(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ゴルフボールは、その表面に多数のディンプルを備えている。ディンプルは、飛行時のゴルフボール周りの空気の流れを乱し、乱流剥離を起こさせる。この現象は、「乱流化」と称される。乱流化によって空気のゴルフボールからの剥離点が後方にシフトし、抗力が低減される。乱流化によってバックスピンに起因するゴルフボールの上側剥離点と下側剥離点とのズレが助長され、ゴルフボールに作用する揚力が高められる。優れたディンプルは、よりよく空気の流れを乱す。優れたディンプルは、大きな飛距離を生む。
【0003】
ゴルフボールの仮想球の表面積に対する、ディンプルの合計面積の比率は、占有率と称されている。一般に、占有率が大きいゴルフボールでは、乱流化の程度が大きい。占有率が大きいゴルフボールは、飛行性能に優れる。
【0004】
ディンプルの直径のバラツキが少ないゴルフボールにおいて乱流化の程度が大きいことが、知られている。このゴルフボールは、飛行性能に優れる。
【0005】
占有率が高められるには、複数のディンプルによって囲まれた狭いゾーンに、小径のディンプルが配置される必要がある。小径ディンプルの存在は、ディンプルの直径のバラツキの増大を招く。占有率が高められることと、直径のバラツキが抑制されることとは、相反する事項である。
【0006】
乱流化の程度は、ディンプルの断面形状にも依存する。ディンプルが深すぎるゴルフボールでは、乱流化が不十分である。ディンプルが浅すぎるゴルフボールでも、乱流化が不十分である。
【0007】
ディンプルの断面形状に関する種々の提案がなされている。特開昭62−192181号公報には、大きな直径及び大きな深さを有するディンプルと、小さな直径及び小さな深さを有するディンプルとを備えたゴルフボールが開示されている。
【0008】
特開平2−134175号公報には、あるディンプルの直径を深さで除した値と、他のディンプルの直径を深さで除した値との差が0.3以下であるゴルフボールが開示されている。
【0009】
特開平3−198875号公報には、大きな直径及び小さな深さを有するディンプルと、小さな直径及び大きな深さを有するディンプルとを備えたゴルフボールが開示されている。
【0010】
特開平4−231079号公報には、深さを直径で除した値が全てのディンプルにおいて同一であるゴルフボールが開示されている。
【0011】
特開平5−237202号公報には、エッジアングルが全てのディンプルにおいて同一であるゴルフボールが開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0022】
図1に示されたゴルフボール2は、球状のコア4と、このコア4の外側に位置する中間層6と、この中間層6の外側に位置するカバー8とを備えている。カバー8の表面には、多数のディンプル10が形成されている。ゴルフボール2の表面のうちディンプル10以外の部分は、ランド12である。このゴルフボール2は、カバー8の外側にペイント層及びマーク層を備えているが、これらの層の図示は省略されている。
【0023】
このゴルフボール2の直径は、40mmから45mmが好ましい。米国ゴルフ協会(USGA)の規格が満たされるとの観点から、直径は42.67mm以上が特に好ましい。空気抵抗抑制の観点から、直径は44mm以下がより好ましく、42.80mm以下が特に好ましい。このゴルフボール2の質量は、40g以上50g以下が好ましい。大きな慣性が得られるとの観点から、質量は44g以上がより好ましく、45.00g以上が特に好ましい。USGAの規格が満たされるとの観点から、質量は45.93g以下がより好ましい。
【0024】
コア4は、ゴム組成物が架橋されることで成形される。好ましい基材ゴムとして、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体及び天然ゴムが例示される。反発性能の観点から、ポリブタジエンが好ましい。ポリブタジエンと他のゴムとが併用される場合は、ポリブタジエンが主成分とされることが好ましい。具体的には、基材ゴム全量に対するポリブタジエンの量の比率は50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。ポリウレタンにおけるシス−1,4結合の比率は40%以上が好ましく、80%以上がより好ましい。
【0025】
コア4の架橋には、好ましくは、共架橋剤が用いられる。反発性能の観点から好ましい共架橋剤は、炭素数が2から8であるα,β−不飽和カルボン酸の、1価又は2価の金属塩である。好ましい共架橋剤の具体例としては、アクリル酸亜鉛、アクリル酸マグネシウム、メタクリル酸亜鉛及びメタクリル酸マグネシウムが挙げられる。反発性能の観点から、アクリル酸亜鉛及びメタクリル酸亜鉛が特に好ましい。
【0026】
ゴルフボール2の反発性能の観点から、共架橋剤の量は、基材ゴム100質量部に対して10質量部以上が好ましく、15質量部以上がより好ましい。ソフトな打球感の観点から、共架橋剤の量は、基材ゴム100質量部に対して50質量部以下が好ましく、45質量部以下がより好ましい。
【0027】
好ましくは、コア4のゴム組成物は、共架橋剤と共に有機過酸化物を含む。有機過酸化物は、架橋開始剤として機能する。有機過酸化物は、ゴルフボール2の反発性能に寄与する。好適な有機過酸化物としては、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン及びジ−t−ブチルパーオキサイドが挙げられる。汎用性の観点から、ジクミルパーオキサイドが好ましい。
