特許第5658291号(P5658291)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5658291帰磁路部を備えた垂直磁気記録用磁気ヘッド
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5658291
(24)【登録日】2014年12月5日
(45)【発行日】2015年1月21日
(54)【発明の名称】帰磁路部を備えた垂直磁気記録用磁気ヘッド
(51)【国際特許分類】
   G11B 5/31 20060101AFI20141225BHJP
【FI】
   G11B5/31 D
   G11B5/31 Q
   G11B5/31 A
【請求項の数】11
【全頁数】42
(21)【出願番号】特願2013-10382(P2013-10382)
(22)【出願日】2013年1月23日
(65)【公開番号】特開2013-235643(P2013-235643A)
(43)【公開日】2013年11月21日
【審査請求日】2013年1月23日
(31)【優先権主張番号】13/463,298
(32)【優先日】2012年5月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500475649
【氏名又は名称】ヘッドウェイテクノロジーズ インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】500393893
【氏名又は名称】新科實業有限公司
【氏名又は名称原語表記】SAE Magnetics(H.K.)Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100107559
【弁理士】
【氏名又は名称】星宮 勝美
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 芳高
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】種村 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 一樹
(72)【発明者】
【氏名】池川 幸徳
(72)【発明者】
【氏名】飯島 淳
(72)【発明者】
【氏名】清水 達也
【審査官】 斎藤 眞
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−186555(JP,A)
【文献】 特開2012−003834(JP,A)
【文献】 特開2009−020999(JP,A)
【文献】 特開2006−252756(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 5/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に対向する媒体対向面と、
前記記録媒体に記録する情報に応じた磁界を発生するコイルと、
前記媒体対向面に配置された端面を有し、前記コイルによって発生された磁界に対応する磁束を通過させると共に、垂直磁気記録方式によって前記情報を前記記録媒体に記録するための記録磁界を発生する主磁極と、
磁性材料よりなる第1の帰磁路部と、
非磁性材料よりなり、前記主磁極と前記第1の帰磁路部との間に配置された第1の部分を含むギャップ部と、
非磁性材料よりなる非磁性層と、
上面を有する基板とを備えた垂直磁気記録用磁気ヘッドであって、
前記コイル、主磁極、第1の帰磁路部、ギャップ部および非磁性層は、前記基板の上面の上方に配置され、
前記第1の帰磁路部は、前記主磁極に対して前記記録媒体の進行方向の前側であって前記基板の上面からより遠い位置に配置され、且つ前記主磁極、ギャップ部および第1の帰磁路部によって囲まれた第1の空間が形成されるように、前記主磁極のうちの前記媒体対向面から離れた部分に磁気的に接続され、
前記コイルは、前記第1の空間を通過するように延びる少なくとも1つの第1のコイル要素を含み、
前記第1の帰磁路部は、前記媒体対向面において前記主磁極の前記端面に対して前記記録媒体の進行方向の前側に位置する前端面と、前記前端面に対して前記記録媒体の進行方向の前側に位置する傾斜面とを有し、
前記傾斜面は、前記前端面に接続された第1の端縁と、前記第1の空間よりも前記基板の上面からより遠い位置にある第2の端縁とを有し、
前記傾斜面の一部は、前記第1の空間と前記媒体対向面との間に位置し、
前記傾斜面における任意の位置の前記媒体対向面からの距離は、任意の位置が前記基板の上面から離れるに従って大きくなり、
前記前端面と前記傾斜面とがなす角度は、90°よりも大きく、
前記非磁性層は、前記傾斜面と前記媒体対向面との間に介在する介在部を有し、
前記第1の帰磁路部は、前記前端面を含む第1のシールドと、前記第1のシールドと前記主磁極のうちの前記媒体対向面から離れた部分とを磁気的に連結する第1の連結部と、前記第1のシールドと前記第1の連結部の間に介在し前記第1の連結部の一部の下地となる下地層とを有し、
前記傾斜面は、前記第1のシールド、下地層および第1の連結部に対して形成され、
前記傾斜面の前記第1の端縁は、前記第1のシールドに存在し、
前記第1のシールドは、更に、前記主磁極から最も遠い上面を含み、
前記第1の連結部は、前記下地層を介して前記第1のシールドの上面に対向するシールド対向面を含み、
前記下地層は、材料、膜質、結晶粒の大きさ、結晶の構造のうちの少なくとも1つの点で、前記第1のシールドおよび前記第1の連結部の一部とは異質な層であることを特徴とする垂直磁気記録用磁気ヘッド。
【請求項2】
前記前端面と前記傾斜面とがなす角度は、160°〜175°の範囲内であることを特徴とする請求項1記載の垂直磁気記録用磁気ヘッド。
【請求項3】
前記傾斜面は、平面であることを特徴とする請求項1記載の垂直磁気記録用磁気ヘッド。
【請求項4】
前記第1の連結部は、ヨーク層と、第1ないし第3の連結層を有し、
前記ヨーク層は、前記媒体対向面から離れた位置に配置されて、前記主磁極のうちの前記媒体対向面から離れた部分に磁気的に接続され、
前記第1の連結層は、前記シールド対向面を含み、前記第1のシールドに磁気的に接続され、
前記第2の連結層は、前記ヨーク層よりも前記基板の上面からより遠い位置に配置されて、前記ヨーク層に磁気的に接続され、
前記第3の連結層は、前記第1および第2の連結層よりも前記基板の上面からより遠い位置に配置されて、前記第1の連結層と第2の連結層を磁気的に連結していることを特徴とする請求項記載の垂直磁気記録用磁気ヘッド。
【請求項5】
前記第1の連結部は、ヨーク層と連結層とを有し、
前記ヨーク層は、前記媒体対向面から離れた位置に配置されて、前記主磁極のうちの前記媒体対向面から離れた部分に磁気的に接続され、
前記連結層は、前記シールド対向面を含み、前記第1のシールドおよびヨーク層よりも前記基板の上面からより遠い位置に配置されて、前記第1のシールドとヨーク層を磁気的に連結していることを特徴とする請求項記載の垂直磁気記録用磁気ヘッド。
【請求項6】
更に、磁性材料よりなり、前記主磁極に対して前記記録媒体の進行方向の後側に配置された第2の帰磁路部を備え、
前記ギャップ部は、更に、前記主磁極と前記第2の帰磁路部との間に配置された第2の部分を含み、
前記第2の帰磁路部は、前記主磁極、ギャップ部および第2の帰磁路部によって囲まれた第2の空間が形成されるように、前記主磁極のうちの前記媒体対向面から離れた部分に磁気的に接続され、
前記コイルは、更に、前記第2の空間を通過するように延びる少なくとも1つの第2のコイル要素を含むことを特徴とする請求項1記載の垂直磁気記録用磁気ヘッド。
【請求項7】
更に、磁性材料よりなり、前記媒体対向面において前記主磁極の前記端面に対してトラック幅方向の両側に配置された2つの端面を有する2つのサイドシールドを備えたことを特徴とする請求項1記載の垂直磁気記録用磁気ヘッド。
【請求項8】
記録媒体に対向する媒体対向面と、
前記記録媒体に記録する情報に応じた磁界を発生するコイルと、
前記媒体対向面に配置された端面を有し、前記コイルによって発生された磁界に対応する磁束を通過させると共に、垂直磁気記録方式によって前記情報を前記記録媒体に記録するための記録磁界を発生する主磁極と、
磁性材料よりなる第1の帰磁路部と、
非磁性材料よりなり、前記主磁極と前記第1の帰磁路部との間に配置された第1の部分を含むギャップ部と、
非磁性材料よりなる非磁性層と、
上面を有する基板とを備え、
前記コイル、主磁極、第1の帰磁路部、ギャップ部および非磁性層は、前記基板の上面の上方に配置され、
前記第1の帰磁路部は、前記主磁極に対して前記記録媒体の進行方向の前側であって前記基板の上面からより遠い位置に配置され、且つ前記主磁極、ギャップ部および第1の帰磁路部によって囲まれた第1の空間が形成されるように、前記主磁極のうちの前記媒体対向面から離れた部分に磁気的に接続され、
前記コイルは、前記第1の空間を通過するように延びる少なくとも1つの第1のコイル要素を含み、
前記第1の帰磁路部は、前記媒体対向面において前記主磁極の前記端面に対して前記記録媒体の進行方向の前側に位置する前端面と、前記前端面に対して前記記録媒体の進行方向の前側に位置する傾斜面とを有し、
前記傾斜面は、前記前端面に接続された第1の端縁と、前記第1の空間よりも前記基板の上面からより遠い位置にある第2の端縁とを有し、
前記傾斜面の一部は、前記第1の空間と前記媒体対向面との間に位置し、
前記傾斜面における任意の位置の前記媒体対向面からの距離は、任意の位置が前記基板の上面から離れるに従って大きくなり、
前記前端面と前記傾斜面とがなす角度は、90°よりも大きく、
前記非磁性層は、前記傾斜面と前記媒体対向面との間に介在する介在部を有する垂直磁気記録用磁気ヘッドの製造方法であって、
後に前記端面が形成されて前記主磁極となる予備主磁極を形成する工程と、
前記ギャップ部を形成する工程と、
前記コイルを形成する工程と、
後に前記前端面と傾斜面が形成されて前記第1の帰磁路部となる予備帰磁路部を形成する工程と、
前記予備帰磁路部に前記傾斜面が形成されるように、前記予備帰磁路部の一部をエッチングする工程と、
後に前記非磁性層となる予備非磁性層を形成する工程と、
前記予備帰磁路部に前記前端面が形成されて前記予備帰磁路部が前記第1の帰磁路部となり、前記予備主磁極に前記端面が形成されて前記予備主磁極が前記主磁極となり、前記予備非磁性層が前記非磁性層となるように、前記媒体対向面を形成する工程とを備えたことを特徴とする垂直磁気記録用磁気ヘッドの製造方法。
【請求項9】
前記前端面と前記傾斜面とがなす角度は、160°〜175°の範囲内であることを特徴とする請求項記載の垂直磁気記録用磁気ヘッドの製造方法。
【請求項10】
前記傾斜面は、平面であることを特徴とする請求項記載の垂直磁気記録用磁気ヘッドの製造方法。
【請求項11】
前記第1の帰磁路部は、前記前端面を含む第1のシールドと、前記第1のシールドと前記主磁極のうちの前記媒体対向面から離れた部分とを磁気的に連結する第1の連結部と、前記第1のシールドと前記第1の連結部の間に介在し前記第1の連結部の一部の下地となる下地層とを有し、
前記傾斜面は、前記第1のシールド、下地層および第1の連結部に対して形成され、
前記傾斜面の前記第1の端縁は、前記第1のシールドに存在し、
前記第1のシールドは、更に、前記主磁極から最も遠い上面を含み、
前記第1の連結部は、前記下地層を介して前記第1のシールドの上面に対向するシールド対向面を含み、
前記予備帰磁路部を形成する工程は、
後に前記第1のシールドとなる予備シールドを形成する工程と、
前記予備シールドの上に、後に前記下地層となるシード層を形成する工程と、
後に前記第1の連結部となる予備連結部を形成する工程であって、前記予備連結部の少なくとも一部は前記シード層をシードとして用いためっき法によって形成される工程とを含み、
前記予備帰磁路部の一部をエッチングする工程は、前記予備シールド、シード層および予備連結部に対して前記傾斜面が形成されるように、前記予備シールド、シード層および予備連結部のそれぞれの一部をエッチングすることを特徴とする請求項記載の垂直磁気記録用磁気ヘッドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直磁気記録方式によって記録媒体に情報を記録するために用いられる垂直磁気記録用磁気ヘッドに関し、特に、主磁極と帰磁路部とを備えた垂直磁気記録用磁気ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気記録再生装置における記録方式には、信号磁化の向きを記録媒体の面内方向(長手方向)とする長手磁気記録方式と、信号磁化の向きを記録媒体の面に対して垂直な方向とする垂直磁気記録方式とがある。垂直磁気記録方式は、長手磁気記録方式に比べて、記録媒体の熱揺らぎの影響を受けにくく、高い線記録密度を実現することが可能であると言われている。
【0003】
一般的に、垂直磁気記録用の磁気ヘッドとしては、長手磁気記録用の磁気ヘッドと同様に、読み出し用の磁気抵抗効果素子(以下、MR(Magnetoresistive)素子とも記す。)を有する再生ヘッド部と、書き込み用の誘導型電磁変換素子を有する記録ヘッド部とを、基板の上面上に積層した構造のものが用いられる。記録ヘッド部は、記録媒体の面に対して垂直な方向の記録磁界を発生する主磁極を備えている。主磁極は、例えば、一端部が記録媒体に対向する媒体対向面に配置されたトラック幅規定部と、このトラック幅規定部の他端部に連結され、トラック幅規定部よりも大きな幅を有する幅広部とを有している。トラック幅規定部は、ほぼ一定の幅を有している。垂直磁気記録方式の記録ヘッド部には、高記録密度化のために、トラック幅の縮小と、記録特性、例えば重ね書きの性能を表わすオーバーライト特性の向上が求められる。
【0004】
ところで、ハードディスク装置等の磁気ディスク装置に用いられる磁気ヘッドは、一般的に、スライダに設けられる。スライダは、上記媒体対向面を有している。この媒体対向面は、空気流入端(リーディング端)と空気流出端(トレーリング端)とを有している。そして、空気流入端から媒体対向面と記録媒体との間に流入する空気流によって、スライダは記録媒体の表面からわずかに浮上するようになっている。
