(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
紫外線透過性の基材フィルムと、その片面にレーザー光線の照射により除去可能な平均厚さ0.1〜30μmの紫外線遮蔽性樹脂層とを有するマスクフィルム用部材であって、前記紫外線遮蔽性樹脂層が、
(1)400〜1100nmの全波長域における光線透過率が1.0%以下、反射率が10%以下及びレーザー光線照射前の紫外線透過率が300〜380nmの全波長域において0.1%以下であること、
(2)平均粒子径10〜50nmで、比表面積70〜150m2/gのカーボンブラックと、バインダー樹脂とを含み、かつバインダー樹脂に対して質量基準で、カーボンブラックを1〜2倍量の割合で含む(A)層と、0.5〜1未満倍量の割合で含む(B)層とを有する2層以上の積層構造体であるとともに、前記バインダー樹脂が、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体及び/又はアクリル系樹脂と、該樹脂に対して10〜65質量%のイソシアナート系架橋剤とを含有すること、及び
(3)前記(A)層が基材フィルム側に、前記(B)層が、印刷版側に位置し、かつ該積層構造体表面の算術平均粗さRaが0.05〜3.0μmであり、
さらに、前記紫外線遮蔽性樹脂層の最外側の層表面に、ガラス転移温度Tgが40℃以上のポリエステル系樹脂を樹脂成分とする、厚さ0.05〜0.5μmの保護層を積層してなること、
を特徴とするマスクフィルム用部材。
紫外線透過性の基材フィルムが、紫外線遮蔽性樹脂層側の表面に、サンドブラスト処理を施すか、又はマットコート層を設けることにより、凹凸化処理を施してなるものである、請求項1〜3のいずれかに記載のマスクフィルム用部材。
【背景技術】
【0002】
従来、感光性樹脂層を有する版材の該感光性樹脂層に、所望のパターンを設けたネガフィルムとしてのマスクフィルムを介して露光し、未露光部の感光性樹脂層を洗浄除去して形成したフレキソ版などの感光性樹脂印刷版が知られている。
このような感光性樹脂印刷版の製版に用いられるマスクフィルムは、一般に銀塩を用いた写真方式や、レーザープリンタなどの各種の印刷方式により作製されている。しかしながら、これらの方式においては、大型マスクフィルムには対応できず、例えば新聞などを印刷する場合に用いる大型マスクフィルムが必要な場合には、2枚以上のマスクフィルムを使用し、それらをズレがないようにつなぎ合わせることが行われている。その上、写真方式の場合は、解像度に優れるものの、作業を専用の暗室で行わなければならず、しかも複数の薬品処理が必要であって、作業が煩雑であるなどの欠点を有している。一方、印刷方式の場合は、デジタルデータを用いて直接印刷機により、パターンを作成できるため、作業が簡単ではある。ところが、XANTE社(米国)より提供されるレーザープリンタによる印刷方式では、マスクフィルムの遮光性を上げるため、薬品処理が必要である上、解像度に劣るという欠点がある。
【0003】
他方、製版分野において、レーザー光を用いた技術として、例えば表面に樹脂層を有する版材の該樹脂層の所望個所にレーザー光を照射して該樹脂層を昇華若しくは分解させることにより、印刷用の凹部が設けられた樹脂印刷版(例えば、特許文献1参照)、基材上に電離放射線感応性樹脂層及び電離放射線遮蔽層を有する樹脂版材を用い、まず印刷画像に対応する電離放射線遮蔽層をレーザービームにより除去したのち、その部分に相当する電離放射線感応性樹脂層に電離放射線を照射し、次いで電離放射線感応性樹脂層を現像処理することにより形成された印刷版(例えば、特許文献2参照)などが開示されている。
しかしながら、これらの技術は、マスクフィルムを介さずに、樹脂版材に直接レーザー光を照射して印刷版を製版する技術であって、マスクフィルムを製造する技術ではない。
【0004】
このような状況下で、本発明者らは、先にフレキソ版のような感光性樹脂印刷版などの製版に使用されるマスクフィルムの作製用として好適な、薬品処理を必要とせず、レーザー光によるエッチングで解像度がよく、しかも大型版にも対応できるマスクフィルムを与えるマスクフィルム用部材、このものを用いてマスクフィルムを製造する方法を提案した(例えば、特許文献3参照)。
さらにその改良技術として、紫外線透過性の基材フィルムと、その片面にレーザー光線の照射により消色可能で、かつレーザー光線照射前の紫外線透過率が0.1%以下である厚さ0.1〜30μmの紫外線遮蔽性樹脂層を有し、かつ該紫外線遮蔽性樹脂層が、黒色系顔料として、平均粒子径20〜50nmで、比表面積70〜150m
2/gのカーボンブラックを含むと共に、中心線平均表面粗さRaが0.1〜3μmであるマスクフィルム用部材を提案した(例えば、特許文献4参照)。
【0005】
しかしながら、このマスクフィルム用部材を用いて得られたマスクフィルムは、上記のような好ましい特徴を有するものの、紫外線遮蔽性樹脂層が単層であるため、塗工ムラやピンホールなどの欠陥及び樹脂層表面の擦過等による傷が発生しやすく、レーザー光で消色した部分に、そのまま光透過性のバラツキとして現れる場合や、ピンホール部分が露光される場合があり、精密な製版ができない場合があるなど、必ずしも十分に満足し得るものではなかった。
