(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上フランジと下フランジがウェブを介して形成されているデッキプレートの補強構造であって、前記下フランジ上面側において間隔をおいて対向するウェブ間により形成される谷部に、デッキプレートの面内せん断剛性を高めるためのせん断補強金物が配置され、そのせん断補強金物は、前記ウェブに接しながら前記谷部に収まると共に前記谷部における対向するウェブ間に渡って伸びる立ち上がり部分を備え、その立ち上がり部分の上部にデッキプレート幅方向へ張り出す上部張り出し部分及び下部にデッキプレート延長方向へ張り出す下部張り出し部分を備え、前記上部張り出し部分及び下部張り出し部分がデッキプレートに固定されていることを特徴とするデッキプレートの面内せん断補強構造。
梁に渡ってデッキプレートが設置されていると共に、そのデッキプレートは、請求項1に記載のデッキプレートの面内せん断補強構造により補強され、前記デッキプレート及びせん断補強金物の上に断熱板及び/または防火材料が設置され、前記断熱板及び/または防火材料の上に防水シートが設けられていることを特徴とするデッキプレートを備えた屋根構造。
上フランジと下フランジがウェブを介して接続されて交互に山部と谷部と形成されているデッキプレートの面内せん断剛性を高めるために設置されるせん断補強金物であって、前記せん断補強金物は、前記ウェブに接しながら前記谷部に収まると共に前記谷部における対向するウェブ間に渡って伸びる立ち上がり部分を備え、その立ち上がり部分の上部にデッキプレート幅方向へ張り出して前記デッキプレートに固定するための上部張り出し部分及び下部にデッキプレート延長方向へ張り出して前記デッキプレートへ固定するための下部張り出し部分を備えていることを特徴とするデッキプレート用のせん断補強金物。
せん断補強金物は、デッキプレートにおける溝長手方向に間隔をおいて立ち上がり部分を備え、各立ち上がり部分は、張り出し部分に一体に接続されていることを特徴とする請求項3に記載のデッキプレート用のせん断補強金物。
【背景技術】
【0002】
一般に、面内方向のせん断剛性、耐力を確保する観点から、例えば
図22(a)(b)に示すようにブレース30を配置することによりこれを実現する方法が提案されている。
図22(a)は、屋根構造の側面図であり、
図22(b)はブレース30の平面図を表している。屋根構造は、この
図22(a)に示すように天井31、野縁32上に配設されてなるとともに、屋根33を支持するための梁19が設置されているが、ブレース30は、この梁19により囲まれる空間34内に対して配置されていくことになる。
【0003】
しかしながら、この空間34は、空調や換気扇等を初めとした設備が設けられるのが一般的であるところ、ブレース30により上下2空間に分断されているこの空間34では、ブレース30の配設位置より下の空間のみしかいわゆる設備スペース35として活用することができず、空間全体をより有効に活用することができないという問題点があった。ま
た、ブレース30を設置することにより施工労力やコストが増大してしまうという問題点もあった。
【0004】
また、従来、
図23(a)(b)及び
図24(a)に示すように、デッキプレート等の折曲げ板36を断面角形鋼管等の支持部材37を介して梁19に接合することにより、折曲げ板36を支持することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
前記の
図23(a)(b)及び
図24(a)に示す技術の場合は、支持部材37の高さは折曲げ板36の山高さよりも小さいため、折曲げ板36の下フランジ39は梁19の上フランジ38よりもレベル差Gだけ下側に位置するようになる。このため、
図23(a)(b)及び
図24(a)に示すように、折曲げ板36の下部の設備スペースを圧迫し、折曲げ板36の下部の設備スペース35が狭くなるという問題がある。
【0005】
前記のような設備スペース35が狭くなるという点を改善する技術として、本出願人によって出願され公開されている次のような技術がある。
【0006】
図20〜21(又は特許文献2の
図2に示されている)に示すように、水平な上フランジ3と下フランジ2がウエブ4を介して形成されているデッキプレート1であっても、前記下フランジ2の幅(2e)と上記上フランジ3の幅(f)の比率が、2e/f(=β)≧1を満足することで、前記デッキプレート1にブレースを用いることなく面内せん断剛性・耐力を確保することが可能なデッキプレートになり、そのようなデッキプレート1による屋根構造が知られている(例えば、特許文献2参照)。
また、特許文献2の
図7には、デッキプレート1の板厚(t)としたとき、2e/f=βとして、(2e/t)/((βt/(1+β))
0.5≦437 の式を満たすことで、デッキプレート1の局部座屈を抑制して、面内せん断耐力が向上することも開示されている。
さらに、前記特許文献2には、デッキプレート1の下フランジにリブを有し、隣接するリブ間並びにリブとウェブの間の幅が、(2e/t)/((βt/(1+β))
0.5≦437 の式を満たすことで、デッキプレート1の局部座屈を抑制して、面内せん断耐力が向上することも開示されている。
