【実施例】
【0008】
以下に図面を用いて本発明に係るパネルの連結構造について詳細に説明する。
図1〜
図8は本発明に係るパネルの連結構造の施工状態を示す説明図、
図9(a)〜(c)は本発明に係るパネルの連結構造に使用するパネルAを示す説明図である。図中、αは下地、βはパネルAを下地αに固定するためのスクリュービスなどの固定具、γはパネルA同士を連結するスクリュービスなどの連結具を示している。なお、
図1〜
図8は
図12の点線で囲んだ部分を拡大して示した部分拡大斜視図と部分拡大断面図である。
【0009】
下地αは梁または母屋よりなる屋根下地材となるもので、図では角パイプを使用した下地αを示してある。勿論、C形鋼などを使用しても良いものであり、耐火性の向上のために繊維混入珪酸カルシウム板などで周りを囲って形成した下地αとすることも可能である。
【0010】
パネルAの全体形状の一例としては
図9(a)〜(c)に示すように、長尺で金属製の薄板からなる表面材1と裏面材2間に芯材3をサンドイッチし、図では幅方向の下端に形成した雄型連結部4、上端に形成した雌型連結部5とから形成したものである。なお、Pはパッキング材で、防水性、気密性を向上させるが、特に耐火性を向上させる場合にはグラファイト混入ロックウールなど耐火性を有するパッキング材Pを使用する。
【0011】
雄型連結部4は、表面材1の下端を上方に折り返した上縁6aと、上縁6aの先端を内方に屈曲した最奥片6bと、最奥片6bの先端を下方に垂下した差込片6cとから形成した係合溝6と、裏面材2の下端を外方に屈曲し先端を下方に垂下した雄下縁2aと差込片6cと芯材3とから形成した係合片7とから形成したものである。
【0012】
雌型連結部5は、表面材1の上端を内方に屈曲し先端を上方に突出した固定片8aと、固定片8aの先端を折り返し下方に垂下した上縁8bと、固定片8aに形成した溝空間8cとから形成した嵌合片8、裏面材2の上端を外方に屈曲し先端を下方に垂下した雌下縁2bと上縁8bとから形成した嵌合溝9とから形成したものである。
【0013】
勿論、雄型連結部4、雌型連結部5は上記形状に限定されるものでは無く、各種形状に成形された雄雌嵌合構造を形成するものである。なお、10は化粧面である。
【0014】
11は連結下地であり、
図10(a)、(b)に示すように略水平面状の接着片11aと、接着片11aの先端を下方に垂下した支持片11bと、支持片11bの先端を接着片11a側に水平に突出した引っ掛け片11cと、接着片11aと支持片11bと引っ掛け片11cとから形成した引っ掛け溝11dと、接着片11aを凹状に窪ませて形成した打設部11eとから形成したものである。
【0015】
連結下地11は、
図4、
図7(a)に示すように、パネルA同士の雄型連結部4と雌型連結部5が下地α上で連結された部分である嵌合部Gに形成されるものである。勿論、連結下地11は部分的に形成することも出来る。
【0016】
接着片11aは、後記する防水シート13と接着するための固定下地として機能する部分であり、少なくとも接着片11aの表面に合成樹脂製材料よりなる層dを接着・塗布などにより形成されたものである。
【0017】
連結下地11がパネルA上に固定されることにより、後記する防水シート13を熱融着または溶剤溶着により接着片11a上に形成された合成樹脂製材料よりなる層dと接着し、パネルA上に、防水シート13が固定されるものである。これは、熱あるいは溶剤によって合成樹脂製材料よりなる層dの合成樹脂を溶解させて防水シート13と接合させる工法である。
【0018】
支持片11bは、連結下地11の固定位置を明確化し、後記する連結具γの施工位置を示す打設部11eの位置がずれないように形成したものである。
【0019】
引っ掛け片11cと引っ掛け溝11dは、連結下地11をパネルA上に施工する際の仮止めと、施工時のズレ防止のために形成したものである。
【0020】
打設部11eは連結具γの打設位置を明確にするために、打設位置が目視出来ような凹条・凹凸条(成形)、点・ライン(印刷)、一定ピッチのパンチ痕(打痕)などを形成することにより可視化し、打設位置を明確にしたものである。これにより、連結具γの打設位置がずれることがなく、
図1、
図8(a)に示すように確実に連結下地11とパネルA同士を連結出来るものである。
【0021】
