(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施の形態の受信装置について、
図1〜
図8を参照しながら説明する。
【0018】
以下の説明において、振幅変調された送信信号を受信する場合を例に説明するが、複数のアンテナによって、同じ信号を2つ以上の経路から受信するダイバーシティ受信装置においても、同様である。
【0019】
図1は、本発明の一実施の形態の受信装置の構成のうち、和信号および差信号を生成する生成部の構成の例を示すブロック図である。生成部は、搬送波抽出部11、乗算器12−1および12−2、並びにLPF(Low Pass Filter)13−1および13−2を含むように構成される。
【0020】
搬送波抽出部11は、振幅変調された送信信号(放送波)である、1つの送信信号を受信して得られる中間周波数の信号から搬送波成分を取り出す。搬送波抽出部11は、搬送波の余弦成分(cos成分)と正弦成分(sin成分)とを取り出す。搬送波抽出部11は、搬送波の余弦成分(cos成分)を乗算器12−1に供給し、正弦成分(sin成分)を乗算器12−2に供給する。
【0021】
乗算器12−1は、中間周波数の信号に搬送波の余弦成分(cos成分)を乗算し、その結果をLPF13−1に供給する。LPF13−1は、いわゆる低域フィルタであり、乗算器12−1から供給された信号から所定の周波数より高い成分を除去して、その結果を和信号Saとして出力する。
【0022】
乗算器12−2は、中間周波数の信号に搬送波の正弦成分(sin成分)を乗算し、その結果をLPF13−2に供給する。LPF13−2は、いわゆる低域フィルタであり、乗算器12−2から供給された信号から所定の周波数より高い成分を除去して、その結果を差信号Sbとして出力する。
【0023】
すなわち、生成部において、中間周波数から放送波に含まれている搬送波成分が取り出される。搬送波抽出部11により搬送波のSIN波成分およびCOS波成分が取り出される。乗算器12−1および12−2において、SIN波成分およびCOS波成分にそれぞれ中間周波数成分が乗算され、LPF13−1および13−2を通すことでCOS側から和信号Saが得られ、SIN側から差信号Sbが得られる。
【0024】
図2は、本発明の一実施の形態の受信装置の構成のうち、和信号Saおよび差信号Sbを用いて、雑音を低減する雑音低減部の構成の例を示すブロック図である。雑音低減部は、変換部31、平均化部32、スペクトル引き算部33、ゲイン調整部34、および逆フーリエ変換部35を含むように構成される。
【0025】
変換部31は、和信号Saおよび差信号Sbとのそれぞれに、フーリエ変換の処理を適用する。変換部31は、和信号Saにフーリエ変換の処理を適用して得られた値Fa(f)を平均化部32およびゲイン調整部34に供給する。また、変換部31は、差信号Sbにフーリエ変換の処理を適用して得られた値Fb(f)を平均化部32に供給する。
【0026】
変換部31は、フーリエ変換部41−1および41−2を含む。フーリエ変換部41−1は、和信号Saにフーリエ変換の処理を適用する。フーリエ変換部41−2は、差信号Sbにフーリエ変換の処理を適用する。
【0027】
平均化部32は、値Fa(f)および値Fb(f)のそれぞれに、2乗平均の演算を適用することにより、値Fa(f)および値Fb(f)を平均化する。平均化部32は、値Fa(f)および値Fb(f)のそれぞれの平均化によりそれぞれ得られた値Sag(f)および値Sbg(f)をスペクトル引き算部33に供給する。
【0028】
平均化部32は、スペクトル平均化部42−1および42−2を含む。スペクトル平均化部42−1は、値Fa(f)に2乗平均の演算を適用することにより、値Fa(f)を平均化する。スペクトル平均化部42−2は、値Fb(f)に2乗平均の演算を適用することにより、値Fb(f)を平均化する。
【0029】
スペクトル引き算部33は、値Fa(f)の平均化により得られた値Sag(f)から、値Fb(f)の平均化により得られた値Sbg(f)を引き算し、その結果得られた差分をゲイン調整部34に供給する。
【0030】
ゲイン調整部34は、和信号Saにフーリエ変換の処理を適用して得られた値Fa(f)を参照して、値Sag(f)から値Sbg(f)を引き算して得られた差分のゲインを調整し、ゲインが調整された差分を逆フーリエ変換部35に供給する。逆フーリエ変換部35は、ゲインが調整された差分に逆フーリエ変換の処理を適用し、その結果得られた値を出力する。
【0031】
