特許第5658654号(P5658654)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5658654
(24)【登録日】2014年12月5日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】制御弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 47/02 20060101AFI20150108BHJP
   F16K 31/04 20060101ALI20150108BHJP
【FI】
   F16K47/02 D
   F16K31/04 Z
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2011-286076(P2011-286076)
(22)【出願日】2011年12月27日
(65)【公開番号】特開2013-133914(P2013-133914A)
(43)【公開日】2013年7月8日
【審査請求日】2013年5月16日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100103218
【弁理士】
【氏名又は名称】牧村 浩次
(72)【発明者】
【氏名】石黒 元康
(72)【発明者】
【氏名】中川 大樹
(72)【発明者】
【氏名】南澤 英樹
(72)【発明者】
【氏名】小林 一也
(72)【発明者】
【氏名】宮寺 祐孝
【審査官】 吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−027335(JP,A)
【文献】 実開昭62−140286(JP,U)
【文献】 特開平11−287337(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3145048(JP,U)
【文献】 特開平02−042286(JP,A)
【文献】 特開平09−317922(JP,A)
【文献】 特開2010−043727(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 47/02
F16K 31/04
F16K 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁体がガイドブッシュに案内されて、弁体が弁座に対して離接する方向に移動して、弁体が弁座の弁ポートを開閉するように構成された制御弁であって、
前記弁体が、弁体の弁開時において、
前記ガイドブッシュの弁体を挿通する挿通孔に位置する第1のフランジ部と、
前記第1のフランジ部と離間して、ガイドブッシュに形成された均圧孔の開口部近傍に位置するとともに、前記均圧孔の開口部と対向するように配置された第2のフランジ部とを備え、
前記第1のフランジ部と第2のフランジ部との間に、第1の溝部が形成され、
前記第2のフランジ部と弁体の基端部との間に第2の溝部が形成され、
前記第1の溝部が、前記均圧孔の開口部と対向するように配置されていることを特徴とする制御弁。
【請求項2】
前記第1のフランジ部と第2のフランジ部との間に、少なくとも1つの別のフランジ部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の制御弁。
【請求項3】
前記第2のフランジ部と弁体の基端部との間に、少なくとも1つの別のフランジ部が形成されていることを特徴とする請求項1から2のいずれかに記載の制御弁。
【請求項4】
前記溝部が、フランジ部を弁体に突設形成することによって形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の制御弁。
【請求項5】
前記溝部が、弁体に溝部を凹設することによって形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の制御弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、流量制御弁などの制御弁に関し、特に、弁体がガイドブッシュに案内されて、弁体が弁座に対して離接する方向に移動して、弁体が弁座の弁ポートを開閉するように構成された制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の制御弁、例えば、永久磁石からなるローターマグネットを備えた電動弁として、特許文献1(特開2010−43727号公報)などがあり、図5に示したような構造となっている。
