特許第5658869号(P5658869)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5658869ハードコート用組成物及びハードコート層が形成された成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5658869
(24)【登録日】2014年12月5日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】ハードコート用組成物及びハードコート層が形成された成形品
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/10 20150101AFI20150108BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20150108BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20150108BHJP
   C09D 175/16 20060101ALI20150108BHJP
   C09D 4/02 20060101ALI20150108BHJP
【FI】
   G02B1/10 Z
   C08F290/06
   C09D7/12
   C09D175/16
   C09D4/02
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2009-212710(P2009-212710)
(22)【出願日】2009年9月15日
(65)【公開番号】特開2010-107956(P2010-107956A)
(43)【公開日】2010年5月13日
【審査請求日】2012年7月13日
(31)【優先権主張番号】特願2008-253180(P2008-253180)
(32)【優先日】2008年9月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000162076
【氏名又は名称】共栄社化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】松田 知也
(72)【発明者】
【氏名】五島 学人
(72)【発明者】
【氏名】内木場 尊信
【審査官】 加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−225434(JP,A)
【文献】 特開2007−070578(JP,A)
【文献】 特開2008−207477(JP,A)
【文献】 特開2005−288787(JP,A)
【文献】 特開2000−009904(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 1/10 − 1/12
C08F 290/06
C09D 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ウレタン(メタ)アクリレート樹脂と、
(B)多官能(メタ)アクリレート樹脂と、
(C)金属酸化物微粒子とを含み、
前記(A)ウレタン(メタ)アクリレート樹脂が、下記式(1)
(RO−CONH−)−R−(−NHCO−OR (1)
(式中、RO−はポリエーテルポリオールを主鎖とする化合物の脱水素残基、−R−はイソシアネート化合物の脱イソシアネート基残基、RO−は水酸基含有(メタ)アクリレート化合物の脱水素残基、m+n=1〜50の整数)
で表されるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含み、
前記ポリエーテルポリオールを主鎖とする化合物が、片末端水酸基含有ポリアルキレングリコール化合物又は(メタ)アクリル酸アルキレンオキサイド付加化合物であることを特徴とするハードコート用組成物。
【請求項2】
(A)ウレタン(メタ)アクリレート樹脂が、イソシアネート化合物と、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物と、ポリエーテルポリオールを主鎖とする化合物との反応によって得られる樹脂である請求項1に記載のハードコート用組成物。
【請求項3】
イソシアネート化合物が、ジイソシアネート類又はジイソシアネート単量体の重縮合したポリイソシアネート類であるか、またはイソシアネート基にアルコール化合物を付加したウレタン構造及び/又はアミン化合物を付加したウレア構造を有している請求項1又は2に記載のハードコート用組成物。
【請求項4】
片末端水酸基含有ポリアルキレングリコール化合物が、アルコキシポリアルキレングリコール類である請求項1〜3のいずれか1つに記載のハードコート用組成物。
【請求項5】
(メタ)アクリル酸アルキレンオキサイド付加化合物が、(メタ)アクリル酸をアルキレンオキサイド付加又はポリアルキレングリコールのモノ(メタ)アクリレート化されたものである請求項1〜3のいずれか1つに記載のハードコート用組成物。
【請求項6】
水酸基含有(メタ)アクリレート化合物が、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、ポリオール(メタ)アクリレート類又はアルキレンオキサイド付加ポリオール(メタ)アクリレート類である請求項1〜5のいずれか1つに記載のハードコート用組成物。
【請求項7】
