【実施例1】
【0030】
(参考例の構成)
図2は、本発明の実施例1におけるダブルフォワード型DC/DCコンバータの基本回路を説明するための参考例の回路図である。
【0031】
この参考例のダブルフォワード型DC/DCコンバータは、入力電圧Vinを供給する直流電源Eに接続された第1のスイッチング素子(例えば、NMOS)31と、第2のスイッチング素子(例えば、NMOS)32と、第1のトランス41の第1の1次巻線41aと、第1のインダクタンス43と、が直列に接続された第1のスイッチング回路を有している。インダクタンス43は、NMOS31と1次巻線41aの巻き始め側との間に、直列に接続されている。更に、直流電源Eに接続された第3のスイッチング素子(例えば、NMOS)33と、第4のスイッチング素子(例えば、NMOS)34と、第2のトランス42の第2の1次巻線42aと、第2のインダクタンス44と、が直列に接続された第2のスイッチング回路を有している。インダクタンス44は、NMOS32と1次巻線42aの巻き始め側との間に、直列に接続されている。各トランス41,42において、各1次巻線41a,42aの巻数はN1、各2次巻線41b,42bの巻数はN2であり、各巻数比nはN1/N2となっている。
【0032】
NMOS31のドレイン及びソース間には、寄生ダイオード31aと寄生キャパシタンス31bとをそれぞれ有する。寄生ダイオード31aは、NMOS31のドレイン・ソースに対して逆方向に設けられている。同様に、各NMOS32,33,34のドレイン及びソース間には、寄生ダイオード32a,33a,34aと、寄生キャパシタンス32b,33b,34bとを、それぞれ有する。
【0033】
直流電源Eの−側電極と、インダクタンス43との間には、リセットダイオード35が逆方向に接続されている。直流電源Eの+側電極と、1次巻線41aの巻き終わり側との間には、リセットダイオード36が逆方向に接続されている。直流電源Eの−側電極と、インダクタンス44との間には、リセットダイオード37が逆方向に接続されている。更に、直流電源Eの+側電極と、1次巻線42aの巻き終わり側との間には、リセットダイオード38が逆方向に接続されている。
【0034】
インダクタンス43と、直流電源Eの+側電極との間には、第1のクランプダイオード45が順方向に接続されている。更に、インダクタンス44と、直流電源Eの+側電極との間には、第3のクランプダイオード47が順方向に接続されている。
【0035】
トランス41の第1の2次巻線41bにおける巻き始め側には、整流ダイオード51のアノードが接続され、更に、トランス42の第2の2次巻線42bにおける巻き始め側にも、整流ダイオード52のアノードが接続されている。整流ダイオード51のアノード及びカソードには、キャパシタンス53a及び抵抗53bが直列に接続されたサージ吸収用のスナバ回路が、並列に接続されている。整流ダイオード52のアノード及びカソードにも、キャパシタンス54a及び抵抗54bが直列に接続されたサージ吸収用のスナバ回路が、並列に接続されている。
【0036】
整流ダイオード51,52のカソードには、平滑用のインダクタンス57及び平滑用のキャパシタンス58が接続されている。キャパシタンス58の2つの電極には、負荷RLに直流電力を供給するための出力端子59−1,59−2が接続されている。これらの整流ダイオード51,52、インダクタンス57、及びキャパシタンス58により、整流回路が構成されている。整流ダイオード51のカソードと、2次巻線41bの巻き終わり側との間には、逆方向の還流ダイオード55と、キャパシタンス56とが、それぞれ並列に接続されている。
【0037】
図2の回路において、I31はNMOS31のドレイン・ソース間を流れるドレイン電流、I32はNMOS32のドレイン・ソース間を流れるドレイン電流、V43はインダクタンス43の電圧、V41はトランス41の電圧、I55は還流ダイオード55を流れる回生電流、V55は還流ダイオード55の電圧、Ioは出力端子59−1,59−2から出力される出力電流である。
