特許第5658263号(P5658263)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5658263
(24)【登録日】2014年12月5日
(45)【発行日】2015年1月21日
(54)【発明の名称】神経インターフェースシステム
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/05 20060101AFI20141225BHJP
   A61B 5/0408 20060101ALI20141225BHJP
   A61B 5/0478 20060101ALI20141225BHJP
   A61B 5/0492 20060101ALI20141225BHJP
【FI】
   A61N1/05
   A61B5/04 300J
   A61B5/04 300E
【請求項の数】20
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2012-534191(P2012-534191)
(86)(22)【出願日】2010年8月2日
(65)【公表番号】特表2013-508016(P2013-508016A)
(43)【公表日】2013年3月7日
(86)【国際出願番号】US2010044167
(87)【国際公開番号】WO2011046665
(87)【国際公開日】20110421
【審査請求日】2013年7月5日
(31)【優先権主張番号】61/252,345
(32)【優先日】2009年10月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511255465
【氏名又は名称】サピエンス ステアリング ブレイン スティムレーション ベー ヴィ
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100162765
【弁理士】
【氏名又は名称】宇佐美 綾
(72)【発明者】
【氏名】デイビット アンダーソン
(72)【発明者】
【氏名】リオ ジェイ. ベッテル
(72)【発明者】
【氏名】ジャミール エフ. ヘトゥケ
(72)【発明者】
【氏名】ダリル アール. キプケ
【審査官】 佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0132042(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0203546(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0021117(US,A1)
【文献】 国際公開第2008/109298(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経インターフェースシステムにおいて、該システムが:
電極アレイであって、該電極アレイが:
三次元の形状に巻かれた基体;
該基体上でパターン化され、且つ、電気信号を伝えることができるように成されている、複数の導電性配線;および
該複数の導電性配線に連結された複数の楕円の形状に成された電極部位であって、該電極部位を取り巻く環境と電気的にやりとりをする、電極部位であり、ここで、該複数の電極部位が記録用電極部位および刺激用電極部位のうちの少なくとも1つを含む、複数の楕円形状の電極部位;
を含む、電極アレイ、および
該電極アレイを支えるキャリヤ;
を含み、
ここで、該複数の電極部位は、該キャリヤの周りの円周方向に、且つ、該キャリヤに沿って軸方向に、三角格子の形態で配列されており;またここで、該基体は、該キャリヤに沿って軸方向に延びていて、且つ、該複数の電極部位の第1軸方向列部分と該第1軸方向列部分に隣接した該複数の電極部位の第2軸方向列部分との間で拘束されているエッジを含んでいる;
神経インターフェースシステム。
【請求項2】
前記エッジが、前記複数の電極部位の前記第1軸方向列部分および前記第2軸方向列部分のうちの少なくとも一方を散在させている一組の伸展部を含んでいる、請求項1記載の神経インターフェースシステム。
【請求項3】
前記一組の伸展部は、前記エッジが波形の形状になるような仕方で曲線を描いている、請求項2記載の神経インターフェースシステム。
【請求項4】
前記エッジが、前記巻かれた基体の一部と重なり合っている、請求項1記載の神経インターフェースシステム。
【請求項5】
前記基体が、前記第1エッジに対向する第2エッジを更に含んでおり、ここで、前記第2エッジは、前記キャリヤに沿って軸方向に延びていて、且つ、第1の長手方向エッジと相補的に接合している、請求項1記載の神経インターフェースシステム。
【請求項6】
前記複数の導電性配線が、前記キャリヤの周りの円周方向環に配列されている、請求項1記載の神経インターフェースシステム。
【請求項7】
前記複数の導電性配線が、第1の遠位側端部を有する第1の導電性配線と第2の遠位側端部を有する第2の導電性配線を含んでいて、ここで、該第2の導電性配線が該第1の導電性配線よりも長く、且つ、該第2の遠位側端部が該第1の遠位側端部よりも広い、請求項6記載の神経インターフェースシステム。
【請求項8】
前記複数の導電性配線が、前記キャリヤに沿って軸方向に延びている、請求項1記載の神経インターフェースシステム。
【請求項9】
前記複数の導電性配線が、前記基体の前記エッジに平行である、請求項8記載の神経インターフェースシステム。
【請求項10】
前記複数の導電性配線が、第1の遠位側端部を有する第1の導電性配線と第2の遠位側端部を有する第2の導電性配線を含んでいて、ここで、該第2の導電性配線が前記第1の導電性配線よりも長く、且つ、該第2の遠位側端部が該第1の遠位側端部よりも広い、請求項8記載の神経インターフェースシステム。
【請求項11】
前記複数の電極部位のうちの少なくとも1つが、偏心した楕円、v−字形または三日月形形状であり、短軸と該短軸よりも長い長軸とを有している、請求項1記載の神経インターフェースシステム。
【請求項12】
前記短軸が、前記キャリヤに沿って軸方向に整列している、請求項11記載の神経インターフェースシステム。
【請求項13】
前記三角格子が、正三角格子である、請求項1記載の神経インターフェースシステム。
【請求項14】
前記複数の電極部位が、等しいエッジ間距離を持った前記三角格子の形態で分配されている、請求項13記載の神経インターフェースシステム。
【請求項15】
前記基体の長手方向エッジが、一組の波状の伸展部を含んでおり、ここで、前記複数の電極部位の前記長軸と前記複数の電極部位の短軸との比率が:
該一組の波状凹凸の振幅に比例し;
前記三次元形状の外径に比例し;そして
前記エッジ間距離に反比例する;
請求項14記載の神経インターフェースシステム。
【請求項16】
神経インターフェースシステムを製作する方法であって、該方法が以下のステップ:
一組の伸展部を伴った形状に成されたエッジを有する可撓性基体を提供するステップ;
前記基体上に第1ポリマー層を堆積させるステップ;
該第1ポリマー層の上に、該基体上で電気信号を伝導する複数の導電性配線を構築するステップ;
該基体上に第2ポリマー層を堆積させるステップ;