【0005】
ここで、基準の位置に対して、よりリーディング端に近い位置をリーディング側と定義し、基準の位置に対して、よりトレーリング端に近い位置をトレーリング側と定義する。リーディング側は、スライダに対する記録媒体の進行方向の後側である。トレーリング側は、スライダに対する記録媒体の進行方向の前側である。
【0006】
スライダにおいて、一般的に、磁気ヘッドは媒体対向面におけるトレーリング端近傍に配置される。磁気ディスク装置において、磁気ヘッドの位置決めは、例えばロータリーアクチュエータによって行なわれる。この場合、磁気ヘッドは、ロータリーアクチュエータの回転中心を中心とした円軌道に沿って記録媒体上を移動する。このような磁気ディスク装置では、磁気ヘッドのトラック横断方向の位置に応じて、スキューと呼ばれる、円形のトラックの接線に対する磁気ヘッドの傾きが生じる。
【0007】
特に、長手磁気記録方式に比べて記録媒体への書き込み能力が高い垂直磁気記録方式の磁気ディスク装置では、上述のスキューが生じると、あるトラックへの信号の記録時に、記録対象のトラックに隣接する1以上のトラックに記録された信号が消去されたり減衰したりする現象(以下、隣接トラック消去と言う。)が生じる場合がある。高記録密度化のためには、隣接トラック消去の発生を抑制する必要がある。
【0008】
上述のようなスキューに起因した隣接トラック消去の発生を抑制すると共に記録密度を向上させる技術としては、主磁極の近傍に1つ以上のシールドを設ける技術が有効である。例えば、特許文献1や、特許文献2には、媒体対向面において主磁極の端面の周りを囲むように配置された端面を有するシールドを備えた磁気ヘッドが開示されている。
【0009】
一般的に、1つ以上のシールドを備えた磁気ヘッドでは、1つ以上のシールドを含む1つ以上の帰磁路部が設けられる。1つ以上の帰磁路部は、主磁極のうちの媒体対向面から離れた部分に磁気的に接続される。1つ以上の帰磁路部は、主磁極の端面より発生されて記録媒体の面に垂直な方向以外の方向に広がる磁束を取り込んで、この磁束が記録媒体に達することを阻止する機能を有している。また、1つ以上の帰磁路部は、主磁極の端面より発生されて、記録媒体を磁化した磁束を、主磁極に還流させる機能も有している。主磁極の近傍に1つ以上のシールドが設けられた磁気ヘッドによれば、隣接トラック消去の発生を抑制することが可能になると共に、記録密度のより一層の向上が可能になる。
【0010】
特許文献1や、特許文献2には、上記1つ以上の帰磁路部として、主磁極のリーディング側に配置された帰磁路部と、主磁極のトレーリング側に配置された帰磁路部とを備えた磁気ヘッドが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005−182987号公報
【特許文献2】特開2010−157303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ここで、主磁極のトレーリング側に配置された帰磁路部(以下、トレーリング帰磁路部と記す。)の構成について考える。磁気ヘッドでは、一般的に、基板の上面上に積層された再生ヘッド部および記録ヘッド部は、基板の上面に対してトレーリング側に位置する。この場合、トレーリング帰磁路部は、主磁極に対して基板の上面からより遠い位置に配置される。主磁極とトレーリング帰磁路部は、コイルの一部が通過する空間を形成する。このような磁気ヘッドでは、一般的に、トレーリング帰磁路部は、複数の層によって構成される。
【0013】
特許文献1の図9に示された磁気ヘッドでは、トレーリング帰磁路部は、ショーティングシールドとリターンポールとバックビアとヨークによって構成されている。この磁気ヘッドでは、記録媒体の進行方向についてのショーティングシールドの長さが、媒体対向面に垂直な方向についてのショーティングシールドの長さに比べて非常に大きく、且つショーティングシールドの端面が媒体対向面において広い面積にわたって露出する。このようなショーティングシールドでは、主磁極の端面の近傍に位置するショーティングシールドの端面の一部からショーティングシールド内に取り込まれた磁束の一部が、ショーティングシールドの端面の他の部分から記録媒体に向けて漏れ出すおそれがある。そして、これにより、隣接トラック消去が生じるおそれがある。
【0014】
また、上記の磁気ヘッドでは、コイルが発生する熱によって、コイルの周囲の絶縁層やショーティングシールドが膨張し、その結果、ショーティングシールドの端面が記録媒体に向けて突出するおそれがある。このように、ショーティングシールドの端面が突出すると、主磁極の端面や再生ヘッド部における媒体対向面に位置する端部が記録媒体から遠ざかってしまい、記録特性や再生特性が劣化するおそれがある。
【0015】
特許文献2の図2に示された磁気ヘッドでは、トレーリング帰磁路部は、7つの層によって構成されている。この7つの層には、媒体対向面において主磁極の端面に対してトレーリング側に配置された端面を有する上部シールド層と、上部シールド層の上に順に積層された第2ないし第4層が含まれる。この磁気ヘッドでは、第2ないし第4層は、いずれも、媒体対向面により近い端面を有し、この端面は媒体対向面から離れた位置に配置されている。このヘッドによれば、トレーリング帰磁路部の端面が媒体対向面において広い面積にわたって露出することによる問題を回避することができる。
【0016】
しかし、特許文献2の図2に示された磁気ヘッドでは、以下のような問題がある。すなわち、この磁気ヘッドでは、媒体対向面に配置された上部シールド層の端面と上部シールド層の上面が90°の角度で交差している。これにより、トレーリング帰磁路部は、媒体対向面の近傍において、90°の角度のエッジを有することになる。このようなトレーリング帰磁路部では、上記エッジの近傍からトレーリング帰磁路部の外部へ磁界が漏れやすくなる。その結果、隣接トラック消去が発生するおそれがある。
【0017】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、主磁極に対して記録媒体の進行方向の前側に配置された帰磁路部に起因する隣接トラック消去の発生を防止できるようにした垂直磁気記録用磁気ヘッドおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の垂直磁気記録用磁気ヘッドは、記録媒体に対向する媒体対向面と、コイルと、主磁極と、磁性材料よりなる第1の帰磁路部と、ギャップ部と、非磁性材料よりなる非磁性層と、上面を有する基板とを備えている。コイルは、記録媒体に記録する情報に応じた磁界を発生する。主磁極は、媒体対向面に配置された端面を有し、コイルによって発生された磁界に対応する磁束を通過させると共に、垂直磁気記録方式によって情報を記録媒体に記録するための記録磁界を発生する。ギャップ部は、非磁性材料よりなり、主磁極と第1の帰磁路部との間に配置された第1の部分を含んでいる。コイル、主磁極、第1の帰磁路部、ギャップ部および非磁性層は、基板の上面の上方に配置されている。
【0019】
第1の帰磁路部は、主磁極に対して記録媒体の進行方向の前側であって基板の上面からより遠い位置に配置され、且つ主磁極、ギャップ部および第1の帰磁路部によって囲まれた第1の空間が形成されるように、主磁極のうちの媒体対向面から離れた部分に磁気的に接続されている。コイルは、第1の空間を通過するように延びる少なくとも1つの第1のコイル要素を含んでいる。
【0020】
第1の帰磁路部は、媒体対向面において主磁極の端面に対して記録媒体の進行方向の前側に位置する前端面と、前端面に対して記録媒体の進行方向の前側に位置する傾斜面とを有している。傾斜面は、前端面に接続された第1の端縁と、第1の空間よりも基板の上面からより遠い位置にある第2の端縁とを有している。傾斜面の一部は、第1の空間と媒体対向面との間に位置している。傾斜面における任意の位置の媒体対向面からの距離は、任意の位置が基板の上面から離れるに従って大きくなる。前端面と傾斜面とがなす角度は、90°よりも大きい。非磁性層は、傾斜面と媒体対向面との間に介在する介在部を有している。
【0021】
本発明の垂直磁気記録用磁気ヘッドにおいて、前端面と傾斜面とがなす角度は、160°〜175°の範囲内であってもよい。また、傾斜面は、平面であってもよい。
【0022】
また、本発明の垂直磁気記録用磁気ヘッドにおいて、第1の帰磁路部は、前端面を含む第1のシールドと、第1のシールドと主磁極のうちの媒体対向面から離れた部分とを磁気的に連結する第1の連結部と、第1のシールドと第1の連結部の間に介在し第1の連結部の一部の下地となる下地層とを有していてもよい。この場合、傾斜面は、第1のシールド、下地層および第1の連結部に対して形成され、傾斜面の第1の端縁は、第1のシールドに存在していてもよい。また、第1のシールドは、更に、主磁極から最も遠い上面を含み、第1の連結部は、下地層を介して第1のシールドの上面に対向するシールド対向面を含んでいてもよい。
【0023】
第1の帰磁路部が第1のシールドと第1の連結部と下地層とを有している場合、第1の連結部は、ヨーク層と、第1ないし第3の連結層を有していてもよい。ヨーク層は、媒体対向面から離れた位置に配置されて、主磁極のうちの媒体対向面から離れた部分に磁気的に接続されている。第1の連結層は、シールド対向面を含み、第1のシールドに磁気的に接続されている。第2の連結層は、ヨーク層よりも基板の上面からより遠い位置に配置されて、ヨーク層に磁気的に接続されている。第3の連結層は、第1および第2の連結層よりも基板の上面からより遠い位置に配置されて、第1の連結層と第2の連結層を磁気的に連結している。
【0024】
第1の帰磁路部が第1のシールドと第1の連結部と下地層とを有している場合、第1の連結部は、ヨーク層と連結層とを有していてもよい。ヨーク層は、媒体対向面から離れた位置に配置されて、主磁極のうちの媒体対向面から離れた部分に磁気的に接続されている。連結層は、シールド対向面を含み、第1のシールドおよびヨーク層よりも基板の上面からより遠い位置に配置されて、第1のシールドとヨーク層を磁気的に連結している。
【0025】
また、本発明の垂直磁気記録用磁気ヘッドは、更に、磁性材料よりなり、主磁極に対して記録媒体の進行方向の後側に配置された第2の帰磁路部を備えていてもよい。この場合、ギャップ部は、更に、主磁極と第2の帰磁路部との間に配置された第2の部分を含み、第2の帰磁路部は、主磁極、ギャップ部および第2の帰磁路部によって囲まれた第2の空間が形成されるように、主磁極のうちの媒体対向面から離れた部分に磁気的に接続されていてもよい。コイルは、更に、第2の空間を通過するように延びる少なくとも1つの第2のコイル要素を含んでいてもよい。
【0026】
また、本発明の垂直磁気記録用磁気ヘッドは、更に、磁性材料よりなり、媒体対向面において主磁極の端面に対してトラック幅方向の両側に配置された2つの端面を有する2つのサイドシールドを備えていてもよい。
【0027】
本発明の垂直磁気記録用磁気ヘッドの製造方法は、
後に端面が形成されて主磁極となる予備主磁極を形成する工程と、
ギャップ部を形成する工程と、
コイルを形成する工程と、
後に前端面と傾斜面が形成されて第1の帰磁路部となる予備帰磁路部を形成する工程と、
予備帰磁路部に傾斜面が形成されるように、予備帰磁路部の一部をエッチングする工程と、
後に非磁性層となる予備非磁性層を形成する工程と、
予備帰磁路部に前端面が形成されて予備帰磁路部が第1の帰磁路部となり、予備主磁極に端面が形成されて予備主磁極が主磁極となり、予備非磁性層が非磁性層となるように、媒体対向面を形成する工程とを備えている。
【0028】
本発明の垂直磁気記録用磁気ヘッドの製造方法において、前端面と傾斜面とがなす角度は、160°〜175°の範囲内であってもよい。また、傾斜面は、平面であってもよい。
【0029】
また、本発明の垂直磁気記録用磁気ヘッドの製造方法において、第1の帰磁路部は、前端面を含む第1のシールドと、第1のシールドと主磁極のうちの媒体対向面から離れた部分とを磁気的に連結する第1の連結部と、第1のシールドと第1の連結部の間に介在し第1の連結部の一部の下地となる下地層とを有していてもよい。この場合、傾斜面は、第1のシールド、下地層および第1の連結部に対して形成され、傾斜面の第1の端縁は、第1のシールドに存在していてもよい。また、第1のシールドは、更に、主磁極から最も遠い上面を含み、第1の連結部は、下地層を介して第1のシールドの上面に対向するシールド対向面を含んでいてもよい。
【0030】
この場合、予備帰磁路部を形成する工程は、後に第1のシールドとなる予備シールドを形成する工程と、予備シールドの上に、後に下地層となるシード層を形成する工程と、後に第1の連結部となる予備連結部を形成する工程であって、予備連結部の少なくとも一部はシード層をシードとして用いためっき法によって形成される工程とを含んでいてもよい。予備帰磁路部の一部をエッチングする工程は、予備シールド、シード層および予備連結部に対して傾斜面が形成されるように、予備シールド、シード層および予備連結部のそれぞれの一部をエッチングしてもよい。
【発明の効果】
【0031】
本発明の垂直磁気記録用磁気ヘッドでは、第1の帰磁路部は、前端面と、前端面に対して記録媒体の進行方向の前側に位置する傾斜面とを有している。これにより、本発明によれば、第1の帰磁路部が媒体対向面に露出する面積を小さくすることができる。また、本発明では、第1の帰磁路部の前端面と傾斜面とがなす角度は、90°よりも大きい。これらのことから、本発明によれば、第1の帰磁路部に起因する隣接トラック消去の発生を防止することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る磁気ヘッドにおける第1の帰磁路部の媒体対向面の近傍の部分を示す断面図である。
図2】本発明の第1の実施の形態に係る磁気ヘッドを示す断面図である。
図3】本発明の第1の実施の形態に係る磁気ヘッドの媒体対向面を示す正面図である。
図4】本発明の第1の実施の形態に係る磁気ヘッドにおけるコイルの第2の部分を示す平面図である。
図5】本発明の第1の実施の形態に係る磁気ヘッドにおけるコイルの第1の部分の第1層を示す平面図である。
