【実施例】
【0051】
以下、実施例および比較例により、本発明をさらに具体的に説明していく。なお実施例及び比較例における窒素気流の流量は、電気炉外の大気圧における窒素ガスの流量を表す。
【0052】
(ポリイミドフィルムAの作製方法)
4,4’−オキシジアニリンの1当量を溶解したDMF(ジメチルフォルムアミド)溶液に、ビロメリット酸二無水物の1当量を溶解してポリアミド酸溶液(18.5wt%)を得た。
【0053】
この溶液を冷却しながら、ポリアミド酸に含まれるカルボン酸基に対して、1当量の無水酢酸、1当量のイソキノリン、およびDMFを含むイミド化触媒を添加し脱泡した。次にこの混合溶液が、乾燥後に所定の厚さになるようにアルミ箔上に塗布した。アルミ箔上の混合溶液層を、熱風オーブン、遠赤外線ヒーターを用いて乾燥した。
【0054】
以下に出来上がり厚みが75μmの場合におけるフィルム作製をする場合の乾燥条件を示す。アルミ箔上の混合溶液層は、熱風オーブンで120℃において240秒乾燥して、自己支持性を有するゲルフィルムにした。そのゲルフィルムをアルミ箔から引き剥がし、フレームに固定した。さらに、ゲルフィルムを、熱風オーブンにて120℃で30秒、275℃で40秒、400℃で43秒、450℃で50秒、および遠赤外線ヒーターにて460℃で23秒段階的に加熱して乾燥した。
【0055】
なお、その他厚みのフィルムを作製する場合には、厚みに比例して焼成時間を調整した。例えば厚さ50μmのフィルムの場合には、75μmの場合よりも焼成時間を2/3倍に、125μmのフィルムの場合には、5/3倍に設定した。なお、厚みが厚い場合には、ポリイミドフィルムの溶媒やイミド化触媒蒸発による発泡を防ぐために低温での焼成時間を十分とる必要がある。
【0056】
(実施例1)
上記方法によって作製した厚さ50μmのポリイミドフィルムA(PI−A)(縦200mm×横200mm)を黒鉛材に挟み、電気炉を用いて、1000℃まで2℃/minで昇温して炭化処理を行なった。炭化処理は窒素気流中(流量1L/min)で行ない、内圧は真空ポンプにて−0.01kPaを保ったまま昇温を続けた。室温まで冷却後、得られた炭化フィルムの厚みと表面状態、および単位面積当たりの重量(g/m
2)を測定した。またフィルム処理前後において炉内汚れの評価も行なった。続けてこの炭化フィルムを、縦250mm×横250mm×厚み250μmの膨張黒鉛シートで上下から挟み、グラファイト化炉を用いて2900℃まで2℃/minで昇温してグラファイト化処理をおこなった。室温まで冷却後、熱処理後のグラファイトフィルムを、縦250mm×横250mm×厚み125μmのポリイミドフィルムで上下から挟み圧縮成型機を用いて後面状加圧工程を実施した。加えた圧力は10MPaとした。最終的に得られたグラファイトフィルムの熱拡散率を、光交流法による熱拡散率測定装置(アルバック理工(株)社から入手可能な(商品名)「LaserPit」)を用いて、20℃の雰囲気下、10Hzにおいて測定した。その結果を表1にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−0.01kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも0.01kPa低いことをいう。
【0057】
(実施例2)
上記方法によって作製した厚さ50μmのポリイミドフィルムA(PI−A)(縦200mm×横200mm)を黒鉛材に挟み、電気炉を用いて、1000℃まで2℃/minで昇温して炭化処理を行なった。炭化処理は窒素気流中(流量1L/min)で行ない、内圧は真空ポンプにて−0.1kPaを保ったまま昇温を続けた。その後は実施例1と同じ工程で行った。結果を表1にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−0.1kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも0.1kPa低いことをいう。
【0058】
(実施例3)
上記方法によって作製した厚さ50μmのポリイミドフィルムA(PI−A)(縦200mm×横200mm)を黒鉛材に挟み、電気炉を用いて、1000℃まで2℃/minで昇温して炭化処理を行なった。炭化処理は窒素気流中(流量1L/min)で行ない、内圧は真空ポンプにて−0.5kPaを保ったまま昇温を続けた。その後は実施例1と同じ工程で行った。結果を表1にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−0.5kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも0.5kPa低いことをいう。
【0059】
(実施例4)
上記方法によって作製した厚さ50μmのポリイミドフィルムA(PI−A)(縦200mm×横200mm)を黒鉛材に挟み、電気炉を用いて、1000℃まで2℃/minで昇温して炭化処理を行なった。炭化処理は窒素気流中(流量1L/min)で行ない、内圧は真空ポンプにて−1kPaを保ったまま昇温を続けた。その後は実施例1と同じ工程で行った。結果を表1にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−1kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも1kPa低いことをいう。
