(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5658540
(24)【登録日】2014年12月5日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】駆動ローラ
(51)【国際特許分類】
B65H 27/00 20060101AFI20150108BHJP
【FI】
B65H27/00 B
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2010-254420(P2010-254420)
(22)【出願日】2010年11月15日
(65)【公開番号】特開2012-101933(P2012-101933A)
(43)【公開日】2012年5月31日
【審査請求日】2013年7月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101188
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 義雄
(72)【発明者】
【氏名】塚本 勝秀
(72)【発明者】
【氏名】杉下 芳昭
【審査官】
冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭61−162453(JP,A)
【文献】
特開平8−192928(JP,A)
【文献】
特開昭55−90717(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H5/06、27/00、29/20−29/22
B41J13/076、15/02
F16C13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状体に繰出力を付与可能な駆動ローラにおいて、
前記帯状体が接する表面に複数の凸部を有するグリップ手段と、このクリップ手段が巻装されるローラ本体とを備え、前記ローラ本体に磁石が設けられている一方、前記グリップ手段が着磁性を有する素材により形成されていることを特徴とする駆動ローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動ローラに係り、更に詳しくは、帯状体を延出方向に繰り出す力を付与可能に設けられた駆動ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ラベルや接着シートの貼付装置や印刷装置において、当該接着シート等を含む帯状体を繰り出し可能な駆動ローラが利用されるに至っており、かかる駆動ローラとしては、例えば、特許文献1に開示されている。特許文献1の駆動ローラは、ピンチローラとの間に帯状体を挟み込み、回転駆動することによって帯状体に繰出力を付与して、所定方向に帯状体を繰り出し可能に設けられている。また、同文献の駆動ローラは、セラミック粉体を付着させることで表面に凹凸が形成され、これにより、帯状体へのグリップ力を大きくするようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−120234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1にあっては、駆動ローラ自体の表面に前記凹凸が形成されるので、当該凹凸が磨り減った場合、駆動ローラ全体を交換することが必要になる。このように駆動ローラ全体を交換する場合、その度に、作業者が駆動ローラ周りの装置を分解したり再度組み立てたりする非常に面倒な手間が掛かる上、表面に凹凸が形成された駆動ローラは高価なため、コスト的に負担が掛かる、という不都合を招来する。
【0005】
[発明の目的]
本発明の目的は、表面の凸部が磨り減っても、作業的な負担やコスト的な負担を軽減することができる駆動ローラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明は、帯状体に繰出力を付与可能な駆動ローラにおいて、
前記帯状体が接する表面に複数の凸部を有するグリップ手段と、このクリップ手段が巻装されるローラ本体とを備え、
前記ローラ本体に磁石が設けられている一方、前記グリップ手段が着磁性を有する素材により形成される、という構成を採っている。
【0008】
また、前記磁石は、ローラ本体表面の一部に設けられる、という構成も好ましくは採用される。
【0009】
更に、前記グリップ手段は、フック部を備え、
前記ローラ本体は、前記フック部を受容可能な受容部を備える、という構成を採ってもよい。
【0010】
また、前記受容部におけるローラ本体の周方向幅は、受容するフック部の前記周方向への移動を許容するように設定される、という構成を採用することができる。
【0011】
更に、前記ローラ本体は、その軸方向への前記グリップ手段の移動を規制可能な移動規制手段を備えることが好ましい。
【0012】
