特許第5658423号(P5658423)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5658423水産物の養殖装置、およびそれに使用する人工海藻
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5658423
(24)【登録日】2014年12月5日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】水産物の養殖装置、およびそれに使用する人工海藻
(51)【国際特許分類】
   A01K 63/00 20060101AFI20150108BHJP
   A01K 63/04 20060101ALI20150108BHJP
   A01K 61/00 20060101ALI20150108BHJP
【FI】
   A01K63/00 C
   A01K63/04 A
   A01K61/00 317
   A01K61/00 J
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-528758(P2014-528758)
(86)(22)【出願日】2014年1月16日
(86)【国際出願番号】JP2014050650
【審査請求日】2014年7月14日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514149440
【氏名又は名称】IMTエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100060759
【弁理士】
【氏名又は名称】竹沢 荘一
(74)【代理人】
【識別番号】100087893
【弁理士】
【氏名又は名称】中馬 典嗣
(72)【発明者】
【氏名】野原 節雄
(72)【発明者】
【氏名】伊熊 公章
【審査官】 木村 隆一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−023914(JP,A)
【文献】 特開平10−080237(JP,A)
【文献】 実開平06−077897(JP,U)
【文献】 特開平10−234253(JP,A)
【文献】 特開昭58−190337(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 61/00−63/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水産物養殖用の水槽と、
前記水槽の一端に設けられ、水槽内の飼育水を集水する集水手段と、
前記水槽の他端に設けられ、水槽内の飼育水の水面より高い水位の飼育水を保持しうる造波槽、およびこの造波槽の一部に設けられ、適時に開くことにより、飼育水の水面より高い水位の造波槽内の飼育水を水槽内に供給して、水槽内の飼育水を波立たせる造波ゲートを備える造波装置と、
前記水槽の少なくとも一方の側縁に沿って、前記集水手段から造波槽に至るように設けられた復帰流路と、
前記復帰流路内に設けられ、前記集水手段により集水された飼育水を前記造波槽に至るまでの間に浄化する浄化手段と、
前記集水手段により集水された飼育水を、前記復帰流路を介して、前記造波槽の水位まで汲み上げるポンプとを備え、
前記浄化手段を、前記復帰流路内に、単位浄化槽と清掃用エリアとが順次交互に配設されるようにしてそれらの間を仕切るとともに、前記復帰流路に沿って互いに適宜の間隔をもって設けられた複数の仕切板と、各単位浄化槽内における飼育水内に浮遊するように配設された、比重が1または1に近いろ材とを備えるものとし、前記各単位浄化槽の上流側の仕切板の上部に、前記ろ材の通過は阻止し、飼育水の通過を可能とする通水口を設け、前記各単位浄化槽の下流側の仕切板の下部に、前記ろ材の通過は阻止し、飼育水の通過を可能とする通水口を設け、前記各清掃用エリアにおいては、上流側の仕切板の下部に前記通水口が位置し、下流側の仕切板の上部に前記通水口が位置するようにしたことを特徴とする水産物の養殖装置。
【請求項4】
水槽内の飼育水内に、縮れ状とした複数の横紐条の中間部を、縦紐条に織り込んだものよりなる人工海藻を吊支したことを特徴とする請求項1記載の水産物の養殖装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エビや稚魚等の水産物の養殖装置、およびそれに使用する人工海藻に関する。