【0003】
すなわち、従来の電動弁100は、弁本体102を備えており、弁本体102内には弁室104が形成されている。そして、この弁室104に連通するように、入口継手である第1の配管部材106と、出口継手である第2の配管部材108とが装着されている。
【0004】
また、第1の配管部材106の上部には、弁本体102に弁座110が固定されており、この弁座110に弁ポート112が設けられている。
【0005】
さらに、弁本体102内には、ガイドブッシュ114が固定されている。すなわち、ガイドブッシュ114の下端には、弁座110に嵌着する嵌合部114bが形成されており、弁座110に固定されている。
【0006】
また、ガイドブッシュ114の嵌合部114bの上方に一定間隔離間して、弁室104とローター室118を隔てる隔壁116が形成されており、この隔壁116の端部120が弁本体102の内壁に嵌合することにより、弁本体102内にガイドブッシュ114が固定されている。
【0007】
さらに、弁本体102の上端部に、固定金具122を嵌合することにより、固定金具122の爪部材122aにより、ガイドブッシュ114が弁本体102に固定されている。
【0008】
一方、このガイドブッシュ114の嵌合部114bと隔壁116との間に、主流路124が形成されており、隔壁116には、ニードル弁126が挿通される挿通孔128が形成されている。
【0009】
また、この隔壁116の上部には、略筒状のガイド部130が延設されており、ガイド部130の下端には、水平方向に設けられた均圧孔132が形成されている。
【0010】
さらに、均圧孔132は、図5の矢印Dで示したように、ガイドブッシュ114の下端側方に形成された連通孔(図示せず)を介して、出口継手である第2の配管部材108内へと連通するように構成されている。
【0011】
一方、ガイドブッシュ114のガイド部130には、内周に雌ネジ130aが形成されており、この雌ネジ130aに噛合するように、ローター軸134の下端に形成された雄ネジ部136の雄ネジ136aが螺着されている。
【0012】
このローター軸134に形成されたニードル弁挿通孔138に、ニードル弁126が挿通され、ニードル弁126の基端部に形成された拡径部126aにより、ニードル弁126の抜け落ちが防止されるようになっている。
【0013】
また、ローター軸134の上端の外周には、永久磁石からなる略円筒形のローターマグネット140が、嵌合部140aにより嵌着されている。
【0014】
そして、ローター軸134の上端に外周方向に突設された弁閉ストッパー142が、ガイドブッシュ114のガイド部130上端に形成された弁閉ストッパー144に、弁閉時に当接することにより、弁閉時におけるストッパーの機能をするように構成されている。
【0015】
また、ローター軸134の上部には、バネ受け金具146が、ローター軸134の上端に嵌合されている。そして、これらのバネ受け金具146とニードル弁126の基端部に形成された拡径部126aとの間に圧縮状態のコイルバネ150が介装され、ニードル弁126を弁座110の方向に突出するように付勢するよう構成されている。
【0016】
さらに、弁本体102の上部には、有底筒形状のケース152が溶着などによって固定されており、このケース152の内部に、これらのローターマグネット140などからなる駆動部154が収容されるとともに、ケース152の内部にローター室118が形成されている。また、ケース152の外周に、ステーターコイル148が装着されている。
【0017】
駆動部154は、ケース152と、ケース152の外側に固定されたステーターコイル148と、ケース152内に上下動且つ回転可能に設けられたローター軸134と、ローターマグネット140を備えたステッピングモータから構成されており、ローターマグネット140は、ステーターコイル148との電磁作用により回転する。
【0018】
このように構成される電動弁100は、弁開状態においては、ステーターコイル148が励磁されると、ローターマグネット140が回転し、このローターマグネット140とともに、ローター軸134、ニードル弁126が一体的に回転する。
その結果、ローター軸134の雄ネジ部136の雄ネジ136aと、ガイド部130に形成された雌ネジ130aとが噛合して案内され、ニードル弁126が上方に移動する。これにより、ニードル弁126の下端が、弁座110の弁ポート112から離間して、弁開状態となるように構成されている。
【0019】