また、レーザーによる精密な加工を効率よく実施するために、紫外線遮蔽性樹脂層の薄膜化や、生産工程における塗工ムラ及びピンホールなどの欠陥を改善したマスクフィルム用部材が望まれていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような状況下になされたもので、紫外線遮蔽性樹脂層の生産安定性に優れ、耐擦傷性及び基材フィルムとの密着性を維持し、感光性樹脂印刷版などの製版に使用されるマスクフィルムの作製用として好適に用いられる部材であって、低エネルギーのレーザー光で紫外線遮蔽性樹脂層を精密かつ正確に除去した部分に、ムラのない光透過性が得られ、かつ紫外線遮蔽性樹脂層に傷が付きにくく、しかも大型印刷版の作製において、位置決め作業が容易で、かつ版と密着させる際に空気を抱き込みにくく版材に全面が密着しやすいマスクフィルムを与えるマスクフィルム用部材、このものを用いてマスクフィルムを製造する方法及び該マスクフィルムを使用して感光性樹脂印刷版を製造する方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、紫外線透過性の基材フィルムの片面に、黒色系顔料として、特定の性状を有するカーボンブラックを含み、かつ表面粗度が、算術平均粗さRaで所定の範囲にある紫外線遮蔽性樹脂層を設けた部材が、前記目的を達成するためには有効であることを見出すと共に、さらに下記の知見を得た。
前記紫外線遮蔽性樹脂層において、レーザー光線による除去を確実に行うには、カーボンブラックを多く含有させる必要があるが、カーボンブラックの含有量が多すぎると、該樹脂層の硬度が低下して、傷付きやすくなるという問題が生じる。この問題は、紫外線遮蔽性樹脂層を、カーボンブラックの含有量が多い(A)層と、カーボンブラックの含有量が少ない(B)層とを含む2層以上の積層構造体とし、基材フィルム側に前記(A)層、印刷版側に前記(B)層を設けることにより、解決し得ることを見出した。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
[1]紫外線透過性の基材フィルムと、その片面にレーザー光線の照射により除去可能な平均厚さ0.1〜30μmの紫外線遮蔽性樹脂層とを有するマスクフィルム用部材であって、前記紫外線遮蔽性樹脂層が、
(1)400〜1100nmの全波長域における光線透過率が1.0%以下、反射率が10%以下及びレーザー光線照射前の紫外線透過率が300〜380nmの全波長域において0.1%以下であること、
(2)平均粒子径10〜50nmで、比表面積70〜150m
2/gのカーボンブラックと、バインダー樹脂とを含み、かつバインダー樹脂に対して質量基準で、カーボンブラックを1〜2倍量の割合で含む(A)層と、0.5〜1未満倍量の割合で含む(B)層とを有する2層以上の積層構造体である
とともに、前記バインダー樹脂が、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体及び/又はアクリル系樹脂と、該樹脂に対して10〜65質量%のイソシアナート系架橋剤とを含有すること、及び
(3)前記(A)層が基材フィルム側に、前記(B)層が、印刷版側に位置し、かつ該積層構造体表面の算術平均粗さRaが0.05〜3.0μmであり、
さらに、前記紫外線遮蔽性樹脂層の最外側の層表面に、ガラス転移温度Tgが40℃以上のポリエステル系樹脂を樹脂成分とする、厚さ0.05〜0.5μmの保護層を積層してなること、
を特徴とするマスクフィルム用部材。
[2](B)層が、フィラーを1〜15質量%の割合で含有する、上記[1]項に記載のマスクフィルム用部材
、
[3]紫外線透過性の基材フィルムの内部ヘーズ値が、2%以下のものである、上記[1]
又は[2]項に記載のマスクフィルム用部材、
[
4]紫外線透過性の基材フィルムが、紫外線遮蔽性樹脂層側の表面に、サンドブラスト処理を施すか、又はマットコート層を設けることにより、凹凸化処理を施してなるものである、上記[1]〜[
3]項のいずれかに記載のマスクフィルム用部材、
[
5]印刷版と接する層の表面硬度が鉛筆硬度H以上である、上記[1]〜[
4]項のいずれかに記載のマスクフィルム用部材、
[
6]上記[1]〜[
5]項のいずれかに記載のマスクフィルム用部材の紫外線遮蔽性樹脂層に、レーザー光線の照射によりエッチング処理を施し、所望のパターンを形成することを特徴とするマスクフィルムの製造方法、及び
[
7]上記[
6]項に記載の方法で得られたマスクフィルムを用いて製版することを特徴とする感光性樹脂印刷版の製造方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、紫外線遮蔽性樹脂層を、カーボンブラックの含有量が多い(A)層と、カーボンブラックの含有量が少ない(B)層とを含む2層以上の積層構造体とし、基材フィルム側に前記(A)層を、印刷版側に前記(B)層を設けることにより、該紫外線遮蔽性樹脂層の生産安定性に優れ耐擦傷性及び基材フィルムとの密着性を維持し、感光性樹脂印刷版などの製版に使用されるマスクフィルムの作製用として好適に用いられる部材を得ることができる。そして、このマスクフィルム用部材は、低エネルギーのレーザー光で紫外線遮蔽性樹脂層を精密かつ正確に除去した部分に、ムラのない光透過性が得られ、かつ紫外線遮蔽性樹脂層に傷が付きにくく、しかも大型印刷版の作製において、位置決め作業が容易で、かつ版と密着させる際に空気を抱き込みにくく版材に全面が密着しやすいマスクフィルムを与えるなどの長所を有している。さらに該部材を用いてマスクフィルムを製造する方法及び該マスクフィルムを使用して感光性樹脂印刷版を製造する方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず、本発明のマスク用フィルム用部材について説明する。