三角格子の形態で、前記複数の導電性配線に連結された複数の電極部位を構築するステップ;および
前記複数の電極部位が外側に面し、且つ、前記一組の伸展部が該複数の電極部位の一部とインターリーブし、これにより、前記三角格子が途切れのない状態となることができるような仕方で、該エッジに向けて該基体を巻いて三次元の電極アレイを形成するステップ;
を含む、神経インターフェースシステムの製作方法。
【請求項17】
エッジを伴った基体を提供する前記ステップが、基体を提供するステップ、および該基体の選定された部分を取り除いて前記一組の伸展部を形成するステップを含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
複数の導電性配線を構築する前記ステップが、前記第1ポリマー層の上に金属層を堆積させるステップ、および前記金属層をパターン化して該複数の導電性配線を形成するステップを含む、請求項16記載の方法。
【請求項19】
前記金属層をパターン化して前記複数の導電性配線を形成する前記ステップが、前記エッジに直交する短手方向に配列された複数の短手方向導電性配線を形成するステップを含む、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記金属層をパターン化して前記複数の導電性配線を形成する前記ステップが、前記エッジに平行な軸方向に配列された複数の長手方向導電性配線を形成するステップを含む、請求項18記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、2009年10月16日に出願された米国仮出願第61/252345号および2010年8月2日に出願された米国特許出願第12/848828号の利益を主張するものであり、それらの出願は、共に、この参照により、それらの内容全体が本明細書に組み入れられる。
【0002】
本発明は、一般的には神経インターフェースの分野に関係し、より具体的には、神経インターフェースの分野における改良された神経インターフェースシステムに関係する。
【背景技術】
【0003】
長期間持続型の脳深部刺激(DBS)装置、または「脳ペースメーカー」は、神経障害および精神的疾患の1つの治療法として用いられている。従来のDBS装置の場合には、脳の標的領域に埋め込まれた4つの比較的大きな電極を有するリードを通じて電気的な刺激が与えられる。従来のDBS療法は、一般的に、承認疾患の主症状を緩和する上では安全であり且つ効果的であるが、しばしば、行動および認識に関わる重大な副作用を有しており、その能力には限界がある。これに加え、その治療効果は、標的組織体積との関係における電極の位置が非常に重要な役割を果たしており、より具体的には、送給されている電荷による影響を受けているニューロンの構造が重要な役割を果たしている。従来のDBS電極の場合には、刺激に関与しているすべての電極部位が単一の軸に沿って位置付けされているため、電荷が送給される仕方に関して限界があり、また、刺激領域が限定されている。このため、神経インターフェースの分野においては、微細な電極のポジショニング、選択性、精密な刺激のパターニング、および精密なリードの位置決めを提供する、改良された神経インターフェースシステムを創出することに対する要求が存在する。本発明は、そのような改良された神経インターフェースシステムを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1図1Aおよび図1Bは、それぞれ、1つの好適な実施形態による神経インターフェースシステムの概略的な側面図および概略的な透視図である。
図2図2は、1つの好適な実施形態の電極アレイ上で間隔をあけて設けられている電極部位の概略図である。
図3図3A図3Bおよび図3Cは、それぞれ、キャリヤの周りに円周方向に配列されている電極部位を活性化する1つの実施例としての活性化パターンのラッピングされていない状態での平面図、透視図、および断面軸方向図である。
図4図4A図4Bおよび図4Cは、それぞれ、キャリヤの周りに部分的に円周方向に配列されている電極部位を活性化する1つの実施例としての活性化パターンのラッピングされていない状態での平面図、透視図、および断面軸方向図である。
図5図5A図5Bおよび図5Cは、それぞれ、キャリヤに沿って軸方向に配列されている電極部位を活性化する1つの実施例としての活性化パターンのラッピングされていない状態での平面図、透視図、および断面軸方向図である。
図6図6A図6Bおよび図6Cは、それぞれ、キャリヤに沿って軸方向に配列されている電極部位を活性化する第2の実施例としての活性化パターンのラッピングされていない状態での平面図、透視図、および断面軸方向図である。
図7図7Aおよび図7Bは、それぞれ、キャリヤの周りおよびキャリヤに沿って配列されている電極部位を活性化する1つの実施例としての活性化パターンのラッピングされていない状態での平面図および透視図である。
図8図8は、1つの好適な実施形態の電極アレイにおける配線配置(trace layout)パターンの1つのバリエーションを概略的に描いた図である。
図9図9は、1つの好適な実施形態の電極アレイにおける基体形状の1つのバリエーションを概略的に描いた図である。
図10図10は、1つの好適な実施形態の電極アレイを形成するラッピングステップの概略図である。
図11図11は、1つの好適な実施形態の電極アレイにおける配線配置(trace layout)パターンの第2のバリエーションを概略的に描いた図である。
図12図12Aは、1つの好適な実施形態における神経インターフェースシステムの概略的な側面図である。図12Bは、図12AにおけるX−X線に沿って取った本電極アレイおよびキャリヤの断面図である。図12Cは、図12BのパネルWにおいて取られた本電極アレイおよびキャリヤの詳細な断面図である。図12Dは、図12AにおけるY−Y線に沿って取られた本電極アレイおよびキャリヤの断面図である。図12Eは、図12CのパネルVにおいて取られた本電極アレイおよびキャリヤの詳細な断面図である。
図13図13は、1つの好適な実施形態における神経インターフェースシステムを製作するステップを描いた図である。
図14図14は、患者に埋め込まれた本神経インターフェースシステムを概略的に描いた図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
(好適な実施形態の説明)
本発明の好適な実施形態に関する以下の説明は、本発明をこれらの好適な実施形態に限定することを意図したものではなく、当業者が本発明を成し、且つ、使用できるようにすることを意図したものである。
【0006】