すなわち、雑音低減部は、和信号Saおよび差信号Sbをそれぞれ、フーリエ変換し、周波数成分に分解する。これにより、差信号Sbの雑音成から雑音のスペクトルが得られる。雑音低減部において、雑音のスペクトルを平均化することで正確な値が得られる。
【0032】
和信号Saの周波数成分は、信号成分と雑音成分の和と考えられ、平均雑音成分は、和信号Saと差信号Sbとにおいて同じであるので、雑音低減部において、差信号Sbの雑音成分が和信号Saからスペクトル上で引き算されることにより雑音の少ないスペクトルが得られる。さらに、雑音低減部において、スペクトルに逆フーリエ変換を施すことにより、雑音を取り除いた信号が得られる。
【0033】
受信装置の処理を説明する前に、まず、送信装置から送信されてくる送信信号(以下、放送波とも称し、振幅変調された送信信号をAM放送波とも称する)について説明する。
【0034】
中間周波数におけるAM放送波の信号を単一周波数としても一般性を失わないので、仮に、周波数fの信号で放送(送信)されたとする。
【0035】
変調度mの送信側の信号は、式(1)で表される。
mcos(2πft) ・・・(1)
【0036】
この場合、送信信号s(t)は、式(2)で表される。
s(t)=A{1+mcos(2πft)}cos(2πωt) ・・・(2)
ここで、式(2)において、信号の大きさA、信号周波数f、変調周波数ω、および時間tが用いられる。
【0037】
さらに計算を進めると、式(3)が得られる。
s(t)=Acos(2πωt)+(Am/2)cos(2π(f+ω)t)+(Am/2)cos(2π(ω-f)t) ・・・(3)
式(3)において、Acos(2πωt)で表される成分は、搬送波と称され、(Am/2)cos(2π(ω+f)t)で表される成分は、上側帯波USBと称され、(Am/2)cos(2π(ω-f)t)で表される成分は、下側帯波LSBと称される
【0038】
図3は、搬送波、上側帯波USB、および下側帯波LSBを示す図である。
図3において、横軸は、周波数を示し、縦軸は、ゲインを示す。よく知られているように、AM放送波は、
図3に示されるように、上側帯波USBと下側帯波LSBとに分かれて送信される。
【0039】
雑音があると仮定し、ここでは上側帯波USBと下側帯波LSBとが別々の大きさになったとする。すると、上側帯波USBを式(4)のように表すことができ、下側帯波LSBを式(5)のように表すことができる。
(Am/2)cos(2π(ω+f)t)―>Ucos(2π(ω+f)t) ・・・(4)
(Am/2)cos(2π(ω-f)t)―>Lcos(2π(ω-f)t) ・・・(5)
【0040】
次に、
図4のフローチャートを参照して、雑音低減の処理を説明する。
【0041】
まず、ステップS11において、生成部は、1つの信号から和信号Saと差信号Sbとを生成する。すなわち、例えば、生成部は、式(6)に示されるように、中間周波数の信号に、同期回路の搬送波抽出回路で得られた搬送波成分のCOS成分を乗算し、和信号Saを生成する。例えば、搬送波成分は、搬送波にバンドパスフィルタを通すことで得られる。
s(t)cos(2πωt)=Acos2(2πωt)+Ucos(2π(ω+f)t)cos(2πωt)+Lcos(2π(ω-f)t)cos(2πωt)
=A/2cos(4πωt)+(U/2)cos(2π(2ω+f)t)+(L/2)cos(2π(2ω-f)t)
+A/2+(U/2)cos(2πft)+(L/2)cos(2πft)
・・・(6)
【0042】
ここでローパスフィルタにより変調周波数成分を取り除くことができる。また直流成分のA/2も取り除くことが出来るので、式(7)に示される和信号Saが得られる。
Sa=(U/2)cos(2πft)+(L/2)cos(2πft) ・・・(7)
【0043】
ノイズがなければ上側帯波USBと下側帯波LSBの大きさは、同じなので、その大きさをGとすれば、式(8)および式(9)が成り立ち、送信信号と一致する。
(U/2)=(L/2)=(G/2) ・・・(8)
Sa=Gcos(2πft) ・・・(9)
【0044】
また、生成部は、式(10)に示されるように、中間周波数の信号に、同期回路の搬送波抽出回路で得られた搬送波成分のSIN成分を乗算し、差信号Sbを生成する。
s(t)sin(2πωt)=Acos(2πωt)sin(2πωt)+Ucos(2π(ω+f)t)sin(2πωt)+Lcos(2π(ω-f)t))sin(2πωt)
=(A/2)sin(4πωt)+(U/2)sin(2π(2ω+f)t)+(L/2)sin(2π(2ω-f)t)
-(U/2)sin(2πft)+(L/2)sin(2πft)
・・・(10)
【0045】