多官能(メタ)アクリレート樹脂が、1分子中に(メタ)アクリロイル基を少なくとも2個有する化合物である請求項1〜のいずれか1つに記載のハードコート用組成物。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか1つに記載のハードコート用組成物の硬化重合体がハードコート層として形成されてなることを特徴とする成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードコート用組成物及びハードコート層が形成された成形品に関し、より詳細には、耐久性及び密着性が良好なハードコート用組成物及びハードコート層が形成された成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、種々のプラスチックが、家電及び自動車業界等、多分野において利用されている。プラスチックは、加工性、透明性などに加え、軽量で安価であるなど種々の利点を有しているが、ガラス等の材料に比べて柔らかく、表面に傷が付きやすい等の欠点がある。
これらの欠点を改良するために、プラスチック表面にハードコート材料をコーティングし、プラスチックが有する透明性及び軽量性等を損なうことなく、表面の耐擦傷性等を改善する技術が用いられている。
【0003】
このようなハードコート材料としては、例えば、シリコン系、アクリル系、メラミン系樹脂等の熱硬化型のハードコート材料が用いられている。なかでも、紫外線等の光によって硬化させることができるアクリル系樹脂が、硬化時間、原料コスト等の観点から有利であり、主流となりつつある。
【0004】
しかし、アクリル系樹脂は、一般的にシリコン系塗料と比べて耐擦傷性や耐摩耗性などに劣る。そのため、分子中に少なくとも2個以上の(メタ)アクリル基を有する多官能(メタ)アクリレート等を用いる方法等が提案されている(例えば、特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−48934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、多官能(メタ)アクリレート等は、硬化収縮率が大きく、特に薄膜状に成形する場合にはカール性が顕著となるという課題がある。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、用いる成分の透明性、耐擦傷性を最大限に発揮させながら、同時に、カール性を最小限に止めることができるハードコート用組成物及び成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のハードコート用組成物は、(A)ウレタン(メタ)アクリレート樹脂と、
(B)多官能(メタ)アクリレート樹脂と、
(C)金属酸化物微粒子とを含むことを特徴とする。
【0008】
このようなハードコート用組成物は、
(A)ウレタン(メタ)アクリレート樹脂が、イソシアネート化合物と、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物と、ポリエーテルポリオールを主鎖とする化合物との反応によって得られる樹脂であるか、
さらに、(A)ウレタン(メタ)アクリレート樹脂が、下記式(1)
(RO−CONH−)−R−(−NHCO−OR (1)(式中、RO−はポリエーテルポリオールを主鎖とする化合物の脱水素残基、−R−はイソシアネート化合物の脱イソシアネート基残基、RO−は水酸基含有(メタ)アクリレート化合物の脱水素残基、m+n=1〜50の整数)で表されるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含むことが好ましい。
【0009】
特に、イソシアネート化合物が、ジイソシアネート類又はジイソシアネート単量体の重縮合したポリイソシアネート類であるか、またはイソシアネート基にアルコール化合物を付加したウレタン構造及び/又はアミン化合物を付加したウレア構造を有していることが好ましい。
さらに、ポリエーテルポリオールを主鎖とする化合物が、片末端水酸基含有ポリアルキレングリコール化合物又は(メタ)アクリル酸アルキレンオキサイド付加化合物であるか、片末端水酸基含有ポリアルキレングリコール化合物が、アルコキシポリアルキレングリコール類であるか、(メタ)アクリル酸アルキレンオキサイド付加化合物が、(メタ)アクリル酸をアルキレンオキサイド付加又はポリアルキレングリコールのモノ(メタ)アクリレート化されたものであることが好ましい。
【0010】
また、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物が、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、ポリオール(メタ)アクリレート類又はアルキレンオキサイド付加ポリオール(メタ)アクリレート類であることが好ましい。
多官能(メタ)アクリレート樹脂が、1分子中に(メタ)アクリロイル基を少なくとも2個有する化合物であることが好ましい。
【0011】
また、本発明の成形品は、上述したハードコート用組成物の硬化重合体がハードコート層として形成されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のハードコート用組成物によれば、用いる成分の量的及びそれらによってもたらされる特性のバランスを図り、これらの成分が本来有する透明性、耐擦傷性を最大限に発揮させながら、同時に、従来から問題となっているカール性を最小限に止めることができるハードコート用組成物及び成形品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のハードコート用組成物は、主として、