【0038】
この参考例のダブルフォワード型DC/DCコンバータでは、従来の
図7のダブルフォワード型DC/DCコンバータに対し、トランス41,42の2次側における還流ダイオード55のリカバリー電流による損失等の影響を少なくするために、各トランス41,42の1次巻線41a,42a側に、各インダクタンス43,44がそれぞれ直列に挿入されると共に、各インダクタンス43,44と直流電源Eの+側電極との間にクランプダイオード45,47が接続され、更に、還流ダイオード55に対してキャパシタンス56が並列に接続されている。キャパシタンス56は、等価的に、トランス41,42の1次巻線41a,42a側に存在するように見える。
【0039】
なお、各整流ダイオード51,52に対して並列に接続された各キャパシタンス53a54a及び各抵抗53b,54bからなる各スナバ回路は、動作上問題が無ければ、設けなくても良い。
【0040】
(参考例の動作)
図3は、
図2のダブルフォワード型DC/DCコンバータにおける駆動方法と主な動作波形を示す図である。
図3の横軸は時刻t1〜t8,・・・、縦軸はそれぞれの電流値及び電圧値である。
【0041】
例えば、NMOS32とNMOS34とは、これらのゲートに印加される図示しないスイッチ切替信号により、オン(ON)幅固定の最大デューティ(Duty)で動作する。NMOS31とNMOS33とは、これらのゲートに印加されるパルス幅変調(以下「PWM」という。)された図示しないスイッチ切替信号により、PWM制御が行われる。
【0042】
図3の時刻t1において、NMOS31,32がターンオンすると、NMOS31を通してインダクタンス43に入力電圧Vinが印加され、NMOS31に流れるドレイン電流I31が徐々に大きくなる。ドレイン電流I31は、インダクタンス43を通して、トランス41の1次巻線41aに流れるので、トランス41の2次巻線41bに、巻き終わり側から巻き始め側の方向に誘導電流が流れる。この誘導電流は、整流ダイオード51を通して、インダクタンス57及びキャパシタンス58の方向へ流れる。そのため、トランス41の2次側の還流ダイオード55を流れる回生電流I55は、ドレイン電流I31とは逆に、徐々に減少する。
【0043】
時刻t2に達すると、回生電流I55が0Aになり、インダクタンス57に流れている電流は、ダイオード55から全てダイオード51に転流される。NMOS31を流れるドレイン電流I31は、インダクタンス57に流れている電流値を1次側に換算した値になる。時刻t2になると、トランス41の1次巻線41aには電圧が印加され、インダクタンス43とキャパシタンス56の共振作用により、NMOS31を流れるドレイン電流I31は更に上昇し、時刻t3で最大値に達する。ドレイン電流I31の最大値I31maxは、
I31max=(Io/n)+Vin/√(L43/C56/n
2)
但し、n=各トランス41,42の巻数比(N1/N2)
L43;インダクタンス43の値
C56;キャパシタンス56の値
となる。従って、高電圧出力時のようにトランス41,42の巻数比nが小さい時や、キャパシタンス56の値C56が大きい時に、無効電流が増えてDC/DC変換効率が低下するため、注意しなければならない。又、2次側の還流ダイオード55には、回生電流I55が緩やかに減少し、0Aになってから電圧V55も緩やかに印加されるため、リカバリー電流が発生し難くなる。
【0044】
時刻t3〜t4において、NMOS31を流れるドレイン電流I31波形の斜線部は、クランプダイオード45に流れる無効電流である。時刻t3で、トランス41の1次巻線41a電圧がダイオード45によって入力電圧Vinにクランプされるため、ダイオード45には、ドレイン電流I31波形の斜線部で示した無効電流が流れる。
図3では、時刻t4で、ダイオード45に流れる電流が0Aになっている。
