特許第5658850号(P5658850)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5658850
(24)【登録日】2014年12月5日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】工具マガジン
(51)【国際特許分類】
   B23Q 3/157 20060101AFI20150108BHJP
【FI】
   B23Q3/157 C
   B23Q3/157 R
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-550212(P2014-550212)
(86)(22)【出願日】2014年9月3日
(86)【国際出願番号】JP2014073143
【審査請求日】2014年10月10日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000114787
【氏名又は名称】ヤマザキマザック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】特許業務法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 亨
(72)【発明者】
【氏名】原 康之
(72)【発明者】
【氏名】東海林 幸一
(72)【発明者】
【氏名】中西 徹也
(72)【発明者】
【氏名】前川 玲史
(72)【発明者】
【氏名】北山 隼平
【審査官】 山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−47000(JP,A)
【文献】 特開昭62−54638(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第0319611(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 3/157
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に旋回軸を備えかつ他端に工具を懸垂保持する工具ポットを備えたマガジンアームと、前記マガジンアームが旋回したときに前記工具が移動する円弧の軌跡上に前記工具を懸垂保持するグリッパを長手方向に複数形成したグリッパ板と、を備えた工具マガジンであって、
前記グリッパは、前記工具の保持位置において前記円弧の接線方向に開口するように形成されている
ことを特徴とする工具マガジン。
【請求項2】
前記グリッパ板は、前記マガジンアームを挟んで対向する位置に一対で配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の工具マガジン。
【請求項3】
前記グリッパ板は、長手方向に複数設けられており、前記マガジンアームは、前記長手方向に沿って移動可能に構成されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の工具マガジン。
【請求項4】
前記グリッパ板は、鉛直方向に複数設けられており、前記マガジンアームは、前記鉛直方向に沿って移動可能に構成されている
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の工具マガジン。
【請求項5】
前記グリッパ板は、鉛直方向の高さを調整自在に取り付けられている
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の工具マガジン。
【請求項6】
前記グリッパの少なくとも一方の先端部に弾性部材を備える
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の工具マガジン。
【請求項7】
前記弾性部材は、前記先端部に固定端を有する板バネであり、前記板バネの他端を自由端とし、前記自由端に前記グリッパの開口する側に突出する凸部を形成した
ことを特徴とする請求項6に記載の工具マガジン。
【請求項8】
前記グリッパの中央部にキーを備える
ことを特徴とする請求項6又は7に記載の工具マガジン。
【請求項9】
水平面上に移動自在なATCキャリアと、前記ATCキャリア上に回転中心を備え水平旋回するATCアームと、前記ATCアームの長手方向両端に設けられたATCグリッパと、をさらに備え、
