特許第5658090号(P5658090)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5658090
(24)【登録日】2014年12月5日
(45)【発行日】2015年1月21日
(54)【発明の名称】ラックシステム
(51)【国際特許分類】
   H05K 7/18 20060101AFI20141225BHJP
【FI】
   H05K7/18 D
   H05K7/18 A
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-116195(P2011-116195)
(22)【出願日】2011年5月24日
(65)【公開番号】特開2012-244127(P2012-244127A)
(43)【公開日】2012年12月10日
【審査請求日】2014年3月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(72)【発明者】
【氏名】吉川 和良
【審査官】 中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−260148(JP,A)
【文献】 特開2006−029039(JP,A)
【文献】 実公昭25−002043(JP,Y1)
【文献】 特開2010−170522(JP,A)
【文献】 特開2004−296822(JP,A)
【文献】 特開2004−118706(JP,A)
【文献】 特開昭51−61701(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/18
H05K 7/20
G06F 1/00
E04B 1/00 − 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器を収納するラックを複数一列に列設したラック列を、通路を挟んで対向するよう配置して一対のラック列を形成し、対向するラックの上部間に遮蔽板を掛け渡して通路上部を閉塞し、ラックの通路側空間とラックの上方空間とを分離したラックシステムであって、
前記通路出入口の左右となる前記ラック列端部の全4箇所に、ラックと略同一の高さを有する支柱を立設し、ラック列の両端に配置された支柱の上部間にワイヤーを掛け渡し、前記通路に沿って両側に配設された前記ワイヤーの間に遮蔽板を掛け渡して通路を覆う一方、
前記ラック列を構成する個々のラックは、床下に配設された架台に載置して配設され、前記支柱の下部を前記架台に連結して固定したことを特徴とするラックシステム。
【請求項2】
前記支柱には扉が蝶着され、通路の出入口となる両端は前記扉により閉鎖可能であることを特徴とする請求項1記載のラックシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信機器や電子機器等の機器、特に発熱を伴う機器を収納したラックに関し、詳しくは通路を挟んで両側にラックを列設し、ラック内の機器を冷却するために外部から導入する冷気とラックから放出される機器の排熱とが混ざらないようラック設置空間をホットアイルとコールドアイルとに区分けできるラックシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
通信機器や電子機器等の機器は稼働時に発熱を伴う。そのため、これらの機器を搭載したラックは、冷却ファンを内蔵して暖気を上方等の外部へ放出すると同時に床下や側面等から冷気を導入して冷却する方式が広く採用されている。
このような冷却方式の場合、ラックから放出された暖気が回り込んでラック内に導入される冷気と混ざってしまう事態を防止するために、ラックから放出された暖気のみの空間(ホットアイル)と、ラックに導入される冷気の空間(コールドアイル)とを区分けしたシステムが提案されている。
【0003】
例えば特許文献1では、通路を挟んだ両側にラック列を平行に配置し、通路を挟んだ対向するラック間に遮蔽板を屋根状に掛け渡して通路上部を覆い、床下等から通路に冷気を充満させて、通路に面するラック前面から冷気をラック内に導入し、ラックの上部や背面から機器により暖められた暖気を放出させることで、遮蔽板によりコールドアイルとホットアイルとを分離した構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4209351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の構成は、遮蔽板を固定するために各ラックの上部に固定部材を取り付けなければならないため面倒であった。また、通路の出入口となる両端は開放されたままであるため、コールドアイルとホットアイルとを更に確実に分離するために扉等を設ける場合は、通路端部に別途枠部材が必要であり追加部材が必要であった。