【0045】
時刻t5において、先にNMOS31がターンオフし、インダクタンス43に蓄積された電流とトランス41の励磁電流は、NMOS32及びリセットダイオード35を通って回生される。
【0046】
時刻t6において、NMOS32がターンオフすると、トランス41の逆起電力が発生するので、NMOS31,32のZVS動作にとっては都合良く動作することになる。
【0047】
時刻t6〜t8において、NMOS31,32が共にオフ状態になるので、NMOS31,32がオン状態の間にトランス41に蓄積された励磁エネルギーが、リセットダイオード35,36により、直流電源E側へ回生される。
【0048】
時刻t8において、反対側のNMOS33,34がターンオンし、それ以降は、前記と同様の動作を繰り返すことになる。
【0049】
(参考例の効果)
本参考例のダブルフォワード型DC/DCコンバータによれば、還流ダイオード55のリカバリー電流による損失の影響を少なくすることができる。更に、NMOS31,32,33,34においてZVS動作が行われるので、NMOS31,32,33,34のスイッチング損失及びサージを低減できる。
【0050】
(実施例1の構成)
図1は、本発明の実施例1におけるダブルフォワード型DC/DCコンバータを示す回路図であり、参考例を示す
図2中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
【0051】
本実施例1のダブルフォワード型DC/DCコンバータでは、参考例のダブルフォワード型DC/DCコンバータにおけるインダクタンス43,44に代えて、第3のトランス63が設けられ、更に、第2のクランプダイオード46及び第4のクランプダイオード48が追加されている。
【0052】
即ち、本実施例1では、参考例のインダクタンス43,44に代えて、第3のトランス63を用いたトランス結合として励磁インダクタンス63cを利用している。第3のトランス63は、巻数N1の第3の1次巻線63aと、巻数N2の第3の2次巻線63bとを有している。1次巻線63aには、これと並列に励磁インダクタンス63cが存在している。1次巻線63aは、NMOS31と、トランス41の1次巻線41aにおける巻き始め側と、の間に直列に接続され、その1次巻線63aの巻き始め側が、NMOS31に接続され、その1次巻線63bの巻き終わり側が、1次巻線41aの巻き始め側に接続されている。各トランス41,42の1次巻線41a,42a側には、これと並列に各励磁インダクタンス41c,42cがそれぞれ存在している。
【0053】
更に、第2、第4のクランプダイオード46,48が追加されている。クランプダイオード46は、直列接続されたトランス41の1次巻線41a及びNMOS32に対して,並列に接続されている。クランプダイオード48は、直列接続されたトランス42の1次巻線42a及びNMOS34に対して、並列に接続されている。このようなクランプダイオード46,48を追加することで、NMOS31,33のターンオン時には、ZVS動作を行っている。その他の構成は、参考例の回路と同様である。
【0054】
(実施例1の動作)
図4は、
図1のダブルフォワード型DC/DCコンバータにおける定格出力時の主な動作波形を示す図である。
図4の横軸は時刻t0〜t17,・・・、縦軸は電流値及び電圧値である。
【0055】
図4において、Vds31はNMOS31のドレイン・ソース間電圧、Id31はNMOS31を流れるドレイン電流、Vds32はNMOS32のドレイン・ソース間電圧、Id32はNMOS32を流れるドレイン電流、Vds33はNMOS33のドレイン・ソース間電圧、Id33はNMOS33のドレイン電流、V63cは励磁インダクタンス63cの電圧、I41cは励磁インダクタンス41を流れる電流、I46はクランプダイオード46を流れる電流、I35はリセットダイオード35を流れる電流、I36はリセットダイオード36を流れる電流、I51は整流ダイオード51を流れる電流、I55は還流ダイオード55を流れる回生電流、Vds34はNMOS34のドレイン・ソース間電圧である。