図1に示されているように、好適な実施形態の神経インターフェースシステム100は、三次元の形態における(three-dimensional)アレイの形状に巻かれた基体120と、その基体120上でパターン化され、且つ、電気信号を伝えることができるように成されている複数の導電性配線140と、それらの複数の導電性配線140に連結されている複数の電極部位150とを有する電極アレイ110;およびその電極アレイ110を支えるキャリヤ170を含んでいる。電極アレイ110は、好適には、電極部位150がキャリヤの周りに円周方向に、且つ、キャリヤに沿って軸方向に三角格子の形態で配列されるような仕方で、キャリヤ170に連結されている。基体120は、好適には、キャリヤに沿って軸方向に延びていて、且つ、キャリヤの第1軸方向列部分と、その第1軸方向列部分に隣接した複数の電極部位の第2軸方向列部分との間で拘束されているエッジを含んでいる。電極部位150は、記録用電極部位および/または刺激用電極部位を含んでいてよく、また、活性化パターンを創出するために、個別的に活性化されてもよいし、またはグループとして同時的に活性化されてもよい。神経インターフェースシステム100は、好適には脳深部電気刺激をもたらし、より特定的には、以下の特質:微細な電極部位のポジショニング、選択性、可同調性、消費電力の低減、フォールトトレランスの向上、および精密な活性化パターニング;のうちの1つもしくはそれ以上の特質を伴った脳深部電気刺激を提供する。本システムは、代替的に、あらゆる適切な環境(例えば、脊髄、末梢神経、筋肉、またはあらゆる他の適切な解剖学的位置など)において使用されてよく、また、あらゆる適切な理由で使用されてよい。
【0007】
1.電極アレイ
好適な実施形態による電極アレイ110は、そのアレイが埋め込まれている、または連結されている、組織もしくは何らかの適切な物質とインターフェースをとる機能を果たす。電極アレイ110は、好適には、基体120、電気信号を伝えることができるように成されている複数の導電性配線140、および複数の電極部位150を含んでおり、前述の電極部位は、ある活性化パターンを創出するために一群の電極部位を同時的に活性化することができるように成されていてよい。本神経インターフェースシステム100は、複数の電極部位150を伴った単一の電極アレイ110を含んでいてもよいし、または代替的に、それぞれが複数の電極部位を伴った一連の電極アレイを含んでいてもよい。電極アレイ110は、好適には、最終的には要望に応じた(on-demand)刺激のために、神経測定記録を通じて行われるフィードバック制御を組み入れる能力を提供する。電極アレイ110は、更に、治療用の薬剤、本埋め込み物に対する生物学的応答を抑制するための薬剤、または何らかの他の適切な流体を送給する能力を提供する流路(fluidic channel)も含んでいてよい。
【0008】
電極アレイ110は、好適には、三次元的な幾何学的形態(three dimensional geometry)を有しており、この三次元的な幾何学的形態は、基体120が三次元の形態におけるアレイの形状に巻かれていて、導電性配線140と複数の電極部位150とが、好適には、その三次元的形状の上に、且つ、その三次元的形状の周りに配列されている。以降の箇所でもっと詳しく説明されているように、このバリエーションにおいては、電極アレイは、好適には、どれ1つとして電極部位150が覆い隠されてしまうことがないような方法で製造される。電極アレイ110の幾何学的形態は、好適には、円形または半円形の断面を有しているが、代替的に、偏心した楕円、v−字形または三日月形の断面などの何らかの適切な断面を有するあらゆる適切な幾何学的形態であってよい。この三次元的な電極アレイは、好適には、平坦な電極アレイを予備成形することにより形成される。これは、好適には、その平坦な電極アレイを成形型内においてポジショニングし、その後、その成形型と電極アレイを炉に入れて焼き戻しに掛けることにより果たされるが、代替的に、平坦な基体120の物理的形状を変えるあらゆる適切なプロセスによって果たされてもよい。この三次元の電極アレイは、末梢神経もしくは脊髄などの刺激されるべき組織の周りで直接的にラッピングされてよく、またはその電極アレイが埋め込まれている、もしくは連結されている、組織もしくは何らかの他の適切な物質とインターフェースをとることができるあらゆる適切な配置構成で直接ラッピングされてよい。上述の平坦な電極アレイにおいては、基体120は平坦であり、導電性配線140および電極部位150がその平坦な基体120の上に配列されている。いくつかの実施形態においては、その平坦な電極アレイは、脳または脊髄の表面刺激などの表面組織の刺激に特に有用であり得る。その電極アレイは、千鳥状(staggered)の配置(layout)パターン、六角形の配置パターン、直線的な矩形パターン、または何らかの適切なパターンで配列された電極部位150を含むことができる。
【0009】
電極アレイの基体120は、その上に電極アレイを形成する材料の層が堆積されることとなる基材を提供する機能を果たす。図12および図13に示されているように、電極アレイ上に堆積される材料の層は、好適には、少なくとも1つのポリマーの層と少なくとも1つの金属の層とを含んでいる。より好適には、それらの層は、第1ポリマー層126および第2ポリマー層128と、複数の導電性配線140を形成するために用いられる前述の第1ポリマー層と第2ポリマー層との間の第1金属層130と、複数の電極部位150を形成するために用いられる第2金属層とを含んでいる。上述の第1ポリマー層および第2ポリマー層は、好適には、二酸化ケイ素および窒化ケイ素を含んでおり、第1金属層は、好適には、ポリシリコンを含んでおり、そして、第2金属層は、好適には、白金を含んでいる。基体120上のこれらの層は、好適には、更に、複数の導電性配線140を複数の電極部位150に電気的に連結するボンドパッド160を形成するために用いられる金などの第3金属層を含んでいる。基体120上のこれらの層は、更に、電極部位150を取り囲む外側絶縁層を提供するパリレンなどの第3ポリマー層162を含んでいてよい。しかしながら、基体120は、基体上に堆積されるあらゆる適切な材料を含むあらゆる適切な数の層を有していてよい。
【0010】
三角格子状その他の千鳥状の電極部位パターンは、キャリヤに沿った軸方向の単一の真直ぐな線で分けることができないため、そのような千鳥状の電極部位パターンの場合には、平坦な電極アレイから三次元の電極アレイを形成するときに、覆い隠された電極部位もしくは被覆された電極部位や、電極部位150が実装されていない余分な基体のスペース、または基体の重なり合いを有することなく、矩形の基体上へ設置することができない。図8〜11に示されているように、電極部位を覆い隠してしまうのを避けるため、いくつかの好適な実施形態においては、基体120は、好適には、複数の電極部位の第1軸方向列部分とその第1軸方向列部分に隣接した複数の電極部位の第2軸方向列部分との間で拘束されている少なくとも1つの軸方向エッジ122を有している。このエッジを別な方法で説明すれば、エッジ122は、好適には、基体が巻かれるときに複数の電極部位150の一部を迂回または回避する形状を有している、と説明することができる。エッジ122は、好適には、基体120の側面に在り、好適には、キャリヤに沿った軸方向においておおよそ長手方向に走っている。図8および図11に示されているように、エッジ122は、キャリヤの全長に沿って軸方向に走っていてよい。図9に示されているように、いくつかの実施形態においては、エッジ122は、全体的なキャリヤの長さのうちの適切な一部分に沿ってのみ軸方向に走っていてよく、また、そのキャリヤの長さの別の部分に沿った付加的な同様の軸方向エッジを含んでいてもよい。