【0028】
ゴルフボール2の反発性能の観点から、有機過酸化物の量は、基材ゴム100質量部に対して0.1質量部以上が好ましく、0.3質量部以上がより好ましく、0.5質量部以上が特に好ましい。ソフトな打球感の観点から、有機過酸化物の量は、基材ゴム100質量部に対して3.0質量部以下が好ましく、2.8質量部以下がより好ましく、2.5質量部以下が特に好ましい。
【0029】
好ましくは、コア4のゴム組成物は、有機硫黄化合物を含む。好ましい有機硫黄化合物としては、ジフェニルジスルフィド、ビス(4−クロロフェニル)ジスルフィド、ビス(3−クロロフェニル)ジスルフィド、ビス(4−ブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(3−ブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(4−フルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(4−ヨードフェニル)ジスルフィド、ビス(4−シアノフェニル)ジスルフィド等のモノ置換体;ビス(2,5−ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(3,5−ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6−ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,5−ジブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(3,5−ジブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2−クロロ−5−ブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2−シアノ−5−ブロモフェニル)ジスルフィド等のジ置換体;ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2−シアノ−4−クロロ−6−ブロモフェニル)ジスルフィド等のトリ置換体;ビス(2,3,5,6−テトラクロロフェニル)ジスルフィド等のテトラ置換体;及びビス(2,3,4,5,6−ペンタクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,3,4,5,6−ペンタブロモフェニル)ジスルフィド等のペンタ置換体が例示される。有機硫黄化合物は、反発性能に寄与する。特に好ましい有機硫黄化合物は、ジフェニルジスルフィド及びビス(ペンタブロモフェニル)ジスルフィドである。
【0030】
ゴルフボール2の反発性能の観点から、有機硫黄化合物の量は、基材ゴム100質量部に対して0.1質量部以上が好ましく、0.2質量部以上がより好ましい。ソフトな打球感の観点から、有機硫黄化合物の量は、基材ゴム100質量部に対して1.5質量部以下が好ましく、1.0質量部以下がより好ましく、0.8質量部以下が特に好ましい。
【0031】
コア4に、比重調整等の目的で充填剤が配合されてもよい。好適な充填剤としては、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウムが例示される。充填剤として、高比重金属からなる粉末が配合されてもよい。高比重金属の具体例としては、タングステン及びモリブデンが挙げられる。充填剤の量は、コア4の意図した比重が達成されるように適宜決定される。特に好ましい充填剤は、酸化亜鉛である。酸化亜鉛は、比重調整の役割のみならず、架橋助剤としても機能する。コア4には、硫黄、老化防止剤、着色剤、可塑剤、分散剤等の各種添加剤が、必要に応じて適量配合される。コア4に、架橋ゴム粉末又は合成樹脂粉末が配合されてもよい。
【0032】
反発性能の観点から、コア4の中心硬度H1は35以上が好ましく、40以上がより好ましく、45以上が特に好ましい。ドライバーでのショットにおけるスピン抑制の観点から、中心硬度H1は80以下が好ましく、75以下がより好ましく、70以下が特に好ましい。コア4が切断されて得られる半球の切断面中心点に、JIS−C型硬度計が押しつけられることにより、中心硬度H1が測定される。測定には、この硬度計が装着された自動ゴム硬度測定機(高分子計器社の商品名「P1」)が用いられる。
【0033】
反発性能の観点から、コア4の表面硬度H2は45以上が好ましく、50以上がより好ましく、55以上が特に好ましい。打球感の観点から、表面硬度H2は100以下が好ましく、95以下がより好ましく、90以下が特に好ましい。コア4の表面にJIS−C型硬度計が押しつけられることにより、表面硬度が測定される。測定には、この硬度計が装着された自動ゴム硬度測定機(高分子計器社の商品名「P1」)が用いられる。
【0034】
打球感の観点から、表面硬度H2と中心硬度H1の差(H2−H1)は5以上が好ましく、8以上がより好ましく、12以上が特に好ましい。反発性能の観点から、差(H2−H1)は35以下が好ましく、32以下がより好ましく、30以下が特に好ましい。
【0035】
打球感の観点から、コア4の圧縮変形量D1は2.3mm以上が好ましく、2.4mm以上がより好ましく、2.5mm以上が特に好ましい。反発性能の観点から、圧縮変形量D1は6.0mm以下が好ましく、5.5mm以下がより好ましく、4.0mm以下が特に好ましい。