また、前記グリップ手段は、シート状又は板状に形成されて一対の突き合わせ端部が突き合う状態で前記ローラ本体に巻装され、当該巻装時に、前記ローラ本体の軸方向に対して傾いた方向に前記突き合わせ端部が位置するように形成される、という構成を採用することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、グリップ手段の凸部が磨り減った場合、ローラ本体からグリップ手段を取り外し、新たなグリップ手段をローラ本体に巻装するだけで、新たしい凸部を有するグリップ手段に交換することが可能となる。これにより、ローラ本体を支持する装置等から当該ローラ本体を取り外さなくてよいので、当該装置の分解及び再組み立て等を省略して作業的な負担を軽減することができる上、駆動ローラ全体を交換する場合に比べてコストダウンを図ることができるので、コスト的な負担を軽減することができる。
【0014】
また、ローラ本体に磁石を設け、グリップ手段が着磁性を有するので、ローラ本体に対するグリップ手段の着脱や位置調整を容易に行うことができる。
【0015】
更に、ローラ本体表面の一部に磁石を設けるので、ローラ本体とグリップ手段との磁性による接着力を適度に保つことができ、グリップ手段をローラ本体に巻装すべく位置合わせする際、グリップ手段をずらしたり巻装し直したりする作業を難なく行うことが可能となる。
【0016】
また、フック部及びこれを受容する受容部を有するので、グリップ手段を巻装するときの位置合わせ作業の容易化を図ることができる他、帯状体の繰出時に、グリップ手段に対してローラ本体が空回りすることを防止することが可能となる。
【0017】
更に、フック部の前記繰出方向への移動を許容するように受容部の前記幅が設定されるので、フック部と受容部との間にいわゆる遊びが設けられ、グリップ手段の寸法誤差や、温度変化に伴うグリップ手段の変形に対応し、安定してグリップ手段を支持することが可能となる。また、帯状体の繰出中に、ローラ本体表面からグリップ手段が部分的に浮き上がるようなことがあっても、受容部内でのフック部の移動により浮き上がりを解消することができる。
【0018】
また、移動規制手段によってローラ本体の軸方向へグリップ手段が移動することを規制でき、グリップ手段により帯状体に安定して繰出力を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態に係る駆動ローラが適用されたシート貼付装置の概略正面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の駆動ローラが適用されたシート貼付装置の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0021】
図1〜
図3において、シート貼付装置10は、被着体Wを
図1中左方向に搬送するベルトコンベア等からなる搬送手段CVに並設されている。シート貼付装置10は、帯状体としての剥離シートRLに複数枚の接着シートSが所定間隔毎に仮着された原反Rを繰り出す繰出手段12と、繰出手段12で繰り出される原反Rの剥離シートRLから接着シートSを剥離する剥離板14と、剥離手段14の同図中左側に設けられた押圧手段17としてのプレスローラ45を備えて構成されている。
【0022】
前記繰出手段12は、ロール状の原反Rを支持する支持軸23と、この支持軸23から繰り出された原反Rを剥離板14に案内するガイドローラ24と、剥離板14を経た後の剥離シートRLに繰出力を付与する駆動ローラ26と、この駆動ローラ26と剥離シートRLを挟み込むピンチローラ27と、これらのローラ26、27を通過した後の剥離シートRLを図示しない駆動源によって所定のトルクで巻き取る巻取軸28とを備え、図示しないフレームを介して支持されている。繰出手段12は、駆動ローラ26による繰出力の付与によって原反Rを繰り出し、この繰り出しによって剥離板14の先端で剥離シートRLから接着シートSが剥離されて押圧手段17に供給されるようになっている。
【0023】
前記駆動ローラ26は、モータMの出力軸に連結されて
図2及び
図3中矢印R方向に回転可能なローラ本体31と、このローラ本体31の表面側に巻装されて剥離シートRLが接するグリップ手段32とを備えている。
【0024】
前記ローラ本体31は、
図3中上部において軸方向(同図中紙面直交方向)に延びる溝により形成された受容部34と、表面側における周方向4箇所に形成され、磁石35を収容可能な第1ないし第4収容部37〜40と、軸方向両側にそれぞれ形成された移動規制手段42とを備えている。
図3に示されるように、第1収容部37は、受容部34の右側領域からローラ本体31の外縁に沿って形成されている。第2収容部38は、ローラ本体31の
図3中下端側に形成され、第3収容部39は、ローラ本体31の同図中左端側に形成されている。第4収容部40は、受容部34の左側に所定間隔を隔てて形成されている。各収容部37〜40には、複数の磁石35がぴったりと収容され、各磁石35の表面とローラ本体31との表面とが同一の円筒面状に位置するように設けられている。
【0025】
前記移動規制手段42は、ローラ本体31の軸方向両側領域において、巻装されたグリップ手段32の端部が当接するように形成され、これにより、グリップ手段32がローラ本体31の軸方向へ移動することを規制できるようになっている。
【0026】
