特許第5658146号(P5658146)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5658146
(24)【登録日】2014年12月5日
(45)【発行日】2015年1月21日
(54)【発明の名称】血管内壁分析装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 10/00 20060101AFI20141225BHJP
   G01N 21/17 20060101ALI20141225BHJP
【FI】
   A61B10/00 E
   A61B10/00 K
   G01N21/17 610
【請求項の数】11
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2011-513375(P2011-513375)
(86)(22)【出願日】2010年5月13日
(86)【国際出願番号】JP2010058119
(87)【国際公開番号】WO2010131713
(87)【国際公開日】20101118
【審査請求日】2013年4月26日
(31)【優先権主張番号】特願2009-116794(P2009-116794)
(32)【優先日】2009年5月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100108257
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 伊知良
(72)【発明者】
【氏名】岡田 一範
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 寛
(72)【発明者】
【氏名】石井 暁
(72)【発明者】
【氏名】宗光 俊博
【審査官】 宮川 哲伸
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−531598(JP,A)
【文献】 特表2005−534415(JP,A)
【文献】 特表2007−503224(JP,A)
【文献】 特開2008−229156(JP,A)
【文献】 特表2005−534428(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 10/00
G01N 21/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管内の測定部位に対して、少なくとも、1957nm〜2713nmの測定波長範囲に含まれる光成分を照射する照射手段であって、前記血管内に挿入される光出射端と、前記光出射端を介して前記測定部位に照射されるべき光成分を供給する光源と、を含む照射手段と、
前記血管内に設けられる光入射端と、前記光入射端を介して取り込まれた前記測定部位からの光成分を検出する検出器と、を含む検出手段と、
前記検出手段により検出された光成分の強度情報に基づいて、前記測定部位の構成成分を分析する分析手段と、を備え、
前記検出手段は、波長1972、2055、2057、2141、2167、2172、2182、2212、2257、2259、2270、2274、2282、2289、2294、2309、2311、2324、2334、2345、2348、2360、2371、2375、2385、2388、2402、2416、2443、2468、2469、2488、2504、2510、2544、2565、2607、2628、2630、2656、2668、2678、及び、2697nmからなる波長群から選ばれた波長含む、3以上の波長をそれぞれ中心とした前後15nmの検出波長範囲に含まれる光成分を検出し、
前記分析手段は、前記検出波長範囲それぞれに含まれる光成分の強度情報を利用した前記測定部位の構成成分分析として、前記血管中の血液とは異なる物質の有無を分析する血管内壁分析装置。
【請求項2】
記照射手段の光源は、スーパーコンティニューム光源を含むことを特徴とする請求項1記載の血管内壁分析装置
【請求項3】
記照射手段の光源から前記検出手段の検出器までの光路上に配置された分光器であって、前記光源からの出力光のうち少なくとも前記検出波長範囲の光成分を分離するための分光器を、更に備えることを特徴とする請求項1又は2記載の血管内壁分析装置
【請求項4】
記検出手段は、波長1972、2057、2141、2167、2182、2212、2257、2274、2289、2311、2345、2388、2416、2469、2504、2544、2630nmからなる波長群から選ばれた波長を含む、3以上の波長をそれぞれ中心とした前後15nmの検出波長範囲に含まれる光成分を検出し、
前記分析手段は、前記測定部位の構成成分分析として、血管中の血栓及び血腫の有無を分析することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項記載の血管内壁分析装置
【請求項5】
記検出手段は、波長2055、2172、2259、2270、2282、2294、2309、2324、2334、2348、2360、2371、2375、2385、2402、2443、2468、2488、2150、2565、2607、2628、2656、2668、2678、2697nmからなる波長群から選ばれた波長を含む、3以上の波長をそれぞれ中心とした前後15nmの検出波長範囲に含まれる光成分を検出し、
