(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5658525
(24)【登録日】2014年12月5日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】蒸発装置及び蒸着装置
(51)【国際特許分類】
C23C 14/24 20060101AFI20150108BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20150108BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20150108BHJP
【FI】
C23C14/24 D
H05B33/10
H05B33/14 A
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2010-228716(P2010-228716)
(22)【出願日】2010年10月8日
(65)【公開番号】特開2012-82461(P2012-82461A)
(43)【公開日】2012年4月26日
【審査請求日】2013年8月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】山岸 英雄
【審査官】
末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】
特表2008−530734(JP,A)
【文献】
特開2008−121104(JP,A)
【文献】
特表2009−515052(JP,A)
【文献】
特開昭50−117683(JP,A)
【文献】
特開2008−088458(JP,A)
【文献】
特開2002−235167(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00−14/58
H05B 33/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜材料を保持する材料保持部を複数有し、
さらに1又は2以上の前記材料保持部が保持する薄膜材料を加熱する加熱手段と、材料保持部に薄膜材料を供給する材料供給手段と、材料保持部を移動させる保持部移動手段を有し、
1又は2以上の材料保持部を使用し、前記1又は2以上の材料保持部に対して材料供給手段によって連続的に又は間欠的に薄膜材料を供給すると共に、当該1又は2以上の材料保持部に供給された薄膜材料を加熱手段によって加熱して蒸発させるものであり、
前記加熱手段は、材料供給手段から前記1又は2以上の材料保持部に供給された薄膜材料を加熱し、
交換時期が訪れることを条件の一つとして保持部移動手段によって前記1又は2以上の材料保持部が移動して、前記加熱手段が前記材料供給手段から他の材料保持部に供給される薄膜材料を加熱することを特徴とする蒸発装置。
【請求項2】
前記材料保持部は、連続した長尺体の一部であることを特徴とする請求項1に記載の蒸発装置。
【請求項3】
前記材料保持部は、独立した坩堝であることを特徴とする請求項1に記載の蒸発装置。
【請求項4】
加熱した材料保持部で生じた薄膜材料の蒸気を集めるための蒸気回収フードを有し、
前記蒸気回収フードは、前記材料保持部を挟んで、加熱手段の上方に配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の蒸発装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の蒸発装置を有することを特徴とする蒸着装置。
【請求項6】
請求項4に記載の蒸発装置を有する蒸着装置であって、
薄膜材料の蒸気を放出する薄膜材料放出部と、蒸気通路を有し、
前記蒸気通路は、蒸発装置から排出される薄膜材料の蒸気が通過する通路であって、その端部は、前記薄膜材料放出部に接続されており、
前記加熱手段によって加熱された薄膜材料は、蒸気となって、蒸気回収フードを経由して蒸気通路に回収され、薄膜材料放出部から放出されることを特徴とする蒸着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蒸発装置及び蒸着装置に関し、さらに詳細には、基材に薄膜材料を蒸着可能な蒸発装置及び蒸着装置に関する。本発明の蒸発装置及び蒸着装置は、長時間に亘る蒸着でもコンタミネーションの発生を抑制可能なものである。
【背景技術】
【0002】
LED照明に代わる次世代の照明装置として、有機EL(Electro Lumines
cence)装置が注目され、多くの研究がなされている。