【0060】
(実施例5)
上記方法によって作製した厚さ50μmのポリイミドフィルムA(PI−A)(縦200mm×横200mm)を黒鉛材に挟み、電気炉を用いて、1000℃まで2℃/minで昇温して炭化処理を行なった。炭化処理は窒素気流中(流量1L/min)で行ない、内圧は真空ポンプにて−10kPaを保ったまま昇温を続けた。その後は実施例1と同じ工程で行った。結果を表1にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−10kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも10kPa低いことをいう。
【0061】
減圧下で窒素を流しながら炭化処理を行なうと、表面傷の無い炭化フィルムが得られてくる事が分かった。また炉内の汚染もほとんど無い事が分かった。
【0062】
(実施例6)
上記方法によって作製した厚さ50μmのポリイミドフィルムA(PI−A)(縦200mm×横200mm)を黒鉛材に挟み、電気炉を用いて、1000℃まで2℃/minで昇温して炭化処理を行なった。炭化処理は窒素を流さずに行ない、内圧は真空ポンプにて−10kPaを保ったまま昇温を続けた。その後は実施例1と同じ工程で行った。結果を表1にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−10kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも10kPa低いことをいう。
【0063】
ポリイミドフィルムを1枚処理する場合は、窒素を流さなくても減圧下で炭化処理を行なえば表面傷の無い炭化フィルムが得られてくる事が分かった。しかし窒素を流さない時に比べて若干炉内が汚れる事が分かった。
【0064】
(実施例7)
上記方法によって作製した厚さ50μmのポリイミドフィルムA(PI−A)(縦200mm×横200mm)を黒鉛材に挟み、電気炉を用いて、1000℃まで2℃/minで昇温して炭化処理を行なった。炭化処理は窒素を流さずに行ない、内圧は真空ポンプにて−80kPaを保ったまま昇温を続けた。その後は実施例1と同じ工程で行った。結果を表1にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−80kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも80kPa低いことをいう。
【0065】
比較的高い減圧下での炭化処理においても、表面傷が無く、熱拡散率の高い炭化フィルムが得られてくる事が分かった。
【0066】
(比較例1)
上記方法によって作製した厚さ50μmのポリイミドフィルムA(PI−A)(縦200mm×横200mm)を黒鉛材に挟み、電気炉を用いて、1000℃まで2℃/minで昇温して炭化処理を行なった。炭化処理は窒素気流中(流量1L/min)で行ない、内圧が±0kPaを保ったまま昇温を続けた。その後は実施例1と同じ工程で行った。結果を表1にまとめた。
【0067】
窒素気流中のみの条件では炭化フィルムの表面傷を完全に取り除くことは出来なかった。
【0068】
(比較例2)
上記方法によって作製した厚さ50μmのポリイミドフィルムA(PI−A)(縦200mm×横200mm)を黒鉛材に挟み、電気炉を用いて、1000℃まで2℃/minで昇温して炭化処理を行なった。炭化処理は窒素気流中(流量1L/min)で行ない、内圧が+2kPaを保ったまま昇温を続けた。その後は実施例1と同じ工程で行った。結果を表1にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて+2kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも2kPa高いことをいう。
【0069】
窒素加圧の条件で炭化処理を行なうと、常圧下での処理に比べ炭化フィルムの表面傷がさらに増えてしまった。また、炉内汚染の度合いも大きくなってしまう事が分かった。
【0070】
(比較例3)
上記方法によって作製した厚さ50μmのポリイミドフィルムA(PI−A)(縦200mm×横200mm)を黒鉛材に挟み、電気炉を用いて、1000℃まで2℃/minで昇温して炭化処理を行なった。炭化処理は窒素を流さずに行ない、内圧は真空ポンプにて10
-1kPaを保ったまま昇温を続けた。その後は実施例1と同じ工程で行った。結果を表1にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて10
-1kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも10
-1kPa高いことをいう。
【0071】
高真空下では傷の無い炭化フィルムが得られてくるものの、その後の黒鉛化工程では熱拡散率の低いグラファイトフィルムが得られてくることが分かった。また、炉内汚染の度合いも大きくなってしまう事が分かった。
