特許第5658455号(P5658455)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5658455
(24)【登録日】2014年12月5日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】ユニット式建物
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/348 20060101AFI20150108BHJP
【FI】
   E04B1/348 H
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2009-280003(P2009-280003)
(22)【出願日】2009年12月10日
(65)【公開番号】特開2011-122332(P2011-122332A)
(43)【公開日】2011年6月23日
【審査請求日】2012年10月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】307042385
【氏名又は名称】ミサワホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(72)【発明者】
【氏名】向山 孝美
【審査官】 新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−331267(JP,A)
【文献】 特開昭59−106645(JP,A)
【文献】 特開2000−248624(JP,A)
【文献】 実開昭61−152635(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/348
E04B 5/02
E04F 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
4本の柱と、4本の柱の上端間を連結する天井梁とによって骨組が構成された建物ユニットを複数組み合わせることによって施工されるユニット式建物において、
上下に組み合わされた前記建物ユニットのうち、上側の建物ユニットに設けられる部屋の床部は、下側の建物ユニットの天井梁に支持され、前記天井梁のうち2本の長辺天井梁に架設された複数の天井小梁と、これら天井小梁の上面に固定された床板とによって構成されており、
下側の建物ユニットに設けられる部屋の床部は、下側の建物ユニットが設置された基礎の側面に固定された支持金具を介して床部上面が基礎上端面よりも下方に位置するように支持され、基礎上端面から側面にかけて、下側の建物ユニットの柱の下端面および下側の建物ユニットの床部の端面に密着する断熱材が設けられていることを特徴とするユニット式建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物ユニットを複数並べて組み合せることで施工されるユニット式建物に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、ユニット式建物は、箱状に形成された建物ユニットを複数並べて組み合せることで施工される。建物ユニットは、4本の柱と、これらの柱の上端間どうしを連結する複数本の天井梁と、前記柱の下端間どうしを連結する複数本の床梁とから略直方体状の骨組みが形成されるとともに、骨組みに外壁材が必要に応じて取り付けられているものである(例えば特許文献1参照)。
工場で製造された建物ユニットはトラック等で建築現場まで輸送され、建築現場では、クレーン等を用いてこれら建物ユニットが上下左右に並べて組み合わされることでユニット式建物が施工される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−35991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来のユニット式建物において、天井高を高くするには、建物ユニット自体の高さを高くすればよいが、建物ユニットを現場まで輸送するトラック積荷の高さ制限によって、建物ユニット自体の高さが制限され、建物ユニットに設けられる部屋の天井高を所定の高さ以上には高くできない。