そして、この状態から、ステーターコイルの励磁パターンを逆にすると、ローターマグネット140が逆方向に回転し、ローターマグネット140とともに、ローター軸134、ニードル弁126が一体的に回転して、ローター軸134の雄ネジ部136の雄ネジ136aと、ガイド部130に形成された雌ネジ130aとが噛合して案内され、ニードル弁126が下方に移動する。
このとき、ローターマグネット140の回転にともなって、ローター軸134の上端に外周方向に突設された弁閉ストッパー142が、ガイドブッシュ114のガイド部130上端に形成された弁閉ストッパー144に当接することにより、ニードル弁126の移動が止まり弁閉状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開2010−43727号公報
【特許文献2】登録実用新案3145048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
しかしながら、このような従来の電動弁100では、図5の矢印Aで示したように、弁開時において、ニードル弁126の先端126bと弁座110の弁ポート112との隙間から、入口継手である第1の配管部材106から高圧の流体が、弁室104へと流入することがある。
【0022】
そして、このように弁室104へと流入した高圧の流体が、図5の矢印Bで示したように、ガイドブッシュ114の隔壁116のニードル弁126の挿通孔128と、ニードル弁126との間隙から、速い流速で、ガイドブッシュ114のガイド部130の内壁とローター軸134の先端との間に形成された空間S内へ流入することがある。
【0023】
このため、図5の矢印Bで示したように、ガイドブッシュ114のガイド部130の内壁とニードル弁126との間で、ニードル弁126外周に沿って渦を巻いた状態となる。これにより、弁開時において、この渦流の影響で、ニードル弁126が振動して、異音、騒音が発生することになる。
【0024】
また、高圧になった空間S内の流体を、図5の矢印Cで示したように、均圧孔132から、図5の矢印Dで示したように、ガイドブッシュ114の下端側方に形成された連通孔(図示せず)を介して、出口継手である第2の配管部材108内へと排出する必要がある。
【0025】
すなわち、高圧になった空間S内と低圧側である第2の配管部材108側との圧力を均圧にすることによって、開弁操作の際に、ニードル弁126が弁座110の弁ポート112からスムーズに離反するようにする必要がある。
【0026】
しかしながら、上記のように、高圧になった空間S内で流体が、ニードル弁126の外周に沿って渦を巻いた状態となった場合には、均圧孔132から、高圧になった空間Sから円滑に排出することができないおそれがあり、電動弁100の作動を阻害するおそれがある。
【0027】
本発明は、このような現状に鑑み、弁開時において、渦流の影響で、弁体が振動して、異音、騒音が発生することがなく、高圧になった空間S内の流体を、均圧孔を介して排出することができ、制御弁の作動を正確に円滑に行うことができる制御弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明は、前述したような従来技術における課題及び目的を達成するために発明されたものであって、本発明の制御弁は、
弁体がガイドブッシュに案内されて、弁体が弁座に対して離接する方向に移動して、弁体が弁座の弁ポートを開閉するように構成された制御弁であって、
弁体がガイドブッシュに案内されて、弁体が弁座に対して離接する方向に移動して、弁体が弁座の弁ポートを開閉するように構成された制御弁であって、
前記弁体が、弁体の弁開時において、
前記ガイドブッシュの弁体を挿通する挿通孔に位置する第1のフランジ部と、
前記第1のフランジ部と離間して、ガイドブッシュに形成された均圧孔の開口部近傍に位置するとともに、前記均圧孔の開口部と対向するように配置された第2のフランジ部とを備え、
前記第1のフランジ部と第2のフランジ部との間に、第1の溝部が形成され、
前記第2のフランジ部と弁体の基端部との間に第2の溝部が形成され、
前記第1の溝部が、前記均圧孔の開口部と対向するように配置されていることを特徴とする。
【0029】
このように構成することによって、弁室へと流入した高圧の流体が、ガイドブッシュの弁体の挿通孔と、ニードル弁との間隙から、ガイドブッシュの内壁の間に形成された空間内に、早い流速で流入したとしても、渦流の発生を防止することができる。
【0030】