【0072】
【表1】
【0073】
(実施例8)
上記方法によって作製した厚さ75μmのポリイミドフィルムB(PI−B)(縦200mm×横200mm)を黒鉛材に挟み、電気炉を用いて、1000℃まで2℃/minで昇温して炭化処理を行なった。炭化処理は窒素気流中(流量1L/min)で行ない、内圧は真空ポンプにて−0.01kPaを保ったまま昇温を続けた。室温まで冷却後、得られた炭化フィルムの厚みと表面状態、および単位面積当たりの重量(g/m
2)を測定した。またフィルム処理前後において炉内汚れの評価も行なった。続けてこの炭化フィルムを、縦250mm×横250mm×厚み250μmの膨張黒鉛シートで上下から挟み、グラファイト化炉を用いて2900℃まで2℃/minで昇温してグラファイト化処理をおこなった。室温まで冷却後、熱処理後のグラファイトフィルムを、縦250mm×横250mm×厚み125μmのポリイミドフィルムで上下から挟み圧縮成型機を用いて後面状加圧工程を実施した。加えた圧力は10MPaとした。最終的に得られたグラファイトフィルムの熱拡散率を、光交流法による熱拡散率測定装置(アルバック理工(株)社から入手可能な(商品名)「LaserPit」)を用いて、20℃の雰囲気下、10Hzにおいて測定した。その結果を表2にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−0.01kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも0.01kPa低いことをいう。
【0074】
(実施例9)
上記方法によって作製した厚さ75μmのポリイミドフィルムB(PI−B)(縦200mm×横200mm)を黒鉛材に挟み、電気炉を用いて、1000℃まで2℃/minで昇温して炭化処理を行なった。炭化処理は窒素気流中(流量1L/min)で行ない、内圧は真空ポンプにて−0.1kPaを保ったまま昇温を続けた。その後は実施例8と同じ工程で行った。結果を表2にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−0.1kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも0.1kPa低いことをいう。
【0075】
(実施例10)
上記方法によって作製した厚さ75μmのポリイミドフィルムB(PI−B)(縦200mm×横200mm)を黒鉛材に挟み、電気炉を用いて、1000℃まで2℃/minで昇温して炭化処理を行なった。炭化処理は窒素気流中(流量1L/min)で行ない、内圧は真空ポンプにて−0.5kPaを保ったまま昇温を続けた。その後は実施例8と同じ工程で行った。結果を表2にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−0.5kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも0.5kPa低いことをいう。
【0076】
(実施例11)
上記方法によって作製した厚さ75μmのポリイミドフィルムB(PI−B)(縦200mm×横200mm)を黒鉛材に挟み、電気炉を用いて、1000℃まで2℃/minで昇温して炭化処理を行なった。炭化処理は窒素気流中(流量1L/min)で行ない、内圧は真空ポンプにて−1kPaを保ったまま昇温を続けた。その後は実施例8と同じ工程で行った。結果を表2にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−1kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも1kPa低いことをいう。
【0077】
(実施例12)
上記方法によって作製した厚さ75μmのポリイミドフィルムB(PI−B)(縦200mm×横200mm)を黒鉛材に挟み、電気炉を用いて、1000℃まで2℃/minで昇温して炭化処理を行なった。炭化処理は窒素気流中(流量1L/min)で行ない、内圧は真空ポンプにて−10kPaを保ったまま昇温を続けた。その後は実施例8と同じ工程で行った。結果を表2にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−10kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも10kPa低いことをいう。
【0078】
(実施例13)
上記方法によって作製した厚さ75μmのポリイミドフィルムB(PI−B)(縦200mm×横200mm)を黒鉛材に挟み、電気炉を用いて、1000℃まで2℃/minで昇温して炭化処理を行なった。炭化処理は窒素を流さずに行ない、内圧は真空ポンプにて−10kPaを保ったまま昇温を続けた。その後は実施例8と同じ工程で行った。結果を表2にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−10kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも10kPa低いことをいう。