有機EL装置は、ガラス基板や透明樹脂フィルムの基材に、有機化合物等で構成される有機EL素子を積層したものである。有機EL素子は、複数の層から成り、真空蒸着法等によって成膜される。真空蒸着法とは、真空に減圧した雰囲気の中で、材料に熱エネルギーを加えて蒸発させ、蒸発した材料を基板上に堆積させる方法である。
【0003】
真空蒸着法において、蒸発源として、ヒータを備えた坩堝を用いることが多い。坩堝を用いる方法では、真空室等に設置された坩堝に予め有機材料を供給しておく。そして、真空室を真空状態にした後、ヒータで有機材料を加熱することで蒸着が行われる。このように、坩堝を用いた真空蒸着法は、簡素な構成で蒸着ができるという点で優れている。
【0004】
しかし、坩堝を用いた真空蒸着法では、坩堝に大量の材料を仕込むことができないという欠点がある。これは、有機材料が高温に長時間晒されると、分解劣化されてしまうからである。そのため、坩堝内の材料がなくなる度に、真空室内を大気圧に戻して坩堝に材料を供給し、再度真空室内を真空状態にする必要があり、手間が掛かっていた。
【0005】
特許文献1には、有機材料の蒸着方法および蒸着装置が開示されている。特許文献1に記載の蒸着装置では、粉体の有機材料を、回転する環状のベルトに載せて供給している。そしてベルトの一部を加熱装置で加熱して、有機材料を蒸発させている。この蒸着装置では、回転する環状のベルトに材料を供給し続けることで、長時間の連続蒸着が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−330920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、特許文献1に記載の蒸着装置では、長時間の連続蒸着により、環状のベルトに有機材料の分解物や変成物が蓄積する恐れがある。これは、回転する1つのベルトを、使い続けることによって起こる問題である。分解物や変成物の発生によるコンタミネーションは、有機EL素子の膜質の低下を招いてしまう。なお、坩堝を用いた真空蒸着法においても、メンテナンスを行わずに1つの坩堝を使い続けると、同様の問題が発生する。
【0008】
上記した現状に鑑み、本発明は、長時間に亘る蒸着でもコンタミネーションの発生を抑制可能な蒸発装置及び該蒸発装置を有した蒸着装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための
本発明に関連する発明は、薄膜材料を保持する材料保持部を複数有し、さらに1又は2以上の前記材料保持部内の薄膜材料を加熱する加熱手段と、材料保持部に薄膜材料を供給する材料供給手段と、材料保持部を移動させる保持部移動手段を有し、1又は2以上の材料保持部を使用し、当該材料保持部に対して材料供給手段によって連続的に又は間欠的に薄膜材料を供給すると共に、当該材料保持部に供給された薄膜材料を加熱手段によって加熱して蒸発させ、一定要件を満足することを条件の一つとして保持部移動手段によって材料保持部を移動し、新たな材料保持部に交換することを特徴とする蒸発装置である。
【0010】
請求項1に記載の発明は、薄膜材料を保持する材料保持部を複数有し、さらに1又は2以上の前記材料保持部が保持する薄膜材料を加熱する加熱手段と、材料保持部に薄膜材料を供給する材料供給手段と、材料保持部を移動させる保持部移動手段を有し、1又は2以上の材料保持部を使用し、前記1又は2以上の材料保持部に対して材料供給手段によって連続的に又は間欠的に薄膜材料を供給すると共に、当該1又は2以上の材料保持部に供給された薄膜材料を加熱手段によって加熱して蒸発させるものであり、前記加熱手段は、材料供給手段から前記1又は2以上の材料保持部に供給された薄膜材料を加熱し、交換時期が訪れることを条件の一つとして保持部移動手段によって前記1又は2以上の材料保持部が移動して、前記加熱手段が他の材料保持部に供給される薄膜材料を加熱することを特徴とする蒸発装置である。
【0011】
本発明で採用する薄膜材料を保持する材料保持部は、複数設けられる。材料保持部は、保持部移動手段によって、移動させることができる。つまり、材料保持部を用いて蒸発を行い、一定要件を満足すると、新たな材料保持部に交換することができる。一定要件とは、任意に設定できる条件である。一般には、稼働時間や生産ロット数から条件設定されることが多いが、例えば、カメラで材料保持部を監視し、保持部が変色した場合や、薄膜材料の残留物が見受けられた場合に、材料保持部を交換するという条件を設定しても構わない。すなわち、分解物や変成物が発生する前に、材料保持部を交換する条件であれば良い。本発明の蒸発装置によれば、長時間に亘る蒸着でもコンタミネーションの発生を抑制可能である。
【0012】
請求項2に記載の発明は、前記材料保持部は、連続した長尺体の一部であることを特徴とする請求項1に記載の蒸発装置である。
【0013】