すなわち、弁開時において、ガイドブッシュの弁体の挿通孔と、ニードル弁との間隙から、ガイドブッシュの内壁の間に形成された空間S内に、高圧の流体が早い流速で流入したとしても、先ず、ガイドブッシュの弁体を挿通(すなわち、同心を出すために案内)する挿通孔に位置する第1のフランジ部がガイドの役割を果たし、流体による弁体の振れや振動を抑制することができる。
【0031】
また、この第1のフランジ部を通過した流体は、第1のフランジ部と第2のフランジ部との間に形成された第1の溝部からなる広い空間による拡散作用によって、流速が低減され、流体が弁体の外周に沿って渦を巻いた状態とならず、上方に向かって流れることになる。
【0032】
さらに、この第1の溝部で流速が低減された流体は、第2のフランジ部と弁体の基端部との間に形成された第2の溝部からなる広い空間による拡散作用によって、流速がさらに低減され、流体が弁体の外周に沿って渦を巻いた状態とならず、上方に向かって流れることになる。
【0033】
これにより、弁開時において、弁閉直前の状態において、渦流の影響で、弁体が振動して、異音、騒音が発生することがなく、高圧になった空間S内の流体を、均圧孔を介して排出することができ、制御弁の作動を正確に円滑に行うことができる。
【0034】
また、この際、第2のフランジ部が、ガイドブッシュに形成された均圧孔の開口部近傍に位置するとともに、この均圧孔の開口部と対向するように配置されているので、第1のフランジ部と第2のフランジ部との間に形成された第1の溝部からなる広い空間が、均圧孔の開口部と対向することになる。
従って、これにより、第1の溝部で流速が低減された流体を、均圧孔を介して円滑に排出することができ、制御弁の作動を正確に円滑に行うことができる。
【0035】
また、本発明の制御弁は、前記第1のフランジ部と第2のフランジ部との間に、少なくとも1つの別のフランジ部が形成されていることを特徴とする。
【0036】
このように第1のフランジ部と第2のフランジ部との間に、少なくとも1つの別のフランジ部が形成されていれば、フランジ部と溝部がさらに多くなり、これらのフランジ部による流速の低減、剥離効果、溝部による流速の低減、さらに、流体の均圧孔を介しての円滑な排出効果に優れることになる。
【0037】
その結果、渦流の影響で、弁体が振動して、異音、騒音が発生することがなく、制御弁の作動をさらに正確に円滑に行うことができる。
【0038】
また、本発明の制御弁は、前記第2のフランジ部と弁体の基端部との間に、少なくとも1つの別のフランジ部が形成されていることを特徴とする。
【0039】
このように第2のフランジ部と弁体の基端部との間に、少なくとも1つの別のフランジ部が形成されていれば、フランジ部と溝部がさらに多くなり、これらのフランジ部による流速の低減、剥離効果、溝部による流速の低減、さらに、流体の均圧孔を介しての円滑な排出効果に優れることになる。
【0040】
その結果、渦流の影響で、弁体が振動して、異音、騒音が発生することがなく、制御弁の作動をさらに正確に円滑に行うことができる。
【0041】
また、本発明の制御弁は、前記溝部が、フランジ部を弁体に突設形成することによって形成されていることを特徴とする。
【0042】
また、本発明の制御弁は、前記溝部が、弁体に溝部を凹設することによって形成されていることを特徴とする。
【0043】
このように、溝部は、フランジ部を弁体に突設形成することによって、また、弁体に溝部を凹設することによって形成しても良い。
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば、弁体の弁開時に、ガイドブッシュの弁体の挿通孔と、ニードル弁との間隙から、ガイドブッシュの内壁の間に形成された空間内に、高圧の流体が早い流速で流入したとしても、先ず、ガイドブッシュの弁体を挿通(すなわち、同心を出すために案内)する挿通孔に位置する第1のフランジ部がガイドの役割を果たし、流体による弁体の振れや振動を抑制することができる。
【0045】
また、この第1のフランジ部を通過した流体は、第1のフランジ部と第2のフランジ部との間に形成された第1の溝部からなる広い空間による拡散作用によって、流速がさらに低減され、流体が弁体の外周に沿って渦を巻いた状態とならず、上方に向かって流れることになる。
【0046】
さらに、この第1の溝部で流速が低減された流体は、第2のフランジ部と弁体の基端部との間に形成された第2の溝部からなる広い空間による拡散作用によって、流速がさらに低減され、流体が弁体の外周に沿って渦を巻いた状態とならず、上方に向かって流れることになる。
