【実施例】
【0018】
図1に、本発明の第1の実施形態に係る系統連系電力変換装置の電気回路図を示す。本実施形態の系統連系電力変換装置は、半導体スイッチS11及びS22と整流手段D1及びD2とを有するコンバータ回路1と、コンバータ回路1に入力される電流が定電流になるようにコンバータ回路1の半導体スイッチS11及びS22を動作させるコンバータ制御回路5と、少なくともチョークコイルLと半導体スイッチS31、S32、S33、S34とを有し、出力側が系統に連系されるインバータ回路3と、インバータ回路3の半導体スイッチS31、S32、S33、S34を制御するインバータ制御回路9と、コンバータ回路1とインバータ回路3との間に配置されるコンデンサ2と、コンデンサ2の電圧である中間電圧vcを検出するコンデンサ電圧検出手段6と、インバータ回路3の電流を検出するインバータ電流検出手段7と、インバータ回路の出力側の系統電圧vacを検出する系統電圧検出手段8とを備える。
【0019】
直流入力端子T1、T2を介して、直流入力源が外付けで本実施形態の系統連系電力変換装置に接続される。なお、直流入力源は発明に係る系統連系電力変換装置の必須構成要素ではない。直流入力源としては、燃料電池、太陽光発電用パネルなどが該当する。
【0020】
コンバータ回路1は、
図1では半導体スイッチS11、S12と整流手段D1、D2との他に、昇圧用のインダクタL1、絶縁用のトランスTrが接続される昇降圧形プッシュプルコンバータである。半導体スイッチS11、S12は、FET、IGBTなどの半導体のスイッチング素子である。整流手段D1、D2は、一般的な整流素子として用いられるダイオートである。コンバータ回路1を絶縁する場合は、絶縁用のトランスTrを用いる。トランスTrの1次側の巻線N1、N2の一端は、それぞれ半導体スイッチS11、S12が接続され、他端には昇圧用のインダクタL1が接続される。トランスTrの2次側の巻線N3には、整流手段D1、D2が接続される。
【0021】
なお、
図1において、一端が直流入力端子T2に接続され、他端がダイオードを介して直流入力端子T1に接続されるインダクタンス成分は、昇圧用のインダクタL1の帰還巻線である。また、アノードが昇圧用のインダクタL1の帰還巻線に接続され、カソード側が直流入力端子T1に接続されるダイオードは、半導体スイッチS11、S12が同時にオフしているときに導通して、昇圧用のインダクタL1に溜まっているエネルギーを昇圧用のインダクタL1の帰還巻線から直流入力端子T1、T2側に回生させる役割をもつ。
【0022】
図1では倍電圧回路を採用しており、コンデンサ2は、2つのコンデンサ21と22とが直列に接続される。コンデンサ21には、整流手段D1を介して絶縁用のトランスTrの2次側の巻線N3が接続され、コンバータ回路1からの電力がコンデンサ21に供給される経路が形成される。同様に、コンデンサ22には、整流手段D2を介して絶縁用のトランスTrの2次側の巻線N3が接続され、コンバータ回路1からの電力がコンデンサ22に供給される経路が形成される。なお、コンデンサ2は、コンバータ回路1などによって適切な回路構成が定まるものであり、
図1の記載に限定されない。また、整流手段D1、D2の挿入配置は、上記のようにコンデンサ21又はコンデンサ22とトランスTrの2次側の巻線N3との経路を形成できればよく、
図1の記載に限定されない。
【0023】
インバータ回路3は、半導体スイッチS31、S32、S33、S34と、チョークコイルLとフィルタ用コンデンサCfとを有するフィルタ回路31とを備えている。インバータ回路3は、コンデンサ2から入力される直流電力を交流電力に変換して出力端子T3、T4へ供給する。半導体スイッチS31、S32、S33、S34は、FET、IGBTなどの半導体スイッチング素子である。少なくともチョークコイルLを有するフィルタ回路31は、交流波形のノイズを低減する機能を有する一般的なフィルタ回路などを用いるものであり、回路構成については
