(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5658736
(24)【登録日】2014年12月5日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】ストーマ装具および該器具のための粘着ウェーハ
(51)【国際特許分類】
A61F 5/448 20060101AFI20150108BHJP
【FI】
A61F5/448
【請求項の数】7
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-500214(P2012-500214)
(86)(22)【出願日】2010年3月16日
(65)【公表番号】特表2012-520705(P2012-520705A)
(43)【公表日】2012年9月10日
(86)【国際出願番号】EP2010053330
(87)【国際公開番号】WO2010106039
(87)【国際公開日】20100923
【審査請求日】2013年2月19日
(31)【優先権主張番号】09155337.0
(32)【優先日】2009年3月17日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591000414
【氏名又は名称】ホリスター・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】HOLLISTER INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100068526
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 恭生
(74)【代理人】
【識別番号】100103115
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 康廣
(72)【発明者】
【氏名】クリステン・グルム−シュエンセン
【審査官】
金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−051258(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第1832256(EP,A2)
【文献】
特表2001−502570(JP,A)
【文献】
国際公開第1993/00056(WO,A1)
【文献】
国際公開第2001/54632(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 5/448
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストーマパウチをユーザーの皮膚に直接的または間接的に固定するための粘着ウェーハ
を具備し、該ウェーハが複数の裁断用案内線によって包囲された初孔を有し、該案内線が
、ユーザーが該初孔を所望の孔径まで裁断することを可能にするストーマ装具であって、
該裁断用案内線が該初孔の上方領域で実質的に収束し、該初孔が該ウェーハの中心から上端の方へ偏心していることを特徴とするストーマ装具。
【請求項2】
裁断用案内線がパウチの長手方向に対応する半径方向、該初孔の上方領域で収束する請求項1に記載のストーマ装具。
【請求項3】
粘着ウェーハがユーザーの身体側に剥離ライナーを具備し、該剥離ライナーに裁断用案
内線がプリントされた請求項1または2に記載のストーマ装具。
【請求項4】
パウチが粘着ウェーハの基部側と機械的接合または接着剤接合により接合された請求項
1〜3のいずれかに記載のストーマ装具。
【請求項5】
パウチが粘着ウェーハの基部側に永続的に固定された請求項1〜3のいずれかに記載の
ストーマ装具。
【請求項6】
パウチが排出式パウチ、密閉式パウチまたは洗浄式パウチである請求項1〜5のいずれ
かに記載のストーマ装具。
【請求項7】
ストーマパウチをユーザーの皮膚に直接的または間接的に固定するように適合したスト
ーマ装具用粘着ウェーハであって、該ウェーハが複数の裁断用案内線によって包囲された
初孔を有し、該案内線が、ユーザーが該初孔を所望の孔径まで裁断することを可能にし、
該裁断用案内線が該初孔の上方領域で実質的に収束し、該初孔が該ウェーハの中心から上端の方へ偏心していることを特徴とする粘着ウェーハ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストーマパウチをユーザーの皮膚に直接的または間接的に固定するための粘着ウェーハを具備するストーマ装具に関する。該ウェーハは、複数の裁断用案内線によって包囲された初孔を有し、該案内線は、ユーザーが該初孔を所望の孔径まで裁断することを可能にする。
