特許第5658166号(P5658166)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5658166
(24)【登録日】2014年12月5日
(45)【発行日】2015年1月21日
(54)【発明の名称】地盤調査方法
(51)【国際特許分類】
   G01V 1/28 20060101AFI20141225BHJP
【FI】
   G01V1/28
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2011-540477(P2011-540477)
(86)(22)【出願日】2010年11月2日
(86)【国際出願番号】JP2010069508
(87)【国際公開番号】WO2011058911
(87)【国際公開日】20110519
【審査請求日】2013年9月20日
(31)【優先権主張番号】特願2009-259292(P2009-259292)
(32)【優先日】2009年11月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591205536
【氏名又は名称】JFEシビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080458
【弁理士】
【氏名又は名称】高矢 諭
(74)【代理人】
【識別番号】100076129
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 圭佑
(74)【代理人】
【識別番号】100089015
【弁理士】
【氏名又は名称】牧野 剛博
(72)【発明者】
【氏名】榊原 淳一
【審査官】 田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−35483(JP,A)
【文献】 特開2006−292415(JP,A)
【文献】 特開2007−177557(JP,A)
【文献】 特開2003−139863(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 1/00−13/00
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性波を用いて地盤を非破壊で可視化して調査する地盤調査方法において、
前記地盤の既知の位置に受信機と前記弾性波を発信する発信機とを配置し、
該発信機から前記弾性波を発信させ、
該発信機から前記受信機に向かう前記地盤中の経路を伝播してきた前記弾性波を該受信機で受信し、
該伝播してきた該弾性波の減衰率と速度とを求めて、
該伝播する距離に応じて大きくなる距離減衰と、弾性波が通過する際に前記地盤を構成する土粒子と水との振動が一致しないことで該土粒子と水との間の摩擦で生じる粘性減衰と、前記地盤を構成する密度の異なる物質に弾性波が入射・透過する際に熱エネルギーに変換されて起る透過減衰と、前記地盤を構成する密度の異なる物質に弾性波が入射する際に反射・散乱で生じる散乱減衰と、の和として求められる前記弾性波の減衰量に基づき前記減衰率に対して1つ以上の減衰率閾値を設け、且つ前記速度に対して1つ以上の速度閾値を設け、
該減衰率と該速度を組み合わせて場合分けを行い、
前記減衰率閾値と前記速度閾値に対する該減衰率及び該速度の比較により前記地盤の状態を判定することを特徴とする地盤調査方法。
【請求項2】
前記地盤の状態を、前記速度に対する前記速度閾値との比較により、砂、シルト、若しくは粘性土の前記地盤の主成分の粒度の違いについて主に判定し、
更に、前記減衰率に対する前記減衰率閾値との比較により、気泡、礫、転石を含みながら前記地盤のゆるい状態から該地盤の締まった状態までの前記地盤の飽和状態の違いについて主に判定することを特徴とする請求項1に記載の地盤調査方法。
【請求項3】
前記地盤の状態を、砂、ゆるい砂、若しくは砂礫の状態と、硬い粘性土若しくは締まった砂の状態と、気泡を含む粘性土若しくは気泡を含む砂の状態と、ゆるい粘性土若しくは粘性土の状態と、に判定することを特徴とする請求項2に記載の地盤調査方法。
【請求項4】
前記地盤がコンクリート又は岩盤であり、前記速度閾値により該コンクリート又は岩盤の亀裂、及び該亀裂の間に存在する気体・液体の溜った空洞の有無を判定し、前記減衰率閾値により該亀裂の間に存在する地盤構成媒体を判定することを特徴とする請求項1に記載の地盤調査方法。
【請求項5】
前記弾性波は擬似ランダム信号で変調された単一のキャリア周波数に基づくことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の地盤調査方法。
【請求項6】
前記擬似ランダム信号と前記受信された弾性波との相関演算を行うことで、前記減衰率と速度とを求めることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の地盤調査方法。
【請求項7】