【0079】
(実施例14)
上記方法によって作製した厚さ75μmのポリイミドフィルムB(PI−B)(縦200mm×横200mm)を黒鉛材に挟み、電気炉を用いて、1000℃まで2℃/minで昇温して炭化処理を行なった。炭化処理は窒素を流さずに行ない、内圧は真空ポンプにて−80kPaを保ったまま昇温を続けた。その後は実施例8と同じ工程で行った。結果を表2にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−80kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも80kPa低いことをいう。
【0080】
75μmのポリイミドフィルムを炭化処理した場合は、50μmの時に比べて炭化フィルム上の異物および傷が発生しやすい事が分かった。これはポリイミドフィルムの厚みが厚くなるほど、分解ガスの発生が多くなる為であると考えられる。減圧下で炭化処理を行なうと、炭化フィルムの表面傷を減らす事は可能だが、完全に無くすことは出来なかった。また、50μmの時と同様に窒素気流中での処理を行なうと炉内の汚れが減少する事が分かった。
【0081】
(実施例15)
上記方法によって作製した厚さ75μmのポリイミドフィルムB(PI−B)(縦200mm×横200mm)を黒鉛材に挟み、電気炉を用いて、1000℃まで2℃/minで昇温して炭化処理を行なった。炭化処理は窒素気流中(流量5L/min)で行ない、内圧は真空ポンプにて−10kPaを保ったまま昇温を続けた。その後は実施例8と同じ工程で行った。結果を表2にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−10kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも10kPa低いことをいう。
【0082】
窒素流量を増やして減圧下で炭化処理を行なった場合、75μmのポリイミドフィルムでも完全に表面異物および傷を除去する事が出来た。
【0083】
(比較例4)
上記方法によって作製した厚さ50μmのポリイミドフィルムA(PI−A)(縦200mm×横200mm)を黒鉛材に挟み、電気炉を用いて、1000℃まで2℃/minで昇温して炭化処理を行なった。炭化処理は窒素気流中(流量1L/min)で行ない、内圧が±0kPaを保ったまま昇温を続けた。その後は実施例8と同じ工程で行った。結果を表2にまとめた。
【0084】
窒素気流中のみの条件では炭化フィルムの表面傷を取り除くことは出来なかった。
【0085】
(比較例5)
上記方法によって作製した厚さ50μmのポリイミドフィルムA(PI−A)(縦200mm×横200mm)を黒鉛材に挟み、電気炉を用いて、1000℃まで2℃/minで昇温して炭化処理を行なった。炭化処理は窒素気流中(流量1L/min)で行ない、内圧が+2kPaを保ったまま昇温を続けた。その後は実施例8と同じ工程で行った。結果を表2にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて+2kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも2kPa高いことをいう。
【0086】
窒素加圧の条件で炭化処理を行なうと、常圧下での処理に比べ炭化フィルムの表面傷がさらに増えてしまった。また、炉内の汚れも多くなってしまった。
【0087】
(比較例6)
上記方法によって作製した厚さ50μmのポリイミドフィルムA(PI−A)(縦200mm×横200mm)を黒鉛材に挟み、電気炉を用いて、1000℃まで2℃/minで昇温して炭化処理を行なった。炭化処理は窒素を流さずに行ない、内圧は真空ポンプにて10
-1kPaを保ったまま昇温を続けた。その後は実施例8と同じ工程で行った。結果を表2にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて10
-1kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも10
-1kPa高いことをいう。
【0088】
高真空下では比較的傷の少ない炭化フィルムが得られてくるものの、その後の黒鉛化工程では熱拡散率の低いグラファイトフィルムが得られてくることが分かった。また、炉内の汚れも多くなってしまった。
【0089】
【表2】
【0090】
(実施例16)
前記方法によって作製した厚さ50μmのポリイミドフィルムA(PI−A)(縦200mm×横200mm)2枚を直接に積層したものを黒鉛材に挟み、電気炉を用いて、1000℃まで2℃/minで昇温して炭化処理を行なった。炭化処理は窒素気流中(流量1L/min)で行ない、内圧は真空ポンプにて−0.01kPaを保ったまま昇温を続けた。室温まで冷却後、得られた炭化フィルムが融着しているかどうかを、○:融着なし、△:わずかに融着、×:全面的に融着の3段階で評価を行なった。同様の工程で10枚、50枚、75枚、100枚を直接積層したものに関しても、炭化処理後に融着しているかどうかの評価を行なった。その結果を表3にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−0.01kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも0.01kPa低いことをいう。
