(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アクリル酸(塩)を主成分とする、アクリル酸(部分中和塩)を架橋剤とともに水溶液中で重合して得られる固形分濃度が35〜75重量%のポリアクリル酸部分中和塩の粒子状含水ゲル状架橋重合体を、温度130〜230℃及び露点50〜80℃を有する熱風を使用する通気型乾燥機を用いて乾燥する方法であって、
前記乾燥ゾーンに挿入される直前の粒子状含水ゲル状架橋重合体の温度が、40〜70℃であり、
該粒子状含水ゲル状架橋重合体が通気型乾燥機の乾燥ゾーンに導入された後、固形分濃度が80重量%に到達するまでの60%以上の期間において、該熱風の温度を多段で変化させることにより、粒子状含水ゲル層に吹き付ける熱風の温度と、該熱風が粒子状含水ゲル層を通過した後に測定される温度との温度差(ΔT)を20〜70℃とすることを特徴とする、粒子状含水ゲル状架橋重合体の乾燥方法。
該粒子状含水ゲル状架橋重合体が通気型乾燥機の乾燥ゾーンに導入された後、固形分濃度が80重量%に到達するまでの60%以上の期間において、さらに該熱風の露点を多段で変化させることにより、粒子状含水ゲル層に吹き付ける熱風の温度と、該熱風が粒子状含水ゲル層を通過した後に測定される温度との温度差(ΔT)を20〜70℃とする、請求項1に記載の乾燥方法。
前記粒子状含水ゲル層に吹き付ける熱風の温度と、該熱風が粒子状含水ゲル層を通過した後に測定される温度との温度差が、30〜60℃である、請求項1または2に記載の乾燥方法。
前記固形分濃度が80重量%に到達するまでの期間(乾燥時間)の70%以上において、使用される熱風の露点が50〜80℃である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の乾燥方法。
前記固形分濃度が80重量%に到達するまでの期間(乾燥時間)の90%以上において、使用される熱風の露点が50〜80℃であるおよび/または温度差(ΔT)が20〜70℃である請求項1〜7のいずれか1項に記載の乾燥方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る吸水性樹脂の製造方法について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更、実施し得る。具体的には、本発明は下記の各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0018】
〔1〕用語の定義
(1−1)「吸水性樹脂」
本発明における「吸水性樹脂」とは、水膨潤性水不溶性の高分子ゲル化剤を意味する。なお、「水膨潤性」とは、ERT441.2−02で規定するCRC(無加圧下吸水倍率)が必須に5[g/g]以上であることをいい、好ましくは10〜100[g/g]、更に好ましくは20〜80[g/g]であり、また、「水不溶性」とは、ERT470.2−02で規定するExt(水可溶分)が必須に0〜50重量%、好ましくは0〜30重量%、更に好ましくは0〜20重量%、特に好ましくは0〜10重量%であることをいう。
【0019】
上記吸水性樹脂は、その用途に応じて適宜設計可能であり、特に限定されるものではないが、カルボキシル基を有する不飽和単量体を架橋重合させた、親水性架橋重合体であることが好ましい。また、全量(100重量%)が重合体である形態に限定されず、上記性能を維持する範囲内において、添加剤等を含んでいてもよい。すなわち、吸水性樹脂組成物であっても、本発明では吸水性樹脂と総称する。ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の含有量は、好ましくは全体に対して70〜99.9質量%であり、より好ましくは80〜99.7質量%であり、さらに好ましくは90〜99.5質量%である。吸水性樹脂以外のその他の成分としては、吸水速度や粉末(粒子)の耐衝撃性の観点から水が好ましく、必要により後述の添加剤が含まれる。
【0020】
(1−2)「ポリアクリル酸(塩)」
本発明における「ポリアクリル酸(塩)」とは、任意にグラフト成分を含み、繰り返し単位として、アクリル酸および/またはその塩(以下、アクリル酸(塩)と称する)を主成分とする重合体を意味する。
【0021】
具体的には、重合に用いられる総単量体(架橋剤を除く)のうち、アクリル酸(塩)を必須に50〜100モル%を含む重合体をいい、好ましくは70〜100モル%、より好ましくは90〜100モル%、特に好ましくは実質100モル%を含む重合体をいう。また、重合体としての塩は、必須に水溶性塩を含み、好ましくは一価塩、さらに好ましくはアクリル金属塩またはアンモニウム塩、特にアルカリ金属塩、さらにはナトリウム塩を含む。
【0022】
(1−3)「EDANA」および「ERT」
「EDANA」は、欧州不織布工業会(European Disposables and Nonwovens Associations)の略称であり、「ERT」は、欧州標準(ほぼ世界標準)である吸水性樹脂の測定方法(EDANA Recommended Test Method)の略称である。
【0023】
なお、本発明においては、特に断りのない限り、ERT原本(公知文献:2002年改定)に準拠して、吸水性樹脂等の物性を測定する。
【0024】
(a)「CRC」(ERT441.2−02)
「CRC」は、Centrifuge Retention Capacity(遠心分離機保持容量)の略称であり、無加圧下吸水倍率(以下、「吸水倍率」と称することもある)を意味する。具体的には、不織布袋中の0.200gの吸水性樹脂を、大過剰の0.9重量%塩化ナトリウム水溶液に対して30分間自由膨潤させた後、さらに遠心分離機で水切りした後の吸水倍率(単位;[g/g])である。
【0025】
(b)「AAP」(ERT442.2−02)
「AAP」は、Absorption Against Pressureの略称であり、加圧下吸水倍率を意味する。具体的には、0.900gの吸水性樹脂を、大過剰の0.9重量%塩化ナトリウム水溶液に対して1時間、2.06kPa(0.3psi、21[g/cm
2])での荷重下で膨潤させた後の吸水倍率(単位;[g/g])である。なお、本発明においては、荷重条件を4.83kPa(0.7psi、50[g/cm
2])に変更して測定した。
【0026】
(c)「Ext」(ERT470.2−02)
「Ext」は、Extractablesの略称であり、水可溶分(水可溶成分量)を意味する。具体的には、0.9重量%塩化ナトリウム水溶液200gに対して、吸水性樹脂1gを16時間攪拌した後、溶解したポリマー量をpH滴定で測定した値(単位;重量%)である。
【0027】
(d)「Residual Monomers」(ERT410.2−02)
「Residual Monomers」とは、吸水性樹脂中に残存しているモノマー量を意味する。具体的には、0.9重量%塩化ナトリウム水溶液200mlに吸水性樹脂1.0gを投入し2時間攪拌後、該水溶液に溶出したモノマー量を高速液体クロマトグラフィーで測定した値(単位;ppm)である。
【0028】
(e)「PSD」(ERT420.2−02)
「PSD」とは、Particle Size Distributionの略称であり、ふるい分級により測定される粒度分布を意味する。なお、重量平均粒子径(D50)および粒子径分布幅は欧州特許第0349240号明細書7頁25〜43行に記載された「(1) Average Particle Diameter and Distribution of Particle Diameter」と同様の方法で測定する。
【0029】
(f)その他、EDANAで規定される吸水性樹脂の物性
「pH」(ERT400.2−02) : 吸水性樹脂のpHを意味する。
【0030】
「Moisture Content」(ERT430.2−02) : 吸水性樹脂の含水率を意味する。
【0031】
「Flow Rate」(ERT450.2−02) : 吸水性樹脂の流下速度を意味する。
【0032】
「Density」(ERT460.2−02) : 吸水性樹脂の嵩比重を意味する。
【0033】
「Respirable Particles」(ERT480.2−02) : 吸水性樹脂の呼吸域粉塵を意味する。
【0034】
「Dust」(ERT490.2−02) : 吸水性樹脂中に含まれる粉塵を意味する。
【0035】
(1−4)「通液性」
荷重下または無荷重下における膨潤ゲルの粒子間を流れる液の流れを「通液性」という。この「通液性」の代表的な測定方法として、SFC(Saline Flow Conductivity/生理食塩水流れ誘導性)や、GBP(Gel Bed Permeability/ゲル床透過性)がある。
【0036】
「SFC(生理食塩水流れ誘導性)」は、荷重0.3psiにおける吸水性樹脂0.9gに対する0.69重量%塩化ナトリウム水溶液の通液性をいう。米国特許第5669894号明細書に記載されたSFC試験方法に準じて測定される。