前記発信機と受信機がすべて前記地盤の内部に配置されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の地盤調査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2009年11月12日に出願された日本国特許出願第2009−25292号に基づく優先権を主張する。当該出願のすべての内容はこの明細書中に参照により援用されている。
【0002】
本発明は、弾性波(音響波を含む)を用いて地盤を非破壊で可視化して調査する地盤調査方法に係り、特にコンクリート構造物や岩盤を含む地盤内部の構造や局所的なゆるみ、空洞、礫の存在などを一度に広範囲に可視化する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
弾性波(例えば音響波)を用いて地盤を非破壊で可視化して調査する方法に、弾性波トモグラフィと呼ばれる手法がある。弾性波トモグラフィは、弾性波を発生させる手段と弾性波を伝播させるレイアウトによりその方式が分類される。弾性波を発生させる手段から大別すると、発破、機械的に弾性波を発生させる発信機、そしてピエゾ効果や磁歪効果を用いた圧電セラミックスや磁歪材を用いて弾性波を発生させる発信機に分類される。レイアウトから大別すると、地表から発破などを用いる反射法や屈折法、ボーリング孔を用いた孔井間トモグラフィ法がある。
【0004】
孔井間トモグラフィには、例えば特許文献1に示す手法がある。これによれば、弾性波速度だけではなく地盤中の固有減衰(粘性減衰と称す)を用いた調査を行うことにより、基礎構造物の設計における地盤調査や地中障害物の調査などに適用することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−68779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1において扱う粘性減衰は、Biotの理論に基づくものであり、水で飽和した状態の地盤において弾性波の伝播の際の土粒子とその周囲にある水との摩擦により生じる減衰だけを対象としている(図4(A)参照)。これに対して、実際の地盤では粘性減衰だけではなく反射や透過を含んだ状態で減衰が生じている。つまり、実際の地盤の減衰と粘性減衰とでは差があり、実際の地盤による減衰から粘性減衰だけを抜き取って問題とすることに困難があった。このため、地盤の状態を精度よく判定することができないおそれや、ともすれば間違った解釈をするおそれがあった。
【0007】
本発明は、前記問題点を解決するべくなされたもので、地盤の状態を精度よく判定して地盤の誤った解釈を回避することが可能な地盤調査方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の請求項1に係る発明は、弾性波を用いて地盤を非破壊で可視化して調査する地盤調査方法において、前記地盤の既知の位置に受信機と前記弾性波を発信する発信機とを配置し、該発信機から前記弾性波を発信させ、該発信機から前記受信機に向かう前記地盤中の経路を伝播してきた前記弾性波を該受信機で受信し、該伝播してきた該弾性波の減衰率と速度とを求めて、該伝播する距離に応じて大きくなる距離減衰と、弾性波が通過する際に前記地盤を構成する土粒子と水との振動が一致しないことで該土粒子と水との間の摩擦で生じる粘性減衰と、前記地盤を構成する密度の異なる物質に弾性波が入射・透過する際に熱エネルギーに変換されて起る透過減衰と、前記地盤を構成する密度の異なる物質に弾性波が入射する際に反射・散乱で生じる散乱減衰と、の和として求められる前記弾性波の減衰量に基づき前記減衰率に対して1つ以上の減衰率閾値を設け、且つ前記速度に対して1つ以上の速度閾値を設け、該減衰率と該速度を組み合わせて場合分けを行い、前記減衰率閾値と前記速度閾値に対する該減衰率及び該速度の比較により前記地盤の状態を判定することとしたものである。
【0009】
本願の請求項2に係る発明は、前記地盤の状態を、前記速度に対する前記速度閾値との比較により、砂、シルト、若しくは粘性土の前記地盤の主成分の粒度の違いについて主に判定し、更に、前記減衰率に対する前記減衰率閾値との比較により、気泡、礫、転石を含みながら前記地盤のゆるい状態から該地盤の締まった状態までの前記地盤の飽和状態の違いについて主に判定することとしたものである。
【0010】
本願の請求項3に係る発明は、前記地盤の状態を、砂、ゆるい砂、若しくは砂礫の状態と、硬い粘性土若しくは締まった砂の状態と、気泡を含む粘性土若しくは気泡を含む砂の状態と、ゆるい粘性土若しくは粘性土の状態と、に判定することとしたものである。
【0011】
本願の請求項4に係る発明は、前記地盤がコンクリート又は岩盤であり、前記速度閾値により該コンクリート又は岩盤の亀裂、及び該亀裂の間に存在する気体・液体の溜った空洞の有無を判定し、前記減衰率閾値により該亀裂の間に存在する地盤構成媒体を判定することとしたものである。
【0012】
本願の請求項5に係る発明は、前記弾性波を擬似ランダム信号で変調された単一のキャリア周波数に基づくようにしたものである。
【0013】
