(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記排出装置は、前記ノズルと前記第2のタンクのインクの液面との間の高低差を大きくすることで、前記ノズルの圧力を低下させることを特徴とする請求項2に記載の装置。
前記排出装置は、前記第2のタンクを移動させることで、前記ノズルと前記第2のタンクのインクの液面との間の高低差を大きくすることを特徴とする請求項3に記載の装置。
前記排出装置は、前記第2のタンクに収容されたインクを排出することで前記第2のタンクに収容されたインクの液面を低下させるポンプを有し、前記ポンプによって、前記ノズルと前記第2のタンクのインクの液面との間の高低差を大きくすることを特徴とする請求項3に記載の装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、第1の実施の形態について、
図1から
図16を参照して説明する。
図1は、インクジェット式印刷装置(以下、「印刷装置」と称する)10の構成を概略的に示すブロック図である。印刷装置10は、画像形成装置の一例である。
【0010】
印刷装置10は、インクジェットヘッド11と、T字分岐13と、上流側開閉弁15と、圧力調整タンク17と、第1のフィルタ19と、第1のディスポフィルタ21と、上流側インクタンク23と、上流側送気ポンプ25と、第2のディスポフィルタ27と、下流側開閉弁29と、下流側インクタンク31と、第3のディスポフィルタ33と、下流側吸引ポンプ35と、上流側開閉バルブ37と、下流側開閉バルブ39と、タンク移動装置41と、制御部43とを備えている。
【0011】
インクジェットヘッド11は、ヘッドの一例である。圧力調整タンク17は、第1のタンクの一例である。上流側送気ポンプ25は、供給装置の一例である。下流側インクタンク31は、第2のタンクの一例である。下流側吸引ポンプ35は、ポンプの一例である。タンク移動装置41は、排出装置の一例である。
【0012】
図2は、インクジェットヘッド11を分解して示す斜視図である。
図3は、
図2のF3−F3線に沿って、インクジェットヘッド11を示す断面図である。
図2に示すように、インクジェットヘッド11は、いわゆるシェアモード型のインクジェットヘッドである。インクジェットヘッド11は、ヘッド本体50と、枠部材51と、蓋部材52と、ノズルプレート53と、回路基板54とを備える。
【0013】
ヘッド本体50は、基材61と、圧電部材62とを有している。基材61は、矩形の板状に形成される。基材61に、切欠部64と、複数の溝65とが設けられる。複数の溝65は、互いに平行に並んで設けられる。複数の溝65は、基材61の上面61aと、切欠部64にそれぞれ開口する。
【0014】
圧電部材62は、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)製の2枚の圧電板を貼り合わせて形成される。前記2枚の
圧電板の分極方向は、互いに反対向きである。圧電部材62は、印加される電圧によって変形する。圧電部材62は、基材61の切欠部64に取り付けられる。
【0015】
圧電部材62に、複数の圧力室67が設けられる。複数の圧力室67は、それぞれ溝状に形成され、互いに平行に並んで設けられる。複数の圧力室67は、基材61の複数の溝65に連続する。圧力室67は、圧電部材62の上面62aと、前面62bとに開口する。
【0016】
複数の圧力室67の間に、柱部68がそれぞれ形成される。複数の柱部68は、複数の圧力室67の間を仕切るとともに、各圧力室67の側面を形成する。
【0017】
図3に示すように、圧電部材62および基材61に、複数の電極71がそれぞれ設けられる。
図3において、電極71は、太線で示される。複数の電極71は、複数の圧力室67の側面および底面をそれぞれ覆う。複数の電極71は、圧力室67から溝65まで連続する。電極71は、例えばニッケル薄膜によって形成される。電極71は、これに限らず、例えば金や銅で形成されていても良い。柱部68の両側面に電極71が形成されることで、柱部68は駆動素子として用いられる。
【0018】
図2に示すように、基材61の上面61aに複数の配線パターン73が設けられる。複数の配線パターン73は、例えば基材61の上面61aに形成されたニッケル薄膜を、レーザーパターニングすることによって形成される。複数の配線パターン73は、基材61の上面61aの後端からそれぞれ延びる。配線パターン73の端部は、電極71にそれぞれ接続される。