(A)ウレタン(メタ)アクリレート樹脂と、
(B)多官能(メタ)アクリレート樹脂と、
(C)金属酸化物微粒子とを含んでなる。
なお、本明細書においては、(メタ)アクリル酸はメタクリル酸又はアクリル酸のことを表す。
【0014】
(A)ウレタン(メタ)アクリレート樹脂は、例えば、1以上の親水性基(例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エチレングリコール基、プロピレングリコール基等)を有しているものであればよく、具体的には、(1)ポリエーテルポリオールを主鎖とする化合物と、(2)イソシアネート化合物と、(3)水酸基含有(メタ)アクリレート化合物との反応によって得られる樹脂が挙げられる。
【0015】
例えば、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂の一例として、下記式(1)
(RO−CONH−)−R−(−NHCO−OR (1)(式中、RO−はポリエーテルポリオールを主鎖とする化合物の脱水素残基、−R−はイソシアネート化合物の脱イソシアネート基残基、RO−は水酸基含有(メタ)アクリレート化合物の脱水素残基、m+n=1〜50の整数)で表される化合物が挙げられる。
【0016】
式(1)中、mは0であってもよいが、Rを構成する置換基の分子量は、100〜2000程度であることが適しており、100〜1000程度であることが好ましい。ポリエーテルポリオール鎖の分子量が大きすぎると、硬度が低下する傾向にあるからである。
を構成する置換基の分子量は、150〜5,000程度であることが適しており、500〜3,000程度であることが好ましい。この分子量が大きくなりすぎると硬度が低下する傾向があるからである。
nは0であってもよいが、0より大きい整数であることが適している。特に、Rを構成する置換基の分子量は、150〜2,000程度であることが適しており、100〜1,000程度であることが好ましい。この分子量が大きくなりすぎると硬度が低下するからである。
【0017】
(1)ポリエーテルポリオールを主鎖とする化合物としては、ポリエーテル基を主鎖に有し、水酸基を有する化合物(片末端水酸基含有物を含む)であればよく、例えば、ポリアルキレングリコール類、アルコキシポリアルキレングリコール類、(メタ)アクリルオキシポリアルキレングリコール類、ポリアルキレンとポリテトラメチレングリコールとの反応物、オキシラン環を有するエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸とが付加反応して得られる水酸基含有(メタ)アクリル酸誘導体にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドが反応して得られる(メタ)アクリロイル基含有ポリエーテルポリオール類、(メタ)アクリル酸アルキレンオキサイド付加化合物等が挙げられる。
【0018】
なかでも、ポリアルキレングリコール類、片末端水酸基含有ポリアルキレングリコール類、アルコキシポリアルキレングリコール類及び(メタ)アクリロイル基含有ポリエーテルポリオール類、(メタ)アクリル酸アルキレンオキサイド付加化合物が好ましく、さらに、片末端水酸基含有ポリアルキレングリコール化合物又は(メタ)アクリル酸アルキレンオキサイド付加化合物が好ましい。
【0019】
特に、片末端水酸基含有ポリアルキレングリコール化合物が、アルコキシポリアルキレングリコール類であるものが好ましく、また、(メタ)アクリル酸アルキレンオキサイド付加化合物が、(メタ)アクリル酸をアルキレンオキサイド付加したもの又はポリアルキレングリコールをモノ(メタ)アクリレート化したものであることが好ましい。
なお、この化合物のアルキレン及びアルコキシ基の炭素数は、例えば、1〜6程度が挙げられる。
【0020】
ポリアルキレングリコール類は、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールが挙げられる。
アルコキシポリアルキレングリコール類は、例えば、炭素数1〜6程度のアルコキシ基を含有するポリアルキレングリコール類(アルキレンの炭素数は、例えば、1〜6程度)、具体的には、メトキシポリエチレングリコール、メトキシポリプロピレングリコール、メトキシポリテトラメチレングリコールが挙げられる。アルコキシポリアルキレングリコール類の分子量は任意に選択できるが、100〜2,000が好ましい。
【0021】
(メタ)アクリロキシポリアルキレングリコール類は、例えば、(メタ)アクリロキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリロキシポリプロピレングリコールが挙げられる。
【0022】
ポリアルキレンとポリテトラメチレングリコールとの反応物は、例えば、ポリエチレンとポリテトラメチレングリコールとの反応物、メトキシポリエチレンとポリテトラメチレングリコールとの反応物、(メタ)アクリロキシポリエチレンとポリテトラメチレングリコールとの反応物が挙げられる。
【0023】
(メタ)アクリロイル基含有ポリエーテルポリオール類は、ヒドロキシ基が置換された炭素数1〜6程度のアルキル基を含有するアクリレート、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレートのエチレンオキサイド付加体(例えば、付加モル数は、1〜20程度)が挙げられる。