図1の記載に限定されない。
【0024】
出力端子T3、T4には、一般的な負荷として電化製品の他、系統が接続される。なお、出力端子T3、T4に外付けで接続される負荷や系統は本発明に係る系統連系電力変換装置の必須構成要素ではない。
【0025】
入力電流検出手段4は、コンバータ回路1の入力電流i1を検出する。入力電流i1の検出箇所は、入力電流i1が流れる経路上であればよい。コンバータ制御回路5は、入力電流検出手段4によって検出される電流値i1が基準電流値ib1に近づくようにコンバータ回路1の半導体スイッチS11、S12を制御してコンバータ回路1の出力を定電流に制御する。基準電流値ib1は、直流入力端子T1、T2を介して接続される直流入力源などによって決定される電流指令値などである。例えば、直流入力源である燃料電池などによって電流指令値を10Aとする信号がコンバータ制御回路5に送られる。また、基準電流値ib1は、出力端子T3、T4に外付けで接続される負荷によって自発的に決定されても良い。この場合は、直流入力源などから最大電流指令値がコンバータ制御回路5に送られる。ここで、定電流に制御するとは、ある時点での基準電流値ib1に対して、コンバータ回路1の入力電流値i1が近づくように制御することである。基準電流値ib1はある時点毎に変動するものであってもよい。例えば、コンバータ制御回路5内に図示しないオペアンプなどを備え、入力電流検出手段4で検出された電流値i1と、予め定めた基準電流値ib1とを入力し、その誤差分を求め、誤差分が小さくなるようにコンバータ回路1の半導体スイッチS11、S12のオン、オフ時間を制御する。なお、コンバータ回路1及びコンバータ制御回路5は、コンバータ回路1の出力を上記のような定電流に制御するものであればよく、
図1の記載に限定されない。
【0026】
コンデンサ電圧検出手段6は、コンデンサ2の両端電圧である中間電圧vcを検出する。インバータ電流検出手段7は、インバータ回路3の電流i2を検出する。インバータ電流検出手段7の電流検出箇所は、インバータ回路3に流れる電流の経路上であればよい。系統電圧検出手段8は、インバータ回路3の交流出力端子側の系統電圧vacを検出する。系統電圧の検出箇所は、例えば出力端子T3、T4間の電圧など、インバータ回路3の出力側の系統電圧vacが検出できれば特に限定されない。
【0027】
インバータ制御回路9は、系統電圧検出手段8で検出される系統電圧値vacに少なくともインバータ回路3内のチョークコイルLと半導体スイッチS31、S32、S33、S34とに印加される電圧値を加算した値を中間電圧の目標値vbcとし、中間電圧の目標値の最大値vbcmは系統電圧の最大値のピーク値よりも大きい値で定める。系統電圧検出手段8で検出される系統電圧vacのピーク値に応じて、中間電圧の目標値vbcを中間電圧の目標値の最大値vbcmよりも小さい値にして、コンデンサ電圧検出手段6で検出される中間電圧値vcを中間電圧の目標値vbcに近づくように、インバータ回路3の半導体スイッチS31、S32、S33、S34を動作させて、インバータ回路3の電流を可変させて系統側に供給される電力を制御する。詳細については後述する。
【0028】
以上のように構成された系統連系電力変換装置について、その動作及び作用を説明する。
【0029】
昇圧形プッシュプルのコンバータ回路1の動作について説明する。コンバータ回路1の半導体スイッチS11及びS12を同時に導通させて、絶縁用のトランスTrを短絡状態にする。直流入力端子T1及びT2から入力される電圧は、昇圧用のインダクタL1に印加され、インダクタL1にエネルギーが蓄積される。
【0030】
S12をオフすると、トランスTrの1次側の巻線N1には、直流入力端子T1及びT2から入力される電圧に昇圧用のインダクタL1が発生する誘導起電力が重畳され、トランスTrの2次側の巻線N3には、トランスTrの1次側の巻線N1に印加される電圧がN1とN3との巻数に応じた電圧で伝達される。