【0036】
圧縮変形量の測定では、球体(コア4、ゴルフボール2等)が金属製の剛板の上に置かれる。この球体に向かって金属製の円柱が徐々に降下する。この円柱の底面と剛板との間に挟まれた球体は、変形する。球体に98Nの初荷重がかかった状態から1274Nの終荷重がかかった状態までの円柱の移動距離が、圧縮変形量である。
【0037】
反発性能の観点から、コア4の直径は35.0mm以上が好ましく、36mm以上がより好ましく、37mm以上が特に好ましい。十分な厚みを有する中間層6及びカバー8が成形されうるとの観点から、直径は42.0mm以下が好ましく、41.6mm以下がより好ましく、41.2mm以下が特に好ましい。
【0038】
コア4の質量は、25g以上42g以下が好ましい。コア4の架橋温度は、通常は140℃以上180℃以下である。コア4の架橋時間は、通常は10分以上60分以下である。コア4が2以上の層から形成されてもよい。コア4が、その表面にリブを備えてもよい。
【0039】
中間層6には、樹脂組成物が好適に用いられる。この樹脂組成物の基材ポリマーとしては、アイオノマー樹脂、ポリスチレン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー及びポリオレフィン系エラストマーが例示される。特に、アイオノマー樹脂が好ましい。アイオノマー樹脂は、高弾性である。後述されるように、このゴルフボール2のカバー8は薄い。このゴルフボール2がドライバーで打撃されると、カバー8が薄いことに起因して、中間層6が大きく変形する。アイオノマー樹脂を含む中間層6は、ドライバーショットにおける反発性能に寄与する。
【0040】
アイオノマー樹脂と他の樹脂とが併用されてもよい。併用される場合は、反発性能の観点から、アイオノマー樹脂が基材ポリマーの主成分とされる。基材ポリマーの全量に対するアイオノマー樹脂の量の比率は50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、85%以上が特に好ましい。
【0041】
好ましいアイオノマー樹脂としては、α−オレフィンと炭素数が3以上8以下のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体が挙げられる。好ましい二元共重合体は、80質量%以上90質量%以下のα−オレフィンと、10質量%以上20質量%以下のα,β−不飽和カルボン酸とを含む。この二元共重合体は、反発性能に優れる。好ましい他のアイオノマー樹脂としては、α−オレフィンと炭素数が3以上8以下のα,β−不飽和カルボン酸と炭素数が2以上22以下のα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体が挙げられる。好ましい三元共重合体は、70質量%以上85質量%以下のα−オレフィンと、5質量%以上30質量%以下のα,β−不飽和カルボン酸と、1質量%以上25質量%以下のα,β−不飽和カルボン酸エステルとを含む。この三元共重合体は、反発性能に優れる。二元共重合体及び三元共重合体において、好ましいα−オレフィンはエチレン及びプロピレンであり、好ましいα,β−不飽和カルボン酸はアクリル酸及びメタクリル酸である。特に好ましいアイオノマー樹脂は、エチレンと、アクリル酸又はメタクリル酸との共重合体である。
【0042】
二元共重合体及び三元共重合体において、カルボキシル基の一部は金属イオンで中和されている。中和のための金属イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、亜鉛イオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン及びネオジムイオンが例示される。中和が、2種以上の金属イオンでなされてもよい。ゴルフボール2の反発性能及び耐久性の観点から特に好適な金属イオンは、ナトリウムイオン、亜鉛イオン、リチウムイオン及びマグネシウムイオンである。
【0043】
アイオノマー樹脂の具体例としては、三井デュポンポリケミカル社の商品名「ハイミラン1555」、「ハイミラン1557」、「ハイミラン1605」、「ハイミラン1706」、「ハイミラン1707」、「ハイミラン1856」、「ハイミラン1855」、「ハイミランAM7311」、「ハイミランAM7315」、「ハイミランAM7317」、「ハイミランAM7318」、「ハイミランAM7320」、「ハイミランAM7329」及び「ハイミランAM7337」;デュポン社の商品名「サーリン6120」、「サーリン6320」、「サーリン6910」、「サーリン7930」、「サーリン7940」、「サーリン8140」、「サーリン8150」、「サーリン8940」、「サーリン8945」、「サーリン9120」、「サーリン9150」、「サーリン9910」、「サーリン9945」、「サーリンAD8546」、「HPF1000」及び「HPF2000」;並びにエクソンモービル化学社の商品名「IOTEK7010」、「IOTEK7030」、「IOTEK7510」、「IOTEK7520」、「IOTEK8000」及び「IOTEK8030」が挙げられる。2種以上のアイオノマー樹脂が併用されてもよい。1価の金属イオンで中和されたアイオノマー樹脂と2価の金属イオンで中和されたアイオノマー樹脂とが併用されてもよい。
【0044】
