(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
タイヤのトレッドに対応するタイヤ半径方向内部のタイヤ内部面に、タイヤ内腔の空洞共鳴音を低減するための少なくとも1本の連続リボン状の制音体が設けられた空気入りタイヤを製造する方法であって、
前記制音体が設けられていない加硫成型されたタイヤを提供する段階と、
前記制音体を形成するための配合物を発泡剤と混合して液状配合物を生成する段階と、
前記タイヤをタイヤ保持回転具により起立状態で回転させると共に、前記液状配合物の導入具により前記液状混合物をタイヤ内部面に導入する段階と、
前記液状混合物をタイヤ内部面に導入する間、前記空気入りタイヤと前記導入具とのタイヤ軸方向の位置関係を相対的に変化させると共に前記タイヤ内部面に導入された前記液状混合物をゲル化させる段階と、
前記ゲル化した液状混合物を発泡及び乾燥させる段階と、を有することを特徴とする空気入りタイヤの製造方法。
前記液状混合物を導入する段階における前記タイヤの回転数及び前記液状混合物がゲル化するまでの時間が、前記液状混合物がタイヤが180度回転する前にゲル化するように設定される請求項1に記載の空気入りタイヤの製造方法。
前記ポリウレタン配合物は、イソシアネートとしてのMDIと、ポリオールとしてのポリエーテルとを少なくとも含有している請求項3に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、あらかじめ帯状に成形されたスポンジ材を用意し、貼り付け長さで切断し、両面粘着テープ等を接着面に取り付け、タイヤ内部面のバフ掛けを行うなど、準備の工程に多大な時間が必要となり、タイヤ製造工程全体としては決して作業効率が高いとは言えないという問題点がある。
また、特許文献1及び特許文献2に開示された技術では、近年の車の乗員に伝わる不快な低周波音をより低減させる要望に対応することのできる制音体を効率的に生産することが出来ないという問題点がある。
【0007】
そこで本発明は、上述した従来技術が抱える問題点を解決するためになされたものであり、空洞共鳴音を低減しつつ、生産性を向上することが出来る、タイヤ内腔に制音体が設けられた空気入りタイヤとその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、タイヤのトレッドに対応するタイヤ半径方向内部のタイヤ内部面に、タイヤ内腔の空洞共鳴音を低減するための少なくとも1本の連続リボン状の制音体が設けられた空気入りタイヤを製造する方法であって、制音体が設けられていない加硫成型されたタイヤを提供する段階と、制音体を形成するための配合物を発泡剤と混合して液状配合物を生成する段階と、タイヤをタイヤ保持回転具により起立状態で回転させると共に、液状配合物の導入具により液状混合物をタイヤ内部面に導入する段階と、液状混合物をタイヤ内部面に導入する間、空気入りタイヤと導入具とのタイヤ軸方向の位置関係を相対的に変化させると共にタイヤ内部面に導入された液状混合物をゲル化させる段階と、ゲル化した液状混合物を発泡及び乾燥させる段階と、を有することを特徴としている。
【0009】
このように構成された本発明においては、制音体を形成するための配合物を発泡剤と混合して液状配合物を生成する段階と、タイヤをタイヤ保持回転具により起立状態で回転させると共に、液状配合物の導入具により液状混合物をタイヤ内部面に導入する段階と、液状混合物をタイヤ内部面に導入する間、空気入りタイヤと導入具とのタイヤ軸方向の位置関係を相対的に変化させると共にタイヤ内部面に導入された液状混合物をゲル化させる段階と、ゲル化した液状混合物を発泡及び乾燥させる段階と、を有しているので、タイヤ周方向に対して所定の角度に沿って延びる少なくとも1本の連続リボン状の制音体がタイヤ内部面に形成される。このような制音体は、その制音体自身の制音効果に加えて、制音体がタイヤ周方向に対して所定の角度に沿って延びることにより、タイヤ内腔にて励起されタイヤ周方向に伝播する空気振動を阻害するので、空洞共鳴音を効果的に低減させることが出来る。