本願の請求項6に係る発明は、前記擬似ランダム信号と前記受信された弾性波との相関演算を行うことで、前記減衰率と速度とを求めるようにしたものである。
【0014】
本願の請求項7に係る発明は、前記発信機と受信機をすべて前記地盤の内部に配置するようにしたものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、地盤の状態を精度よく判定して地盤の誤った解釈を回避することが可能となる。具体的には以下のようなことが可能となる。
【0016】
実際の地盤による弾性波の減衰を求めて、それを地盤の状態の判定に用いるので、地盤中の弾性波の速度と組み合わせることで、地盤の状態を正確に判定できる。
【0017】
また、擬似ランダム信号を用いた場合には、キャリア周波数に高い周波数を用いても弾性波を遠距離伝播させることができ、結果として精度の高い計測と、暗騒音の影響を受けない計測が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1実施形態に係る地盤調査装置を示す概略図
図2】同じく地盤と発信機、受信機の配置関係を示す模式図
図3】トモグラフィ法により速度と減衰率が地盤の区画ごとに求められることを示す模式図
図4】弾性波の主な減衰について説明をするための模式図
図5】本発明の第1実施形態に係る弾性波の速度と減衰率から地盤の状態を判定するときのフローチャートを示す図
図6】同じく弾性波の速度と減衰率に対して地盤の状態を概略的に示す模式図
図7】本発明の第2実施形態に係る弾性波の速度と減衰率の関係から判定可能な地盤の状態を示す模式図
図8】本発明の第2実施形態において、実際の測定で得られた速度分布図と減衰率分布図から求められた地盤の断面図
図9図8で得られた速度と減衰率とをプロットしたグラフを示すから判定可能な地盤の状態を示す模式図
図10】本発明の第3実施形態に係る弾性波の速度と減衰率の関係を概略的に示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0020】
最初に、主に図1を用いて、第1実施形態に係る地盤調査装置の全体構成について説明する。なお、以下において、実施形態が異なっても、符号を同一で表示する(従来技術含む)。
【0021】
地盤調査装置100は、図1に示す如く、弾性波102を発信する発信機(SOR)120と、地盤104中の経路104Aを伝播してきた弾性波102を受信する(複数の)受信機(REC)124と、受信された弾性波102(受信波)に基づいてその間にある地盤104の状態を判定する解析装置(ANE)132と、を有する。更に、地盤調査装置100は、単一の周波数信号(キャリア周波数)を決定して出力可能な周波数発生器(FNG)112と、周波数発生器112から出力された単一の周波数信号を、位相変換して擬似ランダム信号の一つであるPRBS信号(後述)とする位相変換器(PHC)114と、を備える。なお、解析装置132は、複数の受信機124で受信された弾性波102から、受信機124と送信機120の間の地盤104の断面画像を求めることができる(断面画像の求め方はトモグラフィ法として公知)。
【0022】
このため、地盤調査装置100は、弾性波トモグラフィ装置として、弾性波102を用いて地盤104を非破壊で可視化して調査することができる。
【0023】
以下に、各構成要素について詳細に説明する。
【0024】
地盤104には、図2に示す如く、紙面の上下方向に向かうボーリング孔106が所定の間隔で設けられている(図2では2つ)。1つのボーリング孔106(図2の左側)には、1つの発信機120が上下方向で所定間隔に移動して、発信することが可能とされている。他のボーリング孔106(図2の右側)には複数の受信機124が上下方向に所定の間隔で配置されている(即ち、発信機120と受信機124とは地盤104の既知の位置に配置されている)。ボーリング孔106に発信機120と受信機124の全てが配置されている(地盤104の内部に配置)。このため、いずれかもしくは両方が地盤104の表面に配置されている場合に比べて、受信機124は地盤104の内部情報をより安定して受信することができる。発信機120および受信機124については再度後述する。
【0025】
周波数発生器(FNG)112は、任意の周波数(単一の周波数)の連続正弦波信号であるキャリア信号を単一の周波数信号(キャリア周波数)としてデジタル出力することができる。なお、周波数発生器112は、弾性波102の単一の周波数を選択・決定する周波数決定手段を備えているともいえる。周波数決定手段は、例えば、CPUを備えた回路で構成することができる。
【0026】