後述されるように、中間層6は硬質である。酸含有量の多いアイオノマー樹脂が用いられることにより、中間層6の硬質が達成されうる。酸含有量は、10質量%以上30質量%以下が好ましい。酸含有量が多いアイオノマー樹脂の具体例としては、前述の「ハイミラン1605」、「ハイミラン1706」、「ハイミラン1707」、「ハイミランAM7311」、「ハイミランAM7317」、「ハイミランAM7318」、「ハイミランAM7329」、「サーリン6120」、「サーリン6910」、「サーリン7930」、「サーリン7940」、「サーリン8140」、「サーリン8150」、「サーリン8940」、「サーリン8945」、「サーリン9120」、「サーリン9150」、「サーリン9910」、「サーリン9945」、「サーリンAD8546」、「IOTEK8000」及び「IOTEK8030」が挙げられる。
【0045】
アイオノマー樹脂と併用される好ましいポリマーは、ポリスチレン系エラストマーである。特に、スチレンブロック含有熱可塑性エラストマーが好ましい。このエラストマーは、ハードセグメントとしてのポリスチレンブロックと、ソフトセグメントとを備えている。典型的なソフトセグメントは、ジエンブロックである。ジエンブロックの化合物としては、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン及び2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンが例示される。ブタジエン及びイソプレンが好ましい。2以上の化合物が併用されてもよい。
【0046】
スチレンブロック含有熱可塑性エラストマーには、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−イソプレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SIBS)、SBSの水添物、SISの水添物及びSIBSの水添物が含まれる。SBSの水添物としては、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)が挙げられる。SISの水添物としては、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)が挙げられる。SIBSの水添物としては、スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEEPS)が挙げられる。
【0047】
ゴルフボール2の反発性能の観点から、スチレンブロック含有熱可塑性エラストマーにおけるスチレン成分の含有率は10質量%以上が好ましく、12質量%以上がより好ましく、15質量%以上が特に好ましい。ゴルフボール2の打球感の観点から、この含有率は50質量%以下が好ましく、47質量%以下がより好ましく、45質量%以下が特に好ましい。
【0048】
本発明において、スチレンブロック含有熱可塑性エラストマーには、SBS、SIS、SIBS、SEBS、SEPS及びSEEPS並びにこれらの水添物からなる群から選択された1種又は2種以上と、オレフィンとのアロイが含まれる。このアロイ中のオレフィン成分は、他の基材ポリマーとの相溶性向上に寄与すると推測される。このアロイが用いられることにより、ゴルフボール2の反発性能が向上する。好ましくは、炭素数が2以上10以下のオレフィンが用いられる。好適なオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、ブテン及びペンテンが例示される。エチレン及びプロピレンが特に好ましい。
【0049】
ポリマーアロイの具体例としては、三菱化学社の商品名「ラバロンT3221C」、「ラバロンT3339C」、「ラバロンSJ4400N」、「ラバロンSJ5400N」、「ラバロンSJ6400N」、「ラバロンSJ7400N」、「ラバロンSJ8400N」、「ラバロンSJ9400N」及び「ラバロンSR04」が挙げられる。スチレンブロック含有熱可塑性エラストマーの他の具体例としては、ダイセル化学工業社の商品名「エポフレンドA1010」及びクラレ社の商品名「セプトンHG−252」が挙げられる。
【0050】
中間層6の樹脂組成物に、比重調整の目的で充填剤が配合されてもよい。用いられうる充填剤としては、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウムが例示される。充填剤として、高比重金属からなる粉末が配合されてもよい。高比重金属の具体例としては、タングステン及びモリブデンが挙げられる。充填剤の量は、中間層6の意図した比重が達成されるように適宜決定される。中間層6に、着色剤、架橋ゴム粉末又は合成樹脂粉末が配合されてもよい。
【0051】
この中間層6は、硬質である。硬質な中間層6を備えたゴルフボール2は、ドライバーショットにおける反発性能に優れる。硬質な中間層6とコア4とからなる球体では、外剛内柔な硬度分布が達成されうる。この硬度分布を有するゴルフボール2がドライバーで打撃されたとき、スピンが抑制される。反発性能とスピン抑制との相乗効果により、このゴルフボール2では優れた飛行性能が達成される。この硬度分布を有するゴルフボール2は、打球感にも優れる。飛行性能及び打球感の観点から、中間層6の硬度Hmは50以上が好ましく、58以上がより好ましく、62以上が特に好ましい。打球感及び耐久性の観点から、硬度Hmは85以下が好ましく、80以下がより好ましく、75以下が特に好ましい。
【0052】
