(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ハウジングの端壁は、相手コネクタが傾斜した姿勢で抜出される過程での該相手コネクタに対する逃げのための凹部が上端面の一部に没入形成されていることとする請求項1に記載の回路基板用電気コネクタ。
【背景技術】
【0002】
この種の回路基板用電気コネクタは、例えば特許文献1に開示されている。この特許文献1では、回路基板用電気コネクタ(以下、単に「コネクタ」という)のハウジングは、回路基板の実装面に対して平行な一方向を長手方向として延びており、該長手方向を端子配列方向として複数の端子を配列保持している。上記ハウジングは、回路基板の実装面に対面する底壁と、該底壁から上方へ起立して端子配列方向に延びる突壁と、該突壁を囲むように上記底壁から上方へ向けて起立する周壁とを有している。該周壁と上記突壁との間の環状の空間は、相手コネクタの嵌合部を上方から受け入れるための受入部として形成されている。
【0003】
複数の端子は、突壁の側面(端子配列方向に延びる面)で受入部側に開口する溝部内に位置しコネクタ幅方向で弾性変位可能な弾性腕部を有している。該弾性腕部の自由端たる上端には、上記突壁の上端寄り位置で上記受入部側へ向けて溝部外に突出する接触部が形成されている。
【0004】
上記周壁は、端子配列方向に延びる二つの側壁と、上記端子配列方向に対して直角なコネクタ幅方向に延びる二つの端壁と、上記周壁の隅位置で上記側壁と上記端壁の端部同士間で移行部として形成された隅壁とを有している。
【0005】
上記ハウジングの側壁、端壁および隅壁には、それぞれの内壁面(受入部を形成する面)に受入部側へ向かうにつれて下方に傾斜する斜面が形成されている。これらの斜面は、上記突壁の上端面よりも上方で受入部の空間外に位置しており、コネクタ嵌合過程にて、相手コネクタを受入部へ向けて案内する案内面として機能する。側壁、端壁および隅壁のそれぞれの斜面は、上下方向で互いに同じ高さ位置まで延びており、各斜面の下縁は突壁の上端面とほぼ同じ高さに位置している。換言すると、各斜面の下縁は端子の接触部よりも上方に位置しており、上記各斜面が上下方向で受入部の範囲外に位置している。
【0006】
一方、相手コネクタのハウジングは、上記コネクタの環状の受入部に適合する外形をなす嵌合部を有している。つまり、コネクタ嵌合状態において、相手コネクタの嵌合部は、該ハウジングの外壁周面が上記コネクタの受入部の内壁周面とほとんど隙間をもたない状態で上記受入部内に収容される。したがって、上記相手コネクタは、該相手コネクタの嵌合部の少なくとも一部がコネクタの受入部内にあるときには、端子配列方向およびコネクタ幅方向での移動が規制される。一方、上記相手コネクタの嵌合部が受入部から抜出されて、上下方向にてコネクタの各斜面の位置にあるときには、相手コネクタの端子配列方向およびコネクタ幅方向での移動が、上記嵌合部と上記各斜面との間に形成された空間の範囲内で許容される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般に、コネクタの受入部内に相手コネクタの嵌合部が上方から嵌入される回路基板用電気コネクタでは、相手コネクタの抜出の際に、該相手コネクタを上下方向に対して傾斜した姿勢にしながらもち上げると抜出しやすく、また、多くの場合、そのように操作される。このとき、相手コネクタは、無意識のうちに、端子配列方向およびコネクタ幅方向の両方の成分をもって捻るように傾斜した姿勢(以下、「捻り傾斜姿勢」という)にされることが多い。以下、相手コネクタを捻り傾斜姿勢にして行われる抜出動作を「捻り抜出動作」という。
【0009】
特許文献1では、相手コネクタのハウジングの嵌合部の少なくとも一部がコネクタのハウジングの受入部内にある状態においては、端子配列方向およびコネクタ幅方向での相手コネクタの移動を許容するための空間(以下、「ゆとり空間」という)が存在していないために同方向での自由度がない。したがって、端子配列方向およびコネクタ幅方向での相手コネクタの移動が規制されるので、上記相手コネクタを捻り傾斜姿勢にすることができない。
【0010】