前記工具マガジンの構成要素の動作を制御する制御装置が、前記ATCキャリア及び前記ATCアームに動作指令を行うことにより、前記ATCグリッパの位置を制御するとともに、前記マガジンアームをグリッパ板の長手方向又は鉛直方向に移動させる機構並びに前記マガジンアームを旋回させる機構に動作指令を行うことにより、前記ATCグリッパの位置に前記工具ポットを介して工具を移動させて受け渡しを行う
ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の工具マガジン。
【請求項10】
前記制御装置は、前記工具の形状に応じて前記ATCグリッパの位置を前記マガジンアームの旋回軌跡上で変更する機能を有する
ことを特徴とする請求項9に記載の工具マガジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械に装備される交換用の工具を収納する工具マガジンであって、特に、グリッパ板に複数の工具を懸垂収納可能な工具マガジンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばマシニングセンタ等の工作機械において、異なる種類の工具で異なる加工を実施する場合には、主軸に取り付けられた工具を交換して加工を行っている。また、一つの加工を継続中であっても、加工中に工具が破損した場合等は、新しい工具に交換する必要が生じる。
このような工作機械には、例えば複数種の複数の工具を収納する工具マガジンと、当該工具マガジンに収納された工具を取り出し又は工具マガジンに工具を収納する受け渡し動作を行う受け渡し機構と、受け渡し機構から工具を受け取って主軸に対して工具の着脱動作を行う自動工具交換装置(ATC)と、が備えられている。
【0003】
上記のような工作機械に適用される工具マガジンとして、例えば工具を収納する複数のノッチを備え対向配置される一対の棚と、上記工具を把持して移送するグリッパ装置を有するハンドリング装置と、を備え、上記ハンドリング装置が上記棚に形成された上記ノッチに対して上記グリッパ装置をアクセス可能とした工具マガジンが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−047000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されている工具マガジンにおいて、グリッパ装置はその自由端にグリッパが配置される回転アームを含み、当該グリッパはベルト機構等を用いて回転アームの回転軸とグリッパの回転軸とを連結するように構成されている。
このような機構を備えることによって、ノッチへの収納時、グリッパ装置による把持時、工具交換機への移送時のいずれにおいても、工具の角度姿勢(位相)が変化しない、すなわちグリッパ装置の運動中に工具が回転しないように保持される。
しかしながら、特許文献1に示すような従来の工具マガジンにおいては、交換すべき工具及び上記したグリッパを回転させるための機構のそれぞれの重量がグリッパ装置の回転アームに負荷されるため、当該回転アームの強度及び剛性を高める必要があり、結果として寸法や重量が大きい回転アームを採用せざるを得ないという課題があった。
また、従来の工具マガジンにおいて、グリッパ装置は、一対の棚に平行なグラウンド・レールと垂直支柱とを含む平面内で移動可能となっている。
しかしながら、グリッパ装置が棚に近接する方向には移動手段を有していないため、グリッパ装置が工具を棚に収納するためには、グリッパ装置の上記平面内での移動と回転アームの旋回移動とを同期させる必要があり、制御が複雑となるという課題があった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、交換される工具を把持及び移送する機構の構成を簡略化するとともに工具の収納動作を容易にした工具マガジンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の工具マガジンは、一端に旋回軸を備えかつ他端に工具を懸垂保持する工具ポットを備えたマガジンアームと、前記マガジンアームが旋回したときに前記工具が移動する円弧の軌跡上に前記工具を懸垂保持するグリッパを長手方向に複数形成したグリッパ板と、を備え、前記グリッパは、前記工具の保持位置において前記円弧の接線方向に開口するように形成されている。
【0008】
本発明の工具マガジンの一態様において、前記グリッパ板は、前記マガジンアームを挟んで対向する位置に一対で配置されている。