そして、タイヤをタイヤ保持回転具により起立状態で回転させると共に液状配合物の導入具により液状混合物をタイヤ内部面に導入し、液状混合物をタイヤ内部面に導入する間、空気入りタイヤと導入具とのタイヤ軸方向の位置関係を相対的に変化させると共にタイヤ内部面に導入された液状混合物をゲル化させ、発泡・乾燥させるようにしているので、タイヤ周方向に対して所定の角度に沿って延びる少なくとも1本の連続リボン状の制音体を効率的に設けることが出来、その結果、空洞共鳴音をより低減させることが出来る空気入りタイヤの生産性を向上させることが出来る。
【0010】
本発明において、好ましくは、液状混合物を導入する段階におけるタイヤの回転数及び液状混合物がゲル化するまでの時間が、液状混合物がタイヤが180度回転する前にゲル化するように設定される。
このように構成された本発明においては、ゲル化する前の液状配合物の一部が、万が一、下方に滴り落ちるようなことを抑制することが出来る。
【0011】
本発明において、好ましくは、液状配合物はポリウレタン配合物である。
このように構成された本発明においては、液状配合物をポリウレタン配合物としているので、その液状配合物がゲル化した際、その表面に膜状部分が生成され易く、このような膜状部分は、制音体内部への水の浸透を防ぎ、その結果、連続リボン状制音体の耐久性を向上させる効果を得ることができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、ポリウレタン配合物は、イソシアネートとしてのMDIと、ポリオールとしてのポリエーテルとを少なくとも含有している。
【0013】
本発明において、好ましくは、発泡剤は水である。
このように構成された本発明においては、高価な発泡剤を用いることなく液状配合物を発泡させることができ、また、発生されるガスが二酸化炭素であるため、作業者を不快にさせる臭いや、作業者の健康に悪影響を与えることもない。
【0014】
本発明において、好ましくは、液状配合物を導入する際のタイヤの回転数は、0.6rpm以上かつ300rpm以下である。
【0015】
本発明において、好ましくは、液状配合物を導入する際のタイヤの回転数は、12rpm以上かつ180rpm以下である
【0016】
本発明において、好ましくは、液状配合物がゲル化するまでの時間は、1秒以上かつ60秒以内である。
【0017】
本発明において、好ましくは、液状配合物がゲル化するまでの時間は、3秒以上かつ30秒以内である。
【0018】
本発明において、好ましくは、液状配合物は、提供された加硫成型されたタイヤの内部面の前処理なしに導入される。
このように構成された本発明においては、例えば、加硫成型されたタイヤの内部面を清掃する必要がないとき等、製造工程を省略して、空洞共鳴音をより低減させることが出来る空気入りタイヤの生産性をより向上させることが出来る。
【発明の効果】
【0019】
本発明による空気入りタイヤ及びその製造方法によれば、空洞共鳴音を低減しつつ、生産性を向上させることが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施形態を図面を参照して説明する。
先ず、
図1及至
図2により、本発明の実施形態による製造方法により製造された空気入りタイヤを説明する。本発明の実施形態による空気入りタイヤの製造方法については、
図3及び
図4を用いて、後述する。
図1は、本発明の実施形態による製造方法により製造された、制音体が設けられた空気入りタイヤの半径方向断面を模式的に示す図であり、
図2は、本発明の実施形態による製造方法により製造された、制音体が設けられた空気入りタイヤのタイヤ内部面を模式的に示す図である。
図2には、タイヤの周方向がYY‘にて示され、またタイヤの軸方向がXX’にて示されている。
【0022】
先ず、
図1に示すように、符号1は、制音体4が設けられた空気入りタイヤ1を示す。制音体4は、空洞共鳴音を低減するためのものであり、
図1及び