【0019】
回路基板54は、配線パターン73の他方の端部に実装される。回路基板
54は、例えば、複数の導体パターンが形成された樹脂製のフィルムと、当該複数の導体パターンに接続されたICと、を有するフィルムキャリアパッケージである。前記複数の導体パターンは、配線パターン73の他方の端部に電気的に接続される。
【0020】
枠部材51は、接着剤によってヘッド本体50に取り付けられる。蓋部材52は、枠部材51に取り付けられる。蓋部材52に、インク供給口81が設けられる。組み合わされた枠部材51および蓋部材52は、基材61の上面61aの側から複数の圧力室67を塞ぐ。
【0021】
図3に示すように、枠部材51および蓋部材52の内側に、インクが供給されるインク室82が設けられる。インク室は、流路の一例である。蓋部材52は、枠部材51に取り付けられることでインク室82を塞ぐ。インク供給口81は、インク室82に開口する。インク室82は、複数の圧力室67に通じる。インク供給口81からインク室82に供給されたインクは、複数の圧力室67にそれぞれ供給される。
【0022】
ノズルプレート53は、ポリイミド製の矩形のフィルムによって形成される。なお、ノズルプレート53はポリイミドに限らず、ステンレスのような金属や、レーザによる微細加工が可能な他の材料によって形成されても良い。ノズルプレート53は、ヘッド本体50と枠部材51とに取り付けられる。ノズルプレート53は、圧電部材62の前面62bの側から、複数の圧力室67を塞ぐ。
【0023】
ノズルプレート53に、複数のノズル85が設けられる。ノズル85は、例えばレーザ加工によって形成される。
図3に示すように、複数のノズル85は、複数の圧力室67にそれぞれ開口する。
【0024】
このようなインクジェットヘッド11において、回路基板54は、制御部43から入力される信号に基づいて、配線パターン73を介して電極71に電圧を印加する。電圧を印加された柱部68は、シェアモード変形することにより、圧力室
67に充填されたインクを減圧および加圧する。加圧されたインクは、対応するノズル85から吐出される。
【0025】
インクジェットヘッド11は、ヘッド支持機構により支持され、印刷装置10の内部に搭載される。
図1に示すように、インクジェットヘッド11のインク供給口81に、管路部材101が接続される。管路部材101の他方の端部はT字分岐13に接続される。
【0026】
インクジェットヘッド11の上流側に、T字分岐13および管路部材102を介して、圧力調整タンク17が接続される。言い換えると、圧力調整タンク17は、インクジェットヘッド11のインク室82に接続される。
【0027】
上流側開閉弁15が、T字分岐13と圧力調整タンク17との間の管路部材102に配置される。上流側開閉弁15は、圧力調整タンク17からインクジェットヘッド11へのインクの供給を許容する開放位置と、圧力調整タンク17とインクジェットヘッド11との間でインクの流動を遮断する遮断位置とのいずれか一方に選択的に位置づけられる。
【0028】
圧力調整タンク17に、上流側インクタンク23から供給されるインクが一時的に収容される。管路部材102の端部は、圧力調整タンク17の内部で、圧力調整タンク17の底面から僅かに離されてインクに浸される。圧力調整タンク17に、第1の水頭差センサ104が設けられる。第1の水頭差センサ104は、圧力調整タンク17に収容されたインクと空気との気液界面(インク面)の位置に応じて出力が変化する。第1の水頭差センサ104は、例えばフロ−ト式のレベルセンサである。第1の水頭差センサ104は、フォトセンサのような、他のセンサであっても良い。
【0029】
圧力調整タンク17に、管路部材106が接続される。管路部材106の一方の端部は、圧力調整タンク17の内部で、圧力調整タンク17の底面から僅かに離されてインクに浸される。管路部材106の他方の端部は、第1のフィルタ19に接続される。
【0030】
第1のフィルタ19に、管路部材107が接続される。第1のフィルタ19は、上流側の管路部材107から下流側の管路部材106へと流れるインク中に含まれる異物を除去する。これにより圧力調整タンク17に、異物が取り除かれたインクが供給される。
【0031】
第1のフィルタ19は、管路部材107を介して上流側インクタンク23に接続される。管路部材107の端部は、上流側インクタンク23の内部において、上流側インクタンク23の底面から僅かに離されてインクに浸される。
【0032】
