【実施例】
【0028】
(1)EDI装置
EDI装置は、中央が脱塩室で、脱塩室の外方向両側が濃縮室、濃縮室の外方向両側が電極室から構成される5室系の装置(脱塩室の膜間距離は0.4cm,有効膜面積は297cm
2)を用いた。
陽極側の脱塩室と濃縮室の間には陰イオン交換膜(陰イオン交換膜AHA;(株)アストム製)が配置され、濃縮室と電極室の間には陽イオン交換膜(陽イオン交換膜CMB;(株)アストム製)が配置されている。
陰極側の脱塩室と濃縮室の間には前記の陽イオン交換膜が配置され、濃縮室と電極室の間には前記の陰イオン交換膜が配置されている。濃縮室の膜間距離は二室とも0.4cmであり、電極室の電極とイオン交換膜との距離は両電極室とも0.4cmであった。また、濃縮室と電極間に配置されたイオン交換膜の有効膜面積は297cm
2であった。
なお、陰イオン交換膜と陽イオン交換膜は、超純水約10Lに約15分間浸漬する浸漬洗浄を3回行ったものを用いた。
脱塩室には、下記の陰イオン交換樹脂と陽イオン交換樹脂が体積比1:1(60mlずつ)で充填されている。
【0029】
(陰イオン交換樹脂)
表1に示す4種を用いた。アンバーライトIRA−900J(マクロ孔が直径2〜20μm、ミクロ孔が直径28〜44nm)とアンバーライトIRA−904(マクロ孔が直径2〜20μm、ミクロ孔が半径42〜240nm)が実施例、アンバーライトIRA−400J、アンバーライトIRA−404Jが比較例の陰イオン交換樹脂となる。いずれの樹脂もオルガノ(株)製である。
(陽イオン交換樹脂)
アンバーライトIR−120B(強酸性,イオン交換容量:2.0meq/ml,オルガノ(株)製)
【0030】
アンバーライトIRA−900JとアンバーライトIRA−904の細孔径は「イオン交換樹脂とその技術と応用(基礎編)」(改訂第2版1997年3月31日発行,編集発行者 オルガノ株式会社 IER部)のp37の「表1.9 MR形のイオン交換樹脂の細孔構造」に記載のものである。
【表1】
【0031】
(EDIの運転条件)
EDI装置の脱塩室、濃縮室、電極室のそれぞれに対して、試料水を417ml/min、200ml/min、167ml/minで通水しつつ、電流密度0.11A/dm
2で通電した。なお、前記流速条件は、前記EDI装置を脱塩目的に使用する場合の実用通水速度である。
【0032】
(2)測定方法
(2-1)試料水の調製方法
普通寒天培地にて毎月1回継代保存した緑膿菌(Pseudmonas aeruginosa GNB-139)を用いた。
普通ブイヨン10mlを分注したL字管にて37℃で20±2時間振とう培養後、さらに同培地(普通ブイヨン)30mlを分注した三角フラスコに移植し、37℃で18時間振とう培養した。
培養終了後、遠心集菌(4℃,6000r/m,11min)した菌体を滅菌生理食塩水で2回遠心洗浄した。
この洗浄菌体を滅菌生理食塩水30mlに再度懸濁し(菌濃度10
9CFC/ml)、その0.5mlをRO膜装置の処理水50Lに添加し、菌濃度が10
3−10
4CFU/mlとなるように調整したものを試料水とした。なお、この試料水のET活性は1.5±0.6EU/mlであった。
【0033】
(2-2)除菌効果の評価
除菌効果の評価は、次の方法で行った。
通電開始前を0分として、通電開始後5、15、30、60、120、180分後に脱塩室流出水(EDI処理水)を採水し、それぞれ滅菌生理食塩水で適当段階希釈したものを用い、R2A寒天培地を用いた平板塗抹法により、20〜25℃で4〜7日間培養後の生菌数を測定した。
試料水(0分のもの)中の生菌数に対する各時間のEDI処理水中の生菌数の割合を算出し、生存率として評価した。100%−生菌の生残率(%)が除菌率(%)を示すことになる。
【0034】
(2-3)ETの除去効果の評価
上記の除菌効果の評価と同様にして採水したEDI処理水のET活性を、トキシノメーターミニ(和光純薬工業(株)製)を用いたリムルス(LAL)テスト比濁時間法により測定し、試料水(0分のもの)と各時間のEDI処理水のET活性を比較した。試料水(0分のもの)のET活性は、1.5±0.6EU/mlである。ET活性の低下が大きいものほど、ET除去効果が高いことを示す。
【0035】
(2-4)イオン交換樹脂から脱離されたもの(イオン交換樹脂に吸着されていたもの)の細菌数の評価/ET活性の評価
運転終了後にEDI装置を解体し、脱塩室内のイオン交換樹脂を、液の流入口側(i)から流出口側(v)にかけて5区画(i〜v)に分け、各区画からイオン交換樹脂を約20mlずつ採取した。
【0036】