【背景技術】
【0002】
砂に潜ることのない食用エビ等の養殖方法および装置としては、飼育に適したエビプラント飼育水、およびそれを用いたエビの養殖方法(例えば、特許文献1参照)、水槽内の沈殿物を効果的に排出するようにした装置、およびそれを用いた水産物養殖装置(例えば、特許文献2参照)、補給水を最小限とした循環型の水産物の養殖装置(例えば、特許文献3参照)等が提供されている。
【0003】
また、人工海藻としては、下端が養殖水槽底面に達するとともに、波を受けて揺動するように吊るされた複数の海藻状の紐体としたもの(例えば、上記特許文献3参照)、魚類の産卵礁に適したもの(例えば、特許文献4参照)、海底の激しい凹凸や急な傾斜にもよく適用しうるようにしたもの(例えば、特許文献5参照)等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4635172号公報
【特許文献2】特許第4242875号公報
【特許文献3】特許第3955192号公報
【特許文献4】特開2002−045082号公報
【特許文献5】特開2003−158947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1〜3、特に特許文献3に記載されている水産物養殖装置においては、水槽の一端に、集水部、造波装置を伴う給水部、水槽内の塵を除去するマイクロスクリーン、浄化槽等が集約して設けられているため、装置全体の専有面積を小さくでき、かつ設備全体を効率よく管理、制御しうる利点がある反面、水槽の他端側に浄化された飼育水を行き渡らせにくい点や、水槽の他端側の塵をより有効に回収できるようにする等の課題が残されている。
また、浄化槽が集約して設けられているので、飼育水を瀘過するのに時間がかかり、それを補うためには、浄化槽を大型化しなければならない等の課題もある。
【0006】
特許文献3や特許文献5に記載されている紐状の人工海藻では、稚エビがこの紐状の人工海藻にしがみつこうとするため、それが適度の運動となって、身が引き締まり、身質を良好なものにできる反面、エビがしがみつきにくいため、産卵ができず、産卵したとしても、卵が人工海藻から落下して、水中内の塵や残滓とともに除去されるおそれがあるため、産卵には適さないという課題がある。
特許文献4に記載されている人工海草は、葉状体が直線の松葉状をなし、産卵した卵が付着し難く、また海中に沈めて、天然のハタハタやニシン等の魚類の産卵に適するように設計されているので、養殖槽内におけるエビの産卵には適さない。
さらに、モール部をループ状またはスパイラル状とした人工海藻もあるが、これによると、エビの足や体がモール部に絡まり、そこから脱出できなくなって死滅したり、足がちぎれたりするおそれがある。
【0007】
本発明は、従来の技術が有する上記のような問題点に鑑み、水槽内に、浄化された飼育水をより均一に行き渡らせることができるともに、浄化手段の面積や浄化時間等を十分に確保することができ、しかも水産物の育成に適した環境を提供できるようにした水産物の養殖装置、およびそれに使用する、エビ等の水産物の養殖に好適な人工海藻を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
(1) 水産物の養殖装置において、水産物養殖用の水槽と、前記水槽の一端に設けられ、水槽内の飼育水を集水する集水手段と、前記水槽の他端に設けられ、水槽内の飼育水の水面より高い水位の飼育水を保持しうる造波槽、およびこの造波槽の一部に設けられ、適時に開くことにより、飼育水の水面より高い水位の造波槽内の飼育水を水槽内に供給して、水槽内の飼育水を波立たせる造波ゲートを備える造波装置と、前記水槽の少なくとも一方の側縁に沿って、前記集水手段から造波槽に至るように設けられた復帰流路と、前記復帰流路内に設けられ、前記集水手段により集水された飼育水を前記造波槽に至るまでの間に浄化する浄化手段と、前記集水手段により集水された飼育水を、前記復帰流路を介して、前記造波槽の水位まで汲み上げるポンプとを備えることを特徴とする水産物の養殖装置とを備えるものとする。
【0009】
このような構成によると、集水手段が水槽の一端に、かつ造波装置が水槽の他端に、互いに離間させて設けられ、造波装置によって形成された波により、水槽内の飼育水が一箇所に停滞することなく、漸次集水手段の方に流され、さらに集水手段から、浄化手段が設けられた復帰流路および造波槽を通って、水槽の他端側に戻されて、再循環させられるので、水槽内に、浄化された飼育水をより均一に行き渡らせることができ、しかも浄化手段を、経路の長い復帰流路に設けることができるので、浄化手段の面積や浄化時間等を十分に確保することができる。