【0024】
(メタ)アクリル酸アルキレンオキサイド付加化合物は、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドに代表されるアルキレンオキサイド(例えば、炭素数2〜6程度)を(メタ)アクリル酸に付加させたものが挙げられる。
【0025】
(2)イソシアネート化合物としては、ジイソシアネート類、ジイソシアネート単量体が重縮合したポリイソシアネート類、イソシアネート基にアルコール化合物が付加したウレタン構造及び/又はアミン化合物の付加したウレア構造を有するもの等が挙げられる。なかでも、後者の2種(つまり、ポリイソシアネート類、ウレタン構造及び/又はウレア構造を有するもの)が好ましい。
【0026】
ジイソシアネート類は、例えば、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、(オルト、メタ、パラ)キシレンジイソシアネート、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,3−ジメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジメチレンイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等が挙げられる。
【0027】
ジイソシアネート単量体の重縮合したポリイソシアネート類は、例えば、ポリイソシアネート化合物として、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート及び水添ジフェニルメタンジイソシアネート等の2官能イソシアネート、これらのビュレット体又はヌレート化物である3官能以上のイソシアネートが挙げられる。なかでも、1分子中にイソシアネート基を3つ以上有するポリイソシアネート化合物、例えば、鎖状又は環状アルキル又はアリール基(例えば、炭素数6〜12程度)を含むポリイソシアネート化合物、特に、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等のヌレート化物が好ましい。
【0028】
アルコール化合物は、例えば、炭素数2〜10程度の2〜4価のアルコール類、具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリト−ルが挙げられる。
アミン化合物は、例えば、ジアミノエタン、ジアミノプロパン、テトラメチレンジアミンが挙げられる。
【0029】
アルコール化合物又はアミン化合物が付加していると、イソシアネート化合物の1分子あたりの官能基数を増大させることができる。また、これらアルコール化合物やアミン化合物は、硬化重合体の耐擦傷性を増大させるという観点から、官能基あたりの分子量が小さいものを用いることが好ましい。
【0030】
(3)水酸基含有(メタ)アクリレート化合物としては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、ポリオール(メタ)アクリレート類又はアルキレンオキサイド付加ポリオール(メタ)アクリレート類及びエポキシ樹脂とカルボン酸とから誘導されるもの等が挙げられる。なかでも、前者の3種が好ましい。
【0031】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類は、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシフェノキシプロピル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0032】
ポリオール(メタ)アクリレート類は、例えば、炭素数2〜10程度の2〜4価のポリオール(メタ)アクリレート類、具体的には、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0033】
アルキレンオキサイド付加ポリオール(メタ)アクリレート類は、例えば、アルキレンオキサイド付加トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド付加ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0034】
エポキシ樹脂とカルボン酸から誘導されるものとして、グリシジル(メタ)アクリレートの(メタ)アクリル酸付加物が挙げられる。
なお、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0035】
本発明のウレタン(メタ)アクリレート樹脂は、式(1)において、特に、(1)ポリエーテルポリオールを主鎖とする化合物として、ポリアルキレングリコール類、アルコキシポリアルキレングリコール類及び(メタ)アクリロイル基含有ポリエーテルポリオール類、(メタ)アクリル酸アルキレンオキサイド付加化合物と、(2)イソシアネート化合物として、ポリイソシアネート類、イソシアネート基にアルコール化合物が付加したウレタン構造を有するものと、(3)水酸基含有(メタ)アクリレート化合物として、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、ポリオール(メタ)アクリレート類との組み合わせが好ましい。
【0036】