図2に示すように幅W、厚さEの連続した連続リボン41で構成され、空気入りタイヤの内部面2に取り付けられている。ここで、「タイヤ内部面」(タイヤ内部面2)とは、タイヤの内腔に面した表面のことをいい、通常のタイヤ使用状態(ホイールに取り付けられた状態)においては外部から目視できない面のことである。
【0023】
この連続リボン41は、1本の連続した連続リボン41で形成され、タイヤの周方向に対して角度を有するように、即ち、タイヤの周方向に対して斜め方向に延びるように、4周にわたりタイヤ内部面2に連続的に取り付けられている。このような1本の連続リボン41の4周にわたる連続的な取り付けにより、隣接する連続リボン41とタイヤ内部面2とにより、3周にわたり延びる溝幅Dを有する連続溝5が、タイヤ内部面2に形成されている。このように形成された連続溝5も、
図2に示すように、タイヤの周方向に対して角度を有するように延びている。即ち、本実施形態では、連続リボン41は、タイヤの周方向に対して所定の角度に沿って延びるように取り付けられ、隣接する連続リボン41とタイヤ内部面2とで連続溝5が形成されている。
【0024】
図1に示すように、タイヤ1は、転動中に路面と接触する幅TWのトレッド面3を有する。なお、この例におけるタイヤサイズは225/55R16である。
連続リボン41の幅Wは、トレッド3の幅TWの5%〜25%となるように形成されている。本実施形態においては、トレッド3の幅TWは168mm、連続リボン41の幅Wは24mmである。
【0025】
連続リボン41の厚さEは、連続リボン41の幅Wの50%〜200%となるように形成されている。本実施形態においては、連続リボン41の厚さEは15mmである。
【0026】
連続リボン41は、防振性及び制音性に優れる制音材料で作られている。この連続リボン41は、一本の連続したリボンであることが好ましいが、短いリボンを複数本組み合わせて一本の連続リボンを形成することもできる。連続リボン41を形成する制音材料としては、スポンジ材、発泡ゴム組成物、グラスウール、ロックウール、セルロース繊維の何れか一つから選択から選択されることが好ましい。本実施形態の連続リボン41は、後述する方法により、スポンジ材として形成される。
【0027】
このような連続リボン41は、後述するように、スポンジ材を形成するための、例えばポリウレタン系の材料を直接タイヤ内腔に導入(注入)しつつ形成される。このように、例えばポリウレタン系の材料を直接タイヤ内腔に導入する場合、その連続リボン41の形成過程において材料温度と環境温度との差により材料表面と内部とで材料の成長率に差異が生じ、材料表面に薄い膜状部分を形成する場合がある。このような連続リボン41の表面に存在する膜状部分は、連続リボン41内部への水の浸透を防ぎ、連続リボン41の耐久性を向上させる効果を得ることができる。
【0028】
連続リボン41は、トレッド3の半径方向内部のトレッド3が形成された範囲に対応するタイヤ内部面2の範囲の少なくとも30%の範囲を占めるようにタイヤ内部面2に固定されている。本実施形態においては、連続リボン41はトレッド3の半径方向内部の85%の範囲を占めるように、即ち、連続リボン41がタイヤ内部面2のトレッド3に対応する範囲の85%を覆うように、タイヤ内部面2に固定されている。
【0029】
連続溝5の幅Dは、連続リボン41の幅Wの20%以上となるように形成されている。本実施形態においては、連続溝5の幅Dは13mmである。
【0030】
図1に示す半径方向断面図に図示されている連続リボン41は、上述したように1本の連続リボン41のみで形成されており、
図2に示すように、始端411と終端412の2つの端部を有し、これらの2つの端部がタイヤの軸方向に相互にオフセット、すなわち隔たりを持つように形成されている。本実施形態における両端部411、412のオフセット量は、148mmである。
このように、本実施形態による空気入りタイヤ1では、タイヤの内部面2に取り付けられた連続リボン41は2つの端部、即ち、