本発明では、「ASTM−D 2240−68」の規定に準拠して、中間層6の硬度Hmが測定される。測定には、ショアD型硬度計が取り付けられた自動ゴム硬度計(高分子計器社の商品名「P1」)が用いられる。測定には、熱プレスで成形された、中間層6と同一の材料からなる、厚みが約2mmであるシートが用いられる。測定に先立ち、シートは23℃の温度下に2週間保管される。測定時には、3枚のシートが重ね合わされる。
【0053】
飛行性能の観点から、中間層6の厚みTmは0.5mm以上が好ましく、0.7mm以上がより好ましく、0.9mm以上が特に好ましい。打球感の観点から、厚みTmは2.4mm以下が好ましく、2.1mm以下がより好ましく、1.7mm以下が特に好ましい。
【0054】
中間層6の成形には、射出成形法、圧縮成形法等の既知の手法が採用されうる。生産性の観点から、射出成形法が好ましい。
【0055】
打球感の観点から、コア4及び中間層6からなる球体の圧縮変形量Dmは2.0mm以上が好ましく、2.1mm以上がより好ましく、2.2mm以上が特に好ましい。反発性能の観点から、圧縮変形量Dmは3.8mm以下が好ましく、3.7mm以下がより好ましく、3.6mm以下が特に好ましい。
【0056】
カバー8は、樹脂組成物からなる。この樹脂組成物の基材ポリマーとしては、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー及びアイオノマー樹脂が例示される。特に、ポリウレタン系エラストマーが好ましい。ポリウレタン系エラストマーは、軟質である。ゴルフボール2がショートアイアンで打撃されたとき、クラブフェイスの溝にカバー8が浸入する。この進入により、ゴルフボール2のクラブフェイスとのスリップが抑制される。このカバー8を備えたゴルフボール2では、大きなスピン速度が得られる。このカバー8は、ゴルフボール2のコントロール性能に寄与する。
【0057】
カバー8に、ポリウレタン系エラストマーと他の樹脂とが併用されてもよい。併用される場合は、コントロール性能の観点から、ポリウレタン系エラストマーが基材ポリマーの主成分とされる。基材ポリマーの全量に対するポリウレタン系エラストマーの量の比率は50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、85質量%以上が特に好ましい。
【0058】
カバー8には、熱可塑性ポリウレタン及び熱硬化性ポリウレタンが用いられうる。生産性の観点から、熱可塑性ポリウレタンが好ましい。熱可塑性ポリウレタンは、ハードセグメントとしてのポリウレタン成分と、ソフトセグメントとしてのポリエステル成分又はポリエーテル成分とを含む。ポリウレタン成分の硬化剤としては、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート及び脂肪族ジイソシアネートが例示される。
【0059】
脂環式ジイソシアネートとしては、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H
12MDI)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H
6XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)及びトランス−1,4−シクロヘキサンジイソシアネート(CHDI)が例示される。汎用性及び加工性の観点から、H
12MDIが好ましい。
【0060】
芳香族ジイソシアネートとしては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)及びトルエンジイソシアネート(TDI)が例示される。脂肪族ジイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)が例示される。
【0061】
特に、脂環式ジイソシアネートが好ましい。脂環式ジイソシアネートは主鎖に二重結合を有さないので、カバー8の黄変が抑制される。2種以上のジイソシアネートが併用されてもよい。
【0062】
熱可塑性ポリウレタンの具体例としては、BASFジャパン社の商品名「エラストランET370」、「エラストランET870−11V」、「エラストラン1154D」、「エラストラン1175A10W」、「エラストランC60A10WN」、「エラストランC70A10WN」、「エラストランRVP2002」、「エラストランXNY80A」、「エラストランXNY85A」、「エラストランXNY90A」、「エラストランXNY97A」、「エラストランXNY585」及び「エラストランXKP016N」;並びに大日精化工業社の商品名「レザミンP4585LS」及び「レザミンPS62490」が挙げられる。
【0063】
熱可塑性ポリウレタンとイソシアネート化合物とを含む組成物から、カバー8が成形されてもよい。カバー8の成形時又は成形後に、このイソシアネート化合物によってポリウレタンが架橋される。
【0064】
カバー8には、必要に応じ、二酸化チタンのような着色剤、硫酸バリウムのような充填剤、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光剤、蛍光増白剤等が、適量配合される。比重調整の目的で、カバー8にタングステン、モリブデン等の高比重金属の粉末が配合されてもよい。
【0065】
カバー8の硬度Hcは、30以上が好ましい。このカバー8は、ドライバーで打撃されたときのスピンを抑制する。この観点から、硬度Hcは32以上がより好ましく、38以上が特に好ましい。ショートアイアンで打撃されたときのコントロール性能の観点から、硬度Hcは60以下が好ましく、57以下がより好ましく、54以下が特に好ましい。カバー8の硬度Hcは、中間層6の硬度Hmと同様の方法で測定される。