【0047】
これにより、弁開時において、渦流の影響で、弁体が振動して、異音、騒音が発生することがなく、高圧になった空間S内の流体を、均圧孔を介して排出することができ、制御弁の作動を正確に円滑に行うことができる。
【0048】
また、この際、第2のフランジ部が、ガイドブッシュに形成された均圧孔の開口部近傍に位置するとともに、この均圧孔の開口部と対向するように配置されているので、第1のフランジ部と第2のフランジ部との間に形成された第1の溝部からなる広い空間が、均圧孔の開口部と対向することになる。
従って、これにより、第1の溝部で流速が低減された流体を、均圧孔を介して円滑に排出することができ、制御弁の作動を正確に円滑に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1図1は、本発明の制御弁の弁開時を示す縦断面図である。
図2図2は、図1の部分拡大断面図である。
図3図3は、本発明の制御弁の弁閉状態を示す部分拡大縦断面図である。
図4図4は、本発明の別の実施例の制御弁の弁開時を示す縦断面図である。
図5図5は、従来の電動弁の弁開時を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、本発明の実施の形態(実施例)を図面に基づいてより詳細に説明する。
【実施例1】
【0051】
図1は、本発明の制御弁の弁開時を示す縦断面図、図2は、図1の部分拡大断面図、図3は、本発明の制御弁の弁閉状態を示す部分拡大縦断面図である。
【0052】
図1図3において、符号10は、全体で本発明の制御弁を示している。
【0053】
本発明の制御弁10は、例えば、永久磁石からなるローターマグネットを備えた電動弁を例として示している。
【0054】
すなわち、本発明の制御弁10は、図1に示したように、弁本体12を備えており、弁本体12内には弁室14が形成されている。そして、この弁室14に連通するように、入口継手である第1の配管部材16と、出口継手である第2の配管部材18とが装着されている。
【0055】
また、第1の配管部材16の上部には、弁本体12に弁座20が固定されており、この弁座20に弁ポート22が設けられている。
【0056】
さらに、弁本体12内には、ガイドブッシュ24が固定されている。すなわち、ガイドブッシュ24の下端には、弁座20に嵌着する嵌合部24aが形成されており、弁座20に固定されている。
【0057】
また、ガイドブッシュ24の嵌合部24aの上方に一定間隔離間して、弁室14とローター室28を隔てる隔壁26が形成されており、この隔壁26の端部30が弁本体12の内壁に嵌合することにより、弁本体12内にガイドブッシュ24が固定されている。
【0058】
さらに、弁本体12の上端部に、固定金具32を嵌合することにより、固定金具32の爪部材32aにより、ガイドブッシュ24が弁本体12に固定されている。
【0059】
一方、このガイドブッシュ24の嵌合部24aと隔壁26との間に、主流路34が形成されており、隔壁26には、弁体を構成するニードル弁36が挿通される挿通孔38が形成されている。
【0060】
また、この隔壁26の上部には、略筒状のガイド部40が延設されており、ガイド部40の下端には、水平方向に設けられた均圧孔42が形成されている。
【0061】
さらに、均圧孔42は、図1の矢印Eで示したように、ガイドブッシュ24の下端側方に形成された連通孔(図示せず)を介して、出口継手である第2の配管部材18内へと連通するように構成されている。なお、この均圧孔42、連通孔の形状、配置位置、数などは特に限定されるものではない。
【0062】
一方、ガイドブッシュ24のガイド部40には、内周に雌ネジ40aが形成されており、この雌ネジ40aに噛合するように、ローター軸44の下端に形成された雄ネジ部46の雄ネジ46aが螺着されている。
【0063】
このローター軸44に形成されたニードル弁挿通孔48に、ニードル弁36が挿通され、ニードル弁36の基端部に形成された拡径部36aにより、ニードル弁36の抜け落ちが防止されるようになっている。
【0064】
また、ローター軸44の上端の外周には、永久磁石からなる略円筒形のローターマグネット50が、嵌合部50aにより嵌着されている。
【0065】
そして、ローター軸44の上端に外周方向に突設された弁閉ストッパー52が、ガイドブッシュ24のガイド部40上端に形成された弁閉ストッパー54に、弁閉時に当接することにより、弁閉時におけるストッパーの機能をするように構成されている。