ブレースを用いる必要のない前記のようなデッキプレート1であると、ブレースによるデッドスペースが生じないので、デッキプレートの下側にブレースを配置する場合に比べてデッキプレート下側の設備スペース35を広くできる利点がある。
【0007】
図25に示すように、デッキプレート1に水平力Fが作用した場合に、デッキプレート1は板厚が1mmあるいは1.2mm程度の薄い鋼板が用いられているために、デッキプレート1における下フランジ2と上フランジ3とこれらを接続するウェブ4が湾曲するゆがみ変形Hを生じるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】(a)は本発明の第1実施形態のデッキプレートを備えた屋根構造を示す一部縦断斜視図、(b)は(a)の一部を拡大して示す斜視図である。
【
図2】(a)〜(e)はせん断補強金物の各種形態を示す斜視図である。
【
図3】(a)〜(d)は、第1形態のせん断補強金物を示すものであって、(a)は平面図、(b)は背面図、(c)は正面図、(d)は左側面図である。
【
図4】(a)〜(d)は、第2形態のせん断補強金物を示すものであって、(a)は平面図、(b)は背面図、(c)は正面図、(d)は左側面図である。
【
図5】(a)〜(d)は、第3形態のせん断補強金物を示すものであって、(a)は平面図、(b)は背面図、(c)は正面図、(d)は左側面図である。
【
図6】(a)は隣り合うデッキプレート相互を連結した状態を示す正面図、(b)は(a)の一部を拡大して示す正面図である。
【
図7】(a)〜(d)は、第5形態のせん断補強金物を示すものであって、(a)は平面図、(b)は背面図、(c)は正面図、(d)は左側面図である。
【
図8】せん断補強金物とデッキプレートと梁の第1接合例を示す斜視図である。
【
図9】せん断補強金物とデッキプレートと梁の第2接合例を示す斜視図である。
【
図10】せん断補強金物とデッキプレートと梁の第3接合例を示す斜視図である。
【
図11】(a)〜(c)は、せん断補強金物の接合箇所を変化させた場合の試験体の平面図を示すものであって、(a)は上下部の各張り出し部分をデッキプレートに固定した形態、(b)は上部張り出し部分をデッキプレートに固定した形態、(c)は下部張り出し部分をデッキプレートに固定した形態である。
【
図12】(a)〜(b)は、せん断補強金物の長さを変化させた場合の試験体の平面図を示すものであって、(a)はせん断補強金物の長さが
図11(a)に示す形態よりも2倍長くした形態、(b)はせん断補強金物の長さが
図11(a)に示す形態よりも3倍長くした形態で、いずれもせん断補強金物における上下部の張り出し部分をデッキプレートに固定した形態を示す平面図である。
【
図13】(a)〜(c)は、デッキプレートに対するせん断補強金物の配置形態を変化させた場合の試験体の平面図を示すものであって、(a)はデッキプレートの谷部長手方向の端部から120mm、(b)は500mm、(c)は1000mm、それぞれ離れた位置に配置した形態である。
【
図14】水平荷力装置(曲げせん断試験装置)に試験体を設置し、各部に変位計を配置した状態を示す概略平面図である。
【
図15】(a)〜(e)は、さらに他の形態のせん断補強金物を示すものであって、(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)は背面図、(d)は正面図、(e)は左側面図である。
【
図16】(a)〜(e)は、上部張り出し部分を備えていない形態のせん断補強金物の一例を示すものであって、(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)は背面図、(d)は正面図、(e)は左側面図である。
【
図17】(a)〜(e)は、上部張り出し部分を備えていない形態のせん断補強金物の他の例を示すものであって、(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)は背面図、(d)は正面図、(e)は左側面図である。
【
図18】デッキプレートのスパンに対するせん断補強金物の長さの比を横軸にとって、剛性増加率との関係を示すグラフである。
【
図19】デッキプレートのスパンに対するせん断補強金物間の長さの比を横軸にとって、剛性増加率との関係を示すグラフである。
【
図20】デッキプレートにおける下部フランジの幅寸法と上部フランジの幅寸法とを比を所定の範囲に設定した形態を示す従来のデッキプレートの斜視図である。
【
図21】ブレースを用いない形態のデッキプレートを屋根構造に用いた場合に、設備スペースが広くなることを示す説明図である。
【
図22】従来の屋根構造を示すものであって、ブレースが必要になることにより設備スペースが小さくなる形態を示す図である。
【
図23】(a)は支持部材を介在させる形態の屋根構造を示す縦断正面図、(b)は(a)の側面図である。
【
図24】(a)は
図23に示す形態と設備スペースとの関係を示す断面図、(b)は本発明の屋根構造の形態と設備スペースとの関係を示す断面図、(c)は(b)の一部を拡大して示す図である。
【
図25】デッキプレートに水平力により面内せん断力が作用した場合に、ゆがみ変形している状態を示す図で、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【
図26】梁に渡って架設されたデッキプレート上に断熱材と防水シートを順次設ける形態の屋根構造を示す図である。