ここで、ローパスフィルタで変調周波数成分が取り除くことができるので、式(11)に示される差信号Sbが得られる。
Sb=-(U/2)sin(2πft)+(L/2)sin(2πft) ・・・(11)
【0046】
ノイズがなければ上側帯波USBと下側帯波LSBの大きさは、同じなので、その大きさをGとすれば、式(12)および式(13)が成り立ち、ノイズのないことが示される。
(U/2)=(L/2)=(G/2) ・・・(12)
Sb=0 ・・・(13)
【0047】
以上のことから、差信号Sbによって、和信号Saに含まれている雑音の大きさがわかる。差信号Sbの雑音は、雑音の大きさのみわかり、雑音の位相がわからないことを理解する必要がある。つまり雑音波形そのものはわからないが、その平均的な大きさはわかる。このため、雑音除去するには信号の大きさのみに着目し、その位相成分を考慮しないで行う。すなわち、以下では、雑音を含んでいる信号から、雑音に相当する大きさを減らすことで、雑音感を少なくする処理を行う。
【0048】
また、雑音は周波数に依存する量であることを考慮する。このため以下では、信号および雑音を周波数に関係する量、周波数の関数として扱う。
【0049】
式(7)に含まれるcos(2πft)の大きさは、一定なので、その係数Sagに着目し、さらに周波数の関数であることを明示するため式(7)および式(11)を書き換える。すなわち、式(7)のSaの大きさは、式(14)で表すことができる。
Sag(f)=U(f)/2+L(f)/2 ・・・(14)
【0050】
また、式(11)の差信号Sbの大きさSbgの係数は、式(15)のように書き換えることができる。
Sbg(f)=U(f)/2-L(f)/2 ・・・(15)
【0051】
また、ノイズのあるときは上側帯波USBと下側帯波LSBは違ってくるので、上側帯波USBと下側帯波LSBを信号成分とノイズ成分に分けて考える。
U(f)=S(f)+Nu(f) ・・・(16)
L(f)=S(f)+Nl(f) ・・・(17)
【0052】
信号成分S、上側帯波USBのノイズ成分Nu、および下側帯波LSBのノイズ成分Nlから、式(18)により、和信号Saの大きさが求められ、式(19)により、差信号Sbの大きさが求められる。
Sag(f)=U(f)/2+L(f)/2=(2S(f)+Nu(f)+Nl(f))/2 ・・・(18)
Sbg(f)=-U(f)/2+L(f)/2=-(Nu(f)-N(f)l)/2 ・・・(19)
【0053】
このように、ステップS11において、1つの信号から和信号Saと差信号Sbとが生成される。
【0054】
次に、ステップS12において、雑音低減部の変換部31は、和信号Saと差信号Sbとをそれぞれフーリエ変換する。
【0055】
フーリエ変換後、和信号Saと差信号Sbとは、各周波数に分解され、周波数ごとの成分に分けられる。一般に周波数ごとの成分は、複素数である。
【0056】
式(20)で示されるように、値Fa(f)は、和信号Saがフーリエ変換された結果求められる値である。また、式(21)で示されるように、値Fb(f)は、差信号Sbがフーリエ変換された結果求められる値である。
Sa ―>(フーリエ変換)―> Fa(f) ・・・(20)
Sb ―>(フーリエ変換)―> Fb(f) ・・・(21)
【0057】
なお、値Fa(f)および値Fb(f)は、周波数の関数であり、値Fa(f)および値Fb(f)に(f)を付したのは、周波数の関数であることを示すためである。
【0058】
ちなみにフーリエ変換後の絶対値は、式(22)および式(23)で表される。なお差信号に絶対値が付くのはスペクトルが負にならないようにするためである。
|Fa(f)|=Sag(f)=U(f)/2+L(f)/2=(2S(f)+Nu(f)+Nl(f))/2 ・・・(22)
|Fb(f)|=Sbg(f)=|-U(f)/2+L(f)/2|=|(Nu(f)-N(f)l)|/2 ・・・(23)
【0059】
ステップS13において、平均化部32は、値Fa(f)および値Fb(f)のそれぞれに、2乗平均の演算を適用することにより、値Fa(f)および値Fb(f)を平均化する。すなわち、スペクトルの大きさを求めるためにそれぞれ2乗平均が行われる。信号と、上側帯波USBの雑音と、下側帯波LSBの雑音とが無相関であるので、平均計算する関数Aveを適用することで、無相関の定義から式(24)が成り立ち、2乗平均はそれぞれの和になる。
【0060】
Ave(S(f)*Nu(f))=0
Ave(S(f)*Nl(f))=0
Ave(Nu(f)*Nl(f))=0
・・・(24)
【0061】
なお、式(22)または式(23)に含まれる2で割る部分は本質的でなく、式が煩雑になるので以下では言及しない。