[マスクフィルム用部材]
本発明のマスクフィルム用部材は、紫外線透過性の基材フィルムと、その片面にレーザー光線の照射による除去可能な厚さ0.1〜30μmの以下に示す特定の性状を有する紫外線遮蔽性樹脂層とを有することを特徴とする。
【0012】
(基材フィルム)
本発明のマスクフィルム用部材に用いられる基材フィルムとしては、紫外線透過性を有するものであればよく、特に制限はないが、感光性樹脂版材を硬化させる活性光線の光源の特性波長(例えば360nmUVランプ)での透過率が20%以上であり、かつ耐熱性、熱寸法安定性及び機械特性の良好なフィルムが好適である。また、より精密な画像を忠実に製版させるためには、当該基材フィルムの内部ヘーズ値(後述の表面凹凸化処理を施す前の基材フィルムのヘーズ値)は小さいほど好ましく、2%以下であることが望ましい。このようなフィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエステルイミド系樹脂、及びこれらの混合樹脂などからなるフィルムを挙げることができる。またこれらのフィルムに易接着処理を施したフィルムも用いることができる。この基材フィルムの厚さは、通常25〜500μm、好ましくは、100〜300μmの範囲で選定される。
なお、上記基材フィルムの内部ヘーズ値(凹凸化処理を施す前の基材フィルムのヘーズ値)は、ヘーズメーターを用い、JIS K 7136に準拠して測定した値である。
【0013】
本発明においては、前記基材フィルムの紫外線遮蔽性樹脂層側の表面に、所望により凹凸化処理を施すことができる。基材フィルムに凹凸化処理を行うことにより、紫外線遮蔽性樹脂層の表面の算術平均粗さRaを所望の値に調整することができる。この凹凸化処理の方法としては、マットコート層を設ける方法やサンドブラスト処理法などが挙げられる。凹凸化処理面の粗さとしては、算術平均粗さRaで0.05〜3.0μm、好ましくは0.1〜1.0μm程度である。
なお、基材フィルムにおける凹凸化処理面の算術平均粗さは、JIS B 601−1994に準拠し、表面粗さ測定機を用いて測定した値である。
【0014】
前記マットコート層は、ガラス転移温度Tgが40℃以上の樹脂に、マット剤としてフィラーを1〜30質量%程度含有させたコーティング剤を、乾燥厚さが0.05〜1.0μm程度になるように塗布、乾燥することにより、形成することができる。
前記樹脂は、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル系樹脂等を使用することができるが、ポリエステル系樹脂が特に好ましい。
前記マット剤として用いられるフィラーとしては、無機系フィラー及び有機系フィラーのいずれも用いることができ、無機系フィラーとしては、例えばシリカ、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、カオリン、チタニア、ジルコニア、マイカ、ガラスビーズなどの各粒子を挙げることができ、有機系フィラーとしては、例えばポリメタクリル酸メチル粒子、ポリカーボネート粒子、ポリスチレン粒子、ポリアクリルスチレン粒子、ポリ塩化ビニル粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子、ベンゾグアナミン/メラミン/ホルムアルデヒド縮合物粒子などを挙げることができる。
これらのフィラーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのフィラーの平均粒径は、通常0.001〜8μm程度、好ましくは0.01〜5μmである。
【0015】
(紫外線遮蔽性樹脂層)
本発明のマスクフィルム用部材において、前記基材フィルムの片面に設けられる紫外線遮蔽性樹脂層は、レーザー光線の照射により除去可能であって、平均の厚さが0.1〜30μmの範囲で選定される。この厚さが0.1μm未満のものは所望の遮蔽性が得られにくいし、30μmを超えると印刷の見切線の精度が悪くなる他、レーザー光によるエッチングに時間がかかり、レーザー光による発熱でマスクフィルムが熱変形するおそれがある。好ましい平均の厚さは0.5〜20μmの範囲であり、特に0.8〜10μmの範囲が好ましい。
【0016】
本発明においては、当該紫外線遮蔽性樹脂層は、前記のバインダー樹脂に対して質量基準で、前記のカーボンブラックを1〜2倍量の割合で含む(A)層と、0.5〜1未満倍量の割合で含む(B)層とを有する2層以上の積層構造体であり、かつ、前記(A)層が基材フィルム側、前記(B)層が、印刷版側に位置し、かつ該積層構造体表面の算術平均粗さRaは0.05〜3.0μm、好ましくは0.1〜1.0μmであることを要する。