【0037】
「GBP(ゲル床透過性)」は、荷重下または自由膨張における吸水性樹脂に対する0.69重量%生理食塩水の通液性をいう。国際公開第2005/016393号パンフレットに記載されたGBP試験方法に準じて測定される。
【0038】
(1−5)その他
本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は、「X以上、Y以下」であることを意味する。また、重量の単位である「t(トン)」は、「Metric ton(メトリック トン)」であることを意味し、さらに、特に注釈のない限り、「ppm」は「重量ppm」または「質量ppm」を意味する。また、本願明細書において、「質量」と「重量」、「質量%」と「重量%」、および「質量部」と「重量部」は同義語であり、物性等の測定に関しては特に断りがない場合は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%で測定する。さらに、「〜酸(塩)」は「〜酸および/またはその塩」を意味し、「(メタ)アクリル」は「アクリルおよび/またはメタクリル」を意味する。
【0039】
〔2〕吸水性樹脂の製造方法
(2−1)重合工程
本工程は、アクリル酸および/またはその塩(以下、「アクリル酸(塩)」と称する)を主成分として含む水溶液を重合して、含水ゲル状架橋重合体を得る工程である。
【0040】
(a)単量体(架橋剤を除く)
本発明で得られる吸水性樹脂は、その原料(単量体)として、アクリル酸(塩)を主成分として含む水溶液を使用し、通常、水溶液状態で重合される。該単量体水溶液中の単量体濃度(固形分濃度)は、通常10〜90重量%であり、好ましくは20〜80重量%、より好ましくは30〜70重量%、さらに好ましくは40〜60重量%である。さらに、単量体を水溶液で重合するときには、必要に応じて、界面活性剤、ポリアクリル酸(塩)、澱粉、セルロース、ポリビニルアルコール等の高分子化合物、各種キレート剤、各種添加剤を、単量体に対して、0〜30重量%、好ましくは0.001〜20重量%添加してもよい。
【0041】
また、該水溶液の重合により得られる含水ゲルは、吸水性能の観点から、重合体の酸基の少なくとも一部が中和されている。上記中和は、アクリル酸の重合前、重合中または重合後に行うことができるが、吸水性樹脂の生産性、AAP(加圧下吸水倍率)やSFC(生理食塩水流れ誘導性)の向上等の観点から、アクリル酸の重合前に中和を行うことが好ましい。つまり、中和されたアクリル酸(すなわち、アクリル酸の部分中和塩)を単量体として使用することが好ましい。
【0042】
上記アクリル酸(塩)、または、好ましくは得られる吸水性樹脂の中和の中和率は、特に制限されないが、酸基に対して10〜100モル%(好ましくは100%未満)が好ましく、30〜95モル%がより好ましく、50〜90モル%がさらに好ましく、60〜80モル%が特に好ましい。中和率が10モル%未満の場合、特に、CRC(無加圧下吸水倍率)が著しく低下することがあり好ましくない。なお、未中和または部分中和のアクリル酸(塩)を主成分として含む水溶液を使用し、重合後に中和してもよいが、好ましくは単量体で中和される。
【0043】
また、本発明においてアクリル酸(塩)を主成分として使用する場合、アクリル酸(塩)以外の親水性または疎水性の不飽和単量体(以下、「他の単量体」と称することもある)を使用することもできる。このような他の単量体としては、特に限定されないが、メタクリル酸、(無水)マレイン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリロキシアルカンスルホン酸、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルアセトアミド、(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ステアリルアクリレートやそれらの塩等が挙げられる。これら他の単量体を使用する場合、その使用量は、得られる吸水性樹脂の吸水特性を損なわない程度であれば、特に限定されないが、全単量体の重量に対して、50重量%以下が好ましく、20重量%以下がより好ましい。なお、必要に応じて使用する上記他の単量体を使用する場合、その使用量の下限は、その種類や目的、効果に応じて適宜決定され特に制限されないが、全単量体の重量に対して、約1重量%程度である。
【0044】
(b)中和の塩
上記単量体としてのアクリル酸または重合後の重合体(含水ゲル)の中和に用いられる塩基性物質としては、特に限定されないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属の水酸化物や炭酸(水素)ナトリウム、炭酸(水素)カリウム等の炭酸(水素)塩等の一価の塩基性物質が好ましく、水酸化ナトリウムが特に好ましい。また、中和時の温度(中和温度)についても、特に制限されず、10〜100℃が好ましく、30〜90℃がより好ましい。なお、上記以外の中和処理条件等については、国際公開第2004/085496号に開示されている条件等が、本発明に好ましく適用される。
【0045】
(c)架橋剤(内部架橋剤)
本発明においては、得られる吸水性樹脂の吸水性能の観点から、架橋剤(以下、「内部架橋剤」と称することもある)を使用する。使用できる内部架橋剤として、重合性二重結合を1分子あたり2つ以上有する化合物や、カルボキシル基と反応して共有結合を形成することができる官能基を1分子あたり2つ以上有する多官能化合物が挙げられる。例えば、アクリル酸との重合性架橋剤や、カルボキシル基との反応性架橋剤、それらを併せ持った架橋剤の1種以上を例示することができる。具体的には、重合性架橋剤として、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリオキシエチレン)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アリロキシアルカン等、分子内に重合性二重結合を少なくとも2個有する化合物が例示できる。また、反応性架橋剤として、エチレングリコールジグリシジルエーテル等のポリグリシジルエーテル;プロパンジオール、グリセリン、ソルビトール等の多価アルコール等の共有結合性架橋剤、アルミニウム塩等の多価金属化合物であるイオン結合性架橋剤が例示できる。これらの中でも、吸水性能の観点から、アクリル酸との重合性架橋剤が好ましく、特に、アクリレート系、アリル系、アクリルアミド系の重合性架橋剤が好適に使用される。これらの内部架橋剤は1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。上記内部架橋剤の使用量は、物性面から、架橋剤を除く上記単量体に対して、0.001〜5モル%が好ましく、0.005〜2モル%がより好ましく、0.01〜1モル%がさらに好ましく、0.03〜0.5モル%が特に好ましい。また、内部架橋剤は重合前の単量体水溶液に添加してもよく、重合中または重合後の含水ゲルに添加してもよく、これらを併用してもよいが、単量体水溶液に添加することが好ましい。
【0046】
(d)メトシフェノール類
本発明では、重合安定性の観点から、単量体にメトキシフェノール類が含まれることが好ましく、p−メトキシフェノールが含まれることがより好ましい。メトキシフェノール類の含有量は、単量体(アクリル酸)に対して、1〜250ppmが好ましく、5〜200ppmがより好ましく、10〜160ppmがさらに好ましく、20〜100ppmが特に好ましい。
【0047】
(e)単量体水溶液中のその他の成分
本発明で得られる吸水性樹脂の諸物性を改善するために、任意成分として、上記単量体水溶液に、以下の物質を添加することができる。すなわち、澱粉、ポリアクリル酸(塩)、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン等の水溶性樹脂あるいは吸水性樹脂を、単量体に対して、例えば0〜50重量%、好ましくは0〜20重量%、より好ましくは0〜10重量%、さらに好ましくは0〜3重量%添加することができる。ここで、上記任意成分を添加する際の、任意成分の添加量の下限は、その種類や目的、効果に応じて適宜決定され特に制限されないが、単量体に対して、0.001重量%程度であることが好ましい。
【0048】
さらに、各種の発泡剤(炭酸塩、アゾ化合物、気泡等)、界面活性剤、各種キレート剤、ヒドロキシカルボン酸や還元性無機塩等の添加剤を、単量体に対して、例えば0〜5重量%、好ましくは0〜1重量%添加することができる。ここで、上記添加剤を添加する際の、添加剤の添加量の下限は、その種類や目的、効果に応じて適宜決定され特に制限されないが、単量体に対して、0.001重量%程度であることが好ましい。
【0049】
