特許第5658314号(P5658314)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5658314高純度パーフルオロエラストマー複合材およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5658314
(24)【登録日】2014年12月5日
(45)【発行日】2015年1月21日
(54)【発明の名称】高純度パーフルオロエラストマー複合材およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 27/18 20060101AFI20141225BHJP
   C08L 29/10 20060101ALI20141225BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20141225BHJP
   C08F 214/26 20060101ALI20141225BHJP
   C08F 216/14 20060101ALI20141225BHJP
【FI】
   C08L27/18
   C08L29/10
   C08K3/36
   C08F214/26
   C08F216/14
【請求項の数】8
【外国語出願】
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-121611(P2013-121611)
(22)【出願日】2013年6月10日
(62)【分割の表示】特願2008-513504(P2008-513504)の分割
【原出願日】2006年5月1日
(65)【公開番号】特開2013-177631(P2013-177631A)
(43)【公開日】2013年9月9日
【審査請求日】2013年6月19日
(31)【優先権主張番号】11/136,744
(32)【優先日】2005年5月25日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598123677
【氏名又は名称】ゴア エンタープライズ ホールディングス,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(72)【発明者】
【氏名】シュー,ピン
(72)【発明者】
【氏名】ヘゲンバルス,ジャック
【審査官】 内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】 特表2003−522232(JP,A)
【文献】 特表平09−500163(JP,A)
【文献】 国際公開第1999/050319(WO,A1)
【文献】 特表2000−502122(JP,A)
【文献】 特表2006−528728(JP,A)
【文献】 特開平07−090088(JP,A)
【文献】 特表2007−517129(JP,A)
【文献】 特開平10−077439(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 27/12
C08L 27/18
C08L 29/10
C08K 3/36
C08F 214/26
C08F 216/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)テトラフルオロエチレン(TFE)、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)およびパーフルオロシアノビニルエーテル(CNVE)モノマーユニットからなる架橋性フルオロエラストマーターポリマーミクロエマルションと、
2)シリカの分散体と
を含んでなる架橋性ミクロエマルション混合物であって、当該エマルション混合物から分離した架橋性フルオロエラストマーターポリマーおよびシリカを含む複合材に含まれる金属が3000ppb未満である、架橋性ミクロエマルション混合物。
【請求項2】
CNVEが8−CNVEである、請求項1に記載の架橋性ミクロエマルション混合物。
【請求項3】
前記架橋性フルオロエラストマーターポリマーが、3000ppb未満の金属含量を有する、請求項1に記載の架橋性ミクロエマルション混合物。
【請求項4】
前記架橋性フルオロエラストマーターポリマーが、2000ppb未満の金属含量を有する、請求項1に記載の架橋性ミクロエマルション混合物。
【請求項5】
前記架橋性フルオロエラストマーターポリマーが、1000ppb未満の金属含量を有する、請求項1に記載の架橋性ミクロエマルション混合物。
【請求項6】
前記架橋性フルオロエラストマーターポリマーが、500ppb未満の金属含量を有する、請求項1に記載の架橋性ミクロエマルション混合物。
【請求項7】
前記架橋性フルオロエラストマーターポリマーが、200ppb未満の金属含量を有する、請求項1に記載の架橋性ミクロエマルション混合物。
【請求項8】
シリカがイソプロパノールに分散されている、請求項1に記載の架橋性ミクロエマルション混合物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
パーフルオロエラストマーは著しい商業的な成功を収め、過酷な環境に遭遇する幅広い用途に使用され、特に高温および刺激的な化学薬品への暴露が起こる最終用途において使用されている。例えば、これらのポリマーは、航空エンジンのシール、半導体製造装置、石油掘削装置および高温で使用される工業用装置のシーリング要素にしばしば使用されている。
【0002】
パーフルオロエラストマーの優れた性質は、これらの組成物中のポリマー骨格の大部分を形成する共重合したパーフルオロ化モノマーユニットの安定性および不活性によるところが大きい。そのようなモノマーとして、テトラフルオロエチレン(TFE)およびパーフルオロ(アルキルビニル)エーテル(PAVE)が挙げられる。弾性特性を完全に発現させるため、パーフルオロエラストマーは通常、架橋、すなわち加硫される。このために、低いパーセンテージの硬化部位モノマーがパーフルオロ化モノマーユニットと共重合される。少なくとも1つのニトリル基を含む硬化部位モノマー、例えばパーフルオロ−8−シアノ−5−メチル−3,6−ジオキサ−1−オクテンが特に好ましい。そのような組成物は、例えば、米国特許第4,281,092号;第4,394,489号;第5,789,489号;および第5,789,509号に記載されている。