【0056】
更に、Id34はNMOS34のドレイン電流、V41cは励磁インダクタンス41の電圧、I42cは励磁インダクタンス42を流れる電流、V42cは励磁インダクタンス42の電圧、I45はクランプダイオード45を流れる電流、I47はクランプダイオード47を流れる電流、I38はリセットダイオード38を流れる電流、I37はリセットダイオード37を流れる電流、V51は整流ダイオード51の電圧、V55は還流ダイオード55の電圧、I55は還流ダイオード55を流れる回生電流である。
【0057】
この
図4の動作波形図から明らかなように、半周期で9個(1周期18個)の動作モード(1)〜(9)が存在することが分かる。以下、各動作モード(1)〜(9)の動作を説明する。
【0058】
(1) 動作モード1(時刻t0〜t1の期間)
図5−1は、
図4の動作モード1の動作を示す
図1の回路図であり、電流経路が太い実線で示されている。
【0059】
図4の時刻t0において、NMOS31,32のゲートにオン信号(=論理“H”のスイッチ切替信号)が入力されると、NMOS31,32がターンオンする。NMOS31は、前の状態でのトランス63(入力電圧Vinが逆起電力となって発生している)の作用により、ZVS動作をしているため、トランス63の1次巻線63a→NMOS31の寄生ダイオード31a→直流電源E→クランプダイオード46→トランス63の1次巻線63a、という矢印方向の経路で、NMOS31の寄生ダイオード31aに電流が流れる。一方、トランス63の作用により、このトランス63の2次巻線63b→トランス42の励磁インダクタンス42c→リセットダイオード38→直流電源E→リセットダイオード37→トランス63の2次巻線63b、という矢印方向の経路で、電流が流れる。NMOS32は、寄生キャパシタンス32bの電荷が残っている状態からターンオンされるため、NMOS32には、寄生キャパシタンス32bの放電電流(ドレイン電流Id32)が矢印方向に流れる。トランス41,42の2次側は、インダクタンス57に蓄積された励磁エネルギーが矢印方向に放出され、出力端子59−1,59−2及び負荷RLと還流ダイオード55を通して回生電流I55が流れる。
【0060】
(2) 動作モード2(時刻t1〜t2の期間)
図5−2は、
図4の動作モード2の動作を示す
図1の回路図であり、電流経路が太い実線で示されている。
【0061】
時刻t1において、直流電源E→NMOS31→トランス63の1次巻線63a及び励磁インダクタンス63c→トランス41の励磁インダクタンス41c→NMOS32→直流電源E、という矢印方向の経路で、トランス63の励磁インダクタンス63cに入力電圧Vinが印加される。そのため、NMOS31,32のドレイン電流Id31,Id32は、
Vin(t2−t1)/L63c
但し、Vin(t2−t1);時刻t1〜t2間の入力電圧
L63c;励磁インダクタンス63cの値
の関係で上昇し、時刻t2になると、2次側のインダクタンス57に流れている出力電流Ioの1次側換算値に達する。従って、トランス41の1次巻線41aには、トランス63の励磁インダクタンス63cと同等の電流が流れ(励磁インダクタンス41cの励磁電流I41cは一定のまま)、2次巻線41bに、巻数比n(=N1/N2)に対応した矢印方向の誘導電流が流れる。この誘導電流により、整流ダイオード51を流れる電流I51が上昇し、還流ダイオード55を流れる回生電流I55が減少する。インダクタンス57を流れる電流I57(=出力電流Io)は、
I51+I55=I57(=Io)
となり、時刻t2で、電流I51=Ioになる。
【0062】
一方、トランス42における励磁インダクタンス42cの励磁電流は、励磁インダクタンス42c→リセットダイオード38→直流電源E→リセットダイオード37→トランス63の2次巻線63b→励磁インダクタンス42c、という矢印方向の経路で、回生されている(トランス42のリセット動作)。