図6】本発明の第1の実施の形態に係る磁気ヘッドにおけるコイルの第1の部分の第2層を示す平面図である。
図7】本発明の第1の実施の形態に係る磁気ヘッドにおける主磁極の媒体対向面の近傍の部分を示す断面図である。
図8】本発明の第1の実施の形態に係る磁気ヘッドの製造方法における一工程を示す断面図である。
図9図8に示した工程に続く工程を示す断面図である。
図10図9に示した工程に続く工程を示す断面図である。
図11図10に示した工程に続く工程を示す断面図である。
図12図11に示した工程に続く工程を示す断面図である。
図13図12に示した工程に続く工程を示す断面図である。
図14図13に示した工程に続く工程を示す断面図である。
図15図14に示した工程に続く工程を示す断面図である。
図16図15に示した工程に続く工程を示す断面図である。
図17図16に示した工程に続く工程を示す断面図である。
図18図17に示した工程に続く工程を示す断面図である。
図19図18に示した工程に続く工程を示す断面図である。
図20図19に示した工程に続く工程を示す断面図である。
図21A図20に示した工程に続く工程を示す断面図である。
図21B図20に示した工程に続く工程を示す断面図である。
図22A図21Aおよび図21Bに示した工程に続く工程を示す断面図である。
図22B図21Aおよび図21Bに示した工程に続く工程を示す断面図である。
図23】本発明の第2の実施の形態に係る磁気ヘッドにおけるコイルの複数の第2のコイル要素を示す平面図である。
図24】本発明の第2の実施の形態に係る磁気ヘッドにおけるコイルの複数の第1のコイル要素を示す平面図である。
図25】本発明の第3の実施の形態に係る磁気ヘッドを示す断面図である。
図26】本発明の第3の実施の形態に係る磁気ヘッドにおけるコイルの第2の部分を示す平面図である。
図27】本発明の第3の実施の形態に係る磁気ヘッドにおけるコイルの第1の部分の第2層を示す平面図である。
図28】本発明の第4の実施の形態に係る磁気ヘッドを示す断面図である。
図29】本発明の第4の実施の形態に係る磁気ヘッドにおけるコイルの第1の部分を示す平面図である。
図30A】本発明の第4の実施の形態に係る磁気ヘッドの製造方法における一工程を示す断面図である。
図30B】本発明の第4の実施の形態に係る磁気ヘッドの製造方法における一工程を示す断面図である。
図31A図30Aおよび図30Bに示した工程に続く工程を示す断面図である。
図31B図30Aおよび図30Bに示した工程に続く工程を示す断面図である。
図32】本発明の第5の実施の形態に係る磁気ヘッドを示す断面図である。
図33】本発明の第5の実施の形態に係る磁気ヘッドの媒体対向面を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。始めに、図1ないし図7を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る磁気ヘッドの構成について説明する。図1は、本実施の形態に係る磁気ヘッドにおける第1の帰磁路部の媒体対向面の近傍の部分を示す断面図である。図2は、本実施の形態に係る磁気ヘッドを示す断面図である。図3は、本実施の形態に係る磁気ヘッドの媒体対向面を示す正面図である。図4は、本実施の形態に係る磁気ヘッドにおけるコイルの第2の部分を示す平面図である。図5は、本実施の形態に係る磁気ヘッドにおけるコイルの第1の部分の第1層を示す平面図である。図6は、本実施の形態に係る磁気ヘッドにおけるコイルの第1の部分の第2層を示す平面図である。図7は、本実施の形態に係る磁気ヘッドにおける主磁極の媒体対向面の近傍の部分を示す断面図である。なお、図1図2および図7は媒体対向面および基板の上面に垂直な断面を示している。図1図2および図7において記号Tで示す矢印は、記録媒体の進行方向を表している。図3ないし図6において記号TWで示す矢印は、トラック幅方向を表している。
【0034】
図2および図3に示したように、本実施の形態に係る垂直磁気記録用磁気ヘッド(以下、単に磁気ヘッドと記す。)は、アルミニウムオキサイド・チタニウムカーバイド(Al23・TiC)等のセラミック材料よりなり、上面1aを有する基板1と、この基板1の上面1a上に配置されたアルミナ(Al23)等の絶縁材料よりなる絶縁層2と、この絶縁層2の上に配置された磁性材料よりなる第1の再生シールド層3と、第1の再生シールド層3を覆うように配置された絶縁膜である第1の再生シールドギャップ膜4と、この第1の再生シールドギャップ膜4の上に配置された再生素子としてのMR(磁気抵抗効果)素子5と、このMR素子5の上に配置された絶縁膜である第2の再生シールドギャップ膜6と、この第2の再生シールドギャップ膜6の上に配置された磁性材料よりなる第2の再生シールド層7とを備えている。
【0035】
MR素子5の一端部は、記録媒体に対向する媒体対向面80に配置されている。MR素子5には、AMR(異方性磁気抵抗効果)素子、GMR(巨大磁気抵抗効果)素子あるいはTMR(トンネル磁気抵抗効果)素子等の磁気抵抗効果を示す感磁膜を用いた素子を用いることができる。GMR素子としては、磁気的信号検出用の電流を、GMR素子を構成する各層の面に対してほぼ平行な方向に流すCIP(Current In Plane)タイプでもよいし、磁気的信号検出用の電流を、GMR素子を構成する各層の面に対してほぼ垂直な方向に流すCPP(Current Perpendicular to Plane)タイプでもよい。
【0036】
第1の再生シールド層3から第2の再生シールド層7までの部分は、再生ヘッド部8を構成する。磁気ヘッドは、更に、第2の再生シールド層7の上に配置された非磁性材料よりなる非磁性層71と、非磁性層71の上に配置された磁性材料よりなる中間シールド層72と、中間シールド層72の上に配置された非磁性材料よりなる非磁性層73と、非磁性層73の上に配置された記録ヘッド部9とを備えている。中間シールド層72は、記録ヘッド部9で発生する磁界からMR素子5をシールドする機能を有している。非磁性層71,73は、例えばアルミナによって形成されている。記録ヘッド部9は、コイルと、主磁極15と、第1の帰磁路部R1および第2の帰磁路部R2と、ギャップ部17とを有している。
【0037】
コイルは、記録媒体に記録する情報に応じた磁界を発生する。コイルは、第1の部分20と第2の部分10とを含んでいる。第1の部分20と第2の部分10は、いずれも、銅等の導電材料によって形成されている。第1の部分20と第2の部分10は、直列または並列に接続されている。主磁極15は、媒体対向面80に配置された端面を有し、コイルによって発生された磁界に対応する磁束を通過させると共に、垂直磁気記録方式によって情報を記録媒体に記録するための記録磁界を発生する。図1図2および図7は、媒体対向面80に配置された主磁極15の端面と交差し、媒体対向面80および基板1の上面1aに垂直な断面(以下、主断面と言う。)を示している。
【0038】
第1および第2の帰磁路部R1,R2は、いずれも磁性材料によって形成されている。第1および第2の帰磁路部R1,R2の材料としては、例えばCoFeN、CoNiFe、NiFe、CoFeのいずれかを用いることができる。第1の帰磁路部R1と第2の帰磁路部R2は、主磁極15を挟むように基板1の上面1aに垂直な方向に沿って並んでいる。第1の帰磁路部R1は、主磁極15に対して記録媒体の進行方向Tの前側であって基板1の上面1aからより遠い位置に配置されている。また、第1の帰磁路部R1は、主磁極15のうちの媒体対向面80から離れた部分に磁気的に接続されている。第2の帰磁路部R2は、主磁極15に対して記録媒体の進行方向Tの後側であって主磁極15と基板1の上面1aとの間に配置されている。また、第2の帰磁路部R2は、主磁極15のうちの媒体対向面80から離れた部分に磁気的に接続されている。
【0039】
第1の帰磁路部R1は、第1のシールド16Aと第1の連結部40とを有している。第1のシールド16Aは、媒体対向面80の近傍に配置されている。第1の連結部40は、第1のシールド16Aと主磁極15のうちの媒体対向面80から離れた部分とを磁気的に連結している。
【0040】
第2の帰磁路部R2は、第2のシールド16Bと第2の連結部30とを有している。第2のシールド16Bは、媒体対向面80の近傍に配置されている。第2の連結部30は、第2のシールド16Bと主磁極15のうちの媒体対向面80から離れた部分とを磁気的に連結している。
【0041】
記録ヘッド部9は、更に、主磁極15のトラック幅方向TWの両側に配置された2つのサイドシールド16C,16Dを有している。2つのサイドシールド16C,16Dは、それぞれ第1のシールド16Aと第2のシールド16Bを磁気的に連結している。サイドシールド16C,16Dは、磁性材料によって形成されている。サイドシールド16C,16Dの材料としては、例えばCoFeN、CoNiFe、NiFe、CoFeのいずれかを用いることができる。
【0042】
第2の連結部30は、連結層31,32,33,34,35,36を有している。連結層31は、非磁性層73の上に配置されている。連結層32,33は、いずれも連結層31の上に配置されている。連結層32は、媒体対向面80の近傍に配置されている。連結層33は、連結層32に対して、媒体対向面80からより遠い位置に配置されている。連結層31,32は、それぞれ、媒体対向面80に向いた端面を有し、これらの端面は、媒体対向面80から離れた位置に配置されている。図4に示したように、コイルの第2の部分10は、連結層33の周りに約3回巻かれている。
【0043】
磁気ヘッドは、更に、連結層31の周囲において非磁性層73の上に配置された絶縁材料よりなる絶縁層51と、連結層31〜33と第2の部分10との間に介在する絶縁材料よりなる絶縁膜52と、第2の部分10の巻線間に配置された絶縁材料よりなる絶縁層53と、第2の部分10および連結層32の周囲に配置された絶縁材料よりなる絶縁層54とを備えている。第2の部分10、連結層32,33、絶縁膜52および絶縁層53,54の上面は平坦化されている。絶縁層51,54および絶縁膜52は、例えばアルミナによって形成されている。絶縁層53は、例えばフォトレジストによって形成されている。
【0044】
磁気ヘッドは、更に、絶縁材料よりなる絶縁層55,56を備えている。絶縁層55は、第2の部分10、絶縁膜52および絶縁層53,54の上面の上に配置されている。連結層34は、連結層32および絶縁層55の上に配置され、媒体対向面80に配置された端面を有している。連結層35は、連結層33の上に配置されている。連結層36は、連結層35の上に配置されている。絶縁層56は、連結層34,35の周囲において絶縁層55の上に配置されている。連結層34,35および絶縁層56の上面は平坦化されている。絶縁層55,56は、例えばアルミナによって形成されている。
【0045】
第2のシールド16Bは、連結層34の上に配置されている。図7に示したように、第2のシールド16Bは、主磁極15の端面に対して記録媒体の進行方向Tの後側に配置された端面16Baと、上面である第2の傾斜面16Bbとを含んでいる。磁気ヘッドは、更に、非磁性材料よりなる非磁性層57を備えている。非磁性層57は、第2のシールド16Bおよび連結層36の周囲において、連結層34の上面の一部の上および絶縁層56の上面の上に配置されている。非磁性層57は、例えばアルミナによって形成されている。
【0046】
サイドシールド16C,16Dは、第2のシールド16Bの上に配置され、第2のシールド16Bの上面に接している。図3に示したように、2つのサイドシールド16C,16Dは、主磁極15の端面に対してトラック幅方向TWの両側に配置された2つの端面16Ca,16Daを含んでいる。
【0047】
主磁極15は、記録媒体の進行方向Tの前側の端に位置する面である上面15T(図7参照)と、上面15Tとは反対側の下端部15L(図7参照)と、トラック幅方向TWの両側に配置された第1および第2の側部(図3参照)とを有している。サイドシールド16Cは、主磁極15の第1の側部に対向する第1の側壁を有している。サイドシールド16Dは、主磁極15の第2の側部に対向する第2の側壁を有している。
【0048】
ギャップ部17は、非磁性材料よりなり、主磁極15と第1の帰磁路部R1との間に配置された第1の部分19と、主磁極15と第2の帰磁路部R2との間に配置された第2の部分18とを含んでいる。第2の部分18は、サイドシールド16C,16Dの側壁、第2のシールド16Bの第2の傾斜面16Bbおよび非磁性層57の上面に沿って配置されている。第2の部分18を構成する非磁性材料は、絶縁材料でもよいし、非磁性金属材料でもよい。第2の部分18を構成する絶縁材料としては、例えばアルミナが用いられる。第2の部分18を構成する非磁性金属材料としては、例えばRuが用いられる。
【0049】
主磁極15は、第2のシールド16Bの第2の傾斜面16Bbおよび非磁性層57の上面と主磁極15との間に第2の部分18が介在するように、第2のシールド16Bおよび非磁性層57の上に配置されている。また、図3に示したように、主磁極15とサイドシールド16C,16Dとの間にも、第2の部分18が介在している。
【0050】
媒体対向面80から離れた位置において、主磁極15の下端部15Lは、連結層36の上面に接している。主磁極15は、金属磁性材料によって形成されている。主磁極15の材料としては、例えば、NiFe、CoNiFe、CoFeのいずれかを用いることができる。主磁極15の形状については、後で詳しく説明する。
【0051】
磁気ヘッドは、更に、主磁極15およびサイドシールド16C,16Dの周囲に配置された非磁性材料よりなる図示しない第1の非磁性層を備えている。本実施の形態では、特に、第1の非磁性層は、アルミナ等の非磁性絶縁材料よりなる。
【0052】
磁気ヘッドは、更に、媒体対向面80から離れた位置において、主磁極15の上面15Tの一部の上に配置された非磁性金属材料よりなる非磁性金属層58と、この非磁性金属層58の上面の上に配置された絶縁材料よりなる絶縁層59とを備えている。非磁性金属層58は、例えばRu、NiCrまたはNiCuによって形成されている。絶縁層59は、例えばアルミナによって形成されている。