しかし、コネクタ抜出過程での捻り抜出動作は無意識に行われることが多い。仮に、特許文献1において、上記捻り抜出動作が行われると、上記相手コネクタの上記嵌合部が、主に、受入部を形成する隅壁の内壁面に強く当接するとともに、上記コネクタの突壁の側面から突出している端子の接触部とも大きな接圧をもって干渉する。このような動作は、相手コネクタの抜出が完了するまでの間に、衝撃を伴いながら振動的に繰り返して行われることが多い。この結果、コネクタのハウジングや端子の接触部が損傷するおそれがある。
【0011】
本発明では、このような事情に鑑みて、相手コネクタの抜出過程で捻り抜出動作が行われても、コネクタのハウジングや端子の接触部の損傷を防止できる回路基板用電気コネクタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る回路基板用電気コネクタは、回路基板の実装面上に配され該実装面に対して直角な方向をコネクタ挿抜方向として相手コネクタが上方から嵌合接続される回路基板用電気コネクタであって、該回路基板用電気コネクタは、上記実装面に対して平行な一方向を長手方向として同方向に延びるハウジングと、上記長手方向を端子配列方向として上記ハウジングに配列保持される複数の端子とを有しており、上記ハウジングは、実装面に接面配置される底壁と、該底壁から上方へ起立し平面形状を矩形とする周壁とを有していて、該周壁内に上記相手コネクタの嵌合部を受け入れるための受入部を形成し、上記周壁は、上記端子配列方向に延びる二つの側壁と、上記端子配列方向に対して直角なコネクタ幅方向に延びる二つの端壁と、上記周壁の隅位置で上記側壁と上記端壁の端部同士間で移行部として形成された隅壁とを有しており、上記端子は、上記受入部内方へ向け突出して相手コネクタに設けられた相手端子の対応接触部と接触する接触部を有している。
【0013】
かかる回路基板用電気コネクタにおいて、本発明では、上記側壁は、該側壁の内壁面に、コネクタ幅方向内方へ向かうにつれて下方へ傾斜し相手コネクタを案内する側縁斜面が形成されており、上記端壁は、該端壁の内壁面に、端子配列方向内方へ向かうにつれて下方へ傾斜し相手コネクタを案内する端縁斜面が形成されており、上記隅壁は、上記側縁斜面と上記端縁斜面とを連結する領域の少なくとも一部に隅斜面が形成されており、該隅斜面は、上記端子の接触部よりも下方まで延びていることを特徴としている。
【0014】
本発明では、上記隅壁の隅斜面は、端子配列方向およびコネクタ幅方向の両方向の成分をもって拡がって、端子の接触部よりも下方まで延びている。したがって、相手コネクタの抜出過程にて、該相手コネクタの下端が上記隅斜面の下端より上方にもたられた時点で、換言すると、まだ上記相手コネクタの下端が受入部内で端子の接触部よりも下方に位置している時点で、上記相手コネクタと上記隅斜面との間にゆとり空間が形成される。この結果、端子配列方向およびコネクタ幅方向での上記相手コネクタの移動が上記ゆとり空間の範囲内で許容されるので、上記相手コネクタが捻り傾斜姿勢とされても該相手コネクタはコネクタのハウジングの隅壁の内壁面と干渉しない。
【0015】
また、本発明では、上記ゆとり空間の範囲内での相手コネクタの移動が許容される結果、相手コネクタとコネクタの端子の接触部との間にも隙間が生じる。したがって、上記相手コネクタの下端が、まだ上記端子の接触部よりも下方に位置している時点で捻り傾斜姿勢とされても、上記相手コネクタが上記接触部に干渉することを回避できる。このように、本発明によれば、コネクタのハウジングや端子の接触部の損傷を防止できる。
【0016】
本発明において、ハウジングの端壁は、相手コネクタが傾斜した姿勢で抜出される過程での該相手コネクタに対する逃げのための凹部が上端面の一部に没入形成されていてもよい。このような凹部を形成することにより、上記相手コネクタが捻り傾斜姿勢とされても、該相手コネクタの対応部分が上記凹部内へ逃げ込めるので、該相手コネクタとコネクタの上記端壁との当接をより確実に回避できる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明では、隅壁の隅斜面が端子の接触部よりも下方まで延びているので、相手コネクタの抜出過程にて、該相手コネクタの下端が端子の接触部より下方に位置していても、上記相手コネクタと上記隅斜面との間に、端子配列方向およびコネクタ幅方向での上記相手コネクタの移動を許容するゆとり空間が形成されるので、該相手コネクタが捻り傾斜姿勢とされても、該相手コネクタがコネクタのハウジングの隅壁の内壁面や端子の接触部と干渉することを回避できる。この結果、上記コネクタのハウジングや上記端子の接触部の損傷を防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付書類にもとづき、本発明の実施の形態について説明する。