【0003】
パーフルオロエラストマーの重合プロセスは、パーフルオロカルボン酸塩またはフッ化スルホン酸塩の存在下で通常行われている。塩が金属イオンを含んでいる場合、形成されるポリマーが金属イオンにより汚染される。塩が非金属である場合、通常、重合媒体のpHは酸性となり、重合容器または下流のラインおよび容器が腐食し、結果として、得られるポリマーが汚染される。さらに、マグネシウム、バリウムまたは他の金属塩の使用により、通常エマルションおよび分散体の凝固が起こり、2つの別個な問題が生じる。第一に、それらはエラストマークラム(elastomeric crumb)に金属汚染を加え、第二に、パーフルオロカルボン酸の金属塩はクラムから除去するのがはるかに困難になる。
【0004】
さらに、従来技術は、例えば、ロールミル、バンバリーミキサー、押出機などでのパーフルオロエラストマーの配合を教示している。この工程において、架橋触媒または他の添加剤がメルト中でパーフルオロエラストマークラムと混合され、用途が要求するであろう十分な架橋を容易にしてもよい。例えば、1つの目標は、良好な高温耐圧縮永久歪を得るに十分な架橋を達成することである。配合は、実際には、添加剤を経た直接の添加により金属および/または他の汚染物質の添加につながり、さらに高温溶融配合は、しばしば、配合装置の腐食および環境汚染への暴露により金属汚染を起こす。有機架橋剤が使用される場合、得られる物品は、架橋剤の熱分解により通常茶色である。
【0005】
シール、O−リングおよびバルブパッキングなどのパーフルオロエラストマー物品は、強化のためカーボンブラックまたは金属フィラーで高濃度に充填されることが多く、そのため不透明になり追加の汚染源になっている。半導体製造などの最終用途においてプラズマに曝される場合、これらの物品のポリマー成分がエッチングされて除かれ、フィラーが望ましくない粒子汚染物質として残される。さらに、ポリマーが分解するにつれ、物品中に元々含まれていた金属、金属酸化物または金属塩などのフィラーが放出されることもある。
【0006】
SaitoらならびにCoughlinおよびWangの最近の特許(米国特許第5,565,512号および国際公開番号WO02/48200)は、金属イオン汚染の低い透明で純粋なパーフルオロエラストマー部品製造の価値について議論している。透明できれいなパーフルオロエラストマー部品への動きを推進する市場諸力には半導体産業および極度に低い金属濃度を望む製薬産業の両方が含まれる。さらに、製薬産業およびバイオテクノロジー産業は、全体的な純度および体内に蓄積する特定のパーフルオロカルボン酸の除去が非常に望ましいと望んでいる。例えば、フルオロポリマー樹脂または部品を製造しているいくつかの会社は、フルオロモノマー乳化重合に使用される通常の界面活性剤であるパーフルオロオクタン酸アンモニウム(APFO)の酸性型であるパーフルオロオクタン酸(PFOA)の限度を設定した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、金属イオン汚染が低くパーフルオロカルボン酸濃度が低い架橋性パーフルオロエラストマーおよび架橋した部品の必要性は、これらを形成する通常のプロセスと合致していない。したがって、本発明の1実施形態は、金属イオン汚染が低くパーフルオロカルボン酸濃度が低いパーフルオロエラストマー組成物を製造する方法である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、金属イオン濃度が低く残留フッ素界面活性剤の濃度が低い架橋性パーフルオロエラストマーおよび硬化したパーフルオロエラストマー物品ならびにそれらを製造する本発明のプロセスに関する。添加剤の非存在下で、高純度の透明な物品が本発明の方法により製造される。
【0009】
1実施形態において、本発明の方法は、パーフルオロカルボン酸塩の存在下で実施される従来の重合プロセスから生じる腐食を、部分的には、非金属緩衝液および/または耐食性容器および/またはラインを利用して最小限にすることにより、汚染を最小限にする。本発明に有用な耐食性材料として、高ニッケル合金、例えばInconel(登録商標)またはHastelloy(登録商標)合金が挙げられる。本発明のプロセスは、金属塩を使用するエマルションまたは分散体の凝固により遭遇する汚染の問題も解決しうる。例えば、硝酸(HNO3)または(NH42CO3およびNH4NO3などのアンモニウム塩を凝固剤として使用することにより、金属汚染が最小限または除去される。エラストマー樹脂を硬化させる公知の方法は、金属および/または他の汚染物質を加える配合工程の利用により、あるいは配合装置の腐食または環境汚染への暴露により汚染を生じることがある。8−CNVEなどのパーフルオロシアノビニルエーテル架橋部位を含むパーフルオロカルボン酸または塩が低濃度であるパーフルオロエラストマー未架橋ゴム(gum)が、配合工程なしで、他の化学薬品の添加をしなくても約250℃または250℃を超える温度で型の中で硬化可能であることが思いがけなく発見された。
【0010】
これらの本発明の工程を合わせると、現在知られているよりも100分の1よりまたは1000分の1より金属イオン汚染が低い架橋したパーフルオロエラストマー部品が製造される。例えば、本発明の1実施形態において、約100万分の3(3ppm)未満、より好ましくは約0.5ppm未満の金属イオンを有する架橋したパーフルオロエラストマー部品が製造される。パーフルオロカルボン酸の濃度もまた、約2ppm未満または約1ppm未満であってよい。好都合には、本発明の架橋した部品は、約200℃で約35%以下の圧縮永久歪の値を有してもよい。好ましい架橋した部品は透明で無色である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】250℃で得られる例2による試料の架橋速度である。