第1のバリエーションにおいては、図10に示されているように、エッジ122は、巻かれた基体120を越えて延びていて、その巻かれた基体120の少なくとも一部と重なり合っており、そして、好適には、一組の伸展部124を含んでいて、それらの伸展部は、巻かれた基体上の電極部位150の一部の輪郭とインターリーブ(interleave)しており、これにより、妨害を回避すべく電極部位を迂回することが可能に成されている。一組の伸展部124は、好適には、電極部位150のエッジに密接に従っており、そして、例えば、波状の伸展部を含めることができるように曲線を成す仕方で輪郭が形成されていてよく、または矩形もしくは正方形の伸展部またはあらゆる適切な伸展部を含めることができるような形状に成されていてよい。上述の一組の伸展部は、規則的もしくは不規則的に間隔があけられていてよく、および/または規則的もしくは不規則的にパターン化されていてよい。代替的に、エッジ122は、一組の伸展部124を伴うことなく、直線または曲線を成していてよい。この第1のバリエーションの別の実施例においては、基体は、更にキャリヤの長さに沿って軸方向に整列されたスロット(slot)を含んでおり、その基体のエッジは、基体120の一部を越えて延びていて、タブ(tab)のごとくそのスロット内に挿入されており、これにより、前述のエッジを含んでいる巻かれた状態の基体の「自由」端が確保されている。この実施例においては、エッジは、前述のスロット内におけるエッジの確保を強化する広がった先端部などの特徴的な要素を含んでいてよい。
【0011】
第2のバリエーションにおいては、図9および図11に示されているように、基体120は、更に、第1エッジ122に対向する第2エッジ123を含んでいてよく、この第2エッジは、キャリヤに沿って軸方向に延びていて、基体120が巻かれたときに相補的な仕方で第1エッジ122と会合するように成されている。第1のバリエーションの場合と同様に、これらの第1エッジおよび/または第2エッジは、好適には、電極部位の一部の輪郭とインターリーブする一組の伸展部を含んでおり、これにより、妨害を回避すべく電極部位を迂回することが可能に成されている。
【0012】
電極アレイ110における複数の導電性金属配線140は、記録信号および/または刺激信号などの電気信号を複数の電極部位150へ伝える機能を果たす。電極アレイの効率および機能性を改善するため、それらの配線140は、好適には、電荷分布の不規則性を回避し、且つ、全体的な消費電力を低減するように、最小限度に抑えられた等しいインピーダンスを有している。それぞれの配線は、好適には、その配線と結合された電極部位で終わっているため、電極アレイの遠位側端部に向けた配線よりも電極アレイの近位側端部に向けた配線の方が数多く存在する。それゆえ、それらの配線140間での等しいインピーダンスを達成するため、配線の幅は、好適には、配線の長さとの関係において様々に異なっており、より好適には、図11に示されているように、配線の幅は、好適には、配線が長くなればなるほど大きくなっている。例えば、第1の遠位側端部を有する第1の導電性配線と、その第1の導電性配線よりも長く、且つ、第2の遠位側端部を有する第2の導電性配線との間の関係で言えば、前述の第2の遠位側端部は、好適には前述の第1の遠位側端部よりも広くなっている。全体としてのインピーダンスを最小限度に抑えるため、それらの配線は、好適には、隣接した配線間に電気的な分離状態をもたらしながら、それらの配線が可能な限り広い基体の表面積をカバーするような仕方で基体120に配列される。
【0013】
複数の導電性配線140は、数種類のパターンバリエーションのうちの少なくとも1つのパターンバリエーションで基体120に配列されてよい。図8に示されているように、第1のバリエーションにおいては、配線140’は、好適には、基体120の側面から離れた状態を維持し、且つ、基体のほぼ全長を利用して、基体120に沿って短手方向に配列されており、これにより、基体120の面積のフル・カバレージ(full coverage)を保持することができる。このバリエーションにおいては、短手方向配線140’は、好適には、より多くの利用可能な幅を有しているため、比較的短く、且つ、比較的広くなっており、それゆえ、比較的低いインピーダンスを有している。図10に示されているように、短手方向配線140’を伴った三次元の円筒状電極アレイの構築は、好適には、「自由」な状態(電極部位に結合されていない状態)の短手方向配線の端部が電極アレイの内側にラッピングされ、且つ、キャリヤ上における円周方向環の配列に予備成形されるような仕方で、平坦な電極アレイをラッピングするステップを含む。これは、好適には、平坦な電極アレイをラッピングし、その平坦な電極アレイを成形型内に位置付けした後、その成形型および電極アレイを炉に入れて焼き戻しに掛けることにより果たされるが、代替的に、平坦な基体の物理的形状を変えるあらゆる適切なプロセスによって果たされてもよい。このバリエーションにおいては、図8に示されているように、配線140’は、好適には、電極アレイ110の近位側端部に向けて電気信号を伝える導電性のインターコネクト(interconnects)142に集められている。インターコネクト142は、好適には、巻かれた基体120内を軸方向に通り、好適には、キャリヤの内側へと軸方向に続いている。図12に示されているように、それらのインターコネクトは、好適には、キャリヤの内側で絶縁されている。また、それらのインターコネクトは、好適には、チタンおよび/または金でできているが、付加的におよび/または代替的に、何らかの適切な材料を含んでいてもよい。図11に示されているように、第2のバリエーションにおいては、配線140’’は、好適には、基体120に沿って軸方向に延びていて(例えば、近位側から遠位側へ長手方向に延びていて)、基体120の近位側端部から離れて続いている。このバリエーションにおいては、配線140’’は、好適には、軸方向エッジ122に平行であって、軸方向エッジ122のプロフィールに従っており、これにより、全体的なインピーダンスを下げるべく、基体面積のフル・カバレージを保持することができる。長手方向配線140’’は、好適には、比較的長く、それゆえ、第1のバリエーションの短手方向配線よりも僅かに高い均等化インピーダンスを有している。この第2の配線パターンのバリエーションにおける基体120は、好適には、同一の最終的な三次元の電極アレイ形状を得ようとした場合の第1の配線パターンのバリエーションにおける基体120よりも長いが、それよりも狭い。長手方向配線140’’を伴う三次元の電極アレイの構築は、好適には、長手方向配線140の場合には好適には電極アレイの内側にラッピングされないという点を除き、短手方向配線140’を伴う電極アレイを構築する場合と同様である。配線140は、好適には、これらのうちの1つのパターンバリエーションで配列されるが、配線140は、代替的に、電気信号を電極部位150へ伝導するあらゆる適切なパターンで配列されてよい。図12に示されているように、複数の導電性配線140は、好適には、基体120上において第1金属層からパターン化され、第1の絶縁ポリマー層と第2の絶縁ポリマー層との間に挟まれ、そして、好適には、ポリシリコンから製作されるが、導電性配線140は、代替的に、あらゆる適切な導電性材料から製作されてよい。