位相変換器(PHC)114は、周波数発生器112に接続されている。位相変換器114は、周波数発生器112から出力された単一の周波数のデジタル信号(単一の周波数信号)を、PRBS符号で位相変換する。そして、擬似ランダム信号の1つであるPRBS信号をDA変換器116に出力する(即ち、PRBS信号のキャリア周波数が単一の周波数となる)。なお、この出力は、解析装置132に対してもなされる。ここで、PRBS符号は、擬似ランダムバイナリシークエンス(Psudo−Random Binary Sequence)符号のことである。PRBS符号は、例えば、位相変換器114内のシフトレジスタとフィードバックによって生成される符号系列のうちその周期が最長になる系列であるM系列(最長系列;Maxmal−Length Sequenses)を用いている。このため、PRBS符号は(2n−1)、例えばn=12のとき4095波数であり、排他性が極めて強い。従って、自己相関をとった場合においては、パルス圧縮技術の利点とあいまって、その相関値のピークは高く、S/N比が非常に高くなる。このように、位相変換器114は、周波数発生器112から入力された周波数の単一の周波数信号を、自身の内部で生成されたPRBS符号で位相変換している。なお、PRBS符号は外部から導入してもよい。
【0027】
DA変換器(DAC)116は、位相変換器114に接続されて、位相変換器114から出力された信号をデジタル値からアナログ値に変換して出力する。
【0028】
発信増幅器(AMP)118は、DA変換器116に接続されて、DA変換器116から出力された信号をアナログ的に増幅して出力する。
【0029】
発信機(SOR)120は、発信増幅器118に接続され、発信増幅器118から出力された電気的な信号を機械的な振動に変換して発信波としての弾性波102を発信・出力する。弾性波102はPRBS信号に変調された単一のキャリア周波数に基づく。本実施形態では、発信機120に圧電セラミックスを用いている。このため、小型でありながら安定して機械的な振動を発生させることができる。このような効果は磁歪材を用いても同様に得ることができる。
【0030】
受信機(REC)124は、発信機120から地盤104中の経路104Aを伝播してきた機械的な振動である弾性波102を受信波として受信し、電気的な信号に変換する。受信機124としては、ハイドロフォンと呼ばれる水中マイクロフォンなどを使用することができる。
【0031】
受信フィルタ(RCF)126は、受信機124に接続され、受信機124で受信された信号から、例えば、地盤104上で発生する交通騒音や工事騒音を取り除く。このため、適切なノイズフィルタを選択することで、受信フィルタ126はそれらの騒音の影響を極めて低減することができる。なお、受信フィルタ126は必要に応じて、可変の増幅器を具備してもよい。
【0032】
AD変換器(ADC)128は、受信フィルタ126に接続されて、受信フィルタ126を通過した信号を、アナログ値からデジタル値に変換する。
【0033】
データ記録器(DTR)130は、AD変換器128に接続されて、AD変換器128から出力された信号を記録する。
【0034】
解析装置(ANE)132は、位相変換器114とデータ記録器130とに接続され、位相変換器114から出力される発信波に係るPRBS信号(擬似ランダム信号)とデータ記録器130に記録された受信波による信号との相関値を計算する。この(自己)相関演算によって、弾性波102の受信機124までの到達時間を正確に測定することができる。到達時間が求まることで、弾性波102の速度V(ここではP波速度とする)を求めることができる。同時に、相関値を用いて弾性波102の発信当初の振幅強度に対する受信波の振幅強度の比率から減衰率Dも正確に求めることができる。具体的に、発信波の音圧(振幅強度)をAWi(dB)、受信波の音圧をAWo(dB)、発信機120と受信機124との距離をL(m)、弾性波102のキャリア周波数をf(kHz)とする。すると、減衰量AT(dB)と減衰率D(dB/kHz/m)とは、それぞれ式(1)、式(2)の如く示すことができる。
AT(dB) =AWi(dB)―AWo(dB) (1)
D(dB/m)=AT(dB)/f(kHz)/L(m) (2)
【0035】
また、解析装置132は、得られた速度Vと減衰率Dのそれぞれに対して設けられる速度閾値Vshと減衰率閾値Dshとを記憶しておく。そして、解析装置132は、速度閾値Vshと減衰率閾値Dshに対する速度V(後述する速度Vijを含む)及び減衰率D(後述する減衰率Dijを含む)の比較を行い、地盤104の状態の具体的な判定(後述)を行うことができる。なお、判定結果は、解析装置132に付随する図示しないモニターやプリンタなどで断面画像や速度―減衰率のグラフにプロットされる。若しくは、判定結果は、解析装置132に電子データとして格納される。
【0036】
また、解析装置132は、発信機120のボーリング孔106の各所定の位置に対応した各受信機124の所定の位置で求められたデータ(上記速度Vと減衰率D)を用いて、ボーリング孔106、106間の地盤の断面画像(トモグラム)を求めることができる。具体的に説明すると、(公知である)トモグラフィ法により、図3に示すボーリング孔106、106間のメッシュ状に区切られた区画Aij(i、j=0、1、2・・・)毎に、速度Vijと減衰率Dijを求めることができる。
【0037】
このように、解析装置132は、相関演算によるパルス圧縮技術を利用した高いS/N比で、地盤104中の区画Aijで構成される経路104Aの状態を判定することが可能である。
【0038】