【0063】
(3) 動作モード3(時刻t2〜t3の期間)
図5−3は、
図4の動作モード3の動作を示す
図1の回路図であり、電流経路が太い実線で示されている。
【0064】
時刻t2において、直流電源E→NMOS31→トランス63の1次巻線63a及び励磁インダクタンス63c→トランス41の励磁インダクタンス41c→NMOS32→直流電源E、という矢印方向の経路で流れるNMOS31のドレイン電流Id31が、2次側のインダクタンス57に流れている出力電流Ioの1次側に換算した値に達すると、励磁インダクタンス63cと2次側のキャパシタンス56との共振作用により、そのキャパシタンス56に共振電流が流れる。そのため、キャパシタンス56の電圧も上昇し、時刻t3で、最大値(Vin・N2/N1)に達する。この時、トランス41の1次巻線41aの両電極間電圧は入力電圧Vinに達する。従って、キャパシタンス56及び巻数比N2/N1によっては、NMOS31,32に、負荷電流以上の大きなドレイン電流Id31(t3)(=Id32(t3))が流れる。この時のドレイン電流Id31(t3)は、
Id31(t3)
=Id31(t2)+Vin/√{L63c/N2(C56+C54a)}
但し、Id31(t3);時刻t3の時のNMOS31のドレイン電流
Id31(t2);時刻t2の時のNMOS31のドレイン電流
L63c;励磁インダクタンス63cの値
C56;キャパシタンス56の値
C54a;キャパシタンス54aの値
で求められる。そのため、高電圧出力(巻数比N2/N1>1)やキャパシタンス56が大きい時には、NMOS31,32の破壊のおそれがあるので、設計時に注意を要する。
【0065】
一方、トランス42の励磁電流は、2次巻線42b→還流ダイオード55→キャパシタンス54a及び抵抗54bからなるスナバ回路、という矢印方向の経路で流れる。
【0066】
(3) 動作モード4(時刻t3〜t4の期間)
図5−4は、
図4の動作モード4の動作を示す
図1の回路図であり、電流経路が太い実線で示されている。
【0067】
時刻t3において、キャパシタンス56に流れる電流が最大値に達すると、キャパシタンス56の電圧も更に上昇しようとするが、直流電源E→NMOS31→トランス63の励磁インダクタンス63c→トランス41の励磁インダクタンス41c→NMOS32→直流電源E、といった矢印方向の経路で流れる電流により、トランス41の1次巻線電圧は、クランプダイオード45によって入力電圧Vinにクランプされる。そのため、クランプダイオード45→NMOS31→トランス63の励磁インダクタンス63c→クランプダイオード45、といった矢印方向の経路で、クランプダイオード45に電流が流れ、NMOS31のドレイン電流Id31が負荷電流よりも大きくなる。そのドレイン電流Id31の値は、キャパシタンス56、励磁インダクタンス63c、巻数比N1/N2、及び入力電圧Vinによって決まる。
【0068】
トランス41の2次巻線41bの誘導電流は、整流ダイオード51→インダクタンス57及びキャパシタンス58→出力端子59−1,59−2及び負荷RL→2次巻線41b、といった矢印方向の経路で流れるので、還流ダイオード55の電圧がトランス41の2次巻線電圧にクランプされる。すると、トランス42の励磁電流は、再び、トランス42の1次巻線42a→リセットダイオード38→直流電源E→クランプダイオード48→1次巻線42a、という矢印方向の経路で、直流電源Eへ回生される。
【0069】
(4) 動作モード5(時刻t4〜t5の期間)
図5−5は、
図4の動作モード5の動作を示す
図1の回路図であり、電流経路が太い実線で示されている。
【0070】
