【実施例】
【0056】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0057】
(実施例1)
実施例1として、波長1550nmにおいて、分散D=17ps/nm/km、分散と分散スロープとの比RDS=0.0034nm
−1である長さ1000kmのシングルモードファイバ(SMF)の残留分散を補償する電気分散補償器(EDC)を設計した。この場合、光ファイバ伝送路全体の分散は17000ps/nm(波長1550nmにおいて−136.24ps/GHz)であり、光ファイバ伝送路全体の分散スロープは57.8ps/nm
2である。
光伝送方式は、10Gb/sのNRZ(Non Return to Zero)信号をOSSB変調する場合を想定し、EDCが20GHzまでSMFの残留分散を打ち消すようにした。ただし、エルビウム添加ファイバ増幅器(EDFA)のような光増幅器を用いて光信号の強度が保たれるものとし、非線形による歪みは考慮していない。
EDCの反射率が0.5、システムの特性インピーダンスが50Ωとして、設計を行った。
図8は、厚さh=1mm、比誘電率ε
r=10の誘電体層を備える基板を用いて設計した反射型マイクロストリップ線路の幅分布w(z)を示す。また、
図9は、
図8に示す幅分布w(z)を有し、伝送線路の中心線を直線状とし、中心線に対して対称とした反射型マイクロストリップ線路の形状を示す。長さ1000kmという長距離のSMFの残留分散を補償するにもかかわらず、本実施例のEDCの線路長は約23cmと小型である。
図10および
図11は、本実施例の反射型マイクロストリップ線路が無反射終端されたときの反射波の振幅特性および群遅延特性を示す。これらの図中の“designed”は設計に用いた値を示し、“realized”は得られた結果を示す。図示のように、“designed”と“realized”とにはほとんど差異がないことが分かる。また、
図11に示されるEDCの群遅延スロープは約136ps/GHzであり、光ファイバ伝送路の残留分散を正確に補償するために必要な特性が得られている。
図12、
図13および
図14は、それぞれ初期入力のアイパターン、EDCを省略した出力のアイパターン、EDCを行った出力のアイパターンを示す。EDCはOSSB変調器の前で行うプリ分散補償でも、フォトダイオード(PD)で検波した後に行うポスト分散補償でも有効である。
図14に示すように、EDCを行うことによりきれいなアイパターンを示し、長さ1000kmのSMFを伝搬した後でもSMFの残留分散を正確に補償することができた。
【0058】
(実施例1において特性インピーダンスを変更した例)
上記設計は、特性インピーダンスを50Ωとした例を示したが、特性インピーダンスは特に限定されるものではなく、システムに要求される特性インピーダンスに合わせることができる。
図15および
図16は、特性インピーダンスを25Ωとして設計した反射型マイクロストリップ線路の幅分布および形状をそれぞれ示す。長さ1000kmという長距離のSMFの残留分散を補償するにもかかわらず、本実施例のEDCの線路長は約21cmと小型である。
図17および
図18は、特性インピーダンスを100Ωとして設計した反射型マイクロストリップ線路の幅分布および形状をそれぞれ示す。長さ1000kmという長距離のSMFの残留分散を補償するにもかかわらず、本実施例のEDCの線路長は約24cmと小型である。
図19および
図20は、特性インピーダンスを300Ωとして設計した反射型マイクロストリップ線路の幅分布および形状をそれぞれ示す。長さ1000kmという長距離のSMFの残留分散を補償するにもかかわらず、本実施例のEDCの線路長は約48cmと小型である。
いずれも、厚さh=1mm、比誘電率ε
r=10の誘電体層を備える基板を用いた場合であり、その他の条件も、特性インピーダンス以外は、同じにした。
【0059】
(実施例2)
実施例2として、波長1550nmにおいて、分散D=17ps/nm/km、分散と分散スロープとの比RDS=0.0034nm
−1である長さ1000kmのシングルモードファイバ(SMF)の残留分散を補償する電気分散補償器(EDC)を設計した。この場合、光ファイバ伝送路全体の分散は17000ps/nm(波長1550nmにおいて−136.24ps/GHz)であり、光ファイバ伝送路全体の分散スロープは57.8ps/nm