【0031】
次に、コンバータ回路1の半導体スイッチS11及びS12を同時に導通させて絶縁用のトランスTrを短絡状態にする。直流入力端子T1及びT2から入力される電圧は、昇圧用のインダクタL1に印加され、インダクタL1にエネルギーが蓄積される。
【0032】
今度はS11をオフすると、トランスTrの1次側の巻線N2に、直流入力端子T1及びT2から入力される電圧に昇圧用のインダクタL1が発生する誘導起電力が重畳される。この場合、トランスTrの2次側の巻線N3には、トランスTrの1次側の巻線N2に印加される電圧がN2とN3との巻数に応じた電圧で伝達され、S12をオフしたときとは逆極性の電圧となる。この一連の動作を一周期として繰り返す。
【0033】
コンバータ回路1内の絶縁用のトランスTrの2次側では、半導体スイッチS11がオンで、半導体スイッチS12がオフのときは、トランスTrの2次側の巻線N3に伝達されたエネルギーは、整流手段D2を介してコンデンサ22を充電する。一方、半導体スイッチS12がオンで、半導体スイッチS11がオフのときは、トランスTrの2次側の巻線N3に伝達されたエネルギーは、整流手段D1を介してコンデンサ21を充電する。
【0034】
上記の動作では、入力電流検出手段4で検出されたコンバータ回路1の入力電流i1の電流値が基準電流値ib1に近づくように、コンバータの制御回路5から半導体スイッチS11、S12に制御信号を送る。このように半導体スイッチS11、S12をオンオフさせることでコンバータ回路1の入力電流i1が定電流になるように制御しながら、コンデンサ2に供給する電力をコンバータ回路1の出力側に送る。
【0035】
次にインバータ回路3の動作について説明する。インバータ制御回路9によって、ブリッジ構成の半導体スイッチのうちのS32とS33とを導通させると、コンデンサ21及び22に蓄積された電力によって、コンデンサ21から半導体スイッチS32、フィルタ回路31、出力端子T3、T4、フィルタ回路31、半導体スイッチS33、コンデンサ22を通じて電流が流れる。出力端子T3、T4間には出力端子T3側の電圧がプラスの極性となり、その電圧と同様の位相の電流が供給される。
【0036】
インバータ制御回路9によって、ブリッジ構成の半導体スイッチのうちのS31とS34とを導通させると、コンデンサ21及び22に蓄積された電力によって、コンデンサ21から半導体スイッチS31、フィルタ回路31、出力端子T4、T3、フィルタ回路31、半導体スイッチS34、コンデンサ22を通じて電流が流れる。出力端子T3、T4間には出力端子T4側の電圧がプラスの極性となり、その電圧と同様の位相の電流が供給される。
【0037】
このように、ブリッジ構成の半導体スイッチS32と33との導通、半導体スイッチS31と34との導通を交互に行うことによって、出力端子T3、T4間には交流電力が供給される。
【0038】
次に、インバータ制御回路9の動作について以下に説明する。インバータ制御回路9は、主な動作としては、コンデンサ2の中間電圧vcが中間電圧の目標値vbcに近づくようにインバータ回路3の半導体スイッチS31、S32、S33、S34を動作させる。中間電圧の目標値vbcは、系統電圧検出手段8で検出される系統電圧値vacに少なくともインバータ回路3内のチョークコイルLに印加される電圧値と半導体スイッチS31〜S34のうち導通する半導体スイッチS31とS34又は半導体スイッチS32とS33に印加される電圧値とを加算した値とする。インバータ回路の通常動作の開始時などは、中間電圧の目標値の最大値vbcmは、系統電圧vacの最大値のピーク値よりも大きい値に定めてインバータ回路3を動作させる。例えば、系統電圧の実効値vacが200V±10%の範囲内である場合に、上記の系統電圧の最大値のピーク値は、系統電圧の実効値220Vのときのピーク値の約310Vとなる。