【0066】
コントロール性能の観点から、カバー8の厚みTcは0.1mm以上が好ましく、0.2mm以上がより好ましく、0.3mm以上が特に好ましい。飛行性能の観点から、厚みTcは1.2mm以下が好ましく、1.0mm以下がより好ましく、0.8mm以下が特に好ましい。
【0067】
カバー8の形成には、射出成形法、圧縮成形法、注型等の既知の手法が採用されうる。ゴルフボール2が、中間層6とカバー8との間に補強層を備えてもよい。
【0068】
図2及び3に示されるように、ディンプル10の輪郭は円である。このゴルフボール2は、直径が4.50mmであるディンプルAと、直径が4.40mmであるディンプルBと、直径が4.30mmであるディンプルCと、直径が4.10mmであるディンプルDと、直径が3.60mmであるディンプルEとを備えている。ディンプル10の種類数は、5である。
【0069】
ディンプルAの数は108個であり、ディンプルBの数は78個であり、ディンプルCの数は20個であり、ディンプルDの数は100個であり、ディンプルEの数は18個である。ディンプル10の総数TNは、324個である。
【0070】
図4には、ディンプル10の中心及びゴルフボール2の中心を通過する平面に沿った断面が示されている。
図4における上下方向は、ディンプル10の深さ方向である。
図4において二点鎖線14で示されているのは、仮想球である。仮想球14の表面は、ディンプル10が存在しないと仮定されたときのゴルフボール2の表面である。ディンプル10は、仮想球14の表面から凹陥している。ランド12は、仮想球14の表面と一致している。本実施形態では、ディンプル10の断面形状は、実質的には円弧である。
【0071】
図4において両矢印Dmで示されているのは、ディンプル10の直径である。この直径Dmは、ディンプル10の両側に共通の接線Tgが画かれたときの、一方の接点Edと他方の接点Edとの距離である。接点Edは、ディンプル10のエッジでもある。エッジEdは、ディンプル10の輪郭を画定する。
図4において両矢印Dpで示されているのは、ディンプル10の深さである。この深さDpは、ディンプル10の最深部と接線Tgとの距離である。
【0072】
図4において矢印CRで示されているのは、ディンプル10の曲率半径である。曲率半径CRは、下記数式(1)によって算出される。
CR = (Dp
2 + Dm
2 / 4) / (2 * Dp) (1)
その断面形状が円弧でないディンプル10の場合でも、上記数式(1)に基づいて、近似的に曲率半径CRが算出される。
【0073】
本実施形態では、ディンプルAの曲率半径CRは16.7mmであり、ディンプルBの曲率半径CRは16.7mmであり、ディンプルCの曲率半径CRは16.7mmであり、ディンプルDの曲率半径CRは16.7mmであり、ディンプルEの曲率半径CRは16.7mmである。換言すれば、全てのディンプル10において、曲率半径CRは実質的に同一である。ゴルフボール2の加工誤差並びに直径Dm及び深さDpの測定誤差により、個々のディンプル10の曲率半径CRが16.7mmから多少ずれることがある。このような状態が、本発明では、「実質的に同一」と称される。
【0074】
本発明者が得た知見によれば、全てのディンプル10において曲率半径CRが実質的に同一であるゴルフボール2では、乱流化の程度が大きい。このゴルフボール2は、飛行性能に優れる。曲率半径CRが統一される場合でも、各ディンプル種類の直径Dmは任意に決定されうる。従って、ディンプル10が密に配置されうる。統一された曲率半径CRと、密なディンプル10との相乗効果により、優れた飛行性能が達成される。
【0075】
ディンプル種類ごとに、曲率半径CRが異なってもよい。この場合でも、曲率半径CRのバラツキは、なるべく小さいことが好ましい。具体的には、全てのディンプル10の曲率半径CRの標準偏差σは、0.90mm以下が好ましい。標準偏差σが0.90mm以下であるゴルフボール2では、乱流化の程度が大きい。乱流化の観点から、標準偏差σは0.80mm以下が好ましく、0.70mm以下がより好ましく、0.60mm以下が特に好ましい。
【0076】
曲率半径CRのバラツキが小さいゴルフボール2が飛行性能に優れる理由は、詳細には不明である。剥離点の近傍においてバックスピンに起因して生じる現象が規則的であることが、乱流化を促進すると推測される。
【0077】
曲率半径CRの標準偏差σ及び平均曲率半径Avの決定のための第一の方法では、全てのディンプル10の直径Dmと深さDpとが測定される。上記数式(1)に基づき、全てのディンプル10の曲率半径CRが算出される。これらの曲率半径CRに基づき、標準偏差σ及び平均曲率半径Avが算出される。
【0078】
この第一の方法に代えて、便宜的に、第二の方法が用いられてもよい。第二の方法では、まず、下記数式(2)に基づいて、平均曲率半径Avが算出される。
Av = (Ca * 108 + Cb * 78 + Cc * 20 + Cd * 100 + Ce * 18) / 324 (2)