【0010】
(2) 上記(1)項において、浄化手段を、復帰流路内に適宜の間隔をもって設けられ、飼育水は通水可能、かつろ材は通過不能とした複数の仕切板と、互いに隣接する1対の仕切板間に形成された単位浄化槽内における飼育水内に浮遊するように配設された、比重が1または1に近いろ材とを備えるものとする。
【0011】
このような構成によると、ろ材により、復帰流路内の飼育水が順次ろ過され、飼育水の浄化が促進される。
しかも、復帰流路は経路が長いので、それに沿って、複数の仕切板を適宜の間隔をもって設け、それによって仕切られた各区画に、ろ材をそれぞれ配設することにより、ろ材の配設面積を大とすることができるとともに、飼育水が集水手段から造波槽に至るまでの時間を浄化時間とすることができ、浄化時間を十分に確保することができる。
【0012】
(3) 上記(1)項において、浄化手段を、復帰流路内に、単位浄化槽と清掃用エリアとが順次交互に配設されるようにしてそれらの間を仕切るとともに、復帰流路に沿って互いに適宜の間隔をもって設けられた複数の仕切板と、各単位浄化槽内における飼育水内に浮遊するように配設された、比重が1または1に近いろ材とを備えるものとし、前記各単位浄化槽の上流側の仕切板の上部に、前記ろ材の通過は阻止し、飼育水の通過を可能とする通水口を設け、前記各単位浄化槽の下流側の仕切板の下部に、前記ろ材の通過は阻止し、飼育水の通過を可能とする通水口を設け、前記各清掃用エリアにおいては、上流側の仕切板の下部に前記通水口が位置し、下流側の仕切板の上部に前記通水口が位置するようにする。
【0013】
このような構成によると、復帰流路内を流れる飼育水の流通経路が上下に蛇行し、直線状とした場合よりも長い流通経路を形成することができ、飼育水とろ材との接触の機会を大とすることができるとともに、浄化時間を十分に確保することができる。
(4) 上記(1)〜(3)項のいずれかにおいて、水槽内の飼育水内に、縮れ状とした複数の横紐条の中間部を、縦紐条に織り込んだものよりなる人工海藻を吊支する。
【0014】
このような構成によると、人工海藻における縮れ状とした複数の横紐条に、エビその他の水産物の隠れ家や産卵場所として好適な部分が多数形成され、水産物の育成に適した環境を提供することができる。
【0015】
(5) 水産物養殖用の飼育水等内に浸漬して、水産物の隠れ家または産卵場所を提供する人工海藻において、縮れ状とした複数の横紐条の中間部を、縦紐条に織り込んだものとする。
【0016】
このような構成によると、この人工海藻を、飼育水や海水等に浸漬しておくだけで、縮れ状とした複数の横紐条に、エビその他の水産物の隠れ家や産卵場所として好適な部分が多数形成され、水産物の育成に適した環境を提供することができる。
【0017】
(6) 上記(5)項において、各横紐条を、複数の合成樹脂繊維を撚ることにより、1〜5ミリの単位で角度が異なるか、捩れるか、またはカールする縮れ状とする。
【0018】
このような構成によると、1本の横紐条、または複数本の横紐条の組み合わせたものに、水産物の隠れ家や産卵場所として好適な部分を多数形成することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、水槽内に、浄化された飼育水をより均一に行き渡らせることができるともに、浄化手段の面積や浄化時間等を十分に確保することができ、しかも水産物の育成に適した環境を提供できるようにした水産物の養殖装置、およびそれに使用する、エビ等の水産物の養殖に好適な人工海藻を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の水産物の養殖装置の一実施形態の平面図である。
図2】同じく、左側部の斜視図である。
図3】同じく、右側部の斜視図である。
図4図1のIV−IV線に沿う拡大縦断正面図である。
図5図1のV−V線に沿う拡大縦断側面図である。
図6】人工海藻の拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の水産物の養殖装置の一実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の水産物の養殖装置の一実施形態の平面図、図2は、同じく、左側部の斜視図、図3は、同じく、右側部の斜視図である。