時刻t4〜t5の期間では、NMOS31,32の回路側において、直流電源E→NMOS31→トランス63の励磁インダクタンス63c→トランス41の励磁インダクタンス42c→NMOS32→直流電源E、といった矢印方向の経路で電流が流れる。そのため、トランス41の2次巻線41bの誘導電流が、整流ダイオード51→インダクタンス57及びキャパシタンス58→出力端子59−1,59−2、といった矢印方向の経路で流れるので、負荷RLに直流電力を供給し続ける。
【0071】
一方、NMOS33,34の寄生キャパシタンス33b,34bに蓄積された電荷が、寄生キャパシタンス34b→トランス42の励磁インダクタンス42c→トランス63の2次巻線63b→寄生キャパシタンス33b→直流電源E、といった矢印方向の経路で放電される。これも共振作用であり、共振周波数fr2は、
fr2=1/2π√{(L42c+L63b)2Coss}
但し、L42c;トランス42の励磁インダクタンス42cの値
L63b;トランス63の2次巻線63bのインダクタンス値
Coss;各寄生キャパシタンス33b,34bの値
で求められる。
【0072】
(6) 動作モード6(時刻t5〜t6の期間)
図5−6は、
図4の動作モード6の動作を示す
図1の回路図であり、電流経路が太い実線で示されている。
【0073】
時刻t5において、NMOS31がターンオフすると、直流電源E→NMOS31の寄生キャパシタンス31b→トランス63の励磁インダクタンス63c→トランス41の励磁インダクタンス41c→NMOS32→直流電源E、という矢印方向の経路で電流I31が流れ、寄生キャパシタンス31bは、その電流I31によって定電流充電される。そのため、NMOS31のドレイン・ソース間電圧Vds31は、直線的に上昇し、時刻t6で、入力電圧Vinに達する。
【0074】
NMOS31がオフした瞬間、トランス63の励磁インダクタンス63cに逆起電力が発生し、トランス41の励磁インダクタンス41cの電圧V41cが、時刻t6で、0Vになる。そのため、還流ダイオード55の印加電圧V55も0Vに達する。この期間も、2次側には、トランス41の2次巻線41b→整流ダイオード51→インダクタンス57及びキャパシタンス58→出力端子59−1,59−2、という矢印方向の経路で、負荷RLに直流電力を供給し続ける。
【0075】
一方、NMOS33,34の回路側は、動作モード5と同様に、寄生キャパシタンス34b,33bが放電し続けている。寄生キャパシタンス34bの放電電流は、トランス42の励磁インダクタンス42c→トランス63の2次巻線63b→NMOS33の寄生ダイオード33a→直流電源E→寄生キャパシタンス34b、という矢印方向の経路で流れる。更に、寄生キャパシタンス33bの放電電流は、直流電源E→NMOS34の寄生ダイオード34a→トランス42の励磁インダクタンス42c→トランス63の2次巻線63b→寄生キャパシタンス33b、という矢印方向の経路で流れる。
【0076】
(7) 動作モード7(時刻t6〜t7の期間)
図5−7は、
図4の動作モード7の動作を示す
図1の回路図であり、電流経路が太い実線で示されている。
【0077】
時刻t6において、NMOS31のドレイン・ソース間電圧Vds31が入力電圧Vinに達すると、トランス63の励磁インダクタンス63c及びトランス41の励磁インダクタンス41cに蓄積された電荷が、励磁インダクタンス63c→励磁インダクタンス41c→NMOS32→リセットダイオード35→励磁インダクタンス63c、という矢印方向の経路で放電する。
【0078】
2次側の還流ダイオード55にも、矢印方向に、インダクタンス57の回生電流Ioの一部が流れる。トランス41の励磁インダクタンス41cには電圧V41cが発生しておらず、この期間は、励磁インダクタンス63cの回生電流が負荷RL側に直流電力を供給していない。
【0079】