長尺体とは、例えば、シート状の板部材である。シート状の板部材は、例えば、ローラーで供給でき、別のローラーで巻き取ることが可能である。すなわち、連続した長尺体の一部を材料保持部とすることで、長時間の連続供給が容易となる。
本発明の蒸発装置によれば、長時間に亘る蒸着が容易である。
【0014】
請求項3に記載の発明は、前記材料保持部は、独立した坩堝であることを特徴とする請求項1に記載の蒸発装置である。
【0015】
坩堝は、簡素な構成で蒸発ができるという点で優れている。
本発明の蒸発装置によれば、簡素な構成とすることができる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、加熱した材料保持部で生じた薄膜材料の蒸気を集めるための蒸気回収フードを有し、前記蒸気回収フードは、前記材料保持部を挟んで、加熱手段の上方に配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の蒸発装置である。
【0017】
請求項
5に記載の発明は、請求項1乃至
4のいずれかに記載の蒸発装置を有することを特徴とする蒸着装置である。
【0018】
請求項1乃至
4のいずれかに記載の蒸発装置を有した蒸着装置は、長時間に亘る蒸着でもコンタミネーションの発生を抑制可能である。
【0019】
請求項
6に記載の発明は、
請求項4に記載の蒸発装置を有する蒸着装置であって、薄膜材料の蒸気を放出する薄膜材料放出部と、蒸気通路を有し、前記蒸気通路は、蒸発装置から排出される薄膜材料の蒸気が通過する通路であって、その端部は、前記薄膜材料放出部に接続されており、前記加熱手段によって加熱された薄膜材料は、蒸気となって、蒸気回収フードを経由して蒸気通路に回収され、薄膜材料放出部から放出されることを特徴とする蒸着装置である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の蒸発装置及び蒸着装置によれば、長時間に亘る蒸着でもコンタミネーションの発生を抑制可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態に係る蒸着装置を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る蒸発装置の構造を示す概念図である。
【
図3】材料保持部および保持部移動手段を示す斜視図である。
【
図4】成膜時における蒸発装置の動作状態を示す概念図であり、(a)は薄膜材料供給状態、(b)は薄膜材料蒸発状態、(c)は残留物検知状態、(d)は材料保持部交換状態である。
【
図5】本発明の別の実施形態に係る蒸発装置を示す斜視図である。
【
図6】成膜時における別の蒸発装置の動作状態を示す概念図であり、(a)は薄膜材料供給状態、(b)は薄膜材料蒸発状態、(c)は残留物検知状態、(d)は材料保持部交換状態である。
【
図7】箔状の材料保持部を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は保持部移動手段に実装された状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下は、本発明の蒸発装置及び蒸着装置の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明は、実施形態の理解を容易にするためのものであり、これによって、本発明が制限して理解されるべきではない。
【0023】
図1に示す蒸着装置1は、有機EL素子等の薄膜素子を製造可能な装置である。蒸着装置1は、真空室2を有し、真空室内2に蒸発装置3と、蒸気通路4,5と、薄膜材料放出部6と、制御バルブ7と、気体排出装置10とを有している。
【0024】
真空室2は、公知のそれと同様に、ガラス基板(基材)8を設置することができる広い空間9を有している。ガラス基板8は、図示しない基板設置台で支持されている。
真空室2は、気密性を有している。また、真空室2は、気体排出装置10を備えており、空間9を高真空雰囲気に保つことができる。なお、気体排出装置10は、ダクト11と、バルブ12と、真空ポンプ13とを有している。
【0025】
蒸気通路4,5は、後述する蒸発装置3から排出される薄膜材料の蒸気が通過する通路として機能するものである。蒸気通路4,5は、管から構成される。蒸気通路4,5の間には、制御バルブ7が設けられており、蒸気の排出量を調整可能である。蒸気通路5の上方側の端部は、薄膜材料放出部6に接続されている。
【0026】
薄膜材料放出部6は、当業者の間で、エリアソースと称される原料供給方式を採用するものである。薄膜材料放出部6は、シャワープレートとも呼ばれている。薄膜材料放出部
6は、蒸散管14を有している。
【0027】