2である。
光伝送方式は、10Gb/sのNRZ(Non Return to Zero)信号をOSSB変調する場合を想定し、EDCが実施例1より狭い帯域である10GHzまでSMFの残留分散を打ち消すようにした。ただし、エルビウム添加ファイバ増幅器(EDFA)のような光増幅器を用いて光信号の強度が保たれるものとし、非線形による歪みは考慮していない。
EDCの反射率が0.5、システムの特性インピーダンスが50Ωとして、設計を行った。
図21は、厚さh=1mm、比誘電率ε
r=10の誘電体層を備える基板を用いて設計した反射型マイクロストリップ線路の幅分布w(z)を示す。また、
図22は、
図21に示す幅分布w(z)を有し、伝送線路の中心線を直線状とし、中心線に対して対称とした反射型マイクロストリップ線路の形状を示す。長さ1000kmという長距離のSMFの残留分散を補償するにもかかわらず、本実施例のEDCの線路長は約16cmと小型である。
図23および
図24は、本実施例の反射型マイクロストリップ線路が無反射終端されたときの反射波の振幅特性および群遅延特性を示す。これらの図中の“designed”は設計に用いた値を示し、“realized”は得られた結果を示す。図示のように、“designed”と“realized”とにはほとんど差異がないことが分かる。また、
図24に示されるEDCの群遅延スロープは約136ps/GHzであり、光ファイバ伝送路の残留分散を正確に補償するために必要な特性が得られている。
図25、
図26および
図27は、それぞれ初期入力のアイパターン、EDCを省略した出力のアイパターン、EDCを行った出力のアイパターンを示す。EDCはOSSB変調器の前で行うプリ分散補償でも、フォトダイオード(PD)で検波した後に行うポスト分散補償でも有効である。
図27に示すように、EDCを行うことによりきれいなアイパターンを示し、長さ1000kmのSMFを伝搬した後でもSMFの残留分散を正確に補償することができた。
【0060】
(実施例3)
実施例3として、波長1590nmにおいて、分散D=2.95ps/nm/km、分散と分散スロープとの比RDS=0.018nm
−1である長さ2000kmのシングルモードファイバ(SMF)の残留分散を補償する電気分散補償器(EDC)を設計した。この場合、光ファイバ伝送路全体の分散は5900ps/nm(波長1590nmにおいて−49.75ps/GHz)であり、光ファイバ伝送路全体の分散スロープは106.2ps/nm
2である。
光伝送方式は、40Gb/sのNRZ(Non Return to Zero)信号をOSSB変調する場合を想定し、EDCが40GHzまでSMFの残留分散を打ち消すようにした。ただし、エルビウム添加ファイバ増幅器(EDFA)のような光増幅器を用いて光信号の強度が保たれるものとし、非線形による歪みは考慮していない。
EDCの反射率が0.4、システムの特性インピーダンスが50Ωとして、設計を行った。
図28は、厚さh=1mm、比誘電率ε
r=10の誘電体層を備える基板を用いて設計した反射型マイクロストリップ線路の幅分布w(z)を示す。また、
図29は、
図28に示す幅分布w(z)を有し、伝送線路の中心線を直線状とし、中心線に対して対称とした反射型マイクロストリップ線路の形状を示す。長さ2000kmという長距離のSMFの残留分散を補償するにもかかわらず、本実施例のEDCの線路長は約18cmと小型である。
図30および
図31は、本実施例の反射型マイクロストリップ線路が無反射終端されたときの反射波の振幅特性および群遅延特性を示す。これらの図中の“designed”は設計に用いた値を示し、“realized”は得られた結果を示す。図示のように、“designed”と“realized”とにはほとんど差異がないことが分かる。また、
図31に示されるEDCの群遅延スロープは約50ps/GHzであり、光ファイバ伝送路の残留分散を正確に補償するために必要な特性が得られている。
図32、
図33および
図34は、それぞれ初期入力のアイパターン、EDCを省略した出力のアイパターン、EDCを行った出力のアイパターンを示す。EDCはOSSB変調器の前で行うプリ分散補償でも、フォトダイオード(PD)で検波した後に行うポスト分散補償でも有効である。