この場合、中間電圧の目標値の最大値vbcmは、系統電圧の最大値のピーク値である約310Vに少なくともチョークコイルLに印加される電圧値と半導体スイッチS31とS34又は半導体スイッチS32とS33の導通時に印加される電圧値とを加算した値とする。その後、インバータ制御回路9は、系統電圧検出手段8で検出する系統電圧vacの交流電圧ピーク値に応じて、中間電圧の目標値vbcを中間電圧の目標値の最大値vbcmよりも小さい値にする。例えば、系統電圧検出手段8で検出する系統電圧vacの一周期でのピーク値が240Vの場合は、240VにチョークコイルLと導通する半導体スイッチS31とS34又は半導体スイッチS32とS33とに印加される電圧値を加算した値を、次の系統電圧vacの一周期における中間電圧の目標値vbcとする。この値は、上述したvbcmよりも小さい値となる。系統電圧検出手段8で検出する系統電圧vacの一周期ごとに、その周期での系統電圧vacのピーク値を用いて中間電圧の目標値vbcを求め、系統電圧vacの次の周期での中間電圧の目標値vbcとして設定する。
【0039】
インバータ制御回路9は、コンデンサ電圧検出手段6で検出されるコンデンサ2の中間電圧vcがvbcmよりも小さい値に設定した中間電圧の目標値vbcに近づくように、インバータ回路3の半導体スイッチS31とS34又は半導体スイッチS32とS33のオン、オフ時間を制御し、インバータ回路3の電流を可変させて系統側に供給される電力を制御する。つまり、コンデンサ2の中間電圧vcを系統電圧vacの電圧状態に合わせるように、インバータ回路3によって制御させることになる。通常、インバータ回路3のチョークコイルLに印加される電圧を高くすると、チョークコイルLの電流の時間変化分は大きくなり、逆に、チョークコイルLに印加される電圧を低くすると、チョークコイルLの電流の時間変化分は小さくなる。誤差追従方式などの周波数変調方式において、インバータ回路3の電流値を基準電流値に追従させる場合は、チョークコイルLに印加される電圧を低くしてチョークコイルLの電流の時間変化分は小さくした方が、半導体スイッチS31とS34又は半導体スイッチS32とS33のオン、オフの動作回数を少なくすることができる。このことにより、半導体スイッチS31とS34又は半導体スイッチS32とS33の駆動損失が減り、又、必要以上の電圧がインバータ回路3で導通している半導体スイッチS31とS34又は半導体スイッチS32とS33などに印加されない。このため、インバータ回路での無駄な損失分を減らすることができ、インバータ回路の効率を向上させ、装置全体の損失を低減することができる。
【0040】
具体的には、インバータ制御回路9は、コンデンサ電圧検出手段6で検出される中間電圧値vcと中間電圧の目標値vbcとの差分の中間電圧誤差値Δvcを求め、インバータ電流検出手段7で検出される電流に基づく電流値i2又は系統電圧検出手段8で検出される系統電圧vacの周期をその周期とするインバータ基準電流値ib2を、少なくとも中間電圧誤差値Δvcが含まれる係数で掛け合わせて求める。そして、インバータ電流検出手段7で検出した電流に基づく電流値i2と、インバータ基準電流値ib2とが近づくように、インバータ回路3の半導体スイッチS31、S32、S33、S34を動作させて、インバータ回路3の電流i2を可変させる。
【0041】
例えば、インバータ制御回路9内に図示しないオペアンプなどを備え、コンデンサ電圧検出手段2で検出された中間電圧値vcと、上述のようにして求めた中間電圧の目標値vbcとを入力し、その誤差分である中間電圧誤差値Δvcを求める。