ここで、減衰量ATについて以下に説明する。
【0039】
地盤中の減衰量ATは、式(3)に示すように、距離減衰と、粘性減衰と、透過減衰と、散乱減衰との和として表示される。
減衰量=距離減衰+粘性減衰+透過減衰+散乱減衰 (3)
【0040】
距離減衰は、その距離に応じて大きくなる減衰を示している。粘性減衰は、弾性波が通過する際に土粒子SPと水Wとの振動が一致しないことで、土粒子SPと水Wとの間の摩擦で生じる減衰である(図4(A))。粘性減衰は、多孔質媒体内の波動理論、Biot 1955などで計算できる。例えば1kHz〜20kHzのキャリア周波数を用いる場合には、粘性減衰は、完全に飽和した地盤104において大きな粒径ほど大きく、即ち砂では粘性減衰は大きく粘性土では小さくなる。なお、同多孔質媒体内の波動理論によれば、粘性減衰は地盤の緩みの影響を受けにくい。透過減衰は、密度の異なる物質に弾性波が入射・透過(密度D1からD2への透過)する際に熱エネルギーに変換されて起る減衰である(図4(B))。透過減衰は、地層境界などで起こり、地盤中の気泡(以下ガスを含む)などの密度の小さな部分を透過すると大きくなる。散乱減衰は、密度の異なる物質に弾性波が入射する際に反射や散乱で生じる減衰である(図4(C))。散乱減衰は、礫などの弾性波の波長の1/4〜1/2より大きな物体が存在する場合に生じ、礫層や転石が多い地盤では大きくなる。
【0041】
次に、弾性波102の速度Vと減衰率Dを用いた地盤104の状態の判定方法について図5を用いて説明する。その判定結果を図6に示す。
【0042】
まず、地盤104の既知の位置に受信機124と弾性波102を発信する発信機120とを配置する。
【0043】
次に、発信機120からPRBS信号による弾性波102を発信させ、発信機120から受信機124に向かう地盤104中の経路104Aを伝播してきた弾性波102を受信機124で受信する。
【0044】
次に、PRBS信号と受信された弾性波102との相関値を計算して、伝播してきた弾性波102の速度Vと減衰率Dを求める。
【0045】
次に、速度Vと減衰率Dとから、公知のトモグラフィ法により各区画Aij毎に速度Vijと減衰率Dijとを求める(ステップS8)。そして、速度分布図と減衰率分布図とを求める。
【0046】
次に、速度Vijの値と減衰率Dijの値とをそれぞれ速度閾値Vshと減衰率閾値Dijと比較して場合分けする。
【0047】
ここで、一般的に速度は地盤の固さや間隙率と良い相関を持ち、地盤が砂では速度が大きく、粘性土では速度が小さくなり、気泡やガス(単に気泡と称す)が混入している地盤では速度は小さくなる。
【0048】
また、弾性波の減衰は、上述の如く、粘性減衰や透過減衰や散乱減衰などの和によって生じている。粘性減衰は、水で完全に飽和した地盤において、大きな粒径ほど大きく、即ち砂では粘性減衰は大きく粘性土では小さくなる。透過減衰は、密度の異なる物体を透過する際に起る減衰で、これは地盤中の気泡(以下ガスを含む)などの密度の小さな部分を透過すると大きくなる。散乱減衰は、礫などの弾性波102の波長の1/4〜1/2より大きな物体が存在する場合に、反射や散乱で生じる減衰であり、礫層や転石が多い地盤では大きくなる。
【0049】
このため、減衰率Dijと速度Vijを組み合わせて場合分けする。即ち、減衰率Dijと速度Vijのそれぞれに対して減衰率閾値Dshと速度閾値Vshとを設け、減衰率閾値Dshと速度閾値Vshとに対する減衰率Dij及び速度Vijの比較を行うことで地盤104の状態の判定をする。
【0050】
まず、速度閾値Vshと減衰率閾値Dshとに対して、速度Vijが大きく減衰率Dijが大きい場合(ステップS10、S12でYes)には、地盤104が気泡を含まない砂層であり礫を含んでいる状態(砂SA、ゆるい砂LS、砂礫(礫のみを含む)SCの状態CONDITION1)(ステップS14)であることが判定される。
【0051】
また、速度閾値Vshと減衰率閾値Dshとに対して、速度Vijが大きく減衰率Dijが小さい場合(ステップS10でYes、ステップS12でNo)には、地盤104が気泡やガスや礫を含まない砂層であり、減衰率Dijが更に小さい場合には硬質粘性土の可能性がある状態(硬い粘性土TC若しくは締まった砂TSの状態CONDITION2)(ステップS16)であることが判定される。
【0052】
また、速度閾値Vshと減衰率閾値Dshとに対して、速度Vijが小さく減衰率Dijが大きい場合(ステップS10でNo、ステップS18でYes)には、地盤104が気泡やガスを含む粘性土又は礫を含む粘性土である状態(気泡Fを含む粘性土FC若しくは気泡Fを含む砂FSの状態CONDITION3)(ステップS20)であることが判定される。
【0053】
また、速度閾値Vshと減衰率閾値Dshとに対して、速度Vijが小さく減衰率Dijが小さい場合(ステップS10、S18でNo)には、地盤104が気泡やガスを含まない粘性土である状態(ゆるい粘性土LC若しくは粘性土CRの状態CONDITION4)(ステップS22)であることが判定される。
【0054】