これらの中でも、吸水性樹脂の経時着色の抑制(高温高湿下で長期間保存した際の色調安定性の向上)や耐尿性(ゲル劣化防止)の向上を目的とする場合には、キレート剤、ヒドロキシカルボン酸、還元性無機塩が好ましく使用され、キレート剤が特に好ましく使用される。この場合の使用量は、吸水性樹脂に対して、10〜5000ppmが好ましく、10〜1000ppmがより好ましく、50〜1000ppmがさらに好ましく、100〜1000ppmが特に好ましい。なお、上記キレート剤、ヒドロキシカルボン酸、還元性無機塩については、国際公開第2009/005114号、欧州特許第2057228号、同第1848758号に開示される化合物が使用される。
【0050】
(f)重合開始剤
本発明において使用される重合開始剤は、重合形態によって適宜選択され、特に限定されない。例えば、熱分解型重合開始剤、光分解型重合開始剤、レドックス系重合開始剤等が挙げられる。具体的には、熱分解型重合開始剤としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;過酸化水素、t−ブチルパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド等の過酸化物;2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド等のアゾ化合物等が挙げられる。また、光分解型重合開始剤としては、ベンゾイン誘導体、ベンジル誘導体、アセトフェノン誘導体(例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)、ベンゾフェノン誘導体、アゾ化合物等が挙げられる。さらに、レドックス系重合開始剤としては、上記過硫酸塩や過酸化物に、L−アスコルビン酸、亜硫酸水素ナトリウム等の還元性化合物を組み合わせた系が挙げられる。上記熱分解型重合開始剤と光分解型重合開始剤とを併用することも、好ましい態様として挙げることができる。これらの重合開始剤の使用量は、上記単量体に対して、0.0001〜1モル%が好ましく、0.001〜0.5モル%がより好ましい。重合開始剤の使用量が1モル%を超える場合、吸水性樹脂の着色を引き起こすことがあるため好ましくない。また、重合開始剤の使用量が0.0001モル%を下回る場合、残存モノマーを増加させるおそれがあるため好ましくない。
【0051】
なお、上記重合開始剤を使用する代わりに、放射線、電子線、紫外線等の活性エネルギー線を照射することにより重合を行ってもよい。または、これらの活性エネルギー線と重合開始剤とを併用して重合してもよい。
【0052】
(g)重合方法
本発明においては、上記単量体水溶液を重合するに際して、得られる吸水性樹脂の吸水性能や重合制御の容易性等の観点から、通常、水溶液重合または逆相懸濁重合が採用されるが、好ましくは水溶液重合、より好ましくは連続水溶液重合が採用される。中でも、吸水性樹脂の1ラインあたりの生産量が多い巨大スケールでの製造に好ましく適用される。該生産量として、好ましくは0.5[t/hr]以上であり、より好ましくは1[t/hr]以上、さらに好ましくは5[t/hr]以上、特に好ましくは10[t/hr]以上である。
【0053】
また、上記水溶液重合の好ましい形態として、連続ベルト重合(米国特許第4893999号、同第6241928号、米国特許出願公開第2005/215734号等)、連続ニーダー重合(米国特許第6987151号、同第670141号等)などが挙げられる。
【0054】
上記連続水溶液重合においては、重合開始温度を好ましくは30℃以上、より好ましくは35℃以上、さらに好ましくは40℃以上、特に好ましくは50℃以上(上限は沸点)とする高温開始重合、あるいは、単量体濃度を好ましくは35重量%以上、より好ましくは40重量%以上、さらに好ましくは45重量%以上(上限は飽和濃度)とする高単量体濃度重合が、最も好ましい一例として例示できる。なお、上記重合開始温度は、単量体水溶液の重合機供給直前の液温で規定されるが、米国特許第6906159号および同第7091253号等に開示された条件等を、本発明に好ましく適用することができる。
【0055】
また、これらの重合は、空気雰囲気下でも実施可能であるが、着色防止の観点から窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気(例えば、酸素濃度1容積%以下)下で実施することが好ましい。また、単量体または単量体を含む溶液中の溶存酸素を不活性ガスで置換(例えば、溶存酸素濃度;1mg/L未満)した後に、重合することが好ましい。また、減圧、常圧、加圧のいずれの圧力下でも実施することができる。
【0056】
(2−2)含水ゲル細粒化(解砕)工程
本工程は、上記重合工程で得られた含水ゲルを解砕し、粒子状の含水ゲル(以下、「粒子状含水ゲル」と称する)を得る工程である。
【0057】
上記重合工程で得られた含水ゲルは、そのまま乾燥を行ってもよいが、好ましくは重合時または重合後、必要により解砕機(ニーダー、ミートチョパー、カッターミル等)を用いてゲル解砕され粒子状にされる。すなわち、連続ベルト重合または連続ニーダー重合による重合工程と乾燥工程との間に、含水ゲルの細粒化(以下、「ゲル解砕」とも称する)工程をさらに含んでもよい。なお、逆相懸濁重合等、重合時に溶媒中での分散よってゲルが細粒化されている場合も、本発明の細粒化(重合工程の細粒化)に含むものとするが、好適には解砕機を用いて解砕される。また、細粒化(解砕)工程において、含水ゲルに対して上記添加剤等の混合やポリアクリル酸(塩)の酸基の後中和、ポリアクリル酸(塩)の後架橋を行ってもよい。最終的な中和率や内部架橋剤量は上記の範囲であり、重合後の後中和には上記(b)中和の塩に記載される水酸化ナトリウムや炭酸(水素)塩またはそれらの水溶液や水分散液が用いられる。また、重合後の後架橋には上記(c)架橋剤(内部架橋剤)に記載される(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテルや水溶性多価金属塩等のカルボキシル基と反応できる架橋剤が適宜使用できる。
【0058】
ゲル解砕時の含水ゲルの温度は、物性の面から、好ましくは40〜95℃、より好ましくは50〜80℃に保温または加熱される。また、ゲル解砕時または解砕後の粒子状含水ゲルの樹脂固形分は、特に限定されるものではないが、物性の面から、35〜75重量%である。なお、ゲル解砕工程においては、解砕効率向上を目的に、必要に応じて、水、多価アルコール、水と多価アルコールとの混合液、多価金属水溶液、あるいはこれらの蒸気等を添加してもよい。また、本願発明を好ましく適用できる高固形分濃度(例えば、以下の45〜70重量%)の含水ゲルを解砕する場合には、解砕装置内を通風、好ましくは乾燥空気を通気してもよい。
【0059】
ゲル解砕後の粒子状含水ゲルの重量平均粒子径(D50)は、0.1〜4mmが好ましく、0.3〜3mmがより好ましく、0.5〜2mmがさらに好ましい。上記粒子状含水ゲルの重量平均粒子径(D50)が、上記範囲内となることで、乾燥が効率的に行われるため好ましい。また、5mm以上の粒径を有する粒子状含水ゲルの割合は、粒子状含水ゲル全体の0〜10重量%が好ましく、0〜5重量%がより好ましい。
【0060】
なお、上記粒子状含水ゲルの粒子径は、粉砕工程後の吸水性樹脂の粒子径と同様に、特定の目開きの篩で分級することによって求められる。また、重量平均粒子径(D50)についても、同様に求めることができる。ただし、上記粒子状含水ゲルの分級操作が、乾式の分級方法では凝集等により測定が困難である場合は、特開2000−63527号公報の段落〔0091〕に記載の、湿式の分級方法を用いて測定する。
【0061】
(2−3)乾燥工程
本発明は乾燥工程に特徴を有している。すなわち、アクリル酸部分中和塩を架橋剤とともに水溶液中で重合して得られる固形分濃度が35〜75重量%の粒子状含水ゲル状重合体を、通気型乾燥機を用いて乾燥する方法であって、該粒子状含水ゲル状架橋重合体が通気型乾燥機の乾燥ゾーンに導入された後、固形分濃度が80重量%に到達するまでの期間の乾燥条件が以下の(1)および(2)を満たす乾燥方法を提供する:
(1)粒子状含水ゲル層に吹き付ける熱風の温度が130〜230℃で、かつ、露点が50〜80℃であること;および
(2)粒子状含水ゲル層に吹き付ける熱風の温度と、該熱風が粒子状含水ゲル層を通過した後に測定される温度との温度差が、20〜70℃であること。
【0062】
なお、粒子状含水ゲルの固形分濃度は通常35〜75重量%であり、好ましくは40〜70重量%、より好ましくは45〜70重量%である。上記固形分濃度が35重量%よりも低いと、生産性が低いだけでなく、本発明の特有の効果が現れに難い。また、固形分濃度が過度に高いと吸水倍率等の物性が低下することがある。固形分濃度は、重合時の単量体の濃度や重合時の蒸発、さらに必要により重合中や重合後に添加する添加剤で決定されるが、添加剤として吸水性樹脂微粉やその含水ゲルを添加して固形分濃度を制御してもよい。以下、本発明の乾燥工程について、詳細に説明する。
【0063】
(a)通気型乾燥装置
