(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5658368
(24)【登録日】2014年12月5日
(45)【発行日】2015年1月21日
(54)【発明の名称】無変圧器単相PVインバータの改良回路装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/5387 20070101AFI20141225BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20141225BHJP
【FI】
H02M7/5387 Z
H02M7/5387 A
H02M7/48 R
H02M7/48 F
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-525806(P2013-525806)
(86)(22)【出願日】2011年8月3日
(65)【公表番号】特表2013-535950(P2013-535950A)
(43)【公表日】2013年9月12日
(86)【国際出願番号】KR2011005696
(87)【国際公開番号】WO2012023718
(87)【国際公開日】20120223
【審査請求日】2013年3月25日
(31)【優先権主張番号】1045527
(32)【優先日】2010年8月17日
(33)【優先権主張国】HU
(73)【特許権者】
【識別番号】513035047
【氏名又は名称】パイル セウ
【氏名又は名称原語表記】PAIL Ceu
(73)【特許権者】
【識別番号】512070698
【氏名又は名称】ヒョンデ ヘビー インダストリーズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100129997
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 米藏
(72)【発明者】
【氏名】パイル セウ
【審査官】
安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−221892(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0262581(US,A1)
【文献】
独国特許出願公開第10221592(DE,A1)
【文献】
米国特許第05710689(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/42−7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
AC出力が二つのリアクトル(L1,L2)を介して電力系統(U)に接続され、エネルギー蓄積キャパシタ(C)がPVアレイ(P)の両端子に接続され、二つのハーフブリッジ(I,II)がエネルギー蓄積キャパシタ(C)の+および−端子に接続されてHブリッジが形成されている無変圧器単相PVインバータの改良回路装置において、一のハーフブリッジ(I)のACノードがダイオード(D1)のアノードおよびダイオード(D2)のカソードに接続され、他のハーフブリッジ(II)のACノードがダイオード(D3)のアノードおよびダイオード(D4)のカソードに接続され、これら4つのダイオード(D1,D2,D3,D4)がダイオードブリッジを形成し、当該ダイオードブリッジの正ノードがトランジスタ(V5)のコレクタおよびダイオード(D5)のアノードに接続され、ダイオード(D5)のカソードがエネルギー蓄積キャパシタ(C)の正端子に接続され、ダイオードブリッジ(D1,D2,D3,D4)の負ノードがトランジスタ(V5)のエミッタおよびダイオード(D6)のカソードに接続され、ダイオード(D6)のアノードがエネルギー蓄積キャパシタ(C)の負端子に接続されている、ことを特徴とする装置。
【請求項2】
インバータの出力は絶縁変圧器を持たない公益施設網に接続されている、ことを特徴とする請求項1に記載のインバータ装置。
【請求項3】
リアクトル(L1)の端子2は、電力系統(U)の端子1に接続されている、ことを特徴とする請求項1に記載のインバータ装置。
【請求項4】
リアクトル(L2)の端子2は、電力系統(U)の端子2および接地端子Fに接続されている、ことを特徴とする請求項3に記載のインバータ装置。
【請求項5】
PVアレイ(P)がエネルギー蓄積キャパシタ(C)に接続され、または/かつ、リアクトル(L1,L2)の端子2が公益施設網(U)の端子1および2に接続されている、ことを特徴とする請求項1に記載のインバータ装置。
【請求項6】