本発明の工具マガジンの他の態様において、前記グリッパ板は、長手方向に複数設けられており、前記マガジンアームは、前記長手方向に沿って移動可能に構成されている。
本発明の工具マガジンの他の態様において、前記グリッパ板は、鉛直方向に複数設けられており、前記マガジンアームは、前記鉛直方向に沿って移動可能に構成されている。
また、前記グリッパ板は、鉛直方向の高さを調整自在に取り付けられている。
【0009】
本発明の工具マガジンのさらに他の態様において、前記グリッパは、少なくとも一方の先端部に弾性部材が設けられている。
このとき、前記弾性部材は、前記先端部に固定端を有する板バネであり、前記板バネの他端を自由端とし、前記自由端に前記グリッパの開口する側に突出する凸部を形成してもよい。また、前記グリッパの中央部にキーを備えるものであってもよい。
【0010】
本発明の工具マガジンのさらに他の態様において、水平面上に移動自在なATCキャリアと、前記ATCキャリア上に回転中心を備え水平旋回するATCアームと、前記ATCアームの長手方向両端に設けられたATCグリッパと、をさらに備え、前記工具マガジンの構成要素の動作を制御する制御装置が、前記ATCキャリア及び前記ATCアームに動作指令を行うことにより、前記ATCグリッパの位置を制御するとともに、前記マガジンアームを前記長手方向又は前記鉛直方向に移動させる機構並びに前記マガジンアームを旋回させる機構に動作指令を行うことにより、前記ATCグリッパの位置に前記工具ポットを介して工具を移動させて受け渡しを行う。
このとき、前記制御装置は、前記工具の形状に応じて前記ATCグリッパの位置を前記マガジンアームの旋回軌跡上で変更する機能を有するものであってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の工作機械は、以上の手段を備えることにより、マガジンアームの旋回に応じて当該マガジンアームに対する工具の角度姿勢を維持するための構成を工具ポットに設ける必要がないため、工具ポットは単に工具を把持できる機構であればよく、構成を簡素化できる。
また、マガジンアームの旋回動作のみでグリッパとの間で工具の受け渡しが可能であるため、制御装置が行う工具の受け渡し動作の制御が容易となる。
さらに、工具の受け渡しを旋回動作で行うので、グリッパ板に接近する水平方向への移動機構を備えた工具マガジンと比較すると、稼働領域として大きな空間を必要とせず、かつ、マガジンアームを挟んでグリッパ板を両側に対向して配置することにより、収納する工具の本数に対して工具マガジンの幅方向の寸法を最小にできる。
また、グリッパ板毎に高さを任意に調整できることにより、工具長さに合わせてグリッパ板の間隔を変えることができるので、工具マガジン内で短い工具を一箇所に集中配置して収納すれば、グリッパ板の段数を増やして収納する工具の本数を増加させることもできるため、限られたラック領域の空間を有効に活用できる。
また、グリッパ板を水平方向に複数配置することにより、上記した工具長さに合わせてグリッパ板の高さを変えられる区画を細分化して区画数を増やすことができるので、収納する工具本数の増加につながり、ラック領域の空間をより効率的に活用できる。
また、制御装置からの制御指令を変更することにより、マガジンアームの旋回角度やATCキャリアの工具の受け渡し位置を変更することができるので、工具の把持部の形状を変えるだけで、様々な工具仕様に対して同一の機構で対応させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の工具マガジンを適用した工作機械の一例を示す斜視図である。
図2】本発明の工具マガジンのラック領域の概要を示す斜視図である。
図3】本発明の工具マガジンに適用される工具保持装置の概要を示す斜視図である。
図4】本発明の工具マガジンにおいて、工具保持装置とグリッパ板との間での工具の受け渡し動作の一例を示す要部の斜視図である。
図5a】本発明の工具マガジンに適用されるグリッパ板が、BTタイプの工具を保持する際に、工具が弾性部材(板バネ)と接触した時点での概要を示す上面図である。
図5b】本発明の工具マガジンに適用されるグリッパ板が、BTタイプの工具を保持する際に、工具が完全にグリッパに保持された時点での概要を示す上面図である。
図6a】本発明の工具マガジンに適用されるグリッパ板が、CAPTOタイプの工具を保持する際に、工具が弾性部材(板バネ)と接触した時点での概要を示す上面図である。