【0091】
(実施例17)
前記方法によって作製した厚さ50μmのポリイミドフィルムA(PI−A)(縦200mm×横200mm)2枚を直接に積層したものを黒鉛材に挟み、電気炉を用いて、1000℃まで2℃/minで昇温して炭化処理を行なった。炭化処理は窒素気流中(流量1L/min)で行ない、内圧は真空ポンプにて−0.1kPaを保ったまま昇温を続けた。その後は実施例16と同じ工程で行った。結果を表3にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−0.1kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも0.1kPa低いことをいう。
【0092】
(実施例18)
前記方法によって作製した厚さ50μmのポリイミドフィルムA(PI−A)(縦200mm×横200mm)2枚を直接に積層したものを黒鉛材に挟み、電気炉を用いて、1000℃まで2℃/minで昇温して炭化処理を行なった。炭化処理は窒素気流中(流量1L/min)で行ない、内圧は真空ポンプにて−0.5kPaを保ったまま昇温を続けた。その後は実施例16と同じ工程で行った。結果を表3にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−0.5kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも0.5kPa低いことをいう。
【0093】
(実施例19)
前記方法によって作製した厚さ50μmのポリイミドフィルムA(PI−A)(縦200mm×横200mm)2枚を直接に積層したものを黒鉛材に挟み、電気炉を用いて、1000℃まで2℃/minで昇温して炭化処理を行なった。炭化処理は窒素気流中(流量1L/min)で行ない、内圧は真空ポンプにて−1kPaを保ったまま昇温を続けた。その後は実施例16と同じ工程で行った。結果を表3にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−1kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも1kPa低いことをいう。
【0094】
(実施例20)
前記方法によって作製した厚さ50μmのポリイミドフィルムA(PI−A)(縦200mm×横200mm)2枚を直接に積層したものを黒鉛材に挟み、電気炉を用いて、1000℃まで2℃/minで昇温して炭化処理を行なった。炭化処理は窒素気流中(流量1L/min)で行ない、内圧は真空ポンプにて−10kPaを保ったまま昇温を続けた。その後は実施例16と同じ工程で行った。結果を表3にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−10kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも10kPa低いことをいう。
【0095】
減圧下で窒素を流しながら炭化処理を行なうと、多数枚ポリイミドフィルムを積層した場合においても融着を起こさずに炭化を行なう事が出来た。
【0096】
(実施例21)
前記方法によって作製した厚さ50μmのポリイミドフィルムA(PI−A)(縦200mm×横200mm)2枚を直接に積層したものを黒鉛材に挟み、電気炉を用いて、1000℃まで2℃/minで昇温して炭化処理を行なった。炭化処理は窒素を流さずに行ない、内圧は真空ポンプにて−10kPaを保ったまま昇温を続けた。その後は実施例16と同じ工程で行った。結果を表3にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−10kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも10kPa低いことをいう。
【0097】
(実施例22)
前記方法によって作製した厚さ50μmのポリイミドフィルムA(PI−A)(縦200mm×横200mm)2枚を直接に積層したものを黒鉛材に挟み、電気炉を用いて、1000℃まで2℃/minで昇温して炭化処理を行なった。炭化処理は窒素を流さずに行ない、内圧は真空ポンプにて−80kPaを保ったまま昇温を続けた。その後は実施例16と同じ工程で行った。結果を表3にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−80kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも80kPa低いことをいう。
【0098】
窒素を流さずに減圧雰囲気のみで多数枚積層のポリイミドフィルムを処理した場合においても、融着を起こさずに炭化を行なう事が出来た。しかし、積層枚数が多い場合は窒素を流しながら炭化を行なう事によって、さらに融着を起こさずにポリイミドフィルムを炭化する事が可能となった。