【
図27】試験体に用いられたデッキプレートの寸法を示すものであって、(a)は平面図、(b)正面図である。
【
図28】デッキプレートをせん断曲げ試験装置側の取り付け部に取り付けた状態を示すものであって、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【
図29】デッキプレートのゆがみ変形により、せん断補強金物へ働く力方向を示す説明図である。
【
図30】屈曲波形のデッキプレートとその谷部又は山部に合致するせん断補強金物の形態を示すものであって、(a)は正面図、(b)はせん断補強金物の平面図である。
【
図31】(a)は本発明において用いられる他の形態のデッキプレートの正面図、(b)は本発明において用いられるさらに他の形態のデッキプレート相互の継ぎ手を係合させた状態の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明を図示の実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0014】
先ず、
図6及び
図27を参照して本発明において用いられる一形態の継ぎ手付き折板からなるデッキプレート1について説明する。図示の形態の継ぎ手付き折板からなるデッキプレート1は、帯状鋼板の幅方向に連続して折り曲げ加工が施されて、水平な下フランジ2と水平な上フランジ3とが傾斜したウェブ4により一体に屈曲連設されると共に、両側部に前記下フランジ2と同面上に平行なそれぞれアーム部5を備え、前記各アーム部5の側縁部に、嵌合継ぎ手を備えており、一方の嵌合継ぎ手は、下向きに開口した雌型嵌合継ぎ手6とされ、また他方の嵌合継ぎ手は、上向きに突出する雄型嵌合継ぎ手7とされた全体として断面台形角波形とされている。
【0015】
拡大して示す
図6(b)に示すように、前記の雌型嵌合継ぎ手6は、アーム部5から立ち上がる内側面板6aと、これに一体に屈折連設されその先端部から折板本体から離反すると共に、前記アーム部5と平行な上面板6bと、これに一体に屈折連設されると共に、アーム部5に接近するように下向きに傾斜する傾斜外側面板6cとを備えており、前記内側面板6aと上面板6bと傾斜外側面板6cとにより、下向きに開口した蟻溝10が形成されている。
【0016】
前記の雄型嵌合継ぎ手7は、アーム部5から折板本体側に接近するように傾斜して立ち上がる傾斜側面板7aと、これに一体に屈折連設され折板本体から離反すると共に、前記アーム部5と平行な上面板7bとを備えており、また、上面板7bの上端レベルは、前記雌型嵌合継ぎ手6における上面板6bの底面のレベルに概ね一致するか、または、若干高いレベル位置とされている。
【0017】
前記のような継ぎ手付き折板からなるデッキプレート1は、支持梁または支持桁等に渡って設置され、一方の継ぎ手付き折板1が設置された状態で、一方の継ぎ手付き折板1における雄型嵌合継ぎ手7に上側から被せるように、他方の継ぎ手付き折板1における雌型嵌合継ぎ手6の蟻溝10が配置されて、一方の継ぎ手付き折板1における雄型嵌合継ぎ手7と、他方の継ぎ手付き折板1における雌型嵌合継ぎ手6とが嵌合するように係合されて、
図6(b)に示すように、継ぎ手嵌合部8が形成される。
【0018】
図25に示すように、前記のようなデッキプレート1に水平力Fが作用した場合に、デッキプレート1の面内せん断剛性が大きくない場合には、
図25(b)に示すように、上フランジ3及び下フランジ2或いはウェブ4は、波状等に変形するゆがみ変形して、期待される剛性を発揮できなくなる。
【0019】
そこで、
図1に示すように本発明の実施形態では、継ぎ手付き折板からなるデッキプレート1相互を、並列配置すると共に、隣り合う一方のデッキプレート1における雄型嵌合継ぎ手7と、他方のデッキプレート1における雌型嵌合継ぎ手6相互を嵌合する形態等において、個々のデッキプレート1における下フランジ2とその下フランジ2の両側の各ウェブ4間とにより形成される上側の谷部12を有効に利用して又は隣り合うデッキプレート1のウェブ4間により形成される谷部12を有効に利用して、個々のデッキプレート1における谷部12或いは隣り合うデッキプレート1の継ぎ手嵌合部8を含む谷部12に、せん断補強金物13を設置することで、地震時等において水平力が作用した場合に、デッキプレート1の面内せん断剛性を高めるようにしている。
【0020】
デッキプレート1として、図示の形態では、水平な上フランジ3と傾斜ウェブと水平な下フランジ2とが、連続するように設けられている形態の断面台形角波形の形態とされているが、傾斜ウェブ4に代えて鉛直なウェブ4を備えた形態の断面矩形角波形の形態でもよく、あるいは凸凹を連続的に曲線状に繰り返す断面波形の形態でもよい。
したがって、前記の上フランジ3及び下フランジ2が断面で弧状あるいは円弧状であってもよく、これらを接続するウェブ4が直線状あるいは曲線状であってもよく、このような場合には、せん断補強金物13は、谷部12側の外面、特に、各ウェブ4の外側面に合致するように、また、デッキプレート1における下フランジ2の上面と、上フランジ3の上面とに接するように、せん断補強金物における立ち上がり部分14の幅方向の側縁部は形成され、また、せん断補強金物13における張り出し部分15は設けられる。
【0021】
次に、
図1〜