なお、上記算術平均粗さRaは、JIS B 601−1994に準拠し、表面粗さ測定機を用いて測定した値である。
カーボンブラックの含有量が少ない(B)層を積層構造体の印刷版に近い側に位置させ、かつカーボンブラックの含有量が多い(A)層を積層構造体の内部、好ましくは基材フィルムの表面又は基材フィルム表面に設けられたマットコート層上に位置させることにより、低エネルギーのレーザー光で、精密かつ正確に除去した部分に、ムラのない光透過性が得られ、しかも紫外線遮蔽性樹脂層は、耐擦傷性が良好で傷が付きにくく、かつ基材フィルムとの密着性が良好となる。また、積層構造体の最外値、すなわち(B)層の算術平均粗さRaを上記の範囲にすることにより、大型印刷版の作製において、位置決め作業が容易で、かつ版材と密着させる際に空気を抱き込みにくく、版材に全面が密着しやすいマスクフィルムを与えるマスクフィルム用部材が得られる。(A)層の平均の厚さは、通常0.08〜24μm程度、好ましくは、0.4〜16μmであり、さらに好ましくは、0.6〜8μmである。(A)層の厚さが0.08μm未満のものは、所望の遮蔽性が得られにくいし、24μmを超えると、レーザー光によるエッチングに時間がかかる。(B)層の平均の厚さは、通常0.02〜10μm程度、好ましくは、0.1〜8μmであり、さらに好ましくは、0.2〜5μmである。(B)層の厚さが0.02μm未満のものは、耐擦傷性が得られにくいし、10μmを超えるものは、カーボンブラックの少ない層が厚くなるため、紫外線遮蔽層の除去が不十分になるおそれがある。
このような構成を有する本発明のマスクフィルム用部材は、感光性樹脂印刷版などの製版に使用されるマスクフィルムの作製用として好適である。
【0017】
当該紫外線遮蔽性樹脂層が2層積層構造体である場合、基材フィルム表面又は基材フィルム表面に設けられたマットコート層上に、(A)層が設けられ、その上に(B)層が設けられた構造となる。また、3層以上の積層構造体である場合には、上記の2層構造積層体における(A)層と(B)層との間に、カーボンブラック含有量の異なる層を、一層以上設けることが好ましいが、この(A)層と(B)層との間に介在させる層は、カーボンブラック含有量が、(A)層から(B)層方向に向けて逐次減少する傾斜構造をとることが、本発明の効果の観点から、より好ましい。
当該紫外線遮蔽性樹脂層において、積層構造体表面の算術平均粗さRaを0.05〜3.0μmの範囲にするには、該積層構造体の(A)層及び/又は(B)層に、マット剤として、フィラーを1〜15質量%程度含有させることが好ましく、外側に位置する(B)層に含有させることが特に好ましい。このフィラーとしては、無機系フィラー及び/又は有機系フィラーを用いることができ、その種類については、前記基材フィルム表面に必要に応じて設けられるマットコート層において、マット剤として説明したものと同じものを用いることができる。
【0018】
また、この紫外線遮蔽性樹脂層は、レーザー光線照射前の紫外線の透過率が、300〜380nmの全波長域において0.1%以下であることを要する。この透過率が0.1%を超えると、該マスクフィルム用部材から得られたマスクフィルムを介して、感光性樹脂層に活性光線を照射し、現像処理してマスクフィルムのパターンに対応するパターンを形成させる場合、解像度が不十分となるおそれがある。
また、レーザー光線により除去可能とするため、一般的に使用レーザー光の波長域である400〜1100nmの全波長域における光線透過率が1.0%以下で、反射率が10%以下であることを要する。
なお、紫外線遮蔽樹脂層のレーザー光線照射前の300〜380nmの全波長域における紫外線の透過率、及び紫外線遮蔽樹脂層の400〜1100nmの全波長域における光線透過率と反射率は、紫外可視分光光度計を使用して測定した値である。
【0019】
当該紫外線遮蔽性樹脂層には、前記のような紫外線遮蔽性及びレーザー光波長域の吸収を付与するために、バインダー樹脂と共に、黒色系顔料を含有させる。この黒色系顔料としては、平均粒子径が10〜50nm、特に好ましくは20〜50μmで、比表面積が70〜150m
2/gのカーボンブラックが用いられる。なお、上記平均粒子径は、電子顕微鏡による観察にて、比表面積は、JIS Z 8830に準拠した窒素吸着法により測定することができる。このような平均粒子径及び比表面積を有するカーボンブラックを用いることにより、紫外線遮蔽性樹脂層は、基材フィルムとの密着性が良好なものとなる。このカーボンブラックは、製造方法によりチャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラックなどがあるが、いずれも用いることができる。
本発明においては、前記カーボンブラックの他に必要に応じて、黒色酸化クロム、チタンブラック、黒色酸化鉄、あるいはアニリンブラックなどの黒色有機顔料、さらには赤、青、緑、紫、黄、シアン、マゼンタの中から選ばれる少なくとも2種の有機顔料を混合して擬似黒色化した混色有機顔料などを併用することができる。
【0020】