この数式(2)において、CaはディンプルAの曲率半径であり、CbはディンプルBの曲率半径であり、CcはディンプルCの曲率半径であり、CdはディンプルDの曲率半径であり、CeはディンプルEの曲率半径である。Caは、無作為にサンプリングされた複数個のディンプルAの直径Dm及び深さDpが測定されることで、上記数式(1)に基づいて算出される。Cbは、無作為にサンプリングされた複数個のディンプルBの直径Dm及び深さDpが測定されることで、上記数式(1)に基づいて算出される。Ccは、無作為にサンプリングされた複数個のディンプルCの直径Dm及び深さDpが測定されることで、上記数式(1)に基づいて算出される。Cdは無作為にサンプリングされた複数個のディンプルDの直径Dm及び深さDpが測定されることで、上記数式(1)に基づいて算出される。Ceは、無作為にサンプリングされた複数個のディンプルEの直径Dm及び深さDpが測定されることで、上記数式(1)に基づいて算出される。ディンプル種類ごとの好ましいサンプリング数は、4以上6以下である。
【0079】
この第二の方法では、下記数式(3)に基づいて、標準偏差σが算出される。
σ = (((Ca - Av)
2 * 108 + (Cb - Av)
2 * 78 + (Cc - Av)
2 *20 +
(Cd - Av)
2 * 100 + (Ce - Av)
2 * 18) / (324 - 1))
1/2 (3)
【0080】
本発明者の得た知見によれば、ゴルフボール2の直径に対する平均曲率半径Avの比率PCは、乱流化の程度に影響を与える。ゴルフボール2の飛行速度に応じて、適正な比率PCが存在する。飛行速度は、ヘッド速度に依存する。本発明者の得た知見によれば、比率PCが20%以上40%以下であるゴルフボール2は、ドライバー(W#1)のヘッド速度が45m/s以上55m/s以下であるプレーヤーに適している。このプレーヤーが、比率PCが20%以上40%以下であるゴルフボール2をドライバーで打撃したときに、乱流化の程度が大きい。このプレーヤーが、比率PCが20%以上40%以下であるゴルフボール2をドライバーで打撃したときに、大きな飛距離が得られる。飛距離の観点から、この比率PCは22.8%以上が特に好ましい。飛距離の観点から、この比率PCは39.1%以下がより好ましく、35%以下が特に好ましい。
【0081】
前述の通り、このゴルフボール2は、互いに直径が異なる5種類のディンプル10を備えている。ディンプル10が密に配置されうるとの観点から、ディンプル10の種類数は2以上が好ましく、4以上がより好ましく、5以上が特に好ましい。
【0082】
それぞれのディンプル10の直径Dmは、2.0mm以上6.0mm以下が好ましい。直径Dmが2.0mm以上であるディンプル10は、乱流化に寄与する。この観点から、直径Dmは2.4mm以上がより好ましく、2.8mm以上が特に好ましい。直径Dmが6.0mm以下であるゴルフボール2では、実質的に球であるという本来的特徴が損なわれない。この観点から、直径Dmは5.6mm以下がより好ましく、5.2mm以下が特に好ましい。
【0083】
ドライバーのヘッド速度が45m/s以上55m/s以下であるプレーヤーには、それぞれのディンプル10の直径Dmが3.0mm以上4.7mm以下であるゴルフボール2が適している。このプレーヤーが、直径Dmが3.0mm以上4.7mm以下であるゴルフボール2をドライバーで打撃したときに、乱流化の程度が大きい。このプレーヤーが、直径Dmが3.0mm以上4.7mm以下であるゴルフボール2をドライバーで打撃したときに、大きな飛距離が得られる。
【0084】
ディンプル10の平均直径は、3.7mm以上4.3mm以下が好ましい。平均直径がこの範囲内であるゴルフボール2は、ドライバーのヘッド速度が45m/s以上55m/s以下であるプレーヤーに適している。このプレーヤーが、平均直径が3.7mm以上4.3mm以下であるゴルフボール2をドライバーで打撃したときに、乱流化の程度が大きい。このプレーヤーが、平均直径が3.7mm以上4.3mm以下であるゴルフボール2をドライバーで打撃したときに、大きな飛距離が得られる。
【0085】
ディンプル10の面積sは、無限遠からゴルフボール2の中心が見られたときの、輪郭線に囲まれた領域の面積である。円形ディンプル10の場合、面積sは下記数式によって算出される。
s = (Dm / 2)
2 ・ π
図2及び3に示されたゴルフボール2では、ディンプルAの面積は15.90mm
2であり、ディンプルBの面積は15.21mm
2であり、ディンプルCの面積は14.52mm
2であり、ディンプルDの面積は13.20mm
2であり、ディンプルEの面積は10.18mm
2である。
【0086】
全てのディンプル10の面積sの合計の、仮想球14の表面積に対する比率は、占有率と称される。乱流化の観点から、占有率は75%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、81.8%以上が特に好ましい。占有率は、95%以下が好ましい。
図2及び3に示されたゴルフボール2では、ディンプル10の合計面積は4697.2mm
2である。このゴルフボール2の仮想球14の表面積は5741.5mm
2なので、占有率は81.8%である。
【0087】
本発明において「ディンプル10の容積」とは、ディンプル10の輪郭を含む平面とディンプル10の表面とに囲まれた部分の容積を意味する。ゴルフボール2のホップが抑制されるとの観点から、ディンプル10の総容積は260mm
3以上が好ましく、290mm
3以上がより好ましく、300mm
3以上が特に好ましい。ゴルフボール2のドロップが抑制されるとの観点から、総容積は390mm
3以下が好ましく、370mm
3以下が特に好ましい。
【0088】
ドライバーのヘッド速度が45m/s以上55m/s以下であるプレーヤーには、総容積が310mm
3以上360mm
3以下であるゴルフボール2が適している。このプレーヤーが、総容積が310mm