【0066】
また、ローター軸44の上部には、バネ受け金具56が、ローター軸44の上端に嵌合されている。そして、これらのバネ受け金具56とニードル弁36の基端部に形成された拡径部36aとの間に圧縮状態のコイルバネ60が介装され、ニードル弁36を弁座20の方向に突出するように付勢するよう構成されている。
【0067】
さらに、弁本体12の上部には、有底筒形状のケース62が溶着などによって固定されており、このケース62の内部に、これらのローターマグネット50などからなる駆動部64が収容されるとともに、ケース62の内部にローター室28が形成されている。また、ケース62の外周に、ステーターコイル58が装着されている。
【0068】
駆動部64は、ケース62と、ケース62の外側に固定されたステーターコイル58と、ケース62内に上下動且つ回転可能に設けられたローター軸44と、ローターマグネット50を備えたステッピングモータから構成されており、ローターマグネット50は、ステーターコイル58との電磁作用により回転する。
【0069】
このように構成される電動弁10は、図1図2に示したように、弁開状態においては、ステーターコイル58が励磁されると、ローターマグネット50が回転し、このローターマグネット50とともに、ローター軸44、ニードル弁36が一体的に回転する。
その結果、ローター軸44の雄ネジ部46の雄ネジ46aと、ガイド部40に形成された雌ネジ40aとが噛合して案内され、ニードル弁36が上方に移動する。これにより、ニードル弁36の下端が、弁座20の弁ポート22から離間して、弁開状態となるように構成されている。
【0070】
そして、この状態から、図3に示したように、ステーターコイルの励磁パターンを逆にすると、ローターマグネット50が逆方向に回転し、ローターマグネット50とともに、ローター軸44、ニードル弁36が一体的に回転して、ローター軸44の雄ネジ部46の雄ネジ46aと、ガイド部40に形成された雌ネジ40aとが噛合して案内され、ニードル弁36が下方に移動する。
このとき、ローターマグネット50の回転にともなって、ローター軸44の上端に外周方向に突設された弁閉ストッパー52が、ガイドブッシュ24のガイド部40上端に形成された弁閉ストッパー54に当接することにより、ニードル弁36の移動が止まり弁閉状態となる。
【0071】
ところで、従来の電動弁100では、図5の矢印Cで示したように、ガイドブッシュ114のガイド部130の内壁とニードル弁126との間で、ニードル弁126外周に沿って渦を巻いた状態となる。これにより、弁開時において、この渦流の影響で、ニードル弁126が振動して、異音、騒音が発生することになる。
上記のように、高圧になった空間S内で流体が、ニードル弁36の外周に沿って渦を巻いた状態となった場合には、均圧孔42から、高圧になった空間Sから円滑に排出することができないおそれがあり、電動弁100の作動を阻害するおそれがある。
【0072】
このため、本発明の制御弁10では、以下のように構成している。
【0073】
すなわち、図1図2に示したように、弁体を構成するニードル弁36が、ニードル弁36の弁開時において、ガイドブッシュ24のニードル弁36を挿通する挿通孔38に位置する第1のフランジ部66を備えている。
【0074】
また、この第1のフランジ部66と離間して、ガイドブッシュ24に形成された均圧孔42の開口部近傍に位置するとともに、この均圧孔42の開口部と対向するように配置された第2のフランジ部68を備えている。そして、この第1のフランジ部66と第2のフランジ部68との間に、第1の溝部70が形成されている。
【0075】
さらに、第2のフランジ部68と弁体であるニードル弁36の基端部36cとの間に第2の溝部72が形成されている。
【0076】
このように構成することによって、図1の矢印Aで示したように、弁開時において、ニードル弁36の先端36bと弁座20の弁ポート22との隙間から、入口継手である第1の配管部材16から高圧の流体が、弁室14へと流入することがある。
【0077】
図1の矢印Bで示したように、この弁室14へと流入した高圧の流体が、ガイドブッシュ24のニードル弁36の挿通孔38と、ニードル弁36との間隙から、ガイドブッシュ24の内壁の間に形成された空間S内に、早い流速で流入したとしても、渦流の発生を防止することができる。
【0078】