一方、NMOS33,34の回路側は、動作モード5,6と同様に、寄生キャパシタンス34b,33bが放電し続けている。寄生キャパシタンス34bの放電電流は、トランス42の励磁インダクタンス42c→トランス63の2次巻線63b→NMOS33の寄生ダイオード33a→直流電源E→寄生キャパシタンス34b、という矢印方向の経路で流れる。更に、寄生キャパシタンス33bの放電電流は、直流電源E→NMOS34の寄生ダイオード34a→トランス42の励磁インダクタンス42c→トランス63の2次巻線63b→寄生キャパシタンス33b、という矢印方向の経路で流れる。
【0080】
(8) 動作モード8(時刻t7〜t8の期間)
図5−8は、
図4の動作モード8の動作を示す
図1の回路図であり、電流経路が太い実線で示されている。
【0081】
時刻t7において、NMOS32がターンオフすると、トランス63の励磁インダクタンス63cに逆起電力(Vin)が発生し、励磁インダクタンス63c→トランス41の励磁インダクタンス41c→NMOS32の寄生キャパシタンス32b→リセットダイオード35、という矢印方向の経路で電流I32が流れ、寄生キャパシタンス32bは、その電流I32によって充電される。そのため、NMOS32のドレイン・ソース間電圧Vds32は、直線的に上昇し、時刻t8で、入力電圧Vinに達する。
図4では、NMOS31がターンオフした時より、NNOS32がターンオフした時の時間(ドレイン・ソース間電圧Vds32の入力電圧Vinに達する時間)が短い波形で示されているが、実際は、(時刻t7の電流I32<時刻t5の電流I31)のため、NMOS32のドレイン・ソース間電圧Vds32の方が、単位時間当たりの電圧の立ち上がり(dV/dt)が緩やかになり、立ち上がり時間は長い。
【0082】
又、トランス63の励磁インダクタンス63cは、NMOS32がターンオフすると、逆起電力(Vin)を発生し、2次巻線63bにも入力電圧Vinに向かって電圧が発生するため、2次巻線63b→NMOS33の寄生キャパシタンス33b→直流電源E→NMOS34の寄生キャパシタンス34b→トランス42の励磁インダクタンス42b、という矢印方向の経路で電流が流れるため、NMOS32はZVS動作を行う。
【0083】
一方、トランス41の励磁インダクタンス41cに電流I32が流れると、2次巻線41bに誘導電流が流れ、整流ダイオード51→インダクタンス57及びキャパシタンス58→出力端子59−1,59−2、という矢印方向の経路で、直流電力が負荷RLに供給される。この際、トランス42の励磁インダクタンス42cを流れる励磁電流により、2次巻線42b→還流ダイオード55→キャパシタンス54a及び抵抗54bからなるスナバ回路、という経路で電流が流れる。
【0084】
(9) 動作モード9(時刻t8〜t9の期間)
図5−9は、
図4の動作モード9の動作を示す
図1の回路図であり、電流経路が太い実線で示されている。
【0085】
時刻t8において、NMOS32のドレイン・ソース間電圧Vds32が入力電圧Vinに達するため、トランス63の励磁インダクタンス63c、及びトランス41の励磁インダクタンス41cにおける励磁電流は、リセットダイオード36→直流電力E→リセットダイオード35→励磁インダクタンス63c、という矢印方向の経路で放電される。
【0086】
トランス63の励磁インダクタンス63cには、逆起電力(Vin)が発生しているが、トランス41は短絡状態である。又、励磁インダクタンス63cの逆起電力の作用により、2次巻線63bにおいて直流電源E方向に起電力が発生し、NMOS33の寄生キャパシタンス33b→直流電力E→NMOS34の寄生ダイオード34a→トランス42の励磁インダクタンス42c→2次巻線63b、という矢印方向の経路で、NMOS33の寄生キャパシタンス33bの電荷が放電される。その後(時刻t8以降)、2次巻線63bに発生した起電力は、NMOS33の寄生ダイオード33aを通して、直流電源Eに戻される。
【0087】