図2(a)〜(f)を参照して、本発明において使用するせん断補強金物13について説明すると、せん断補強金物13は、図示の形態では、デッキプレート1の上面側から、谷部12に嵌合できる形態とされている。
図2(a)(b)及び
図3に示すように、せん断補強金物13は、デッキプレート1の上面側の谷部12に嵌合され、各谷部12における間隔をおいて対向するウェブ4に向かって伸びる立ち上がり部分14と、せん断補強金物13を、デッキプレート1に固定するための張り出し部分15(上部張り出し部分15aと下部張り出し部分15b)とを備えた形態とされている。
さらに詳細に説明すると、図示の形態では、前記の張り出し部分15は、立ち上がり部分14の上部に接続すると共にデッキプレートの幅方向(波形凸凹方向)に張り出す幅方向上部張り出し部分15aと、立ち上がり部分14の下部に接続すると共にデッキプレートの延長方向に張り出す下部張り出し部分15bとを含む。
前記の立ち上がり部分14は、ウェブ4外面に対して垂直(直角)な位置関係にあるのが、立ち上がり部分14を最も寸法の短い部材とすることができる上で好ましく、ウェブ4外面に対して接触された状態又は押圧された状態で配置され、前記の張り出し部分15(15a,15b)は、上フランジ3の上面又は下フランジ2の上面(屈曲波形の場合にはウェブ4の一部を含む場合がある)に固定するための部分で、
図2(c)及び
図4に示すように、立ち上がり部分14の下部側に下部張り出し部分15bを設けたり、
図2(d)及び
図5に示すように、立ち上がり部分14の上下両側にそれぞれ上部及び下部張り出し部分15a,15bを設けたり、
図2(e)に示すように、立ち上がり部分14の上部側に上部張り出し部分15aを設ける形態でもよい。
デッキプレート1が前記のように、屈曲波形形態の場合には、
図30に示すように、その谷部12及び山部の形態に合わせて、立ち上がり部分14の下端側及び下部張り出し部分15bの形態(又は上部張り出し部分15aの形態)を、円弧状等の弧状の形態としてもよい。
【0022】
さらに、図示のせん断補強金物13では、例えば、所定形状に切り抜き加工が施された鋼板に折り曲げ加工が施されて、間隔をおいて平行な各立ち上がり部分14の下端部に、互いに離反するように外側に水平に伸びるフランジからなる下部張り出し部分15bが一体に屈曲連接され、また、各立ち上がり部分14相互は、各立ち上がり部分14に一体に屈曲連接された上部張り出し部分15により接続されている。
前記の各立ち上がり部分14における板幅方向の両端部は、デッキプレート1側の谷部12側のウェブ4外面に接触するように、谷部12の断面形態に応じて、デッキプレート1の上面側又は溝長手方向の端部側から嵌合可能な形態とされる。図示の形態では、立ち上がり部分14は下から上に向かって漸次広幅となるように台形形状とされている。
前記のせん断補強金物13の板厚寸法は、デッキプレート1の板厚寸法と同程度のものを用いるのが、軽量化を図る上で望ましい。本発明のせん断補強金物13は、デッキプレート1における谷部12に全体(又はほぼ全体)が収まっており、せん断補強金物13(図示の形態では、せん断補強金物13における立ち上がり部分14)がデッキプレート1のウェブ4に接していれば、せん断補強金物13は必ずしも谷部12に合致する形状でなくても、デッキプレートの面内せん断剛性を向上させることができ、デッキプレートに水平力が作用した場合に、デッキプレート1のゆがみ変形を防止又は抑制することができる効果が得られる(この作用効果は、前記の実施形態及び後記のすべての形態において同様な効果である)。せん断補強金物13がデッキプレート1のウェブ4に接触する形態としては、点接触又は線接触あるいは面接触が考えられるが、点接触よりは線接触がよく、接触面積が大きく、上下方向の接触距離が長いほうがデッキプレート1のゆがみ変形の防止又は抑制効果が高くなる。
【0023】
前記の上部張り出し部分15aは、デッキプレート1における上フランジ3に固定される部分であるため、立ち上がり部分14より幅が広くされて上フランジ3側に張り出す形態とされ、側方(水平方向)への上部張り出し部分15aで、デッキプレート1における上フランジ3にドリルねじ等により固定される。前記の上部張り出し部分15aは、せん断補強金物13に間隔をおいて立ち上がり部分14を設ける形態では、立ち上がり部分14相互を接続するために一体に設けられた基端側部分と上フランジ3側へ張り出す先端側の上部張り出し部15aとを一体に備えた形態の張り出し部分15となる(
図2a参照)。
また、下部張り出し部分15bは、デッキプレート1における下フランジ2にドリルねじ等より固定される。
【0024】
せん断補強金物13は、例えば、各谷部12の長手方向(延長方向)の端部側で同じ位置となるように嵌合配置されてドリルねじ17(
図1参照)等により、デッキプレート1のフランジ2(3)に固定され、せん断補強金物13が直線状に多数設置されることで、デッキプレート1の各端部側の面内せん断剛性が高められ、地震時等に水平力が作用した場合に、ゆがみ変形が抑制されている。
せん断補強金物13を固定する場合には、