この水産物の養殖装置は、飼育水1(図4参照)を収容した水産物養殖用の水槽2と、水槽2の一端に設けられ、水槽2内の飼育水1を集水する集水手段3と、水槽2の他端に設けられ、水槽2内の飼育水1の水面より高い予め定めた設定水位の飼育水1を保持しうる造波槽4、およびこの造波槽4の一部に設けられ、適時に開くことにより、設定水位の造波槽4内の飼育水1を水槽2内に供給して、水槽2内の飼育水1を波立たせる造波ゲート5を備える造波装置6と、水槽2の少なくとも一方の側縁に沿って、集水手段3から造波槽4に至るように設けられた復帰流路7と、復帰流路7内に設けられ、集水手段3により集水された飼育水1を造波槽4に至るまでの間に浄化する浄化手段8と、集水手段3により集水された飼育水1を、復帰流路7を介して、造波槽4の設定水位まで汲み上げるポンプ9とを備えている。
【0022】
水槽2は、外周がコンクリートからなる縁石10によって囲まれた、左右方向に長い平面視長方形をなし、底部の前後方向の中央には、左右方向を向く樋状の沈殿物堆積溝11が設けられている。
この沈殿物堆積溝11には、特許文献2に記載されているような、スクレーパーを有する往復移動式の沈殿物排除装置が設けられているが、これは本発明に直接関係しないため、図示および詳細な説明は省略する。
【0023】
水槽2における沈殿物堆積溝11の前後には、そこから前後に上向き傾斜して、縁石10の下端に至る傾斜底面2a、2aが形成されている。
【0024】
図2に示すように、水槽2における左端壁2bは、倒立二等辺三角形状をなし、その中央における沈殿物堆積溝11の上方には、方形の取水口12が設けられ、その開口部には、エビ等の水産物が取水口12に進入するのを防止するとともに、飼育水1中の粒度の大きい固形物が取水口12内に侵入するのを阻止するプレスクリーン13が、着脱自在に設けられている。
【0025】
水槽2の左端壁2bの外側には、取水口12に連通する集水槽14が設けられている。
集水槽14には、上記復帰流路7の基端部が接続されている。
【0026】
取水口12、プレスクリーン13、集水槽14等により、集水手段3が形成されている。
【0027】
復帰流路7の基端部には、マイクロスクリーン15が設けられている。
このマイクロスクリーン15は、特許文献3に記載されているものと同様のもので、図示は省略してあるが、1対のプーリ間に掛け回した無端ベルト状のフィルタを、復帰流路7に対して斜めに倒伏させて配置し、モータによってフィルタを無端回走させ、フィルタに吸着した塵を、噴水装置により取り除いて、それを回収装置に送給するようになっており、集水槽14から復帰流路7に流入する飼育水1から、プレスクリーン13によって除去しきれなかった、水産物の排泄物、脱皮殻、死骸、餌の食べ残し等の粒度の小さい塵を除去することができるようになっている。
このマイクロスクリーン15は、集水槽14内に設けることもある。
【0028】
集水槽14の周囲には、掃除ピット16および最終排水槽17が設けられている。
図示は省略してあるが、水槽2内のプレスクリーン13の内側には、下端が沈殿物堆積溝11内に位置するようにした円筒状のエアリフトが設けられ、沈殿物排除装置によって、沈殿物堆積溝11の端部に掻き寄せるせられた上記のような塵を、エアリフトの下端から噴出するエアにより、飼育水とともに吹き上げて、最終排水槽17に送給するようになっている。
図示は省略してあるが、最終排水槽17に送給されたり、その他の部位で外部に排出されたのと同量の飼育水1が、飼育水補給手段より、手動操作または自動装置により、水槽2内に補給されるようになっている。
【0029】
図3に示すように、水槽2における右端壁2cの上部には、波受台2dをなす水平の段部が形成されており、その下方は、左端壁2bと同様に、倒立二等辺三角形状をなしている。
【0030】
水槽2の右端壁2cの外側には、上記造波槽4と造波ゲート5とを備える造波装置6が設けられている。
造波槽4には、上記復帰流路7の先端部が接続されている。
しかし、復帰流路7の先端部における飼育水1の水位は、造波槽4の設定水位より低いため、復帰流路7の先端部には、その部分の飼育水1を造波槽4の設定水位まで汲み上げる上記ポンプ9が設けられている。
【0031】