前記分析手段は、前記測定部位の構成成分分析として、前記血管中のプラークの有無を分析することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項記載の血管内壁分析装置
【請求項6】
記分析手段は、前記測定部位の構成成分を特定するためのスペクトル形状パラメータとして、前記検出波長範囲それぞれにおける強度情報の、その中心波長における一次微分値、規格化一次微分値、二次微分値、及び規格化二次微分値の何れかを計算し、得られた計算結果に基づいて前記構成成分分析を行うことを特徴とする請求項1〜5の何れか一項記載の血管内壁分析装置
【請求項7】
記分析手段は、前記測定部位の構成成分を特定するためのスペクトル形状パラメータとして、前記検出波長範囲それぞれにおける強度情報の、その中心波長における二次微分値を計算し、得られた計算結果に基づいて前記構成成分分析を行うことを特徴とする請求項6記載の血管内壁分析装置
【請求項8】
記検出手段は、波長1972nmを含む、3以上の波長をそれぞれ中心とした前後15 nm の検出波長範囲に含まれる光成分を検出し、
前記分析手段は、前記測定部位の構成成分分析として、前記血管中の血栓の有無を分析することを特徴とする請求項4記載の血管内壁分析装置
【請求項9】
記検出手段は、波長2309、2628nmからなる波長群から選ばれた波長を含み、3以上の波長をそれぞれ中心とした前後15 nm の検出波長範囲に含まれる光成分を検出し、
前記分析手段は、前記測定部位の構成成分分析として、前記血管中の粥腫の有無を分析することを特徴とする請求項5記載の血管内壁分析装置
【請求項10】
記検出手段は、波長2371、2402nmからなる波長群から選ばれた波長を含み、3以上の波長をそれぞれ中心とした前後15nmの検出波長範囲に含まれる光成分を検出し、
前記分析手段は、前記測定部位の構成成分分析として、前記血管中の脂質コアの有無を分析することを特徴とする請求項5記載の血管内壁分析装置
【請求項11】
記分析手段による分析結果をリアルタイムで表示する表示手段を、更に備えることを特徴とする請求項1〜10の何れか一項記載の血管内壁分析装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管内における測定部位の構成成分の分析に好適な血管内壁分析装置、血管内壁分析方法等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
脳梗塞を誘発する重大な要因の一つとして、頚動脈プラークが知られている。頚動脈プラークは、血中コレステロールや中性脂肪等が原因となって頚動脈の内壁に形成される付着物である。そして、この付着物が頚動脈の内壁から剥がれて脳内血管の一部を塞いだ場合、脳梗塞等の重大な疾患が引き起こされる。そのため、血管の内壁の状態を早期に診断する方法として、体外からの超音波エコーを利用して診断する方法や、測定プローブを装着したカテーテルを血管内に挿入して診断する方法等が用いられる。
【0003】
上記プラークには、コレステロールからなる脂質コアや、白血球及びその死骸等から形成される粥腫など複数種類ある。そして、プラークの一種である粥腫が何らかの圧力等により破裂した場合や血管内壁から剥がれた場合に、高い確率で脳梗塞等の重大疾患が誘発されることが知られている。そこで、血管内壁の状態をより正確に診断するためには、プラークの種類を特定することが望まれており、この要望に対して、例えば特許文献1、2に記載されたようなプラーク特定方法が検討されている。例えば、特許文献1には、血管内に挿入した測定プローブによってプラークを連続して観測し、脈動による形状変化から求められるプラークの硬度から該プラークの構成成分を推測する方法が開示されている。また、特許文献2には、二種類以上の異なる性質の光成分を測定部位に対して照射し、測定部位からの反射・散乱光を受光して、それぞれの光プラークのファントムを作り、このファントムと超音波エコーによるプラークの測定結果とを比較することにより、プラークの構成を推測する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−329550号公報
【0005】
【特許文献2】特開2007−185242号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Chenan Xia, et al., "Mid-infrared supercontinuum generation to 4.5μm in ZBLAN fluoride fibers by nanosecond diode pumping", OPTICS LETTERS, Vol. 31, No. 17, pp.2553-2555, September 1, 2006.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明者らは上述のような従来のプラーク特定方法について検討した結果、以下のような課題を発見した。
【0008】