図6b】本発明の工具マガジンに適用されるグリッパ板が、CAPTOタイプの工具を保持する際に、工具が完全にグリッパに保持された時点での概要を示す上面図である。
図7】本発明の工具マガジンにBTタイプ工具用の自動工具交換(ATC)領域を設けた場合の一態様を示す上面図である。
図8】本発明の工具マガジンにCAPTOタイプ工具用の自動工具交換(ATC)領域を設けた場合の一態様を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の工具マガジンを適用した工作機械の一例を示す斜視図である。
図1に示すように、本発明の工具マガジン10は、主軸20及びワークテーブル30を備えた加工装置に併設される。
本発明の工具マガジン10は、大別すると、後述するフレーム部材110やグリッパ板150等を含むラック領域100と、後述するATCアーム202やATCキャリア207等を含む自動工具交換(ATC)領域200とで構成されている。
ここで、上記した工具マガジン10、主軸20及びワークテーブル30等の動作は、図示しない制御装置によって制御される。
【0014】
図2は、本発明の工具マガジン10のラック領域100の概要を示す斜視図である。
図2に示すように、本発明の工具マガジン10のラック領域100は、外形を規定するフレーム部材110と、側面に工具を懸垂保持するためのグリッパが形成されたグリッパ板150と、上記グリッパ板150を取り付けるグリッパ板取付サブフレーム部材130と、前記グリッパ板取付サブフレーム部材130を前記フレーム部材110に取り付けるサブフレーム部材120と、工具を懸垂保持して移動させる工具保持装置170と、上記工具保持装置170を鉛直方向に移動させる鉛直ガイドレール180及び鉛直移動機構(図1の181参照)と、上記鉛直ガイドレールを上記グリッパ板150と平行な面内で移動させる水平ガイドレール190及び水平移動機構(図1の191参照)と、を備えている。
グリッパ板150は、上記鉛直ガイドレール180及び水平ガイドレール190とで規定される平面を挟んで対向する位置に、当該平面と平行に配置される。このとき、グリッパ板150は、サブフレーム部材120の長手方向(ラック領域100の垂直方向)に複数配置して多段構造とすることができる。
さらに、グリッパ板150は、前記グリッパ板取付サブフレーム部材130を介してサブフレーム部材120上の任意の高さ位置に取り付けることができる。このとき、グリッパ板150の取り付け形態は、例えばサブフレーム部材120に断面がT形状のT溝(Tスロット)(図示せず)を形成し、当該T溝にT溝ナット(図示せず)を挿通した状態で、上記サブフレーム部材120の任意の高さ位置でボルト(図示せず)によりグリッパ板取付サブフレーム部材130を固定する構成としてもよい。このような構成によれば、グリッパ板150は無段階に高さを調整することが可能となる。
また、前記グリッパ板取付サブフレーム部材130の長さは、その両端に配設された前記サブフレーム部材120の間の寸法と同等としてもよい。このような構成によれば、グリッパ板150の高さを変更する時にも、ほぼ水平を保ったまま移動することができるので、グリッパ板150を水平に取り付けるための調整作業が容易となる。
また、グリッパ板150をサブフレーム部材120に沿って走行する任意の昇降機構に取り付けて位置を可変としてもよい。このような構成によれば、グリッパ板150の高さ調整の段取りをさらに容易に行うことができる。そして、工具保持装置170の鉛直移動機構の動作と組み合わせて制御することで所要移動距離を縮め、動作時間の短縮化を図ることも可能である。
また、複数のグリッパ板150を設ける際には、当該グリッパ150毎に取り付け高さ位置を変えることができる。つまり、工具長さに合わせてグリッパ板の間隔を任意に変えることができるので、工具マガジン内で短い工具を一箇所に集中配置して収納すれば、グリッパ板の段数を増やして収納する工具の本数を増加させることもできるため、限られたラック領域の空間を有効に活用できる。
さらに、サブフレーム部材120の本数を増設してグリッパ板を水平方向に複数配置することにより、上記した工具長さに合わせてグリッパ板の高さを変えられる区画を細分化して区画数を増やすことができるので、収納する工具本数の増加につながり、ラック領域の空間をより効率的に活用できる。
【0015】
図3は、本発明の工具マガジン10のラック領域100に適用される工具保持装置170の概要を示す斜視図である。