本発明で用いられる乾燥装置は、通気型乾燥装置であり、バッチ式と連続式とがあり、それぞれ「通気バッチ式乾燥装置」、「通気連続式乾燥装置」と呼ばれる。通気連続式乾燥装置については、「通気ベルト式乾燥機」あるいは「バンド型連続式通気乾燥機」等と称することもある。本発明では、上記乾燥装置のうち、通気連続式乾燥装置が好ましく、通気ベルト式乾燥機がより好ましい。以下、通気ベルト式乾燥機について詳述する。ただし、本発明は、下記説明に限定されない。
【0064】
上記通気型乾燥装置には、被乾燥物を載せるための金網または多孔板と、被乾燥物および金網若しくは多孔板に対して垂直方向(または実質的に垂直方向)に熱風を吹き付けるための熱風発生装置が備えられている。さらに、通気連続式乾燥装置においては、金網または多孔板で作られたエンドレスコンベアと、好ましくはさらに内壁で仕切られた多数の乾燥室とを有し、乾燥室ごとに熱風を通気することができる構造となっている。
【0065】
上記通気バッチ式乾燥装置では、被乾燥物を回分式に出し入れするのに対して、上記通気連続式乾燥装置では、被乾燥物をエンドレスベルト上に載せられた後、各乾燥室で乾燥を行い、ベルトコンベアの折り返し場所で落下し系外に取り出される。
【0066】
上記通気連続式乾燥装置のエンドレスコンベアのベルト長は、特に制限されないが、通常5〜100mであり、好ましくは10〜70m、より好ましくは20〜60mの範囲である。また、ベルト幅についても、特に制限されないが、通常0.5〜10mであり、好ましくは1〜5mの範囲である。なお、長さ方向と幅方向の比も目的に応じて適宜決定できるが、幅より進行方向が長く、通常3〜500倍であり、好ましくは5〜100倍で適宜決定される。
【0067】
上記通気連続式乾燥装置のエンドレスコンベアに使用される通気ベルトとしては、目開きが45〜1000μmの金網やパンチングメタルが挙げられるが、好ましくはパンチングメタルが使用される。該パンチングメタルの孔の形状は、特に制限されず、例えば、丸穴、楕円穴、角穴、六角穴、長丸穴、長角穴、菱穴、十字穴やこれら複数形状の併用が挙げられ、穴の並び方についても特に制限されず、例えば、千鳥状でも並列状でもよい。さらに、孔がルーバー(出窓)等立体的に形成されてもよいが、好ましくは平面構造の孔を有する。また、孔のピッチ方向についても特に制限されず、例えば、エンドレスコンベアの進行方向に対して、縦向きでもよく、横向きでもよく、斜め向きでもよく、これらの併用でもよい。また、通気連続式乾燥装置に使用されるエンドレスベルトと同一仕様の金網やパンチングメタルを上記通気バッチ式乾燥装置に用いることもできる。
【0068】
通気連続式乾燥装置のエンドレスコンベア上に導入された被乾燥物(粒子状含水ゲル)の移動速度は、生産量、ベルト長、ベルト幅、乾燥時間により適宜調整すればよいが、コンベア駆動装置の負荷、耐久性等の観点から、好ましくは0.3〜5[m/min]、より好ましくは0.5〜2.5[m/min]、さらに好ましくは0.5〜2[m/min]、特に好ましくは0.7〜1.5[m/min]である。
【0069】
本発明を達成する上では、粒子状含水ゲル層に吹き付ける熱風の温度、露点、風量を多段階に変化させることが好ましく、そのため、多室を有する通気連続式乾燥装置を使用することが好ましく、乾燥室数としては、5室以上が好ましく、6室以上がより好ましく、8室以上が特に好ましい。上記乾燥室の各部屋の大きさ(言い換えれば、ベルトの進行方向に対する長さ)は、同じでも異なっていてもよい。また、上記熱風は、(2−2)等で得られた粒子状含水ゲルのゲル層を上下(上から下向き、または下から上向き)に通過できるように、吹き付けられる。なお、乾燥室数の上限は生産量等により適宜設定すればよいが、通常20室程度で十分である。なお、多室を有する通気バンド型乾燥機は、特許文献2、特許文献3の
図2や非特許文献1のFig.3.6に示されている。なお、上記通気型乾燥装置(通気バンド乾燥機)を日本国内において製作、販売しているメーカーとしては、栗本鉄工所、クメタ製作所、(株)ダルトン、フジパウダル(株)、大川原製作所等が例示される。
【0070】
なお、通気ベルト式乾燥機等の通気連続式乾燥装置を用いた工業的スケールでの実験には、一般に、大量(通常、0.5[t/hr]以上、更には1[t/hr]以上、特に5[t/hr]以上)の連続乾燥および数時間または数日間の生産が必要である。しかしながら、乾燥条件を一定にした場合に得られる吸水性樹脂の物性は、連続乾燥と、バッチ式乾燥とで、ほぼ同じ挙動を示すので、連続乾燥のシミュレーション実験として、バッチ式乾燥を採用することができる。つまり、連続乾燥のモデル実験として小スケール(1バッチ当り、数kg〜数10kg)で乾燥実験を行い、大スケールでの連続乾燥と、小スケールでのバッチ乾燥との相関を確認しつつ、通気ベルト式乾燥機の運転条件を決定することができる。例えば、後述の実施例1および2の通気静置バッチ式乾燥機における乾燥条件を、そのまま、通気ベルト式乾燥機における乾燥工程に適用することも可能である。このように、通気静置バッチ式乾燥機における乾燥結果をもとに、通気ベルト式乾燥機の乾燥条件を決定することで、単位時間あたりの乾燥量が10倍以上、100倍以上、200〜1万倍のスケールアップが容易となる。
【0071】
(b)固形分濃度80重量%までの乾燥条件
本発明者らは、乾燥工程において、粒子状含水ゲル状架橋重合体が通気型乾燥機の乾燥ゾーンに導入された後、固形分濃度が80重量%に到達するまでの60%以上の期間における乾燥条件が、得られる吸水性樹脂の物性に対して支配的であることを見出した。
【0072】
すなわち、本発明に係る粒子状含水ゲル状架橋重合体の乾燥工程において、粒子状含水ゲル状架橋重合体に含まれる水分が、単に蒸発するのみならず、下記に掲げる化学反応の少なくとも一が粒子状含水ゲル状架橋重合体の乾燥と同時に生じていると考えられる。
【0073】
1.重合の進行
(ア)重合開始剤の分解によるラジカル発生
(イ)ラジカル付加重合
2.重合体の分解・劣化
(ア)重合体主鎖の分解
(イ)架橋部分の分解
(ウ)酸化による着色
3.重合体間の架橋
これらの化学反応が、特に乾燥工程の初期、中でも粒子状含水ゲルの固形分濃度が80重量%まで到達する期間の乾燥条件に大きく依存していることを見出した。なお、固形分濃度が80重量%を超えた以降の乾燥条件については、当業者が常識的に採用する条件を適宜選択すればよい。
【0074】
本発明に係る乾燥方法において、粒子状含水ゲルの固形分濃度が80重量%に到達するまでの期間(時間、または通気バンド型乾燥機における位置)は、粒子状含水ゲルの実測値から求めてもよく、あるいは乾燥装置内に設置した測定器(水分計)から求めてもよく、さらには単位時間毎に粒子状含水ゲルの固形分濃度を測定し、その固形分の時間変化のプロットから、固形分濃度が80重量%となる乾燥時間(位置)を求めてもよい。なお、単位時間毎の粒子状含水ゲルの固形分濃度変化については、非特許文献1のFig.3.7に例示されている。
【0075】
また、本発明の乾燥方法において、通気バンド型乾燥機で粒子状含水ゲルに対して垂直方向に通気する場合、同じ乾燥時間(バンド乾燥機の位置)であっても、ゲル層の厚み(例えば、1〜20cm)方向で固形分濃度(含水率)が異なる場合がある。このような場合には、厚み方向に上下数箇所のサンプリングを行い、その平均固形分濃度で本発明の「80重量%」を規定すればよい。なお、本発明の固形分濃度は、実施例に記載した乾燥減量法(180℃、24時間での乾燥減量)と同じ固形分濃度が測定されうる限り、他の方法を代用してもよい。
【0076】
本発明に係る乾燥方法において、粒子状含水ゲルの固形分濃度が80重量%に到達するまでの60%以上の期間の乾燥条件として、粒子状含水ゲルに吹き付ける熱風の温度は、130〜230℃であり、140〜220℃が好ましく、150〜210℃がより好ましく、160〜200℃がさらに好ましい。上記熱風の温度が130℃未満の場合、乾燥速度が遅く、経済性に乏しい。一方、熱風の温度が230℃を超える場合、局部的な過熱によって吸水性樹脂の物性の低下を招くおそれがある。
【0077】
また、該熱風の露点は、吸水性樹脂の物性に対して特に重要であり、固形分濃度が80重量%に到達するまでの乾燥時間の少なくとも一部の乾燥区間において、即ち、乾燥時間の60%以上、以下順に、70%以上、80%以上、90%以上が好ましく、特に好ましくは乾燥時間の100%の乾燥区間において、使用する熱風の露点が50〜80℃であることが必要であり、好ましくは55〜75℃である。なお、乾燥区間毎に熱風の温度や露点を変化させる場合、バッチ式乾燥では、一定時間経過毎に連続的に変化させてもよく、また、多室で構成される通気連続式乾燥では、ベルト上の含水ゲルが連続的に通過する乾燥室毎に変化させてもよい。
【0078】
また、乾燥速度アップ等を目的として、露点が50℃を下回る区間を一部設けてもよいが、その場合、残存モノマー低減の観点から、露点の下限は10℃以上が好ましく、20℃以上がより好ましい。
【0079】