すなわち、上記特許文献1記載の特定方法では、被験者による個体差が大きい脈動によるプラークの形状変化に基づいてプラークの構成成分を推測する。そのため、上記特許文献1記載の特定方法は定量的な測定方法であるとは言えず、プラークの構成成分を正確に評価することが容易ではないと考えられる。また、上記特許文献2には、プラークファントムの具体的な形成方法について開示がなく、プラークの種類に対応したファントムを作成することは困難であると考えられる。そのため、上記特許文献2記載の特定方法によりプラーク等の血管内壁の付着物の種類を正確に特定することは難しいと考えられる。
【0009】
本発明は上述のような課題を解決するためになされたものであり、血管内壁の付着物の成分をより正確に分析するための構造を備えた血管内壁分析装置、血管内壁分析方法等を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る血管内壁分析装置は、上述の目的を達成するため、血管内における測定部位の構成成分分析へ使用され、具体的には、照射手段と、検出手段と、分析手段を備える。
【0011】
照射手段は、血管内の測定部位に対して、少なくとも、1957nm〜2713nmの測定波長範囲に含まれる光成分を照射する。また、照射手段は、血管内に挿入される光出射端と、光出射端を介して測定部位に照射されるべき光成分を供給する光源を含む。検出手段は、測定部位からの光成分を検出するため、血管内に設けられる光入射端と、光入射端を介して取り込まれた測定部位からの光成分を検出する検出器を含む。分析手段は、検出手段により検出された光成分の強度情報に基づいて、測定部位の構成成分を分析する。
【0012】
特に、本発明に係る血管内壁分析装置において、検出手段は、波長1972、2055、2057、2141、2167、2172、2182、2212、2257、2259、2270、2274、2282、2289、2294、2309、2311、2324、2334、2345、2348、2360、2371、2375、2385、2388、2402、2416、2443、2468、2469、2488、2504、2510、2544、2565、2607、2628、2630、2656、2668、2678、及び、2697nmからなる波長群から選ばれる1以上の波長をそれぞれ中心とした前後15nmの検出波長範囲に含まれる光成分を検出する。分析手段は、検出波長範囲に含まれる光成分の強度情報を利用した測定部位の構成成分分析として、血管中の血液とは異なる物質の有無を分析する。
【0013】
上述のような構造を有する当該血管内壁分析装置によれば、血管内に挿入された照射手段の光出射端から測定部位に対して波長1957nm〜2713nmの測定波長範囲に含まれる光成分が照射される一方、測定部位からの光成分が血管内に挿入された検出手段の光入射端を介して検出される。ここで、上述の波長群から選ばれる1以上の波長をそれぞれ中心とした前後15nmの検出波長範囲に含まれる測定部位からの光成分は、測定部位の構成成分によって異なる特徴を示す。このような構成成分ごとの異なる光学特性を利用することにより、分析手段が、上記検出波長範囲ごとの光成分を使用して血液とは異なる物質の有無を分析する。これにより、当該血管内壁分析装置は、プラーク等の血管中の血液とは異なる物質の有無の分析をより正確に行うことができる。
【0014】
また、本発明に係る血管内壁分析装置は、照射手段の光源として、スーパーコンティニューム光源を使用してもよい。当該血管内壁分析装置に対して、広帯域の光を大きな発熱を引き起こすことなく高い強度で出力することができるスーパーコンティニューム光源を使用することにより、血管内壁の構成成分分析をより高い精度に行うことができる。
【0015】
ここで、本発明に係る血管内壁分析装置は、照射手段の光源から検出手段の検出器までの光路上に配置された分光器を備えてもよい。この分光器は、光源からの出力光のうち少なくとも検出波長範囲の光成分を分離する。なお、分光器は、光源と光出射端との間の光路上に配置される構成では、照射手段の一部を構成する。また、測定部位と光検出器との間の光路上に配置される構成では、分光器は検出手段の一部を構成する。
【0016】
本発明の目的を達成するための一態様として、例えば、検出手段は、波長1972、2057、2141、2167、2182、2212、2257、2274、2289、2311、2345、2388、2416、2469、2504、2544、2630nmからなる波長群から選ばれる1以上の波長をそれぞれ中心とした前後15nmの検出波長範囲に含まれる光成分を検出する。この場合、分析手段は、測定部位の構成成分分析として、血管中の血栓及び血腫の有無を分析する。
【0017】
また、検出手段は、波長2055、2172、2259、2270、2282、2294、2309、2324、2334、2348、2360、2371、2375、2385、2402、2443、2468、2488、2150、2565、2607、2628、2656、2668、2678、2697nmからなる波長群から選ばれる1以上の波長をそれぞれ中心とした前後15nmの検出波長範囲に含まれる光成分を検出してもよい。この場合、分析手段は、測定部位の構成成分分析として、血管中のプラークの有無を分析する。
【0018】
上述のように、血管中の血液以外の物質のうち、血栓及び血腫と、プラークとは、それぞれ上記波長群から選ばれる1以上の波長をそれぞれ中心とした前後15nmの検出波長範囲に含まれる光成分が、測定部位の構成成分によって異なる特徴を示す。分析手段は、このような構成成分ごとに異なる光学特性を利用し、分析手段は、これらの検出波長範囲の光成分を使用することにより、血栓及び血腫やプラークの有無の分析をより正確に行うことができる。