本発明のウレタン(メタ)アクリレート樹脂は、例えば、分子量が500〜5,000程度のものが適当である。分子量が大きすぎると硬度が低下する傾向がある。このようなウレタン(メタ)アクリレート樹脂は、例えば、特開2000−264936号に記載された方法によって製造することができる。
【0037】
なお、(A)ウレタン(メタ)アクリレート樹脂において、(1)ポリエーテルポリオールを主鎖とする化合物、例えば、片末端水酸基含有ポリアルキレングリコール化合物のモル比は、(3)水酸基含有(メタ)アクリレート化合物のモル比以下であることが好ましい。ポリエーテルポリオール鎖の分子量が大きいほど、架橋重合させた時に硬度が低下する。水酸基含有(メタ)アクリレート化合物の官能基の数が多いほど、架橋重合させた時に硬度が増大し、逆に少ないほど硬度は低下する。従って、これらを調整することにより、適切な硬度の硬化重合体を得ることができる。
【0038】
(B)多官能(メタ)アクリレート樹脂は、1分子中に(メタ)アクリロイル基を2個以上有する化合物であることが好ましい。例えば、ペンタエリスリトール(テトラ)トリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(エチレンオキサイド付加体)トリ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリンエチレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、グリセリンプロピレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールのジアクリレート、多価アルコールと多塩基酸を縮合して得られる化合物の(メタ)アクリレート及び上述したポリイソシアネートと水酸基含有(メタ)アクリレートとの反応によって得られる化合物が挙げられる。これら化合物は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0039】
多官能(メタ)アクリレート樹脂は、上述した(A)ウレタン(メタ)アクリレート樹脂100重量部に対して、10〜500重量部、さらに20〜300重量部で用いることが好ましい。このような範囲で用いることにより、他の成分と相まって、硬化収縮率を調整することができる。
【0040】
(C)金属酸化物微粒子は、特に限定されるものではなく、粒子径が5nm〜50nmのものを使用することが適しており、特には10nm〜20nmが好ましい。これにより、組成物による膜の硬度を増大させることができる。また、塗膜の屈折率を調整することも可能となる。
【0041】
金属酸化物微粒子としては酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、五酸化アンチモン、酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化インジウム、インジウムスズ酸化物、酸化第二鉄、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化マンガン、酸化ホロミウム、酸化銅、酸化ビスマス、酸化コバルト、四三酸化コバルト、四三酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化ランタン、酸化プラセオジム、酸化ネオジム、酸化サマリウム、酸化ユウロビウム、酸化ガドリニウム、酸化テルビウム、酸化ジスプロシウム、酸化エルビウム、酸化ツリウム、酸化イッテルビウム、酸化ルテチウム、酸化スカンジウム、五酸化タンタル、五酸化ニオブ、酸化イリジウム、酸化ロジウム、酸化ルテニウム及びこれらを結合させた複合酸化物が挙げられる。
【0042】
例えば、下記式(2)で表されるケイ素化合物またはその部分加水分解物を含有するものが適している。
Si(OR4−a−b (2)
(式中、Rはエポキシ基、メタクリル基、アクリル基、アミノ基、ウレイド基又はメルカプト基を含有していてもよい炭素数1〜12の有機基、Rは炭素数1〜8のアルキル基、炭素数6〜8のアリール基、炭素数1〜8のアルケニル基又は炭素数1〜8のアシル基、Rは水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基又は炭素数1〜10のアシル基であり、aは0又は1、bは0、1又は2である。)
【0043】
ここで、有機基としては、アルキル、アルケニル、アリール等が例示される。
アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、n−ブチル、t−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル基等が挙げられる。
アリール基としては、フェニル、トリル、キシリル基等が挙げられる。
アルケニル基としては、ビニル、アリル、2−プロペニル、プロパ−2−エンー1−イル基等が挙げられる。
アシル基としては、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、バレリル、オキサリル、マロニル、スクシニル、ベンゾイル、トリオイル、フタロイル等が挙げられる。
【0044】
具体的な化合物としては、例えば、トリメチルメトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、ジフェニルメチルメトキシシラン、フェニルジメチルメトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、テトラエチルオルソシリケート、テトラメチルオルトシリケート等、特開2006−70120号に例示されている公知のケイ素化合物又はその部分加水分解物が例示される。