図34に示すように、EDCを行うことによりきれいなアイパターンを示し、長さ2000kmのSMFを伝搬した後でもSMFの残留分散を正確に補償することができた。
【0061】
(実施例4)
設計の中心波長と異なる近傍の波長でもEDCが使用可能であるかを検証するため、実施例1により波長1550nmに合わせて設計したEDCを、波長1555nmで使用した。なお、この波長は、周波数間隔100GHzのITUグリッドでは、5チャンネルも長波長側に位置するチャンネルに相当する。本実施例において、波長1555nmにおける分散Dは、17.3ps/nm/kmである。
図35、
図36および
図37は、それぞれ初期入力のアイパターン、EDCを省略した出力のアイパターン、EDCを行った出力のアイパターンを示す。EDCはOSSB変調器の前で行うプリ分散補償でも、フォトダイオード(PD)で検波した後に行うポスト分散補償でも有効である。
図37に示すように、信号波長が設計波長と異なる場合でも、EDCを行うことによりきれいなアイパターンを示し、長さ1000kmのSMFを伝搬した後でもSMFの残留分散を正確に補償することができた。
すなわち、このEDCは、設計波長の近傍のチャンネルでも使用できる。
【0062】
(実施例5)
実施例5として、波長1550nmにおいて、分散D=17ps/nm/km、分散と分散スロープとの比RDS=0.0034nm
−1である長さ1000kmのシングルモードファイバ(SMF)の残留分散を補償する電気分散補償器(EDC)を設計した。この場合、光ファイバ伝送路全体の分散は17000ps/nm(波長1550nmにおいて−136.24ps/GHz)であり、光ファイバ伝送路全体の分散スロープは57.8ps/nm
2である。
光伝送方式は、10Gb/sのNRZ(Non Return to Zero)信号をOSSB変調する場合を想定し、EDCが実施例1より広い帯域である30GHzまでSMFの残留分散を打ち消すようにした。ただし、エルビウム添加ファイバ増幅器(EDFA)のような光増幅器を用いて光信号の強度が保たれるものとし、非線形による歪みは考慮していない。
EDCの反射率が0.3、システムの特性インピーダンスが50Ωとして、設計を行った。
図38は、厚さh=0.635mm、比誘電率ε
r=10.2の誘電体層を備える基板を用いて設計した反射型マイクロストリップ線路の幅分布w(z)を示す。また、
図39は、
図38に示す幅分布w(z)を有し、伝送線路の中心線を直線状とし、中心線に対して対称とした反射型マイクロストリップ線路の形状を示す。長さ1000kmという長距離のSMFの残留分散を補償するにもかかわらず、本実施例のEDCの線路長は約35cmと小型である。
図40および
図41は、本実施例の反射型マイクロストリップ線路が無反射終端されたときの反射波の振幅特性および群遅延特性を示す。これらの図中の“designed”は設計に用いた値を示し、“realized”は得られた結果を示す。図示のように、“designed”と“realized”とにはほとんど差異がないことが分かる。また、
図41に示されるEDCの群遅延スロープは約136ps/GHzであり、光ファイバ伝送路の残留分散を正確に補償するために必要な特性が得られている。
図42、
図43および
図44は、それぞれ初期入力のアイパターン、EDCを省略した出力のアイパターン、EDCを行った出力のアイパターンを示す。EDCはOSSB変調器の前で行うプリ分散補償でも、フォトダイオード(PD)で検波した後に行うポスト分散補償でも有効である。
図44に示すように、EDCを行うことによりきれいなアイパターンを示し、長さ1000kmのSMFを伝搬した後でもSMFの残留分散を正確に補償することができた。
図44は、実施例1の
図14に比べると、より広い周波数帯域での分散補償を考慮した分、口が開いたアイパターンになっている。
【0063】
(実施例6)
実施例6として、波長1550nmにおいて、分散D=17ps/nm/km、分散と分散スロープとの比RDS=0.0034nm
−1である長さ100kmのシングルモードファイバ(SMF)の残留分散を補償する電気分散補償器(EDC)を設計した。この場合、光ファイバ伝送路全体の分散は1700ps/nm(波長1550nmにおいて−13.62ps/GHz)であり、光ファイバ伝送路全体の分散スロープは5.78ps/nm