さらに、本発明で必須の熱風温度差(ΔT)を20〜70℃とするため、使用する熱風の温度および/または露点を多段で変化させることが好ましい。その変化幅としては、特に限定されないが、乾燥時間1分あたり、あるいは各乾燥室あたり、好ましくは1℃以上、より好ましくは2℃以上、さらに好ましくは3℃以上の温度幅あるいは露点幅で変化させる。
【0080】
乾燥開始から固形分濃度が80重量%に到達するまでの期間中(乾燥期間の40%未満、さらには30%未満)で上記熱風の露点が50℃に満たない場合、粒子状含水ゲルの温度が速やかに上昇する前に固形分濃度が上昇してしまい、乾燥工程での重合の進行が不十分となるため、残存モノマーが増加するおそれがある。一方、熱風の露点が80℃を超える場合、得られる吸水性樹脂の色調悪化が見られるのみならず、吸水性能の低下を招くおそれがある。さらに、該熱風の風速は、3.0[m/sec]以下、より好ましくは0.5〜2.0[m/sec]に制御することが好ましい。また、該熱風の風向きは、粒子状含水ゲルに対して、上向きでも、あるいは下向きでも良く特に制限されないが、通気バンド型乾燥機を使用する場合には、上向きおよび下向きの併用が好ましく、特に該乾燥機の前半部が上向き(Up−Flow)、後半部が下向き(Down−Flow)が好ましい。このような乾燥を行うことで、より均一な乾燥が達成できる。
【0081】
本発明に係る乾燥方法において、粒子状含水ゲルの固形分濃度が80重量%に到達するまでの期間中(必須に乾燥期間の60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは実質的に全期間)での、粒子状含水ゲル層に吹き付ける熱風の温度と、該熱風が粒子状含水ゲル層を通過した後に測定される温度との温度差が、20〜70℃であることが必要であり、好ましくは30〜60℃である。固形分濃度が80重量%に到達するまでの期間中(乾燥期間の40%未満、好ましくは30%未満、より好ましくは20%未満、さらに好ましくは10%未満)での上記温度差が20℃未満の場合、生産性があがらず、また、固形分濃度が80重量%に到達するまでの期間中(乾燥期間の40%未満、好ましくは30%未満、より好ましくは20%未満、さらに好ましくは10%未満)での上記温度差が70℃を超える場合、該熱風から粒子状含水ゲルへの熱移動が急速であり、乾燥の部位間の不均一あるいは部分的過熱を引き起こすと考えられ、乾燥の不均一さが増大し、所望の物性の吸水性樹脂を得ることが難しくなるため、好ましくない。
【0082】
なお、粒子状含水ゲル層に吹き付ける熱風の温度は、通常、乾燥機の熱風入口の直近(例えば、入口から1m以内、さらに好ましくは0.2m以内の配管部分)で測定される。また、本願で規定される熱風が粒子状含水ゲル層を通過した後に測定される温度は、通常、該粒子状含水ゲル層の直上に設置された温度計、あるいは熱風の排出口直近(例えば、排出口から1m以内、さらに好ましくは0.2m以内の配管部分)で測定される。また、露点の測定は、上記温度測定と同じ箇所で行われる。なお、本発明では、
図1に示されるように、粒子状含水ゲル層に吹き付ける熱風の温度は、乾燥機の熱風入口(
図1中の通気型乾燥機8の熱風入口9)から0.1mの地点Aで測定された温度である。また、熱風が粒子状含水ゲル層を通過した後に測定される温度は、
図1に示されるように、乾燥機の熱風排出口(
図1中の通気型乾燥機8の熱風排出口10)から0.1mの地点Bで測定された温度である。
【0083】
通気バッチ式乾燥装置では、乾燥時間に対して、熱風の温度と露点を計測すればよく、また、通気連続式乾燥装置では、通気ベルト上の所定位置(乾燥時間と同義)における熱風の温度と露点を計測すればよい。さらに、上記多室を有する通気バンド型乾燥機においては、ベルト上の含水ゲルが連続的に通過する乾燥室ごとに温度と露点を計測することができる。
【0084】
本願で規定する上記熱風の温度差を20〜70℃に制御する方法は、任意の方法によって温度差を20〜70℃にすればよく、特に制限されないが、以下に掲げる(1)〜(7)の一つまたは二つ以上を適宜選択することが好ましく、中でも(1)のゲル層の厚みを制御することがより好ましい。
【0085】
(1)ベルト上に積層する粒子状含水ゲル層の厚み
例えば、本発明では、ベルト上に積層する粒子状含水ゲル層の厚みは、10〜90mm程度であることが好ましく、20〜60mm程度であることがより好ましい。このような範囲であれば、熱風の温度差を上記範囲に容易に制御でき、また、乾燥効率や吸水性樹脂の諸物性を向上させることができ、特に、吸水性樹脂の嵩比重を高く制御することができる。
【0086】
(2)ベルト上に積層する粒子状含水ゲル層の温度
例えば、本発明においては、乾燥ゾーンに挿入される直前(乾燥直前)の粒子状含水ゲルの温度は、特に制限されないが、40〜70℃、さらに好ましくは45〜60℃であることが好ましい。このような範囲であれば、熱風の温度差を小さく乾燥物の物性にむらが生じにくく、また、吸水性樹脂の色調悪化や吸水性能の低下を抑えられる。
【0087】
(3)ベルト上に積層する粒子状含水ゲル層の嵩比重(圧縮度合い)
例えば、本発明では、ベルト上に積層する粒子状含水ゲル層の嵩比重(圧縮度合い)は、上記(1)で規定されるベルト上に積層する粒子状含水ゲル層の厚みになるような圧縮度合いであれば特に制限されず、熱風の透過性や粒子状含水ゲルの飛散しやすさに応じて適宜選択される。ここで、嵩比重が高すぎると、熱風の透過性が悪くなり乾燥むらが生じる可能性がある。逆に、嵩比重が小さすぎると、熱風で粒子状含水ゲルが飛散しやすくなる可能性がある。
【0088】
(4)粒子状含水ゲル状重合体の粒度分布
例えば、本発明では、粒子状含水ゲル状重合体の粒度分布は、以下の(2−4)に記載されるようなベースポリマーの重量平均粒子径(D50)が得られるような粒度分布であれば特に制限されない。具体的には、粒子状含水ゲル状重合体の重量平均粒子径(D50)は、0.1〜4mmが好ましく、0.3〜3mmがより好ましく、0.5〜2mmがさらに好ましい。このような範囲であれば、熱風の温度差を小さく乾燥物の物性にむらが生じにくく、また、吸水性樹脂の色調悪化や吸水性能の低下を抑えられる。
【0089】
(5)粒子状含水ゲル状重合体の含水率
例えば、本発明では、粒子状含水ゲル状重合体の含水率は、粒子状含水ゲルの固形分濃度によって規定され、通常25〜65重量%であり、好ましくは30〜60重量%、より好ましくは30〜55重量%である。
【0090】
(6)熱風の線速
例えば、本発明では、熱風の線速は、上記(5)で規定される含水率が達成できる程度であれば特に制限されないが、3.0m/sec以下が好ましく、0.5〜2.0m/secがより好ましい。このような範囲であれば、粒子状含水ゲル状重合体の含水率を適度な範囲に調節しつつ、熱風の温度差を小さく乾燥物の物性にむらが生じにくく、また、吸水性樹脂の色調悪化や吸水性能の低下を抑えられる。
【0091】
(7)ベルト上の粒子状含水ゲル状重合体が占める面積率
例えば、本発明では、ベルト上の粒子状含水ゲル状重合体が占める面積率は、特に制限されないが、粒子状含水ゲル状重合体が、ベルトの表面積1m
2に対して、0.85〜1m
2程度積層されることが好ましく、0.90〜0.98m
2程度積層されることがより好ましい。このような範囲であれば、熱風が均一にかつ効率よく粒子状含水ゲル状重合体に吹きつけ、熱風の温度差を小さく乾燥物の物性にむらが生じにくく、また、吸水性樹脂の色調悪化や吸水性能の低下を抑えられる。
【0092】
(c)通気ベルトの材質等
通気ベルトは単一ベルト、複数のベルト、多工程または多段階装置として形成されてもよい。本発明にとって少なくとも1つのベルトを有するベルト乾燥機の運転が有利である。単一ベルト乾燥機が特に有利である。電気研磨またはテフロン(登録商標)処理のような所定の表面処理も可能である。中でもパンチングメチルの材質は好ましくはステンレスであり、厚みは通常0.3〜10mm、好ましくは1〜5mmで適宜決定される。
【0093】
ベルト表面の表面粗さは、JIS B 0601−2001で規定される表面粗さ(Rz)が800nm以下に制御される。表面粗さ(Rz)は、好ましくは500nm以下、より好ましくは300nm以下、よりさらに好ましくは200nm以下、特に好ましくは185nm以下、最も好ましくは170nm以下に平滑化される。このときは、表面粗さ(Rz)は、表面凹凸の最大高さ(μm)の最大値を意味する。表面粗さ(Rz)の下限は、0nmであるが、10nm程度でも大きな差はなく、10nm、さらには20nm程度でも十分である。その他の表面粗さ(Ra)もJIS B 0601−2001で規定されるが、その好ましい値もRzと同じとされる。より好ましくは、Raは、250nm以下、特に好ましくは200nm以下である。表面粗さ(Ra)の下限は、0nmであるが、10nm程度でも大きな差はない。
【0094】
このような表面粗さは、触針式表面粗さ測定器によりJIS B 0651−2001に準拠して測定することができる
(d)乾燥工程の添加物