変調出力電圧は二つのリアクトル(L1,L2)によってフィルタリングされて高調波含有率の低い正弦波電流となり、エネルギー蓄積キャパシタ(C)から公益施設網へとエネルギーが流れる、ことを特徴とする請求項1に記載のインバータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変圧器を持たない単相の公益施設網(utility network)へのDCエネルギーの供給に関する。また、本発明は、PVアレイのエネルギー変換に関する。
【背景技術】
【0002】
直流電流エネルギーを変換して絶縁変圧器を持たない公益施設網に供給するのにHブリッジがよく用いられることは周知の通りである。
【0003】
Hブリッジを制御するためのゲート制御パターンにはさまざまなものがあるが、PVアプリケーションについては対グランドのPVアレイ浮遊容量のせいで有効な解決策には限りがある。通常、正の半周期においてPWM信号で一方の対角(diagonal)をゲート制御する一方で他方の対角を規制し、負の半周期においてPWM信号で他方の対角をゲート制御する一方で先の対角を規制する方法がとられる。これら二つの対角は公益施設網の半周期ごとに役割を変える。
【0004】
そのようなゲート制御システムは、AC電流が途切れていないときにHブリッジの出力に二つの電圧レベルのみ、すなわち正または負の電圧を供給することができることも周知の通りである。
【0005】
このタイプの回路装置および制御方法には、Hブリッジの出力のL,CまたはL,C,Lフィルタがマルチレベルシステムと比較して大きいというデメリットがある。
【0006】
さらに、PWM周期ごとに不要なエネルギーが出力フィルタ回路とHブリッジのDCフィルタのキャパシタとの間で行き来するという欠点があることを言わざるを得ない。
【0007】
そのようなゲート制御システムは、AC電流が途切れていないときにHブリッジの出力に二つの電圧レベルのみ、すなわち正または負の電圧を供給することができることも周知の通りである。
【0008】
このタイプの回路装置および制御方法には、Hブリッジの出力のL,CまたはL,C,Lフィルタがマルチレベルシステムと比較して大きいというデメリットがある。
【0009】
さらに、PWM周期ごとに不要なエネルギーが出力フィルタ回路とHブリッジのDCフィルタのキャパシタとの間で行き来するという欠点があることを言わざるを得ない。
従来技術:
これら不利な条件を克服するための試みがある。
【0010】
次の特許は従来技術を表す:WO2007/048420A1およびいわゆるH5およびHERICの解決法は特許によって保護されており、これらはIntersolar Exhibitonおよびセミナーで紹介され、分析された。
【発明の概要】
【0011】
我々の発明において、我々は簡単なスイッチ装置を提供することを試みた。当該装置は、既知のデメリットをなくし、また少ない部品点数で効率よく経済的解決法を提供するものである。
【0012】
この新アイデアは、従来のHブリッジ単相インバータに第5の半導体スイッチング素子を追加するものである。これにより、半導体Hブリッジの両対角がオフ状態のときに、3タイプのインバータ出力電圧が可能となり、PWM変調中に出力フィルタはエネルギーの一部を公益施設網に供給し、一部を蓄積することができる。また、この解決法は、全高調波歪み(THD)が同じである小型化されたフィルタを用いれば足りる。
【0013】
我々の発明に係る新たな回路装置は、PVアレイの経年劣化およびEMC問題をなくしてPVアレイからいわゆる穏やかなDCバスを提供することができる。この新たな回路装置により、AC側のフィルタが削減され、上記の不要なエネルギーの行き来がなくなり、エネルギー変換効率が高まる。
【0014】
我々はまた、ゼロ電圧スイッチング(ZVS)モードで用いられる半導体スイッチング素子の一部がスイッチングロスを大幅に低減することがわかった。
【0015】
我々は、我々の発明に係る新たな回路が例えばHERICおよびH5トポロジーと比較して電流方向不感型の潮流用フリーホイール回路を達成したことは大きな利点の一つであると認識している。そのため、この解決法は、低電圧公益施設網を供給するインバータは電力系統管理をサポートする無効電力も提供できなければならないという2010年7月に施行された欧州連合の要求をもたらしている。
【0016】
上記のように、絶縁変圧器を持たない単相公益施設網へのDC電圧変換が我々の発明の主題である。これは、小売網を供給するソーラーパネルに有利に利用される。この解決策はスイッチング素子をほとんど持たず、高効率であり、「穏やかな」DCバスを有し、さらに、必要な無効電力も同時に確実にもたらして優れたパフォーマンスを発揮することができるからである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】PVエネルギーを変換して公益施設網に供給する回路装置を示す図