ポンプ9により、復帰流路7の先端部における飼育水1が造波槽4内に漸次汲み上げられ、造波槽4内の飼育水1の水位が設定水位に達すると、そのことを水位センサ(図示略)が感知して、造波ゲート5が、図3に2点鎖線で示すように開かれ、造波槽4内における設定水位に達した飼育水1が、造波ゲート5から一気に水槽2内に流下し、水槽2内に飼育水1が供給されるとともに、水槽2内の飼育水1が波立たされる。
【0032】
造波槽4内の飼育水1の水位が予め定めた低い水位に達するか、または造波槽4内が空になると、そのことを別の水位センサ(図示略)が感知して、造波ゲート5が閉じられる。
【0033】
造波装置6には、上記のような作用を行うための複数の水位センサや、造波ゲート5を開閉させるための開閉機構(いずれも図示略)等が設けられている。
【0034】
図4に示すように、復帰流路7内には、互いに離間する2個の仕切板18、19を1対とする複数対の仕切板18、19が、適宜の清掃用エリア20を隔てるようにして、復帰流路7と直交するように設けられている。
【0035】
1対の仕切板18、19間に形成された単位浄化槽21内には、比重を1または1に近い値としたろ材22が、飼育水1内に浮遊するようにして設けられ、復帰流路7の底部に設けたブロワ23、23により供給されるエアにより、攪拌させられるようになっている。
【0036】
ろ材22としては、例えば、関西化工株式会社製商品名「バイオフロンティア」発泡担体(ポリプロピレン製、比表面積800m2/m3、比重0.98)に好気性バクテリアを繁殖させたものを使用するのが好ましいが、その他の物を使用することもできる。
【0037】
1対の仕切板18、19のうち、上流側の一方の仕切板18の上部には、網目の寸法をろ材22の外形寸法より小さくしたメッシュ、または多孔板を設けた通水口24が設けられ、下流側の他方の仕切板19の下部には、同様に網目の寸法をろ材22の外形寸法より小さくしたメッシュ、または多孔板を設けた通水口25が設けられ、仕切板18の上部の通水口24から単位浄化槽21内に流入した飼育水1が、ブロワ23より供給されるエアにより、攪拌させられた後、仕切板19の下部の通水口25を通って、単位浄化槽21から清掃用エリア20へ流出し、飼育水1とろ材22との接触時間を長くできるようになっている。
【0038】
清掃用エリア20においては、上流側の単位浄化槽21における仕切板19の下部の通水口25を通って流入した飼育水1が上方に向かって流れ、下流側の単位浄化槽21における仕切板18の上部の通水口25を通って流出するまでの間に、飼育水1内に含まれる固形分が復帰流路7の底部に堆積する。
この堆積物は、適時に、ゴミ取りネット、またはバキュームポンプ(いずれも図示略)等により除去される。
【0039】
復帰流路7内に設けられた、このような複数対の仕切板18、19、その間に形成された多数の単位浄化槽21および清掃用エリア20、各単位浄化槽21内に配設されたろ材22およびブロワ22等により、浄化手段8が形成されている。
この浄化手段8は、多数の単位浄化槽21を経路の長い復帰流路7内に並べて設けることができるので、浄化部分の面積や浄化時間等を十分に確保することができる。
【0040】
図5に示すように、水槽2の前後の縁石10、10には、前後方向を向く複数の支持杆(その1個のみを図示する)26が、左右方向に適宜の間隔をおいて架設されている。なお、この支持杆26は、ワイヤ、ロープ、紐等により形成することもできる。
【0041】
各支持杆26には、複数のフロート27が、紐28をもって吊支され、各フロート27には、図6に拡大して示すようなモール状の人工海藻29が、飼育水1内に浸漬されるようにして吊支されている。
【0042】
人工海藻29は、縮れ状とした複数の横紐条30の中間部を、縦紐条31に織り込んだものよりなっている。
横紐条30は、複数のナイロン繊維またはその他の合成樹脂繊維を撚ることにより、1〜5ミリの単位で角度が異なるか、捩れるか、またはカールする縮れ状としたもので、その縮れ状とした複数の横紐条30に、エビその他の水産物の隠れ家や産卵場所として好適な部分が多数形成され、水産物の育成に適した環境を提供することができる。
【0043】
また、縮れ状とした複数の横紐条30に、飼育水1内に漂っている汚れが吸着され、この汚れが溜まっている部分に硝化細菌が増殖し、この硝化細菌が、水槽2内の水質浄化に寄与することができる。
【0044】
横紐条30の長さは、用途に応じて適宜変更可能であるが、20〜300mm、好ましくは200〜250mmとするのが適当である。
【0045】