図29に示すように、上側張り出し部分15のみを、デッキプレート1における上フランジ3に固定した場合には、水平力Fが作用した場合に、せん断補強金物13における下部の張り出し部分15が固定されていないために、上フランジ3のゆがみ変形16により、せん断補強金物13が浮き上がる可能性があるため、せん断補強金物13は、デッキプレート1における下フランジ2側に固定したほうが、せん断補強金物13の浮き上がりを防止できるため、有利である。 せん断補強金物13を固定する形態としては、上部張り出し部分15aと下部張り出し部分15bのいずれか一方又は、好ましくは、上下両方の張り出し部分15a,15bを固定する。上部張り出し部分15aと下部張り出し部分15bのいずれか一方を固定する形態とする場合には、他方を設けなくてもよい。
【0025】
また、
図2(a)に示すように、間隔をおいて平行に鉛直又は傾斜状態で設けられた立ち上がり部分14を、上部張り出し部分15aを連結部分として用いて一体に接続する形態とすると、せん断補強金物13が立体状になり、デッキプレート1の谷部12に配置した場合に安定した状態で自立させることができる。このような自立したせん断補強金物13であると、ドリルねじ等のファスナーにより固定する場合に、安定した状態でせん断補強金物13を配置することができ、ドリルねじによる取り付けが容易になる。
図2に示す形態以外にも、図示を省略するが、例えば、
図2(a)(b)に示す形態で、各立ち上がり部分14の下端側相互を、奥行き方向で下部の張り出し部分を長くすることで、接続してもよい。
【0026】
せん断補強金物13のデッキプレート1に対する固定する形態としては、
図1及び
図24(c)に示すように、ドリルねじ17により、前記張り出し部分15を、デッキプレート1の下フランジ2或いは上フランジ3に固定する。ドリルねじ17は、例えば、鋼板板厚で合計13mm程度まで、接合可能であるから、場合によっては、デッキプレート1を梁フランジ38にドリルねじ17により固定する場合もある。
なお、せん断補強金物13のデッキプレート1に対する固定方法としては、ドリルねじ以外にも、ボルト・ナット、溶接、鋲など固定が可能であれば、公知の適宜の形態でもよい。
【0027】
図2(b)に示すように、横方向に隣り合うデッキプレート1における下フランジ2側に、雄型嵌合継ぎ手7と雌型嵌合継ぎ手6を備え、これらの嵌合継手相互を嵌合させた継ぎ手嵌合部8では、せん断補強金物13における下部張り出し部分15bと立ち上がり部分14の下側に、前記の継ぎ手嵌合部8を跨ぐ必要があることから、必要に応じ、
図7に示すように、適宜切り欠き凹部18を下部張り出し部分15b又は及び立ち上がり部分14に設けて、前記の継ぎ手嵌合部8と干渉しないようにされる。
【0028】
せん断補強金物13は、例えば、デッキプレート1における各谷部12の長手方向(延長方向)の両端部に設置され、デッキプレート1に固定する形態、あるいはデッキプレート1と共に梁側に固定する形態のいずれの場合でもよい。ドリルねじによる固定する形態では、必要に応じ、せん断補強金物13側に先孔42(
図2〜
図5参照)を設けるようにしてもよい。
なお、せん断補強金物13としては、前記各形態以外にも、
図15〜
図17に示す形態のせん断補強金物13でもよい。
図15に示す形態は、複数の立ち上がり部分14を有し、これらの立ち上がり部分14が上部張り出し部分15(15a)により連結されているせん断補強金物13であると共に、デッキプレート1における上フランジ3に固定しない形態のせん断補強金物13とされている形態である。
前記各形態の場合には、複数の立ち上がり部分14が上部張り出し部分15(15b)で連結された形態および、立ち上がり部分14が1つで上部および/または下部に張り出し部分15(15a,15b)を有する形態であるが、前記以外の形態としては、例えば、
図16及び
図17に示す形態のように、上部張り出し部分15(15a)を備えていない形態でもよい。
図16に示す形態は、2つの立ち上がり部分14がその上部で直接接続(又は溶接等により連結)される形態で、側面視で全体としてほぼ逆V字状(又は三角形状)とされていてもよい。側面から見た各立ち上がり部分14と下部張り出し部分15(15b)の延長面とのなす角度θ1、θ2は、
図17(e)に示すように異なる角度でもあってもよく、
図16(e)に示す形態のように同じ角度であってもよい。このような形態の場合は、上部張り出し部分15(15a)を備えていないので、デッキプレート1への固定のために下部張り出し部分15(15b)が必須のせん断補強金物13である。
図16及び
図17に示す形態のような上部張り出し部分15(15a)を備えていない形態のせん断補強金物13であってもよい。デッキプレート1の面内せん断剛性に対する補強効果に関しては、2つの立ち上がり部分14によりデッキプレート1のゆがみ変形(ウェブ4の倒れ込み)を抑制するため、
図1,
図3等に示す複数の立ち上がり部分14を有する側面視でほぼ四角形状のせん断補強金物13と同等以上になることから、
図1,3等に示す形態のせん断補強金物13と同等以上の補強効果が得られるせん断補強金物13になっている。
図16及び
図17に示す形態のせん断補強金物13では、
図1、3等に示す複数の立ち上がり部分14を有するせん断補強金物13に比べて、より軽量安価なせん断補強金物13とすることができる。
【0029】
次に、デッキプレート1と梁側の固定方法について説明すると、例えば、
図8に示すように、デッキプレート1は、各谷部12の長手方向の両端部の下フランジ2が、それぞれ支持梁19のフランジ上に載置されて、発射打ち込み鋲20により固定されたり、