圧力調整タンク17に、管路部材109が接続される。管路部材109の一方の端部は、圧力調整タンク17において、インクと空気との気液界面(インク面)から僅かに離される。管路部材109の他方の端部に、第1のディスポフィルタ21が接続される。第1のディスポフィルタ21は、管路部材109を介して圧力調整タンク17に流入する空気中に含まれる異物を除去する。管路部材109に、上流側開閉バルブ37が設けられる。
【0033】
上流側インクタンク23に、管路部材111を介して上流側送気ポンプ25が接続される。上流側インクタンク23は、インクジェットヘッド11に供給するインクを収容する。上流側インクタンク23は、新たなインクの補充が可能である。
【0034】
管路部材111の一方の端部は、上流側インクタンク23において、インクと空気との気液界面(インク面)から僅かに離される。管路部材111の他方の端部に、第2のディスポフィルタ27が接続される。第2のディスポフィルタ27は、管路部材111を介して上流側インクタンク23へ流入する空気に含まれる異物を除去する。これにより異物が除去された空気が上流側インクタンク23に供給される。
【0035】
インクジェットヘッド11の下流側には、T字分岐13および管路部材113を介して、インクが収容された下流側インクタンク31が接続されている。言い換えると、下流側インクタンク31は、インクジェットヘッド11のインク室82に接続される。管路部材113の端部は、下流側インクタンク31の内部において、下流側インクタンク31の底面から僅かに離されてインクに浸される。
【0036】
管路部材113に、下流側開閉弁29が設けられている。下流側開閉弁29は、インクジェットヘッド11から下流側インクタンク31への流動を許容する開放位置と、インクジェットヘッド11と下流側インクタンク31との間でインクの流動を遮断する遮断位置とのいずれか一方に選択的に位置づけられる。
【0037】
下流側インクタンク31に、管路部材115が接続される。管路部材115の一方の端部は、下流側インクタンク31において、インクと空気との気液界面(インク面)から僅かに離される。管路部材115の他方の端部には、第3のディスポフィルタ33が接続される。第3のディスポフィルタ33は、管路部材115を介して下流側インクタンク31に流入する空気に含まれる異物を除去する。管路部材115に、下流側開閉バルブ39が設けられる。
【0038】
下流側インクタンク31は、管路部材117を介して下流側吸引ポンプ35に接続される。管路部材117の端部は、下流側インクタンク31の内部で、下流側インクタンク31の底面から僅かに離されてインクに浸される。
【0039】
下流側インクタンク31に、第2の水頭差センサ119が設けられる。第2の水頭差センサ119は、下流側インクタンク31に収容されたインクと空気との気液界面(インク面)の位置に応じて出力が変化する。第2の水頭差センサ119は、例えばフロ−ト式のレベルセンサである。第2の水頭差センサ119は、フォトセンサのような、他のセンサであっても良い。
【0040】
タンク移動装置41は、下流側インクタンク31を例えば鉛直方向に移動させる。タンク移動装置41は、歯車、ピストン、およびその他の機構のような種々の装置によって、下流側インクタンク31を移動させる。
【0041】
制御部43は、IC、メモリ、回路基板のような種々の要素によって機能し、印刷装置10の種々の要素を制御する。例えば、制御部43はインクジェットヘッド11にユーザの操作に基づく印字指令を発する。制御部43は、上流側開閉弁15、下流側開閉弁29、上流側開閉バルブ37、および下流側開閉バルブ39を、それぞれ開閉させる。制御部43は、上流側送気ポンプ25および下流側吸引ポンプ35を作動または停止させる。制御部43は、タンク移動装置41によって下流側インクタンク31を移動させる。
【0042】
以下に、
図1を参照してインクジェットヘッド11にインクを充填する方法について説明する。まず、上流側開閉バルブ37を遮断状態にするとともに、上流側開閉弁15および下流側開閉弁29を開放状態にする。
【0043】
次に、上流側送気ポンプ25を動作させ、上流側インクタンク23に空気を送り込む。送り込まれた空気によって上流側インクタンク23の内圧が上昇する。上流側インクタンク23の内圧がある程度まで上昇すると、上流側インクタンク23の内圧によって、上流側インクタンク23に収容されたインクが、
図1の矢印で示すように管路部材107に押し出される。