図2に示すように始端411と終端412を有し、これら2つの端部411、412が互いに軸方向にオフセットするように形成されている。そして、連続リボン41を上述したような1本の連続リボン41の4周にわたる周回、即ち、タイヤ周方向に対して所定の角度に沿うように4周にわたるようにタイヤ内部面2に設けることにより、隣接する連続リボン41とタイヤ内部面2とにより連続溝5が3周にわたり形成されている。
【0031】
なお、本実施形態による空気入りタイヤ1では、連続リボン41をタイヤ周方向に4周にさせることで、
図2に示すように、始端411と終端412とが、タイヤ内部面2上の軸方向線上にオフセットした位置に配置されるようになっているが、例えばタイヤ周方向に3周半させる場合など、タイヤ周方向に対してずれた位置に始端411と終端412とが配置され、タイヤ内部面2上の軸方向線上とは異なる位置で、始端411と終端412とが軸方向にオフセットさせるように連続リボン41を設けても良い。
【0032】
なお、本実施形態のタイヤの例においては、連続リボン41の断面形状は長方形であるが、この断面形状は長方形に限定されるものではない。連続リボン41の断面形状は、連続溝5を形成することのできる断面形状であればよく、かまぼこ状や台形、側面や上面が曲線状に膨らんだ形状など、適宜変更することができる。なお、連続リボン41の断面形状が長方形以外の場合には、連続リボン41の幅Wはタイヤ内部面2に投影される最大幅であり、厚さEはタイヤ径方向の最大の厚みである。
また、連続リボンは、連続溝が形成されるように、タイヤ周方向に対し所定の角度に沿って蛇行するように形成してもよい。この場合、連続溝の幅Dは、連続リボンが延びる方向に沿って連続的に変化するものでも良いし、隣接する連続リボンの蛇行形状を、連続溝の幅Dが一定となるように配置しても良い。
【0033】
次に、本実施形態による制音体が設けられた空気入りタイヤの主な作用効果を説明する。
先ず、連続リボン41は、タイヤの周方向に進行する空洞共鳴音の音波の伝播を妨げるように、タイヤの周方向に対して角度を有するように形成されるので、空洞共鳴音を効果的に低減させることができる。
ここで、空洞共鳴音は、タイヤ転動時に、円環状の内腔に閉じ込められた空気が気柱として作用することにより生じ、このような空洞共鳴音は、その気柱内を主にタイヤ周方向に伝播する空気振動が原因となって生じる。従って、連続リボン41をタイヤ周方向に対して所定の角度に沿って斜めに延びるように配置することにより、空洞共鳴音を効果的に低減することが出来る。
【0034】
また、上述したように、連続溝5がタイヤ円周方向に対して所定の角度に沿って延びるように形成しているので、連続溝5内に導かれた空洞共鳴音の主にタイヤ周方向に伝播する空気振動のエネルギーは、連続リボン41内部に浸透する成分と、連続リボン41表面で反射する成分とに分割される。連続リボン41内部に浸透したエネルギー成分は、連続リボン41を形成している制音材料の効果により減衰され、また連続リボン41表面で反射した成分はその反射による減衰のみならず、連続リボン41の他の部分にそのエネルギーが到着することで前記浸透・反射現象を繰り返すため、効果的に空洞共鳴音を低減することができる。
【0035】
さらに、本実施形態においては、連続溝5の溝幅Dを連続リボンの幅Wの20%以上としているので、タイヤ内部面が連続溝を介して直接タイヤ内腔の空気に触れる面積を放熱に十分な面積とすることができる。従って、制音体4である連続リボン41をトレッド3の半径方向内部に複数周(本実施形態では4周)を設けても、タイヤ転動時に主にトレッドで生じる熱を、タイヤ内部面からタイヤの内腔へ確実に放出することが可能となり、その結果、高速耐久性を維持することが出来る。
【0036】
さらに、本実施形態においては、1本の連続リボン41をタイヤ円周方向に対して斜めに延びるように4周させてタイヤ内腔に固定する構造としているので、例えば、その固定方法として、連続リボン41の始端411をタイヤ内部面に固定した後、タイヤ1をタイヤ回転軸周りに回転させつつ、連続リボン41またはタイヤ1自身を軸方向に動かしながら、連続リボン41の終端412まで固定し続ければよい。このように、本実施形態による制音体4が設けられたタイヤ1によれば、連続リボン41の取り付けを比較的簡単に行うことが出来、制音体4である連続リボン41を設けるタイヤ1の生産性を維持することが出来る。