蒸散管14は、気化した薄膜材料をガラス基板8に蒸散させるためのノズルである。蒸散管14は、縦4列、横4列の合計16本が略面状に配置されている。蒸散管14は、孔15を有しており、ガラス基板8に対向している。すなわち、蒸発装置3から排出された薄膜材料の蒸気は、蒸気通路4,5を経由して薄膜材料放出部6に至り、蒸散管14から蒸散される。なお、蒸散管14の外周面には、図示しない保温用ヒータが取り付けられている。
【0028】
図2に示すように、蒸発装置3は、材料保持部21と、加熱手段22と、保持部移動手段23と、材料供給手段24と、蒸気回収フード25と、カメラ26とを有している。
【0029】
材料保持部21は、
図3に示すように、連続した長尺体30の一部であり、一定の長さLで区分されている。すなわち、材料保持部21は、材料保持部21a,21b,21c・・・というように連続したものである。材料保持部21は、幅Wを有した板体や箔状体等で構成されている。材料保持部21は、タングステンやモリブデン、及びタンタル等の溶融し難い金属で構成されることが好ましい。
【0030】
保持部移動手段23は、2つの巻芯27,28を有している。巻芯27,28は、図示しないモータに連結されている。巻芯27,28には、長尺体30が各々ロール31,32状に巻かれている。図示しないモータで、巻芯27,28を同期させて時計回りに回転させると、長尺体30はロール31から供給され、ロール32に回収される。すなわち、長尺体30の動作に伴って、材料保持部21が
図3の矢印の方向に左から右へと移動する。なお、図示しないモータは、図示しないPLC(プログラマブル・ロジック・コントローラ)に接続されている。
【0031】
材料供給手段24は、粉体の薄膜材料を材料保持部21に供給するための装置である。材料供給手段24は、公知の粉体供給フィーダや粉体供給ホッパー等で構成されることが好ましい。材料供給手段24は、
図2に示すように、本体33と、供給バルブ34と、供給管35を有している。本体33内には、粉体の薄膜材料が充填されている。供給バルブ34は、薄膜材料の供給量を調整するためのバルブである。供給バルブ34は、本体33と、供給管35の間に位置している。供給管35は、薄膜材料を材料保持部21に供給するための管である。供給管35の先端部は、材料保持部21の天面に近接している。なお、供給バルブ34は、図示しないPLCに接続されている。
【0032】
加熱手段22は、
図2に示すように、公知の気化用電気ヒータで構成されている。加熱手段22は、材料保持部21の下側に位置しており、材料保持部21を底面側から加熱するものである。
【0033】
蒸気回収フード25は、材料保持部21で生じた薄膜材料の蒸気を、集めるためのダクトである。蒸気回収フード25は、材料保持部21を挟んで、加熱手段22の上方に配置されている。蒸気回収フード25は、蒸気通路4に連通している。
【0034】
カメラ26は、材料保持部21を監視するためのカラー画像センサカメラである。カメラ26は、色の識別及び形状の識別が可能である。すなわち、カメラ26は、材料保持部21の変色や、薄膜材料の残留物を検出可能である。なお、カメラ26は、図示しないPLCに接続されている。
【0035】
ここで、蒸発装置3の材料保持部21の交換方法について、
図4を用いて説明する。
図4(a)では、材料供給手段24から材料保持部21a上に供給された粉体の薄膜材料40が、加熱手段22によって加熱される。加熱された薄膜材料40は、蒸気となって、蒸気回収フード25を経由して蒸気通路4に回収される。
【0036】
図4(b)では、材料保持部21a上の薄膜材料40が蒸散されて無くなっている。この状態において、材料供給手段24から薄膜材料40を供給すると、
図4(a)の状態となる。すなわち、
図4(a),4(b)を繰り返すことで、蒸着を連続して行うことができる。
【0037】
図4(c)では、材料保持部21a上に、残留物41が生じている。残留物41は、カメラ26で検出される。カメラ26で検出した信号は、図示しないPLCに送られる。PLCでは、一定要件を満足することを条件の一つとして材料保持部21aの移動が必要と判断する。
【0038】
この場合においては、残留物41の発生を条件としており、PLCにて材料保持部21aの交換が必要と判断される。なお、一定要件として、蒸発装置又は蒸着装置の稼働時間や蒸着積算時間、有機EL素子の生産ロット数等を条件に用いても構わない。
【0039】
そして、PLCより「移動」の指令信号が、保持部移動手段23に送られる。「移動」の指令信号に基づいて、保持部移動手段23が図示しないモータを回転させると、巻芯27,28は同期して時計回りに回転する。
【0040】
その結果、材料保持部21aが左から右へと移動して、
図4(d)の状態に至る。