図9に示すように焼き抜き栓溶接21により固定したり、
図10に示すように、支持梁19上に架設された断面C字状の嵩上げ部材22にドリルねじ17により固定される。
【0030】
次に、せん断補強金物13の有無による比較実験について説明する。
【0031】
せん断補強金物13のデッキプレート1に対する接合位置による影響(A)、せん断補強金物13における上部張り出し部分15aの長さ(溝長手方向の長さ)による影響(B)、谷部12長手方向のせん断補強金物13の配置位置による影響(C)について、せん断補強金物13をデッキプレート1に配置しない場合と比較実験を行った。
【0032】
試験に用いたデッキプレート1は、本発明の場合も比較例の場合も、
図27に示す寸法(mm)であり、主な寸法は、デッキプレート1の板厚は、1.0mm、デッキプレート1の長さ寸法は3000mmであり、デッキプレート1と、曲げせん断試験装置24(
図14参照)における取り付け部23とは、
図28に示すように、下フランジ2及びアーム部5の部分に直列に2箇所、発射打ち込み鋲20により固定した。
図14に示す前記の曲げせん断試験装置24は、固定側支持枠材25に間隔をおいて平行に一対の回動枠26の基端側を縦軸により回動可能に取り付け、前記各回動枠26の先端部に渡って可動枠27を配置すると共に縦軸により連結し、前記可動枠27の一端側にジャッキにより水平力Fが入力されるようにされている。
前記固定側支持枠材25に固定された取り付け部23と可動枠27に固定された取り付け部23とに渡って、本発明のせん断補強構造としたデッキプレート1、又はそのようなせん断補強構造を備えていない形態のデッキプレート1をセットし、
図14に示すように変位計D1〜D5をセットした。D1〜D5は水平変位を計測している。変位計D2及びD3によって計測された平均値によって可動側の変位とし、変位計D4及びD5によって計測された平均値によって固定側の変位としている。
【0033】
本発明の各種長さで一様な板厚寸法のせん断補強金物を用いてせん断補強されたデッキプレート1の試験体としては、
図11(a)〜(c)、
図12(a)〜(b)、
図13(a)〜(c)に示す形態で、比較例としては、そのようなせん断補強金物による補強をされていない形態である。表1に各試験体の主要素を示す。
【0035】
(試験体名の説明)
表1における試験体名中において、表記されている溝は、デッキプレート1における下フランジとその両側のウェブとにより形成される谷部12(溝)に、せん断補強金物13を配置して補強される形態であることを意味している。その次の44又は40或いは04の数字については、左側部分の数字が、せん断補強金物13における下部張り出し部分15bとデッキプレート1における下フランジ2との接合箇所数及びドリルねじ17の本数を意味している。また、右側部分の数字が、せん断補強金物13における上部張り出し部分15aとデッキプレート1における上フランジ3との接合箇所数及びドリルねじ17の本数を意味している(表1では、上フランジ接合部[箇所数]又は下フランジ接合部[箇所数]と記した)。
その次の88又は176或いは264の数字については、谷部12の長手方向のせん断補強金物13の上部の長さの寸法(mm)を意味している(表1では、金物上部長さlと記した)。
【0036】
図11(a)〜(c)の3形態のデッキプレート1では、いずれも、せん断補強金物13をデッキプレート1の端部から120mm離した位置に下部張り出し部分15bの端部が位置するように配置した。また、せん断補強金物13における上部張り出し部分15aの長さ(デッキプレートの溝長手方向の長さ)は88mmのものを用いた。
図11(a)のデッキプレート1の試験体では、デッキプレート1の下フランジ長手方向の両端側に、それぞれせん断補強金物13を設置した。各せん断補強金物13における上部張り出し部分15aにおける張り出し部をデッキプレート1の上フランジ3にドリルねじにより各2箇所計4箇所固定すると共に、各下部張り出し部分15bとデッキプレート1における下フランジ2とをドリルねじ17により各2箇所計4箇所固定し、全体として8箇所固定した形態である。
図11(b)のデッキプレート1の試験体では、各下部張り出し部分15bはデッキプレート1に固定しないで、上部張り出し部分15aを各2箇所計4箇所のみにより、せん断補強金物13をデッキプレート1に固定したデッキプレート1の試験体である。これ以外は、
図11(a)と同じである。
図11(c)のデッキプレート1の試験体では、
図11(b)とは逆に、各下部張り出し部分15bをデッキプレート1に各2箇所計4箇所のみによりせん断補強金物13を固定し、上部張り出し部分15aをデッキプレート1に固定しない形態のデッキプレート1の試験体である。これ以外は、
図11(a)の場合と同様である。
前記の3種類の本発明のせん断補強構造とされたデッキプレート1の試験体と、せん断補強金物13を備えていないでせん断補強構造とされていない比較例(補強なし)の試験体についての試験結果(せん断補強金物の接合位置を変化させた場合の試験結果で、せん断補強金物13の接合位置による影響)が、下記表2に示されている。この結果から、せん断補強金物13により補強しない場合より、せん断補強金物13により補強する本発明の補強構造の方が初期の剛性が、1割又は2割強程度高くなっていることがわかる。