【0006】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、個々のラックに遮蔽板を取り付けるための固定部材を設ける必要がなく、また追加部材を必要とせずに出入口に扉等を設置できるラックシステムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明は、機器を収納するラックを複数一列に列設したラック列を、通路を挟んで対向するよう配置して一対のラック列を形成し、対向するラックの上部間に遮蔽板を掛け渡して通路上部を閉塞し、ラックの通路側空間とラックの上方空間とを分離したラックシステムであって、前記通路出入口の左右となる前記ラック列端部の全4箇所に、ラックと略同一の高さを有する支柱を立設し、ラック列の両端に配置された支柱の上部間にワイヤーを掛け渡し、前記通路に沿って両側に配設された前記ワイヤーの間に遮蔽板を掛け渡して通路を覆う一方、前記ラック列を構成する個々のラックは、床下に配設された架台に載置して配設され、前記支柱の下部を前記架台に連結して固定したことを特徴とする。
この構成によれば、遮蔽板は支柱間に掛け渡されたワイヤーにより支持されるため、個々のラックに遮蔽板の固定部材を設ける必要がなく、遮蔽板設置作業が容易である。また、支柱は下部がラック下の架台に連結されて固定されるので、ラック自体に連結する必要がなく取付作業が容易である。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の構成において、前記支柱には扉が蝶着され、通路の出入口となる両端は前記扉により閉鎖可能であることを特徴とする。
この構成によれば、支柱を利用して扉を設置でき、別途扉を設置するための枠部材が必要ない。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、遮蔽板は支柱間に掛け渡されたワイヤーにより支持されるため、個々のラックに遮蔽板の固定部材を設ける必要がなく、遮蔽板設置作業が容易である。また、支柱は下部がラック下の架台に連結されて固定されるので、ラック自体に連結する必要がなく取付作業が容易である。また、支柱を利用することで通路の両端を塞ぐ扉を設けることも容易に実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係るラックシステムの一例を示す斜視図である。
図2図1において遮蔽板の取付構造を示す説明図である。
図3】A部の説明図であり、(a)は拡大図を示し(b)は支柱を分離した状態を示している。
図4】ワイヤー端部の説明図であり、(a)は分解図、(b)は連結した状態を示している。
図5】遮蔽板の拡大図であり、(a)は斜視図、(b)は側面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明に係るラックシステムの一例を示す斜視図であり、通路Lを挟んだ両脇にラック列1を配置し、通路Lの上部となるラック列1の間を遮蔽板2で覆い、通路Lの出入口となるラック列1の端部には扉3が設けられている。
尚、図1では、説明のため通路L上部の一部を開放しているが、実際には通路Lの上部全体は遮蔽板2で覆われる。
【0012】
ラック列1は、複数のラック10,10,・・を一直線に配置して側面同士を連結して構成されている。全てのラック10は前面が通路側に向けられて配置され、前面及び背面には扉板10a,10bが設けられて開閉可能となっている。また、ラック列1の両端に配置されたラック10の側面は、側板10cにより閉塞され、隣接するラック10同士はネジ止め等で連結されている。
【0013】
図2は遮蔽板2の取付構造を示している。図2において、4はラック10の重量を支持するためにラック10毎にラック10下に設置される架台、5は遮蔽板2を支持するワイヤー、6はワイヤー5を架設する支柱であり、遮蔽板2はラック列1の両端に立設された支柱6,6の間に架設されたワイヤー5に掛け渡して取り付けられる。
【0014】
ここで、ラック10を設置する床について説明する。ラック10を設置する床は二重床で形成され、図2においてF1が下側の第1の床の位置、F2が上側の第2の床の位置を示している。こうして、架台4は第2の床と同一の高さで形成され、第1の床に設置される。そしてラック10は架台4上となる第2の床上に設置される。
尚、図1では第2の床上にラック10を配置した状態を示してており、このとき架台4は床下となるため外観上現れない。
【0015】
そして、床下空間となる第1の床と第2の床の間の空間は、各種ケーブルや通信線の引き回しや、ラック10内の機器を冷却のために別途設置されている空調機から送出される冷気の送風空間として使用される。