【0099】
(実施例23)
前記方法によって作製した厚さ50μmのポリイミドフィルムA(PI−A)(縦200mm×横200mm)2枚を直接に積層したものを黒鉛材に挟み、電気炉を用いて、1000℃まで2℃/minで昇温して炭化処理を行なった。炭化処理は窒素気流中(流量5L/min)で行ない、内圧は真空ポンプにて−10kPaを保ったまま昇温を続けた。その後は実施例16と同じ工程で行った。結果を表3にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−10kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも10kPa低いことをいう。
【0100】
窒素の流量を増やした場合、さらに融着を防止する事が出来た。
【0101】
(比較例7)
前記方法によって作製した厚さ50μmのポリイミドフィルムA(PI−A)(縦200mm×横200mm)2枚を直接に積層したものを黒鉛材に挟み、電気炉を用いて、1000℃まで2℃/minで昇温して炭化処理を行なった。炭化処理は窒素気流中(流量1L/min)で行ない、内圧が±0kPaを保ったまま昇温を続けた。その後は実施例16と同じ工程で行った。結果を表3にまとめた。
【0102】
(比較例8)
前記方法によって作製した厚さ50μmのポリイミドフィルムA(PI−A)(縦200mm×横200mm)2枚を直接に積層したものを黒鉛材に挟み、電気炉を用いて、1000℃まで2℃/minで昇温して炭化処理を行なった。炭化処理は窒素気流中(流量1L/min)で行ない、内圧が+2kPaを保ったまま昇温を続けた。その後は実施例16と同じ工程で行った。結果を表3にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて+2kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも2kPa高いことをいう。
【0103】
内圧が常圧および加圧の場合はフィルム同士が融着を起こしてしまった。
【0104】
【表3】
【0105】
(実施例24)
前記方法によって作製した厚さ75μmのポリイミドフィルムB(PI−B)(縦200mm×横200mm)2枚を直接に積層したものを黒鉛材に挟み、電気炉を用いて、1000℃まで2℃/minで昇温して炭化処理を行なった。炭化処理は窒素気流中(流量1L/min)で行ない、内圧は真空ポンプにて−0.01kPaを保ったまま昇温を続けた。室温まで冷却後、得られた炭化フィルムが融着しているかどうかを、○:融着なし、△:わずかに融着、×:全面的に融着の3段階で評価を行なった。同様の工程で10枚、50枚、75枚、100枚を直接積層したものに関しても、炭化処理後に融着しているかどうかの評価を行なった。その結果を表4にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−0.01kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも0.01kPa低いことをいう。
【0106】
(実施例25)
前記方法によって作製した厚さ75μmのポリイミドフィルムB(PI−B)(縦200mm×横200mm)2枚を直接に積層したものを黒鉛材に挟み、電気炉を用いて、1000℃まで2℃/minで昇温して炭化処理を行なった。炭化処理は窒素気流中(流量1L/min)で行ない、内圧は真空ポンプにて−0.1kPaを保ったまま昇温を続けた。その後は実施例24と同じ工程で行った。結果を表4にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−0.1kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも0.1kPa低いことをいう。
【0107】
(実施例26)
前記方法によって作製した厚さ75μmのポリイミドフィルムB(PI−B)(縦200mm×横200mm)2枚を直接に積層したものを黒鉛材に挟み、電気炉を用いて、1000℃まで2℃/minで昇温して炭化処理を行なった。炭化処理は窒素気流中(流量1L/min)で行ない、内圧は真空ポンプにて−0.5kPaを保ったまま昇温を続けた。その後は実施例24と同じ工程で行った。結果を表4にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−0.5kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも0.5kPa低いことをいう。
【0108】
(実施例27)
前記方法によって作製した厚さ75μmのポリイミドフィルムB(PI−B)(縦200mm×横200mm)2枚を直接に積層したものを黒鉛材に挟み、電気炉を用いて、1000℃まで2℃/minで昇温して炭化処理を行なった。炭化処理は窒素気流中(流量1L/min)で行ない、内圧は真空ポンプにて−1kPaを保ったまま昇温を続けた。その後は実施例24と同じ工程で行った。結果を表4にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−1kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも1kPa低いことをいう。