【0014】
好適な実施形態における複数の電極部位150は、その電極部位が埋め込まれている、または連結されている、組織もしくは何らかの他の適切な物質と電気的にやりとりをする機能を果たす。その電気的なやりとりは、好適には、高周波パルス電流;単極、双極、三極および/または四極モードにおける電気刺激;電気信号の記録;データ伝送;および/または何らかの適切な電気的なやりとりである。
【0015】
この三次元バリエーションの電極アレイは、キャリヤに連結されていてよい。図1に示されているように、電極部位150は、好適には、キャリヤ170の周りの円周方向に配列されているとともに、千鳥状の三角格子パターン152においてキャリヤ170に沿った軸方向にも配列されている。図8〜11に最も分かりやすく示されているように、三角格子152は、好適には、正三角格子(時には六方格子と呼ばれることもある)であるが、代替的に、二等辺三角格子(斜方格子)、または不等辺三角格子(平行四辺形格子)であってもよい。代替的に、電極部位150は、キャリヤ170の周りの円周方向に配列されているとともに、直線的な矩形格子パターンもしくは正方形格子パターンにおいて、または何らかの適切なパターンにおいてキャリヤ170に沿った軸方向にも配列されていてよい。いくつかの実施形態においては、電極部位150は、種類の異なる格子を組み合わせた形態で配列されていてよい。例えば、電極アレイの1つの部分が六方格子の形態で配列された電極部位150の一部を含んでいてよく、一方、電極部位150の別の部分が平行四辺形格子の形態であってよい。電極部位150の千鳥状の三角格子パターン152は、以下の利点のうちの1つもしくはそれ以上の利点をもたらすことができる。第1の利点として、千鳥状の配置パターンは、コンパクトであり、ある与えられた面積に対してできるだけ多くの電極部位150を設けることに関する電極アレイ表面積の使用を最適化し、刺激制御の分解能を高めることができる。電極部位配置の分解能が高くなればなるほど、もし特定の電極部位が機能しなくなった場合でも、治療効果にはほとんど差異が生じない状態で、別の極めて近傍に存在する電極部位150を利用することができるため、フォールトトレランスを通じる電極アレイの信頼性も高くなる。第2の利点は、千鳥状の配置パターン152の場合には、電極アレイの周りの比較的多数の異なる角度位置に配列された電極部位を含むことができ、従って、その電極アレイは、例えば、電極部位が直線的な矩形の形態で配列されたアレイの場合よりも多い方向性を有することが可能になり、これにより、電極による一層微細な刺激制御を行うことができるようになることである。図2に示されているように、第3の利点は、千鳥状の配置パターン152の場合には、電極部位が等距離のエッジ間距離154を有することが可能になり、その結果、不均一または非対称な電極部位の相互作用による意図せぬ影響が低減されるような仕方で、隣接する電極部位150間の相互作用が均等化されることである。
【0016】
複数の電極部位150は、個別的に活性化されてもよいし、または選択可能な電極部位のグループとして活性化されてもよい。一群の電極部位の同時的な活性化は、ある活性化パターンを創出し、電流密度の空間分布を有する組織媒質における電場を発生させ、神経の興奮パターンに影響を及ぼす。これは、マクロスケールでの活性化から、キャリヤに沿ったもしくはキャリヤの周りの比較的小さな部位のサブアレイまたは比較的小さな部位のグループを用いて行われる一層選択的な指向性を有する活性化パターニングまでにわたる、動的な可同調電気刺激を提供するであろう。電極アレイ110における電極部位150の活性化パターンは、図3〜7で例証されているように、いくつかの異なる次元に形を変えられてよい。電極アレイからの活性化パターンは、キャリヤの周りに全体的に円周方向に形を変えられてよく(図3に示されている)、これはマクロスケールによる活性化での環状電極を模倣しており;キャリヤの周りに部分的に円周方向に形を変えられてよく(図4に示されている);キャリヤに沿って軸方向に形を変えられてよく(図5および図6に示されている);それらのあらゆる組み合わせで形を変えられてよく(図7に示されている);またはあらゆる適切な活性化パターンもしくは望ましい活性化パターンに形を変えられてよい。これに加え、それぞれの電極部位150は、独立した活性化強度で活性化されてもよい。それぞれの活性化強度は、個別的に相異なっていてよく、または電極部位150の複数のグループが存在し、各電極部位グループが、同一の活性化強度を有していてもよい。この多次元の刺激パターンプログラミングの形態は、空間的強度および活性化強度を含めた可同調性の次元とともに、本神経インターフェースシステムによる大きな可同調性範囲を提供する。また、複数の電極部位150によりもたらされるこの柔軟性および精密さは、電気的な手段による調節を考慮に入れている。調節の例は、組織の被包や他の理由による組織の導電性の変動などの、電極アレイを取り巻く環境の変化に合わせること、および位置異常電極に対して若干の修正を行うことを含む。
【0017】
電極部位を取り巻く組織の興奮は、組織の導電性や個々の電極部位の電気化学的特性などを含む種々のファクター、ならびに電極アレイおよびキャリヤの全体的なアセンブリ(assembly)の幾何学的形態上の特性によって決まる。同時的に活性化されるいくつかの電極部位を伴った電極アレイの場合には、その活性化パターン、延いてはその電極を取り巻く電流の流れは、複雑であり、結果的に、一様に複雑な組織の興奮パターンをもたらす。基本的なレベルでは、電極部位の広がり抵抗が、興奮可能な組織へ電荷を送給することに関するその部位の能力を決定することができる。電極アレイ上に存在するいくつかの電極部位が同時的に活性化されるときには、それらの電極部位および活性化パターンの相互作用が存在する。例えば、第1の活性化パターンが第2の相異なる電極部位グループの活性化に伴って変調されることが考えられ、また、活性化された電極部位の多数のグループは重なり合っていてもよいし、あるいは重なり合っていなくてもよい。
【0018】