【0019】
本発明の目的を達成するための他の対応として、例えば、検出手段は、上記波長群から選ばれた波長含む、3以上の波長をそれぞれ中心とした前後15nmの検出波長範囲に含まれる光成分を検出する。一方、分析手段は、測定部位の構成成分を特定するためのスペクトル形状パラメータとして、検出波長範囲それぞれにおける強度情報の、その中心波長における一次微分値、規格化一次微分値、二次微分値、及び規格化二次微分値の何れかを計算し、得られた計算結果に基づいて前記構成成分分析を行う。
【0020】
具体的には、波長1972nmを中心とした前後15 nm の検出波長範囲に含まれる光成分を、検出手段が検出する場合、分析手段は、測定部位の構成成分分析として、血管中の血栓の有無を分析できる。また、波長2309、2628nmからなる波長群から選ばれた1以上の波長をそれぞれ中心とした前後15 nm の検出波長範囲に含まれる光成分を、検出手段が検出する場合、分析手段は、測定部位の構成成分分析として、血管中の粥腫の有無を分析できる。さらに、波長2371、2402nmからなる波長群から選ばれる1以上の波長をそれぞれ中心とした前後15nmの検出波長範囲に含まれる光成分を、検出手段が検出する場合、分析手段は、測定部位の構成成分分析として、血管中の脂質コアの有無を分析できる。
【0021】
本発明に係る血管内壁分析装置は、分析手段による分析結果をリアルタイムで表示する表示手段を、更に備えてもよい。この場合、例えば分析結果を表示手段により確認しながら分析を行うことができ、血管内壁分析装置の使用者による使用性を高めることができる。
【0022】
また、本発明に係る血管内壁分析装置は、上述のような構造を有する血管内壁分析装置を利用して、血管内における測定部位の構成成分を分析する。具体的に当該血管内壁分析装置では、測定に先立ち、測定部位の近傍に位置するよう光出射端が血管内に挿入されるとともに、測定部位からの光成分が到達する、血管内の所定位置に、光入射端が設置される。光出射端及び光入射端の設置が完了すると、光出射端を介して測定部位に、少なくとも、1957nm〜2713nmの測定波長範囲に含まれる光成分が照射され、光入射端を介して入射した、測定部位からの光成分が検出される。所望の光成分が検出されると、検出された光成分の強度情報から、測定部位の構成成分を特定するための分析用データが生成される。
【0023】
より具体的に、本発明に係る血管内壁分析方法は、上記波長群から選ばれた波長含む、3以上の波長をそれぞれ中心とした前後15nmの検出波長範囲に含まれる光成分を検出し、測定部位の構成成分を特定するためのスペクトル形状パラメータとして、検出波長範囲それぞれにおける強度情報の、その中心波長における一次微分値、規格化一次微分値、二次微分値、及び規格化二次微分値の何れかを計算する。
【0024】
また、本発明に係る血管内壁分析方法は、測定部位の構成成分ごとに色分けされた血管の二次元断層画像を、リアルタイムでモニタ上に表示する。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る血管内壁分析装置、血管内壁分析方法等によれば、血管内壁の付着物の成分をより正確に分析することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】は、本発明に係る血管内壁分析装置の一実施形態構成を示す図である。
【0027】
図2】は、血管内壁のプラークについて説明するための図である。
【0028】
図3】は、血液及び血栓の吸収スペクトルである。
【0029】
図4】は、血液及び血栓の吸収スペクトル(図3)の二次微分である。
【0030】
図5】は、血管壁(内膜)及びプラーク(粥腫、脂質コア、繊維層)の吸収スペクトルである。
【0031】
図6】は、血管壁(内膜)及びプラーク(粥腫、脂質コア、繊維層)の吸収スペクトル(図5)の二次微分である。
【0032】
図7】は、血管内壁分析装置による分析結果の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明に係る血管内壁分析装置、血管内壁分析方法等の各実施形態を、図1図7を参照しながら詳細に説明する。なお、図面の説明において、同一部位、同一要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0034】
(血管内壁分析装置の構成)
図1は、本発明に係る血管内壁分析装置の一実施形態の構成を示す図である。図1に示すように、血管内壁分析装置1は、光源10、分光器20、照射ファイバ30、受光ファイバ40、検出部50、及び分析部60を備える。また、光源10と分光器20は、光ファイバ15により接続される。検出部50と分析部60は電気的に接続され、同様に、分析部60と分光器20も電気的に接続される。血管内壁分析装置1では、光源10、分光器20、及び照射ファイバ30が、測定部位に対して測定光を照射する照射手段を構成する。そして、受光ファイバ40及び検出部50が測定部位からの光成分を検出する検出手段を構成する。また、分析部60は、検出手段において検出された光の強度に基づいて、測定部位の構成成分を分析する分析手段及びこの分析手段による分析結果を表示する表示手段として機能する。
【0035】