【0044】
上流側インクタンク23から押し出されたインクは、管路部材107を介して第1のフィルタ19へ送液される。第1のフィルタ19に送液されたインクは、第1のフィルタ19内を通る際にインク中に含まれる異物が除去され、圧力調整タンク17に送液される。
【0045】
圧力調整タンク17にある程度インクが充填されると、圧力調整タンク17の内部の空気が圧縮される。圧力調整タンク17の内部の圧力がある程度の圧力に達すると、圧力調整タンク17内の内圧によって圧力調整タンク17のインクが、
図1の矢印で示すように管路部材102に押し出される。
【0046】
圧力調整タンク17から押し出されたインクは、管路部材102およびT字分岐13を通って、インクジェットヘッド11のインク供給口81に送液される。当該インクは、インク供給口81からインク室82を通って、複数の圧力室67にそれぞれ充填される。圧力室67に充填されたインクは、ノズル85まで到達する。
【0047】
以上の説明を言い換えると、上流側送気ポンプ25は、インク室82を通じて圧力調整タンク17のインクをインクジェットヘッド11の圧力室67に供給する。他の表現をすれば、圧力調整タンク17、上流側インクタンク23、および上流側送気ポンプ25は、圧力室67にインクを供給する。圧力調整タンク17、上流側インクタンク23、および上流側送気ポンプ25は、第1の装置として機能する要素の一例である。
【0048】
圧力室67にインクが充填されると、圧力調整タンク17から押し出されたインクは、管路部材113および下流側開閉弁29を通って下流側インクタンク31に供給される。
【0049】
インクジェットヘッド11がインクを吐出せずに待機する状態において、ノズル85の適正圧力Pnは、例えば−1[kPa]になるように水頭差で設定される。すなわち、インクジェットヘッド11のノズル85と、圧力調整タンク17のインクの気液界面との間の高低差h1が、h=−1[kPa]/ρgとなるように設定される。ρはインクの密度であり、gは重力加速度である。なお、高低差h1は、圧力調整タンク17の第1の水頭差センサ104によって検知される。
【0050】
インクジェットヘッド11のノズル85と、下流側インクタンク31のインクの気液界面との間の高低差h2は、高低差h1と等しくなるように設定される。なお、高低差h2は、高低差h1より大きくても良い。言い換えると、下流側インクタンク31は、圧力調整タンク17と同じ高さか、または圧力調整タンク17よりも低い位置に配置される。
【0051】
次に、
図4ないし
図15を参照して、印刷装置10のメンテナンス方法の一例について説明する。例えば印刷装置10が長期間使用されないときや、印字待機状態が長いときに、制御部43は印刷装置10のメンテナンスを行う。
【0052】
図4は、印刷装置10のメンテナンス方法の一例を示すフローチャートである。
図5は、メニスカス後退動作時の印刷装置10を概略的に示すブロック図である。
図4に示すように、印刷装置10が長期間使用されないときや印字の休止時間が長いとき(S1)、ノズル85の適正圧力Pnを、負圧発生手段によって制御する。ノズル85の圧力を通常の負圧値(−1[kPa])よりも大きい負圧値にすることで、ノズル85に形成されたインクのメニスカスを後退させる。
【0053】
詳しく説明すると、まず、上流側開閉弁15を、圧力調整タンク17とインクジェットヘッド11との間でインクの流動を遮断する遮断位置にする(S2)。
【0054】
次に、タンク移動装置41によって、下流側インクタンク31を下方に移動させる(S3)。
図5に示すように、下流側インクタンク31が下方に移動すると、インクジェットヘッド11のノズル85と下流側インクタンク31のインクの気液界面との間の高低差h2が拡大する。
【0055】
高低差h2が、例えばノズル85と圧力調整タンク17のインクの気液界面との間の高低差h1の4倍に達したとき(S4)、タンク移動装置41を停止させる(S5)。高低差h2が高低差h1の4倍になると、ノズル85の適正圧力Pnは−4[kPa]となる。すなわち、下流側インクタンク31を移動させると、ノズル85の負圧が待機時の適正圧力Pnである−1[kPa]から増大する。高低差h2は、第2の水頭差センサ119によって検知される。
【0056】
負圧が増大することにより、インクジェットヘッド11のインクが
図5の矢印で示すように、管路部材101、T字分岐13、管路部材113を通り、下流側インクタンク31に向かって流動する。言い換えると、インクジェットヘッド11の圧力室67に充填されたインクが、下流側インクタンク31に吸引される。