連結下地11の素材としては、金属製板材(例えば鉄、アルミニウム、銅、ステンレス、チタン、アルミ・亜鉛合金メッキ鋼板、ガルバリウム鋼板、ホーロー鋼板、クラッド鋼板、サンドイッチ鋼板等)に合成樹脂材料よりなる層dを形成したもの、または、ラミネート鋼板(塩ビ樹脂系、ポリオレフィン系、ポリエステル系、フッ素樹脂系などの既に合成樹脂材料よりなる層dが形成された鋼板)等の一種をロール成形、プレス成形などによって各種形状に成形したものである。
【0022】
なお、連結下地11の素材としてラミネート鋼板である塩ビ鋼板などを使用した場合には、表面の塩化ビニル樹脂の素材が合成樹脂材料よりなる層dとして機能するため、ラミネート鋼板を使用することは有効である。
【0023】
また、少なくとも接着片11aに形成される合成樹脂材料よりなる層dとしては、軟質高分子材料の、例えば軟質ポリ塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーなどの軟質熱可塑性合成樹脂シート(軟質塩化ビニル系シート、熱可塑性ポリオレフィン系シート)により形成したものである。なお、熱融着圧延などによる接着、あるいは溶剤溶着などによる接着を行う場合には、軟質ポリ塩化ビニル樹脂からなるものを使用するのが好ましい。
【0024】
表面材1と裏面材2は金属製板材a、bよりなり、例えば鉄、アルミニウム、銅、ステンレス、チタン、アルミ・亜鉛合金メッキ鋼板、ガルバリウム鋼板、ホーロー鋼板、クラッド鋼板、ラミネート鋼板(塩ビ鋼板など)、サンドイッチ鋼板(制振鋼板など)の一種をロール成形、プレス成形、押出成形などによって各種形状に成形したものである。
【0025】
芯材3は断熱材で例えば合成樹脂発泡体cであれば、ポリウレタンフォーム、ポリイソシアヌレートフォーム、フェノールフォーム、塩化ビニルフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリスチレンフォーム、ユリアフォームなどの合成樹脂発泡体からなるものであり、特に耐火性を必要とする場合にはレゾール型フェノールの原液と、硬化剤、発泡剤を混合し、表面材1、もしくは裏面材2の裏面側に吐出させ、加熱して反応・発泡・硬化させて形成するものである。また、芯材3中には各種難燃材として軽量骨材(パーライト粒、ガラスビーズ、石膏スラグ、タルク石、シラスバルーン、水酸化アルミニウムなど)、繊維状物(グラスウール、ロックウール、カーボン繊維、グラファイトなど)を混在させ、耐火性、防火性を向上させることも出来る。
【0026】
そこで、本発明に係るパネルの連結構造の施工順序の一実施例について詳細に説明する。なお、
図9(a)〜(c)に示すようなパネルA、
図10(a)、(b)に示すような連結下地11を
図1〜
図4のように水平な下地α上に連結固定し、
図11(a)、(b)や
図12に示す屋上Kの屋根下地として形成するものとする。なお、
図11(a)はパネルAを下地αに固定する固定具βを施工した状態を示す平面図、
図11(b)はパネルA同士を固定する連結具γを施工した状態を示す平面図、
図12は固定具βと連結具γを施工した状態を示す平面図である。
【0027】
また、当該パネルAは、働き幅が600〜1000mm位で、長さが900〜3600mm位の長尺状のものであり、下地αの間隔はそのパネルAの長さや幅に合わせ適宜決定され、長手方向の木口端面に隣接するパネルA間の目地部Mは下地α上に形成されるものである。
【0028】
パネルAの連結は、
図2(a)、(b)、
図5(a)に示すように、雄型連結部4の係合溝6に雌型連結部5の嵌合片8を連結し、雄型連結部4の係合片7を雌型連結部5の嵌合溝9に連結することにより、順次パネルAを連結するものである。
【0029】
また、パネルAの下地αへの固定は
図1、
図2(a)、(b)、
図3(a)、(b)、
図6(a)、(b)に示すように形成するものであり、スクリュービスなどの固定具βを
図9(a)〜(c)に示すようなパネルAの化粧面10の下端部10aから上端部10bの幅Wから下端部10aから最奥片6bまでの距離W2を差し引いたW1の範囲で、かつ目地部MにおけるパネルAの少なくとも両端部分を下地αに固定するものである。
【0030】
なお、
図11(a)においては、目地部M部分のパネルAの化粧面10両端部で、かつ化粧面10内の幅W1内において、上下端部および中央部分の3カ所を固定具βにより下地αに固定しているものである。勿論、固定具βの打設本数は任意であるが固定ピッチは強度の関係上例えば450mm以下が好ましい。