【0016】
支柱6は、列設した架台4,4,・・のうち通路Lの出入口に配置される列の両端の架台4,4に下端部が連結されて立設される。
図3(a)は図2のA部拡大図を示し、図3(b)は支柱6を取り付ける様子を示している。この図3に示すように、架台4はラック10と同一寸法の四角形枠体4aとその枠体4aの4隅に設けられた脚4bとを有し、脚4bは枠体が二重床と同一の面形成する高さで形成されている。そして、支柱6は、架台4の通路L側の脚4bにネジと図示しないナットによりネジ止めして連結されて立設される。
【0017】
こうして、支柱6が通路Lの出入口両側となるラック10の正面端部に設置され、ラック列1の両端に設置された支柱6,6の間にワイヤー5が架設される。ワイヤー5は、双方のラック列1,1に対して取り付けられ、通路L上に平行に設置され、このワイヤー5,5の間に遮蔽板2が取り付けられる。
【0018】
図4はワイヤー5の支柱6への取付構造を示し、図4(a)は分解図、図4(b)は連結状態の説明図である。この図4に示すように、ワイヤー5の端部にはボルト12を螺入するためのネジ孔13aを備えた連結具13が取り付けられている。この連結具13は筒状に形成され、ワイヤー5と同一軸上にネジ孔13aが設けられている。
一方、支柱6上部にはボルト12のネジ部を挿通してボルト頭部を保持する支持金具14が設けられている。支持金具14は略コ字状に形成され、中央平坦部にボルト12のネジ部を挿通する透孔14aを有し、折り曲げた両端部には支柱6に固定するためのネジ止片14bが設けられている。ワイヤー5はボルト12により支持金具14に連結された後、ボルト12の連結具13への螺入量でワイヤー5の張力が調整される。
尚、支柱6上端には支持金具14をネジ止めする図示しない連結片を備えており、ワイヤー5が取り付けられた支柱上端は合成樹脂製のキャップ15で覆われて保護される。
【0019】
図5は遮蔽板2の拡大図であり、(a)は斜視図、(b)は側面図を示している。遮蔽板2は、縁部を形成する鋼板製の四角形枠体2aと、この枠体2a内を閉塞する樹脂板2bとで形成され、軽量化が図られている。図5(b)に示すように、ワイヤー5に係合する端部はコ字状に折り曲げて内側に向けて開放形成された収容部2cを有し、内側斜め下方からワイヤー5を容易に着脱できるよう構成されている。
【0020】
尚、遮蔽板2の幅はラック10の幅に合わせて形成され、ラック10の連結数に合わせた枚数の遮蔽板2を設置することで通路上部は良好に閉塞される。また、扉3は通路Lの両側に設置された支柱6,6の双方に対して蝶着され、観音開きすることで通路Lの幅全体を開放可能としている。
【0021】
この結果、ラック10で両側が閉塞された通路Lの出入口及び天井が閉塞され、通路Lのみ空間が周囲の空間と分離される。そのため、床下空間を介して通路L上に冷気を導入し、通路Lに面したラック10の前面から冷気を吸引させ、ラック10背部や上部から搭載機器により暖められた暖気を放出するよう空気の流れを形成させた場合、冷気と暖気が混ざるのを防止できる。即ち、コールドアイルとホットアイルを明確に分離できる。
【0022】
このように、遮蔽板2は支柱6,6間に掛け渡されたワイヤー5により支持されるため、個々のラック10に遮蔽板2の固定部材を取り付ける必要がなく、遮蔽板設置作業が容易である。また、支柱6はラック10の架台4に連結され、ラック10自体には連結しないので取付作業が容易であるし、ワイヤー5の張力を受けても安定した状態を維持できる。
具体的に、架台4ではなくラック10自体に連結する場合は、ラック10の4隅に立設されているアングルフレーム等にネジ止めすることになるが、この場合はラック10内からネジ止めするのが好ましく、面倒な作業となる。また、ラック10の側板を介して連結する場合は更に面倒となる。その点、架台4へのネジ止めは、ネジ止め部が床下に隠蔽されるため、外側となる支柱6側からネジ止めしても安全上また外観上問題なく、作業がし易い。
また、支柱6を利用して扉3を設置できるので、別途扉3のための枠部材を必要としない。
【0023】
尚、上記実施形態では、支柱6の上部はワイヤー5を取り付けるだけで自由端としているが、通路Lの両側に配置された支柱6,6の上端間に梁部材を掛け渡しても良い。梁部材を掛け渡すことで扉3の周囲を更に堅牢な構造にできる。
また、通路Lの出入口を閉塞する手段としては扉3でなくても良く、単なる間仕切りとしてビニールシートのような可撓性を有するシートで閉塞しても良い。このように間仕切り部材を設けるだけでもホットアイルとコールドアイルを分離できる。
【符号の説明】
【0024】
1・・ラック列、2・・遮蔽板、3・・扉、4・・架台、5・・ワイヤー、6・・支柱、10・・ラック、L・・通路。
図1
図2
図3
図4
図5