【0109】
(実施例28)
前記方法によって作製した厚さ75μmのポリイミドフィルムB(PI−B)(縦200mm×横200mm)2枚を直接に積層したものを黒鉛材に挟み、電気炉を用いて、1000℃まで2℃/minで昇温して炭化処理を行なった。炭化処理は窒素気流中(流量1L/min)で行ない、内圧は真空ポンプにて−10kPaを保ったまま昇温を続けた。その後は実施例24と同じ工程で行った。結果を表4にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−10kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも10kPa低いことをいう。
【0110】
(実施例29)
前記方法によって作製した厚さ75μmのポリイミドフィルムB(PI−B)(縦200mm×横200mm)2枚を直接に積層したものを黒鉛材に挟み、電気炉を用いて、1000℃まで2℃/minで昇温して炭化処理を行なった。炭化処理は窒素を流さずに行ない、内圧は真空ポンプにて−10kPaを保ったまま昇温を続けた。その後は実施例24と同じ工程で行った。結果を表4にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−10kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも10kPa低いことをいう。
【0111】
(実施例30)
前記方法によって作製した厚さ75μmのポリイミドフィルムB(PI−B)(縦200mm×横200mm)2枚を直接に積層したものを黒鉛材に挟み、電気炉を用いて、1000℃まで2℃/minで昇温して炭化処理を行なった。炭化処理は窒素を流さずに行ない、内圧は真空ポンプにて−80kPaを保ったまま昇温を続けたその後は実施例24と同じ工程で行った。結果を表4にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−80kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも80kPa低いことをいう。
【0112】
75μmのポリイミドフィルムを炭化処理した場合は、50μmの時に比べて融着が起こりやすい事が分かった。これはポリイミドフィルムの厚みが厚くなるほど、分解ガスの発生が多くなる為であると考えられる。窒素を流しながら減圧下で炭化処理を行なうと融着を更に抑制する事が出来た。
【0113】
(実施例31)
前記方法によって作製した厚さ75μmのポリイミドフィルムB(PI−B)(縦200mm×横200mm)2枚を直接に積層したものを黒鉛材に挟み、電気炉を用いて、1000℃まで2℃/minで昇温して炭化処理を行なった。炭化処理は窒素気流中(流量5L/min)で行ない、内圧は真空ポンプにて−80kPaを保ったまま昇温を続けた。その後は実施例24と同じ工程で行った。結果を表4にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−80kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも80kPa低いことをいう。
【0114】
窒素の流量を増やした場合、さらに融着を防止する事が出来た。
【0115】
(比較例9)
前記方法によって作製した厚さ75μmのポリイミドフィルムB(PI−B)(縦200mm×横200mm)2枚を直接に積層したものを黒鉛材に挟み、電気炉を用いて、1000℃まで2℃/minで昇温して炭化処理を行なった。炭化処理は窒素気流中(流量1L/min)で行ない、内圧が±0kPaを保ったまま昇温を続けた。その後は実施例24と同じ工程で行った。結果を表4にまとめた。
【0116】
(比較例10)
前記方法によって作製した厚さ75μmのポリイミドフィルムB(PI−B)(縦200mm×横200mm)2枚を直接に積層したものを黒鉛材に挟み、電気炉を用いて、1000℃まで2℃/minで昇温して炭化処理を行なった。炭化処理は窒素気流中(流量1L/min)で行ない、内圧が+2kPaを保ったまま昇温を続けた。その後は実施例24と同じ工程で行った。結果を表4にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて+2kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも2kPa高いことをいう。
【0117】
内圧が常圧および加圧の場合はフィルム同士が融着を起こしてしまった。
【0118】
【表4】
【0119】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明でなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内のすべての変更が含まれることが意図される。