【0037】
さらに、本実施形態においては、連続リボン41の幅Wは、トレッド3の幅TWの5%〜25%となるように形成されている。ここで、連続リボンの幅Wをトレッド3の幅TWの5%よりも小さくすると、連続リボン41の幅Wが小さくなりすぎ、効率的に空洞共鳴音を低減させるためには連続リボンの回転数を増やす必要があり、生産性が低下してしまう。一方、連続リボン41の幅Wをトレッドの幅TWの25%よりも大きくすると、連続リボンによって占められるタイヤ内部面2の割合が大きくなることにより、タイヤ内部面2がタイヤ内腔の空気に触れる割合が減少するので、高速耐久性が低下してしまう。従って、連続リボン41の幅Wをトレッドの幅TWの5%〜25%とすれば、空洞共鳴音の低減を図りながら、高速耐久性を確保し、生産性を維持することが出来る。
【0038】
さらに、本実施形態においては、連続リボン41の厚さEは、連続リボン41の幅Wの50%〜200%となるように形成されている。ここで、連続リボン41の厚さEを、連続リボン41の幅Wの50%よりも小さくすると、連続リボン41の厚さEはタイヤ内腔の空気振動の音波の伝播を妨げる高さが不足するため、空洞共鳴音の低減度合いが低下してしまう。一方、連続リボン41の厚さEを、連続リボン41の幅Wの200%よりも大きくすると、連続リボン41による制音効果が頭打ちになってしまうことから、タイヤのコストや重量に悪影響をもたらす。従って、連続リボン41の厚さEを、連続リボン41の幅Wの50%〜200%とすれば、より効率的に空洞共鳴音を低減させることが出来、また、コストや重量の増加を抑制することが出来る。
【0039】
次に、
図3及び
図4により、上述した
図1及び
図2に示す、連続リボン41が設けられた空気入りタイヤの本発明の実施形態による空気入りタイヤの製造方法及び連続リボン41をタイヤ内部面2に設けるための製造装置を説明する。
図3は、タイヤ内部面へ連続リボン状の制音体を導入する装置の一実施例を模式的に示す図であり、この
図3は、装置に保持されたタイヤの半径方向から見た正面図として示されている。
図4は、
図3に示す装置により連続リボン41をタイヤ内部面へ設ける方法を説明するための
図3の要部拡大図であり、
図4(a)は、タイヤの半径方向から見た正面図であり、
図4(b)は、装置に保持されたタイヤの軸方向から見た側面図である。
図4(a)及び
図4(b)では、タイヤが断面で示されている。
【0040】
図3に示すように、この実施例におけるタイヤ内部面へ連続リボン状制音体を導入する装置10は、予め加硫成形され製造されたタイヤを起立状態で保持しかつ回転可能とするタイヤ保持回転具12を備えている。このタイヤ保持回転具12は、タイヤ1を起立状態で保持し且つタイヤ1の回転を許容する上方回転保持具12aと、タイヤ1を起立状態で保持し且つタイヤ1を回転させる下方回転保持具12bとを有している。また、装置10は、下方保持回転具12bを駆動し、タイヤ1を起立状態で回転させるタイヤ駆動具14を有している。
【0041】
さらに、装置10は、タイヤ保持回転具12によって起立状態で保持されたタイヤの内部面2に、連続リボン状の制音体を形成するための液状配合物を導入/注入するための導入具(ノズル)16と、この導入具16の位置を、タイヤ保持回転具12に位置決めされ保持されたタイヤ1の高さ方向(半径方向)及びタイヤの軸方向に移動可能に構成された導入具保持移動具18と、液状の制音体を形成するための配合物を発泡剤と混合して液状配合物とする混合具20と、を具え、この混合具20の液状配合物は、導入具16の通路16aを介して導入具16の先端に設けられたノズル16bまで導かれるように構成されている。
【0042】