前記グリップ手段32は、シート状又は板状に形成されてローラ本体31に巻き掛け可能に設けられている。グリップ手段32は、着磁性を有する金属等の素材により構成され、磁石35と磁性により着脱自在となっている。グリップ手段32は、例えば、ダイヤモンド電着メッキを施すことにより形成される複数の凸部を表面に備えている。グリップ手段32は、ローラ本体31に巻装されたときに、相互に突き合う一対の突き合わせ端部32Aを備え、当該突き合わせ端部32A側を略直角に折り曲げ形成することで一対のフック部43が形成されている。各フック部43は、受容部34に同時に受容可能に設けられている。ここで、
図3の拡大図で示されるように、各フック部43の厚みT、受容部34におけるローラ本体31の周方向幅すなわち溝幅Hとしたときに、H>2T満たすようにそれぞれ設定されている。これにより、受容部34内において、各フック部43の前記周方向への移動が許容されることとなる。
【0027】
以上の構成において、グリップ手段32をロール本体31に巻装する場合、
図3の拡大図で示されるように、第1収容部37に収容された磁石35の角に一方のフック部43の角を係合させて受容部34内に受容させた後、グリップ手段32をロール本体31に巻き掛け、他方のフック部43を受容部34内に受容させればよい。これにより、ロール本体31周りでグリップ手段32が空回りすることが規制され、磁石35の磁力によってグリップ手段32がロール本体31の表面に密着するように巻装される。このとき、グリップ手段32が各移動規制手段42間に位置することとなり、グリップ手段32のローラ本体31軸方向への移動が規制される。なお、ロール本体31表面の全体が磁石で構成されていると、グリップ手段32をロール本体31に巻装する時に、グリップ手段32をずらすのに大きな力が必要になるが、前述のようにロール本体31表面の一部に磁石35を設けたので、グリップ手段32の一端側をロール本体31から外した状態で、グリップ手段32をずらしたりする調整が容易に行えるようになっている。
【0028】
また、グリップ手段32をロール本体31から取り外す場合、磁石35の磁力に抗してフック部43を受容部34から抜き出し、ロール本体31の外周面からグリップ手段32を捲り上げればよい。
【0029】
従って、このような実施形態によれば、ローラ本体31をモータMに連結した状態のまま、グリップ手段32だけを新品のものに交換することができる。これにより、駆動ローラ26全体を交換する従来のものに比べ、モータMとの連結解除に伴う分解作業や再度連結するための組み立て作業を省略でき、労力の軽減を図ることが可能となる他、交換に要するコスト的な負担も縮小することができる。
【0030】
また、グリップ手段32をロール本体31に巻装した直後や、原反Rの繰出中でローラ本体31表面からグリップ手段32が部分的に離れてしまっても(浮き上がってしまっても)、ピンチローラ27によって剥離シートRLを挟み込む力が働きつつ駆動ローラ26が回転することによって、部分的に浮き上がってしまっていた部分の弛みは、徐々に受容部34方向に追いやられ、
図3中左側のフック部43が同図中右方向に移動し、ローラ本体31表面とグリップ手段32とが密着した状態に復帰させることが可能となる。
【0031】
以上のように、本発明を実施するための最良の構成、方法等は、前記記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示、説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上説明した実施形態に対し、形状、位置若しくは配置等に関し、必要に応じて当業者が様々な変更を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状などの限定の一部若しくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【0032】
例えば、
図4に示されるように、グリップ手段32の突き合わせ端部32Aは、ローラ本体31の軸方向C1に対して傾いた方向に位置するように形成してもよい。これにより、ピンチローラ27が相互に突き合う一対の突き合わせ端部32A上を通過するときに、当該ピンチローラ27が振動したり、バウンドしたりすることを防止できる。
また、本発明の駆動ローラ26は、帯状体を繰り出す各種装置に適用でき、当該装置として、半導体等に接着シートを貼付する装置や、ラベル等に印刷する装置が例示できる。
更に、収容部37〜40の数や磁石35の数は、2、3又は5以上でもよいし、それらの大きさは同じでも良いし違っていてもよく、第4収容部40は、受容部34の左側に間隔を隔てずに形成してもよい。
また、本発明の駆動ローラ26はシート貼付装置10に採用されることに限定されることなく、例えば、印刷装置を構成する駆動ローラや、物品を搬送する搬送ローラ等に採用することができる。
更に、グリップ手段32は、ダイヤモンド電着メッキ以外に、例えば、金属板や樹脂板の表面を荒らしたものや、ディンプル加工が施されたもの等であってよい。
【符号の説明】
【0033】
10 シート貼付装置
26 駆動ローラ
31 ローラ本体
32 グリップ手段
34 受容部
35 磁石
42 移動規制手段
43 フック部
RL 剥離シート(帯状体)