【0053】
第1の部分19は、主磁極15、非磁性金属層58および絶縁層59を覆うように配置されている。第1の部分19の材料は、アルミナ等の非磁性絶縁材料でもよいし、Ru、NiCu、Ta、W、NiB、NiP等の非磁性導電材料でもよい。
【0054】
第1のシールド16Aは、サイドシールド16C,16Dおよび第1の部分19の上に配置されている。第1の帰磁路部R1は、更に、サイドシールド16C,16Dおよび第1の部分19と第1のシールド16Aとの間に介在し第1のシールド16Aの下地となる下地層81を有している。下地層81の材料は、第1のシールド16Aの材料と同じでもよいし、異なっていてもよい。後で詳しく説明するが、下地層81は、第1のシールド16Aをめっき法によって形成する際に用いられるシード層の一部である。
【0055】
図7に示したように、第1のシールド16Aは、主磁極15の端面に対して記録媒体の進行方向Tの前側に配置された端面16Aaと、下面である第1の傾斜面16Abと、主磁極15から最も遠い上面16Acと、端面16Aaと上面16Acとを接続する接続面16Adとを含んでいる。接続面16Adにおける任意の位置の媒体対向面80からの距離は、任意の位置が基板1の上面1aから離れるに従って大きくなっている。
【0056】
媒体対向面80において、第1のシールド16Aの端面16Aaの一部は、主磁極15の端面に対して、第1の部分19および下地層81の厚みによる所定の間隔を開けて配置されている。第1の部分19の厚みは、5〜60nmの範囲内であることが好ましく、例えば30〜60nmの範囲内である。主磁極15の端面は、第1の部分19に隣接する辺を有し、この辺はトラック幅を規定している。
【0057】
第1の連結部40は、ヨーク層41と、第1ないし第3の連結層42,43,44を有している。ヨーク層41は、媒体対向面80から離れた位置に配置されて、主磁極15のうちの媒体対向面80から離れた部分に磁気的に接続されている。第1の連結部40は、更に、主磁極15とヨーク層41との間に介在しヨーク層41の下地となる下地層82を有している。下地層82の材料は、ヨーク層41の材料と同じでもよいし、異なっていてもよい。後で詳しく説明するが、下地層82は、ヨーク層41をめっき法によって形成する際に用いられるシード層の一部である。
【0058】
コイルの第1の部分20は、第1層21および第2層22を含んでいる。図5に示したように、第1層21は、ヨーク層41の周りに1回巻かれている。磁気ヘッドは、更に、第1のシールド16A、第1の部分19およびヨーク層41と第1層21との間に介在する絶縁材料よりなる絶縁膜61と、第1層21、第1のシールド16Aおよび下地層81,82の周囲に配置された非磁性材料よりなる図示しない第2の非磁性層とを備えている。絶縁膜61は、例えばアルミナによって形成されている。第2の非磁性層は、例えば無機絶縁材料によって形成されている。この無機絶縁材料としては、例えばアルミナまたはシリコン酸化物が用いられる。第1のシールド16A、第1層21、ヨーク層41、絶縁膜61および第2の非磁性層の上面は平坦化されている。
【0059】
磁気ヘッドは、更に、第1層21および絶縁膜61の上面ならびにヨーク層41の上面の一部の上に配置された絶縁材料よりなる絶縁層62を備えている。絶縁層62は、例えばアルミナによって形成されている。
【0060】
第1の連結層42は、第1のシールド16Aよりも基板1の上面1aからより遠い位置に配置されて、第1のシールド16Aに磁気的に接続されている。第2の連結層43は、ヨーク層41よりも基板1の上面1aからより遠い位置に配置されて、ヨーク層41に磁気的に接続されている。第1の帰磁路部R1は、更に、第1のシールド16Aと第1の連結層42との間に介在し第1の連結層42の下地となる下地層83を有している。下地層83は、媒体対向面80に最も近い端部を有し、この端部は、媒体対向面80から離れた位置に配置されている。下地層83の材料は、第1のシールド16Aおよび第1の連結層42の材料と同じでもよいし、異なっていてもよい。後で詳しく説明するが、下地層83は、第1の連結層42をめっき法によって形成する際に用いられるシード層の一部である。下地層83は、第1のシールド16Aと第1の連結部40との間に介在して第1の連結部40の下地となるとも言える。下地層83は、本発明における「下地層」に対応する。
【0061】
第1の連結層42は、媒体対向面80に向いた端面を含み、この端面は、媒体対向面80から離れた位置に配置されている。第1の連結層42の端面における任意の位置の媒体対向面80からの距離は、任意の位置が基板1の上面1aから離れるに従って大きくなっている。
【0062】
第1の連結部40は、更に、ヨーク層41と第2の連結層43との間に介在し第2の連結層43の下地となる下地層84を有している。下地層84の材料は、ヨーク層41および第2の連結層43の材料と同じでもよいし、異なっていてもよい。後で詳しく説明するが、下地層84は、第2の連結層43をめっき法によって形成する際に用いられるシード層の一部である。
【0063】
図6に示したように、第2層22は、第2の連結層43の周りに約2回巻かれている。磁気ヘッドは、更に、連結層42,43および絶縁層62と第2層22との間に介在する絶縁材料よりなる絶縁膜63と、第2層22の巻線間に配置された絶縁材料よりなる絶縁層64と、第2層22および連結層42の周囲に配置された図示しない絶縁層とを備えている。第2層22、連結層42,43、絶縁膜63、絶縁層64および図示しない絶縁層の上面は平坦化されている。磁気ヘッドは、更に、第2層22、絶縁膜63および絶縁層64の上面の上に配置された絶縁材料よりなる絶縁層65を備えている。絶縁膜63、絶縁層65および図示しない絶縁層は、例えばアルミナによって形成されている。絶縁層64は、例えばフォトレジストによって形成されている。
【0064】
第3の連結層44は、連結層42,43よりも基板1の上面1aからより遠い位置に配置されて、連結層42と連結層43を磁気的に連結している。
【0065】
第1の連結部40は、更に、連結層42,43および絶縁層65と第3の連結層44との間に介在し第3の連結層44の下地となる下地層85を有している。下地層85は、媒体対向面80に最も近い端部を有し、この端部は、媒体対向面80から離れた位置に配置されている。下地層85の材料は、連結層42,43,44の材料と同じでもよいし、異なっていてもよい。後で詳しく説明するが、下地層85は、第3の連結層44をめっき法によって形成する際に用いられるシード層の一部である。
【0066】
第3の連結層44は、媒体対向面80に向いた端面を含み、この端面は、媒体対向面80から離れた位置に配置されている。第3の連結層44の端面における任意の位置の媒体対向面80からの距離は、任意の位置が基板1の上面1aから離れるに従って大きくなっている。
【0067】
磁気ヘッドは、更に、非磁性材料よりなり、記録ヘッド部9を覆うように配置された非磁性層70を備えている。非磁性層70は、例えば、アルミナ等の無機絶縁材料によって形成されている。
【0068】
以上説明したように、本実施の形態に係る磁気ヘッドは、記録媒体に対向する媒体対向面80と再生ヘッド部8と記録ヘッド部9と非磁性層70とを備えている。再生ヘッド部8と記録ヘッド部9は、基板1の上に積層されている。再生ヘッド部8は、記録ヘッド部9に対して、記録媒体の進行方向Tの後側(リーディング側)に配置されている。
【0069】
再生ヘッド部8は、再生素子としてのMR素子5と、媒体対向面80側の一部がMR素子5を挟んで対向するように配置された、MR素子5をシールドするための第1の再生シールド層3および第2の再生シールド層7と、MR素子5と第1の再生シールド層3との間に配置された第1の再生シールドギャップ膜4と、MR素子5と第2の再生シールド層7との間に配置された第2の再生シールドギャップ膜6とを有している。
【0070】
記録ヘッド部9は、第1の部分20および第2の部分10を含むコイルと、主磁極15と、第1および第2の帰磁路部R1,R2と、ギャップ部17とを有している。コイル、主磁極15、第1の帰磁路部R1、第2の帰磁路部R2、ギャップ部17および非磁性層70は、基板1の上面1aの上方に配置されている。第1の帰磁路部R1と第2の帰磁路部R2は、主磁極15を挟むように基板1の上面1aに垂直な方向に沿って並んでいる。ギャップ部17は、第1の部分19と第2の部分18とを含んでいる。
【0071】
第2の帰磁路部R2は、第2のシールド16Bと第2の連結部30とを有し、主磁極15に対して記録媒体の進行方向Tの後側であって主磁極15と基板1の上面1aとの間に配置されている。図2に示したように、第2の帰磁路部R2は、主磁極15、ギャップ部17(第2の部分18)および第2の帰磁路部R2によって囲まれた第2の空間S2が形成されるように、主磁極15のうちの媒体対向面80から離れた部分に磁気的に接続されている。第2の連結部30は、連結層31〜36を有し、第2のシールド16Bと主磁極15のうちの媒体対向面80から離れた部分とを磁気的に連結している。
【0072】
第1の帰磁路部R1は、主磁極15に対して記録媒体の進行方向Tの前側であって基板1の上面1aからより遠い位置に配置されている。図2に示したように、第1の帰磁路部R1は、主磁極15、ギャップ部17(第1の部分19)および第1の帰磁路部R1によって囲まれた第1の空間S1が形成されるように、主磁極15のうちの媒体対向面80から離れた部分に磁気的に接続されている。
【0073】
以下、図1を参照して、第1の帰磁路部R1について更に詳しく説明する。図1に示したように、第1の帰磁路部R1は、媒体対向面80において主磁極15の端面に対して記録媒体の進行方向Tの前側に位置する前端面R11と、前端面R11に対して記録媒体の進行方向Tの前側に位置する傾斜面R12とを有している。本実施の形態では、特に、傾斜面R12は平面である。傾斜面R12は、前端面R11に接続された第1の端縁R12aと、第1の空間S1よりも基板1の上面1aからより遠い位置にある第2の端縁R12bとを有している。傾斜面R12の一部は、第1の空間S1と媒体対向面80との間に位置している。傾斜面R12における任意の位置の媒体対向面80からの距離は、任意の位置が基板1の上面1aから離れるに従って大きくなっている。非磁性層70は、傾斜面R12と媒体対向面80との間に介在する介在部70Aを有している。
【0074】
ここで、図1に示したように、前端面R11と傾斜面R12とがなす角度を記号θで表す。角度θは90°よりも大きい。角度θは、160°〜175°の範囲内であることが好ましい。
【0075】
また、第1の帰磁路部R1は、下地層81と、第1のシールド16Aと、下地層83と、第1の連結部40とを有している。前述のように、第1のシールド16Aは、端面16Aaと上面16Acと接続面16Adとを含んでいる。端面16Aaは、前端面R11でもある。第1の連結部40は、下地層83を介して第1のシールド16Aの上面16Acに対向するシールド対向面40aを含んでいる。
【0076】
第1の連結部40は、ヨーク層41と、第1ないし第3の連結層42,43,44と、下地層82,84,85とを有している。ヨーク層41は、媒体対向面80から離れた位置に配置されて、主磁極15のうちの媒体対向面80から離れた部分に磁気的に接続されている。第1の連結層42は、下面であるシールド対向面40aを含み、第1のシールド16Aに磁気的に接続されている。第2の連結層43は、ヨーク層41よりも基板1の上面1aからより遠い位置に配置されて、ヨーク層41に磁気的に接続されている。第3の連結層44は、第1および第2の連結層42,43よりも基板1の上面1aからより遠い位置に配置されて、第1の連結層42と第2の連結層43を磁気的に連結している。
【0077】
下地層83は、第1のシールド16Aと第1の連結部40(第1の連結層42)との間に介在している。下地層85は、第1および第2の連結層42,43と第3の連結層44との間に介在している。傾斜面R12は、第1のシールド16A、下地層83および第1の連結部40(連結層42,44および下地層85)に対して形成される。第1のシールド16Aの接続面16Ad、連結層42,44の各端面および下地層83,85の各端部は、それぞれ、傾斜面R12の一部を構成する。傾斜面R12の第1の端縁R12aは、第1のシールド16Aに存在する。
【0078】
次に、図4ないし図6を参照して、コイルの第1の部分20および第2の部分10について詳しく説明する。図4は、第2の部分10を示す平面図である。前述のように、第2の部分10は、第2の帰磁路部R2の一部である連結層33の周りに約3回巻かれている。第2の部分10は、第2の空間S2内のうち特に連結層32と連結層33との間を通過するように延びる3つのコイル要素10A,10B,10Cを含んでいる。なお、コイル要素とは、コイルの巻線の一部である。コイル要素10A,10B,10Cは、媒体対向面80側からこの順に、媒体対向面80に垂直な方向に並んでいる。また、第2の部分10は、第1の部分20に電気的に接続されたコイル接続部10Eを有している。
【0079】
図5は、第1の部分20の第1層21を示す平面図である。前述のように、第1層21は、第1の帰磁路部R1の一部であるヨーク層41の周りに1回巻かれている。第1層21は、第1の空間S1内のうち特に第1のシールド16Aとヨーク層41との間を通過するように延びるコイル要素21Aを含んでいる。また、第1層21は、第2の部分10のコイル接続部10Eに電気的に接続されたコイル接続部21Sと、第2層22に電気的に接続されたコイル接続部21Eとを有している。コイル接続部21Sは、第1層21と第2の部分10との間の複数の層を貫通する図示しない柱状の第1ないし第3の接続層を介してコイル接続部10Eに電気的に接続されている。第1ないし第3の接続層は、コイル接続部10Eの上に順に積層されている。コイル接続部21Sは、第3の接続層の上に配置されている。第1ないし第3の接続層は、銅等の導電材料によって形成されている。
【0080】