図2】250℃で得られる例4による試料の架橋速度である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1実施形態において、本発明は、TFE、PAVEおよび少なくとも1つのニトリル含有基を有する硬化部位モノマーから本質的になる架橋性パーフルオロエラストマーターポリマーを含んでなる組成物を対象とする。したがって、架橋性組成物は、架橋剤などの追加の材料なしに架橋したターポリマーを形成する。さらに、本発明は、架橋性ターポリマーを製造する方法、架橋剤の非存在下でターポリマーを架橋する方法およびそれからつくられる物品を対象とする。
【0013】
1実施形態において、本発明のパーフルオロエラストマーは、TFE、PAVEおよびパーフルオロシアノビニルエーテルから本質的になるモノマーユニットから重合される架橋性ターポリマーを含んでもよい。1実施形態において、PAVEモノマーはパーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)である。しかし、他の好適なパーフルオロ化ビニルエーテルも、以下の式のモノマーまたはモノマーの混合物から選択でき、
CF2=CFO(Rf’O)n(Rf”O)mRf (I)
上式において、Rf’およびRf”は炭素原子数2〜6の異種の直鎖または分岐パーフルオロアルキレン基であり、mおよびnはそれぞれ0〜10であり、Rfは炭素原子数1〜6のパーフルオロアルキル基である。
【0014】
本発明に使用する他の種類のパーフルオロビニルエーテルとして以下の式の組成物が挙げられ、
CF2=CFO(CF2CFXO)nRf (II)
上式において、XはFまたはCF3であり、nは0〜5であり、Rfは炭素原子数1〜6のパーフルオロアルキル基である。
【0015】
他の種類のパーフルオロビニルエーテルとして、nが0または1でありRfが1〜3の炭素原子を含むエーテルが挙げられる。そのようなパーフルオロ化エーテルの例として、PMVE、パーフルオロエチルビニルエーテル(PEVE)およびパーフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)が挙げられる。他の有用なモノマーとして以下の式の化合物が挙げられ、
CF2=CFO[(CF2mCF2CFZO]nRf (III)
上式において、Rfは炭素原子数1〜6のパーフルオロアルキル基であり、mは0または1であり、nは0〜5であり、ZはFまたはCF3である。この種の好ましいものは、RfがC37であり、mが0、nが1のものである。
【0016】
本発明で使用される、さらなるパーフルオロビニルエーテルモノマーとして、以下の式の化合物を挙げることができ、
CF2=CFO[(CF2CFCF3O)n(CF2CF2CF2O)m(CF2p]Cx2x+1 (IV)
上式において、mおよびnはそれぞれ1〜10であり、pは0〜3であり、xは1〜5である。この種の好ましいものには、nが0〜1、mが0〜1、x=1のものが含まれる。
【0017】
有用なパーフルオロビニルエーテルの他の例として
CF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF2O)mn2n+1 (V)
が挙げられ、上式において、nは1〜5、mは1〜3であり、好ましくはn=1である。
【0018】
本発明の架橋性ターポリマーは、少なくとも1つのニトリル基を含む硬化部位モノマーを有する。1実施形態において、前記モノマーは少なくとも1つのニトリル基を含むフッ化オレフィンを含み、他の実施形態において、前記モノマーは以下の式を有するものを含む、ニトリル含有フッ化ビニルエーテルを含んでなる。
CF2=CF−O(CF2n−CN (VI)
上式において、nは2〜12、好ましくは2〜6であり;
CF2=CF−O[CF2−CFCF3−O]n−CF2−CF(CF3)−CN (VII)
上式において、nは0〜4、好ましくは0〜2であり;
CF2=CF−[OCF2CF(CF3)]x−O−(CF2n−CN (VIII)
上式において、xは1〜2であり、nは1〜4であり;
CF2=CF−O−(CF2n−O−CF(CF3)CN (IX)
上式において、nは2〜4である。特に好ましい硬化部位モノマーは、パーフルオロ(8−シアノ−5−メチル−3,6−ジオキサ−1−オクテン)、
CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2CN (X)
を含む、ニトリル基およびトリフルオロビニルエーテル基を有するパーフルオロ化ポリエーテルである。
【0019】
本発明の好ましいパーフルオロエラストマー組成物は、TFE、PAVEのユニットおよび少なくとも1つのニトリル含有基を有する硬化部位ユニットから本質的になる架橋性ターポリマーから構成されており、1実施形態においてPAVEはPMVEであり、さらに8−パーフルオロシアノビニルエーテル(8−CNVE)がニトリル含有硬化部位モノマーである。架橋性ターポリマーは、参照により本願に組み込まれるCoggioらに付与された国際公開番号WO02/060968に記載されているものを含む公知の方法およびさらに以下に示す実施例に詳細に記載される方法により上記モノマーから重合できる。1実施形態において、架橋性パーフルオロエラストマーターポリマーは、およそ38から81.7モルパーセントのTFE、18から58モルパーセントのPAVEおよび0.3から4モルパーセントのニトリル含有硬化部位モノマーから本質的になる。本発明の他の架橋性ターポリマーは、約47から80モルパーセントのTFE、19から50モルパーセントのPAVEおよび1から3モルパーセントのニトリル含有硬化部位モノマーから本質的になる。
【0020】
重合して本発明の架橋性ターポリマーを形成した後、汚染物質の除去を容易にしうる以下の例1に記載の仕上げ工程でガムをさらに処理してよい。
【0021】