光源10は、波長1957nm〜2713nmの波長範囲を含む近赤外光を出力する光源であり、例えば、LD(Laser Diode)光源や、上記非特許文献1に記載されたようなSC(スーパーコンティニューム:Supercontinuum)光源等が用いられる。その中でも、SC光源は、広帯域の波長を高出力する能力を有し、且つ、光源自体の発熱が少ないことから特に好適である。光源10から出射される光は、光ファイバ15の一方の端面に入射され、光ファイバ15内を伝搬して、分光器20に入力される。
【0036】
分光器20は、光源10により出力され、光ファイバ15内を伝搬した光を入力し、分析部60による指示に基づいて特定波長を中心とした検出波長範囲(例えば、特定波長を中心とした前後15nmの波長範囲)の光成分のみを光ファイバ25に対して出力する。分光器20には回折格子や波長可変フィルタ等が用いられる。また、分光器20に回折格子が用いられた場合、分光器20は、分析部60からの指示に基づいて光源10からの入射光に対し、回折格子の傾きを変更することによって、特定波長を中心とした検出波長範囲の光成分を取り出し、照射ファイバ30に対して出力する。なお、分光器20は、測定部位からの光を分光することができるように、受光ファイバ40と検出部50との間に配置してもよい(図1中の破線で示された部分)。
【0037】
照射ファイバ30は光ファイバ等からなり、血管内壁の分析時に頚動脈C内に挿入される。そして、分光器20から出力された光成分は、測定光Lとして、照射ファイバ30の一方の端面30aから入力され、頚動脈C内に挿入された他方の端面30bから測定部位(例えばプラークSが付着する頚動脈Cの内壁)に対して照射される。
【0038】
受光ファイバ40は光ファイバ等からなり、測定光Lを測定部位に対して照射することによって反射・散乱される光成分のうち一方の端面40aに入射した光成分を伝搬させる。その後、受光ファイバ40の他方の端面40bから検出部50に対して出力される。この受光ファイバ40として用いられる光ファイバとしては、光ファイバ素線を複数本束ねたバンドルファイバ(イメージングファイバ)が好適である。バンドルファイバを受光ファイバ40として用いた場合、測定部位からの反射や散乱される光成分は、受光ファイバ40を構成する光ファイバ素線ごとに伝搬するため、測定部位からの光成分の特徴を2次元的に測定することが可能になる。
【0039】
検出部50は、受光ファイバ40の一方の端面40aに入力され、受光ファイバ40を伝搬し、受光ファイバの他方の端面40bから出力される光成分を検出する。検出部50は、例えばフォトダイオード等の受光素子を用いることが可能であり、測定部位からの光成分を電流に変換し、この変換電流を分析部60に対して送る。なお、検出部50を受光ファイバ40一方の端面40aに相当する部位に設け、検出部50において測定部位からの光成分を受光ファイバ40を介さずに直接検出する構成とすることもできる。
【0040】
分析部60は、検出部50において検出された光成分の強度データから、測定部位の構成成分を分析し、その結果をモニタ等に表示する。具体的には、分析部60はPC(Personal Computer)やWS(Work Station)等からなり、少なくとも、モニタ等の表示手段、演算手段、入出力手段、記録手段等を備える。分析部60による分析の一例として、具体的に分析部60は、検出部50の受光素子からの電流の大きさに基づいて、検出部50において検出された光強度を波長ごとに算出する。そして、分析部60は、波長ごとの算出結果から検出波長範囲に含まれる光成分の強度スペクトルを求め、この強度スペクトルを波長で二次微分し、測定部位のプラーク等の構成成分に由来するピークの大きさから測定部位のプラーク等の構成成分を分析する。なお、スペクトル形状パラメータとしては、上述のような各検出波長範囲の強度スペクトルの二次微分値の他、例えば、一次微分値、規格化一次微分値、又は規格化二次微分値によっても得られる。そして、PCやWSが分析結果をモニタ等に表示することにより被験者等のユーザに対してその結果を通知する。また、分析部60の機能を有するPCやWSは、血管内壁分析装置1全体の制御を行う機能を併せて備える。すなわち、分光器20によって分光すべき光成分の波長(検出波長範囲の中心波長)を選択して分光器20に対して指示を行う機能を有する。
【0041】
ここで、各検出波長範囲における強度スペクトルの二次微分は、測定部位の構成成分を特定するためのスペクトル形状パラメータの一つであり、以下の方法で計算することができる。すなわち、検出波長として、x−b、x、x+aの3つの波長それぞれを中心とした各検出波長範囲において検出された強度データ(強度スペクトル)をf(x−b)、f(x)、f(x+a)として、以下の数式(1)で計算される値g(x)を、波長xにおける二次微分の近似値として採用する。
【数1】
【0042】
このとき、真の二次微分値f’’(x)からの誤差は、以下の数式(2)となる。
【数2】
ただしa、bに関する3次以上の項は無視できるものとする。
【0043】
上式の右辺における三次微分値f’’’(x)および四次微分値f(4)(x)については、通常の測定においては符号も絶対値も未知であって期待値は0となる。したがって、上記式(2)の期待値は0となり、g(x)は二次微分値について最も偏りの小さい推定量となる。また、スペクトル形状パラメータとして、検出波長範囲において検出された各強度スペクトルの一次微分を計算することが好ましい場合は、同様にして、以下の数式(3)で計算される値h(x)を一次微分の近似値として採用する。