2である。
光伝送方式は、10Gb/sのNRZ(Non Return to Zero)信号をOSSB変調する場合を想定し、EDCが20GHzまでSMFの残留分散を打ち消すようにした。ただし、エルビウム添加ファイバ増幅器(EDFA)のような光増幅器を用いて光信号の強度が保たれるものとし、非線形による歪みは考慮していない。
EDCの反射率が0.5、システムの特性インピーダンスが50Ωとして、設計を行った。
図45は、厚さh=0.508mm、比誘電率ε
r=2.2の誘電体層を備える基板を用いて設計した反射型マイクロストリップ線路の幅分布w(z)を示す。また、
図46は、
図45に示す幅分布w(z)を有し、伝送線路の中心線を直線状とし、中心線に対して対称とした反射型マイクロストリップ線路の形状を示す。長さ100kmという長距離のSMFの残留分散を補償するにもかかわらず、本実施例のEDCの線路長は約8.5cmと小型である。
図47および
図48は、本実施例の反射型マイクロストリップ線路が無反射終端されたときの反射波の振幅特性および群遅延特性を示す。これらの図中の“designed”は設計に用いた値を示し、“realized”は得られた結果を示す。図示のように、“designed”と“realized”とにはほとんど差異がないことが分かる。また、
図48に示されるEDCの群遅延スロープは約13.6ps/GHzであり、光ファイバ伝送路の残留分散を正確に補償するために必要な特性が得られている。
図49、
図50および
図51は、それぞれ初期入力のアイパターン、EDCを省略した出力のアイパターン、EDCを行った出力のアイパターンを示す。EDCはOSSB変調器の前で行うプリ分散補償でも、フォトダイオード(PD)で検波した後に行うポスト分散補償でも有効である。
図51に示すように、EDCを行うことによりきれいなアイパターンを示し、長さ100kmのSMFを伝搬した後でもSMFの残留分散を正確に補償することができた。
【0064】
(実施例7)
実施例7として、波長1300nmにおいて、分散D=−2ps/nm/km、分散と分散スロープとの比RDS=−0.04nm
−1である長さ5000kmのシングルモードファイバ(SMF)の残留分散を補償する電気分散補償器(EDC)を設計した。この場合、光ファイバ伝送路全体の分散は−10000ps/nm(波長1300nmにおいて56.37ps/GHz)であり、光ファイバ伝送路全体の分散スロープは400ps/nm
2である。
光伝送方式は、10Gb/sのNRZ(Non Return to Zero)信号をOSSB変調する場合を想定し、EDCが20GHzまでSMFの残留分散を打ち消すようにした。ただし、エルビウム添加ファイバ増幅器(EDFA)のような光増幅器を用いて光信号の強度が保たれるものとし、非線形による歪みは考慮していない。
EDCの反射率が0.5、システムの特性インピーダンスが75Ωとして、設計を行った。
図52は、厚さh=0.635mm、比誘電率ε
r=10.2の誘電体層を備える基板を用いて設計した反射型マイクロストリップ線路の幅分布w(z)を示す。また、
図53は、
図52に示す幅分布w(z)を有し、伝送線路の中心線を直線状とし、中心線に対して対称とした反射型マイクロストリップ線路の形状を示す。長さ5000kmという長距離のSMFの残留分散を補償するにもかかわらず、本実施例のEDCの線路長は約17cmと小型である。
図54および
図55は、本実施例の反射型マイクロストリップ線路が無反射終端されたときの反射波の振幅特性および群遅延特性を示す。これらの図中の“designed”は設計に用いた値を示し、“realized”は得られた結果を示す。図示のように、“designed”と“realized”とにはほとんど差異がないことが分かる。また、
図55に示されるEDCの群遅延スロープは約−56ps/GHzであり、光ファイバ伝送路の残留分散を正確に補償するために必要な特性が得られている。
なお、