横紐条30を縮れ状とするため、温風を吹き付けるか、または加熱したヒーターに接触させることもある。
【0046】
縦紐条31は、複数のポリエステル製またはその他の合成樹脂製の紐条を、公知の組紐状に組んだものよりなり、その組紐状に組む途中で、縮れ状とした複数の横紐条30を定期的に織り込んで、人工海藻29が形成されている。
【0047】
縦紐条31の長さは、その下端が水槽2の傾斜底面2aにわずかに接触するように、吊支される場所に応じて定められる。
フロート27が、造波装置6によって生じた波により、昇降させられたり、左右方向に揺動させられることにより、人工海藻29の下端部が、水槽2の傾斜底面2aを払拭し、傾斜底面2aに堆積した水産物の排泄物、脱皮殻、死骸、餌の食べ残し等の塵を、傾斜底面2aに沿って、沈殿物堆積溝11に向かって掃き落とす作用を生じる。
【0048】
この水産物の養殖装置は、例えば、砂に潜ることのないエビ(例えば、バナメイ、ブルーシュリンプ等)の養殖に関しては、飼育水1として、特許文献1に記載されているようなエビプラント飼育水を使用し、水槽2内に、その飼育水1と養殖しようとする上記エビとを収容するとともに、その飼育水1を、集水手段3より、復帰流路7と造波装置6とを順次を通って、水槽2内に繰り返し循環させて養殖する。
【0049】
集水手段3においては、プレスクリーン13により、エビ等の水産物が取水口12に進入するのが防止されるとともに、水槽2内の飼育水1は、粒度の大きい塵が除去された状態で、取水口12より集水槽14内に流入し、次いで、マイクロスクリーン15により、粒度の細かい塵も除去された後、復帰流路7へ送られる。
【0050】
復帰流路7においては、飼育水1は、複数の単位浄化槽21と清掃用エリア20とを順次交互に流通し、各単位浄化槽21においては、上流側の仕切板18の上部に設けられ通水口24から流入して、下流側の仕切板19の下部に設けられた通水口25から流出するまでの間に、ブロワ23より噴出するエアにより、ろ材22とともに攪拌され、ろ材22と接触することにより、漸次浄化される。
【0051】
清掃用エリア20おいては、飼育水1は、上流側の仕切板19の下部に設けられた通水口25から流入して、下流側の仕切板18の上部に設けられ通水口24から流出するまでの間に、上向きに流れ、その間に、飼育水1内に含まれる固形分が復帰流路7の底部に堆積し、下流側の仕切板18の上部に設けられ通水口24から次の単位浄化槽21へ流出する飼育水1内に固形分が含まれるのを防止することができる。
【0052】
復帰流路7の先端部に至った飼育水1は、そこでポンプ9により汲み上げられて、造波装置6における造波槽4に供給される。
【0053】
造波装置6においては、ポンプ9により汲み上げられた造波槽4内の水位が設定水位に達すると、そのことを水位センサ(図示略)が感知して、造波ゲート5が、図3に2点鎖線で示すように開かれ、造波槽4内における設定水位に達した飼育水1が、造波ゲート5から一気に水槽2内に流下し、水槽2内に飼育水1が供給されるとともに、水槽2内の飼育水1が波立たされる。
【0054】
水槽2内においては、造波装置6から供給される飼育水1により、水槽2内の飼育水1が波立たされる。
この波は、水槽2の他端から一端の集水手段3に向かって進行するので、水槽2内の飼育水1は一箇所に停滞することなく、漸次集水手段3の方に流される。
また、この波によって、フロート27が昇降させられたり、左右方向に揺動させられることにより、人工海藻29の下端部が、水槽2の傾斜底面2aを払拭し、傾斜底面2aに堆積した塵は、傾斜底面2aに沿って、沈殿物堆積溝11に向かって掃き落とされる。
【0055】
沈殿物堆積溝11に堆積した沈殿物は、図示を省略した往復移動式の沈殿物排除装置により、水槽2の一端側に掻き寄せるせられ、そこで、図示を省略したエアリフトにより吸い上げられて、最終排水槽17に送給される。
【0056】
水槽2内においては、飼育水1内に浸漬された人工海藻29における複数の横紐条が縮れ状となっていることにより、その縮れた部分の各所に、エビの隠れ家または産卵場所に好適な部分が多数形成され、エビの養殖に優れた環境を提供することができる。
【0057】