図3に示すように、本発明の工具マガジン10のラック領域100に適用される工具保持装置170は、図2の鉛直ガイドレール180にガイドされて移動するシフタ171と、上記シフタ171に設けられた所定の鉛直軸を中心に後述のマガジンアーム173を旋回させるマガジンアーム旋回機構172と、上記シフタ171に設けられたマガジンアーム173と、上記マガジンアーム173の先端に取り付けられて工具を懸垂保持する工具ポット174と、を備えている。
図3に示す具体例において、工具ポット174は、工具のテーパ部に上方からアプローチして把持することにより懸垂保持するように構成されている。なお、工具ポット174が工具を把持する態様は、例えば工具のテーパ部を横から爪部を用いて把持するタイプ等、工具を鉛直方向に保持できる部材であれば、他のいかなるタイプのものでも採用可能である。
【0016】
図4は、本発明の工具マガジン10のラック領域100において、工具保持装置170とグリッパ板150との間で行われる工具の受け渡し動作の一例を示す要部の斜視図である。
図4に示すように、工具保持装置170のマガジンアーム173は、シフタ171に設けられた旋回軸を中心に回動し、工具ポット174に懸垂保持された工具を中心位置A、右旋回位置B及び左旋回位置Cに配置できる。
一方、上述のとおり、工具保持装置170を挟んで対向する位置に一対のグリッパ板150が取り付けられており、これらのグリッパ板150には、上記工具保持装置170側に向けて斜めの方向に開口するグリッパ151が複数形成されている。
このとき、グリッパ板150に形成されるグリッパ151の上記「斜めの方向」は、工具がグリッパ151に収納されている位置での上記マガジンアーム173の旋回動作に対する工具中心の旋回軌跡が形成する円弧の接線で示される方向を採用する。すなわち、前記接線はグリッパ151の開口部の中心線(図4図7図8の符号L参照)と一致する。
【0017】
図5は、本発明の工具マガジン10のラック領域100に適用されるグリッパ板150が、BTタイプの工具1aを保持する場合の概要を示す上面図であり、図5aは工具1aが後述する弾性部材(板バネ)154と接触した時、図5bは工具1aがグリッパ151に完全に保持されて弾性部材(板バネ)154に押圧支持された時の状態をそれぞれ示す。なお、図5において、工具1aを保持する工具ポット及びマガジンアームは省略されている。
図5aに示すように、BTタイプの工具1aを保持するグリッパ151の工具保持部157aは、上記工具1aをグリッパ151に挿嵌する時に工具1aの外周面に形成されたV溝部をガイドする直線部158と、前記V溝部に接触して工具1aを保持する円弧部159とによって連続的に形成されている。
【0018】
図5に示すように、工具保持装置(図示せず)に近い側のグリッパ151の先端部、言い換えると、工具保持部157aの前方には、当該先端部に固定端を有し反対側を自由端とする弾性部材(板バネ)154が設けられている。そして、上記板バネの自由端において、グリッパ151の開口する側には凸部155が形成されている。
また、グリッパ151の開口角度の中心(円弧の中央部)には、工具1aの外周に形成されたキー溝と嵌合するキー156aがグリッパ151の開口部の中心線Lを中心として形成されている。
【0019】
マガジンアームの旋回動作により工具1aをグリッパ151に保持させる場合、図5aに示すように、まずグリッパ151の先端部に設けられた板バネ154が工具1aの外周面と接触する。
この接触状態からさらにマガジンアームが旋回すると、工具1aがグリッパ151の工具保持部157aの直線部158にガイドされながら、板バネ154が工具1aの外周面に押し退けられる形で変形する。
続いて図5bに示すように、工具1aがさらにグリッパ151の奥に向かって進入すると、グリッパ151の工具保持部157aの円弧部159に接触支持されるとともに、工具1aの外周面に設けられたキー溝とグリッパ151の開口角度の中心に設けられたキー156aとが嵌合し、かつ板バネ154が反発により戻ることで板バネ154の凸部155が工具1aの外周面を押圧支持する。
このような動作により、工具1aがキー156aと嵌合して回り止めされるとともに板バネ154の凸部155によってグリッパ151から抜け止めされるため、工具1aがグリッパ151から外れて落下することなく懸垂保持される。
また、工具1aをグリッパ151から取り外す場合には、上記の保持動作とは逆にマガジンアームを回転させることによって行うことができる。
【0020】