電極部位150は、好適には、楕円の形状を成しており、ここで言う楕円は、円、および0から1までの間の離心率を有する楕円を含むことができる。しかしながら、電極部位はあらゆる適切な形状であってよい。偏心した楕円形状の電極部位の場合には、好適には、その短軸がキャリヤに沿って軸方向に整列している(電極部位は、円周方向に「伸張」されている)が、代替的に、長軸がキャリヤに沿って軸方向に整列していてもよい(電極部位は、軸方向に「伸張」されていてもよい)。別の代替的な実施形態においては、電極部位150の格子パターンは、電極部位150の長軸および短軸が円周方向にも軸方向にもどちらにも整列していない状態となるような仕方で角度付けられていてよい。電極部位150の等距離間隔は、楕円形状の電極部位を有し、その楕円形状の長軸および短軸の長さをキャリヤの外径および/または所望の電極部位間隔との関係において調節することにより達成することができる。円筒状のキャリヤ170であることや、等距離間隔、全く同じ電極部位の形状およびサイズ、ならびにキャリヤとの関係における電極部位150の直交配向(楕円の軸が軸方向および円周方向に走っている)を仮定した場合、その楕円形状の電極部位の離心率E(「x」および「y」の観点で言えば、それぞれ、軸方向および円周方向における軸長)と、キャリヤの外径「D」、および電極部位間隔「a」との間の関係は、(y/x)〜(D/a)としてまとめることができる。別の言葉で表現すれば、円周方向の楕円軸と軸方向の楕円軸との比は、好適には、キャリヤの外径に比例し、且つ、電極部位間隔に反比例する。更に、基体120のエッジ122に設けられている伸展部124の振幅(例えば、エッジが真直ぐな線からそれている程度)は、好適には、比y/xに比例する。例えば、ある与えられた部位間隔「a」に対して、キャリヤの直径「D」が小さくなればなるほど、等しい距離部位間隔「a」を維持するために増大された円周方向間隔を有するため、その楕円形状の電極部位は、それだけ一層偏心度が大きくならなければならず、軸方向に「伸張された」状態になる。それらの電極部位が、軸方向に関して一層偏心した状態になると、軸方向の楕円軸「x」が円周方向の楕円軸「y」よりも長くなるため、それらの軸の比「y/x」も小さくなり、そして、複数の電極部位150のどれもが覆い隠された状態とならないようにするため、基体エッジに設けられている伸展部の振幅が小さくなり、より一層厳密に真直ぐな線に似た状態となることができる。
【0019】
それらの電極部位150は、好適には、特には、等距離のエッジ間距離を維持するため、および千鳥状の配置パターンのポジショニング効率を最大化するため、サイズおよび形状が同一であるが、複数の電極部位150は、代替的に、サイズおよび/または形状が異なる電極部位を含んでいてもよい。電極部位150の特定のサイズは、好適には、電極部位を伴う電極アレイの表面積の個体数を最適化し、大きめの電極部位および小さめの電極部位が有する利点と欠点とのバランスをとる。具体的に、大きめの電極部位は、個々の電極部位および/または電極部位グループから比較的大きな刺激電流を送給する能力を有することができ、これにより、例えば、一層広範囲にわたる様々な刺激および治療などを目的として、電流分布および活性化パターンに関する一層多くの選択肢が可能になる。また、大きめの電極部位は、比較的大きな面積にわたってエネルギーを分配することにより、ある与えられた量の送給電流に対して、小さめの電極部位よりも、電気化学的ストレスを被りにくく、且つ、低めの電荷密度を有することができる。しかしながら、電極部位が比較的小さい場合には、電極部位間における望ましくない電気的相互作用を低減させることができる。また、小さめの電極部位は、ある与えられた表面積の一層効率的な個体数を可能にし、これにより、一層微細な刺激制御を提供することができる。電極部位は、好適には、基体上に堆積された第2金属層132からパターン化され、また、好適には、白金でできているが、代替的に、それらの電極部位150は、あらゆる適切な導電性材料から製作されていてよい。
【0020】
図1に示されているように、電極アレイの1つの特定のバリエーションは、好適には、キャリヤの周りに円周方向に、且つ、キャリヤに沿って軸方向に位置付けされた64個の刺激用の楕円電極を含んでおり、より好適には、それらの64個の刺激用電極は、各電極部位が長手方向に関しては7個のそれぞれの他の環からの1つの電極部位と整列し、そして、短手方向に関してはその同じ環内における3つの他の電極部位と整列するような仕方で、16個の、4個の刺激用電極からなる千鳥状の環に配列される。この電極アレイは、代替的におよび/または付加的に、記録用の電極または何らかの適切な種類の電極を含んでいてよい。図2に示されているように、それらの電極部位は、好適には、それらがおおよそ0.20ミリメートルの等しい距離エッジ間距離を有するような仕方で位置付けられる。それらの電極部位は、好適には、楕円の形状を成していて、その楕円の長軸の長さは、好適には、おおよそ0.80ミリメートルであり、短軸の長さは、好適には、おおよそ0.666ミリメートルである。
【0021】
2.キャリヤ
図1に示されているように、好適な実施形態のキャリヤ170は、電極アレイを支える機能を果たす。キャリヤ170は、更に、電極アレイ110を組織内または別の適切な物質の内部へ運ぶ機能も果たすことができる。キャリヤ170の形状は、好適には、直径が約1mmのチューブ状であるが、代替的に、望ましい機能を考慮した上で、あらゆる適切な直径を有するあらゆる適切な形状であってよい。キャリヤ170は、組織を穿通し、その組織内へキャリヤおよび電極アレイ12を挿入するのに役立たせることができるように成された尖った端部を含んでいてよい。キャリヤ170は、更に、システム100の機能性を拡張し、そこを通じて治療用の薬剤や、本埋め込み物に対する生物学的応答を抑制するための薬剤、または何らかの他の適切な流体を送ることができるように成す流路を提供することができる。これは、神経系などの身体の局所化された領域への特定の調剤化合物の精密な送給をもたらし、また、例えば、術中マッピング手順または長期間にわたって使用される治療用埋め込み装置を促進することもできよう。また、この流路は、埋め込み術で助けとなるべく、そこを通じて補強剤(stiffener)スティフナーおよび/または探査針(stylet)を挿入することができるように成す場所を提供することもできる。代替的に、キャリヤは、更に、そこを通じて補強剤または探査針を挿入することができるように成す別個の管腔を含んでいてもよい。
【0022】
本キャリヤは、好適には、以下に示すいくつかのバリエーションのうちの1つである。第1のバリエーションにおいては、キャリヤはポリマー製のキャリヤである。そのキャリヤは、好適にはポリイミドまたはシリコーンなどのポリマーでできているが、代替的に、あらゆる他の適切な材料から製作することもできる。また、そのキャリヤは、導電性のインターコネクトを絶縁するパリレンなどの絶縁ポリマーを付加的に含んでいてよい。本キャリヤは、好適には可撓性であるが、代替的に、剛性または半剛性であってもよい。第2のバリエーションにおいては、キャリヤは、金属製のキャリヤである。このバリエーションにおけるキャリヤは、中実の金属製チューブもしくは円筒体であってよく、または、代替的に、穿孔されていてもよいし、もしくは何らかの他の適切な様式において中実でなくてもよい。第3のバリエーションにおいては、本キャリヤは、吸収性のキャリヤであって、ある期間の後、組織に吸収され、その吸収の際、本電極アレイは、脳もしくは他の適切な組織または材料内で自由に浮かんだ状態のままとどまるであろう。この吸収性キャリヤは、好適には、生体吸収性ポリマーから織り込みまたは編み込みされた、埋め込み可能な医療用布から製作される。前述の生体吸収性ポリマーは、好適には、ポリグリコリドまたはポリラクチドであるが、代替的に、あらゆる適切な生体吸収性材料から製作することができる。キャリヤは、好適には、これら3つのバリエーションのうちの1つであるが、本キャリヤは、代替的に、電極アレイおよびコネクターを、組織または他の物質内へ運び、且つ、構造上の支えを提供することができるあらゆる適切なエレメントであってよい。