【0057】
以上のように、タンク移動装置41は、下流側インクタンク31を移動させることで、ノズル85と下流側インクタンク31のインクの液面との間の高低差h2を大きくする。高低差h2が大きくなることで、ノズル85の圧力が低下し、インク室82を通じてインクジェットヘッド11の圧力室67のインクを下流側インクタンク31に輸送する。言い換えると、下流側インクタンク31およびタンク移動装置41は、圧力室67に充填されたインクを吸引する。下流側インクタンク31およびタンク移動装置41は、第2の装置として機能する要素の一例である。
【0058】
なお、タンク移動装置41が停止する(S5)高低差h2は、h1の4倍に限らない。高低差h2は、インクジェットヘッド11のインクが下流側インクタンク31に吸引され得る大きさの高低差であれば良い。
【0059】
図6は、圧力室67およびノズル85を示すインクジェットヘッド11の断面図である。
図7は、ノズル85からメニスカスMが後退する状態を示すインクジェットヘッド11の断面図である。
図8は、
図7に示す状態からメニスカスMがさらに後退する状態を示すインクジェットヘッド11の断面図である。
図9は、
図8に示す状態からメニスカスMがさらに後退する状態を示すインクジェットヘッド11の断面図である。
図10は、
図9に示す状態からメニスカスMがさらに後退する状態を示すインクジェットヘッド11の断面図である。
【0060】
図6に示すように、圧力室67に充填されたインク中に、気泡Bや増粘固化した固化インクSLが含まれる。気泡Bおよび固化インクSLがノズル85に存在すると、インクジェットヘッド11の吐出不良の原因となり得る。
【0061】
図6ないし
図10に示すように、圧力室67に充填されたインクが吸引されると、圧力室67に充填されたインクの液面であるメニスカスMが、ノズル85から圧力室67の内部に移動する。メニスカスMが移動することで、ノズル85に存在する気泡Bや固化インクSLがインクとともに流動する。気泡Bおよび固化インクSLは、インクの流動によってノズル85から下流側インクタンク31へ送液される。
【0062】
時間の経過とともに、圧力室67に充填されたインクが下流側インクタンク31に排出され、圧力室67が空になる。言い換えると、下流側インクタンク31およびタンク移動装置41によって、圧力室67からインクが排出される。なお、圧力室67にインクが残っていても良い。
【0063】
図4に示すように、制御部43は、下流側インクタンク31を移動させてから一定時間が経過した後(S6)、下流側インクタンク31のインクの気液界面(インク面)が所定の高さ上昇したか否かを判別する(S7)。当該一定時間は、例えば複数の圧力室67に充填された全てのインクが下流側インクタンク31に排出されるためにかかる時間である。当該所定の高さは、例えば複数の圧力室67に充填された全てのインクが下流側インクタンク31に送液されたときにインク面が上昇する高さである。言い換えると、制御部43は、圧力室67が空になったか否かを判別する。下流側インクタンク31のインクの気液界面の上昇量は、第2の水頭差センサ119によって検知される。
【0064】
下流側インクタンク31のインク面が所定の高さだけ上昇していない場合、制御部43は、タンク移動装置41によって下流側インクタンク31をさらに下方に移動させる(S8)。例えば、タンク移動装置41は、高低差h2が高低差h1の5倍になるように、タンク移動装置41を移動させる。
【0065】
高低差h2が高低差h1の5倍になると、ノズル85の適正圧力Pnは−5[kPa]となる。すなわち、ノズル85の負圧がさらに増大し、圧力室67に残るインクが排出される。
【0066】
下流側インクタンク31のインク面が所定の高さ上昇した場合(S7)、または高低差h2が高低差h1の5倍にされて一定時間が経過した場合(S9)、制御部43は、タンク移動装置41によって下流側インクタンク31を待機時の位置に戻す(S10)。言い換えると、高低差h2が高低差h1と等しくなるように、タンク移動装置41が下流側インクタンク31を移動させる。
【0067】
次に、上流側開閉弁15を開放位置に位置させ(S11)、インクジェットヘッド11の圧力室67にインクを充填する。上記の説明のように、上流側送気ポンプ25を作動させる(S12)ことで、上流側インクタンク23のインクを圧力調整タンク17に輸送し、圧力調整タンク17のインクをインクジェットヘッド11に輸送する。