図55の遅延特性は従来技術の透過型のマイクロストリップ線路などの分散特性を利用する透過型デバイス(非特許文献5〜7)で実現できない。透過型のマイクロストリップ線路は、通常周波数が高くなるにつれ、群速度が遅く(群遅延量が大きく)なる特性をもち、本件のように周波数が高くなるにつれ、群速度が速く(群遅延量が小さく)なる特性が得られない。また、空洞導波管は周波数が高くなると、群速度が速くなるが、カットオフ周波数があり、低周波信号が通過できない。本件の反射型マイクロストリップ線路は、周波数が高くなるにつれ、群速度が速く(群遅延量が小さく)なり、群遅延スロープ(ps/GHz)が負である遅延特性が得られる上、低周波信号が0GHz付近まで通過可能であり、分散補償が可能な帯域幅をより広くすることができる。
図56、
図57および
図58は、それぞれ初期入力のアイパターン、EDCを省略した出力のアイパターン、EDCを行った出力のアイパターンを示す。EDCはOSSB変調器の前で行うプリ分散補償でも、フォトダイオード(PD)で検波した後に行うポスト分散補償でも有効である。
図58に示すように、EDCを行うことによりきれいなアイパターンを示し、長さ5000kmのSMFを伝搬した後でもSMFの残留分散を正確に補償することができた。
【0065】
(実施例8)
実施例8として、波長1300nmにおいて、分散D=−2ps/nm/km、分散と分散スロープとの比RDS=−0.04nm
−1である長さ1000kmのシングルモードファイバ(SMF)の残留分散を補償する電気分散補償器(EDC)を設計した。この場合、光ファイバ伝送路全体の分散は−2000ps/nm(波長1300nmにおいて11.27ps/GHz)であり、光ファイバ伝送路全体の分散スロープは80ps/nm
2である。
光伝送方式は、10Gb/sのNRZ(Non Return to Zero)信号をOSSB変調する場合を想定し、EDCが20GHzまでSMFの残留分散を打ち消すようにした。ただし、エルビウム添加ファイバ増幅器(EDFA)のような光増幅器を用いて光信号の強度が保たれるものとし、非線形による歪みは考慮していない。
EDCの反射率が0.8、システムの特性インピーダンスが75Ωとして、設計を行った。
図59は、厚さh=0.635mm、比誘電率ε
r=10.2の誘電体層を備える基板を用いて設計した反射型マイクロストリップ線路の幅分布w(z)を示す。また、
図60は、
図59に示す幅分布w(z)を有し、伝送線路の中心線を直線状とし、中心線に対して対称とした反射型マイクロストリップ線路の形状を示す。長さ1000kmという長距離のSMFの残留分散を補償するにもかかわらず、本実施例のEDCの線路長は約3.3cmと小型である。
図61および
図62は、本実施例の反射型マイクロストリップ線路が無反射終端されたときの反射波の振幅特性および群遅延特性を示す。これらの図中の“designed”は設計に用いた値を示し、“realized”は得られた結果を示す。図示のように、“designed”と“realized”とにはほとんど差異がないことが分かる。また、
図62に示されるEDCの群遅延スロープは約−11ps/GHzであり、光ファイバ伝送路の残留分散を正確に補償するために必要な特性が得られている。
なお、
図62の遅延特性は従来技術の透過型のマイクロストリップ線路などの分散特性を利用する透過型デバイス(非特許文献5〜7)で実現できない。透過型のマイクロストリップ線路は、通常周波数が高くなるにつれ、群速度が遅く(群遅延量が大きく)なる特性をもち、本件のように周波数が高くなるにつれ、群速度が速く(群遅延量が小さく)なる特性が得られない。また、空洞導波管は周波数が高くなると、群速度が速くなるが、カットオフ周波数があり、低周波信号が通過できない。本件の反射型マイクロストリップ線路は、周波数が高くなるにつれ、群速度が速く(群遅延量が小さく)なり、群遅延スロープ(ps/GHz)が負である遅延特性が得られる上、低周波信号が0GHz付近まで通過可能であり、分散補償が可能な帯域幅をより広くすることができる。
図63、
図64および
図65は、それぞれ初期入力のアイパターン、EDCを省略した出力のアイパターン、EDCを行った出力のアイパターンを示す。EDCはOSSB変調器の前で行うプリ分散補償でも、フォトダイオード(PD)で検波した後に行うポスト分散補償でも有効である。
図65に示すように、EDCを行うことによりきれいなアイパターンを示し、長さ1000kmのSMFを伝搬した後でもSMFの残留分散を正確に補償することができた。