【0023】
3.付加的な構成要素
本神経インターフェースシステムは、更に、一連の電極アレイを三次元の配列に位置付けするガイディングエレメントを含んでいてよく、または、それらの電極アレイは、代替的に、付加的なガイディングエレメントを伴うことなく、三次元の様式に配列されてもよい。そのガイディングエレメントは、好適には、2007年10月31日に出願された「Neural Interface System」と題する米国特許出願第11/932903号で開示されているガイディングエレメントと同様であり、前述の出願公報は、その内容全体がこの参照により本明細書に組み入れられる。
【0024】
本神経インターフェースシステムは、更に、電極アレイと協働して機能する第2の電気的なサブシステムを含んでいてよい。この第2の電気的なサブシステムは、好適には、電極アレイと協働するのに適した電子的サブシステムのいくつかのバリエーションのうちの少なくとも1つまたはそれらのバリエーションの何らかの組み合わせである。第2の電気的なサブシステムは、プリント回路基板であってよく、そのプリント回路基板は、信号調整用および/または刺激発生用のオンボード集積回路および/またはオンチップ回路、Application Specific Integrated Circuit(ASIC)、マルチプレクサーチップ(multiplexer chip)、緩衝増幅器、エレクトロニクスインターフェース(electronics interface)、埋め込み可能なパルス発生器(高周波パルス電流を生成する埋め込み可能なパルス発生器)、埋め込み可能な充電式バッテリー、入力(記録)信号もしくは出力(刺激)信号のいずれかを即時信号処理するための集積エレクトロニクス、流体成分を制御するための集積エレクトロニクス、何らかの他の適切な電気的サブシステム、または前述のものの何らかの組み合わせを伴った状態のプリント回路基板もしくはそれらを伴わない状態でのプリント回路基板であってよい。
【0025】
本神経インターフェースシステムは、更に、電極アレイを上述の第2の電気的サブシステムに連結する機能を果たすコネクターを含んでいてよい。このコネクターは、好適にはリボンケーブルであり、より好適には、ポリマー製のリボンケーブルであるが、代替的に、あらゆる適切な種類のリボンケーブルであってもよいし、または電極アレイを第2の電気的サブシステムに連結するのに適したワイヤーもしくは導電性インターコネクトなどの他のエレメントであってもよい。
【0026】
本神経インターフェースシステムは、更に、組織もしくは他の適切な物質を穿通する機能および/または埋め込み中における本神経インターフェースシステムのための構造的支えを提供する機能を果たす探査針を含んでいてよい。この探査針は、好適にはキャリヤの管腔内に挿入されるが、代替的に、あらゆる適切な仕方で本システムのあらゆる適切な構成要素に配置および/または挿入されてよい。
【0027】
本神経インターフェースシステムは、更に、電極アレイの挿入を容易化する機能および/または埋め込み中における本神経インターフェースシステムのための構造的支えを提供する機能を果たすガイドチューブを含むことができる。
【0028】
上述の細目に加え、第2の電気的なサブシステム、コネクター、探査針およびガイドチューブは、好適には、上で参照されているとおりの米国特許出願第11/932903号で開示されているものと同様であってよいが、代替的に、あらゆる適切な設計、構造および/または造りのものであってよい。
【0029】
4.神経インターフェースシステムを埋め込む方法
図14に示されているような神経インターフェースシステムを埋め込む方法は、好適には、以下のステップ(またはあらゆる他の適切なステップ)のあらゆる組み合わせを含む:
・筐体(chamber)180を患者の頭蓋骨(好適には頭蓋骨孔)に取り付けるステップ;
・ガイドチューブを通じておよび/または探査針を用いて、コネクターを介して第2の電気的サブシステムに連結されている電極アレイを埋め込むステップ;
・第2の電気的サブシステムを通り越してガイドチューブを取り除くステップおよび/または探査針を取り除くステップ;
・第2の電気的サブシステムを筐体180の内部に配置するステップ;および
・その電気的サブシステムを筐体180内にシーリングするステップ。
【0030】
簡潔にするために省略されているが、好適な実施形態は、様々な電極アレイ、様々なキャリヤ、様々な電気的サブシステムおよびコネクター、ならびに様々なガイドチューブおよび探査針のあらゆる組み合わせおよび置換を含む。
【0031】
5.神経インターフェースシステムを製作する方法
一般的に、電極アレイおよび電極部位を製作するための技術は、好適には集積回路を創出するために使用される技術と同様であり、それゆえ、好適には、同様な基体、導電体および絶縁材料を使用して製作される。以下で開述されているような点を除き、電極アレイおよび電極部位のための、製作プロセスと材料とは、好適には、上で参照されているとおりの米国特許出願第11/932903号で開示されているものと同様であるが、代替的に、あらゆる適切なプロセスであってよく、および/または、あらゆる適切な材料から製作されてよい。図10および図13に示されているように、神経インターフェースシステム200を製作する方法は、好適には、一組の伸展部を伴って形作られたエッジを有する可撓性基体を提供するステップS210;その基体上に第1ポリマー層を堆積させるステップS220;電気信号を伝導する複数の導電性配線を前述の第1ポリマー層の上に構築するステップS230;その基体の上に第2ポリマー層を堆積させるステップS240;三角格子の形態において前述の複数の導電性配線に連結された複数の電極部位を構築するステップS250;および、前述の複数の電極部位が外側に面し、且つ、上述の一組の伸展部がその複数の電極部位の一部とインターリーブし、これにより、前述の三角格子は途切れのない状態となることが可能になるような仕方で三次元電極アレイを形成すべく、上述のエッジへ向けて前述の基体を巻くステップS260を含む。
【0032】
一組の伸展部を伴ったエッジを有する可撓性基体を提供するステップS210は、その上に後続的に形成される層が堆積され、且つ、電極アレイを形成すべくパターン化されることとなる、基材を提供する機能を果たす。可撓性基体を提供するステップ210は、好適には、基体を提供するステップ、およびその基体の選定された部分を取り除いて一組の伸展部を形成するステップを含む。その一組の伸展部は、好適には、上のセクション1で説明されているようにして形作られる。一組の伸展部を形成するために行われる基体材料の除去は、切断、研削、サンディング、研磨、および/または何らかの適切なプロセスにより果たされてよい。代替的に、一組の伸展部は、基体を成形することにより形成されてよく、または何らかの適切なプロセスにより形成されてもよい。前述の可撓性基体は、一組の伸展部を伴った2つもしくはそれ以上のエッジを含んでいてよい。
【0033】