【数3】
このとき、真の一次微分値f’(x)からの誤差は、以下の数式(4)となる。
【数4】
ただしa、bに関する3次以上の項は無視できるものとする。
【0044】
二次微分に関する議論と同様に、h(x)は一次微分値について最も偏りの小さい推定量となる。
【0045】
なお、上述の例では3つの波長を中心波長とした各検出波長範囲における強度データを用いてスペクトル形状パラメータを計算している。また、上述の例ではスペクトル形状パラメータとして、強度スペクトルの二次微分値及び一次微分値を示したが、計算式を修正することで他のスペクトル形状パラメータを定義してもよい。例えば、3波長における強度の平均値によって一次微分や二次微分を規格化しても良い。また、用いる波長数を増やすことにより測定精度を改善することができる。その場合は、Savitzky-Golay法などの公知の数値微分方法を用いるのが好ましい。一方、上述の例のように、3つの波長だけを用いて二次微分及び一次微分の近似値を計算する方法は、測定及び演算に必要な時間が少なく、計算結果をリアルタイムで表示するのに適している。特に、計算結果を擬似カラーのリアルタイム画像として表示する際に、上記g(x)やh(x)などのように、3つの波長から計算されるスペクトル形状パラメータを擬似カラーの三原色の一成分に割り当てることにより、測定対象物の組成を反映した情報をリアルタイムで画像表示することができる。その結果、診断に要する時間を短縮し、患者の肉体的負担を軽減することができる。これは、生体内での血管壁観察のように比較的侵襲性の高い診断術式においては特に重要である。
【0046】
当該血管内壁分析装置1の測定対象は、頚動脈Cの内壁に付着するプラーク、血栓、血腫等である。頚動脈Cの内壁に付着するプラークとして代表的なものとしては、コレステロールからなる脂質コア、白血球及びその死骸等から形成される粥腫、コレステロール質が石灰化した石灰、そして、コラーゲンが主成分であり上記3つの成分からなるプラークの表面を覆う繊維層の4つが挙げられる。また、血管内の血のカタマリ等からなる血栓、血腫も脳疾患に関与する可能性がある。図2は頚動脈Cの内壁にプラークS及び血栓Tが付着した場合の例を模式的に示す図である。頚動脈Cの内壁にプラークSや血栓Tが付着した場合、図2に示すように頚動脈Cのうち血液が流れることができる領域の血管径が狭くなるため、頚動脈Cの狭窄や閉塞、また脳梗塞や脳虚血等を引き起こす原因となることが知られている。上記代表的なプラークの種類のうち、特に粥腫が脳梗塞を引き起こす可能性が高いことが知られている。一方、例えば石灰や脂質コアは頚動脈Cの内壁から剥離する頻度が低いためにこれらの成分からなるプラークが脳内血管等を閉塞するリスクは低いことが知られている。このため、脳梗塞等の疾患の発生リスクをより正確に求めるためには、頚動脈Cの内壁に付着するプラークの構成成分を特定することが必要であると考えられる。
【0047】
頚動脈Cの内壁にプラークが付着しているかどうかは、例えば頚部外からの超音波エコー診断や、血管内超音波検査(IVUS:intravascular ultrasound)等の診断方法により測定をすることができる。しかしながら、超音波エコー診断や血管内超音波検査では、血管内のプラークの形状以外の情報、すなわち、プラークの構成成分を特定することは困難である。また、頚動脈Cの内壁に対する付着物であり、血管内の血のカタマリ等からなる血栓・血腫も脳疾患に関与する可能性があることから、血管内壁分析装置1による測定対象となるが、頚部外からの超音波エコー診断や血管内超音波検査ではこれらを検出することも困難である。
【0048】
これに対して、本実施形態に係る血管内壁分析装置1を用いることにより、頚動脈C内に形成されたプラーク、血栓、血腫を検出し、かつ、これらの成分を特定することが可能であることを、以下の測定例を用いて説明する。
【0049】
(血管内壁分析装置1の測定例)
(測定例1)
摂氏38度に加温した血液及び血栓(厚さ100μm)のそれぞれに対して測定光Lとして波長1900nm〜2700nmの測定波長範囲の近赤外光を照射し、透過スペクトル(%T)を測定した。この結果を図3に示す。
【0050】
この測定により得られた血液及び血栓の透過スペクトル(%T)を波長により二次微分した結果を図4の領域(A)及び領域(B)に示す。図4において、領域(A)は、血液の透過スペクトルを波長により二次微分した結果であり、領域(B)は、血栓の透過スペクトルを波長により二次微分した結果である。このように、透過スペクトル及びその波長による二次微分値では、血液と血栓との間で各成分に由来する特徴的なピークがあることが確認された。具体的には、波長1972、2057、2141、2167、2182、2212、2257、2274、2289、2311、2345、2388、2416、2469、2504、2544、2630nmにおいて、血液のみ、血栓のみ、又は血液及び血栓の両者に共通する特徴的なピークが示されることが確認された。したがって、これらの波長を中心とした前後15nmの検出波長範囲における強度スペクトルの波長、高さ、高さの比、ピークの半値幅等に基づいて、血液と血栓との区別を行うことが可能であることが確認された。特に血栓に特有な波長1972nmにおけるピークの有無や、波長2289nm及び2311nmにおけるピークの高さ比を利用して両者の区別を行うことが可能であると考えられる。