【背景技術】
【0002】
通常、ストーマ装具用粘着ウェーハには、小さな初孔および、該初孔を包囲する状態で該ウェーハにプリントされるか、または該ウェーハの身体側にある剥離ライナーにプリントされる同心状の複数の裁断用案内線が備わっているので、ユーザーが入口開口部を所望の孔径に裁断することにより、該ウェーハにストーマの実寸に適合した開口部を付与することができる。このような同心状の裁断用案内線はEP0984750B1またはEP1832256A2に例示されている。
【発明の概要】
【0003】
本発明によれば、ストーマパウチをユーザーの皮膚に直接的または間接的に固定するための粘着ウェーハを具備し、該ウェーハが複数の裁断用案内線によって包囲された初孔を有し、該案内線が、ユーザーが該初孔を所望の孔径まで裁断することを可能にするストーマ装具であって、該裁断用案内線が初孔と、該初孔の上方領域で実質的に収束する該ストーマ装具を提供することは有益であることが理解される。
【0004】
これによって、パウチの入口開口部は該パウチの上端の方に移動するので、パウチの頭隙が減少し、このことは、パウチのより高い充填率が達成できることを意味する。この態様は、衣服の下に隠すことができる分離したパウチへのユーザーの要望を満足させるので、ユーザーの立場から有益である。本発明に係るパウチによって、小さな頭隙およびユーザーの身体の下部へ装着できる比較的小型のパウチを達成できる。さらに排出式パウチについては、下部装着により、出口開口部が便器へより接近するので、パウチの開口操作がより簡便となり、その結果、パウチを空にすることがより簡便となる。
【0005】
この小さな頭隙を達成する別の利点は、パウチが脱出し難いということ、すなわち、パウチが加重時にユーザーの身体から外向的に懸垂しないことである。
【0006】
「収束」という用語は、複数の環状の裁断用案内線が、共通点で必ずしも合体する必要はないが、1つの領域で相互に接近するか、または初孔へ接近することと理解するべきである。
【0007】
好ましい実施態様においては、裁断用案内線は初孔と、パウチの長手方向に対応する半径方向のところで収束する。これにより、パウチの上端における頭隙の死容積が最小化される。
【0008】
本発明の1つの実施態様においては、粘着ウェーハは身体側に剥離ライナーを有しており、該剥離ライナー上には裁断用案内線がプリントされる。これにより、粘着ウェーハの製造が促進される。
【0009】
本発明により、収束する裁断用案内線を伴う偏心初孔は様々な型のストーマ装具に採用できるようになる。従って、1つの実施態様においては、パウチは粘着ウェーハの基部側と機械的接合または接着剤接合により接合される(すなわちツーピース態様)。別の実施態様においては、パウチは粘着ウェーハの基部側に永続的に固定される(すなわちワンピース態様)。
【0010】
さらに、パウチは使い捨てパウチまたは再利用可能なパウチであってもよいし、また密閉式パウチ、排出式パウチまたは洗浄式パウチのいずれかであってもよい。
【0011】
ツーピース型ストーマ装具においては、ウェーハは別々に付与されてもよい。従って、本発明の第2の側面においては、ストーマパウチをユーザーの皮膚に直接的または間接的に固定するのに適合したストーマ装具用粘着ウェーハであって、該ウェーハが、ユーザーが初孔を所望の孔径まで裁断することを可能にする複数の裁断用案内線によって包囲された初孔を有し、少なくとも2つの裁断用案内線が初孔と、該初孔の上方領域で実質的に収束する該粘着ウェーハが提供される。
【0012】
以下、添付図面に基づいて本発明をさらに詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】粘着ウェーハが排出式パウチと接合した本発明の第1の実施態様であり、身体側または基部側から見た図である。
【
図2】粘着ウェーハが使い捨てパウチと接合した本発明の第2の実施態様であり、身体側または基部側から見た図である。
【
図3】身体側または基部側から見た本発明の第3の実施態様に係る粘着ウェーハである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1および
図2においては、排出式ストーマパウチは2つの側壁1および2の集成体であり、基部の側壁1は入口14を有し、端部の側壁2は、図示される実施態様によれば、包帯パネルまたは快感層3を有する。側壁1,2は、例えば可撓性プラスチック材料等のようないずれかの適切な材料から製造してもよい。