図6は、第1の部分20の第2層22を示す平面図である。前述のように、第2層22は、第1の帰磁路部R1の一部である第2の連結層43の周りに約2回巻かれている。第2層22は、第1の空間S1内のうち特に第1の連結層42と第2の連結層43との間を通過するように延びる2つのコイル要素22A,22Bを含んでいる。コイル要素22A,22Bは、媒体対向面80側からこの順に、媒体対向面80に垂直な方向に並んでいる。また、第2層22は、絶縁層62および絶縁膜63を貫通して第1層21のコイル接続部21Eに電気的に接続されたコイル接続部22Sを有している。図4ないし図6に示した例では、第1の部分20と第2の部分10は、直列に接続されている。
【0081】
コイル要素21A,22A,22Bは、それぞれ第1の空間S1を通過するように延びている。以下、第1の空間S1を通過するように延びるコイル要素を第1のコイル要素とも呼び、第2の空間S2を通過するように延びるコイル要素を第2のコイル要素とも呼ぶ。
【0082】
次に、図4ないし図7を参照して、主磁極15の形状について詳しく説明する。図4ないし図6に示したように、主磁極15は、媒体対向面80に配置された端面とその反対側の端部とを有するトラック幅規定部15Aと、トラック幅規定部15Aの端部に接続された幅広部15Bとを含んでいる。また、図7に示したように、主磁極15は、記録媒体の進行方向Tの前側の端に位置する面である上面15Tと、上面15Tとは反対側の下端部15Lと、第1の側部と、第2の側部とを有している。幅広部15Bにおける上面15Tのトラック幅方向TWの幅は、トラック幅規定部15Aにおける上面15Tのトラック幅方向TWの幅よりも大きい。
【0083】
トラック幅規定部15Aにおける上面15Tのトラック幅方向TWの幅は、媒体対向面80からの距離によらずにほぼ一定である。幅広部15Bにおける上面15Tのトラック幅方向TWの幅は、例えば、トラック幅規定部15Aとの境界位置ではトラック幅規定部15Aにおける上面15Tのトラック幅方向TWの幅と等しく、媒体対向面80から離れるに従って、徐々に大きくなった後、一定の大きさになっている。ここで、媒体対向面80に垂直な方向についてのトラック幅規定部15Aの長さをネックハイトと呼ぶ。ネックハイトは、例えば0〜0.3μmの範囲内である。ネックハイトが0の場合は、トラック幅規定部15Aがなく、幅広部15Bの端面が媒体対向面80に配置される。
【0084】
上面15Tは、媒体対向面80に近い順に、連続するように配置された第1の部分15T1、第2の部分15T2、第3の部分15T3および第4の部分15T4を含んでいる。第1の部分15T1は、媒体対向面80に配置された第1の端部と、その反対側の第2の端部とを有している。第2の部分15T2は、第1の部分15T1の第2の端部に接続されている。第3の部分15T3は、第2の部分15T2に接続された第3の端部と、第3の端部よりも媒体対向面80からより遠い位置に配置された第4の端部とを有している。第4の部分15T4は、第3の部分15T3の第4の端部に接続されている。
【0085】
下端部15Lは、媒体対向面80に近い順に、連続するように配置された第1の部分15L1、第2の部分15L2、第3の部分15L3および第4の部分15L4を含んでいる。第1の部分15L1は、媒体対向面80に配置された第1の端部と、その反対側の第2の端部とを有している。第2の部分15L2は、第1の部分15L1の第2の端部に接続されている。第3の部分15L3は、第2の部分15L2に接続された第3の端部と、第3の端部よりも媒体対向面80からより遠い位置に配置された第4の端部とを有している。第1ないし第3の部分15L1〜15L3は、2つの面が交わってできるエッジでもよいし、2つの面を連結する面でもよい。第4の部分15L4は、第3の部分15L3の第4の端部に接続された面である。
【0086】
ここで、図7に示したように、上面15Tの第1の部分15T1の第1の端部を通り、媒体対向面80および記録媒体の進行方向Tに垂直な第1の仮想の平面P1と、下端部15Lの第1の部分15L1の第1の端部を通り、媒体対向面80および記録媒体の進行方向Tに垂直な第2の仮想の平面P2とを想定する。上面15Tの第2および第4の部分15T2,15T4は、実質的に第1および第2の仮想の平面P1,P2に平行である。第1の部分15T1は、その第2の端部がその第1の端部に対して記録媒体の進行方向Tの前側に配置されるように、第1および第2の仮想の平面P1,P2および媒体対向面80に対して傾斜している。第3の部分15T3は、その第4の端部がその第3の端部に対して記録媒体の進行方向Tの前側に配置されるように、第1および第2の仮想の平面P1,P2および媒体対向面80に対して傾斜している。
【0087】
下端部15Lの第2および第4の部分15L2,15L4は、実質的に第1および第2の仮想の平面P1,P2に平行である。第1の部分15L1は、その第2の端部がその第1の端部に対して記録媒体の進行方向Tの後側に配置されるように、第1および第2の仮想の平面P1,P2および媒体対向面80に対して傾斜している。第3の部分15L3は、その第4の端部がその第3の端部に対して記録媒体の進行方向Tの後側に配置されるように、第1および第2の仮想の平面P1,P2および媒体対向面80に対して傾斜している。
【0088】
第1の帰磁路部R1の第1のシールド16Aは、上面15Tの第3の部分15T3と媒体対向面80の間に配置された部分を含んでいる。また、前述のように、第1のシールド16Aは、下面である第1の傾斜面16Abを含んでいる。第1の傾斜面16Abは、ギャップ部17の第1の部分19を介して上面15Tの第1の部分15T1に対向する部分を含んでいる。第1の傾斜面16Abは、第1および第2の仮想の平面P1,P2および媒体対向面80に対して傾斜している。
【0089】
第2の帰磁路部R2の第2のシールド16Bは、下端部15Lの第3の部分15L3と媒体対向面80の間に配置された部分を含んでいる。また、前述のように、第2のシールド16Bは、上面である第2の傾斜面16Bbを含んでいる。第2の傾斜面16Bbは、連続する上部16Bb1と下部16Bb2とを含んでいる。上部16Bb1と下部16Bb2は、それぞれ、第1および第2の仮想の平面P1,P2および媒体対向面80に対して傾斜している。媒体対向面80に垂直な方向に対する下部16Bb2の傾斜角度は、媒体対向面80に垂直な方向に対する上部16Bb1の傾斜角度よりも大きい。
【0090】
ここで、図7に示したように、媒体対向面80に垂直な方向についての上面15Tの第1の部分15T1と第2の部分15T2の長さをそれぞれ記号LA1,LA2で表し、媒体対向面80に垂直な方向についての下端部15Lの第1の部分15L1と第2の部分15L2の長さをそれぞれ記号LB1,LB2で表し、媒体対向面80に垂直な方向についての第1の傾斜面16Abの長さを記号Lで表す。長さLA1は、例えば0.05〜0.15μmの範囲内である。長さLA2は、例えば0.2〜0.6μmの範囲内である。長さLB1は、例えば0.1〜0.5μmの範囲内である。長さLB2は、例えば0.2〜0.6μmの範囲内である。長さLは、例えば0.2〜0.6μmの範囲内である。なお、ネックハイトは、上記の長さLA1,LA2,LB1,LB2,Lとは独立して、任意に設定可能である。
【0091】
また、第1の仮想の平面P1に対する上面15Tの第1の部分15T1の傾斜角度を記号θT1で表し、第2の仮想の平面P2に対する下端部15Lの第1の部分15L1の傾斜角度を記号θL1で表す。傾斜角度θT1は、例えば24°〜35°の範囲内である。傾斜角度θL1は、例えば30°〜50°の範囲内である。
【0092】
また、上面15Tの第3の部分15T3の第3の端部を通り、第1および第2の仮想の平面P1,P2に平行な仮想の平面P3と、下端部15Lの第3の部分15L3の第3の端部を通り、第1および第2の仮想の平面P1,P2に平行な仮想の平面P4とを想定する。そして、仮想の平面P3に対する第3の部分15T3の傾斜角度を記号θT3で表し、仮想の平面P4に対する第3の部分15L3の傾斜角度を記号θL3で表す。傾斜角度θT3,θL3は、いずれも、例えば22°〜60°の範囲内である。
【0093】
また、媒体対向面80における主磁極15の厚み、すなわち第1の仮想の平面P1と第2の仮想の平面P2との間の距離を記号D0で表す。また、上面15Tの第2の部分15T2と第1の仮想の平面P1との間の距離を記号D1で表し、下端部15Lの第2の部分15L2と第2の仮想の平面P2との間の距離を記号D2で表す。距離D0は、例えば0.05〜0.1μmの範囲内である。距離D1は、例えば0.02〜0.1μmの範囲内である。距離D2は、例えば0.1〜0.5μmの範囲内である。
【0094】
また、上面15Tの第4の部分15T4と仮想の平面P3との間の距離を記号D3で表し、下端部15Lの第4の部分15L4と仮想の平面P4との間の距離を記号D4で表す。距離D3は、例えば0.05〜0.3μmの範囲内である。距離D4は、例えば0.1〜0.5μmの範囲内である。
【0095】
また、媒体対向面80に配置された主磁極15の端面は、第1の部分19に隣接する第1の辺と、第1の辺の一端部に接続された第2の辺と、第1の辺の他端部に接続された第3の辺とを有している。第1の辺はトラック幅を規定する。記録媒体に記録される記録ビットの端部の位置は、第1の辺の位置によって決まる。媒体対向面80に配置された主磁極15の端面のトラック幅方向TWの幅は、第1の辺から離れるに従って、すなわち第1の仮想の平面P1から離れるに従って小さくなっている。第2の辺と第3の辺がそれぞれ第1の仮想の平面P1に垂直な方向に対してなす角度は、例えば7°〜17°の範囲内であり、10°〜15°の範囲内であることが好ましい。第1の辺の長さは、例えば0.05〜0.20μmの範囲内である。
【0096】
次に、本実施の形態に係る磁気ヘッドの作用および効果について説明する。この磁気ヘッドでは、記録ヘッド部9によって記録媒体に情報を記録し、再生ヘッド部8によって、記録媒体に記録されている情報を再生する。記録ヘッド部9において、第1の部分20および第2の部分10を含むコイルは、記録媒体に記録する情報に応じた磁界を発生する。第1の部分20によって発生された磁界に対応する磁束は、第1の帰磁路部R1と主磁極15を通過する。第2の部分10によって発生された磁界に対応する磁束は、第2の帰磁路部R2と主磁極15を通過する。従って、主磁極15は、第1の部分20によって発生された磁界に対応する磁束と第2の部分10によって発生された磁界に対応する磁束とを通過させる。
【0097】
なお、第1の部分20および第2の部分10は、直列に接続されていてもよいし、並列に接続されていてもよい。いずれにしても、主磁極15において、第1の部分20によって発生された磁界に対応する磁束と第2の部分10によって発生された磁界に対応する磁束が同じ方向に流れるように、第1の部分20および第2の部分10は接続される。
【0098】
主磁極15は、上述のようにコイルによって発生された磁界に対応する磁束を通過させて、垂直磁気記録方式によって情報を記録媒体に記録するための記録磁界を発生する。
【0099】
シールド16A,16B,16C,16Dは、磁気ヘッドの外部から磁気ヘッドに印加された外乱磁界を取り込む。これにより、外乱磁界が主磁極15に集中して取り込まれることによって記録媒体に対して誤った記録が行なわれることを防止することができる。また、シールド16A,16B,16C,16Dは、主磁極15の端面より発生されて記録媒体の面に垂直な方向以外の方向に広がる磁束を取り込んで、この磁束が記録媒体に達することを阻止する機能を有している。
【0100】
また、シールド16A,16B,16C,16Dと第1の連結部40および第2の連結部30は、主磁極15の端面より発生されて、記録媒体を磁化した磁束を還流させる機能を有している。具体的に説明すると、主磁極15の端面より発生されて、記録媒体を磁化した磁束の一部は、第1のシールド16Aと第1の連結部40を通過して主磁極15に還流する。また、主磁極15の端面より発生されて、記録媒体を磁化した磁束の他の一部は、第2のシールド16Bと第2の連結部30を通過して主磁極15に還流する。
【0101】
媒体対向面80において、シールド16A,16B,16C,16Dの端面16Aa,16Ba,16Ca,16Daは、主磁極15の端面の周りを囲むように配置されている。従って、本実施の形態によれば、主磁極15の端面に対して記録媒体の進行方向Tの前側および後側ならびにトラック幅方向TWの両側において、主磁極15の端面より発生されて記録媒体の面に垂直な方向以外の方向に広がる磁束を取り込んで、この磁束が記録媒体に達することを抑制することができる。その結果、本実施の形態によれば、スキューに起因した隣接トラック消去の発生を抑制することができる。第1および第2のシールド16A,16Bは、スキューに起因した隣接トラック消去の発生を抑制することに寄与する他に、記録磁界の勾配を大きくすることに寄与する。サイドシールド16C,16Dは、特に隣接トラック消去を抑制することへの寄与が大きい。このようなシールド16A,16B,16C,16Dの機能により、本実施の形態によれば、記録密度を高めることができる。
【0102】
また、本実施の形態では、図3に示したように、媒体対向面80において、トラック幅方向TWにおける主磁極15の第1および第2の側部の間隔すなわち主磁極15の端面の幅は、第1の仮想の平面P1から離れるに従って小さくなっている。本実施の形態によれば、この特徴によっても、スキューに起因した隣接トラック消去の発生を抑制することができる。
【0103】
また、本実施の形態では、媒体対向面80において、トラック幅方向TWにおけるサイドシールド16C,16Dにおける第1および第2の側壁の間隔は、主磁極15の第1および第2の側部の間隔と同様に、第1の仮想の平面P1から離れるに従って小さくなっている。従って、本実施の形態によれば、媒体対向面80において、第1の側部と第1の側壁との間隔、ならびに第2の側部と第2の側壁との間隔を、小さく、且つ均一にすることが可能になる。これにより、サイドシールド16C,16Dによって、主磁極15の端面より発生されてトラック幅方向TWの両側に広がる磁束を、効果的に取り込むことができる。その結果、本実施の形態によれば、特にサイドシールド16C,16Dの機能を高めることが可能になり、スキューに起因した隣接トラック消去の発生をより効果的に抑制することが可能になる。