【0031】
目地部M部分におけるパネルAの施工は、
図3(a)、(b)、
図5(b)、
図6(b)、
図7(b)に示すように、パネルAの端部間にウレタンフォームよりなる目地パッキング材P1を形成し、目地部Mの防水性、気密性を向上するものである。勿論、目地パッキング材P1としては、定型で弾性のあるパッキング材として発泡ゴム、ポリ塩化ビニル系、クロロプレン系、クロロスルホン化ポリエチレン系、エチレンプロピレン系、アスファルト含浸ポリウレタン系、EPM、EPDMなども使用でき、目地部Mの耐火性を向上する場合には耐火性を有するロックウールフェルト、セラミックウール、グラスウール、石綿、石膏ボード、各種無機発泡体、超高密度フェノールフォーム、グラファイト混入ロックウールなどを使用するものである。
【0032】
連結下地11は、
図4、
図8(a)に示すように、パネルA同士の横目地部Y内に引っ掛け片11cを挿入するようにして固定するものである。勿論、固定には接着材などの固定材を介して固定することも出来る。連結下地11の施工が完了したら、連結具γにより連結下地11とパネルA同士を固定するものである。
【0033】
連結具γは、連結されたパネルAの嵌合部Gを更に強固に連結固定するための取付用ビスであり、主にパネルA同士の嵌合部G部分を連結するためのものであり、嵌合部G間に隙間が形成されるのを防止し、気密性能・断熱性能・防水性能を向上させるものであり、
図9(b)に示すようにパネルAの厚さHとした場合に、
図8(a)に示すように連結具γの高さをH1とすると、H>H1の関係とし、
図9(c)に示すようにパネルAの化粧面10から裏面材2の上縁8bの厚さをH2とすると、H1>H2の関係とするものである。これは、連結具γを打設した際に
図8(a)、(b)に示すように連結具γが隣接する2枚のパネルAを突き抜けないような寸法関係である。
【0034】
連結具γによるパネルA同士の連結は、
図1、
図8(a)、(b)、
図11(b)、
図12に示すように、目地部Mと横目地部Yの交差する部分においては、下地αに達しないようにパネルA同士を固定するものであり、裏面材2を突き抜けないように形成して、気密性、断熱性、防水性の低下を防止し、長期に亘りパネルAの劣化を防止するものである。また、パネルAの表面材1、裏面材2と、隣り合うパネルAの表面材1、裏面材2を同時に連結することで、1本の連結具γによりパネルA同士の4枚の金属製板材aと金属製板材b同士が同時に連結固定されることになる。勿論、梁などの下地αが存在しない部分においても、連結具γは相隣るパネルA同士を突き抜けないように形成するものである。
【0035】
さらに詳説すると、
図8(a)に示すように連結具γは連結下地11の接着片11a(打設部11e)、パネルA2の化粧面10、パネルA2の上縁6a、パネルA1の固定片8a、パネルA1の上縁8b、パネルA2の差込片6c、パネルA2の雄下縁2a、パネルA1の雌下縁2bの順に打ち込まれ、最終的に連結具γの先端が、パネルA2における雌下縁2b裏面の芯材3内に存在する状態となるものである。
【0036】
なお、連結具γの打設位置である打設部11eの打設位置eは、
図9(b)に示すように下端部10aから打設部11eまでの距離W3は下端部10aから雄下縁2aが裏面に存在する位置までの距離とすると共に、
図6(a)に示すように裏面材2の最上端から係合片7の先端までのW4とすると、W4の範囲の略中心部とする。勿論、このW3の幅は
図10(a)に示す連結下地11の打設部11eの位置となる。このように形成することにより、隣接するパネルA間の嵌合部Gの隙間が少なくなり、気密性能・断熱性能・防水性能が向上し、屋根全面が1枚のパネルAのようになり強度を向上し、下地αの間隔を従来に比して広く取れるものである。
【0037】
図11(b)に示すように連結具γのパネルAの長手方向の打設ピッチW5は100mm〜450mm(強度の関係上300mm以下が好ましい)であるが、パネルAの長さ(下地αの形成ピッチ)X、パネルAの働き幅Z、パネルAの厚さH、断熱パネルAの断面性能である断面二次モーメントと断面係数を勘案して決められるものである。勿論、パネルAを施工した屋上Kを歩行したり、あるいは工事用の機械を走行させたり、もしくは屋上Kへのエアコンなどの空調機や水タンクの設置作業、およびこれらのメンテナンス作業時に、パネルAが破損しない強度を有するように設定されるものである。