一方、当該紫外線遮蔽性樹脂層に用いられるバインダー樹脂としては、当該紫外線遮蔽性樹脂層を形成した場合に、薄い膜厚で十分な遮光性が得られるように、黒色系顔料の分散性が良好で、かつ表面がタックフリーとなるものであればよく、特に制限されず、様々な種類の樹脂を用いることができる。このような樹脂としては、例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル系共重合体、スチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂などが挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中で、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体及び/又はアクリル系樹脂、あるいはこの樹脂と、それに対して65質量%以下のイソシアナート系架橋剤とを含有したものが特に好適である。
【0021】
前記イソシアナート系架橋剤は、アクリル系樹脂と反応して架橋化したり、架橋剤同士で反応したりして、紫外線遮蔽性樹脂層の硬度を向上させる作用を有している。
このイソシアナート系架橋剤の含有量が、前記樹脂に対して65質量%を超えると、未反応イソシアネートが多くなり、コーティング直後に、コート面にタックが残り、巻取り後にブロッキングや外観不良等が発生しやすくなり、好ましくない。該イソシアナート系架橋剤のより好ましい含有量は、60質量%以下、さらに好ましくは10〜55質量%である。
イソシアナート系架橋剤としては、例えばトリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナートなどの芳香族ポリイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナートなどの脂肪族ポリイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアナートなどの脂環式ポリイソシアナートなど、及びそれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油などの低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などを挙げることができる。
本発明においては、この架橋剤は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
このような組成の紫外線遮蔽性樹脂層は、高出力のレーザー光線が照射されると、黒色系顔料がレーザー光線の波長エネルギーを吸収し、照射された部分は局部的に発熱する。発熱した樹脂層中の黒色系顔料及び樹脂は、熱分解又は昇華することにより、照射部が除去されて、紫外線透過性となる。マスクフィルム用部材にレーザー光線を照射して除去された部位は、その紫外線透過率が、紫外線透過性の基材フィルムと同様に20%以上となることが好ましい。
【0023】
当該紫外線遮蔽性樹脂層においては、2層以上の積層構造体を構成する各層は、例えば適当な溶媒中に前記の黒色系顔料とバインダー樹脂を含む塗工液を調製し、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法など、従来公知の塗布方法を用いて、紫外線透過性の基材フィルムの片面に塗工し、加熱乾燥や硬化処理をすることにより、形成することができる。
このようにして形成された2層以上の積層構造体からなる紫外線遮蔽性樹脂層は、表面粗度が、前述したように算術平均粗さRaで0.05〜3.0μm、好ましくは0.1〜1.0μmであることを要する。該Raが上記の範囲にあれば、大型印刷版の作製に際して、版上での位置決めが容易であり、また、版と密着させる際に、抱き込んだ空気を追い出しやすくなり生産効率が向上する。
【0024】
また、紫外線遮蔽性樹脂層の表面硬度は、鉛筆硬度でH以上であることが好ましい。この硬度が鉛筆硬度でH未満では、本発明のマスクフィルム用部材から得られたマスクフィルムにおいて、該紫外線遮蔽性樹脂層が損傷を受けやすくなり、印刷精度を低下させるおそれがある。
なお、紫外線遮蔽性樹脂層表面の鉛筆硬度は、JIS K 5600−5−4に準拠して測定した値である。
本発明においては、当該紫外線遮蔽性樹脂層を保護するために、所望により、その(B)層と接する側の表面に、ガラス転移温度Tgが40℃以上の樹脂を樹脂成分とする、厚さ0.05〜0.5μm、好ましくは0.1〜0.5μm程度の保護層を積層することが好ましい。この場合も保護層表面の算術平均粗さRaは0.05〜3.0μm、好ましくは0.1〜1.0μmであることを要する。前記樹脂は、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル系樹脂等を使用することができるが、ポリエステル系樹脂が特に好ましい。またこの保護層にも、マット剤としてフィラーを1〜30質量%程度含有させることが好ましい。このフィラーとしては、無機系フィラー及び/又は有機系フィラーを用いることができ、その種類については、前記基材フィルム表面に必要に応じて設けられるマットコート層において、マット剤として説明したものと同じものを用いることができる。
【0025】
次に、本発明のマスクフィルム用部材について、添付図面に従って説明する。
図1、
図2及び
図3は、それぞれ本発明のマスクフィルム用部材の構成の異なる例を示す断面模式図であって、