図6は、本発明の工具マガジン10のラック領域100に適用されるグリッパ板150が、「COROMANT CAPTO」(「CAPTO」は登録商標:以下、単に「CAPTO」と称する)タイプの工具1bを保持する場合の概要を示す上面図であり、図6aは工具1bが弾性部材(板バネ)154と接触した時、図6bは工具1bがグリッパ151に完全に保持されて弾性部材(板バネ)154に押圧支持された時の状態をそれぞれ示す。なお、図6においても、工具1bを保持する工具ポット及びマガジンアームは省略されている。
上述の図6aに示すように、CAPTOタイプの工具1bを保持するグリッパ151の工具保持部157bは、工具1bの外周面に形成された対向する一対の切り欠き溝と接触して工具1bを保持する対向する一対の平面部によって形成されている。また、工具保持部157bの別の態様として、図6では図示されていないが、工具の外周面に形成されている対向する一対の切り欠き溝を接触支持するローラ等を設けてもよい。
【0021】
図6に示すように、工具保持装置(図示せず)に近い側のグリッパ151の先端部、言い換えると、工具保持部157bの前方には、当該先端部に固定端を有し反対側を自由端とする弾性部材(板バネ)154が設けられている。そして、上記板バネの自由端において、グリッパの開口する側には凸部155が形成されている。
また、グリッパ151の開口角度の中心(円弧の中心部)には、開口部の中心線Lを中心としてキー156bが形成されている。前記キー156bは、工具の外周面に形成されている上記一対の切り欠き溝とは別の切り欠き溝と接触して、回り止めとして機能する。
【0022】
マガジンアームの旋回動作により工具1bをグリッパ151に保持させる場合、図6aに示すように、まずグリッパ151の先端部に設けられた板バネ154が工具1bの外周面と接触する。
この接触状態からさらにマガジンアームが旋回すると、工具1bの外周面に形成された前記一対の切り欠き溝がグリッパ151の対向する一対の工具保持部157bにガイドされながら、板バネ154が工具1bの外周面に押し退けられる形で変形する。
続いて図6bに示すように、工具1bがさらにグリッパ151の奥に向かって進入すると、工具1bの外周面に形成された上記別の切り欠き溝とグリッパ151の開口角度の中心に設けられたキー156bとが面接触し、かつ板バネ154が反発により戻ることで板バネ154の凸部155が工具1bの外周面を押圧支持する。
このような動作により、工具1bがキー156bと面接触して回り止めされるとともに板バネ154の凸部155によってグリッパ151から抜け止めされるため、工具1bがグリッパ151から外れて落下することなく懸垂保持される。
また、工具1bをグリッパ151から取り外す場合には、上記の保持動作とは逆にマガジンアームを回転させることによって行うことができる。
【0023】
本発明の工具マガジン10のラック領域100は、図4図6に示すように、マガジンアーム173の先端に取り付けられた工具ポット174に保持された工具を、当該マガジンアーム173の旋回動作のみによってグリッパ板150に形成されたグリッパ151に受け渡す動作を行う。
このため、マガジンアーム173の旋回に応じて当該マガジンアーム173に対する工具の角度姿勢を維持するための追加的な構成を工具ポット174に設ける必要がなく、マガジンアーム173及び工具ポット174を含む工具保持装置170の構成を簡素化できる。
また、工具の角度姿勢(位相)を変更するための複雑な機構を必要としないため、工具の受け渡し動作の制御が容易となる。
さらに、グリッパ板150のグリッパ151の開口部は、工具1a(または1b)がグリッパ151に収納されている位置でのマガジンアーム173の旋回動作に対する工具中心の旋回軌跡が形成する円弧の接線の方向に斜めに向けられているので、グリッパ板に接近する水平方向への移動機構を備えた工具マガジンと比較すると、稼働領域として大きな空間を必要とせず、工具マガジンの幅寸法を小さくすることができる。さらに、グリッパ板150は工具保持装置170の両側に対向して配置されているため、本発明の工具マガジン10のラック領域100は収納する工具本数に対して幅方向の寸法を最小にすることができる。
【0024】
図7は、本発明の工具マガジン10のBTタイプ工具用の自動工具交換(ATC)領域200の一態様を示す上面図である。
図7に示すように、本発明の工具マガジン10の自動工具交換(ATC)領域200は、ガイドレール(図1の201参照)と、該ガイドレール201上を水平方向に移動自在なATCキャリア(図1の207参照)と、該ATCキャリア上に回転中心を有して水平旋回するATCアーム202と、該ATCアーム202の長手方向両端に設けられたATCグリッパ203aと、を備えている。