【0045】
特に、Rがメタクリル基、アクリル基であるケイ素化合物が、膜の硬度をさらに大きくするため、好ましい。このようなケイ素化合物としては、例えば、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどがある。
なお、金属酸化物微粒子は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
金属酸化物微粒子は、上述した(A)ウレタン(メタ)アクリレート樹脂100重量部に対して、固形分換算で、30〜500重量部、さらに50〜350重量部で用いることが好ましい。このような範囲で用いることにより、他の成分と相まって、硬化収縮率を調整することができる。
【0047】
また、金属酸化物微粒子は、有機溶剤に分散し、オルガノゾルとして用いることができる。
その溶剤種は、アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。
【0048】
グリコール類としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルが挙げられる。
【0049】
脂肪族環状ケトン類としては、例えば、シクロヘキサノン、オルト、メタ、パラ−メチルシクロヘキサノン等が挙げられる。
酢酸エステル類としては、例えば、酢酸エチル酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチルが挙げられる。
さらに、ソルベントナフサ、メチルエチルケトン等を用いてもよい。
【0050】
オルガノゾルは、これら溶剤を用いて固形分が5〜100%の濃度範囲のものが使用可能である。
【0051】
本発明の組成物は、さらに、(メタ)アクリル酸化合物又はビニル基含有化合物を含有していてもよい。この場合、例えば、全組成物100量部に対して、0.1〜50重量部を含有することが好ましい。これらの化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0052】
(メタ)アクリル酸化合物は、例えば、アクリル酸アミド類、アルキル(メタ)アクリレート類、アミノアルキル(メタ)アクリレート類、アミノアルキル(メタ)アクリレートの4級塩類、アルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート類、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの酸無水物付加物類、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類、アルキルジオールジ(メタ)アクリレート類、ポリオールポリ(メタ)アクリレート類、アルキレンオキサイド付加ポリオールポリ(メタ)アクリレート類が挙げられる。これらの化合物は、例えば、特開2000−264939号に記載のものが例示される。
【0053】
ビニル基含有化合物は、例えば、酢酸ビニル、N−ビニルアセトアミド、ビニルピロリドン、ビニルアルキルエーテル類、ビニルスルホン酸、ビニルスルホン酸の塩類等が挙げられる。
【0054】
本発明の組成物は、重合開始剤、希釈剤、レベリング剤及び潤滑性付与剤、その他の添加剤等が混合されていてもよい。
【0055】
重合開始剤は、特に限定されないが、活性エネルギー線によりラジカルを発生する光重合開始剤が好ましい。例えば、ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトン、1−フェニル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ベンゾフェノン、2−メチル[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、4−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0056】
希釈剤としては、アルキレングリコールのモノアルキルエーテル類、アルキルアルコール類、アルキレングリコールモノアルキルアルコールのアルキルカルボン酸エステル類、ケトン類、アルキルアルコールのアルキルカルボン酸エステル類等が挙げられる。これらは、例えば、特開2004−43790号に記載のものが例示される。
【0057】
本発明のハードコート用組成物は、必要に応じて溶媒を含有してもよい。溶媒としては、上述したようなアルコール類、グリコール類、脂肪族環状ケトン類、酢酸エステル類、その他等が用いることができる。
【0058】
レベリング剤及び潤滑性付与剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンとポリジメチルシロキサンとの共重合体、ポリオキシアルキレンとフルオロカーボンとの共重合体等が挙げられる。
【0059】
本発明のハードコート用組成物は、紫外線、放射線、赤外線、X線、電子線の活性エネルギー線を照射又により硬化させることが可能であり、その硬化重合体が、成形品の表面においてハードコート層を構成する。
【0060】