一方、励磁インダクタンス41cの励磁電流により、2次巻線41bに誘導電流が流れ、整流ダイオード51→インダクタンス57及びキャパシタンス58→出力端子59−1,59−2、という矢印方向の経路で、直流電力が負荷RLに供給される。この際、トランス42の励磁インダクタンス42cを流れる励磁電流により、2次巻線42b→還流ダイオード55→キャパシタンス54a及び抵抗54bからなるスナバ回路、という経路で電流が流れる。
【0088】
以上が半周期の動作モード1〜9であり、残り半周期の時刻t9〜t17の期間の動作モードが、同じように繰り返される。
【0089】
(実施例1の効果)
本実施例1によれば、
図2の参考例に比べて、次の(a)〜(g)のような効果がある。
【0090】
(a) NMOS31,32,33,34は、ターンオン時にZCS動作を行うので、オン時のスイッチング損失が少ない。更に、クランプダイオード46,48を追加しているので、NMOS31,33のターンオン時にはZVS動作も行える。但し、NMOS32,34は、最大オン幅を固定して動作する。このように、NMOS31,32,33,34は、トランス63の作用により、ZCS動作の他に、ZVS動作も行うため、スイッチング損失は少なく、高効率になる。
【0091】
(b) トランス41,42の1次側にトランス63が挿入されているので、NMOS31,32,33,34がターンオンしても、瞬時的には入力電圧Vinは、トランス63に印加され、トランス41,42の1次巻線41a,42aには電圧が発生しない。そのため、還流ダイオード55にも電圧は印加されない。又、トランス63に流れる電流(=トランス41,42の1次巻線電流)は、0Aから徐々に増加して、最終的には、(N2/N1)×Io(但し、N2/N1;トランス41,42の1/巻数比、Io;インダクタンス57に流れる出力電流)に達する。つまり、還流ダイオード55に流れている回生電流I55は、出力電流Ioから0Aに向かって徐々に減少し、トランス41,42の両端に電圧が発生する。この電圧は、トランス63の励磁インダクタンス63cと、キャパシタンス56の値C56がトランス41,42の1次側に変換された値(N2/N1)
2・C56を有するキャパシタンスと、で共振を起こすため、単位時間当たりの電圧の変化(dV/dt)が緩やかになり、還流ダイオード55のリカバリーが発生し難くなる。
【0092】
これにより、還流ダイオード55のリカバリーの影響を殆ど無くすことが可能になり、還流ダイオード55のスイッチング損失が殆ど無い。従って、高電圧出力でも高価なSiCSBDを使う必要もなく、一般の低価格な高速ダイオードを使用できる。
【0093】
(c) 励磁インダクタンス63cの大きさとキャパシタンス56の大きさは、大きくすればするほど、還流ダイオード55の逆方向回復時間(trr)の影響が少なくなる。しかし、励磁インダクタンス63cが大きくなると実効Dutyが下がるため、トランス63の1次巻線63aと2次巻線63bの巻数比N1/N2を変える必要が生じる。又、キャパシタンス56を大きくすると、このキャパシタンス56に流れ込む共振電流が増え、結果的にはクランプダイオード45及びNMOS31に流れる無効電流が増え、効率が逆に低下するため、還流ダイオード55の逆方向回復時間(trr)や効率を見極めながら決める必要がある。
【0094】
(d) クランプダイオード46,48が追加されているので、部品点数は少し増えるが、その効果は大きい。
【0095】
(e) NMOS31,32,33,34のターンオフ時において、ZVS動作が行える。
【0096】
(f)
図2の参考例の2個のインダクタンス43,44に代えて、1個のトランス63を設けているので、DC/DCコンバータ全体のサイズを小型化でき、しかも、NMOS31,32,33,34のオフ時においても、キャパシタンス56との共振が可能になり、効率が向上する。
【0097】
(g) NMOS32,34は、最大オン幅を固定して動作させているので、NMOS31,32,33,34に対するオン/オフ制御が容易になる。なお、NMOS32,34のオン幅を可変して動作させるようにしても良い。