図1では、基材フィルム1の表面に、前述した(A)層2及び(B)層3が順次積層されてなる紫外線遮蔽性樹脂層4を有する構造のマスクフィルム用部材10が示されている。
図2では、基材フィルム1の表面に、(A)層2及び(B)層3が順次積層されてなる紫外線遮蔽性樹脂層4を有し、かつ該紫外線遮蔽性樹脂層4の最上層に、保護層5が積層されてなる構造のマスクフィルム用部材20が示されている。
図3では、基材フィルム1の表面に設けられたマットコート層又はサンドブラスト処理層6上に、(A)層2及び(B)層3が順次積層されてなる紫外線遮蔽性樹脂層4を有し、かつ該紫外線遮蔽性樹脂層4の最上層に、保護層5が積層されてなる構造のマスクフィルム用部材30が示されている。
【0026】
次に、本発明のマスクフィルムの製造方法について説明する。
[マスクフィルムの製造方法]
本発明のマスクフィルムの製造方法は、前述した本発明のマスクフィルム用部材の紫外線遮蔽性樹脂層に、レーザー光の照射により、エッチング処理を施し、所望のパターンを形成することを特徴とする。
この際、レーザー発振器としては、例えば炭酸ガスレーザー(発振波長1060nm)、ネオジウムYAGレーザー(同1060nm)、ネオジウムガラスレーザー(同1060nm)などの赤外線レーザーを用いることができるが、これらの中でネオジウムYAGレーザーが好ましい。これらのレーザー発振器は、連続発振でもパルス発振でもよい。また、出力は、紫外線遮蔽性樹脂層の厚さや樹脂の種類などに応じて適宜選定されるが、連続発振の場合で、通常0.5〜10W程度である。
【0027】
レーザー発振器としては、デジタル制御により任意の照射位置に照射できる装置であることが好ましい。そのような装置であれば、印刷パターンをデジタルデータとしてコンピューターに記憶させ、コンピューターによる制御によってマスクフィルムが作製可能となり、好ましい。
本発明におけるマスクフィルムの用途については、特に制限はなく、所望のパターンを有する透過型フィルムがマスクとして使用される様々な用途に用いることができる。例えば、感光性樹脂印刷版の製版時に使用されるマスクフィルムとして好適に用いられる。適用できる感光性樹脂印刷版としては、フレキソ版、凸版、オフセット版、グラビア版、スクリーン版などが挙げられるが、これらの中でフレキソ版の製版時に使用されるネガフィルムとして、特に好適である。
【0028】
また、ソルダーレジストは、印刷配線板の製造に際し、回路導体のはんだ付け部分以外の部分全面にわたって皮膜形成するために用いられるもので、印刷配線板に電子部品をはんだ付けする際、はんだが不必要な部分に付着するのを防止し、かつ回路導体が空気に直接さらされて酸素や湿気により腐食されるのを防止するための保護膜としての役割を果たしている。
このソルダーレジストとしては、通常希アルカリ現像型の感光性樹脂を含むものが用いられており、そして該ソルダーレジストの使用方法としては、まずプリント配線基板に該ソルダーレジストを塗布し、仮乾燥工程により塗布表面をタックフリーにしたのち、マスクフィルムを通して露光を行い、次いで希アルカリ溶液にて現像処理後、熱硬化させる方法が用いられる。
このソルダーレジスト用のマスクフィルムとしても、本発明におけるマスクフィルムを用いることができる。
【0029】
次に、本発明の感光性樹脂印刷版の製造方法について説明する。
[感光性樹脂印刷版の製造方法]
本発明の感光性樹脂印刷版の製造方法は、前述のマスクフィルムの製造方法で得られたマスクフィルムを用いて製版することにより、感光性樹脂印刷版を製造する。該感光性樹脂印刷版としては、前記の各種印刷版を挙げることができるが、これらの中で、特にフレキソ版を好ましく挙げることができる。
【0030】
フレキソ版の製版には、例えば、未硬化で現像(洗浄)液に可溶な感光性樹脂をシート状にした版材などが用いられる。そして、前記感光性樹脂は、紫外線などの活性光線の照射部分が架橋したり、重合したりして、反応、硬化することにより、現像液に対して不溶となる。このようなフレキソ版材は、ポリイソプレンやNBRなどのゴム状弾性体を基材とした複層構造である場合もある。
フレキソ版は、一般に以下に示す方法により、製版することができる。
まず、前記版材の裏側に、紫外線で前露光を施したのち、所望のパターンを有する本発明で得られたマスクフィルムをネガフィルムとして、その紫外線遮蔽性樹脂層側が対面するように版材の表側に密着させ、主露光を施す。次いでマスクフィルムを除去し、現像(洗浄)処理して、未露光樹脂を除去したのち、乾燥処理し、さらに後露光を施すことにより、目的のフレキソ版が得られる。各露光には、通常300〜400nmの波長領域の紫外線が用いられる。
このようにして製版されたフレキソ版は、通常、硬度がショアーAで40〜50程度である。
【実施例】
【0031】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、各例における諸特性は、以下に示す方法により、評価した。
(1)マスクフィルムの光学特性
レーザー光照射前の300〜380nmの波長域における紫外線透過率、及び400〜1100nmの波長域における光線透過率と反射率を、紫外可視分光光度計[島津製作所社製、機種名「UV−3600」]を用いて測定した。
(2)マスクフィルム表面の算術平均粗さRa