【0038】
さらに、パネルAを施工する下地αを傾斜して形成することにより、フラット屋根だけでない通常の屋根、あるいは屋根下地としても使用することが出来るものである。勿論、屋根としてそのまま使用する場合には、目地部M、横目地部Yには耐候性、耐紫外線、防水性のあるテープなどを貼着することにより防水性能付加した構造を形成するものである。
【0039】
また、
図8(a)に示すパネルA間の嵌合部G内に形成される溝空間8cは、室内側と屋内側に圧力差が生じた場合に懸念されるパネルAの嵌合部G内の防水層にかかる圧力を、パネルAの横目地Y方向の長手方向に分散し、嵌合部G内に確実な防水層を形成するものである。
【0040】
このように形成することにより、(1)隣接するパネル同士が順次一体化されて屋根面全体が1枚のパネルのようになって強度が向上し、下地となる梁の間隔を従来に比して広く取れてコストが低く、施工性が高く、かつ工期が短縮出来る。(2)パネルの連結後は重量物を載置してもたわみが少なくなり、例えば工事用の機械を走行させてもパネル自体の割れ、折れなどの破損がほとんど無くなる。(3)隣接するパネルの雄雌嵌合部間の隙間が少なくなり、気密性能・断熱性能・防水性能が向上する。(4)隣接するパネルをつなぐ連結具はパネルの裏面まで突き抜けないので、連結具による気密性能・断熱性能・防水性能の低下が無く、長期に亘りパネルの劣化を防止出来る。(5)パネルを施工するだけで防水性能が確保出来るので天候に左右されずに屋内の作業をすぐに開始できて全体の工期を短縮出来る。(6)本連結構造により、壁用に使用される一般的なパネルでもフラット屋根に使用出来る。などの特徴、効果がある。
【0041】
以上説明したのは本発明に係るパネルの連結構造の一実施例にすぎず、
図13(a)、(b)〜
図20(a)、(b)に示すように形成することも出来る。
【0042】
すなわち、
図13(a)、(b)は、フラットに施工したパネルAの目地部M、横目地部Yにアルミニウム箔を用いた目地テープ12を貼着し、その上面のパネルAの全面を防水シート13により被覆したものであり、隣り合うパネルAの端部間で断熱性、防水性、気密性を向上するものである。なお、傾斜した下地α上にパネルAを施工し、その目地部M、横目地部Yを目地テープ12で施工した場合にはそのまま屋根として使用することも可能である。
【0043】
防水シート13はアスファルト、改質アスファルト、合成ゴムなど、あるいは防水性を有する軟質高分子材料の、例えば軟質ポリ塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーなどの軟質熱可塑性合成樹脂により形成したものである。なお、熱融着圧延などにより接着を行う場合には、軟質ポリ塩化ビニル樹脂からなるものを使用するものである。なお、本発明に係るパネルの連結構造に使用するパネルAにおいては、耐風圧強度の観点からパネルA全面に接着出来るアスファルト防水工法がより望ましい。
【0044】
図14(a)、(b)はパネルAの長手方向木口端面に端面片14を形成し目地部Mの施工性、防水性、気密性を向上したパネルAである。
【0045】
図15(a)、(b)はパネルAのその他の連結構造を示す断面図、16(a)、(b)は
図15(a)、(b)のパネルAの施工状態を示す断面図である。
【0046】
図17(a)〜(d)は連結下地11のその他の実施例を示す断面図である。
【0047】
図18(a)、(b)は
図17(b)、(c)に示すような、接着片11aを両端に形成した連結下地11を形成することにより、前記目地テープ12を省略出来るようにしたパネルの連結構造を示す断面図である。この構造によれば、隣接するパネルAを強固に連結出来ると共に、横目地部Yの嵌合部G部分を覆うことが出来るために、防水性、止水性が向上する。
【0048】
図19はパネルAの目地部MのパネルAと下地α間に長尺状で金属製の敷目板15を形成し、目地部Mの防水性、気密性、防火性、耐火性を向上したパネルの連結構造を示す断面図である。なお、敷目板15の材質は金属製にはこだわらず、その目的に合わせて適宜決定出来るものである。
【0049】
図20(a)、(b)は連結下地11を断面L字状に形成したものであり、特に(b)図は接着片11aを雌型連結部5側に形成し、固定具βにより連結下地11を固定したその他のパネルの連結構造を示す断面図である。