【0015】
本発明の第1の実施態様に係るパウチの例を
図1に示す。該図において、パウチは身体側から見たものである。当該製品は入口14を有する。当該入口の周囲には、剥離ライナー18を取り外したときに、ユーザーの皮膚またはユーザーのストーマの周囲に予め装着された面板に対してパウチを接着させるための粘着性のウェーハまたは遮断材15が配設される。粘着ウェーハ15は小さな初孔17、および当該初孔を取り囲むように、当該ウェーハ上にプリントされるか、または当該ウェーハの身体側に付与される剥離ライナー上にプリントされる複数の環状の裁断用案内線16を有するので、ユーザーが入口開口部14を適切な寸法で裁断することにより、ストーマの実寸に適合する粘着ウェーハを準備することができる。
【0016】
図1の実施態様に係るパウチは出口部4を有し、当該出口部は2つの側壁1および2のそれぞれにおいて横方向に延びるバイアス部材11を有する。好ましくは、バイアス部材11は、可撓性があるが、比較的剛質な、バネ状ストリップの形態を有する。排出部4は、これらのストリップ状バイアス部材11の周囲に巻き付け、パウチ閉鎖用締結ストリップ5に固定してもよい。
【0017】
図1〜
図3に示された本発明に係る実施態様によれば、偏心初孔が配設される。即ち、該初孔17は遮断材15の中央ではなく、中心を外して配置されるので、ユーザーの身体上のより下方の部位へパウチを装着することができ、同時に、パウチの頭隙が減少するので、より大きな「有効な」容積を得ることができる。
【0018】
この態様は、ユーザーが衣服の下に隠すことができる分離したパウチを要望しているので、ユーザーの立場から有益である。本発明により、小さな頭隙およびユーザーの身体上の下方部位へ装着できる比較的小型のパウチを達成することができる。さらに、下方部位への装着により、出口開口部4が便器へより接近するので、
図1の第1の実施態様に係るパウチの開口操作がより簡便となり、その結果、パウチを空にすることがより簡便となる。
【0019】
この小さな頭隙を達成する別の利点は、パウチが脱出し難いということ、すなわち、パウチが加重時にユーザーの身体から外向的に懸垂しないことである。
【0020】
図2は本発明に係る粘着ウェーハを有するパウチの第2の実施態様を示す。この実施態様においてパウチは使い捨てパウチである。
【0021】
図1および
図2は、皮膚に対して直接的に装着するための粘着ウェーハを有するパウチ、すなわち、いわゆるワンピース製品を示すが、偏心初孔を用いる態様は、ワンピースストーマ装具およびツーピースストーマ装具の両方において使用してもよいことが理解される。ツーピースの実施態様における使用のために、粘着ウェーハの1つの実施態様を
図3に示す。
【実施例】
【0022】
図1および
図2の実施態様に係るパウチにおいては、当該パウチの初孔がパウチの中心から上端の方へ偏心するとき、パウチの有効容積が増加する。このことが正しいかどうかを確認するために、以下の試験を行った。
【0023】
φ10mmの初孔を、遮断材の中心よりも19mm高い位置に穿設することにより、55mmの結合リングを有する標準サイズのパウチを製造した。パウチを鉛直な状態でプレートに取り付け、前記した中心における仮想のφ10mmの孔の下部端まで水を充填した。このときの水の体積を精密天秤を用いて測定した。その後、中心から外れたφ10mmの孔の下部端まで、さらに水を充填し、水の体積を再度、測定した。2つの測定値の差は56g(56ml)であった。偏心初孔を有するパウチの全容積は569mlであった。増加分は10%であった。
【0024】
結論として、増加分はパウチおよび遮断材の寸法および形状に依存するが、中心から外れた初孔を遮断材の中心よりも高い位置に穿設する全ての構成において増加が達成できることは明らかである。
【0025】
図1および
図2に示されるように、複数の裁断用案内線16は初孔17と、該初孔17の上端部において実質的に収束するので、該裁断用案内線16は初孔17と、パウチの長手方向に対応する半径方向で実質的に収束する。この態様により、偏心初孔の効果が高まる。
【0026】
図2について言えば、偏心初孔17をパウチに付与するという考え方は、排出式パウチに対して適用できるだけでなく、密閉式パウチまたは洗浄式パウチにも適用できることが理解される。
【0027】
以上、本発明を幾つかの好ましい実施態様に基づいて説明した。しかしながら、特許請求の範囲において規定される本発明の範囲から逸脱しなければ、その他の変形態様が可能であることは理解される。