1実施形態において、高純度架橋性ターポリマーは金属イオン含量(または金属汚染)が低く、フッ素界面活性剤濃度も低い。架橋性ターポリマーの金属含量は、本願記載の金属含量測定方法にしたがい測定して、200ppm未満であり、好ましくは10億分の3000(3000ppb)未満であり、好ましくは約2000ppb未満であり、さらに好ましくは約1000ppb未満であり、より好ましくは約500未満であり、最も好ましくは約200ppb未満である。好ましい架橋したターポリマーの金属含量は、本願記載の金属含量測定方法にしたがい測定して、やはり200ppm未満であり、好ましくは3000ppb未満であり、より好ましくは約2000ppb未満であり、さらに好ましくは約1000ppb未満または約500ppb未満である。1実施形態において、フッ素界面活性剤濃度は、本願記載の方法にしたがい測定して、未架橋および架橋したターポリマーの一方または両方に対して好ましくは2ppm未満である。好ましくは、パーフルオロカルボン酸の濃度は、約2ppm未満および1ppm未満であってよい。未架橋および架橋したターポリマーは、フルオロスルホン酸濃度が、約2ppm未満または1ppm未満であってよい。未架橋および架橋した組成物のAPFO濃度は2ppm未満であってよく、あるいはさらなる実施形態において1ppm未満であってよい。
【0022】
本発明は、高純度の架橋したパーフルオロエラストマー物品を製造するプロセスをさらに対象とする。本発明の1実施形態は、TFE、PAVEおよびニトリル含有硬化部位モノマーユニットから本質的になる架橋性ターポリマーを含んでなる組成物を加熱して、架橋剤が添加されていない高純度の架橋した組成物を形成する工程を含んでなる方法を含む。1方法は以下の工程:
1)a)TFE、b)PAVEおよびc)ニトリル含有硬化部位モノマーから本質的になる、本発明の架橋性パーフルオロエラストマーターポリマーを含んでなる組成物を形成する工程;
2)前記架橋性パーフルオロエラストマーターポリマー組成物を造形する工程;
3)その造形したパーフルオロエラストマーターポリマー組成物を加熱する工程;および
4)加熱により前記パーフルオロエラストマーターポリマーを架橋する工程を含んでなり、前記プロセスは架橋剤の添加なしに、または架橋剤の非存在下で実施される。
【0023】
本発明の方法は、著しい金属汚染を導入しない手段により、成型または他の製作技術による造形を含んでもよい。
【0024】
1実施形態において、前記方法は、1種または複数の架橋剤の非存在下で、または前記架橋剤の添加なしに、十分な架橋が得られるまで、ニトリル含有硬化部位を有するユニットを有するターポリマーを加熱および架橋する工程を含んでなる。架橋性ポリマーを硬化させるのに通常使用される助剤、触媒など(過酸化物、イソシアヌレート、アンモニア発生化合物およびビスアミドキシム)を含む架橋剤は汚染をもたらし、本発明の新規な方法を利用するターポリマーの架橋には必要でない。本発明の方法からこれらの架橋剤を排除すると、現在公知の方法により達成されるより高い純度を持つ架橋した組成物が得られる。好ましい架橋したパーフルオロエラストマーは、加熱後、半透明または透明である。
【0025】
1実施形態において、前記方法は、架橋剤または添加剤の非存在下で、または前記架橋剤または添加剤の添加なしに、十分な架橋が得られるまで、造形されたパーフルオロエラストマーを約250℃以上に加熱および架橋させる工程を含んでなる。さらなる実施形態において、前記方法は、架橋剤の非存在下で、または前記架橋剤の添加なしに、約300℃以上に加熱する工程を含んでなる。加熱および架橋は、ターポリマーを望ましい程度に硬化させるに十分な温度および時間で維持される。さらなる実施形態において、加熱および架橋は、特定の圧縮永久歪を得るに必要な時間および温度で継続される。例えば、前記方法は、本願記載の方法にしたがい約200℃で試験して、約50%以下の圧縮永久歪を有する架橋したターポリマーまたは造形物品が形成されるまで加熱および架橋させる工程を含んでなる。他の実施形態において、前記方法は、本願で利用し以下に記載する方法にしたがい約200℃で試験して、約40%以下の圧縮永久歪、約35%以下、約30%以下または約10%以下の圧縮永久歪を架橋したターポリマーまたは造形物品が有するまで加熱および架橋させる工程を含んでなる。架橋性ターポリマー組成物を、例えば、約30分以上または約60分以上の間、約250℃超または約300℃以上で加熱して、これらの性質を得てもよい。本発明の好ましい架橋した組成物は、本願記載の方法にしたがい約200℃で試験して、約40%以下の圧縮永久歪を有し、より好ましくは約35%以下の圧縮永久歪を有する。
【0026】
架橋した組成物の評価に使用するため、圧縮永久歪は、空気中で約70時間、およそ25%のたわみで、ASTM D395−01 により測定される。物品を試験装置から外し、試験温度に1時間再加熱し、測定する。
【0027】
本発明のパーフルオロエラストマーターポリマーからつくられた物品は、現在公知の方法によって得ることが可能な純度より高い純度が要求される用途で有用である。本発明の組成物から形成される物品の用途のいくつかとして、o−リングなどのガスケット、チューブ、ダイアフラム、シールなどが挙げられる。本発明の架橋性ターポリマーを、使用可能な物品に直接造形および硬化してもよい。
【0028】
本発明のさらなる実施形態において、架橋性ターポリマーは、望ましい性質を付与または向上させる添加剤またはフィラーなどの他の材料と、またはさらに他のモノマーまたはポリマー組成物と混合してもよい。したがって、1実施形態において、TFE、PAVEおよびCNVEから本質的になる架橋性フルオロエラストマーターポリマーを含んでなる組成物と、複合材質量に対して約1〜20質量%の、フィラーおよび添加剤から選択される少なくとも1種の追加材料を含んでなるブレンドが形成され、前記追加材料は、複合材を物品に造形または形成する前に加えてもよい。例えば、SiO2を含んでなるフィラーを有し、好ましくは、PAVEがPMVE、PEVEまたはPPVEを含んでなりCNVEが8−CNVEを含んでなる、本発明のそのような複合材が形成される。架橋性フルオロエラストマーターポリマー複合材は、約3000ppb未満、約2000ppb未満、1000ppb未満、500ppb未満または200ppb未満の金属含量を有してもよい。好ましい複合材は、架橋したときに、200℃で試験して、50%未満、40%未満または30%未満の圧縮永久歪を有する。
【0029】
