24は穴あき板により形成されている。最上位の充填レベルセンサ26は、該レトルトがオーバーフローしないことに寄与する安全センサとして用いられる。前記液体は、例えば、保存剤、様々なアルコール、又は、例えば液状パラフィンのような蝋状の液化試薬などを含んでいる。
【0023】
図2は、
図1に従うレトルトを後方斜め上方から示し、特に第1充填レベルセンサ28と、第2充填レベルセンサ30と、第3充填レベルセンサ32とを示している。各充填レベルセンサ28、30、32には各々2つの加熱装置31が設けられている。充填レベルセンサ26、28、30、32は、室34内へ突出する感知領域を有している。或いはまたこれらの感知領域を室34に隣接させることもできる。充填レベルセンサ26、28、30、32は縦軸線を有し、これらの縦軸線は、互いに平行な水平面内に位置している。本実施例において充填レベルセンサ26、28、30、32は、感知領域として本装置の稼働中にレーザ光線が通過する各々1つのガラス製レンズを含んだ光学センサである。例えばプロセス空間内の液体である(ガラス製レンズの)周辺部により反射された光線はガラス製レンズを通過し、感光性センサ要素を用いて検知される。或いはまた音響的に動作するセンサ要素、例えば超音波センサを配置することもできる。
【0024】
図3は、該レトルトの部分切欠き図を示していて、プロセス空間22の内部を見ることができる。
図3において取り外されているカバー24の下(ないし裏)には室(凹部)34が設けられている。この室34内へ、充填レベルセンサ26、28、30、32のセンサ面、特に感知領域が突出している。室34はプロセス空間22の壁部により形成されていて、この際、室34の一側面はプロセス空間22に向って完全に開いていて、組織処理装置の稼動中にはカバー24により、プロセス空間22内の前記液体が室34内へ進入可能なようにプロセス空間24とは区切られている。室34は、充填レベルセンサ26、28、30、32が、洗浄プロセスにより、特に洗浄工具により、又は組織試料の取り入れ及び取り出しにより損傷されないことに寄与している。この保護作用はカバー24により強化されている。
【0025】
室34はプロセス空間22と連通しているので、前記液体はプロセス空間22から室34内へ流入する。充填レベルセンサ28、30、32は、室34内の充填レベルを表す測定値(ないし室34内の充填レベルに対応した測定値)を検知する。その後、非図示の計算ユニットが、その測定値に依存し、室34内の充填レベルを検出し、更にこの充填レベルに依存し、プロセス空間22内の充填レベルを検出する。図示の実施例では、室34内の充填レベルは基本的にプロセス空間22内の充填レベルに対応している。
【0026】
図4は、
図2に従うレトルトを後方斜め下方から示し、特に室34の外面を示している。
図2及び
図4から、充填レベルセンサ28、30、32の縦軸線は、プロセス空間22の壁部(ないし壁面)に対して規定角度で交わっていることが見てとれる。この規定角度は55°である。充填レベルセンサ28、30、32をプロセス空間22の壁部に対して規定角度をもって取り付けることは、充填レベルセンサ28、30、32の感知領域とプロセス空間22内に配置されている組織試料との間において、特にレーザー光線のセンサ信号であるがセンサ信号の進行経路を拡大させる。このことは、特に光学的に動作する充填レベルセンサ26、28、30、32において、充填レベルの測定が、組織試料における反射により誤った測定値(誤差)を生ずるとしても無視できる程度であり又は全く誤差を生じないことに寄与する。
【0027】
図5は、該レトルトの側面図を示し、
図6は、該レトルトの背面図を示していて、特に
図6からは、加熱装置31が、充填レベルセンサ28、30、32の各々の上方と下方に配置されている複数の加熱要素、特に加熱カートリッジを含んでいることが見てとれる。加熱装置31は、室34の壁部を介し、充填レベルセンサ26、28、30、32、特にガラス製レンズを加熱し、それにより充填レベルセンサ26、28、30、32における前記液体の凝縮を防止する。このことは充填レベルの正確な測定に寄与する。
【0028】
図7は、
図6に従うレトルトのVII-VII線に沿った断面図を示している。この図において鎖線は、個々の充填レベルセンサ28、30、32を用いて検査可能である充填レベルを示唆している。特に、第1充填レベルセンサ28には上方の充填ライン42が割り当てられ、第2充填レベルセンサ30には中間の充填ライン38が割り当てられ、第3充填レベルセンサ32には下方の充填ライン36が割り当てられている。更に、最上位の充填レベルセンサ26を用いて検査することのできる最大充填レベル44も鎖線で示唆されている。
【0029】
図8は、該レトルトの上部分の断面の詳細図を示している。プロセス空間22内には組織試料を備えた籠状部材40が配置されている。更に
図8は加熱装置31の電気端子を示していて、これらの電気端子は、本実施例では、充填レベルセンサ28、30、32の各々に対して2つの加熱要素、特に、室34の壁部の穴に配置されている各々の上方のヒーティングロッドと下方のヒーティングロッドとを含んでいる。特に加熱装置31は、この加熱装置31が室34の壁部を加熱するように配置されている。
【0030】
充填ライン36、38、42は、最下位の充填ライン36が最下位の籠状部材40の上端をいくらか超え、中間の充填ライン38が中間位置の籠状部材40の少々上方にあり、最上位の充填ライン42が最上位の籠状部材40の少々上方にあるように配置されている。このことは、籠状部材40の数量に依存し、そのために必要な充填レベルを正確に検査することを可能にしている。
【0031】
本発明は、記載の実施例に限定されるものではない。例えば室34をもたないように該レトルトを構成することも可能であり、この場合、充填レベルセンサ26、28、30、32は、室34(凹部)外において規定角度をもって配置されている、及び/又は加熱装置31を用いて加熱される。更に第1から第3の充填レベルセンサ28、30、32を、最上位の充填レベルセンサ26に対応し、室34内の壁部(ないし壁面)に対して直角に配置することもできる。またカバー24としての穴あき板に対する選択肢として、プロセス空間22から室34を分離する他の区切り部を設けることもでき、この区切り部は室34とプロセス空間22の間の連通を可能とし、例えば鉛直方向の長手隙間(ないしスリット)を有する板状部材である。或いはまた、より多くの又はより少ない充填レベルセンサを設けることもできる。或いはまた、前記の規定角度を55°からずらし、例えば50°と60°の間に設けること、又はプロセス空間22の壁部と他の角度で交えることもできる。更に室34をプロセス空間22から離間させ、プロセス空間22とは液体配管を介して連通させることもできる。この場合、室34内の充填レベルはプロセス空間22の充填レベルに対応する必要はなく、その際にはプロセス空間22内の充填レベルは計算ユニットにより室34内の充填レベルに依存して検出される。そのためには例えば経験的に検出された割り当て規則を計算ユニットの記憶媒体上に保存(記憶)することができる。
【0032】
つまり、本発明の全開示(特許請求の範囲を含む)の枠内において、更にその基本的技術思想に基づき、実施形態ないし実施例の変更、調整が可能である。また本発明の請求の範囲の枠内において、種々の開示要素の多様な組み合わせないし選択が可能である。即ち本発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想に従い、当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。
【符号の説明】
【0033】
20 レトルト
22 プロセス空間
24 カバー
26 最上位の充填レベルセンサ
28 第1充填レベルセンサ
30 第2充填レベルセンサ
31 加熱装置
32 第3充填レベルセンサ
34 室(凹部)
36 下方の充填ライン
38 中間の充填ライン
40 籠状部材
42 上方の充填ライン
44 最大の充填ライン