ここでの成形品は、ポリスチレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、AN樹脂等の汎用樹脂からなるプラスチック成形品に限られず、木材、ガラス、金属、セラミック、紙、セメント、これらの複合品等の種々の材料で成形されたものを包含する。好ましくは、その表面に、本発明のハードコート用組成物がハードコート層として形成されたものを意味する。また、この成形品としては、本発明のハードコート用組成物がハードコート層を構成するフィルム、転写箔等の形態であってもよい。
【0061】
従って、例えば、透明基材の上に本発明のハードコート用組成物を適用してフィルム形状とし、ハードコート用転写箔及びハードコート用フィルムとしたのもでもよいし、これらの転写箔又はフィルムを成形品の表面に適用したものでもよい。
さらに、成形品がプラスチックからなる場合は、そのプラスチック成形品の意図する特性に影響を及ぼさない限り、成形品を構成するプラスチックに、本発明のハードコート用組成物を混合して、ハードコート層としてもよい。
【0062】
例えば、透明基材の一又は双方の表面にハードコート用組成物を塗布し、その塗膜を光照射等することによりハードコート層が形成される。
【0063】
透明基材としては、ポリウレタン樹脂、ポリエピスルフィド樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)のような(メタ)アクリル系重合体、アリル系重合体、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、ポリカーボネート、MS樹脂、環状ポリオレフィン等各種合成樹脂からなる基材が挙げられる。基材は、平板状、曲板状、フィルム状等のいずれの形状であってもよい。
【0064】
塗布は、例えばディップコート法、フローコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、バーコート法、スピンコート法、ロールコート法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、はけ塗り法等により行うことができる。
塗布の厚みは、硬化後に0.01〜100μm程度とすることが適している。
光照射は、紫外線等により約100〜1,500mJ/cm2程度が挙げられる。
【0065】
なお、ハードコート層の密着性等を向上させるために、あらかじめ透明基材又は成形品の表面にプライマー層を設けたり、アルカリ処理、酸処理、プラズマ処理、コロナ処理、火炎処理等の前処理を行ってもよい。
【0066】
プライマー層としては、例えば、ウレタン樹脂、アクリル樹脂が挙げられる。プライマー層の厚みは2〜50nm程度が適している。プライマー層は、これらの樹脂溶液を、ディッピング法、スプレー法、フローコート法、ロールコート法、スピンコート法などいずれかの方法で塗布することにより形成することができる。
以下に、本発明のハードコート用組成物の実施例を詳細に説明する。
【0067】
合成例1:(ウレタン(メタ)アクリレート樹脂A−1の合成)
4つ口フラスコに攪拌装置、温度計及び冷却装置を取り付け、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂を構成するイソシアネート化合物として、ヘキサメチレンジイソシアネートのポリイソシアヌレート化物(日本ポリウレタン工業(株)社製の商品名:コロネートHK、210.0g/eq)415.8重量部、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物として、ペンタエリスリトールトリアクリレート(共栄社化学(株)社製の商品名:ライトアクリレートPE−3A、498.3g/eq)288.2重量部、および2−ヒドロキシエチルアクリレート(共栄社化学(株)社製の商品名:ライトアクリレートHOA、498.3g/eq)190.8重量部、メトキノン0.17重量部、BHT0.17重量部を仕込み、58〜62℃で3時間反応後、ジブチル錫ジラウレート1滴を添加し、さらに、58〜62℃にて6時間反応させて、ウレタンアクリレート樹脂を合成した。
【0068】
得られたウレタンアクリレートの赤外吸収スペクトルを測定したところ、2250cm−1のイソシアネート基のピークが消失しており、反応が終了してウレタンアクリレート樹脂が生成していることを確認した。
【0069】
合成例2:(ウレタン(メタ)アクリレート樹脂A−2の合成)
4つ口フラスコに攪拌装置、温度計及び冷却装置を取り付け、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂を構成するイソシアネート化合物として、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート化物(日本ポリウレタン工業(株)社製の商品名:コロネートHK、210.0g/eq)73.4重量部、ポリエーテルポリオールを主鎖とする化合物として、2−ヒドロキシエチルアクリレートのエチレンオキサイド付加体(エチレンオキサイド8モル付加体、575.5g/eq)78.0重量部、メトキノン0.15重量部を仕込み、78〜82℃で3時間反応後、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物として、ペンタエリスリトールトリアクリレート(共栄社化学(株)社製の商品名:ライトアクリレートPE−3A、498.3g/eq)148.7重量部とジブチル錫ジラウレート1滴とを添加し、さらに、78〜82℃にて6時間反応させて、ウレタンアクリレート樹脂を合成した。
【0070】