【0051】
(測定例2)
摂氏38度に加温したプラークの構成成分のうちの粥腫、脂質コア及び繊維層の3種類(厚さ100μm)と、血管壁(内膜)(厚さ20μm)のそれぞれに対して測定光Lとして波長1900nm〜2700nmの測定波長範囲の近赤外光を照射し、透過スペクトル(%T)を測定した。この結果を図5に示す。
【0052】
上記の測定により得られたプラーク(3種類)及び血管壁(内膜)のそれぞれの透過スペクトル(%T)を波長により二次微分した結果を図6に示す。このように、透過スペクトル及びその波長による二次微分値では、プラークの各成分と血管壁(内膜)との間で互いに異なる特徴的なピークがあることが確認された。具体的には、波長2055、2172、2259、2270、2282、2294、2309、2324、2334、2348、2360、2371、2375、2385、2402、2443、2468、2488、2510、2565、2607、2628、2656、2668、2678、2697nmにおいて特徴的なピークが示されることが確認された。したがって、これらの波長それぞれを中心とした前後15nmの検出波長範囲におけるスペクトルの波長、高さ、高さの比、ピークの半値幅等に基づいて、血管壁(内膜)とプラーク、及びプラークの構成成分間の区別を行うことが可能であることが確認された。特に、粥腫に特有な波長2309及び2628nmにおけるピークの有無や、脂質コアに特有な波長2371及び2402nmにおけるピークの有無等を利用して両者の区別を行うことが可能であると考えられる。
【0053】
(測定例3)
血液に抗凝固剤を添加したものと血栓とを混合したサンプルを作成した。このサンプルに対して本実施形態の血管内壁分析装置1の光源10に用いられるSC光源から出力された測定光が照射される。サンプルからの散乱・反乱光を15倍カセグレン拡大鏡に対して接続した近赤外線カメラ(分光器及び検出器に相当する)に入射させることにより、波長1000〜2500nmの測定波長範囲における光強度をハイパースペクトル測定により求めた。このハイパースペクトル測定とは、画素ごとにスペクトルの測定を行う測定方法である。このようにして得られた測定結果のうち、波長1972nmにおけるピークの有無を確認したところ、測定領域(画素)毎にピークの有無が異なることが確認された。波長1972nmにおけるピークは、血栓に特有のピークであることから、この測定により、血液と血栓の識別が可能であることが確認された。
【0054】
(測定例4)
測定例3と同様の測定系を用いて、プラーク切片をサンプルとしてハイパースペクトル測定を行った。そして、得られた測定結果のうち、波長2309、2628nm及び2371、2402nmにおけるピークの有無を確認したところ、測定領域(画素)ごとにピークの有無が異なることが確認された。波長2309nm及び2628nmにおけるピークと、波長2371nm及び2402nmにおけるピークは、それぞれプラークの代表的成分である粥腫及び脂質コアに特有のピークであることから、この測定により、プラークの構成成分の識別が可能であることが確認された。
【0055】
以上の測定例により、近赤外領域の測定光を測定部位に対して照射し、その反射・散乱光のスペクトルを測定した場合に、血液と血栓との間、及び血管壁(内膜)とプラーク(粥腫、脂質コア、繊維層)との間を、それぞれ識別することが可能であることが確認された。したがって、本実施形態に係る血管内壁分析装置1の照射ファイバ30及び受光ファイバ40を頚動脈C内に挿入し、照射ファイバ30の端面30bから測定部位に対して測定光Lを照射し、測定部位からの光のうち頚動脈C内の受光ファイバ40の端面40aから入射する光を検出部50において検出することによって、頚動脈Cの内壁の付着物の構成成分の評価を行うことができることが確認された。
【0056】
(血管内壁分析装置の使用例)
以上のように、本実施形態に係る血管内壁分析装置1によれば、頚動脈C内に挿入された照射ファイバ30の端面30bから測定部位に対して波長1957nm〜2713nmの波長範囲に含まれる測定光を照射すると共に、測定部位からの光を頚動脈Cに挿入された受光ファイバ40の端面40aに入射し検出する。ここで、波長1972、2055、2057、2141、2167、2172、2182、2212、2257、2259、2270、2274、2282、2289、2294、2309、2311、2324、2334、2345、2348、2360、2371、2375、2385、2388、2402、2416、2443、2468、2469、2488、2504、2510、2544、2565、2607、2628、2630、2656、2668、2678、2697nmからなる波長群から選ばれる1以上の波長をそれぞれ中心とした前後15nmの検出波長範囲に含まれる光成分が、測定部位の構成成分によって異なる特徴を示す。このことから、これらの波長範囲の光を用いて血液とは異なる物質の有無を分析することにより、プラーク等の血管中の血液とは異なる物質の有無の分析をより正確に行うことができる。
【0057】