また、従来のユニット式建物では、上下の建物ユニットの接合部において、上側の建物ユニットの床梁と、下側の建物ユニットの天井梁とが上下に重なるので、つまり水平方向の梁が上下に二本となるので、その分材料費が嵩むことになる。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、建物ユニットに設けられる部屋の天井高を高くでき、かつ材料費も削減できるユニット式建物を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、例えば図1図2図4に示すように、4本の柱2と、4本の柱2の上端間を連結する天井梁3とによって骨組が構成された建物ユニット1を複数組み合わせることによって施工されるユニット式建物において、
上下に組み合わされた前記建物ユニットのうち、上側の建物ユニットに設けられる部屋の床部は、下側の建物ユニットの天井梁に支持され、前記天井梁のうち2本の長辺天井梁に架設された複数の天井小梁と、これら天井小梁の上面に固定された床板とによって構成されており、
下側の建物ユニットに設けられる部屋の床部は、下側の建物ユニットが設置された基礎の側面に固定された支持金具を介して床部上面が基礎上端面よりも下方に位置するように支持され、基礎上端面から側面にかけて、下側の建物ユニットの柱の下端面および下側の建物ユニットの床部の端面に密着する断熱材が設けられていることを特徴とする。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、建物ユニット1の骨組が4本の柱2と、4本の柱2の上端間を連結する天井梁3とによって構成されているので、この建物ユニット1を上下に組み合わせて接合するとその接合部には下側の建物ユニット1の天井梁3があり、従来のような上側の建物ユニット1の床梁はない。したがって、この天井梁3に床部20を支持させることによって、この床部20を上側の建物ユニット1に設けられる部屋19の床部20とすることができる。
そして、上下に組み合わされた前記建物ユニット1,1のうち、下側の建物ユニット1の天井梁3に、上側の建物ユニット1に設けられる部屋19の床部20が支持されているので、従来のような上側の建物ユニット1の床梁に床部を支持させる場合に比して床部20の位置が下がり、この結果、上側の建物ユニット1に設けられる部屋19の天井高を高くすることができる。
また、上側の建物ユニット1と下側の建物ユニット1との接合部には、水平方向の梁として、下側の建物ユニット1の天井梁3のみが位置し、従来のような上側の建物ユニット1の床梁がないので、従来に比して材料費を削減できる。
さらに、下側の建物ユニット1においても、従来のような床梁がないので、その分材料費を削減でき、床部15が床部上面が基礎10の上端面よりも低く支持されているので、天井高をより高くすることができ、加えて、部屋13と基礎10との間を断熱材17で断熱できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、従来より床部の位置が下がるので建物ユニットに設けられる部屋の天井高を高くすることができる。
また、従来の建物ユニットにおける床梁がないので、その分従来に比して、材料費を削減できる。
さらに、下側の建物ユニット1においては、床部15をその上面が基礎10の上端面より低い位置となるように支持しているので、部屋13の天井高をより高くすることができ、部屋13と基礎10と間の断熱も行える。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る建物ユニットの一例を示すもので、その斜視図である。
図2】同、建物ユニットの下部に治具梁を取り付けた状態を示す斜視図である。
図3】同、治具梁を柱の下端部に取り付けた状態を示す要部の断面図である。
図4】本発明に係るユニット式建物の一例を示すもので、その正面図である。
図5】同、基礎に床部を支持させた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1および図2は本発明に係る建物ユニットの実施の形態を示すものである。
建物ユニット1は4本の柱2と、これらの柱2の上端間どうしを結合する4本の天井梁3とによって骨組が構成されている。
4本の天井梁3は、2本の長辺天井梁3aおよび長辺天井梁3aより短い2本の短辺天井梁3bによって構成されている。なお、柱2は正方形筒状に形成されており、天井梁3は断面コ字型に形成されている。
【0019】
2本の長辺天井梁3a,3aには、複数の天井小梁5が架設されており、該天井小梁5は長辺天井梁3aの長手方向に所定間隔で設けられている。これら天井小梁5の下面には天井板6が固定されており、上面には床板7が固定されている。この床板7の上面は天井梁3の上面とほぼ面一となっている。