本発明の乾燥工程において、(2−1)(e)に例示した添加物等を、目的に応じて添加しても良い。また、下記(2−6)に記載した微粉リサイクル工程での微粉(特に粒子径150μm以下の粉体を70重量%以上含む微粉)を、乾燥前の粒子状含水ゲルに1〜40重量%で、さらには10〜30重量%(対固形分)で混合してもよい。
【0095】
(2−4)粉砕工程、分級工程(乾燥後の粒度および調整)
本工程は、上記乾燥工程で得られた乾燥物を、粉砕、分級して、ベースポリマーを得る工程である。
【0096】
本工程においては、上記乾燥工程で得られた乾燥物をそのまま乾燥粉末として使用することもできるが、後述する表面架橋工程での物性向上のため、特定の粒度に制御することが好ましい。なお、粒度制御は、本粉砕工程、分級工程に限らず、重合工程(特に逆相懸濁重合)、微粉回収工程、造粒工程等で適宜実施することができる。以下、粒度は標準篩(JIS Z8801−1(2000))で規定する。
【0097】
本粉砕工程で使用できる粉砕機は、特に限定されず、従来から知られている粉砕機を使用することができる。具体的には、ロールミル、ハンマーミル、ロールグラニュレーター、ジョークラッシャー、ジャイレクトリークラッシャー、コーンクラッシャー、ロールクラッシャー、カッターミル等を挙げることができる。これらの中でも、粒度制御の観点から、多段のロールミルまたはロールグラニュレーターを使用することが好ましい。
【0098】
また、分級工程においては、ふるい分級や気流分級等、各種の分級機を使用することができる。
【0099】
本工程で得られる吸水性樹脂の物性向上の観点から、以下の粒度となるように制御することが好ましい。すなわち、ベースポリマーの重量平均粒子径(D50)は、200〜600μmが好ましく、200〜550μmがより好ましく、250〜500μmがさらに好ましく、350〜450μmが特に好ましい。また、目開き150μmの篩(JIS標準篩)を通過する微細な(粒径150μm未満の)粒子の割合が、ベースポリマー全体に対して、0〜5重量%が好ましく、0〜3重量%がより好ましく、0〜1重量%がさらに好ましい。また、目開き850μmの篩(JIS標準篩)を通過しない巨大な(粒径850μm超の)粒子の割合が、ベースポリマー全体に対して、0〜5重量%が好ましく、0〜3重量%がより好ましく、0〜1重量%がさらに好ましい。さらに、ベースポリマーの粒度分布の対数標準偏差(σζ)は、0.20〜0.40が好ましく、0.25〜0.37がより好ましく、0.27〜0.35がさらに好ましい。これらの粒度は、国際公開第2004/69915号やEDANA−ERT420.2.−02(Particle Size Disribution)に開示された方法で測定される。
【0100】
(2−5)表面架橋工程
上記乾燥工程によって得られた架橋重合体(ベースポリマー)は表面架橋されてもよい。すなわち、本発明は、本発明に係る乾燥後にさらに表面架橋を有する吸水性樹脂の製造方法をも包含する。
【0101】
本工程は、必要であれば、上記粉砕工程、分級工程で得られたベースポリマーの表面近傍を、吸水性能向上のために、表面架橋剤を用いて架橋(表面架橋反応)する工程であり、該表面架橋によって、本発明の効果はより顕著なものとなる。なお、特許文献1は残存モノマー低減方法の発明であり、特許文献3、4は未乾燥物のないバンド乾燥方法に関する技術であるが、特許文献1、3、4には表面架橋、加圧下吸水倍率や通液性についての開示はない。すなわち、本願特定の乾燥と本表面架橋処理によって、特許文献1〜4に開示のない、着色の少ない白色度の高い吸水性樹脂が得られ、特に高温表面架橋での吸水性樹脂に好ましく適用される。さらに、本発明で得られる吸水性樹脂を衛生用品(特に紙オムツ)の原材料として使用する場合、本表面架橋処理によって、無加圧下吸水倍率(CRC)を低下(好ましくは低下幅で1〜10[g/g])させ、AAP(加圧下吸水倍率)を、好ましくは20[g/g]以上に高めればよい。
【0102】
本発明で用いることができる表面架橋剤としては、特に限定されないが、種々の有機または無機架橋剤を挙げることができる。中でも有機表面架橋剤が好ましく、有機表面架橋剤とイオン架橋剤との併用がより好ましい。具体的には、多価アルコール化合物、エポキシ化合物、多価アミン化合物またはそのハロエポキシ化合物との縮合物、オキサゾリン化合物、(モノ、ジ、またはポリ)オキサゾリジノン化合物、アルキレンカーボネート化合物であり、特に高温での反応が必要な、多価アルコール化合物、アルキレンカーボネート化合物、オキサゾリジノン化合物からなる脱水エステル反応性架橋剤が使用できる。さらにより具体的には、米国特許第6228930号、同第6071976号、同第6254990号等に例示されている化合物を挙げることが出来る。例えば、モノ,ジ,トリ,テトラまたはプロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、グリセリン、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ソルビトール等多価アルコール化合物;エチレングリコールジグリシジルエーテルやグリシドール等のエポキシ化合物;エチレンカボネート等のアルキレンカーボネート化合物;オキセタン化合物;2−イミダゾリジノンのような環状尿素化合物等が挙げられる。上記表面架橋剤の使用量は、ベースポリマー100重量部に対して、好ましくは0.001〜10重量部、より好ましくは0.01〜5重量部の範囲内で適宜決定される。
【0103】
また、吸水性樹脂と表面架橋剤との混合の際、溶媒として水を用いることが好ましい。上記水の使用量は、ベースポリマー100重量部に対して、好ましくは0.5〜20重量部、より好ましくは0.5〜10重量部の範囲内で適宜決定される。さらに、上記水以外に、必要に応じて、親水性有機溶媒を併用してもよく、その使用量は、ベースポリマー100重量部に対して、好ましくは0〜10重量部、より好ましくは0〜5重量部の範囲内で適宜決定される。
【0104】
さらに、表面架橋剤溶液の混合に際し、水不溶性の微粒子粉体や界面活性剤を本発明の効果を妨げない程度に共存させてもよい。該微粒子粉体や界面活性剤の種類や使用量等については、米国特許第7473739号等に例示されているが、該使用量としては、ベースポリマー100重量部に対して、好ましくは0〜10重量部、より好ましくは0〜5重量部、さらに好ましくは0〜1重量部の範囲内で適宜決定される。
【0105】
本工程において、ベースポリマーと表面架橋剤とを混合した後、好ましくは加熱処理され、その後必要により冷却処理される。上記加熱処理時の加熱温度は、70〜300℃が好ましく、120〜250℃がより好ましく、150〜250℃がさらに好ましい。上記処理温度が70℃未満の場合、加熱処理時間が延び生産性の低下を招来する上に、均一な表面架橋層を形成することができないため好ましくない。また、上記処理温度が300℃を超える場合、ベースポリマーが劣化するため好ましくない。また、上記加熱処理時の加熱時間は、1分〜2時間の範囲が好ましい。上記加熱処理は、通常の乾燥機または加熱炉で行うことができる。
【0106】
なお、欧州特許第0349240号、同第0605150号、同第0450923号、同第0812873号、同第0450924号、同第0668080号、日本国特開平7−242709号、同平7−224304号、米国特許第5409771号、同第5597873号、同第5385983号、同第5610220号、同第5633316号、同第5674633号、同第5462972号、国際公開第99/42494号、同第99/43720号、同第99/42496号等に開示された表面架橋方法についても、本発明に好ましく適用することができる。
【0107】
(2−6)その他の工程
上記工程以外に、必要により、多価金属の表面処理工程、蒸発モノマーのリサイクル工程、造粒工程、微粉除去工程、微粉リサイクル工程等を設けてもよい。さらに、経時色調の安定性効果やゲル劣化防止等のために、上記各工程のいずれかまたは全部に、上記添加剤を単量体またはその重合物に使用してもよい。
【0108】
上記多価金属塩の表面処理工程は、高い加圧下通液性(SFCやGBP)を求める場合に適用され、例えば、米国特許第6605673号、同第6620899号に記載された製法が必要に応じて適用される。
【0109】
さらに、本発明の製造方法においては、好ましくは微粉リサイクル工程を含んでもよい。微粉リサイクル工程とは、乾燥工程および必要により粉砕工程、分級工程で発生する微粉(特に粒子径150μm以下の粉体を70重量%以上含む微粉)を分離した後、そのままの状態で、あるいは水和して重合工程や乾燥工程にリサイクルする工程をいい、米国特許出願公開第2006/247351号や米国特許第6228930号に記載された方法を適用することができる。微粉をリサイクルすることで、ベースポリマーの粒度を制御することができるとともに、微粉の添加によって、高固形分濃度を容易に達成することができ、さらに、乾燥機の通気ベルトから、乾燥物を容易に剥離することができるので好ましい。