タイヤ駆動具14によるタイヤ1の回転は、チェーン、ギヤなどを介したもしくは直接的な接触により下方保持回転具12bへと伝えられる。また、導入具保持移動具18の移動も別途設置された駆動機構の運動をチェーン、ギヤなどを介したもしくは直接的な接触により導入具保持移動具18へと伝えられ、導入具16は所定位置へと移動する。
【0043】
図4に示すように、先ず、加硫成型された空気入りタイヤ1は、タイヤ保持回転具12により起立状態で保持される。このとき、導入具16内には、混合具20内で、制音体を形成するための液状の配合物と発泡剤とが混合された液状配合物が導入されている。
次に、タイヤ保持回転具12により起立状態で保持された空気入りタイヤは、先ず、タイヤ駆動具14及びタイヤ保持回転具12により回転を開始し、その後、導入具16が、導入具保持移動具18によりタイヤ軸方向へ移動することによりタイヤ内腔へと進入して、
図4に示すような所定の位置まで移動し、その後に、導入具16のノズル16bからタイヤ内部面2への液状配合物41aの導入を開始する。
【0044】
なお、タイヤ駆動具14及びタイヤ保持回転具12によるタイヤの回転開始は、導入具16のタイヤ内腔への移動後であってもよく、タイヤ内部面2への液状配合物の導入を開始する前にタイヤ1の回転が開始されていれば良い。また、タイヤの回転中心に対する導入具16のノズル16bのタイヤ回転方向位置は、タイヤ回転中心を含む仮想軸上、すなわちタイヤの高さ方向の最も低い位置でタイヤ内部面2に液状組成物を導入/注入することができる位置であることが望ましい。また、連続リボン状の制音体を導入するタイヤのサイズによっては、導入具保持移動具18をタイヤ軸方向に移動させつつ、タイヤ高さ方向にも移動させ、タイヤ1と導入具16とが干渉しないように導入具16をタイヤ内腔へ進入させるなどの操作も適宜行うことができる。
【0045】
図4(b)に示すように、タイヤ内部面2への液状配合物41aの導入開始後は、タイヤ1はタイヤ駆動具14により回転を続け、同時に導入具16が導入具保持移動具18によりタイヤの軸方向に連続移動をすることにより、タイヤ1の内部面2と導入具16との位置関係をタイヤ軸方向に相対的に変化させ、所定のタイヤ回転数、所定のタイヤ軸方向位置に達するまで液状配合物41aを連続的に導入/注入し続けていくことにより、上述した
図1及び
図2に示すような、連続リボン41の制音体4をタイヤ回転方向に対して所定の角度に沿って配置することが可能となる。
【0046】
なお、本実施例における装置10では、タイヤ保持回転具12により軸方向の位置が固定されたタイヤ1に対して導入具16を軸方向に相対移動させて、タイヤの内部面2に連続リボン状の制音体41(4)を形成するようにしているが、導入具16のタイヤ軸方向の位置を固定とし、タイヤ保持回転具12もしくはタイヤ駆動具14に、タイヤを軸方向に移動させる手段を設けることにより、タイヤ1と導入具16との位置関係を相対的に変化させるような装置により、タイヤの内部面2に連続リボン状の制音体41(4)を形成するようにしても良い。
【0047】
本実施形態では、連続リボン41を形成するためのタイヤ内部面2に導入される液状配合物41aとして、タイヤ内部面2によりノズル16bにより注入された後、所定時間の経過とともにゲル化を開始する液状混合物(具体的には、後述する)が用いられる。タイヤの回転数及び液状配合物がゲル化するまでの時間は、タイヤが180度回転する以前にゲル化を完了するように設定される。このような設定により、ゲル化する前の液状配合物41aの一部が、万が一、下方に滴り落ちるようなことを抑制することが出来る。
その後、液状配合物41aに混合された発泡剤の反応により、液状配合物41aは発泡を開始し、環境温度により冷却・乾燥され発泡を完了することにより、タイヤ内部面に導入された液状配合物41aは制音材料へと変化し、これにより、液状配合物41aがタイヤ内部面2に連続リボン41として固定され、空洞共鳴音の低減のための制音体4となる(
図1、
図2参照)。
【0048】
上述したように、タイヤ1の回転数は、タイヤが180度回転する以前に液状混合物41aがゲル化を完了するように設定される。本実施形態では、タイヤ1の回転数が、0.6rpm以上且つ300rpmに設定されるが、好ましくは、12rpm以上且つ180rpmに設定される。