つまり、速度だけでは、図6における砂礫SC、砂SA、そして締まった砂TS、また、ゆるい砂LS、そして硬い粘性土TC、また、気泡Fを含む粘性土FC、気泡Fを含む砂FS、そして粘性土CRは、それぞれを区別できない。しかし、減衰率閾値Dshを用いることでそれらの状態を区別することが可能となる。
【0055】
このように、速度閾値Vshと減衰率閾値Dshとを用いて、速度−減衰率の関係から、解析装置132は、一義的に地盤104の状態を迅速に判定することができる。なお、地盤104の状態を断面画像として必ずしも示さないで、図6を作成するのみで地盤104の状態の判定や、場所ごとの比較を容易に行うこともできる。
【0056】
本実施形態においては、速度閾値Vshと減衰率閾値Dshは、それぞれ1.6km/s、0.3dB/kHz/mとしている。一般的な堆積層で速度と減衰率は、それぞれ、約1.5〜1.7km/s、約0.1〜0.3dB/kHz/mであるが、地盤104によって異なり、この範囲外に速度閾値Vshと減衰率閾値Dshとを設けてもよい。これらの閾値はボーリング情報と比較することで補正することができる。
【0057】
このように、本実施形態では、粘性減衰を含めた減衰量ATに基づいた減衰率Dから地盤104の状態の判定を行うものである。このため、従来(粘性減衰のみを用いる方法や減衰率を用いない方法)に比べてより正確な地盤104の状態の判定が可能である。
【0058】
なお、地盤が局所的にゆるんでいる場合には速度の変化には現れない微細な気泡が存在していることが多く、速度は変化しないが減衰率のみ大きくなる場合がある。このような関係を利用することで、解析装置132は、地盤104の緩みをも判定することができる。
【0059】
第1実施形態では、速度閾値Vshと減衰率閾値Dshとがそれぞれ1つのみ設けられていた。そして、地盤104の状態を、砂、ゆるい砂、若しくは砂礫の状態と、硬い粘性土若しくは締まった砂の状態と、気泡を含む粘性土若しくは気泡を含む砂の状態と、ゆるい粘性土若しくは粘性土の状態と、に判定していたが、本発明はこれに限定されない。
【0060】
例えば、第2実施形態として速度閾値Vshと減衰率閾値Dshの少なくともいずれかを複数設けて、更に細かく判定することもできる。その場合には、図6で示された全ての状態を区別することも可能となる。例えば、弾性波102の速度V(以下、VijもVで表示する)の1.5km/sと1.6km/sとの間と、1.6km/sと1.7km/sとの間と、に速度閾値Vshをそれぞれ(計2つ)設ける。そして、弾性波102の減衰率D(以下、DijもDで表示する)の0.05dB/kHz/mと0.1dB/kHz/mとの間と、0.1dB/kHz/mと0.2dB/kHz/mとの間と、0.2dB/kHz/mと0.3dB/kHz/mとの間と、0.3dB/kHz/mと0.5dB/kHz/mとの間と、に減衰率閾値Dshをそれぞれ(計4つ)設ける。
【0061】
従来においても速度Vを高精度に計測することで、速度Vを3つ(1.5km/s、1.6km/s、1.7km/s)について場合分けすることは可能と考えられる。その場合には、図7において、速度1.5km/sからゆるい粘性土層G1が判別できるがその中の転石Sは判別することができない。また、速度1.6km/sからゆるい砂層G2若しくは締まった粘性土層G3が判別できるが、そのいずれかは特定できない。また、締まった粘性土層G3中の気泡(地中ガス)Fの存在を判別することができない。また、速度1.7km/sから締まった砂層G4、礫層G5、若しくは硬く締まった粘性土層G6が判別されるが、そのいずれかは特定できない。
【0062】
これに対して、第2実施形態であれば、速度閾値Vshに4つの減衰率閾値Dshを組み合わせることで、図7で示される地盤104をより高精度に判定できる。ゆるい粘性土層G1においては、減衰率Dが0.05dB/kHz/mであるのに対して、同じ速度Vであっても転石Sの減衰率が大きい(0.2dB/kHz/m)ので、転石Sの存在を特定可能である。また、ゆるい砂層G2と締まった粘性土層G3では同じ速度Vであってもゆるい砂層G2の方が減衰率Dが大きい(0.05dB/kHz/mに対して0.3dB/kHz/m)。このため、ゆるい砂層G2に対して締まった粘性土層G3の特定が可能である。また、締まった粘性土層G3中の気泡Fの減衰率Dはゆるい砂層G2よりもはるかに大きい(0.5dB)ので、気泡Fの存在も特定が可能である。更に、締まった砂層G4と礫層G5と硬く締まった粘性土層G6とは同じ速度Vであっても、締まった砂層G4の減衰率D(0.1dB)に比べて、礫層G5の減衰率Dが大きく(0.5dB)、硬く締まった粘性土層G6の減衰率Dが小さい(0.05dB)。このため、締まった砂層G4と礫層G5と硬く締まった粘性土層G6の特定も容易に行うことが可能である。
【0063】