本発明の他の実施形態において、1)上述の本発明のターポリマーなど、TFE、PAVEおよびニトリル含有硬化部位モノマーユニットから本質的になる架橋性ターポリマーを含んでなる組成物と、2)官能化ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)とを含んでなるブレンドから複合材が形成される。フィラーおよび添加剤から選択される少なくとも1種の追加材料を加えてもよい。官能化PTFEと架橋性フルオロエラストマーターポリマーの複合材は、約3000ppb未満、約2000ppb未満、1000ppb未満、500ppb未満または200ppb未満の金属含量を有してもよい。好ましい複合材は、架橋したときに、150℃で試験して、50%未満、40%未満または30%未満の圧縮永久歪を有する。
【0030】
架橋性ターポリマーのエマルション混合物からブレンドを形成できる。1実施形態において、エマルション混合物は、TFE、PAVEおよびパーフルオロシアノビニルエーテル(CNVE)のユニットから本質的になる架橋性パーフルオロエラストマーターポリマーを含んでなる組成物のエマルションと、フィラーおよび添加剤から選択される少なくとも1種の追加材料の分散体とを含んでなる。1実施形態において、ターポリマーを含んでなる組成物のエマルションはミクロエマルションであり、少なくとも1種の追加材料はシリカの分散体を含んでなる。好ましいターポリマーは、PMVE、PPVEまたはPEVEおよび8−CNVEのユニットを含んでなる。エマルションの形成方法は、例えば、本願に詳述する実施例に教示されている。
【0031】
他の実施形態において、エマルション混合物は、1)TFE、PAVEおよびCNVEのユニットから本質的になる、本発明の架橋性パーフルオロエラストマーターポリマーを含んでなるエマルションと、2)0.1〜3モル%のパーフルオロシアノビニルエーテルを含んでなるPTFEポリマーとのエマルションを含んでなる。好ましいターポリマーは、PMVE、PPVEまたはPEVEおよび8−CNVEのユニットを含んでなる。エマルションの形成方法は、例えば、本願に詳述する実施例に教示されている。粒径が約100nm未満である官能化PTFEのミクロエマルションおよびナノエマルションが好ましい。パーフルオロシアノビニルエーテル、最も好ましくは8−シアノビニルエーテルにより官能化されたPTFEポリマーを含んでなり、粒径が約10nmから100nmであるナノエマルションが好ましい。
【0032】
本発明のエマルション混合物を凝固してブレンドを形成してもよい。例えば、官能化PTFEおよび架橋性パーフルオロエラストマーターポリマーを含んでなる本発明のブレンドは凝固して、本願に記載のとおり、官能化PTFEが充填された架橋性パーフルオロエラストマーターポリマーブレンドを形成する。官能化PTFEは、エマルション混合物から生じる乾燥複合材の約1から20質量%の量で存在してよく、架橋性パーフルオロエラストマーターポリマーはエマルション混合物から生じる乾燥複合材の約80〜99質量%の量で存在してよい。官能化PTFE充填架橋性ターポリマーブレンドを、架橋剤の非存在下でのブレンドの加熱および架橋を含む本願記載の方法により架橋させて、本願にすでに記載した望ましいレベルの架橋、圧縮永久歪および純度値などの性質を有する硬化した官能化PTFE充填ポリマーを形成してもよい。
【0033】
ブレンドは、複合材に具体的に望まれる性質を付与するフィラーおよび添加剤などの少なくとも1種の追加材料をさらに含んでよい。少なくとも1種の追加材料は複合材の約1から20質量%を構成し、1実施形態において、分散体としてエマルション混合物に加えられる。1実施形態において、シリカが分散体としてミクロエマルションまたはエマルション混合物に加えられる。1実施形態において、物品の造形、加熱および架橋の前に、少なくとも1種の追加材料を官能化PTFE充填ターポリマーブレンドに加えることが望ましい。
【0034】
官能化PTFE充填ターポリマーからつくられる物品として、o−リングなどのガスケットなどが挙げられる。
【0035】
試験方法
APFO分析
メタノール性HCl誘導体化法(methanolic HCl derivitization method)を使用して、塩またはカルボン酸からメチルエステル誘導体にAPFOの形態を変える。この形態はガスクロマトグラフィー(GC)により容易に分析される。
【0036】
約1gのポリマー中のAPFOを抽出し、55℃で2時間かけ10mLのメタノール性HCl(Supelco、品番33050−U)中に誘導体化する。次いで、誘導体混合物を、20mLの半飽和(half saturated)NaCl水溶液(98+%、Sigma Aldrich)および10mLのn−ヘキサン(99+%、Sigma Aldrich)と合わせる。誘導体をヘキサン層に抽出し、次いでGC分析のために除去する。
【0037】
GC分析は、非極性カラムおよび電子捕獲型検出器(例2、3および4)および水素炎イオン化検出器(例5、6および7)を利用してスプリットレスに実施する。
【実施例】
【0038】
例1
Omini Mixer Homogenizer(Omini International Co.)を5分間使用して、10gの8−CNVE[CF2=CF−O−(CF23−O−CF(CF3)−CN]、135gの脱イオン(DI)水および5gの20質量%パーフルオロオクタン酸アンモニウム(APFO)水溶液を含む水性エマルションを調製した。この溶液を「ストック溶液A」と称する。
【0039】
およそ1500gの脱イオン水、300gの20質量%APFO水溶液および16gの8−CNVEを脱酸素した4リットル反応器に入れた。次いで、190gのTFEおよび300gのPMVEを反応器に加えた。次いで、反応器を2285KPaで70℃に加熱し、202gの過硫酸アンモニウム(APS)水溶液(2gのAPSが200gの脱イオン水に溶解)を2分以内に供給して重合反応を開始した。反応圧力が1800KPaに低下したら、105gのストック溶液Aを120gの脱イオン水および20gのTFEとともに3分以内に反応器に入れた。次いで、150.5gのAPS溶液(0.5gのAPSを150gの脱イオン水に溶解)を1分以内に反応器に供給した。反応圧力が1600KPaに低下したら、45gのストック溶液Aを150gの脱イオン水および20gのTFEとともに1分以内に反応器に入れた。次いで、150.5gのAPS溶液(0.5gのAPSを150g脱イオン水に溶解)を1分以内に反応器に供給した。反応開始から221分後に518KPaで重合反応を停止した。反応器を冷却し、残存ガスをパージした。16.9質量%の固形分を含むエマルションラテックスを得た。