【0062】
式(25)が成り立ち、おのおのの2乗和になる。
Ave((2S(f)+Nu(f)+Nl(f))
2)=Ave(2S(f)
2)+Ave(Nu(f)
2)+Ave(Nl(f)
2)
・・・(25)
【0063】
また、差信号Sbにおいて、和信号Saと同様に上側帯波USBと下側帯波LSBとが無相関であることを考慮すれば、差信号Sbでも2乗平均はそれぞれの2乗和になる。
Ave((Nu(f)-Nl(f))
2)=Ave(Nu(f)
2)+Ave(Nl(f)
2)
・・・(26)
【0064】
和信号Saの2乗和に含まれるノイズは、差信号Sbの2乗和に等しくなる。このことで和信号Saに含まれるノイズの大きさを推定できる。
【0065】
この様子を、
図5および
図6に示す。
図5および
図6において、黒丸は、信号のスペクトルを示し、矢印は、雑音(ノイズ)のスペクトルを示す。
図7において、同様である。
【0066】
図5に示されるように、和信号Saに含まれるノイズは、信号とノイズの大きさを加算したものとなる。また
図6に示されるように、差信号Sbには、ノイズが現れる。
【0067】
図7に示されるように、和信号Saの2乗和から、差信号Sbの2乗和を引くことでノイズのない信号の2乗和が得られる。しかしながら和信号Saと差信号Sbの雑音は長時間の平均では一致するものの、短時間では一致しないので適当な長さの平均値が用いられる。
【0068】
すなわち、ステップS14において、スペクトル引き算部33は、和信号Saのスペクトルから差信号Sbのスペクトルを引き算することで、ノイズのない信号を得る。
【0069】
式(25)に示される、和信号Saに含まれるノイズは、式(26)に示される差信号Sbから推定できる。
【0070】
以上のことから、AM変調波のノイズ成分は、上側帯波USBと下側帯波LSBの和信号Saと差信号Sbの2乗和に一致する。AM放送において、和信号Saが聴取される。和信号Saの中のノイズ成分を差信号Sbから求め、周波数軸上でノイズに相当する部分を引き算することにより周波数ごとのノイズが無いと仮定したスペクトルが求まる。
【0071】
このように、和信号Saと差信号Sbのそれぞれに、フーリエ変換を適用すると、値Fa(f)および値Fa(f)が得られるので、和信号Saと差信号Sbのノイズ成分の2乗和は一致することから、式(27)に示される計算を全ての周波数で行うことで、ノイズ除去された信号の2乗和が分かり、ノイズ除去された信号A(f)が求められる。
|A(f)|
2=|Fa(f)|
2−|Fb(f)|
2
・・・(27)
【0072】
なお雑音が大きいときに(27)式が負または極端に小さくなるときがある。このときは0または小さい値に置き換えることができる。また(27)式の変わりに簡便的に絶対値でも計算できる。すなわち式(28)を用いることができる。
|A(f)| = |Fa(f)| − |Fb(f)|
・・・(28)
【0073】
このように、|A(f)|
2の平方根を計算することで、各スペクトルの大きさが分かる。
【0074】
しかしながら、各スペクトルの大きさは分かるがフーリエ変換後の実数、虚数成分は分からないので、和信号の実数、虚数の大きさに配分する。すなわち実数、虚数成分の比率を変えないで、大きさのみノイズ除去された値A(f)になるように実数、虚数に同じ値を乗算する。
【0075】
この操作は信号の位相を変えることに相当するが、人間の聴覚特性は位相には鈍感なので、違和感は生じない。すなわち和信号のフーリエ変換を式(29)で書き換えることで雑音の少ない信号が得られる。
Fa(f)=Fa(f)|A(f)|/|Fa(f)|
・・・(29)
【0076】
すなわち、ステップS15において、ゲイン調整部34は、和信号Saのスペクトルから差信号Sbのスペクトルが引き算された結果のゲインを調整する。
【0077】
ステップS16において、逆フーリエ変換部35は、式(29)の演算の結果得られたFa(f)の値を逆フーリエ変換し、時間領域の値に戻すことで雑音が除去された信号を得て、雑音低減の処理は終了する。
【0078】
このように、AM放送波は上側帯波USBと下側帯波LSBの二つに分かれて送信されている。従来の受信機は上側帯波USBと下側帯波LSBの和信号Saを受信信号としているのに対し、上側帯波USBと下側帯波LSBの差信号Sbから雑音情報を得て、この雑音信号から和信号Saに含まれる雑音成分を推定し、和信号Saに含まれる雑音を低減する。AM放送と同様に、同じ信号を2つの経路から受信されるダイバーシティ受信機においても雑音低減ができる。
【0079】