3以上360mm
3以下であるゴルフボール2をドライバーで打撃したときに、乱流化の程度が大きい。このプレーヤーが、総容積が310mm
3以上360mm
3以下であるゴルフボール2をドライバーで打撃したときに、大きな飛距離が得られる。
【0089】
乱流化に寄与しうるとの観点から、深さDpは0.05mm以上が好ましく、0.06mm以上がより好ましく、0.07mm以上が特に好ましい。ゴルフボール2のドロップが抑制されるとの観点から、深さDpは0.24mm以下が好ましく、0.21mm以下がより好ましく、0.19mm以下が特に好ましい。
【0090】
ドライバーのヘッド速度が45m/s以上55m/s以下であるプレーヤーには、ディンプル10の総数TNが290個以上480個以下であるゴルフボール2が適している。このプレーヤーが、総数TNが290個以上480個以下であるゴルフボール2をドライバーで打撃したときに、乱流化の程度が大きい。このプレーヤーが、総数TNが290個以上480個以下であるゴルフボール2をドライバーで打撃したときに、大きな飛距離が得られる。総数TNは、310個以上が特に好ましい。総数は、460個以下がより好ましく、440個以下が特に好ましい。
【0091】
好ましいディンプル10の断面形状は、内向きに凸な円弧である。但し、エッジEdの近傍において、外向きに凸な曲面をディンプル10が有してもよい。ディンプル10の表面積の90%以上のゾーンにおいて、断面形状が内向きに凸な円弧であることが好ましい。
【実施例】
【0092】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0093】
[実施例1]
[実施例1]
100質量部のハイシスポリブタジエン(JSR社の商品名「BR−730」)、39質量部のアクリル酸亜鉛、5質量部の酸化亜鉛、適量の硫酸バリウム、0.5質量部のジフェニルジスルフィド及び0.9質量部のジクミルパーオキサイド(日本油脂社)を混練し、ゴム組成物(a)を得た。このゴム組成物(a)を共に半球状キャビティを備えた上型及び下型からなる金型に投入し、170℃で18分間加熱して、直径が39.75mであるコアを得た。質量が45.6gであるゴルフボールが得られるよう、硫酸バリウムの量が調整された。
【0094】
50質量部のアイオノマー樹脂(前述の「ハイミラン1605」)、50質量部の他のアイオノマー樹脂(前述の「ハイミランAM7329」)、4質量部の二酸化チタン及び0.04質量部のウルトラマリンブルーを二軸混練押出機で混練し、樹脂組成物(c)を得た。この樹脂組成物(c)を射出成形法にてコアの周りに被覆し、中間層を形成した。この中間層の厚みは、1.0mmであった。
【0095】
二液硬化型エポキシ樹脂を基材ポリマーとする塗料組成物(神東塗料社の商品名「ポリン750LE)を調製した。この塗料組成物の主剤液は、30質量部のビスフェノールA型固形エポキシ樹脂と、70質量部の溶剤とからなる。この塗料組成物の硬化剤液は、40質量部の変性ポリアミドアミンと、55質量部の溶剤と、5質量部の酸化チタンとからなる。主剤液と硬化剤液との質量比は、1/1である。この塗料組成物を中間層の表面にスプレーガンで塗布し、23℃の雰囲気下で6時間保持して、補強層を得た。この補強層の厚みは、10μmであった。
【0096】
100質量部の熱可塑性ポリウレタンエラストマー(前述のエラストランXNY85A)及び4質量部の二酸化チタンを二軸押出機で混練し、樹脂組成物(e)を得た。この樹脂組成物(e)から、圧縮成形法にて、ハーフシェルを得た。このハーフシェル2枚で、コア、中間層及び補強層からなる球体を被覆した。このハーフシェル及び球体を、共に半球状キャビティを備え、キャビティ面に多数のピンプルを備えた上型及び下型からなるファイナル金型に投入し、圧縮成形法にてカバーを得た。カバーの厚みは、0.5mmであった。カバーには、ピンプルの形状が反転した形状のディンプルが多数形成された。このカバーの周りに二液硬化型ポリウレタンを基材とするクリアー塗料を塗装し、直径が42.75mmであり質量が約45.6である実施例1のゴルフボールを得た。このゴルフボールは、
図2及び3に示されたディンプルパターンを有する。ディンプルの仕様の詳細が、下記の表4に示されている。
【0097】
[実施例2から7及び比較例1から5]
ゴルフボールの構造及びディンプルの仕様を変更した他は実施例1と同様にして、実施例2から7及び比較例1から5のゴルフボールを得た。コアの仕様の詳細が、下記表1に示されている。中間層及びカバーの仕様の詳細が、下記表2に示されている。ディンプルの仕様の詳細が、下記の表4から6に示されている。
【0098】
【表1】
【0099】
【表2】
【0100】
【表3】
【0101】
【表4】
【0102】
【表5】
【0103】
【表6】
【0104】
[飛距離テスト]
ツルテンパー社のスイングマシンに、チタンヘッドを備えたドライバー(SRIスポーツ社の商品名「Z−TX」、シャフト硬度:X、ロフト角:8.5°)を装着した。ヘッド速度が50m/secである条件でゴルフボールを打撃して、発射地点から静止地点までの距離を測定した。テスト時は、ほぼ無風であった。10回の測定で得られたデータの平均値が、下記の表7及び8に示されている。
【0105】
【表7】
【0106】
【表8】
【0107】
表7及び8に示されるように、各実施例のゴルフボールは飛行性能に優れている。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。