次に、1mol/Lになるよう塩化ナトリウムを添加したリン酸緩衝液(pH8.0)200ml中に、各区画から採取した約20mlのイオン交換樹脂を入れ、その後、約20分間振とう撹拌して、イオン交換樹脂に吸着されている細菌及びETをリン酸緩衝液(pH8.0)中に脱離させた。
このリン酸緩衝液を用いて、「(2-2)除菌効果の評価」及び「(2-3)ETの除去効果の評価」と同様にして細菌数とET活性を測定した。
脱離したサンプル中の生菌数が多いほど、除菌効果が高いことを示し、脱離したサンプル中のET活性が高いほど、ET除去効果が高いことを示す。
【0037】
(2-5)その他の評価
上記の除菌効果の評価と同様にして採水したEDI処理水の電気伝導度とpHを測定した。
電気伝導度は、電気伝導度計200CR(Thorntonl社製)で測定し、pHは、pHメーター(堀場製作所製)にて測定した。
【0038】
実施例1、比較例1
陰イオン交換樹脂として、表1に示す4種の陰イオン交換樹脂を充填したEDI装置を用いて、所定の運転条件にて試料水を処理した。処理水について「(2-2)除菌効果の評価(生菌の生残率(%)の変化)」を行った。結果を
図1に示す。
【0039】
MR形の2つの陰イオン交換樹脂(実施例1)とゲル形の2つの陰イオン交換樹脂(比較例1)を用いた場合を比べると、MR形の2つの陰イオン交換樹脂の方が、除菌効果が高かった。
MR形の2つの陰イオン交換樹脂を比べると、イオン交換容量が小さい方(IRA−904)が、除菌効果が高かった。
【0040】
実施例2、比較例2
陰イオン交換樹脂として、表1に示す4種の陰イオン交換樹脂を充填したEDI装置を用いて、所定の運転条件にて試料水を処理した。処理水について「(2-3)ETの除去効果の評価」を行った。結果を
図2に示す。
【0041】
図2から明らかなとおり、IRA900J(MR形)、IRA904(MR形)(実施例2)、IRA400J(ゲル形)(比較例2)のET効果は同程度であった。なお、実用上の人工透析用水のET基準値は、0.05EU/mlである、
【0042】
実施例3、比較例3
陰イオン交換樹脂として、表1に示す4種の陰イオン交換樹脂を充填したEDI装置を用いて、所定の運転条件にて試料水を処理した。処理水について「(2-4)イオン交換樹脂から脱離されたものの生菌数の評価」を行った。結果を
図3に示す。
【0043】
いずれの陰イオン交換樹脂の場合も、入り口側(i)側の脱離量(生菌数)が多く、流出口側(v)に向かうほど少なくなった。
MR形とゲル形では、MR形の陰イオン交換樹脂(実施例3)の方がより多くの生菌を吸着保持していた(除菌効果が高かった)。
IRA900J(MR形)とIRA904(MR形)では、IRA900J(MR形)の方がより多くの生菌を吸着保持していた(除菌効果が高かった)。
【0044】
実施例4、比較例4
陰イオン交換樹脂として、表1に示す4種の陰イオン交換樹脂を充填したEDI装置を用いて、所定の運転条件にて試料水を処理した。処理水について「(2-4)イオン交換樹脂から脱離されたもののET活性の評価」を行った。結果を
図4に示す。
【0045】
いずれの陰イオン交換樹脂の場合も、入り口側(i)側の脱離サンプル中のET活性が高く、流出口側(v)に向かうほど小さくなった。
IRA900J(MR形)とIRA904(MR形)では、IRA900J(MR形)の脱離サンプル中の方が、ET活性が高かった(ET除去効果が高かった)。
【0046】
実施例5、比較例5
陰イオン交換樹脂として、表1に示す4種の陰イオン交換樹脂を充填したEDI装置を用いて、所定の運転条件にて試料水を処理した。処理水について「(2-5)その他の評価」により電気伝導度を測定した。結果を
図5に示す。
【0047】
実施例6、比較例6
陰イオン交換樹脂として、表1に示す4種の陰イオン交換樹脂を充填したEDI装置を用いて、所定の運転条件にて試料水を処理した。処理水について「(2-5)その他の評価」によりpHを測定した。結果を
図6に示す。
【0048】
参考例1〜4
参考例1(
図7)は、ゲル形の陰イオン交換樹脂を使用し、EDI装置を通電運転したときと、非通電で運転したときの生残率(%)の変化を測定した。
参考例2(
図8)は、MR形の陰イオン交換樹脂を使用し、EDI装置を通電運転したときと、非通電で運転したときの生残率(%)の変化を測定した。
参考例3(
図9)は、ゲル形の陰イオン交換樹脂を使用し、EDI装置を通電運転したときと、非通電で運転したときのET活性の変化を測定した。
参考例4(
図10)は、MR形の陰イオン交換樹脂を使用し、EDI装置を通電運転したときと、非通電で運転したときのET活性の変化を測定した。