すなわち、ニードル弁36の弁開時に、ガイドブッシュ24のニードル弁36の挿通孔38と、ニードル弁36との間隙から、ガイドブッシュ24の内壁の間に形成された空間S内に、高圧の流体が早い流速で流入したとしても、先ず、ガイドブッシュ24のニードル弁36を挿通(すなわち、同心を出すために案内)する挿通孔38に位置する第1のフランジ部66がガイドの役割を果たし、流体による弁体の振れや振動を抑制することができる。
【0079】
また、図1の矢印Cで示したように、この第1のフランジ部66を通過した流体は、第1のフランジ部66と第2のフランジ部68との間に形成された第1の溝部70からなる広い空間による拡散作用によって、流速がさらに低減され、流体が弁体の外周に沿って渦を巻いた状態とならず、上方に向かって流れることになる。
【0080】
さらに、図1の矢印Cで示したように、この第1の溝部70で流速が低減された流体は、第2のフランジ部68とニードル弁36の基端部36Cとの間に形成された第2の溝部72からなる広い空間による拡散作用によって、流速がさらに低減され、流体が弁体の外周に沿って渦を巻いた状態とならず、上方に向かって流れることになる。
【0081】
これにより、弁開時において、渦流の影響で、弁体が振動して、異音、騒音が発生することがなく、高圧になった空間S内の流体を、均圧孔42を介して排出することができ、制御弁の作動を正確に円滑に行うことができる。
【0082】
また、この際、第2のフランジ部68が、ガイドブッシュ24に形成された均圧孔42の開口部近傍に位置するとともに、この均圧孔42の開口部と対向するように配置されているので、第1のフランジ部66と第2のフランジ部68との間に形成された第1の溝部70からなる広い空間が、図1図2に示したように、均圧孔42の開口部と対向することになる。
従って、これにより、図1の矢印D、Eで示したように、第1の溝部70で流速が低減された流体を、均圧孔42を介して、ガイドブッシュ24の下端側方に形成された連通孔(図示せず)を介して、出口継手である第2の配管部材18内へと円滑に排出することができ、制御弁10の作動を正確に円滑に行うことができる。
【0083】
なお、この場合、第2のフランジ部68が、ガイドブッシュ24に形成された均圧孔42の開口部近傍に位置するとともに、この均圧孔42の開口部と対向するように配置されているとは、均圧孔42の開口部の内壁上部42aの位置か、内壁上部42aの位置よりも僅かに上方か、内壁上部42aの位置よりも僅かに下方に位置するようにすればよい。
【0084】
しかしながら、この位置は、上記のように第1の溝部70で流速が低減された流体を、均圧孔42を介して円滑に排出する効果を妨げない範囲で適宜変更することができる。
【0085】
また、図2に示したように、第1の溝部70の溝深さT1と、第2の溝部72の溝深さT2も、特に限定されるものではなく、上述の流速の低減効果などを考慮して適宜変更できる。例えば、第1の溝部70の溝深さと、第2の溝部72の溝深さを同じ溝深さとするほか、第1の溝部70の溝深さと、第2の溝部72の溝深さとで溝深さを変更することもできる。
【0086】
すなわち、第1のフランジ部66と第2のフランジ部68の突設距離も適宜変更することができる。
【0087】
また、第1の溝部70と第2の溝部72の溝部の形状、すなわち、第1のフランジ部66と第2のフランジ部68の形状も特に限定されるものではない。
【0088】
なお、この実施例の第1のフランジ部66では、両面にテーパー面66aを形成して流体の流れを、第1の溝部70に導きやすくして、上記の流体の剥離効果を奏しやすくしており、同様に、第2のフランジ部68では、両面にテーパー面68aを形成して流体の流れを、第2の溝部72に導きやすくして、上記の流体の剥離効果を奏しやすくしている。
【0089】
さらに、これらの第1の溝部70、第2の溝部72は、第1のフランジ部66と第2のフランジ部68をニードル弁36に突設形成することによって形成しても良い。
【0090】
また、第1の溝部70、第2の溝部72は、ニードル弁36に第1の溝部70、第2の溝部72を凹設することによって形成してもよい。
【0091】
さらには、これらを組み合わせて、ニードル弁36に第1の溝部70、第2の溝部72を形成するようにしてもよい。
【実施例2】
【0092】
図4は、本発明の別の実施例の制御弁の弁開時を示す縦断面図である。
【0093】
この実施例の制御弁10は、図1図4に示した制御弁10と基本的には同様な構成であり、同一の構成部材には、同一の参照番号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0094】