また、本実施形態では、液状配合物41aがゲル化するまでの時間が、1秒以上且つ60秒以内の液状配合物41aが用いられるが、好ましくは、3秒以上且つ30秒以内にゲル化する液状配合物41aが用いられる。
タイヤ1の回転数は、用いられる液状配合物41aにより、適宜、設定される。
【0049】
なお、このような制音体の形成過程において、液状配合物41aの材料温度と環境温度との差により材料表面と内部とで材料の成長率(発泡率)に差異が生じ、材料表面に薄い膜状部分を形成する場合がある。このような連続リボン状制音体の表面に存在する膜状部分は、連続リボン状制音体内部への水の浸透を防ぎ、連続リボン状制音体の耐久性を向上させる効果を得ることができる。このような膜状部分が形成され易い液状配合物41aは、例えば、ポリウレタン配合物である。
【0050】
液状の前記制音体を形成するための配合物を発泡剤と混合された液状配合物41aとし、導入具16に導入するための混合具20は、所定の配合物を所定の発泡剤と混合し、導入具16へと導入することができればよい。本実施例における装置10では、混合具20として、高せん断タイナミックミキサー及びギヤポンプを使用しているが、混合具の機能を満たすよう、即ち、所定の配合物を所定の発泡剤と混合することが出来るものであればよい。このような混合具の形態として、例えば高せん断タイナミックミキサーをロータリーピストンポンプと組み合わせた形態、低せん断ミキサーと前記ポンプの何れかを組み合わせた形態、衝突型ミキサーと前記ポンプの何れかを組み合わせた形態など、適宜変更することが可能である。
【0051】
制音材料としての制音体4を形成するための液状の配合物は、ポリウレタン配合物やゴム配合物などを使用することができるが、ポリウレタン配合物であることが好ましい。ポリウレタン配合物に配合されるプレポリマーは、一般的に低粘度で、基材表面(今回の場合はタイヤ内部面2)の良好な湿潤を可能とし、また基材表面(タイヤ内部面2)上での共有結合を可能にする十分なNCOを含有していることなどから自己接着するため粘着剤としても利用されており、別途粘着材を導入することなく、連続リボン状の制音体をタイヤ内部面に固定することが可能となる。連続リボン状の制音体を導入する空気入りタイヤのタイヤ内部面の状態によっては、制音体を設ける前の前処理として、プライマーなどでタイヤ内部面表面を清掃するなどの処理を適宜行うことができる。一方、加硫成型されたタイヤ内部面を清掃する必要がない等の状態では、このような前処理を行うことなく、タイヤ1自体の加硫成形後、直接、液状配合物41aをタイヤ内部面2に注入/導入される。
【0052】
本実施例において使用される発泡剤は水である。ポリウレタン配合物に配合されるイソシアネートは、水と化学反応することにより二酸化炭素を発生し、高価な発泡剤を用いることなく液状配合物を発泡させることができる。また、発生されるガスが二酸化炭素であるため、作業者を不快にさせる臭いや、作業者の健康に悪影響を与えることもない。
【0053】
本実施例において使用されるイソシアネートはMDIである。イソシアネートとしてはTDIを用いることも可能であるが、MDIは成形時の粘性がTDIよりも高いことから、今回のように回転しているタイヤ内部に液状組成物を導入する製造方法である場合はより好ましい。
【0054】
本実施例において使用されるポリオールはポリエーテルである。ポリオールとしては他の原料を用いることも可能であるが、ポリエーテル系のポリオールを用いた場合には特にポリエステル系のポリオールを用いた場合と比較して弾性に優れ、加水分解性が低く、低コストで連続リボン状制音体を得ることが可能となる。
【0055】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について記述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。