本実施形態の地盤104の状態の判定方法を、実際の東京湾沿いの埋立地において計測して得られた速度分布図と減衰率分布図に当てはめた結果を図8に示す。計測は、ボーリング孔106間の距離を66m、55mとして、その測定深度は65mである。図8(A)で示す図は速度分布図であり、図8(B)で示す図は減衰率分布図である。それぞれにおいて、判定された地盤104の状態をG10からG19で示している。G10はゆるい砂層(Loose sand;沖積砂層)であり、G11はゆるい粘性土層(Clay;沖積粘性土層)、G12は粘性土と砂の中間の粒子からなるゆるいシルト層(Silt;沖積シルト層)、G13は砂とシルトとの互層、G14は締まった砂層(Dense sand;洪積砂層)、G15は締まった粘性土層(Hard Clay;洪積粘性土層)で、G16は粘性土層の気泡(Soil gas;有機ガス)である。
【0064】
これらの構成データを速度―減衰率のグラフに表すと、図9の白抜き丸で示すことができる。ここで、波線の矢印は、主に砂と粘性土の違いを表している。また、実線の矢印は、主に飽和した地層と不飽和の地層の違いを表している。なお、波線の丸で囲んだエリアH1は、エリアH2と比べて、実線の矢印の線上から外れている。このことから、エリアH1とエリアH2との間に適切な減衰率閾値Dshを設けることで、気泡(有機ガス)の存在を明確に判断することができる。即ち、地盤104の状態を、速度Vに対する速度閾値Vshとの比較により、砂、シルト、若しくは粘性土の地盤104の主成分の粒度の違いについて主に判定し、更に、減衰率Dに対する減衰率閾値Dshとの比較により、気泡若しくは礫を含む状態から地盤104の締まった状態までの地盤104の飽和状態の違いについて主に判定することで、より正確な地盤104の判定が可能となる。
【0065】
このように地盤104の状態を判別することで、例えば、地盤104中の礫を避けてシールドトンネルを掘るといったことも可能となる(例えば礫があるとシールドマシンが止まってしまうおそれがある)。
【0066】
また、上記実施形態においては、地盤104が、礫、砂、あるいは粘性土などを含むものであったが、本発明はこれに限定されない。例えば、コンクリートなどの人工的にできた床面や基礎構造物など又は岩盤であってもよい。第3実施形態として、地盤104がコンクリート又は岩盤である場合について図10を用いて説明する。
【0067】
速度閾値Vsh(例えば1.6km/s)よりも求められた速度Vが大きければ、地盤104を亀裂のない岩盤R2として判定する(CONDITION2)。速度閾値Vshよりも求められた速度Vが小さければ、地盤104に亀裂があることが判明する。その際に、求められた減衰率Dが減衰率閾値Dsh(例えば0.3dB/kHz/m)よりも大きければ、亀裂CR1の間に存在するのが気泡(ガス含む)であると判定できる(CONDITION3)。求められた減衰率Dが減衰率閾値Dshよりも小さければ、亀裂CR2の間に存在するのが水やその他の物質であることを判定することができる(CONDITION4)。このとき、減衰率閾値Dshを更に小さな値で別に設けることで、水か例えばコンクリートなどかが特定可能となる。即ち、地盤104がコンクリート又は岩盤であり、速度閾値Vshにより地盤104の亀裂の有無を判定し、減衰率閾値Dshにより亀裂の間に存在する気泡や水やコンクリートなどの地盤構成媒体を判定するとしてもよい。例えば岩盤にシールドトンネルを掘る場合や若しくはダムのコンクリート基礎構造物を調べる場合に、内部に亀裂が見つかりその亀裂の内側に水が存在すれば、その水を抜きコンクリートで充填するといったことが必要となる。そのとき、上記の如く2つの減衰率閾値Dshを適切に設けることで、亀裂の有無や、亀裂の間にあるのが空気、水、若しくはコンクリートであるのかを判別することができる。このため、シールドトンネルの掘削やコンクリート基礎構造物の評価を行い、その上でその補修程度を迅速に調査できるので、従来に比べてこのような土木作業の更なる効率化を図ることができる。
【0068】
なお、地盤104の状態の判定に際して、使用する周波数が単一であり、擬似ランダム信号であるPRBS信号と受信された弾性波102との相関が取られるので、高いS/N比で地盤104の解析を行うことができる。そして、図2に示す如く、一度に多くの受信機124で弾性波102を受信するので、地盤104の断面の広範囲な可視化が容易である。又、経路104Aは発信機120と受信機124との間にあり、地盤104の状態の判定においては、基本的に透過波を用いているので、より高いS/N比を確保することができる。
【0069】
更に、単一の周波数に対して擬似ランダム符号で変調制御されたPRBS信号を用いることで、従来(〜200Hz程度)よりも高い周波数での発信と受信とが可能となる。上記実施形態では、20kHzでの計測が可能となっている。これにより従来の数10倍以上の計測分解能で地盤104の調査が可能である。例えば地盤104中の弾性波102の速度を2km/sとすると、従来であれば分解能が5m程度となるが、上記実施形態では0.2m程度の分解能が得られる。なお、暗騒音(地盤104上での交通騒音、工事騒音など)の周波数帯域は低いので、暗騒音の影響を受けにくくすることもできる。
【0070】