また、上フランジ3にのみ、せん断補強金物13を固定する場合に比べて、下フランジ2にのみ、せん断補強金物13を固定する形態の補強構造とするほうが、1割強程度初期剛性が高くなっていることがわかる。
この理由について、
図29を参照して簡単に説明すると、せん断補強金物13における上部張り出し部分15aのみをデッキプレート1における上フランジ3に固定した形態に水平力が作用した場合、上フランジ3がゆがみ変形して湾曲し、これに押されるように上部張り出し部分15aが押し上げられ、せん断補強金物13は、一方の上フランジ3の隅部を支点として浮き上がるように回転するためである。したがって、前記実施形態のせん断補強金物13では、デッキプレート1における下フランジ2に対する接合がない場合には、デッキプレート1における上フランジ3のゆがみ変形により、せん断補強金物13が矢印Xで示すようにデッキプレート1から抜け出すように回転する。また、デッキプレート1におけるウェブ4のゆがみ変形も前記のせん断補強金物13が抜け出すように押し上げる恐れもある。したがって、せん断補強金物13をデッキプレート1に固定する場合は、下部張り出し部分15bを下フランジ2に対して接合すると、上部張り出し部分15aを上フランジ3に対して接合するよりも、デッキプレート1の剛性を効率よく向上させることができることがわかる。
【表2】
【0037】
次に、せん断補強金物13の上部張り出し部分15a及び下部張り出し部分15bを、それぞれデッキプレート1における上フランジ3と下フランジ2に固定した形態(
図11aに示す形態と同様に固定し)で、デッキプレートに対するせん断補強金物13の上部長さlを、88mm、176mm(2倍)、264mm(3倍)と順次整数倍長くしたせん断補強金物13を、デッキプレート1の両端部に同様に設置した場合について試験した。せん断補強金物13のデッキプレート1端部から離す距離は
図11aと同様一定にした。せん断補強金物13のデッキプレート1に対するドリルねじによる固定形態及び本数は前記と同じである。
下記表3に、せん断補強金物の上部長さlによる影響の試験結果(せん断補強金物の長さを変化させた場合の試験結果)を示し、この表3から、デッキプレート1の長さ3000mmに対するせん断補強金物13の上部長さlが、88mm〜264mmの範囲では、せん断補強金物13の上部長さlが長いほうが、初期剛性が向上していることがわかる。
【表3】
【0038】
前記の結果から、さらに、
図18を示すように、デッキプレート1のスパン(デッキスパン)L
dに対するせん断補強金物13の上部長さlの比(l/L
d)を横軸にとり、縦軸に剛性増加率をとった場合、デッキプレート1にせん断補強金物13を設けた本発明の形態の場合は、せん断補強金物13を設けない場合に比べて、約2割〜3割程度向上していることがわかる。
【0039】
次に、デッキプレートにせん断補強金物13を設置しない場合と、デッキプレートにせん断補強金物13を設置した場合に、デッキプレートにおける谷部長手方向の端部から離れた位置を変化させた場合について試験した。
前記のせん断補強金物13を設置した場合は、デッキプレート1端部からせん断補強金物13までの距離を、120mm、500mm、1000mmと変化させた場合について、前記と同様に試験した。せん断補強金物13のデッキプレート1に対するドリルねじによる固定形態及び本数は前記と同じである。前記の試験結果をせん断補強金物13の位置l’による影響として表4に示し、この表4から、せん断補強金物13のデッキプレート1の端部側に設置する補強形態のほうが、初期剛性が向上している傾向があることがわかる。
【表4】
また、
図19に示すように、デッキプレート1のスパン(デッキスパン)L
dに対するせん断補強金物13間の距離l´´の比(l´´/L
d)を横軸にとり、縦軸に剛性増加率をとった場合、せん断補強金物13間の距離l´´が長いほうが(換言すると、各せん断補強金物13がデッキプレート1の端部側寄りにあるほうが)、せん断補強金物13間の距離が短い場合(換言すると、各せん断補強金物13がデッキプレート1の中央部側にある場合に)に比べて、剛性増加率が、約2割程度向上していることがわかる。
【0040】
前記の試験結果から、ゆがみ変形を防止できる面内剛性を高めるように補強された構造とするために、せん断補強金物13は、下部張り出し部分15bをデッキプレート1の下フランジ2に固定し、せん断補強金物13をデッキプレート1の谷部12の長手方向の各端部側に寄せて、立ち上がり部分14間の比較的長い形態のせん断補強金物13を設けることが望ましい。
【0041】
前記実施形態のように、デッキプレート1における谷部12の長手方向に間隔をおいて複数の前記せん断補強金物13が設置されていると、デッキプレート1の溝長手方向に間隔をおいて複数配置するだけで、地震時にデッキプレート1に水平力が作用しても、デッキプレート1における溝長手方向に渡ってウェブ4又は上下の各フランジ2,3部分のゆがみ変形を防止して、水平力が作用した場合のデッキプレート1の面内方向の剛性を補強することができる。