上記ATCグリッパ203aは、BTタイプの工具の外周面に形成されたV溝を挟み込んで支持する二本一対の支持爪204aと、該支持爪204aの開閉機構(図示せず)とで構成されている。また、ATCグリッパ203aの支持爪204aの根元の中央部には、工具1aのキー溝と嵌合する支持部205aが形成されている。
図7に示す自動工具交換(ATC)領域200は、工作機械全体の動作を制御する制御装置(図示せず)によって、工具マガジン側に位置するATCグリッパ203aにマガジンアーム173から交換用の工具1aを受け取らせて、ATCアーム202が180°回転することにより工具主軸(図1の20参照)に上記工具1aを受け渡す動作を実行する。
また、同様に、工具主軸から取り外された工具1aを加工装置側に位置するATCグリッパ203aに受け取らせて、ATCアーム202が180°回転することにより工具マガジン側のマガジンアーム173の工具ポット174に上記工具1aを受け渡す動作を実行する。
【0025】
工具マガジン10においてグリッパ板150から自動工具交換(ATC)領域200に交換用の工具1aを受け渡す動作は、図7に示すように、工具1aを保持したマガジンアーム173を中心位置に配置したまま待機させた状態で、ATCキャリア(図1の207参照)を水平移動することにより、ATCアーム202のATCグリッパ203aにマガジンアーム173の工具ポット174に保持させた工具1aの外周面に形成されたV溝を保持させることで行う。
このとき、支持部205aは、マガジンアーム173の旋回軌跡の上記中心位置で工具1aを把持できるように配置されているため、マガジンアーム173の先端に取り付けられた工具ポット174に保持された工具1aを、ATCキャリアの水平移動の動作のみによってATCグリッパ203aに受け渡すことができる。
このため、工具1aを収納するグリッパ板150から自動工具交換(ATC)領域200のATCアーム202に工具1aを受け渡す際にも、工具1aの角度姿勢(位相)を変更するための複雑な機構や制御を考慮する必要がなく、工具の受け渡し動作の制御が容易となる。
【0026】
図8は、本発明の工具マガジン10のCAPTOタイプ工具用の自動工具交換(ATC)領域200の一態様を示す上面図である。
図8に示すように、CAPTOタイプ工具用の自動工具交換(ATC)領域200は図7に示すBTタイプ工具用のものと同様の構成を備えている。
一方、ATCアーム202の長手方向両端に設けられるATCグリッパ203bは、上述のCAPTOタイプ工具の外周面に形成された隣り合う二辺の切り欠き溝をそれぞれ接触支持する二本一対の支持爪204bと、該支持爪の開閉機構(図示せず)と、で構成されている。また、ATCグリッパ203bの支持爪204bの根元の中央部には、上記隣り合う二辺の切り欠き溝と180°対向して配置される反対側の隣り合う二辺の切り欠き溝と面接触する支持部205bが形成されている。
【0027】
工具マガジン10においてグリッパ板150から自動工具交換(ATC)領域200に交換用の工具1bを受け渡す動作は、図8に示すように、工具1bを保持したマガジンアーム173を中心位置から45°の方向に旋回させた位置で待機させた状態でATCキャリア(図1の207参照)を水平移動することにより、ATCアーム202のATCグリッパ203bにマガジンアーム173の工具ポット174に保持させた工具1bの外周面に形成された切り欠き溝を保持させることで行う。
このとき、ATCグリッパ203bの支持爪204b及び支持部205bは、マガジンアーム173を中心位置から45°旋回させた位置での旋回軌跡上のCAPTOタイプ工具1bの外周面に形成された隣り合う四辺の切り欠き溝の角度姿勢と対応する形状で構成されているため、マガジンアーム173の先端に取り付けられた工具ポット174に保持された工具1bを、ATCキャリアの水平移動の動作のみによってATCグリッパ203bに受け渡すことができる。
このため、工具1bを収納するグリッパ板150から自動工具交換(ATC)領域200のATCアーム202に工具1bを受け渡す際にも、工具1bの角度姿勢(位相)を変更するための複雑な機構や制御を考慮する必要がなく、工具1bの受け渡し動作の制御が容易となる。
【0028】