図4(d)では、材料保持部21bが加熱手段22の上側に位置している。すなわち、残留物41が付着した材料保持部21aが、新しい材料保持部21bに交換されている。そして、同様の手順で蒸着を行い、ロール31から材料保持部21(長尺体30)が供給できなくなるまで蒸着が可能である。
【0041】
前述の
図4(a)〜4(d)のサイクルによると、蒸着中に残留物41を検出すると、材料保持部21を新しいものに交換することができる。このことにより、残留物41が、分解物や変成物へと変化することを防止できる。すなわち、蒸発装置3では、長時間に亘る蒸着でもコンタミネーションの発生を抑制できる。
【0042】
図5は、本発明の別の実施形態に係る蒸発装置50を示す。なお、
図5において、蒸発装置3と共通する構成部品については、同一符号で表しており、説明を省略する。
図5において、蒸発装置50は、材料保持部51と、加熱手段52と、保持部移動手段53と、材料供給手段24と、蒸気回収フード25と、カメラ26とを有している。
【0043】
材料保持部51は、公知の坩堝54で構成されている。坩堝54には、公知の気化用電気ヒータで構成された加熱手段52が内蔵されている。
材料保持部51は、6つの材料保持部51a〜51fを有しており、円形の保持部移動手段53上に位置している。
【0044】
保持部移動手段53は、公知のインデックステーブルから構成されている。すなわち、円形のテーブル55を6等分したものであり、各インデックスに材料保持部51a〜51fが配置されている。保持部移動手段53は、図示しないモータに連結されており、
図5の矢印の方向である反時計回りに回転可能である。なお、図示しないモータは、図示しないPLCに接続されている。
【0045】
ここで、蒸発装置50の材料保持部51の交換方法について、
図6を用いて説明する。なお、
図6においては、蒸気通路4及び蒸気回収フード25の図示を省略している。
図6(a)では、材料供給手段24から材料保持部51a内に供給された粉体の薄膜材料40が、加熱手段52によって加熱される。
【0046】
図6(b)では、材料保持部51a内の薄膜材料40が蒸散されて無くなっている。この状態において、材料供給手段24から薄膜材料40を供給すると、
図6(a)の状態となる。すなわち、
図6(a),6(b)を繰り返すことで、蒸着を連続して行うことができる。
【0047】
図6(c)では、材料保持部51a内に、残留物41が生じている。カメラ26で残留物41を検出すると、図示しないPLCにて、材料保持部51aの移動が必要と判断する。そして、PLCより「移動」の指令信号が、保持部移動手段53に送られる。「移動」の指令信号に基づいて、保持部移動手段53が図示しないモータを回転させると、テーブル55は反時計回りに回転する。
【0048】
その結果、テーブル55の回転に伴って材料保持部51aが左に移動して、
図6(d)の状態に至る。
図6(d)では、材料保持部51bが材料供給手段24とカメラ26の間に位置している。すなわち、残留物41が付着した材料保持部51aが、新しい材料保持部51bに交換されている。そして、同様の手順で蒸着を行い、材料保持部51fに交換時期が訪れるまで蒸着が可能である。
【0049】
前述の
図6(a)〜6(d)のサイクルによると、蒸着中に残留物41を検出すると、材料保持部51を新しいものに交換することができる。このことにより、残留物41が、分解物や変成物へと変化することを防止できる。すなわち、蒸発装置50では、長時間に亘る蒸着でもコンタミネーションの発生を抑制できる。
【0050】
上記の蒸発装置50において、材料保持部51として公知の坩堝54を用いたが、
図7(a)に示す箔状の材料保持部61を用いても構わない。材料保持部61は、「ボート形」と呼ばれる公知の加熱蒸着源用ヒータである。すなわち、材料保持部61は、ヒータと保持部の両方を兼ね備えたものであり、略中央部に窪み62を有している。
【0051】
図7(b)に示すように、6つの材料保持部61a〜61fをテーブル55(保持部移動手段53)上に配置している。材料保持部61aから順番に蒸着を実施し、材料保持部61aに交換時期が訪れると、材料保持部61bに交換する。そして、同様の手順で蒸着を行い、材料保持部61fに交換時期が訪れるまで蒸着が可能である。なお、
図7(b)においては、材料供給手段24と、カメラ26と、蒸気通路4及び蒸気回収フード25の図示を省略している。
【0052】
以上のように、本発明の蒸発装置3,50及び蒸着装置1によれば、長時間に亘る蒸着でもコンタミネーションの発生を抑制できる。
【符号の説明】
【0053】
1 蒸着装置
3,50 蒸発装置
21,21a〜21c,51,51a〜51f,61,61a〜61f 材料保持部
22,52 加熱手段
23,53 保持部移動手段
24 材料供給手段
30 長尺体
40 薄膜材料
54 坩堝