また、弾性波102は、周波数が高くなるにつれ、指数関数的に減衰する傾向があり、高い周波数の弾性波102を遠距離に伝播させることが困難である。しかし、PRBS信号を用いることで、弾性波102のエネルギーを時間軸上に分散させることができるため、従来(数m程度)に比べて高い周波数の弾性波102を数100m伝播させることができる。上記実施形態では、1kHzで400m以上、30kHzでも20m以上を伝播させることが確認できている。
【0071】
つまり、PRBS信号と相関演算を用いることで、高い周波数を用いながら弾性波102を遠距離伝播させることができ、地盤104上の騒音(振動を含む)にほとんど影響を受けることなく、精度の高い計測を行って地盤104の状態の判定が可能である。
【0072】
即ち、上記実施形態によれば、地盤104内部の構造や局所的なゆるみ、空洞、礫の存在などを一度に広範囲に可視化することができ、地盤104の状態を精度よく判定して地盤104の誤った解釈を回避することが可能となる。具体的には以下のようなことが可能となる。実際の地盤104における弾性波102の減衰を求めて、それを地盤104の状態の判定に用いる。このため、地盤104中の弾性波102の速度Vと減衰率Dとを組み合わせることができ、地盤104の状態を正確に判定できる。
【0073】
また、擬似ランダム信号を用いているので、キャリア周波数に高い周波数を用いても弾性波102を遠距離伝播させることができる。結果として精度の高い計測と、暗騒音(地盤104上での交通騒音、工事騒音など)の影響を受けない計測が可能となる。
【0074】
なお、弾性波102の代わりに電磁波を用いる方法も考えられる。しかし、電磁波は、水があると吸収されやすいことと、電気ノイズに弱い。即ち、鉄塔があるような場所や都市部、そして地下水や海水などの水面下に対しては、電磁波を用いる手法は適用が困難である(このため、電磁波を用いるトモグラフィ法では、山間部で地下水の水面より上で用いることに用途が限られる傾向がある)。これに対して、上記実施形態では、弾性波102を用いているので、上記の制限はなく、電磁波を用いる場合に比べて広く適用することができる。即ち、上記実施形態は、石油や天然ガスの埋蔵場所や、メタンガスなどの腐臭ガス(有機ガス)の場所など、場所が限定されずに調査することもできる。例えば湾岸(東京湾や大阪湾など)において構造物建設のためにくい打ちする際に、腐臭ガスの噴出などの災害の防止にも上記実施形態は有効な手法である。
【0075】
本発明について上記実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の要旨を逸脱しない範囲においての改良並びに設計の変更が可能なことは言うまでもない。
【0076】
例えば、上記実施形態においては、発信機120に圧電セラミックス又は磁歪材を用いることとしていたが、本発明はこれに限定されず、別のものを用いてもよい。
【0077】
又、上記実施形態においては、弾性波102が擬似ランダム信号で変調された単一のキャリア周波数に基づいていた。擬似ランダム波を用いることで、格段に優れたS/N比で速度Vと減衰率Dとを求められることが発明者によって実証されているが、必ずしも擬似ランダム波を用いなくてもよい。また、擬似ランダム信号としては、M系列を用いたPRBS信号であったが、本発明はこれに限定されるものではなく、擬似ランダム信号として、Gold系列やBarker系列などであってもよい。
【0078】
又、上記実施形態においては、擬似ランダム信号と受信された弾性波102との相関演算を行っていたが、本発明は必ずしもこれに限定されない。
【0079】
又、上記実施形態においては、発信機120と受信機124とがボーリング孔106に配置されていたことで、地盤104の極表面の地盤情報や表面から伝わるノイズを最小限にして、精度の高い地盤104の状態の把握を可能としていた。即ち、上記実施形態は、従来波線密度の低下を防ぐために地盤104の表面に配置されていた受信機124を省略することができるが、本発明はこれに必ずしも限定されない。例えば、発信機120と受信機124のいずれか若しくは両方とも地盤104の表面に配置されていてもよい。その際には、発信機120と受信機124の配置を簡便に行うことが可能となる。
【0080】
又、上記実施形態においては、擬似ランダム信号と弾性波102との相関をとることで、弾性波102の速度Vと減衰率Dが求められていたが、本発明は弾性波102の速度Vと減衰率Dが求められる手段を限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、弾性波(音響波を含む)を用いて、コンクリート構造物や岩盤を含む地盤内部の構造や局所的なゆるみ、空洞、礫の存在などを一度に広範囲に非破壊で可視化して調査する方法に適用することができる。
【符号の説明】
【0082】
100…地盤調査装置
102…弾性波
104…地盤
104A…経路
106…ボーリング孔
112…周波数発生器
114…位相変換器
116…DA変換器
118…発信増幅器
120…発信機
124…受信機
126…受信フィルタ
128…AD変換器
130…データ記録器
132…解析装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10