インバータ電流検出手段7で検出される電流に基づく電流値i2は、その周期をインバータ電流検出手段7で検出される電流の周期とし、その電流値をインバータ電流検出手段7で検出される電流に基づく値とする。インバータ基準電流値ib2は、その周期を系統電圧検出手段で検出される系統電圧の周期とし、その電流値は、インバータ制御回路9に内蔵される正弦波の正規化された基準電流値に、インバータ電流検出手段7で検出される電流に基づく電流値i2の振幅に合わせる係数Aと中間電圧誤差値Δvcを掛け合わせることによって求められる。上記のようにして求められたインバータ電流検出手段7で検出した電流に基づく電流値i2と、インバータ基準電流値ib2とは、例えば、インバータ制御回路9内で図示しないオペアンプに入力され、その誤差分が小さくなるように、インバータ回路3の半導体スイッチS31とS34又は半導体スイッチS32とS33のオン、オフの時間を制御する。
【0042】
上記において、インバータ電流検出手段で検出される電流に基づく電流値i2は、その周期をインバータ電流検出手段7で検出される電流の周期とし、その電流値をインバータ電流検出手段7で検出される電流に中間電圧誤差値Δvcを含む係数を掛け合わせ、さらに、インバータ基準電流値ib2の振幅に合わせる係数を掛け合わせて求めたものにしてもよい。この場合は、インバータ基準電流値ib2は、その周期を系統電圧検出手段で検出される系統電圧の周期とし、その電流値をインバータ制御回路9に内蔵される正弦波の正規化された基準電流値とする。インバータ電流検出手段で検出した電流に基づく電流値i2と、インバータ基準電流値ib2とが近づくように、インバータ回路3の半導体スイッチS31〜S34を動作させることによって、コンバータとインバータとの間に位置するコンデンサの中間電圧を比較的容易に制御することができる。
【0043】
より具体的な制御方法としては、インバータ制御回路9は、予め定めたデータと所定の間隔でカウントする基準クロックとを有する。系統電圧検出手段8で検出された系統電圧値vacを読み込んで基準クロックの1カウント毎に系統電圧の極性が切り替わる時点を判断して、系統電圧の一周期あたりにおける基準クロックのカウント数Ktを求める。次に、求めた系統電圧の一周期あたりにおける基準クロックのカウント数Ktに応じて、予め定めたデータの読出しを行うデータの読出し周期Kyを求め、データの読出し周期Ky毎に予め定めたデータを順次読み出して基準電流値isを得る。また、インバータ制御回路9は、コンデンサ電圧検出手段6で検出される中間電圧値vcと中間電圧の目標値vbcとの差分の中間電圧誤差値Δvcを求める。そして、インバータ基準電流値ib2として、基準電流値isに、少なくとも中間電圧誤差値Δvcを含む係数を掛け合わせて求める。又は、インバータ電流検出手段で検出した電流に基づく電流値i2として、少なくとも中間電圧誤差値Δvcを含む係数を掛け合わせて求める。以上のようにして求めた、インバータ基準電流値ib2と、インバータ電流検出手段で検出した電流に基づく電流値i2とが近づくように、インバータ回路3の半導体スイッチS31、S32、S33、S34を動作させる。
【0044】
図2は、インバータ制御回路9で行う一部の処理の手順を説明するための図である。STEP1では、
図1のインバータ出力電圧検出手段8で検出した系統電圧値vacを読み込み、系統電圧値vacの正・負の極性を判定する。例えば、系統電圧値vacが正の電圧のときはプラス、負の電圧のときはマイナス又はゼロとし、系統電圧vacの極性を判定した電圧極性判定波形を作成する。
【0045】
STEP2では、STEP1で作成した電圧極性判定波形がプラスに切り替わる時点を検出して、系統電圧vacの一周期あたりのカウント数Ktを求める。インバータ制御回路9では、例えば100MHz、10nsを1クロックとする基準クロックを内蔵する。STEP2では、まず、基準クロックの1クロック毎のタイミングで、電圧極性判定波形からプラスに切り替わる時点を検出する。そして、このプラスに切り替わる時点から次のプラスに切り替わる時点までのカウント数Ktを求める。例えば、求めた系統電圧の一周期あたりのカウント数Ktが20万回であるとすると、1クロックあたりの時間が10nsの場合は、系統電圧の一周期Tacは20msに相当することになる。