【0110】
従来の乾燥方法では、微粉リサイクル工程を含む製造方法により得られた吸水性樹脂は、微粉添加に伴う不均一乾燥、残存モノマーの増加、吸水倍率の低下等のため、高物性の吸水性樹脂を得ることが困難であった。本発明の乾燥方法では、特に吸水性樹脂の製造工程において微粉リサイクル工程を含む場合に、吸収物性低下の抑止や着色防止の効果に優れる。
【0111】
〔3〕吸水性樹脂の物性
本発明の吸水性樹脂は、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を主成分とし、衛生用品、特に紙オムツへの使用を目的とする場合、上述した重合方法や表面架橋方法等によって得られる。さらに得られる吸水性樹脂は、下記(3−1)〜(3−5)に挙げられた各物性のうち、少なくとも1以上の物性を制御することが好ましく、さらにはAAPを含めた2以上、特に3以上の物性を制御することが好ましい。吸水性樹脂が下記の各物性を満たさない場合、吸水性樹脂濃度が40重量%以上の高濃度オムツでは十分な性能を発揮しないおそれがある。
【0112】
(3−1)CRC(無加圧下吸水倍率)
本発明で得られる吸水性樹脂のCRC(無加圧下吸水倍率)は、10[g/g]以上が好ましく、20[g/g]以上がより好ましく、25[g/g]以上がさらに好ましく、30[g/g]以上が特に好ましい。CRCの上限値は、特に限定されないが、50[g/g]以下が好ましく、45[g/g]以下がより好ましく、40[g/g]以下がさらに好ましい。上記CRCが10[g/g]未満の場合、吸水性樹脂の吸水量が低く、紙オムツ等、衛生用品中の吸収体への使用に適さないおそれがある。また、上記CRCが50[g/g]を超える場合、かような吸水性樹脂を吸収体に使用すると、液の取り込み速度に優れる衛生用品を得ることができないおそれがあるため、好ましくない。なお、CRCは、上述した内部架橋剤や表面架橋剤等で適宜制御することができる。
【0113】
(3−2)AAP(加圧下吸水倍率)
本発明で得られる吸水性樹脂のAAP(加圧下吸水倍率)は、紙オムツでのモレを防止するため、上記乾燥を達成手段として、4.83kPa(0.7psi)の加圧下におけるAAPとして、20[g/g]以上が好ましく、22[g/g]以上がより好ましく、24[g/g]以上がさらに好ましい。AAPの上限値は、特に限定されないが、他の物性とのバランスから40[g/g]以下が好ましい。上記AAPが20[g/g]未満の場合、かような吸水性樹脂を吸収体に使用すると、吸収体に圧力が加わった際の液の戻り(通常、「リウェット(Re−Wet)」とも称される)が少ない衛生用品を得ることができないおそれがあるため、好ましくない。なお、AAPは、上述した表面架橋剤や粒度等で適宜制御することができる。
【0114】
(3−3)SFC(生理食塩水流れ誘導性)
本発明で得られる吸水性樹脂のSFC(生理食塩水流れ誘導性)は、紙オムツでのモレを防止するため、上記乾燥を達成手段として、加圧下での液の通液特性であるSFCとして、20[×10
−7・cm
3・s・g
−1]以上が好ましく、30[×10
−7・cm
3・s・g
−1]以上がより好ましく、35[×10
−7・cm
3・s・g
−1]以上がさらにより好ましく、50[×10
−7・cm
3・s・g
−1]以上が特に好ましい。SFCの上限値は、特に限定されないが、他の物性とのバランスから3000[×10
−7・cm
3・s・g
−1]以下が好ましく、2000[×10
−7・cm
3・s・g
−1]以下がより好ましい。上記SFCが3000[×10
−7・cm
3・s・g
−1]を超える場合、かような吸水性樹脂を吸水体に使用すると、吸水体で液漏れが発生するおそれがあるため、好ましくない。なお、SFCは、上述した乾燥方法等で適宜制御することができる。
【0115】
(3−4)Ext(水可溶分)
本発明で得られる吸水性樹脂のExt(水可溶分)は、35重量%以下が好ましく、25重量%以下がより好ましく、15重量%以下がさらに好ましく、10重量%以下が特に好ましい。上記Extが35重量%を超える場合、得られる吸水性樹脂のゲル強度が弱く、液透過性に劣ったものとなるおそれがある。また、かような吸水性樹脂を吸水体に使用すると、吸水体に圧力が加わった際の液の戻り(リウェット)が少ない吸水性樹脂を得ることができないおそれがあるため、好ましくない。なお、Extは、上述した内部架橋剤等で適宜制御することができる。
【0116】
(3−5)Residual Monomers(残存モノマー)
本発明で得られる吸水性樹脂のResidual Monomers(残存モノマー)は、安全性の観点から、好ましくは0〜400ppm、より好ましくは0〜350ppm、さらにより好ましくは0〜300ppm、特に好ましくは0〜200ppmに制御される。なお、Residual Monomersは、上述した重合方法等で適宜制御することができる。
【0117】
〔4〕吸水性樹脂の用途
本発明にかかる製造方法により得られる吸水性樹脂の用途は、特に限定されず、紙オムツ、生理用ナプキン、失禁パット等の衛生用品、農園芸用保水剤、廃液固化剤や、工業用止水材等、吸収性物品に使用することができる。
【0118】
本発明で得られる吸水性樹脂は、吸水性樹脂を高濃度に使用する吸収性物品で、特に優れた性能が発揮される。すなわち、該吸収性物品中の吸収体における吸水性樹脂の含有量(コア濃度)は、30〜100重量%が好ましく、40〜100重量%がより好ましく、50〜100重量%がさらに好ましく、60〜100重量%がさらにより好ましく、70〜100重量%が特に好ましく、75〜95重量%が最も好ましい。該コア濃度を上記範囲内とすることで、本発明の効果をより発揮することができるため、好ましい。特に、本発明で得られる吸水性樹脂を上記コア濃度の範囲内で吸収体上層部分に使用する場合、高通液性(加圧下通液性)のため、尿等の吸収液の拡散性に優れ、効率的な液分配によって、紙オムツ等、吸収性物品全体の吸収量が向上するため、好ましい。さらに、衛生感のある白色状態が保たれた吸収性物品を提供することができるため、好ましい。
【0119】
また、上記吸収体は、密度が0.06〜0.50[g/cm
3]であり、坪量が0.01〜0.20[g/cm
2]に圧縮成形されているのが好ましい。さらに、上記吸収体の厚みは、好ましくは30mm以下、より好ましくは20mm以下、さらに好ましくは10mm以下の薄型化の紙オムツにとって好適な吸収性物品を提供することができる。
【実施例】
【0120】
〔実施例〕
以下、実施例に従って本発明を説明するが、本発明はこれらに限定され解釈されるものではない。また、便宜上、「リットル」を「L」、「重量%」を「wt%」と記すことがある。なお、本発明で得られる吸水性樹脂の、特許請求の範囲や実施例に記載した諸物性は、特に記載のない限り、室温(20〜25℃)、湿度50RH%の条件下で、以下の測定例に従って求めた。
【0121】
1.樹脂固形分(固形分)
底面の直径が約50mmのアルミカップに、吸水性樹脂1.00gを量り取り、試料(吸水性樹脂およびアルミカップ)の総重量W1[g]を正確に秤量した。
【0122】
次に、雰囲気温度180℃のオーブン中に上記試料を静置し、吸水性樹脂を乾燥させた。3時間経過後オーブンから該試料を取り出し、デシケーター中で室温まで冷却した。その後、乾燥後の試料(吸水性樹脂およびアルミカップ)の総重量W2[g]を秤量し、次式にしたがって固形分(単位;[重量%])を算出した。
【0123】
【数1】
【0124】
なお、粒子状含水ゲル状架橋重合体の樹脂固形分の測定では、含水ゲルの使用量を約2〜4gとし乾燥時間を24時間とした以外は、上記と同様の操作で測定した。
【0125】
2.SFC(生理食塩水流れ誘導性)
本発明で得られる吸水性樹脂のSFC(生理食塩水流れ誘導性)は、米国特許第5669894号明細書の記載に従って測定した。
【0126】
3.その他の物性
吸水性樹脂のCRC(無加圧下吸水倍率)、粒度分布(上記「PSD」の項参照:ERT420.2−02に記載の方法)、pH可溶分(上記「Ext」の項参照:ERT470.2−02に記載の方法)、残存アクリル酸量(上記「Residual Monomers」の項参照:ERT410.2−02に記載の方法)等の物性については、上述したEDANAのERT、または米国特許出願公開第2006/204755号明細書に準じて測定した。
【0127】
[実施例1]
アクリル酸、水酸化ナトリウム、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均分子量487)、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、および水を原料とするモノマー水溶液を調整した。アクリル酸、水酸化ナトリウム、および水については、モノマー濃度が45重量%、アクリル酸の中和率が70モル%となるように調整し、ポリエチレングリコールジアクリレートはアクリル酸に対して0.07モル%、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンはアクリル酸に対して0.01重量%をモノマー水溶液に加えた。調整後、モノマー水溶液の温度を95±1℃にコントロールした。