(株)ミツトヨ製表面粗さ測定機「SV30000S4」を用い、JIS B 601−1994に準拠して測定した。
(3)マスクフィルム表面の鉛筆硬度
JIS K 5600−5−4に準拠し、測定用機器として[東洋精機製作所社製、機種名「鉛筆引掻塗膜硬さ試験機NP」]を用いて、鉛筆硬度を測定した。
(4)基材フィルムのヘーズ値
日本電色工業(株)製ヘーズメーター[NDH2000」を使用し、JIS K 7136に準拠して測定した。
(5)紫外線遮蔽性樹脂層の密着性
JIS K 5600−5−6に準拠して、紫外線遮蔽性樹脂層のセロハン粘着テープ密着性試験を行い、密着性を下記の基準で評価した。なお、使用セロハン粘着テープは、ニチバン(株)製、登録商標名「セロテープ」の品番LP−24である。
<判定基準>
0:剥がれなし、
1:カット交差点の小さな剥がれあり
2:カットの縁に沿って、及び/又は交差点において剥がれあり
3:カットの縁に沿って、部分的に又は全面的に剥がれがあり、及び/又は目の色々な部分が部分的に又は全面的に剥がれている
4:カットの縁に沿って、部分的に又は全面的に剥がれがあり、及び/又は数カ所の目が部分的に又は全面的に剥がれている
5:4でも分類できない大きな剥がれ
(6)マスクフィルムと感光性樹脂印刷版材との滑り性
マスクフィルム表面の平滑性を、下記の方法で求め、感光性樹脂版材との滑り性を評価した。
<マスクフィルム表面の平滑性>
JIS P 8119に準拠して平滑度試験器[東洋精機製作所社製、商品名「デジベック平滑度試験機DB−2型」]により、平滑度を測定し、平滑性を求めた。
【0032】
(7)紫外線遮蔽性樹脂層のレーザー光照射による消滅エネルギー確認及びマスクフィルムの作製
ベタ及び各種サイズの文字、線、網点のパターンを、製版精度のテスト用のパターンとしてデジタル処理してレーザー照射機[エスコグラフィックス社製CDI「Spark2120」]でA4サイズの紫外線遮蔽性樹脂層を有するフィルムにパターン処理を実施して、マスクフィルムを作製し、目視観察及びレーザーテック社製コンフォーカル顕微鏡「HD100D」にてパターン処理の状態を観察し、目的のパターンに処理されるレーザー光照射エネルギーを確認した。
(8)印刷版の製版
印刷版製造機として[タカノ機械製作所社製、商品名「DX−A3」]を用いて、以下の印刷版製造の各工程を一括で処理し、印刷版を製造した。
まず、感光性樹脂版材[デュポン社製、商品名「サイレルAQS」、厚さ1.7mm]の裏側に波長360nmの紫外線を55秒間照射して前露光を行ったのち、該版材の表側に、前記(8)で得られたマスクフィルムを、その遮光性の樹脂層側が対面するように密着させ、マスクフィルムを介して紫外線を14分間照射して主露光を行った。
マスクフィルムを該版材から剥離除去して、版材を界面活性剤3質量%を添加した水により55℃で11分30秒間洗浄して未露光部分を除去し、続いて70℃で20分間乾燥処理し、さらに紫外線を35分間照射して後露光を行うことにより、所定の印刷のテストパターンを有する印刷版を作製し、リンテック社製「MA−2200」にて印刷テストを実施し、印刷適性を目視及び7倍ルーペにて観察し、印刷適性の評価として、2ptサイズのアルファベット文字が判別できる場合を○、判別できない場合を×とした。[インク:ティーアンドケイ東華社製、商品名「UVフレキソAF藍」、印刷物:リンテック社製「グロスPW8K」]
【0033】
参考例1
厚さ125μmのヘーズ値0.95%のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム[東洋紡績(株)製、商品名「コスモシャインA4100」]の片面に、カーボンブラック含有樹脂液(A)[樹脂成分:Tg40℃以上の塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、カーボンブラックの平均粒子径:24nm、比表面積:115g/m
2、カーボンブラック/樹脂分質量比:1.61/1]を乾燥後の平均の厚さが2.0μmになるように塗布、乾燥して(A)層を形成した後、(A)層の上にカーボンブラック含有樹脂液(B)、[樹脂成分:Tg40℃以上の塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、カーボンブラックの平均粒子径:24nm、比表面積:115g/m
2、カーボンブラック/樹脂分質量比:0.85/1、シリカフィラー:8質量%]を乾燥後の平均の厚さが0.5μmになるように塗布、乾燥して(B)層を形成し、紫外線遮蔽性樹脂層を形成することにより、マスクフィルム用部材を作製した。この部材の性状を第1表に示す。
【0034】
参考例2
厚さ125μmのヘーズ値0.95%のPETフィルム(前出)の片面に、カーボンブラック含有樹脂液(A)[樹脂成分:Tg40℃以上のアクリル樹脂にヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)系イソシアナート架橋剤を32質量%添加、カーボンブラックの平均粒子径:24nm、比表面積:115g/m
2、カーボンブラック/樹脂分質量比:1.36/1、シリカフィラーを10質量%添加]を乾燥後の平均の厚さが2.0μmになるように塗布、乾燥して(A)層を形成した後、(A)層の上にカーボンブラック含有樹脂液(B)[樹脂成分:Tg40℃以上のアクリル樹脂にHDI系イソシアナート架橋剤を59質量%添加、カーボンブラックの平均粒子径:24nm、比表面積:115g/m