以上のように、上側帯波USBと下側帯波LSBの差信号Sbから得られる雑音成分で、和信号Saに含まれる雑音成分を推定し、推定した雑音部分を引くことにより雑音を低減することができる。
【0080】
元々雑音はランダムであり、AM放送波の下側帯波LSB側に含まれている雑音と上側帯波USB側に含まれている雑音はお互いに無関係な無相関の信号である。無相関の信号の和と差は同じ統計的性質を示す。つまり和信号Saの雑音と差信号Sbの雑音はその2乗和の平均値は同じ値を示す。差信号Sbに含まれている雑音の統計的性質を知ることで、和信号Saの雑音を低減することが出来る。すなわち和信号Saに含まれているノイズの量を差信号Sbから推定し、それを引くことで和信号Saに含まれているノイズを低減することができ、雑音の少ない信号を得ることができる。
【0081】
これにより単に和信号Saがsqrt(2)倍のS/N改善にとどまるのに対して数倍の改善効果がある。また、AM放送の上側帯波USBと下側帯波LSBと同じように、別々の経路から同じ信号を送信するダイバーシティ受信にも同じように雑音が低減できる。
【0082】
以上のように、雑音をより低減できる。
【0083】
上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行することもできるし、ソフトウエアにより実行することもできる。一連の処理をソフトウエアにより実行する場合には、そのソフトウエアを構成するプログラムが、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータ、または、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータなどに、プログラム記録媒体からインストールされる。
【0084】
図8は、上述した一連の処理をプログラムにより実行するコンピュータのハードウェアの構成例を示すブロック図である。
【0085】
コンピュータにおいて、CPU(Central Processing Unit)201,ROM(Read Only Memory)202,RAM(Random Access Memory)203は、バス204により相互に接続されている。
【0086】
バス204には、さらに、入出力インタフェース205が接続されている。入出力インタフェース205には、キーボード、マウス、マイクロホンなどよりなる入力部206、ディスプレイ、スピーカなどよりなる出力部207、ハードディスクや不揮発性のメモリなどよりなる記憶部208、ネットワークインタフェースなどよりなる通信部209、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリなどのリムーバブルメディア211を駆動するドライブ210が接続されている。
【0087】
以上のように構成されるコンピュータでは、CPU201が、例えば、記憶部208に記憶されているプログラムを、入出力インタフェース205及びバス204を介して、RAM203にロードして実行することにより、上述した一連の処理が行われる。
【0088】
コンピュータ(CPU201)が実行するプログラムは、例えば、磁気ディスク(フレキシブルディスクを含む)、光ディスク(CD-ROM(Compact Disc-Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disc)等)、光磁気ディスク、もしくは半導体メモリなどよりなるパッケージメディアであるリムーバブルメディア211に記録して、あるいは、ローカルエリアネットワーク、インターネット、デジタル衛星放送といった、有線または無線の伝送媒体を介して提供される。
【0089】
そして、プログラムは、リムーバブルメディア211をドライブ210に装着することにより、入出力インタフェース205を介して、記憶部208に記憶することで、コンピュータにインストールすることができる。また、プログラムは、有線または無線の伝送媒体を介して、通信部209で受信し、記憶部208に記憶することで、コンピュータにインストールすることができる。その他、プログラムは、ROM202や記憶部208にあらかじめ記憶しておくことで、コンピュータにあらかじめインストールしておくことができる。
【0090】
なお、コンピュータが実行するプログラムは、本明細書で説明する順序に沿って時系列に処理が行われるプログラムであっても良いし、並列に、あるいは呼び出しが行われたとき等の必要なタイミングで処理が行われるプログラムであっても良い。
【0091】
また、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。