【0128】
その後、該モノマー水溶液に、過硫酸ナトリウムの添加量がアクリル酸に対して0.12g/モルの割合になるように過硫酸ナトリウム水溶液を混合し、モノマー混合液とした。
【0129】
該モノマー混合液は、連続的にベルト重合装置に供給し重合を行い、帯状の含水ゲル状架橋重合体(含水ゲル)を得た。なお、本実施例で使用したベルト重合装置は、表面がフッ素樹脂コーティングされたエンドレスベルトを有し、UVランプ、および蒸発水を回収するための吸気配管が設置された重合装置である。
【0130】
次いで、上記重合装置で得られた帯状の含水ゲルを、連続的にミートチョッパーで解砕し、解砕された粒子状含水ゲル1を得た。該粒子状含水ゲル1の固形分濃度は56重量%であった。
【0131】
次いで、上記粒子状含水ゲル1を熱風乾燥機(大川原製作所製、通気型乾燥機、
図1参照)8中に厚さ50mmに展開した。展開された粒子状含水ゲルの温度(乾燥直前の温度)は、60℃であった。次いで、fresh air導入管2および水蒸気導入管3からの気体を熱交換器6に導入し、熱媒導入管7から導入される伝熱媒体により加熱して、または、該ガスの一部を排出管4により排気したのち、ブロワー5により熱交換器6に循環して、温度および露点を調整した熱風を1.6[m/sec]の風速で、該粒子状含水ゲルに吹き付けることにより乾燥して乾燥ゲルを得た。
【0132】
この乾燥時に、
図1のA、Bの位置に設置されたノズルを用いて、温度および露点測定を、ハンディタイプ多機能温湿度計(rotoronic HYDROPALM2,ROTRONIC AG,Swiss made)にセンサーとしてHygroClip HK40を用いて行った。なお、
図1中、地点Aは、通気型乾燥機8の熱風入口9から0.1mに位置し、地点Bは、通気型乾燥機8の熱風排出口10から0.1mに位置している。
【0133】
また、粒子状含水ゲルの固形分濃度は、本乾燥実験と同じ実験を別途何度も行い、所定の乾燥時間を経過した時に材料を取り出し、固形分濃度測定にサンプルを供した。
【0134】
取得したデータを表1に示す。表1中、ΔTは、「(粒子状含水ゲル層に吹き付ける熱風温度)−(粒子状含水ゲル層および通気ベルト通過後の熱風温度)」である。表1に示したように、固形分濃度が80重量%に到達するまでの乾燥期間の実質的に全期間でΔTが20〜70℃の範囲内(54〜31℃程度)であることが判る。
【0135】
【表1】
【0136】
上記乾燥操作により得られた乾燥物を粉砕した後、目開き850μmおよび150μmのJIS標準篩を用いて分級し、粒子径850〜150μmの乾燥物をベースポリマー1として得た。
【0137】
得られたベースポリマー1の100重量部に対して、1,4−ブタンジオール0.48重量部、1,2−プロパンジオール0.75重量部、水4.0重量部からなる表面架橋剤溶液を、該ベースポリマー1と混合し加湿物を得た。この加湿物を温度180℃で45分間加熱処理をし、表面架橋を行った。加熱処理後、得られた吸水性樹脂粒子を目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで粉砕することで、表面架橋された吸水性樹脂1を得た。得られた吸水性樹脂1の物性を表4に示す。
【0138】
[実施例2]
2本のシグマ型ブレードを備えたニーダーに、アクリル酸ナトリウム、アクリル酸および水からなるモノマー濃度38重量%、中和率70モル%のモノマー水溶液を調整し、内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート(平均エチレングリコールユニット数9)0.06モル%(対モノマー)となるよう溶解させた。
【0139】
次いで、該モノマー水溶液に窒素ガスを吹き込みモノマー水溶液中の溶存酸素を低減するとともに反応容器内全体を窒素置換した。引き続き、2本のシグマ型ブレードを回転させながら、重合開始剤として過硫酸ナトリウム0.12[g/mol](対モノマー)、L−アスコルビン酸0.005[g/mol](対モノマー)となるように添加して、該ニーダー内で攪拌下重合を行い、約40分後に平均粒子径約2mmの解砕された粒子状含水ゲル状架橋重合体2を得た。この粒子状含水ゲル2の固形分濃度は、40重量%であった。
【0140】
次いで、得られた粒子状含水ゲル2を、実施例1と同じ乾燥装置を用いて乾燥を行った。該粒子状含水ゲル2を、ゲル層高30mmに展開した。このとき、展開された粒子状含水ゲル2の温度(乾燥直前の温度)は53℃であった。熱風の温度および露点を調整しながら乾燥した。取得したデータを表2に示す。表2に示したように、固形分濃度が80重量%に到達するまでの乾燥期間の実質的に全期間でΔTが20〜70℃の範囲内(58〜55℃程度)であることが判る。
【0141】
【表2】
【0142】
さらに、実施例1と同様に分級、表面架橋、整粒を行い、吸水性樹脂2を得た。得られた吸水性樹脂2の物性を表4に示す。ただし、表面架橋は実施例1において、加熱処理時間(別称;反応時間)を調整することで、実施例1と同じ吸水倍率(CRC=30[g/g])まで表面架橋した。
【0143】
[比較例1]
実施例1で得られた粒子状含水ゲル1を、実施例1と同じ乾燥装置を用いて乾燥を行った。該粒子状含水ゲル1を、ゲル層高100mmに展開した。このとき、展開された粒子状含水ゲル1の温度は36℃であった。熱風の温度および露点を調整しながら乾燥した。取得したデータを表3に示す。ただし、表面架橋は実施例1において、加熱処理時間(別称;反応時間)を調整することで、実施例1と同じ吸水倍率(CRC=30[g/g])まで表面架橋した。なお、表3に示したように、乾燥時間9分でのΔTが77℃で固形分濃度が74重量%であり、乾燥時間12分でのΔTが60℃で固形分濃度が80重量%であることから、固形分濃度が80重量%に到達するまでの乾燥期間の75%を超える区間(約90%前後)でΔTが70℃を超えることが判る。
【0144】
さらに、実施例1と同様に分級、表面架橋、整粒を行い、比較吸水性樹脂1を得た。得られた比較吸水性樹脂1の物性を表4に示す。
【0145】
【表3】
【0146】
[比較例2]
実施例1で得られた粒子状含水ゲル1を、実施例1と同じ乾燥装置を用いて乾燥を行った。該粒子状含水ゲル1を、ゲル層高150mmに展開した。熱風の温度および露点を調整しながら乾燥した。取得したデータを表4に示す。ただし、表面架橋は実施例1において、加熱処理時間(別称;反応時間)を調整することで、実施例1と同じ吸水倍率(CRC=30[g/g])まで表面架橋した。なお、表4に示したように、乾燥時間3分でのΔTが98℃で固形分濃度が65重量%であり、乾燥時間20分でのΔTが3℃で固形分濃度が97重量%であることから、固形分濃度が80重量%に到達するまでの乾燥期間の70%を超える区間でΔTが70℃を超えることが判る。
【0147】
さらに、実施例1と同様に分級、表面架橋、整粒を行い、比較吸水性樹脂2を得た。得られた比較吸水性樹脂2の物性を表6に示す。
【0148】
【表4】
【0149】
[実施例3]
実施例1で得られた粒子状含水ゲル1を、実施例1と同じ乾燥装置を用いて乾燥を行った。該粒子状含水ゲル1を、ゲル層高25mmに展開した。熱風の風速は0.8[m/sec]とし、熱風の温度および露点を調整しながら乾燥した。取得したデータを表5に示す。ただし、表面架橋は実施例1において、加熱処理時間(別称;反応時間)を調整することで、実施例1と同じ吸水倍率(CRC=30[g/g])まで表面架橋した。表5に示したように、固形分濃度が80重量%に到達するまでの乾燥期間の実質的に全期間でΔTが20〜70℃の範囲内(35〜21℃程度)であることが判る。
【0150】
さらに、実施例1と同様に分級、表面架橋、整粒を行い、吸水性樹脂3を得た。得られた吸水性樹脂3の物性を表6に示す。
【0151】
【表5】
【0152】
【表6】
【0153】
(まとめ)
表4に、同じ粉砕・分級を行い、吸水倍率(CRC)が30[g/g]となるように同じ表面架橋剤で表面架橋した吸水性樹脂の物性値(結果)を示す。同じ粒子状含水ゲルであっても、本発明の乾燥方法(熱風の温度差;20〜70℃)を適用することによって、特許文献1に開示された残存モノマーの低減のみならず、特許文献1に開示されていないAAP(加圧下吸水倍率)やSFC(生理食塩水流れ誘導性)の向上が認められた。
【0154】
なお、特許文献1(露点50〜100℃の熱風による残存モノマーの低減方法)や特許文献2(熱風の風向きや温度、さらには露点を50℃以下に制御することによる物性変化の低減方法)、さらに特許文献3、4についても表面架橋はおろか、AAPやSFCの開示はない。よって、特許文献1〜4は、本発明の乾燥方法(熱風の温度差20〜70℃)やその効果(AAPやSFCの向上)についてなんら示唆しない。