【0046】
STEP3では、系統電圧の一周期あたりのカウント数Ktを予め定めた正弦波データdsの一周期分のデータ数で割って、データの読出し周期Kyを求める。予め定める正弦波データdsとしては、最大振幅値を1とする正規化された正弦波の一周期、半周期、又は4分の1の周期分を等間隔の時間で分割した値などとする。例えば、正弦波の一周期を1024回の等間隔の時間で分割した値とすると、上述のSTEP2で求めた系統電圧の一周期あたりのカウント数Ktである20万回を正弦波の一周期の間隔である1024で割って、データの読出し周期Ky1953を得る。STEP4では、STEP3で求めたデータの読出し周期のカウント数Ky毎に、予め定める正弦波データdsを順番に読み出し、正規化された基準電流値isを得る。
【0047】
上記の処理を行うことによって、実際に動作しているインバータ回路3の交流出力端子側の系統電圧vacの周波数が、予め定めた正弦波データの周波数と異なっていても、系統電圧vacに適した基準電流値を得ることができる。
【0048】
次に、正規化された基準電流値isを用いてインバータ電流基準値ib2を求める。上記で得た正規化された基準電流値isは、系統電圧vacの一周期Tacをその周期とし、電流値は最大振幅が1の正弦波である。インバータ電流基準値ib2は、少なくともコンデンサ電圧検出手段で検出される中間電圧値と中間電圧の目標値vbcとの差分の中間電圧誤差値Δvcと、比較するインバータ電流検出手段7で検出した電流に基づく電流値ib2の電流値に合わせる係数Bとを掛け合わせて演算される。又は、インバータ電流基準値ib2は、正規化された基準電流値isもしくは基準電流値isに係数などを掛け合わせた値とし、インバータ電流検出手段7で検出した電流に基づく電流値ib2は、少なくとも中間電圧誤差値Δvcを掛け合わせた値としてもよい。制御回路9では、インバータ電流検出手段7で検出した電流に基づく電流値i2がインバータ基準電流値ib2に近づくように、インバータ回路3の半導体スイッチS31、S32、S33、S34を動作させて、インバータ回路3の電流i2を可変させる。具体的には、インバータ電流基準値ib2は、中間電圧vcが中間電圧の目標値vbcに対して1V高い場合、すなわち中間電圧値と中間電圧の目標値vbcとの差分の中間電圧誤差値Δvcが+1Vの場合に、インバータ電流基準値ib2を上昇させる。これにより、インバータ電流検出手段7で検出した電流に基づく電流値i2を上昇させ、中間電圧vcを1V下げるようにしている。このようにして、インバータ回路3は、中間電圧vcが中間電圧の目標値vbcよりも上昇すると、出力側の系統に電力を供給して、中間電圧vcが中間電圧の目標値vbcに近づくように動作する。上記のような構成を採ることで、系統電圧に合ったリンク電圧を設定できるため、スイッチング損失が低減でき、比較的簡単な回路構成や制御方法でインバータ回路の効率を向上させることができる。
【0049】
なお、上記において、予め定めるデータは、正弦波や最大振幅値を1とする正規化された正弦波に限定されず、基準電流値isについても正規化された値に限定されるものではない。また、上記のインバータ電流検出手段7で検出した電流に基づく電流値i2とは、インバータ電流検出手段7で検出した電流値の他、インバータ電流検出手段7で検出した電流値に係数を掛け合わせるなどの演算処理を行って求めた電流値も含む。また、インバータ電流検出手段7で検出される電流に基づく電流値i2、インバータ基準電流値ib2は、コンデンサの中間電圧の制御を行うために、少なくともどちらか一方に中間電圧誤差値Δvcを反映させた係数を掛け合わせるなどの演算を行うものとする。それ以外の演算についても、必要に応じてインバータ電流検出手段で検出される電流に基づく電流値i2とインバータ基準電流値ib2との電流値が合うようにするものは含まれるものとする。