以上から明らかなように、本発明によると、集水手段3が水槽2の一端に、かつ造波装置6が水槽2の他端に、互いに離間させて設けられ、造波装置6によって形成された波により、水槽2内の飼育水1が一箇所に停滞することなく、漸次集水手段3の方に流され、さらに集水手段3から、浄化手段8が設けられた復帰流路7および造波槽4を通って、水槽2の他端側に戻されて、再循環させられるので、水槽2内に、浄化された飼育水1をより均一に行き渡らせることができ、しかも浄化手段8を、経路の長い復帰流路7に設けることができるので、浄化手段8の面積や浄化時間等を十分に確保することができる。
【0058】
また、水槽2内の飼育水1内に、縮れ状とした複数の横紐条30の中間部を、縦紐条31に織り込んだものよりなる人工海藻29を吊支してあるので、人工海藻29における縮れ状とした複数の横紐条30に、エビその他の水産物の隠れ家や産卵場所として好適な部分が多数形成され、水産物の育成に適した環境を提供することができる。
【0059】
本発明は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱することなく、例えば、次のような幾多の変形した態様での実施が可能である。
(a) 浄化手段8を、復帰流路7内に適宜の間隔をもって設けられ、かつ飼育水1のみを通水可能とし、ろ材22を通過不能とした、例えば一部または全部をネットもしくは多孔質板等により形成した複数の仕切板と、互いに隣接する1対の仕切板間に形成された単位浄化槽内における飼育水1内に浮遊するように配設された、比重が1または1に近いろ材22とを備えるものとする。
すなわち、清掃用エリア20を省略して実施することもできる。
(b) 水槽2内の飼育水1に、高濃度酸素水を供給する供給手段を設ける。
(c) 図示を省略したスクレーパーを有する往復移動式の沈殿物排除装置に代えて、水中ベルトコンベヤ(図示略)を沈殿物堆積溝11内に配設し、これによって、沈殿物堆積溝11内に堆積した塵を、水槽2の一端の集水手段3に向かって送給するようにする。
(d) フロート27を省略し、人工海藻29自体を、水槽2内の飼育水1の波によって揺動させるようにする。
(e) 人工海藻29における横紐条30を、縦紐条31の中心から、十字状、またはその他の複数の放射方向に進出するものとする。
(f) 復帰流路7を、水槽2の一端の集水手段3から水槽2の前側の縁に沿うものと、同じく後側の縁に沿うものとの2系統に分流し、それらを水槽2の他端において合流させて、その合流部分から、飼育水1をポンプ9により、造波槽4に汲み上げるようにする。
(g) 復帰流路7内の飼育水1の水位を、集水槽14内の飼育水1の水位より高くし、集水槽14内の飼育水1を、ポンプにより汲み上げて、復帰流路7内に供給するようにし、復帰流路7の先端部において、復帰流路7内の飼育水1を、ポンプ9を使用することなく、造波槽4内に流入するようにする。
【産業上の利用可能性】
【0060】
上記実施形態は、本発明を、エビの養殖に適用したものであるが、本発明の水産物の養殖装置は、エビ以外の甲殻類、魚その他の水産物の養殖に適用することができる。
また、本発明の人工海藻は、水産物の養殖装置だけでなく、観賞魚の飼育水槽や観賞用水槽等の飼育水内に浸漬して使用することもできる。
【符号の説明】
【0061】
1 飼育水
2 水槽
2a傾斜底面
2b左端壁
2c右端壁
2d波受台
3 集水手段
4 造波槽
5 造波ゲート
6 造波装置
7 復帰流路
8 浄化手段
9 ポンプ
10 縁石
11 沈殿物堆積溝
12 取水口
13 プレスクリーン
14 集水槽
15 マイクロスクリーン
16 掃除ピット
17 最終排水槽
18、19 仕切板
20 清掃用エリア
21 単位浄化槽
22 ろ材
23 ブロワ
24、25 通水口
26 支持杆
27 フロート
28 紐
29 人工海藻
30 横紐条
31 縦紐条
【要約】
水槽内に、浄化された飼育水をより均一に行き渡らせることができるともに、浄化手段の面積や浄化時間等を十分に確保することができ、しかも水産物の育成に適した環境を提供できるようにした水産物の養殖装置、およびそれに使用する、エビ等の水産物の養殖に好適な人工海藻を提供する。
集水手段3が水槽2の一端に、かつ造波装置6が水槽2の他端に、互いに離間させて設けられ、造波装置6によって形成された波により、水槽2内の飼育水1が一箇所に停滞することなく、漸次集水手段3の方に流され、さらに集水手段3から、浄化手段8が設けられた復帰流路7および造波槽4を通って、水槽2の他端側に戻されて、再循環させられるようにする。
また、人工海藻の横紐条を、縮れ状とする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6