また、図2に示すように、4本の柱2の下端部には、これら柱2の下端部を連結する治具梁8が着脱可能に取り付けられている。治具梁8は、図3に示すように、断面形状が前記天井梁3と同形状のものであり、この治具梁8の端部には当接板8aが固定されている。そして、治具梁8は、当接板8aを柱2の下端部側壁に当接したうえで、ボルト9を当接板8aに通して柱2の下端部側壁にねじ込むことによって、柱2の下端部に着脱可能に取り付けられている。
このような治具梁8は、建物ユニット1を現場まで輸送する際に、建物ユニット1の柱2の下端部に取り付けられ、現場で建物ユニット1によってユニット式建物を施工する際に取り外される。
【0020】
図4は、前記建物ユニット1を上下左右に複数組み合わせて施工されたユニット式建物の骨組を示す正面図である。
1階の建物ユニット1は、基礎10上に設置されている。建物ユニット1の柱2の下端面には図示しないアンカーボルトがねじ込まれて、該下端面から突出している。そしてこの突出しているアンカーボルトは、基礎10の上面に形成された、図示しないアンカーボルト孔に挿入され、さらにこのアンカーボルト孔に、モルタル等のグラウト材が流し込まれて充填されている。これによって、基礎10に上面に建物ユニット1の柱2が位置決め固定されている。
なお、建物ユニット1を基礎10上に設置する場合、現場で建物ユニット1から治具梁8を取り外してから、該建物ユニット1を基礎10に設置してもよいし、建物ユニット1に治具梁8を取り付けた状態のまま該建物ユニットを基礎10に設置した後、治具梁8を取り外してもよい。
【0021】
前記基礎10の側面10aには、図5に示すように、支持金具11が固定されている。この支持金具11は断面L型に形成されており、その鉛直な一片部11aが埋込アンカー12によって基礎10の側面10aに固定されている。埋込アンカー12は、基礎10の施工と同時に基礎10に埋設されたものであり、その基端部は基礎10の側面10aから突出している。そして、この突出した埋込アンカー12に、支持金具11の一片部11aに形成された孔を外挿したうえで、ナット12aを突出した埋込アンカー12に螺合して締め付けることによって、支持金具11の一片部11aが基礎10の側面に固定され、他片部11bは水平に配置されている。
このような支持金具11は、図4に示すように、対向する基礎10,10の側面10a,10aに、互いに対向して固定されており、対向する支持金具11,11の他片部11b,11bは等しい高さに位置している。
なお、支持金具11は基礎10の側面10aに、水平方向に所定間隔で複数固定されている。
【0022】
対向する基礎10,10間には、1階の建物ユニット1に設けられる部屋13の床部15が配置されており、この床部15の端部が前記支持金具11,11の他片部11b,11bに設置されている。これによって、床部15は支持金具11,11を介して基礎10に支持されている。床部15は框材15aを矩形枠状に組立て、その枠体内部に必要に応じて補強桟材を縦横に組み付け、さらに枠体の上面に合板等からなる面材15bを取り付けた床パネルで構成されている。
このような床部15の框材15aには、支持金具11の他片部11bの下面から釘等の止着材16が打ち込まれ、これによって、床部15は支持金具11に固定されている。
また、床部15の上面、つまり、面材15bの上面は基礎10の天端(上端面)より若干下方に位置している。
さらに、基礎10の上端面の、厚さ方向半分の位置から基礎10側面10aにかけて断熱材17が設けられており、この断熱材17に前記床部15の端面が密着している。また、断熱材17には基礎10に設置された建物ユニット1の柱2の下端面が密着している。
【0023】
前記1階の建物ユニット1上には、2階の建物ユニット1が設置されている。1階の建物ユニット1の柱2の上端面には柱頭プレート18が設けられており、この柱頭プレート18に2階の建物ユニット1の柱2の下端面が設置されている。
そして、2階の建物ユニット1の柱2の下端部から柱頭プレート18を通して、2階の建物ユニット1の柱2の上端部に図示しなし連結ボルトを挿通し、この連結ボルトにナットを螺合して締め付けることによって、上下の柱2,2が連結されている。これによって、上下に組み合わされた建物ユニット1,1が連結されている。
なお、建物ユニット1の天井梁3がT字状に交わる交差部、天井梁3が十字状に交わる交差部等には、平面視において複数の柱2の上端面を覆うようにして柱頭プレート18が設けられており、この柱頭プレート18に形成された孔に、柱2の上端面に立設されたガイドピンを挿通することによって、柱2どうしが水平方向において連結されている。