次に、これまでに列挙した図面を参照し、本発明の工具マガジン10を用いて、ラック領域100に収納されているBTタイプの工具1aを主軸20に取り付ける際の動作を説明する。
まず、制御装置は、工具ポット174に工具1aを保持していない状態で工具保持装置170のマガジンアーム173を中心位置(図4の符号Aを参照)とし、鉛直移動機構(図1の181参照)及び水平移動機構(図1の191参照)を駆動して工具保持装置170を所定の高さ及び位置に移動させる。
続いて、マガジンアーム173を右旋回位置(図4の符号Bを参照)又は左旋回位置(図4の符号Cを参照)に回動させて、工具ポット174をグリッパ板150のグリッパ151に懸垂保持された工具1aの直上に配置する。この状態で前記鉛直移動機構により工具保持装置170を下降させて工具ポット174で工具1aのテーパ部を把持する。
【0029】
工具ポット174が工具を把持した後、マガジンアーム173を中心位置に旋回させることにより工具1aをグリッパ151から取り外して懸垂保持する。
その後、再び上記鉛直移動機構及び水平移動機構を駆動して工具保持装置170をATC領域200の近傍の所定の高さ及び位置に移動させる。
そして、工具ポット174が工具1aを懸垂保持している位置に対してATCキャリア(図1の207参照)を図示しない移動機構により水平移動させ、当該ATCキャリア207上のATCアーム202の一端に設けられたATCグリッパ203aで工具1aのV溝部を横方向から把持する(図7参照)。この状態で工具ポット174の把持を解除して工具保持装置170を上昇させることにより、工具1aを工具ポット174からATCグリッパ203aに受け渡す。
続いて、ATCキャリア207が主軸20との自動工具交換を行うATC位置まで水平移動するとともに、ATCアーム202が180°旋回することにより、把持した工具1aを主軸側に受け渡し、主軸20に装着する。
【0030】
ここで、マガジンアーム173の工具ポット174から工具1aをATCグリッパ203aに受け渡す動作として、マガジンアーム173を中心位置とした状態でATCキャリア207を移動させてATCグリッパ203aを工具1aの横方向からアプローチする動作を例示したが、これに代えて、ATCキャリア207(ATCグリッパ203a)を所定位置に配置し、マガジンアーム173を中心位置からやや旋回させた状態で高さ位置を整合させ、マガジンアーム173を旋回させることにより工具1aをATCグリッパ203aに上記中心位置で横方向から押し込む態様で受け渡しを行ってもよい。
また、CAPTOタイプの工具1bを受け渡しする場合には、図8に示すように、工具ポット174からATCグリッパ203bに受け渡す位置を中心位置から45°旋回させた位置となるように制御すればよい。
【0031】
なお、本発明は、上記したATCキャリアへの工具の受け渡し動作の際、マガジンアームの旋回位置が中心位置の場合と45度旋回位置の場合の二例の実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。
例えば、本発明の工具ポットの工具保持部材とともに、グリッパ板に設けられるグリッパとキーの形状を収納される工具の形状に合わせて適宜変更することにより、上記例示したタイプの工具以外の工具に対しても適用できる。
また、本発明の工具マガジンを用いて工具を自動交換する動作を行う際に、ATCグリッパと支持部の形状を交換される工具の形状に合わせて適宜変更するとともに、マガジンアームの旋回位置とATCグリッパの受け渡し位置とを適宜変更する制御を行うことにより、上記例示したタイプの工具以外の工具に対しても自動交換動作を実施することができる。
【符号の説明】
【0032】
1a、1b 工具
10 工具マガジン
100 ラック領域
150 グリッパ板
151 グリッパ
170 工具保持装置
173 マガジンアーム
174 工具ポット
200 自動工具交換(ATC)領域
202 ATCアーム
203a、203b ATCグリッパ
【要約】
一端に旋回軸を備えかつ他端に工具を懸垂保持する工具ポットを備えたマガジンアームと、前記マガジンアームが旋回したときに前記工具が移動する円弧の軌跡上に前記工具を懸垂保持するグリッパを長手方向に複数形成したグリッパ板と、を備えた工具マガジンであって、前記グリッパは、前記工具の保持位置において前記円弧の接線方向に開口するように形成されている。
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図6a
図6b
図7
図8