【0104】
ところで、シールド16A〜16Dで取り込んだ磁束を吸収できるような、体積が大きい磁性層がシールド16A〜16Dに磁気的に接続されていないと、シールド16A〜16Dによって多くの磁束を取り込むことはできない。本実施の形態では、第1のシールド16Aと主磁極15とを磁気的に連結する第1の連結部40と、第2のシールド16Bと主磁極15とを磁気的に連結する第2の連結部30を備えている。このような構成により、シールド16A〜16Dで取り込んだ磁束は、第1の連結部40および第2の連結部30を経由して主磁極15に流れ込む。本実施の形態では、シールド16A〜16Dに対して、体積が大きい磁性層である第1の連結部40および第2の連結部30と主磁極15が磁気的に接続されている。従って、本実施の形態によれば、シールド16A〜16Dによって多くの磁束を取り込むことが可能になり、その結果、前述のシールド16A〜16Dの効果を効果的に発揮させることができる。
【0105】
また、本実施の形態では、第1の帰磁路部R1は、前端面R11と、前端面R11に対して記録媒体の進行方向Tの前側に位置する傾斜面R12とを有している。これにより、本実施の形態によれば、第1の帰磁路部R1が媒体対向面80に露出する面積を小さくして、前端面R11(第1のシールド16Aの端面16Aa)から第1の帰磁路部R1内に取り込まれた磁束が、第1の帰磁路部R1の他の部分から記録媒体に向けて漏れ出すことを抑制することができる。
【0106】
また、本実施の形態では、前端面R11と傾斜面R12とがなす角度θは、90°よりも大きい。以下、これによる効果について説明する。もし、第1の帰磁路部R1が、媒体対向面80の近傍において、90°以下の角度のエッジを有していると、このエッジの近傍において、第1の帰磁路部R1の内部から外部へ磁界が漏れやすくなる。その結果、隣接トラック消去が発生するおそれがある。これに対し、本実施の形態では、上記の角度θが90°よりも大きいことから、第1の帰磁路部R1は、媒体対向面80の近傍において、90°以下の角度のエッジを有していない。そのため、本実施の形態によれば、90°以下の角度のエッジに起因する隣接トラック消去の発生を防止することができる。
【0107】
また、本実施の形態では、傾斜面R12と媒体対向面80との間に、第1の帰磁路部R1よりも硬い非磁性層70の介在部70Aが存在している。この介在部70Aは、第1の部分20が発生する熱による第1の帰磁路部R1の位置の変化を抑制する機能を有する。よって、本実施の形態によれば、第1の部分20が発生する熱によって第1の帰磁路部R1の一部が突出して記録特性や再生特性が劣化することを防止することができる。
【0108】
また、本実施の形態では、下地層83は、媒体対向面80に最も近い端部を有している。この端部は、傾斜面R12の一部を構成していることから、媒体対向面80から離れた位置に配置されている。以下、これによる効果について説明する。
【0109】
下地層83の材料が第1のシールド16Aおよび第1の連結層42の材料と異なる場合には、当然、下地層83は、第1のシールド16Aおよび第1の連結層42とは異質な層となる。下地層83の材料が第1のシールド16Aおよび第1の連結層42の材料と同じであっても、下地層83の形成方法が第1のシールド16Aおよび第1の連結層42とは異なることにより、下地層83は、膜質、結晶粒の大きさ、結晶の構造等の点で、第1のシールド16Aおよび第1の連結層42とは異質な層となる。このように、第1のシールド16Aと第1の連結層42の間にこれらとは異質な下地層83が介在している場合において、下地層83の端部が媒体対向面80に露出している場合について考える。この場合、媒体対向面80に存在する第1のシールド16Aと下地層83の境界の近傍、および媒体対向面80に存在する下地層83と第1の連結層42の境界の近傍において、第1の帰磁路部R1の内部から外部へ磁界が漏れやすくなる。その結果、隣接トラック消去が発生するおそれがある。
【0110】
これに対し、本実施の形態では、下地層83の端部が、傾斜面R12の一部を構成し、媒体対向面80から離れた位置に配置されていることから、第1のシールド16Aと下地層83の境界、および下地層83と第1の連結層42の境界は、媒体対向面80に存在していない。これにより、これらの境界から磁界が漏れることによる隣接トラック消去の発生を防止することができる。
【0111】
次に、主磁極15の形状の特徴と、それによる効果について詳しく説明する。本実施の形態では、主磁極15の上面15Tは、第1および第2の仮想の平面P1,P2および媒体対向面80に対して傾斜した第1および第3の部分15T1,15T3を含み、主磁極15の下端部15Lは、第1および第2の仮想の平面P1,P2および媒体対向面80に対して傾斜した第1および第3の部分15L1,15L3を含んでいる。これにより、本実施の形態によれば、媒体対向面80における主磁極15の厚みを小さくすることができることから、スキューに起因した隣接トラック消去の発生を抑制することができる。また、媒体対向面80から離れた位置では主磁極15の厚みを大きくすることができることから、主磁極15によって多くの磁束を媒体対向面80まで導くことができ、その結果、オーバーライト特性等の記録特性を向上させることができる。
【0112】
また、本実施の形態では、主磁極15の上面15Tが第2の部分15T2を含むことにより、第2の部分15T2がない場合に比べて、第3の部分15T3と第1のシールド16Aとの間の距離を大きくすることが可能になる。同様に、本実施の形態では、主磁極15の下端部15Lが第2の部分15L2を含むことにより、第2の部分15L2がない場合に比べて、第3の部分15L3と第2のシールド16Bとの間の距離を大きくすることが可能になる。これらのことから、本実施の形態によれば、主磁極15から第1および第2の帰磁路部R1,R2への磁束の漏れによって記録特性が低下することを防止することができる。
【0113】
以上説明した主磁極15の形状の特徴により、本実施の形態によれば、スキューに起因した問題の発生を防止し、且つ記録特性を向上させることが可能になる。
【0114】
次に、図8ないし図20および図21Aないし図22Bを参照して、本実施の形態に係る磁気ヘッドの製造方法について説明する。図8ないし図20および図21Aないし図22Bは、磁気ヘッドの製造過程における積層体を示している。図8ないし図20の(a)、図21Aおよび図22Aは、それぞれ、媒体対向面80および基板1の上面1aに垂直な断面、特に前記主断面を表している。図8ないし図20の(b)、図21Bおよび図22Bは、媒体対向面80が形成される予定の位置の断面を示している。図8ないし図20の(a)、図21Aおよび図22Aにおいて、記号“ABS”は、媒体対向面80が形成される予定の位置を表している。
【0115】
本実施の形態に係る磁気ヘッドの製造方法では、まず、図8に示したように、基板1の上に、絶縁層2、第1の再生シールド層3、第1の再生シールドギャップ膜4を順に形成する。次に、第1の再生シールドギャップ膜4の上にMR素子5と、このMR素子5に接続される図示しないリードとを形成する。次に、MR素子5およびリードを、第2の再生シールドギャップ膜6で覆う。次に、第2の再生シールドギャップ膜6の上に、第2の再生シールド層7、非磁性層71、中間シールド層72、非磁性層73を順に形成する。
【0116】
次に、例えばフレームめっき法によって、非磁性層73の上に連結層31を形成する。次に、積層体の上面全体の上に絶縁層51を形成する。次に、例えば化学機械研磨(以下、CMPと記す。)によって、連結層31が露出するまで、絶縁層51を研磨して、連結層31および絶縁層51の上面を平坦化する。
【0117】
図9は、次の工程を示す。この工程では、まず、例えばフレームめっき法によって、連結層31の上に連結層32,33を形成する。次に、積層体の上面全体の上に、絶縁膜52を形成する。絶縁膜52の材料としてアルミナを用いる場合には、例えば原子層堆積法(以下、ALDと記す。)によって、絶縁膜52を形成する。次に、例えばフレームめっき法によって、コイルの第2の部分10を形成する。次に、第2の部分10の巻線間に絶縁層53を形成する。第2の部分10および絶縁層53は、その上面が連結層32,33の上面よりも上方に配置されるように形成される。次に、積層体の上面全体の上に、絶縁層54を形成する。
【0118】
図10は、次の工程を示す。この工程では、まず、例えばCMPによって、連結層32,33が露出するまで、第2の部分10、絶縁膜52および絶縁層53,54を研磨する。次に、積層体の上面全体の上に、絶縁層55を形成する。次に、例えばイオンビームエッチング(以下、IBEと記す。)によって、連結層32,33の上面および第2の部分10のコイル接続部10E(図4参照)が露出するように、絶縁層55を選択的にエッチングする。
【0119】
図11は、次の工程を示す。この工程では、まず、例えばフレームめっき法によって、連結層32および絶縁層55の上に連結層34を形成し、連結層33の上に連結層35を形成し、第2の部分10のコイル接続部10Eの上に図示しない第1の接続層を形成する。次に、積層体の上面全体の上に、絶縁層56を形成する。次に、例えばCMPによって、連結層34,35および第1の接続層が露出するまで、絶縁層56を研磨する。
【0120】
図12は、次の工程を示す。この工程では、まず、例えばフレームめっき法によって、連結層34の上に、後に第2のシールド16Bとなる第2の予備シールド16BPを形成し、連結層35の上に連結層36を形成し、第1の接続層の上に図示しない第2の接続層を形成する。次に、第2の予備シールド16BPに、後に第2の傾斜面16Bbの下部16Bb2となる部分を含む予備傾斜面が形成されるように、例えばIBEを用いて、第2の予備シールド16BPの一部をエッチングする。次に、積層体の上面全体の上に、非磁性層57を形成する。次に、例えばCMPによって、第2の予備シールド16BP、連結層36および第2の接続層が露出するまで非磁性層57を研磨する。
【0121】
図13は、次の工程を示す。この工程では、まず、第2の予備シールド16BPの上記予備傾斜面のうち、後に第2の傾斜面16Bbの上部16Bb1が形成される領域が露出するように、例えば反応性イオンエッチング(以下、RIEと記す。)を用いて、非磁性層57の一部エッチングする。次に、第2の予備シールド16BPに第2の傾斜面16Bbの上部16Bb1が形成され、連結層36の上面の縁に位置する角が面取りされるように、例えばIBEを用いて、第2の予備シールド16BPの上記予備傾斜面の一部と連結層36の一部をエッチングする。上記予備傾斜面のうち、エッチング後に残った部分は、第2の傾斜面16Bbの下部16Bb2となる。これにより、第2の予備シールド16BPは第2のシールド16Bとなる。
【0122】
次に、第2のシールド16B、連結層36および第2の接続層の上に、図示しないフォトレジストマスクを形成する。このフォトレジストマスクは、フォトレジスト層をパターニングして形成される。なお、これ以降の工程で形成されるフォトレジストマスクも、このフォトレジストマスクと同様の方法で形成される。次に、このフォトレジストマスクをエッチングマスクとして用いて、例えばRIEまたはIBEによって、非磁性層57をテーパーエッチングする。これにより、主磁極15の下端部15Lの形状が決定される。次に、フォトレジストマスクを除去する。
【0123】
次に、例えばフレームめっき法によって、第2のシールド16Bの上に、サイドシールド16C,16Dを形成する。次に、第2のシールド16Bおよびサイドシールド16C,16Dを覆うように、第2の部分18を形成する。第2の部分18の材料としてアルミナを用いる場合には、例えばALDによって、第2の部分18を形成する。第2の部分18の材料としてRuを用いる場合には、例えば化学的気相成長法によって、第2の部分18を形成する。
【0124】
図14は、次の工程を示す。この工程では、まず、第2の部分18を選択的にエッチングして、第2の部分18に、連結層36の上面を露出させる開口部と、図示しない第2の接続層の上面を露出させる開口部とを形成する。次に、例えばフレームめっき法によって、後に端面が形成されて主磁極15となる予備主磁極15Pと図示しない第3の接続層を形成する。予備主磁極15Pおよび第3の接続層は、その上面が第2の部分18のうちサイドシールド16C,16Dの上に配置された部分よりも上方に配置されるように形成される。次に、積層体の上面全体の上に、図示しない第1の非磁性層を形成する。次に、例えばCMPによって、第2の部分18が露出するまで、予備主磁極15P、第3の接続層および第1の非磁性層を研磨する。
【0125】
図15は、次の工程を示す。この工程では、まず、予備主磁極15Pの上にフォトレジストマスク91を形成する。フォトレジストマスク91は、予備主磁極15Pの上面のうち、後に第4の部分15T4となる部分を覆っているが、媒体対向面80が形成される予定の位置ABSの近傍の一部は覆っていない。
【0126】
次に、フォトレジストマスク91をエッチングマスクとして用いて、媒体対向面80が形成される予定の位置ABSの近傍において、予備主磁極15P、サイドシールド16C,16Dおよび第2の部分18のそれぞれの一部をエッチングする。このエッチングは、図15(a)に示したように、予備主磁極15Pに、傾斜面である第3の部分15T3が形成されるように行う。具体的には、例えば、IBEを用いて、イオンビームの進行方向を基板1の上面1aに垂直な方向に対して傾けて予備主磁極15Pをエッチングする。図15(a)に示した矢印は、イオンビームの進行方向を表している。このようなIBEを行うことにより、第3の部分15T3が、後に形成される媒体対向面80に垂直な方向に対して傾いた面となる。次に、フォトレジストマスク91を除去する。
【0127】