【
図2】およそネットワーク2周期分の半導体スイッチ(V1,V2,V3,V4,V5)のゲート制御を示す図
【
図3】PWM変調1周期における半導体スイッチV2,V3,V5のゲート制御を示す図
【
図4】PWM変調1周期における半導体スイッチV1,V4,V5のゲート制御を示す図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、発明に係る図面に基づいて回路レイアウトおよびその動作方法を説明する。
【0019】
図1に示したように、当該インバータ装置はPVアレイを備えている。
【0020】
インバータの出力は絶縁変圧器を持たない公益施設網に接続されている。
【0021】
我々の回路装置は、エネルギー蓄積キャパシタCの+端子、トランジスタV1,V3のコレクタ、およびダイオードD5のカソードに+端子が接続されたPVアレイPを備えている。
【0022】
PVアレイPの−端子は、エネルギー蓄積キャパシタCの−端子、トランジスタV2,V4のエミッタ、およびダイオードD6のアノードに接続されている。
【0023】
トランジスタV1のエミッタ、トランジスタV2のコレクタ、ダイオードD1のアノード、およびダイオードD2のカソードは、リアクトルL2の端子1に接続されている。
【0024】
ダイオードD1,D3のカソードおよびダイオードD5のアノードは、トランジスタV5のコレクタに接続されている。
【0025】
トランジスタV3のエミッタ、ダイオードD3のアノード、ダイオードD4のカソード、およびトランジスタV4のコレクタは、リアクトルL1の端子1に接続されている。
【0026】
トランジスタV5のエミッタおよびダイオードD2,D4のアノードは、ダイオードD6のカソードに接続されている。リアクトルL1の端子2は、電力系統Uの端子1に接続されている。
【0027】
リアクトルL2の端子2は、電力系統Uの端子2および接地端子Fに接続されている。
【0028】
図1に示した回路図の動作は次の通りである。
【0029】
PVアレイPはエネルギー蓄積キャパシタCを絶えず充電する。グランドに対して正の半周期においてトランジスタV2およびV3のゲート制御は
図2に示したように変調される。
図2および3に示したように、トランジスタV2およびV3がオフ状態にあるとき、トランジスタV5のゲートはオン状態なる。変調出力電圧はリアクトルL1およびL2によってフィルタリングされて高調波含有率の低い正弦波電流となり、エネルギー蓄積キャパシタCから公益施設網Uへとエネルギーが流れる。
【0030】
グランドに対して負の半周期においてトランジスタV1およびV4のゲート制御は
図2に示したように変調される。
図2および4に示したように、トランジスタV1およびV4がオフ状態にあるとき、トランジスタV5のゲートはオン状態なる。変調出力電圧はリアクトルL1およびL2によってフィルタリングされて高調波含有率の低い正弦波電流となり、エネルギー蓄積キャパシタCから公益施設網Uへとエネルギーが流れる。
【0031】
図2に示したように、一定周波数でPWM変調が行われ、注入電流および電力が変調度によって制御される。
【0032】
図3に示したように、トランジスタV2およびV3のオンおよびオフ位置は互いにわずかにずれており、これにより、トランジスタV3およびV5のスイッチングロスを低減することができる。
【0033】
また、トランジスタV1およびV4のオンおよびオフ位置も互いにわずかにずれており、これにより、トランジスタV1およびV5のスイッチングロスを低減することができる。
【0034】
ずれをどの程度の時間にするかは、どのようなスイッチング特性の半導体デバイスを適用するかに依る。
【0035】
電流が途切れてゼロ電流レベルを横切るとき、トランジスタV5はオフ状態にされる。
【0036】
必要な無効電力はすべてのスイッチングデバイスのスイッチングパターンの角度のずれによって生成され、公益施設網Uの電圧に連動する。
【0037】
ずれ角度の符号および値ならびにインバータの出力電圧によって無効電力の振幅および符号(進みまたは遅れ)が決まる。
【符号の説明】
【0038】
+ 正
− 負
I. ハーフブリッジ
II. ハーフブリッジ
P ソーラーアレイ
C エネルギー蓄積キャパシタ
V1,V2,V3,V4,V5 トランジスタ
D1,D2,D3,D4,D5,D6 ダイオード
L1,L2 リアクトル
U 公益施設網
F グランド