【0040】
仕上げプロセス1
およそ10mLの硝酸(最低65%、半導体グレード、Riedel−deHaen)を、ポリプロピレン(PP)ビーカー中の200mLのエマルションラテックス(実質的に例1にしたがい調製)に、室温で攪拌しながら導入した。液体をデカンテーションし、次いで沈殿した固体を200mLのメタノール(半導体グレード、Riedel−deHaen)に室温で浸漬した。24時間後、メタノールをデカンテーションし、ポリマーを200mLのメタノール(半導体グレード、Riedel−deHaen)で洗浄した。ポリマーを、対流オーブン中、120℃で12時間乾燥した。
【0041】
仕上げプロセス2
手順は上記と同じであるが、使用した硝酸はACS試薬グレード(70%、Aldrich)であり、使用したメタノールはPRAグレード(99.9%、Aldrich)であった。
【0042】
2つの乾燥したポリマー試料を、16種の金属元素に関して、誘導結合プラズマ−質量分析法(ICP−MS)により分析した。表1に、ポリマー中の金属イオン濃度を列記する。
【0043】
固体19F NMRを実施し、ポリマーの組成をキャラクタリゼーションした。このポリマー試料は62.4モル%のTFE、36.6モル%のPMVEおよび1.0モル%の8−CNVEを含んでいた。
【0044】
例2
Omini Mixer Homogenizerを5分間使用して、10gの8−CNVE[CF2=CF−O−(CF23−O−CF(CF3)−CN]、136gの脱イオン水および4gの20質量%APFO水溶液を含む水溶液を調製した。この溶液を「ストック溶液B」と称する。
【0045】
およそ1500gの脱イオン水、300gの20質量%APFO水溶液および16gの8−CNVEを脱酸素した4リットル反応器に入れた。次いで、190gのTFEおよび320gのPMVEを反応器に加えた。次いで、反応器を2347KPaで70℃に加熱し、200.5gのAPS水溶液(0.5gのAPSが200gの脱イオン水に溶解)を1分以内に供給して重合反応を開始した。反応圧力が1900KPaに低下したら、105gのストック溶液Bを120gの脱イオン水および20gのTFEとともに2分以内に反応器に入れた。反応圧力が1700KPaに低下したら、45gのストック溶液Bを150gの脱イオン水および20gのTFEとともに2分以内に反応器に入れた。反応開始から367分後に600KPaで重合反応を停止した。反応器を冷却し、残存ガスをパージした。18.2質量%の固形分を含むエマルションラテックスを得た。
【0046】
PPビーカー中で、20mLの硝酸(70%、ACS試薬、Aldrich)により、およそ400mLのエマルションラテックスを室温で凝固させた。液体をデカンテーションし、次いで、沈殿した物質を400mLのメタノール(99.9%、PRAグレード、Aldrich)に室温で24時間浸漬した。次いで、メタノールをデカンテーションし、物質を400mLのメタノール(99.9%、PRAグレード、Aldrich)で洗浄した。メタノールをデカンテーションし、次いで、洗浄した物質を対流オーブン中、70℃で48時間乾燥した。
【0047】
ポリマーから検出されたAPFO残渣は0.3ppmであった。固体19F NMRにより、61.7モル%のTFE、37.3モル%のPMVEおよび1.0モル%の8−CNVEを有することが示された。
【0048】
ARESレオメーター(Rheometrics)を硬化プロセスのモニターに使用した。直径が8mmで厚さが約0.8mmのディスクを100℃で2分間ポリマーから成型した。ディスクを直径8mmの2枚の平行な板の間に60℃で100秒置き、次いで、出発温度60℃から加熱速度80℃/分で硬化温度に加熱した。硬化は、10rad/秒の周波数、0.1%の歪みおよび硬化温度で空気中で実施した。トルクおよびtanδ=G”/G’を時間とともにモニターした(G’は貯蔵剪断弾性率であり、G”は損失弾性剪断率である)。硬化曲線を図1に示す。
【0049】
クラムポリマーを、300℃および1727psiで1時間AS−568A K214(エアロスペーススタンダードO−リングサイズ)に成型し、次いで、空気中、300℃で24時間後硬化した。つくられたO−リングは透明であった。
【0050】
ASTM D 395−01 方法Bに大部分基づき、O−リングの圧縮永久歪を測定した。しかし、ASTM法には、どの程度すぐに、または何度で試験検体を試験装置から除くべきかについて定量的な時間または温度の尺度がない。試験検体を異なる温度で試験装置から外す場合、異なる圧縮永久歪の値が得られる。この問題を避けるため、試験装置から外された試験検体を試験温度に1時間再加熱し、次いで、ASTM D 395−01に基づき、すなわち30分間冷却などで測定した。圧縮永久歪の値を表3に示す。
【0051】
例3
Omini Mixer Homogenizerを5分間使用して、10gの8−CNVE[CF2=CF−O−(CF23−O−CF(CF3)−CN]、480gの脱イオン水および10gの20質量%APFO水溶液を含む水溶液を調製した。この溶液を「ストック溶液C」と称する。
【0052】
およそ1500gの脱イオン水、300gの20質量%APFO水溶液および16gの8−CNVEを脱酸素した4リットル反応器に入れた。次いで、260gのTFEおよび300gのPMVEを反応器に加えた。次いで、反応器を2584KPaで70℃に加熱し、200.2gのAPS水溶液(0.2gのAPSが200gの脱イオン水に溶解)を1分以内に供給して重合反応を開始した。ついで、ストック溶液Cを以下のとおり反応器に供給した。
【0053】
【表1】
【0054】