特に波長1972、2057、2141、2167、2182、2212、2257、2274、2289、2311、2345、2388、2416、2469、2504、2544、2630nmからなる波長群の波長の光成分は血栓と血液との区別を行うのに適している。また、2055、2172、2259、2270、2282、2294、2309、2324、2334、2348、2360、2371、2375、2385、2402、2443、2468、2488、2510、2565、2607、2628、2656、2668、2678、2697nmからなる波長群の波長の光成分はプラークの構成成分を分析するのに適している。
【0058】
より詳細には、波長1972nmを中心とした前後15 nm の検出波長範囲に含まれる光成分は、血管中の血栓の有無を分析する上で好適である。また、波長2309、2628nmからなる波長群から選ばれた1以上の波長をそれぞれ中心とした前後15 nm の検出波長範囲に含まれる光成分は、血管中の粥腫の有無を分析する上で好適である。さらに、波長2371、2402nmからなる波長群から選ばれる1以上の波長をそれぞれ中心とした前後15nmの検出波長範囲に含まれる光成分は、血管中の脂質コアの有無を分析する上で好適である。
【0059】
血管内壁分析装置1による分析結果は分析部60に設けられたモニタに表示することによって被験者等のユーザに通知される。本実施形態のように測定部位からの反射光成分や散乱光成分を伝搬させる受光ファイバ40としてバンドルファイバ(イメージングファイバ)を用いる場合、プラーク等の特徴的なスペクトルごとの2次元画像を得ることができる。また、得られた2次元画像を分析部60において重ね合わせることにより、例えば病変部を色分けして表示することもできる。これにより、ユーザに対してより分かりやすく通知することができる。例えば図7に示すように、血管内壁分析装置1によるプラークの構成成分の分析結果に基づいて、プラークの分布(病変部を色分けにより区別して表示する)と危険度(疾患誘発性を色の濃度を用いて表現する)とを併せて表示することができる。このように分析結果をリアルタイムに表示する場合、例えばモニタを参照することにより分析結果を確認しながら分析を行うことができ、この血管内壁分析装置1の使用者による利便性を高めることができる。
【0060】
また、血管内壁分析装置1で用いられる波長1957nm〜2713nmの波長範囲に含まれる測定光、すなわち近赤外波長領域の光は、血液中の血球等による光の散乱を受け難いという特徴を有する。したがって、本実施形態に係る血管内壁分析装置1は、従来から用いられている可視光の血管内視鏡のように測定部位の上流側の血管内でバルーンを膨らませて血流を遮断すると共に生理食塩水で血液を置換することなく、血液が血管中を流れた状態で測定部位の像を得ることができる。したがって、血管内壁分析装置1によれば、測定部位の分析を効率よく行うことができると共に、バルーンの膨張や生理食塩水への置換等の処理による患者の負担を軽減することができる。
【0061】
さらに、血管内壁分析装置1の光源10として、広帯域の光を大きな発熱を引き起こすことなく高い強度で出力することができるスーパーコンティニューム(SC)光源が非特許文献1に開示されているが、これを用いた場合には、血管内壁の分析をより高い精度で行うことができる。
【0062】
以上、本実施形態に係る血管内壁分析装置1について説明したが、本発明に係る血管内壁分析装置は上記実施形態に限定されず種々の変更を行うことができる。例えば、上記実施形態では、血管内壁分析装置の測定対象が頚動脈の内壁である場合について説明したが、測定対象となる血管は頚動脈に限定されない。
【0063】
また、上記実施形態では、受光ファイバ40がバンドルファイバである場合について説明したが、受光ファイバ40は例えば1本の光ファイバであってもよい。さらに、上記実施形態では、頚動脈Cに挿入される照射ファイバ30及び受光ファイバ40が互いに異なる光ファイバからなる場合について説明したが、頚動脈C内における照射ファイバ30及び受光ファイバ40の機能を、1本の光ファイバを用いて実現することもできる。この場合には、分光器20から出射される光を頚動脈C内の光ファイバ(測定用ファイバ)に入射する光ファイバと、測定用ファイバにより受光されて、測定用ファイバを伝搬する反射・散乱光を検出器50に対して伝搬する光ファイバと、が測定用ファイバの一方の端面側に光学的に接続される。そして、測定用ファイバの他方の端面は、測定部位に対して測定光を照射すると共に測定部位からの反射・散乱光を入射する端面となる。
【0064】
また、上記測定例では、特定の波長範囲のスペクトルを測定し、その結果を波長により二次微分することによりプラークの特定の成分に由来するピークを検出してプラークの構成成分を調べる方法について説明したが、波長による二次微分を求めることは必須ではなく、測定光を測定部位に対して照射することにより得られた散乱・反射光の強度に基づいて構成成分を調べる態様とすることもできる。また、近赤外光に対する散乱・反射スペクトルを測定することに代えて、特定の1又は複数種類の波長の近赤外光を測定部位に対して照射して測定部位を透過又は反射した光のピークの強度を求め、この結果に基づいて測定部位のプラークを構成する成分の比率を測定する態様とすることもできる。
【符号の説明】
【0065】
1…血管内壁分析装置、10…光源、20…分光器、30…照射ファイバ、40…受光ファイバ、50…検出部、60…分析部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7