また、前記実施形態のように、デッキプレート1における並列する前記谷部12に、それぞれ前記せん断補強金物13がデッキプレート1の幅方向に直線状に並列(並列する谷部12の同じ位置に設置)して設置されていると、並列する谷部12における各谷部12で、それぞれ同様な位置にせん断補強金物13を並列して設置することになり、デッキプレート幅方向における各谷部12におけるウェブ4及び上下フランジ2,3のゆがみ変形を防止して、デッキプレートの各谷部(端部側等設置された部分)を、デッキプレートの幅方向に渡って均等に補強することができる。
【0042】
次に、本発明のデッキプレート相互の連結構造を採用した屋根構造について説明すると、
図24(b)(c)及び
図26に示すように、前後方向に間隔をおいて設置された鋼製の梁19間に渡って、デッキプレート1が順次、左右方向に並列して架設させると共に、隣り合う一方のデッキプレート1における雄型嵌合継ぎ手7に、次に架設されるデッキプレート1における雌型嵌合継ぎ手6が嵌合された状態とされ、各デッキプレート1は、各梁19のフランジ38に対して、下フランジ2又はアーム部5が発射打ち込み鋲等の固定手段により固定される。また、各デッキプレート1における各谷部12、及び隣り合うデッキプレート1のウェブ4により形成される継ぎ手嵌合部8の部分の谷部12にも、それぞれ、せん断補強金物13あるいは切り欠き凹部18(
図7参照)を有するせん断補強金物13を配置して、各せん断補強金物13の上部張り出し部分15a又は下部張り出し部分15b或はこれら両方の上下部の張り出し部分15a,15bを、デッキプレート1における下フランジ2又は上フランジ3にドリルねじ17により固定する。
【0043】
前記のように、デッキプレート同士を嵌合させ、せん断補強金物を設置した後、前記デッキプレートの上に、硬質ウレタンフォームやポリスチレンフォーム、ポリエチレンフォーム、グラスウール、ロックウールなどからなる断熱板40(
図26参照)が敷き並べられて適宜固定され、断熱板40相互は耐火粘着テープにより連結・設置され、その断熱板40の上に塩化ビニルシート等の防水シート41が設けられる。
前記の断熱板40に代えて防火材料を用いてもよく、その場合の防火材料として、不燃性を持つ材料(不燃性を持つ材料とは、加熱開始後少なくとも5分間は燃焼しない材料)であり、例えば、石製(粒又は塊状あるいは板状)、ガラス製、グラスウール板、コンクリート製、木片セメント板、石膏ボードなどの不燃性を持つ材料を用いてもよい。
デッキプレートの上に断熱材40又は不燃性を持つ材料のいずれか一方を敷設した後、他方を順次敷設し、その後、防水シートを敷設するようにしてもよい。
前記の防水シートによる防水工法に代えて、改質アスファルトシート、ゴム系シートによる防水工法等の公知の他の防水工法を採用するようにしてもよい。
図24(b)(c)及び
図26に示すような屋根構造とすると、横方向に隣り合うデッキプレート相互を簡単な構造で確実に一体化していると共に、ブレースを用いることなく面内せん断剛性、特にデッキプレート1おけるウェブ4及びその上下部のフランジ2,3のゆがみ変形防止効果の大きいデッキプレート郡を形成することができ、そのため、地震時等に水平力が作用した場合のゆがみ変形に対して抵抗力の大きいデッキプレートを備えた屋根構造とすることができ、また、デッキプレート下の設備スペース35を大きくすることができる。
【0044】
前記実施形態においては、2つの立ち上がり部分14を上部張り出し部分15aにより接続している形態を示したが、本発明を実施する場合、図示を省略するが、間隔をおいて3つの立ち上がり部分14をこれらに渡って設けられた上部張り出し部分15aあるいは下部張り出し部分15bを一体に備えた形態としてもよい。
前記実施形態の場合には、せん断補強金物13をデッキプレート1の上側から配置する形態を図示したが、谷部12が、下方が広くされた蟻溝形態の場合には、せん断補強金物13を、デッキプレート1の軸方向から挿入配置するようにしてもよい。
【0045】
本発明において使用するデッキプレート1の断面形状としては、他の断面形状でもよく、例えば、
図31(a)に示すように、凸部43を有する形態のデッキプレート1の場合に、前記凸部43を跨ぐことが可能なせん断補強金物13としたり、
図31(b)に示すように、隣り合うデッキプレート1におけるアーム部5が上下に重なり合って、段部が形成される場合には、下部張り出し部分及び立ち上がり部分に前記段部に対応して段部を設ける形態とすればよく、デッキプレートの断面形態に合わせて対応可能な形態のせん断補強金物とすればよい。
また、本発明において使用するせん断補強金物13の形態としては、前記形態以外にも、図示を省略するが、例えば、一方の立ち上がり部分14の側端部(又は両方の立ち上がり部分14の側端部相互を接続するように)に接続するように側板を有する形態として立ち上がり部分14を補強する形態としてもよく、前記の側板と立ち上がり部分14と、デッキプレート1のウェブに面タッチさせるようにしてもよい。前記の立ち上がり部分14がウェブ4面に直角に配置されている形態であると、立ち上がり部分14がウェブ4のゆがみ変形に確実に抵抗するから望ましい。
なお、本発明を実施する場合、例えば、
図3(d)、
図7(d)、
図15(d)〜
図17(d)において、左下の下部張り出し部分15(15b)に一体に立ち上がり部分14を設けたり、その立ち上がり部分14の上部に上部張り出し部分(又は下向きの立ち上がり部分14)を設けることを繰り返すことで、3枚以上の複数枚の立ち上がり部分14を有するせん断補強金物13としてもよい。