反応圧力が2120KPaに低下したら、20gのTFEを1分以内に反応器に入れた。反応圧力が1920KPaに低下したら、さらに20gのTFEを1分以内に反応器に入れた。反応開始から219分後に、1200KPaで重合反応を停止した。反応器を冷却し、残存ガスをパージした。15.9質量%の固形分を含むエマルションラテックスを得た。
【0055】
凝固プロセスは、例1に示した第1の仕上げプロセスと実質的に同じであった。ポリマーを、対流オーブン中で、70℃で48時間乾燥した。
【0056】
乾燥したポリマー試料を、16種の金属元素に関してICP−MSにより分析した。表1は、ポリマー中の金属イオン濃度を列記している。
【0057】
ポリマーから検出されたAPFO残渣は1.2ppmであった。固体19F NMRにより測定すると、このポリマーは、74.9モル%のTFE、24.2モル%のPMVEおよび0.9モル%の8−CNVEを有していた。
【0058】
クラムポリマーを300℃および1658psiで5分間加熱し、AS−568A K214 O−リングに成型し、次いで空気中、250℃で24時間後硬化した。つくられたO−リングは透明であった。圧縮永久歪の値を表3に示す。同じ成型条件、加熱条件および後硬化条件で、クラムポリマーを、Kapton(登録商標)フィルムの間で厚さ1mmのフィルムに成型および硬化した。架橋したフィルムの純度を表1に示す。
【0059】
例4
およそ1800gの脱イオン水および180gの20質量%APFO水溶液を、脱酸素した4リットル反応器に入れた。次いで、3.6gの8−CNVE[CF2=CF−O−(CF25−CN]、76gのPMVEおよび62.8gのTFEを反応器に加えた。
【0060】
反応器を60℃に加熱し、次いで、TFEとPMVEの混合物(55/45、質量/質量)を、圧力が920KPaに増すまで反応器に入れた。次いで、6gのAPSと4gの25質量%亜硫酸アンモニウムを含む水溶液200mLを反応器に加えて、重合反応を開始した。
【0061】
開始反応が始まったら、8−CNVEを0.143g/分の速度で反応器に連続的に加え、TFEとPMVEの混合物(55/45、質量/質量)も反応器に連続的に供給して、反応圧力を930〜950KPaに保った。
【0062】
反応開始から440分後、8−CNVEおよびTFEとPMVEの混合物の供給を停止した。反応器を1時間そのままの状態にしておいた。次いで、反応器を冷却し、残存ガスをパージした。27.5質量%の固形分を含むエマルションラテックスを得た。
【0063】
凝固プロセスは、例1に示した第1の仕上げプロセスと同じである。対流オーブン中でポリマーを70℃で48時間乾燥した。
【0064】
乾燥したポリマー試料を、16種の金属元素に関してICP−MSにより分析した。表1は、ポリマー中の金属イオン濃度を列記している。
【0065】
ポリマーから検出されたAPFO残渣は0.8ppmであった。固体19F NMRを実施して、ポリマーの組成をキャラクタリゼーションした。このポリマー試料は、69.6モル%のTFE、29.2モル%のPMVEおよび1.2モル%の8−CNVEを有していた。
【0066】
ARESレオメーター(Rheometrics)を硬化プロセスのモニターに使用した。直径が8mmで厚さが約0.8mmのディスクを100℃で2分間ポリマーから成型した。ディスクを直径8mmの2枚の平行な板の間に置いた。硬化は、10rad/秒の周波数、0.5%の歪みおよび空気中での約250℃の加熱で実施した。トルクおよびtanδ=G”/G’を時間とともにモニターした。硬化曲線を図2に示す。
【0067】
クラムポリマーを、250℃および1727psiで30分間加熱しAS−568A K214 O−リングに成型し、次いで、空気中、90℃で4時間、204℃で24時間、288℃で24時間後硬化した。つくられたO−リングは透明であった。圧縮永久歪の値を表3に示す。クラムポリマーを同じ成型条件および後硬化条件で、Kapton(登録商標)フィルムの間で厚さ1mmのフィルムに成型した。架橋したフィルムの純度を表1に示す。
【0068】
例5
Omini Mixer Homogenizerを5分間使用して、5gの8−CNVE[CF2=CF−O−(CF23−O−CF(CF3)−CN]、490gの脱イオン水および10gの20質量%APFO水溶液を含む水溶液を調製した。この溶液を「ストック溶液E」と称する。
【0069】
およそ1500gの脱イオン水、300gの20質量%APFO水溶液および8gの8−CNVEを脱酸素した4リットル反応器に入れた。次いで、190gのTFEおよび300gのPMVEを反応器に加えた。次いで、反応器を2258KPaで70℃に加熱し、200.5gのAPS水溶液(0.5gのAPSが200gの脱イオン水に溶解)を1分以内に供給して重合反応を開始した。ついで、ストック溶液Eを以下のとおり反応器に供給した。
【0070】
【表2】
【0071】
反応圧力が1800KPaに低下したら、20gのTFEを1分以内に反応器に入れた。反応圧力が1600KPaに低下したら、さらに20gのTFEを1分以内に反応器に入れた。反応開始から198分後に、600KPaで重合反応を停止した。反応器を冷却し、残存ガスをパージした。17.3質量%の固形分を含むエマルションラテックスを得た。FTIRにより測定して、ポリマーは、49.6質量%のTFE、48.5質量%のPMVEおよび1.9質量%の8−CNVEを有していた。
【0072】
ヒュームドシリカ(1.73g)(R812、Degussa)を50mLの2−プロパノール(IPA)(99.8%、PRグレード、Aldrich)に分散した。次いで、このヒュームドシリカIPA分散体を、攪拌しながら室温で100gのポリマーエマルションに導入した。この混合物を5mLの硝酸(70%、ACS試薬、Aldrich)により凝固した。液体をデカンテーションし、次いで、沈殿した物質を、室温で24時間100mLのメタノール(99.9%、PRAグレード、Aldrich)に浸漬した。次いで、メタノールをデカンテーションし、物質を100mLのメタノールで洗浄した。次いで、メタノールをデカンテーションし、洗浄した物質を対流オーブン中、70℃で48時間乾燥した。