図16は、次の工程を示す。この工程では、まず、予備主磁極15Pの上に、非磁性金属層58および絶縁層59を形成する。次に、非磁性金属層58および絶縁層59をエッチングマスクとして用いて、例えばIBEによって、予備主磁極15P、サイドシールド16C,16Dおよび第2の部分18のそれぞれの一部をエッチングする。
【0128】
IBEによって予備主磁極15P、サイドシールド16C,16Dおよび第2の部分18のそれぞれの一部をエッチングする場合には、イオンビームの進行方向が基板1の上面1aに垂直な方向に対してなす角度が40°〜75°の範囲内となり、且つ基板1の上面1aに垂直な方向に見たときにイオンビームの進行方向が回転するようにする。このようなIBEを行うことにより、予備主磁極15Pの上面には、第1の部分15T1および第2の部分15T2が形成される。
【0129】
図17は、次の工程を示す。この工程では、まず、積層体の上面全体の上に、例えばスパッタ法または化学的気相成長法によって、第1の部分19を形成する。次に、例えばIBEによって、予備主磁極15Pの上面の一部、サイドシールド16C,16Dの上面の一部および第3の接続層の上面が露出するように、第1の部分19、非磁性金属層58および絶縁層59を選択的にエッチングする。
【0130】
次に、スパッタ法等の物理的気相成長法によって、予備主磁極15P、サイドシールド16C,16Dおよび第1の部分19の上に、後に下地層81,82となる第1のシード層を形成する。次に、第1のシード層を電極およびシードとして用いて、例えばフレームめっき法によって、第1のシード層の上に、後に第1のシールド16Aとなる第1の予備シールド16APと、ヨーク層41を形成する。次に、第1の予備シールド16APおよびヨーク層41をエッチングマスクとして用いて、例えばIBEによって、第1のシード層のうち、第1の予備シールド16APおよびヨーク層41の下に存在する部分以外の部分を除去する。これにより、第1のシード層は、第1の予備シールド16APの下に存在するシード層81Pと、下地層82に分離される。
【0131】
図18は、次の工程を示す。この工程では、まず、積層体の上面全体の上に、絶縁膜61を形成する。絶縁膜61の材料としてアルミナを用いる場合には、例えばALDによって、絶縁膜61を形成する。絶縁膜61の厚みは、例えば0.1〜0.2μmの範囲内である。次に、例えばIBEによって、第3の接続層の上面が露出するように、絶縁膜61を選択的にエッチングする。次に、例えばフレームめっき法によって、コイルの第1の部分20の第1層21を形成する。第1層21は、その上面が絶縁膜61のうち第1の予備シールド16APおよびヨーク層41の上に配置された部分よりも上方に配置されるように形成される。次に、積層体の上面全体の上に、図示しない第2の非磁性層を形成する。次に、例えばCMPによって、第1の予備シールド16APおよびヨーク層41が露出するまで、第1層21、絶縁膜61および第2の非磁性層を研磨する。
【0132】
図19は、次の工程を示す。この工程では、まず、積層体の上面全体の上に、絶縁層62を形成する。次に、例えばIBEによって、第1の予備シールド16APおよびヨーク層41の上面が露出するように、絶縁層62を選択的にエッチングする。次に、スパッタ法等の物理的気相成長法によって、第1の予備シールド16AP、ヨーク層41および絶縁層62の上に、後に下地層83,84となる第2のシード層を形成する。次に、第2のシード層を電極およびシードとして用いて、例えばフレームめっき法によって、第2のシード層の上に、後に第1の連結層42となる予備連結層42Pと、第2の連結層43を形成する。次に、予備連結層42Pおよび第2の連結層43をエッチングマスクとして用いて、例えばIBEによって、第2のシード層のうち、予備連結層42Pおよび第2の連結層43の下に存在する部分以外の部分を除去する。これにより、第2のシード層は、予備連結層42Pの下に存在するシード層83Pと、下地層84に分離される。
【0133】
図20は、次の工程を示す。この工程では、まず、積層体の上面全体の上に、絶縁膜63を形成する。次に、例えばIBEによって、第1層21のコイル接続部21E(図5参照)が露出するように、絶縁層62および絶縁膜63を選択的にエッチングする。次に、コイルの第1の部分20の第2層22と絶縁層64を形成する。第2層22と絶縁層64の形成方法は、コイルの第2の部分10と絶縁層53の形成方法と同様である。次に、積層体の上面全体の上に、図示しない絶縁層を形成する。次に、例えばCMPによって、予備連結層42Pおよび第2の連結層43の上面が露出するまで、第2層22、絶縁膜63、絶縁層64および図示しない絶縁層を研磨する。
【0134】
図21Aおよび図21Bは、次の工程を示す。この工程では、まず、第2層22、絶縁膜63および絶縁層64の上に絶縁層65を形成する。次に、スパッタ法等の物理的気相成長法によって、予備連結層42P、第2の連結層43および絶縁層65の上に、後に下地層85となるシード層85Pを形成する。次に、シード層85Pを電極およびシードとして用いて、例えばフレームめっき法によって、シード層85Pの上に、後に第3の連結層44となる予備連結層44Pを形成する。予備連結層44Pの厚みは、例えば0.3〜0.6μmの範囲内である。次に、予備連結層44Pをエッチングマスクとして用いて、例えばIBEによって、シード層85Pのうち、予備連結層44Pの下に存在する部分以外の部分を除去する。
【0135】
ヨーク層41、第2の連結層43、予備連結層42P,44P、下地層82,84およびシード層85Pは、後に第1の連結部40となる予備連結部40Pを構成する。第1の予備シールド16APと予備連結部40Pとシード層81P,83Pは、後に前端面R11および傾斜面R12が形成されることによって第1の帰磁路部R1となる予備帰磁路部RPを構成する。図17に示した工程からここまでの説明は、予備連結部40Pを形成する工程の説明と、予備帰磁路部RPを形成する工程の説明を含んでいる。
【0136】
図22Aおよび図22Bは、次の工程を示す。この工程では、まず、積層体の上面の上にフォトレジストマスク92を形成する。フォトレジストマスク92は、媒体対向面80が形成される予定の位置ABSには存在せず、積層体のうち磁気ヘッドとして残る部分(図22Aにおける位置ABSよりも右側の部分)の上に存在して予備連結層44Pの一部を覆う。フォトレジストマスク92は、位置ABSに最も近い端部を有している。この端部と位置ABSとの間の距離は、例えば0.2〜0.5μmである。
【0137】
次に、傾斜面R12が形成されるように、予備帰磁路部RPの一部をエッチングする。具体的には、フォトレジストマスク92をエッチングマスクとして用いて、例えばIBEによって、第1の予備シールド16AP、シード層83Pおよび予備連結部40P(予備連結層42P,44Pおよびシード層85P)に傾斜面R12が形成されるように、第1の予備シールド16AP、シード層83Pおよび予備連結部40Pのそれぞれの一部をエッチングする。傾斜面R12は、傾斜面R12のうち第1の予備シールド16APに存在する部分と媒体対向面80が形成される予定の位置ABSとが交差するように形成される。これにより、予備連結層42P,44Pはそれぞれ連結層42,44となり、シード層83P,85Pはそれぞれ下地層83,85となる。また、これにより、予備連結部40Pは第1の連結部40となる。次に、フォトレジストマスク92を除去する。
【0138】
次に、積層体の上面全体を覆うように、後に非磁性層70となる予備非磁性層を形成する。次に、予備非磁性層の上に配線や端子等を形成し、媒体対向面80が形成される予定の位置ABSの近傍で基板1を切断する。次に、予備帰磁路部RPに前端面R11が形成されて予備帰磁路部RPが第1の帰磁路部R1となり、予備主磁極15Pに端面が形成されて予備主磁極15Pが主磁極15となり、予備非磁性層が非磁性層70となるように、切断によって形成された面を研磨して媒体対向面80を形成する。これにより、第1の予備シールド16APは第1のシールド16Aとなり、シード層81Pは下地層81となる。次に、浮上用レールの作製等を行って、磁気ヘッドが完成する。
【0139】
以上説明したように、本実施の形態に係る磁気ヘッドの製造方法は、予備主磁極15Pを形成する工程と、ギャップ部17の第1の部分19および第2の部分18を形成する工程と、コイルの第1の部分20および第2の部分10を形成する工程と、予備帰磁路部RPを形成する工程と、予備帰磁路部RPの一部をエッチングする工程と、予備非磁性層を形成する工程と、媒体対向面80を形成する工程とを備えている。
【0140】
予備帰磁路部RPを形成する工程は、第1の予備シールド16APを形成する工程と、第1の予備シールド16APの上にシード層83Pを形成する工程と、予備連結部40Pを形成する工程とを含んでいる。予備連結部40Pの一部である予備連結層42Pは、シード層83Pをシードとして用いためっき法によって形成される。
【0141】
本実施の形態に係る磁気ヘッドの製造方法では、図22Aに示したように、予備帰磁路部RPの一部をエッチングする工程において、傾斜面R12のうち第1の予備シールド16APに存在する部分と媒体対向面80が形成される予定の位置ABSとが交差するように、傾斜面R12を形成する。これにより、傾斜面R12の第1の端縁R12aが第1のシールド16Aに存在し、下地層83の端部が媒体対向面80から離れた位置に配置された構造が得られる。
【0142】
[第2の実施の形態]
次に、図23および図24を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る磁気ヘッドについて説明する。図23は、本実施の形態に係る磁気ヘッドにおけるコイルの複数の第2のコイル要素を示す平面図である。図24は、本実施の形態に係る磁気ヘッドにおけるコイルの複数の第1のコイル要素を示す平面図である。
【0143】
本実施の形態に係る磁気ヘッドの構成は、以下の点で第1の実施の形態と異なっている。本実施の形態に係る磁気ヘッドでは、コイルは、主磁極15の周りに約3回巻かれている。本実施の形態におけるコイルは、図4に示した第1の実施の形態における第2の部分10の代わりに、図23に示した3つの線形状部分11,12,13を有している。また、本実施の形態におけるコイルは、図5に示した第1の実施の形態における第1層21の代わりに、図24に示した形状の第1層21を有している。また、本実施の形態におけるコイルは、図6に示した第1の実施の形態における第2層22の代わりに、図24に示した2つの線形状部分221,222を有している。
【0144】
図23に示したように、線形状部分11,12,13は、それぞれ、第2の空間S2を通過するように延びる第2のコイル要素11A,12B,13Cを含んでいる。第2のコイル要素11A,12B,13Cは、媒体対向面80側からこの順に、媒体対向面80に垂直な方向に並んでいる。
【0145】
図24に示したように、本実施の形態における第1層21は、第1の空間S1を通過するように延びる第1のコイル要素21Aを含んでいる。コイル要素21Aは、特に第1のシールド16Aとヨーク層41との間を通過している。また、図24に示したように、線形状部分221,222は、それぞれ、第1の空間S1を通過するように延びる第1のコイル要素221A,222Bを含んでいる。第1のコイル要素221A,222Bは、媒体対向面80側からこの順に、媒体対向面80に垂直な方向に並んでいる。コイル要素221A,222Bは、特に第1の連結層42と第2の連結層43との間を通過している。
【0146】
線形状部分11,12,13と、第1層21および線形状部分221,222は、それらの間の複数の層を貫通する5つの柱状の接続層90を介して、主磁極15の周りにヘリカル状に巻かれたコイルが形成されるように電気的に接続されている。
【0147】
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
【0148】
[第3の実施の形態]
次に、図25ないし図27を参照して、本発明の第3の実施の形態に係る磁気ヘッドについて説明する。図25は、本実施の形態に係る磁気ヘッドを示す断面図である。なお、図25は媒体対向面および基板の上面に垂直な断面、特に前記主断面を示している。図26は、本実施の形態に係る磁気ヘッドにおけるコイルの第2の部分を示す平面図である。図27は、本実施の形態に係る磁気ヘッドにおけるコイルの第1の部分の第2層を示す平面図である。
【0149】
本実施の形態に係る磁気ヘッドの構成は、以下の点で第1の実施の形態と異なっている。本実施の形態におけるコイルは、第1の実施の形態における第2の部分10の代わりに、第2の部分110を含んでいる。図26に示したように、第2の部分110は、第2の帰磁路部R2の一部である連結層33の周りに約4回巻かれている。
【0150】
また、本実施の形態におけるコイルの第1の部分20は、第1の実施の形態における第2層22の代わりに、第2層122を含んでいる。図27に示したように、第2層122は、第1の帰磁路部R1の一部である第2の連結層43の周りに約1回巻かれている。なお、本実施の形態に係る磁気ヘッドでは、絶縁層64が設けられていない。
【0151】
ここで、図26および図27を参照して、第2の部分110と第2層122について更に説明する。図26に示したように、第2の部分110は、第2の空間S2内のうち特に連結層32と連結層33との間を通過するように延びる4つの第2のコイル要素110A,110B,110C,110Dを含んでいる。第2のコイル要素110A,110B,110C,110Dは、媒体対向面80側からこの順に、媒体対向面80に垂直な方向に並んでいる。また、第2の部分110は、第1の実施の形態における図5に示した第1の部分20の第1層21に電気的に接続されたコイル接続部110Eを有している。本実施の形態では、第1層21のコイル接続部21Sは、第1ないし第3の接続層を介してコイル接続部110Eに電気的に接続されている。
【0152】
図27に示したように、第1の部分20の第2層122は、第1の空間S1内のうち特に第1の連結層42と第2の連結層43との間を通過するように延びる第1のコイル要素122Aを含んでいる。また、第2層122は、絶縁層62および絶縁膜63を貫通して第1層21のコイル接続部21E(図5参照)に電気的に接続されたコイル接続部122Sを有している。