2、カーボンブラック/樹脂分質量比:0.83/1、シリカフィラー:8質量%]を乾燥後の平均の厚さが0.5μmになるように塗布、乾燥して(B)層を形成し、紫外線遮蔽性樹脂層を形成することにより、マスクフィルム用部材を作製した。この部材の性状を第1表に示す。
【0035】
実施例3
厚さ125μmのヘーズ値0.95%のPETフィルム(前出)の片面に、カーボンブラック含有樹脂液(A)[樹脂成分:Tg40℃以上のアクリル樹脂にHDI系イソシアナート架橋剤を32質量%添加、カーボンブラックの平均粒子径:24nm、比表面積:115g/m
2、カーボンブラック/樹脂分質量比:1.36/1、シリカフィラーを10質量%添加]を乾燥後の平均の厚さが2.0μmになるように塗布、乾燥して(A)層を形成した後、(A)層の上にカーボンブラック含有樹脂液(B)[樹脂成分:Tg40℃以上のアクリル樹脂にHDI系イソシアナート架橋剤を59質量%添加、カーボンブラックの平均粒子径:24nm、比表面積:115g/m
2、カーボンブラック/樹脂分質量比:0.83/1、シリカフィラー:8質量%]を乾燥後の平均の厚さが0.5μmになるように塗布、乾燥して(B)層を形成し、さらに(B)層の上に保護層[樹脂成分:Tg40℃以上のポリエステル樹脂にシリカフィラーを4質量%添加]を乾燥後の平均の厚さが0.2μmになるように塗布、乾燥し、保護層を有する紫外線遮蔽性樹脂層を形成することにより、マスクフィルム用部材を作製した。この部材の性状を第1表に示す。
【0036】
実施例4
実施例3において、(B)層の上に設けられる保護層として、Tg40℃以上のポリエステル樹脂に、シリカフィラーを25質量%添加したものを用いた以外は、実施例3と同様にしてマスクフィルム用部材を作製した。この部材の性状を第1表に示す。
【0037】
実施例5
厚さ125μmのヘーズ値0.95%のPETフィルム(前出)の片面に、マットコート層用液[樹脂成分:Tg40℃以上のポリエステル樹脂にシリカフィラーを4質量%添加]を乾燥後の平均の厚さが0.3μmになるように塗布、乾燥して、マットコート層を形成し、このマットコート層上に、カーボンブラック含有樹脂液(A)[樹脂成分:Tg40℃以上のアクリル樹脂にHDI系イソシアナート架橋剤を32質量%添加、カーボンブラックの平均粒子径:24nm、比表面積:115g/m
2、カーボンブラック/樹脂分質量比:1.36/1、シリカフィラーを10質量%添加]を乾燥後の平均の厚さが2.0μmになるように塗布、乾燥して(A)層を形成した後、(A)層の上にカーボンブラック含有樹脂液(B)[樹脂成分:Tg40℃以上のアクリル樹脂にHDI系イソシアナート架橋剤を59質量%添加、カーボンブラックの平均粒子径:24nm、比表面積:115g/m
2、カーボンブラック/樹脂分質量比:0.83/1、シリカフィラー:8質量%]を乾燥後の平均の厚さが0.5μmになるように塗布、乾燥して(B)層を形成し、さらに(B)層の上に保護層[樹脂成分:Tg40℃以上のポリエステル樹脂にシリカフィラーを4質量%添加]を乾燥後の平均の厚さが0.2μmになるように塗布、乾燥し、保護層を有する紫外線遮蔽性樹脂層を形成することにより、マスクフィルム用部材を作製した。この部材の性状を第1表に示す。
【0038】
比較例1
厚さ125μmのヘーズ値0.95%のPETフィルム(前出)の片面に、カーボンブラック含有樹脂液[樹脂成分:Tg40℃以上の塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、カーボンブラックの平均粒子径:24nm、比表面積:115g/m
2、カーボンブラック/樹脂分質量比:0.83/1]を乾燥後の平均の厚さが5μmになるように塗布したのち、乾燥処理し、紫外線遮蔽性樹脂層を形成することにより、マスクフィルム用部材を作製した。この部材の性状を第1表に示す。
【0039】
比較例2
厚さ125μmのヘーズ値0.95%のPETフィルム(前出)の片面に、カーボンブラック含有樹脂液[樹脂成分:Tg40℃以上のアクリル樹脂、カーボンブラックの平均粒子径:24nm、比表面積:115g/m
2、カーボンブラック/樹脂分質量比:2/1、シリカフィラー:13質量%]を、乾燥後の平均の厚さが3μmになるように塗布したのち、乾燥処理し、紫外線遮蔽性樹脂層を形成することにより、マスクフィルム用部材を作製した。この部材の性状を第1表に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
第1表から分かるように、実施例
3〜5の本発明のマスクフィルム用部材は、いずれも密着性、感光性樹脂版材との滑り性及び印刷適性の全てが良好であり、また鉛筆硬度はH又は2H、レーザー光による消滅エネルギーは3.2Jである。これに対し、比較例1のマスクフィルム用部材は、平滑度の数値が20000秒を超えており、感光性樹脂版材との滑り性が良くなく、さらに印刷適性も悪く、かつレーザー光による消滅エネルギーは5.3Jを超えている。比較例2は、密着性が悪く、かつ鉛筆硬度がHBであり、耐擦傷性に劣るものである。