【0073】
乾燥したポリマー試料を、16種の金属元素に関してICP−MSにより分析した。表2は、ポリマー中の金属イオン濃度を列記している。乾燥したシリカ充填ポリマー中に検出されたAPFO残渣は2ppm未満であった。
【0074】
シリカ充填ポリマーを、250℃および1727psiで30分間加熱しAS−568A K214 O−リングに成型し、次いで、空気中、250℃で24時間後硬化した。圧縮永久歪の値を表3に示す。
【0075】
例6 TFE−PMVE−8CNVEターポリマーエマルションの調製
Omini Mixer Homogenizerを5分間使用して、20gの8−CNVE[CF2=CF−O−(CF23−O−CF(CF3)−CN]、490gの脱イオン水および11gの20質量%APFO水溶液を含む水溶液を調製した。この溶液を「ストック溶液F」と称する。
【0076】
およそ1500gの脱イオン水、300gの20質量%APFO水溶液および32gの8−CNVEを脱酸素した4リットル反応器に入れた。次いで、190gのTFEおよび300gのPMVEを反応器に加えた。次いで、反応器を2250KPaで70℃に加熱し、200.5gのAPS水溶液(0.5gのAPSが200gの脱イオン水に溶解)を2分以内に供給して重合反応を開始した。ついで、ストック溶液Fを以下のとおり反応器に供給した。
【0077】
【表3】
【0078】
反応圧力が1800KPaに低下したら、20gのTFEを1分以内に反応器に入れた。反応圧力が1600KPaに低下したら、さらに20gのTFEを1分以内に反応器に入れた。反応開始から465分後に、730KPaで重合反応を停止した。反応器を冷却し、残存ガスをパージした。17.4質量%の固形分を含むエマルションラテックスを得た。固体19F NMRにより測定して、ポリマーは、58.7モル%のTFE、38.2モル%のPMVEおよび3.1モル%の8−CNVEを有していた。
【0079】
8−CNVE官能化ナノPTFEエマルションの調製
およそ1700gの脱イオン水、300gの20質量%APFO水溶液、45gのヘキサフルオロベンゼン(HFB)および3.5gの8−CNVE[CF2=CF−O−(CF23−O−CF(CF3)−CN]を脱酸素した4リットル反応器に入れた。次いで、130gのTFEを反応器に加えた。次いで、反応器を1200KPaで70℃に加熱し、200.5gのAPS水溶液(0.5gのAPSを200gの脱イオン水に溶解)を3分以内に供給して重合反応を開始した。約820gのTFEを反応器に供給して、322分間定圧1200KPaを保った。反応器を冷却し、残存ガスをパージした。24.2質量%の固形分を含むナノエマルションラテックスを得た。PTFE粒子の平均径は、動的光散乱(90Plus、Brookhaven Instruments)により測定して直径19.4nmであった。固体19F NMRにより測定して、ポリマーは、99.9モル%のTFEおよび0.1モル%の8−CNVEを有していた。
【0080】
およそ100gのターポリマーエマルションを、14.4gのナノPTFEエマルションと混合した。エマルション混合物を5mLの硝酸(70%、ACS試薬、Aldrich)で凝固した。液体をデカンテーションし、次いで、沈殿した物質を、室温で24時間100mLのメタノール(99.9%、PRAグレード、Aldrich)に浸漬した。次いで、メタノールをデカンテーションし、物質を100mLのメタノールで洗浄した。次いで、メタノールをデカンテーションし、洗浄した物質を対流オーブン中、70℃で48時間乾燥し、官能化ナノPTFE充填ポリマー複合材を形成した。乾燥したポリマー中に検出されたAPFO残渣は2ppm未満であった。
【0081】
官能化ナノPTFE充填ポリマーを、300℃および1727psiで30分間AS−568A K214 O−リングに成型し、次いで、空気中、250℃で24時間後硬化した。つくられたO−リングは透明であった。圧縮永久歪の値を表3に示す。
【0082】
例7 8−CNVE官能化ナノPTFEエマルションの調製
およそ1700gの脱イオン水、300gの20質量%APFO水溶液、45gのHFBおよび7gの8−CNVE[CF2=CF−O−(CF23−O−CF(CF3)−CN]を脱酸素した4リットル反応器に入れた。次いで、120gのTFEを反応器に加えた。次いで、反応器を12barで70℃に加熱し、200.5gのAPS水溶液(0.5gのAPSを200gの脱イオン水に溶解)を3分以内に供給して重合反応を開始した。760gのTFEを反応器に供給して、447分間定圧12barを保った。反応器を冷却し、残存ガスをパージした。26.8質量%の固形分を含むエマルションラテックスを得た。PTFE粒子の平均径は、動的光散乱により測定して直径24.3nmであった。固体19F NMRにより測定して、ポリマーは、99.8モル%のTFEおよび0.2モル%の8−CNVEを有していた。
【0083】
例6でつくったターポリマーエマルションのおよそ100gを、13gのナノPTFEエマルションと混合した。エマルション混合物を5mLの硝酸(70%、ACS試薬、Aldrich)で凝固した。液体をデカンテーションし、次いで、沈殿した物質を、室温で24時間100mLのメタノール(99.9%、PRAグレード、Aldrich)に浸漬した。次いで、メタノールをデカンテーションし、物質を100mLのメタノールで洗浄した。次いで、メタノールをデカンテーションし、洗浄した物質を対流オーブン中、70℃で48時間乾燥した。
【0084】
乾燥したポリマー試料を、16種の金属元素に関してICP−MSにより分析した。表2は、ポリマー中の金属イオン濃度を列記している。得られた乾燥した官能化ナノPTFE充填ポリマー中に検出されたAPFO残渣は2ppm未満であった。
【0085】
官能化ナノPTFE充填ポリマーを、300℃および1727psiで30分間加熱しAS−568A K214 O−リングに成型し、次いで、空気中、250℃で24時間後硬化した。つくられたO−リングは透明であった。圧縮永久歪の値を表3に示す。
【0086】
【表4】
【0087】
【表5】
【0088】
【表6】
図1
図2