この実施例の制御弁10では、図4に示したように、第1のフランジ部66と第2のフランジ部68との間に、別の第3のフランジ部74が形成されている。
【0095】
なお、この第3のフランジ部74の数、突出高さなどは特に限定されるものではなく、少なくとも1つの第3のフランジ部74が形成されていればよく、適宜変更可能である。
【0096】
このように第1のフランジ部66と第2のフランジ部68との間に、少なくとも1つの別の第3のフランジ部74が形成されていれば、フランジ部と溝部がさらに多くなり、これらのフランジ部による流速の低減、剥離効果、溝部による流速の低減、さらに、流体の均圧孔を介しての円滑な排出効果に優れることになる。
【0097】
その結果、渦流の影響で、弁体が振動して、異音、騒音が発生することがなく、制御弁の作動をさらに正確に円滑に行うことができる。
【0098】
なお、図示しないが、この第3のフランジ部74の代わりに、または、この第3のフランジ部74とともに、第2のフランジ部68とニードル弁36の基端部36cとの間に、少なくとも1つの別の第4のフランジ部が形成されていてもよい。
【0099】
このように第2のフランジ部68とニードル弁36の基端部36cとの間に、少なくとも1つの別の第4のフランジ部が形成されていれば、フランジ部と溝部がさらに多くなり、これらのフランジ部による流速の低減、剥離効果、溝部による流速の低減、さらに、流体の均圧孔を介しての円滑な排出効果に優れることになる。
【0100】
その結果、渦流の影響で、弁体が振動して、異音、騒音が発生することがなく、制御弁の作動をさらに正確に円滑に行うことができる。
【0101】
以上、本発明の好ましい実施の態様を説明してきたが、本発明はこれに限定されることはなく、例えば、上記実施例では、弁体として、ニードル弁36を用いたが、その他の形状の弁体を用いることもでき、さらには、制御弁10として、電動弁に適用したが、その他の電磁弁などの制御弁に適用することもできる。
【0102】
また、本発明の制御弁のニードル弁36の構造を、特許文献2(登録実用新案3145048号公報)に開示されるように、ニードル弁の基端部とローター軸との間に空間を設けて圧縮バネを省略した構造に適用することができるなど、種々の形状の弁体に適用することができる。
【0103】
さらには、上記実施例では、入口継手である第1の配管部材16と、出口継手である第2の配管部材18としたが、第1の配管部材16を出口継手として、第2の配管部材18を入口継手とすることも可能であるなど本発明の目的を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明は、例えば、流量制御弁などの制御弁に関し、特に、弁体がガイドブッシュに案内されて、弁体が弁座に対して離接する方向に移動して、弁体が弁座の弁ポートを開閉するように構成された制御弁に適用することができる。
【符号の説明】
【0105】
10 制御弁
12 弁本体
14 弁室
16 第1の配管部材
18 第2の配管部材
20 弁座
22 弁ポート
24 ガイドブッシュ
24a 嵌合部
26 隔壁
28 ローター室
30 端部
32 固定金具
32a 爪部材
34 主流路
36 ニードル弁
36a 拡径部
36b 先端
36c 基端部
38 挿通孔
40 ガイド部
40a 雌ネジ
42 均圧孔
42a 内壁上部
44 ローター軸
46 雄ネジ部
46a 雄ネジ
48 ニードル弁挿通孔
50 ローターマグネット
50a 嵌合部
52 弁閉ストッパー
54 弁閉ストッパー
56 バネ受け金具
58 ステーターコイル
60 コイルバネ
62 ケース
64 駆動部
66 第1のフランジ部
66a テーパー面
68 第2のフランジ部
68a テーパー面
70 第1の溝部
72 第2の溝部
74 第3のフランジ部
100 電動弁
102 弁本体
104 弁室
106 第1の配管部材
108 第2の配管部材
110 弁座
112 弁ポート
114 ガイドブッシュ
114b 嵌合部
116 隔壁
118 ローター室
120 端部
122 固定金具
122a 爪部材
124 主流路
126 ニードル弁
126a 拡径部
126b 先端
128 挿通孔
130 ガイド部
130a 雌ネジ
132 均圧孔
134 ローター軸
136 雄ネジ部
136a 雄ネジ
138 ニードル弁挿通孔
140 ローターマグネット
140a 嵌合部
142 弁閉ストッパー
144 弁閉ストッパー
146 バネ受け金具
148 ステーターコイル
150 コイルバネ
152 ケース
154 駆動部
図1
図2
図3
図4
図5