【0068】
図11は、空の圧力室67およびノズル85を示すインクジェットヘッド11の断面図である。
図12は、圧力室67にインクが供給される状態を示すインクジェットヘッド11の断面図である。
図13は、
図12に示す状態からインクがさらに供給される状態を示すインクジェットヘッド11の断面図である。
図14は、インクが充填された状態を示すインクジェットヘッド11の断面図である。
図15は、パージ動作を行うインクジェットヘッド11の断面図である。
【0069】
インクジェットヘッド11にインクが輸送されると、当該インクが圧力室67に供給される。供給されたインクは、
図11ないし
図15に示すように圧力室67で流動し、圧力室67に充填される。すなわち、上流側送気ポンプ25、上流側インクタンク23、および圧力調整タンク17によって、圧力室67に、上流側インクタンク23に収容された新鮮なインクが充填される。
【0070】
図11に示すように、排出された固化インクSLよりも小さな固化インクSSが圧力室67に残ることがある。
図12および
図13に示すように、インクジェットヘッド11にインクが輸送されると、圧力室67にインクが充填され始める。その後、
図14に示すように圧力室67にインクが充填される。圧力室67にインクが充填される際に、固化インクSSはインクおよび当該インクのメニスカスMによって、ノズル85に向かって移動させられる。
【0071】
図4に示すように、圧力室67にインクが充填されることで高低差h1が−1[kPa]/ρgとなると(S13)、制御部43は上流側送気ポンプ25を停止させる(S14)。なお、上流側送気ポンプ25が動作を続けても良い。
【0072】
圧力室67にインクが充填された後、パージ動作を行う(S15)。すなわち、制御部43が、インクジェットヘッド11の回路基板54によって電極71に電圧を印加する。電極71に電圧が印加されると、
図15に二点鎖線で示すように、柱部68がシェアモード変形する。柱部68がシェアモード変形することにより、圧力室67に充填されたインクが加圧される。
【0073】
図15に二点鎖線で示すように、インクが加圧されると、当該インクのメニスカスMがノズル85からインクジェットヘッド11の外に出る。インクジェットヘッド11の外に出されたインクおよび当該インクのメニスカスMは、固化インクSSをノズル85からインクジェットヘッド11の外へ排出する。
【0074】
インクおよび該インクのメニスカスMがインクジェットヘッド11の外に出された後、柱部68のシェアモード変形が解除される。柱部68のシェアモード変形が解除されると、
図15に実線で示すように、インクおよび当該インクのメニスカスMがノズル85に戻る。言い換えると、パージ動作において、インクおよび当該インクのメニスカスMは、一時的にノズル85の外に出される。これにより印刷装置10のメンテナンスが終了し、圧力室67およびノズル85に存在した気泡Bおよび固化インクSL,SSが排出される。
【0075】
なお、パージ動作の代わりに、例えばノズル85からインクを吐出しても良い。柱部68がシェアモード変形することで、固化インクSSが含まれるインク滴がノズル85から吐出し、圧力室67およびノズル85から固化インクSSが排出される。
【0076】
パージ動作は、上記の方法に限らず、他の方法を採用しても良い。例えば、圧力調整タンク17を移動させることで高低差h1を小さくする。これにより、圧力室67に充填されたインクが加圧され、当該インクおよび当該インクのメニスカスMがノズル85の外に出される。
【0077】
なお、印刷装置10のメンテナンス方法は、上記の説明に限らない。
図16は、印刷装置10のメンテナンス方法の他の例を示すフローチャートである。
図16に示すように、タンク移動装置41で下流側インクタンク31を移動させる代わりに、下流側吸引ポンプ35を駆動させることで(S23)下流側インクタンク31のインクが排出される。インクが排出されることで、下流側インクタンク31の気液界面が下方に移動する。
【0078】
気液界面が下方に移動することで、高低差h2が高低差h1の4倍になり、ノズル85の適正圧力Pnが−4[kPa]に増大する。負圧が増大したことによりインクジェットヘッド11内のインクが
図5の矢印で示すように流動する。インクが流動することで、
図6ないし