上述の基体の上に第1ポリマー層を堆積させるステップS220は、導電性配線を含む導電性材料に対する下側の絶縁層を提供する機能を果たす。第1ポリマー層を堆積させるこのステップは、好適には、二酸化ケイ素および/または窒化ケイ素のうちの少なくとも一方の層を堆積させるステップを含む。図12に示されているように、上述の第1ポリマー層は、好適には多数の二酸化ケイ素層、窒化ケイ素層および/または何らかの適切な絶縁ポリマー層を含み、より好適には、交互する様式で複数のそれらの層を含む。これらの層は、好適には、厚みがおおよそ10マイクロメートルであり、基体上に総じて一様に堆積される。
【0034】
電気信号を伝導する複数の導電性配線を上述の第1ポリマー層上に構築するステップを含むステップ230は、上述の複数の電極部位とやりとりをする導電性のインターコネクトを形成する機能を果たす。複数の導電性配線を構築するこのステップは、好適には、上述の第1ポリマー層上に第1金属層を堆積させるステップ、およびその金属層をパターン化して複数の導電性配線を形成するステップを含む。その金属層は、好適には、ポリシリコンを含むが、付加的におよび/または代替的に、電気信号を伝導するのに適したあらゆる材料を含んでいてよい。上述の金属層をパターン化するステップは、以下のいくつかのバリエーションのうちの1つまたはいくつかのバリエーションの組み合わせであってよい。第1のバリエーションにおいては、金属層をパターン化するステップは、総じて上述のエッジに直交する短手方向に配列された複数の短手方向導電性配線を形成するステップを含む。別な言葉で表現すれば、このバリエーションにおいては、前述の短手方向は、好適には、短手方向に引かれた線が本電極アレイの近位側部分と遠位側部分とを分けるような横方向である。第2のバリエーションにおいては、金属層をパターン化するステップは、総じて上述のエッジに平行な長手方向に配列された複数の長手方向導電性配線を形成するステップを含む。このバリエーションにおいては、前述の長手方向は、好適には、長手方向に引かれた線が本電極アレイの近位側部分から遠位側部分に走るような縦方向である。第3のバリエーションにおいては、金属層をパターン化するステップは、本電極アレイの近位側端部との関係において直交しない角度で配列された複数の傾斜した導電性配線を形成するステップを含む。
【0035】
基体上に第2ポリマー層を堆積させるステップS240は、好適には、第2ポリマー層の部分が、絶縁することを目的として第1ポリマー層と第2ポリマー層との間に複数の導電性配線を含めるべく、複数の導電性部分を好適にカバーする点を除き、基体上に第1ポリマー層を堆積させるステップと同様である。いくつかの実施形態においては、本方法は、更に、電極部位を導電性配線に連結する複数のボンドパッドを構築するステップを含んでいてよい。それらのボンドパッドは、導電性配線および電極部位と同様な仕方で、金または何らかの他の適切な導電性材料からパターン化されてよい。
【0036】
複数の導電性配線に連結される複数の電極部位を構築するステップを含むステップ250は、神経刺激および/または記録をもたらす電極を構成する機能を果たす。この構築ステップは、好適には、基体上に第2金属層を堆積させるステップS252、およびその第2金属層をパターン化して複数の電極部位を形成するステップS254を含む。それらの電極部位は、好適には、三角格子の形態で形成され、また、好適には、等しい距離のエッジ間距離を有している。セクション1における神経インターフェースシステムで説明されているように、その三角格子は、好適には、正三角格子(六方格子)であるが、代替的に、二等辺三角格子(斜方格子)、または不等辺三角格子(平行四辺形格子)であってもよい。代替的に、それらの電極部位は、キャリヤの周りに弓状に(arcuately)配列され、且つ、直線的な矩形格子パターンもしくは正方形格子パターンまたは何らかの適切なパターンでキャリヤに沿って軸方向に配列されていてもよい。いくつかの実施形態においては、それらの電極部位は異なる格子を組み合わせた形態で配列されていてよい。例えば、電極アレイの1つの部分が六方格子の形態で配列された電極部位の部分を含んでいてよく、その一方で、電極部位の別の部分が平行四辺形格子の形態であってよい。
【0037】
本方法は、好適には、更に、外側のポリマー層を構築するステップS270を含み、このステップは、好適には、基体上に第3ポリマー層を堆積させるステップ、および電極部位を露出させるべくその第3ポリマー層をパターン化するステップを含む。そのポリマー層は、好適には、パリレンなどの絶縁ポリマーであるが、代替的に、あらゆる適切な材料であってよい。
【0038】
三次元の電極アレイを形成すべく上述のエッジへ向けて本基体を巻くステップを含むステップ260は、三次元の形態における電極アレイを形成する機能を果たす。基体を巻くこのステップは、好適には、複数の電極部位が外側に面して配列されることを可能にする。また、基体を巻くこのステップは、上述の基体のエッジに設けられた一組の伸展部が複数の電極部位の部分とインターリーブすることを可能に成し、これにより、上述の三角格子がその電極アレイの周りの円周方向に関して、且つ、電極アレイに沿った軸方向に関して途切れのない状態となることが可能になる。本電極アレイは、好適には、円筒状であるが、あらゆる適切な断面形状を有することができ、例えば、偏心した楕円断面、v−字形断面または三日月形の断面などの断面形状を有していてよい。導電性配線が短手方向に配列される第1のバリエーションにおいては、基体を巻くこのステップは、好適には、短手方向導電性配線が円周方向の環内に配列されるような仕方で、短手方向導電性配線を上述の巻かれた基体の内部で弓状にラッピングするステップを含む。上述の短手方向エッジに向けて基体を巻くステップにおいて、その短手方向エッジは、基体の一部を重ね合わせる「自由」端である。導電性配線が長手方向に配列される第2のバリエーションにおいては、上述の基体を巻くステップは、好適には、長手方向の導電性配線が三次元のアレイに沿って軸方向に通ることを可能に成し、その電極アレイの近位側端部から遠位側端部まで走らせるステップを含む。本方法は、好適には、更に、その巻かれた基体を成形型に入れるステップ、およびその巻かれた基体を、例えば、炉内などにおいて焼き戻しに掛けるステップを含む。
【0039】
本方法は、好適には、電極アレイを支えるためのキャリヤを電極アレイに連結するステップを含み、このステップは、本神経インターフェースシステムの構成要素を組み立てる機能を果たす。キャリヤを電極アレイに連結するステップは、以下のいずれかのステップを含んでいてよく、あらゆる適切な付加的ステップを含んでいてよく、およびそれらのステップのあらゆる組み合わせを含んでいてよい:電極アレイをコネクターに接続するステップ、第2の電気的サブシステムをコネクターに接続するステップ、電極アレイを予備成形するステップ、一組のインターコネクトを接続するステップ、およびシリコーンエレメントを射出成形するステップ。
【0040】
当業者であれば、これまでの詳細な説明から、また、添付図面および特許請求の範囲から認識されるものと思われるが、以下の特許請求の範囲で定められる本発明の範囲から逸脱することなく、本発明の好適な実施形態に対する種々の修飾および変更を成すことができる。
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