【0153】
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
【0154】
[第4の実施の形態]
次に、図28および図29を参照して、本発明の第4の実施の形態に係る磁気ヘッドについて説明する。図28は、本実施の形態に係る磁気ヘッドを示す断面図である。なお、図28は媒体対向面および基板の上面に垂直な断面、特に前記主断面を示している。また、図28では、第1の実施の形態で説明した第2の非磁性層を符号66で示している。図29は、本実施の形態に係る磁気ヘッドにおけるコイルの第1の部分を示す平面図である。
【0155】
本実施の形態に係る磁気ヘッドの構成は、以下の点で第1の実施の形態と異なっている。本実施の形態に係る磁気ヘッドでは、絶縁膜61,63、絶縁層62,64,65および下地層83,84,85が設けられていない。また、本実施の形態における第1の帰磁路部R1の第1の連結部40は、第1の実施の形態における第1ないし第3の連結層42〜44の代わりに、連結層45を有している。連結層45は、第1の連結部40のシールド対向面40aを含み、第1のシールド16Aおよびヨーク層41のよりも基板1の上面1aからより遠い位置に配置されて、第1のシールド16Aとヨーク層41とを磁気的に連結している。また、連結層45は、第1のシールド16Aの上に配置された第1の部分45Aと、ヨーク層41の上に配置された第2の部分45Bとを含んでいる。第1の部分45Aは、下面であるシールド対向面40aと媒体対向面80に向いた端面とを含み、この端面は、媒体対向面80から離れた位置に配置されている。第1の部分45Aの端面における任意の位置の媒体対向面80からの距離は、任意の位置が基板1の上面1aから離れるに従って大きくなっている。
【0156】
また、本実施の形態におけるコイルは、第1の実施の形態における第1の部分20の代わりに、第1の部分220を含んでいる。図29に示したように、第1の部分220は、第1の帰磁路部R1の一部である連結層45の第2の部分45Bの周りに約2回巻かれている。
【0157】
また、本実施の形態に係る磁気ヘッドは、ヨーク層41および第2の非磁性層66の上面の一部の上に配置された絶縁材料よりなる絶縁層67を備えている。第1の部分220は、絶縁層67の上に配置されている。磁気ヘッドは、更に、第1の部分220を覆うように配置された絶縁材料よりなる絶縁層68を備えている。絶縁層67,68は、例えばアルミナによって形成されている。
【0158】
また、本実施の形態における第1の帰磁路部R1は、第1のシールド16A、ヨーク層41および絶縁層68と連結層45との間に介在し連結層45の下地となる下地層86を有している。下地層86は、媒体対向面80に最も近い端部を有し、この端部は、媒体対向面80から離れた位置に配置されている。連結層45は、下地層86の上に配置されている。下地層86の材料は、第1のシールド16A、ヨーク層41および連結層45の材料と同じでもよいし、異なっていてもよい。後で詳しく説明するが、下地層86は、連結層45をめっき法によって形成する際に用いられるシード層の一部である。下地層86のうち、第1のシールド16Aと連結層45との間に介在する部分が、本発明における「下地層」に対応する。
【0159】
本実施の形態では、下地層86のうち、第1のシールド16Aと連結層45との間に介在する部分以外の部分と、下地層82と、連結層45と、ヨーク層41が、第1の連結部40を構成する。また、下地層86のうち、第1のシールド16Aと連結層45との間に介在する部分と、下地層81と、第1のシールド16Aと、第1の連結部40が、第1の帰磁路部R1を構成する。
【0160】
本実施の形態における第1の帰磁路部R1の傾斜面R12は、第1のシールド16A、下地層86および第1の連結部40(連結層45)に対して形成される。第1のシールド16Aの接続面16Ad(図1および図7参照)、連結層45の端面および下地層86の端部は、それぞれ、傾斜面R12の一部を構成する。
【0161】
ここで、図29を参照して、第1の部分220について更に説明する。図29に示したように、第1の部分220は、第1の空間S1内のうち特に連結層45の第1の部分45Aと第2の部分45Bとの間を通過するように延びる2つの第1のコイル要素220A,220Bを含んでいる。第1のコイル要素220A,220Bは、媒体対向面80側からこの順に、媒体対向面80に垂直な方向に並んでいる。また、第1の部分220は、第1の実施の形態における図4に示した第2の部分10のコイル接続部10Eに電気的に接続されたコイル接続部220Sを有している。コイル接続部220Sは、第1の実施の形態で説明した第1ないし第3の接続層と、第3の接続層の上に配置された図示しない柱状の第4の接続層を介してコイル接続部10Eに電気的に接続されている。コイル接続部220Sは、第4の接続層の上に配置されている。第4の接続層は、銅等の導電材料によって形成されている。
【0162】
次に、図30Aないし図31Bを参照して、本実施の形態に係る磁気ヘッドの製造方法について説明する。図30Aないし図31Bは、磁気ヘッドの製造過程における積層体を示している。図30Aおよび図31Aは、それぞれ、媒体対向面80および基板1の上面1aに垂直な断面、特に前記主断面を表している。図30Bおよび図31Bは、媒体対向面80が形成される予定の位置の断面を示している。図30Aおよび図31Aにおいて、記号“ABS”は、媒体対向面80が形成される予定の位置を表している。
【0163】
本実施の形態に係る磁気ヘッドの製造方法は、第1のシード層をシード層81Pと下地層82に分離する工程までは、第1の実施の形態と同様である。図30Aおよび図30Bは、次の工程を示す。この工程では、まず、例えばフレームめっき法によって、第3の接続層の上に、図示しない第4の接続層を形成する。次に、積層体の上面全体の上に、第2の非磁性層66を形成する。次に、例えばCMPによって、第1の予備シールド16AP、ヨーク層41および第4の接続層が露出するまで、第2の非磁性層66を研磨する。
【0164】
次に、積層体の上面全体の上に、絶縁層67を形成する。次に、例えばIBEによって、第1の予備シールド16AP、ヨーク層41および第4の接続層の上面が露出するように、絶縁層67を選択的にエッチングする。次に、例えばフレームめっき法によって、コイルの第1の部分220を形成する。次に、第1の部分220を覆うように絶縁層68を形成する。次に、スパッタ法等の物理的気相成長法によって、第1の予備シールド16AP、ヨーク層41および絶縁層68の上に、後に下地層86となるシード層86Pを形成する。次に、シード層86Pを電極およびシードとして用いて、例えばフレームめっき法によって、シード層86Pの上に、後に連結層45となる予備連結層45Pを形成する。次に、予備連結層45Pをエッチングマスクとして用いて、例えばIBEによって、シード層86Pのうち、予備連結層45Pの下に存在する部分以外の部分を除去する。
【0165】
シード層86Pのうち、第1の予備シールド16APと予備連結層45Pとの間に介在する部分以外の部分と、下地層82と、予備連結層45Pと、ヨーク層41は、後に第1の連結部40となる予備連結部40Pを構成する。シード層86Pのうち、第1の予備シールド16APと予備連結層45Pとの間に介在する部分と、シード層81Pと、第1の予備シールド16APと、予備連結部40Pは、後に前端面R11および傾斜面R12が形成されることによって第1の帰磁路部R1となる予備帰磁路部RPを構成する。
【0166】
図31Aおよび図31Bは、次の工程を示す。この工程では、まず、積層体の上面の上に、第1の実施の形態で説明したフォトレジストマスク92(図示せず)を形成する。フォトレジストマスク92の形状および配置は、フォトレジストマスク92が予備連結層44Pの代わりに予備連結層45Pの一部を覆う点を除いて、第1の実施の形態と同様である。
【0167】
次に、傾斜面R12が形成されるように、予備帰磁路部RPの一部をエッチングする。具体的には、フォトレジストマスク92をエッチングマスクとして用いて、例えばIBEによって、第1の予備シールド16AP、シード層86Pおよび予備連結部40P(予備連結層45P)に傾斜面R12が形成されるように、第1の予備シールド16AP、シード層86Pおよび予備連結部40P(予備連結層45P)のそれぞれの一部をエッチングする。これにより、予備連結層45Pは連結層45となり、シード層86Pは下地層86となる。また、これにより、予備連結部40Pは第1の連結部40となる。次に、フォトレジストマスク92を除去する。次に、積層体の上面全体を覆うように、後に非磁性層70となる予備非磁性層70Pを形成する。
【0168】
次に、予備非磁性層70Pの上に配線や端子等を形成し、媒体対向面80が形成される予定の位置ABSの近傍で基板1を切断する。次に、切断によって形成された面を研磨して媒体対向面80を形成する。これにより、予備主磁極15Pは主磁極15となり、第1の予備シールド16APは第1のシールド16Aとなり、シード層81Pは下地層81となり、予備非磁性層70Pは非磁性層70となる。また、これにより、予備帰磁路部RPは第1の帰磁路部R1となる。その後の工程は、第1の実施の形態と同様である。
【0169】
めっき法によって形成される予備連結層45Pは、シード層86Pの表面に垂直な方向に成長する。媒体対向面80が形成される予定の位置ABSの近傍では、予備連結層45Pは、主に、基板1の上面1aに垂直な方向と、後に形成される媒体対向面80に垂直な方向に成長する。仮に、傾斜面R12を形成せずに媒体対向面80を形成した場合、媒体対向面80には、連結層45の端面が配置される。連結層45の端面は、予備連結層45Pのうち、基板1の上面1aに垂直な方向に成長した部分の端面である第1の部分と、媒体対向面80に垂直な方向に成長した部分の端面である第2の部分とを含んでいる。連結層45の端面の第2の部分では、第1の帰磁路部R1の内部から外部へ磁束が漏れやすくなる。その結果、隣接トラック消去が発生するおそれがある。
【0170】
これに対し、本実施の形態では、第1の予備シールド16AP、シード層86Pおよび予備連結部40P(予備連結層45P)に傾斜面R12が形成されるように、第1の予備シールド16AP、シード層86Pおよび予備連結部40P(予備連結層45P)のそれぞれの一部をエッチングする。これにより、本実施の形態によれば、磁束が漏れやすい連結層45の端面の第2の部分を媒体対向面80から離れた位置に配置して、連結層45の端面の第2の部分から漏れた磁束が記録媒体に達することを抑制することができる。
【0171】
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
【0172】
[第5の実施の形態]
次に、図32および図33を参照して、本発明の第5の実施の形態に係る磁気ヘッドについて説明する。図32は、本実施の形態に係る磁気ヘッドを示す断面図である。なお、図32は媒体対向面および基板の上面に垂直な断面、特に前記主断面を示している。図33は、本実施の形態に係る磁気ヘッドの媒体対向面を示す正面図である。
【0173】
本実施の形態に係る磁気ヘッドの構成は、以下の点で第1の実施の形態と異なっている。本実施の形態における第1のシールド16Aは、第1の実施の形態における図1および図7に示した接続面16Adを含んでいない。従って、第1のシールド16Aの端面16Aaは、上面16Acと交差している。また、本実施の形態では、下地層83は、媒体対向面80に配置された端部を有している。
【0174】
本実施の形態における第1の連結層42は、下面であるシールド対向面40a(図1参照)と、媒体対向面80に配置された端面と、主磁極15から最も遠い上面と、端面と上面とを接続する接続面とを含んでいる。第1の連結層42の接続面における任意の位置の媒体対向面80からの距離は、任意の位置が基板1の上面1aから離れるに従って大きくなっている。
【0175】
本実施の形態における第1の帰磁路部R1の傾斜面R12は、第1の連結部40(連結層42,44および下地層85)に対して形成される。第1の連結層42の接続面、第3の連結層44の端面および下地層85の端部は、それぞれ、傾斜面R12の一部を構成する。第1のシールド16Aの端面16Aa、第1の連結層42の端面および下地層83の端部は、それぞれ、第1の帰磁路部R1の前端面R11の一部を構成する。傾斜面R12の第1の端縁R12aは、第1の連結層42に存在する。
【0176】
本実施の形態に係る磁気ヘッドの製造方法は、以下の点で第1の実施の形態と異なっている。本実施の形態における予備帰磁路部RPの一部をエッチングする工程では、予備連結部40P(予備連結層42P,44Pおよびシード層85P)に傾斜面R12が形成されるように、予備連結部40P(予備連結層42P,44Pおよびシード層85P)のそれぞれの一部をエッチングする。
【0177】
なお、本実施の形態におけるコイルの構成は、第2ないし第4のいずれかの実施の形態と同じであってもよい。本実施の形態では、第1の実施の形態において説明した、下地層83の端部が媒体対向面80から離れた位置に配置されていることによる効果は得られない。本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1ないし第4のいずれかの実施の形態と同様である。
【0178】
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、磁気ヘッドは、第1の帰磁路部R1および第2の帰磁路部R2のうち、第1の帰磁路部R1のみを備えていてもよい。
【符号の説明】
【0179】
15…主磁極、16A…第1のシールド、40…第1の連結部、80…媒体対向面、R1…第1の帰磁路部、R11…前端面、R12…傾斜面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図21A
図21B
図22A
図22B
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図30A
図30B
図31A
図31B
図32
図33