得られたウレタンアクリレートの赤外吸収スペクトルを測定したところ、2250cm−1のイソシアネート基のピークが消失しており、反応が終了してウレタンアクリレート樹脂が生成していることを確認した。
【0071】
実施例1
合成例1で合成した樹脂3重量部、オルガノシリカゾル溶液(扶桑化学工業社製の商品名:PL−1−IPA、粒子径10nm、イソプロピルアルコール溶液、固形分12.5%)24重量部に、ペンタエリスリトールヘキサアクリレート(共栄社化学(株)社製の商品名:ライトアクリレートPE−3A)4重量部、ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトン(チバスペッシャリティケミカルズ(株)社製の商品名:イルガキュア184)0.5重量部、イソプロピルアルコール3.5重量部を混練し、重量比で約30%の樹脂分を含むハードコート用組成物を得た。
【0072】
実施例2〜10及び比較例1〜4
各成分の組成を表1に示したものとした以外、実施例1と同様にハードコート用組成物を得た。
【0073】
【表1】
【0074】
なお、表1の成分は、以下のとおりである。
樹脂(B)−1 商品名:UA−306H(共栄社化学工業株式会社製)
樹脂(B)−2 商品名:ライトアクリレートDPE−6A(共栄社化学工業株式会社製、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)
樹脂(B)−3 商品系:ライトアクリレートPE−3A(共栄社化学工業株式会社製、ペンタエリスリトールヘキサアクリレート)
オルガノシリカゾル溶液1 商品名:PL−1−IPA(扶桑化学工業株式会社製、粒子径10nm、固形分12.5%)
オルガノシリカゾル溶液2 商品名:PL−2L−MEK(扶桑化学工業株式会社製、粒子径20nm、固形分20.0%)
オルガノシリカゾル溶液3 商品名:PL−1−IPA(扶桑化学工業株式会社製)の微粒子にメタクリル基を導入したもの(式(2)におけるRがメタクリル基のものに相当)
オルガノシリカゾル溶液4 商品名:PL−1−IPA(扶桑化学工業株式会社製)の微粒子にアクリル基を導入したもの(式(2)におけるRがアクリル基のものに相当)
IPA:イソプロピルアルコール
MEK:メチルエチルケトン
塗布基材:100μmPET(未処理)
【0075】
実施例1〜10及び比較例1〜4で得られたハードコート用組成物を基材に塗布し、溶剤を乾燥した。これを6m/分のスピードのコンベアーに積載し、80W/cmの高圧水銀灯により高さ10cmの位置から2回紫外線を照射して架橋重合させて、硬化重合体を含む約5μm厚のコート層を形成した。
得られたコート層について、塗膜状態(透明性)、鉛筆硬度、耐スチールウール性、カール性及び密着性の評価を行った。
【0076】
塗膜状態は、目視による観察によって、白化が全くないものを◎、ほとんどないものを○、部分的にあるものを△、全面的にあるものを×とする4段階で評価した。
【0077】
鉛筆硬度は、鉛筆硬度計500g荷重にて試験を行い、傷の付かなかった鉛筆の硬度を示した。
【0078】
耐スチールウール性は、得られたコート層に約1kg重の負荷をかけたスチールウール(#0000)で10往復、擦ることにより行った。目視により観察したとき、傷が付かなかったものを◎、ほとんど傷が付かなかったものを○、少し傷が付いたものを△、傷が付いたものを×とする4段階で評価した。
【0079】
カール性は、塗工フィルムを10cm四方に切り出し、その四隅の浮き高さの平均値を計測した。浮き高さの平均値が10mm以下のものを◎、10〜20mmのものを○、20〜30mmのものを△、30mm以上を×とする4段階で評価した。
【0080】
密着性は、碁盤目試験を行い、100/100のものを◎、90/100以上のものを○、50/100以上のものを△、50/100未満のものを×とする4段階で評価した。
【0081】
表1から、実施例1〜10においては、ウレタンアクリレート樹脂に、他官能(メタ)アクリレート樹脂及びオルガノシリカゾルを配合することにより、塗膜状態、鉛筆硬度、耐スチールウール性、カール性及び密着性の全てにおいて満足のいく結果を得ることができた。
一方、比較例1〜4では、塗膜状態、鉛筆硬度、耐スチールウール性、カール性及び密着性の全てにおいて満足のいく結果が得られなかった。
【0082】
実施例11
実施例1で得られたハードコート用組成物を、上述した塗膜状態(透明性)、鉛筆硬度、耐スチールウール性、カール性及び密着性の評価用と同様に、基材に塗布し、コート層として形成し、ハードコートフィルムを作製した。
得られたフィルムを、射出成形金型に挟みこみ、成形同時射出成型法にてアクリル樹脂を射出した。冷却後、ハードコート層を有する成型品を得た。
【0083】
このように、本発明の組成物は、アクリル樹脂の透明性、耐擦傷性及び耐久性を最大限に発揮させながら、カール性を低減させることができる。また、金属酸化物微粒子を含有することにより良好なハードコート性をより付与することができる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明のハードコート用組成物は、プラスチック、ガラス、紙、木材等からなる成形品に適用することができ、これらの成形品に対して、密着性、透明性、耐擦傷性、耐湿性等の耐久性等において、長期間にわたって、安定で、優れたコーティング層を与えることができ、ハードコート用組成物のカール性、つまり、硬化収縮率を低減し、良好なコーティング層を得ることができる。よって、これらの特性を要求する部位、成形品において利用可能である。