なお、2階の建物ユニット1を1階の建物ユニット1上に設置する場合、現場で2階の建物ユニット1から治具梁8を取り外してから、該建物ユニット1を1階の建物ユニット1に設置してもよいし、2階の建物ユニット1に治具梁8を取り付けた状態のまま該建物ユニットを1階の建物ユニット1に設置した後、治具梁8を取り外してもよい。
【0024】
上下に組み合わされた建物ユニット1,1のうち、下側(1階)の建物ユニット1の天井梁3に、上側(2階)の建物ユニット1に設けられる部屋19の床部20が支持されている。この床部20は、図1に示すように、2本の長辺天井梁3a,3aに架設された複数の天井小梁5と、これら天井小梁5の上面に固定された床板7とによって構成されている。したがって、2階の建物ユニット1の床部20は、2階の建物ユニット1の柱2の下端より下方に位置しており、床部20の上面が1階の建物ユニット1の上面とほぼ面一となっている。
なお、2階の建物ユニット1上には、図示しない小屋裏ユニットが設置されており、この小屋裏ユニットに図示しない屋根パネルが取り付けられ、この屋根パネルに図示しない屋根材が葺かれている。
【0025】
本実施の形態の形態によれば、建物ユニット1の骨組が4本の柱2と、4本の柱2の上端間を連結する天井梁3とによって構成されているので、この建物ユニット1を上下に組み合わせて接合するとその接合部には下側(1階)の建物ユニット1の天井梁3があり、従来のような上側(2階)の建物ユニット1の床梁はない。したがって、この天井梁3に床部20を支持させることによって、この床部20を上側の建物ユニット1に設けられる部屋19の床部20とすることができる。
よって、従来のような上側の建物ユニット1の床梁に床部を支持させる場合に比して床部20の位置が下がり、この結果、上側の建物ユニット1に設けられる部屋19の天井高を高くすることができる。
つまり、上下に組み合わされた建物ユニット1,1のうち、下側(1階)の建物ユニット1の長辺天井梁3a,3aに、上側(2階)の建物ユニット1に設けられる部屋19の床部20が支持されているので、従来より床部20の位置が下がり、この結果、上側の建物ユニット1に設けられる部屋19の天井高を高くすることができる。
【0026】
また、上側の建物ユニット1と下側の建物ユニット1との接合部には、水平方向の梁として、下側の建物ユニット1の天井梁3のみが位置するので、従来に比して、材料費を削減できる。
さらに、4本の柱2の下端部に、これら柱2の下端部を連結する治具梁8が着脱可能に取り付けられているので、建物ユニット1の下部が治具梁8によって補強され安定的になり、よって、この建物ユニット1を安定的に現場に輸送できる。そして、現場では、治具梁8を取り外すことによって、4本の柱2と、4本の柱2の上端間を連結する天井梁3とによって骨組が構成された建物ユニット1を複数組み合わせることによって、ユニット式建物を施工できる。
【0027】
また、基礎10に設置された建物ユニット1に設けられる部屋13の床部15が基礎10によって支持されているので、従来より床部15の位置が下がり、この結果、基礎10に設置された建物ユニット1に設けられる部屋13の天井高を高くすることができる。
また、基礎10に設置された建物ユニット1と基礎10との接合部には、従来のような床梁がないので、その分従来に比して、材料費を削減できる。
さらに、床部15が、基礎10の側面10aに固定された支持金具11を介して基礎10に支持されているので、床部15をその上面が基礎10の天端より低い位置となるようにして、支持することができ、よって、基礎10に設置された建物ユニット1に設けられる部屋13の天井高をより高くすることができる。
【0028】
なお、本実施の形態では、下側(1階)の建物ユニット1の天井梁3,3に支持される床部20を、1階の建物ユニット1の天井小梁5と、該天井小梁5の上面に固定した床板7とによって構成したが、これに代えて、床部20を、框材を矩形枠状に組立て、その枠体内部に必要に応じて補強桟材を縦横に組み付け、さらに枠体の上面に合板等からなる面材を取り付けてなる床パネルで構成してもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 建物ユニット
2 柱
3 天井梁
8 治具梁
10 基礎
10a 側面
11 支持金具
13,19 部屋
15,20 床部
図1
図2
図3
図4
図5