図10に示すように、圧力室67のインクのメニスカスMが後退する。下流側吸引ポンプ35は、高低差h2が高低差h1の4倍になると停止させられる(S25)。その後、下流側インクタンク31のインク気液界面が所定の高さ上昇していなければ(S7)下流側吸引ポンプ35を駆動させ、下流側インクタンク31の気液界面をさらに下方に移動させる(S28)。
【0079】
以上のような他のメンテナンス方法によっても、圧力室67に充填されたインクが下流側インクタンク31に排出される。当該他のメンテナンス方法において、下流側吸引ポンプ35は排出装置の一例であり、下流側吸引ポンプ35および下流側インクタンク31は第1の装置として機能する要素の一例である。なお、圧力室67のインクを下流側インクタンク31に輸送する装置は、下流側吸引ポンプ35およびタンク移動装置41に限らず、種々の装置を採用できる。
【0080】
前記構成の印刷装置10によれば、制御部43は、圧力室67のインクを下流側インクタンク31に排出し、圧力調整タンク17のインクを圧力室67に充填し、圧力室67に供給されたインクのメニスカスMをノズル85からインクジェットヘッド11の外に出す。これにより、ノズル85に存在する気泡Bや増粘固化した固化インクSL,SSを流動化させ、ノズル85から除去することができる。この結果、印字を行うときにノズル85が新鮮なインクで濡れている状態となり、例えば増粘したインクによるノズル85の目詰まり、不吐出、吐出方向の歪みが抑制される。すなわち、固化したインクによる印字不良を抑制することができる。
【0081】
制御部43は、圧力室67のインクを下流側インクタンク31に排出した後、圧力調整タンク17のインクを圧力室67に充填してパージ動作を行う。先にインクを下流側インクタンク31に排出することで、固化インクSLがノズル85に詰まることが抑制される。さらに、ノズル85から空気を吸い込むインク排出を先に行うことで、圧力室67およびノズル85に気泡が生じることを抑制できる。
【0082】
次に、
図17を参照して、第2の実施の形態について説明する。なお、以下に開示する実施形態において、第1の実施形態の印刷装置10と同一の機能を有する構成部分には同一の参照符号を付す。さらに、当該構成部分については、その説明を一部または全て省略することがある。
【0083】
図17は、第2の実施の形態にかかる印刷装置10Aの構成を概略的に示すブロック図である。
図17に示すように、印刷装置10Aは、循環経路121と、第2のフィルタ122と、循環ポンプ123とをさらに備える。
【0084】
循環経路121は、圧力調整タンク17と下流側インクタンク31との間を接続する。循環経路121の一方の端部は、圧力調整タンク17のインク面から僅かに離される。循環経路121の他方の端部は、下流側インクタンク31の底面から僅かに離され、インクに浸される。
【0085】
第2のフィルタ122は、循環経路121に配置される。第2のフィルタ122は、下流側インクタンク31から圧力調整タンク17へと流れるインク中に含まれる異物を除去する。これにより圧力調整タンク17に、異物が取り除かれたインクが供給される。
【0086】
循環ポンプ123は、循環経路121に配置される。循環ポンプ123が作動すると、循環経路121を介して、下流側インクタンク31に収容されたインクを圧力調整タンク17に輸送する。
【0087】
制御部43は、第2の水頭差センサ119によって、下流側インクタンク31に収容されたインクが所定の量より増えたか否かを判断する。下流側インクタンク31のインクが所定の量より増えると、制御部43は、循環ポンプ123を作動させる。
【0088】
循環ポンプ123が作動することで、下流側インクタンク31に排出されたインクが圧力調整タンク17に戻される。言い換えると、圧力調整タンク17、インクジェットヘッド11、および下流側インクタンク31で、インクが循環する。
【0089】
前記構成の印刷装置10Aによれば、循環ポンプ123によって、下流側インクタンク31に収容されたインクが圧力調整タンク17に輸送される。これにより、インクの消費量を低減できる。
【0090】
以上述べた少なくとも一つの実施形態の印刷装置によれば、排出装置によって圧力室のインクを第2のタンクに排出し、供給装置によって第1のタンクのインクを前記圧力室に充填し、前記圧力室に供給されたインクの液面をノズルからヘッドの外に出すことにより、固化したインクによる印字不良を抑制できる。
【0091】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。