【0020】
<第一実施形態>
図1は、本実施形態に係るレセプタクルコネクタ1およびこれに対して上方から嵌合されるプラグコネクタ2の斜視図であり、コネクタ嵌合前の状態を示している。
図2は、
図1のレセプタクルコネクタ1およびプラグコネクタ2の斜視図であり、コネクタ嵌合後の状態を示している。
図3は、レセプタクルコネクタ1の隅斜面16Cの位置における該レセプタクルコネクタ1の断面図であり、端子配列方向に対して直角な断面を示している。
【0021】
本実施形態におけるレセプタクルコネクタ1および該レセプタクルコネクタ1の相手コネクタたるプラグコネクタ2は、それぞれ異なる回路基板(図示せず)の実装面上に配される回路基板用コネクタであり、各回路基板の面に対して直角な方向(
図1での上下方向)を挿抜方向とするコネクタ組立体を構成している。
【0022】
レセプタクルコネクタ1は、
図1に見られるように、上記実装面に対して平行な一方向を長手方向とする薄型の略直方体外形をなすレセプタクル側ハウジング10と、該レセプタクル側ハウジング10の長手方向を端子配列方向として該レセプタクル側ハウジング10によって二列に配列保持される複数の端子20と、上記端子配列方向での上記レセプタクル側ハウジング10の両端側部分で保持される四つの固定金具30とを有している。該レセプタクルコネクタ1は、
図1に示される姿勢で、回路基板上に配置実装される。
【0023】
上記レセプタクル側ハウジング10は、例えば樹脂等の電気絶縁材で作られており、上記実装面に対して平行をなし接面配置される底壁11(
図3参照)と、
図1にて、該底壁11から上方へ向けて起立するとともに端子配列方向に延びる突壁12と、上記底壁11から上方へ向けて起立するとともに上記突壁12を囲み平面形状を矩形とする枠状の周壁13とを有している。該周壁13は、上記端子配列方向に延びる一対の側壁14と、該端子配列方向に対して直角なコネクタ幅方向に延び上記一対の側壁14の端部同士を連結する一対の端壁15と、上記周壁13の隅位置で上記側壁14と上記端壁15の端部同士間で移行部として形成された隅壁16とを有している。上方から見て周壁13の内壁面で囲まれ上方へ向け開口した空間は、プラグコネクタ2を受け入れるための受入部17をなしている。後述するように、該受入部17は、上下方向では、周壁13の最上位置の上端面(周壁13の四隅に位置する上端面)から底壁11の上面にわたる範囲に形成されている。該受入部17の形状の詳細については後述する。
【0024】
側壁14は、端子配列方向で端子配列範囲内に位置する複数の端子配列壁部14Aと、同方向で該端子配列壁部14Aの両側に位置する側壁端部14Bとを有している。また、
図1に見られるように、端子配列壁部14Aは、側壁端部14Bよりも上端面が下方に没して位置している。また、該端子配列壁部14Aの上端面は、上下方向で突壁12の上端面とほぼ同位置、換言すると、後述する端子20の接触部21よりも上方に位置している。
【0025】
端子配列壁部14Aは、端子20を保持するための端子保持溝14A−1が、コネクタ幅方向での突壁12の中央位置で長手方向に延びる中心線に対してコネクタ幅方向で対称な形態の二列をなし、端子配列方向で等間隔に配列形成されている。各端子保持溝14A−1は、突壁12の側面、底壁11の上面、端子配列壁部14Aの内壁面14A−2(突壁12の側面と対向する面)、該側壁14の上端面及び外壁面にわたって連続して延びるとともに没していて、上記端子配列方向に見て横S字溝状をなして形成されている。また、端子配列壁部14Aの上記内壁面14A−2は、コネクタ幅方向に対して直角な面をなしている。
【0026】
側壁端部14Bは、端子配列壁部14Aの上端面よりも上方に位置する部分(以下、「上部」という)と、該上端面よりも下方に位置する部分(以下、「下部」という)とを有している。該側壁端部14Bの内壁面(受入部17の内周面の一部を形成する面)は、該側壁端部14Bの上部に形成された側縁斜面14B−1と、下部に形成された垂立側面14B−2とを有している。
図1に見られるように、側壁端部14Bの内壁面は、側縁斜面14B−1が垂立側面14B−2よりもコネクタ幅方向外側にずれて位置しており、該側縁斜面14B−1と垂立側面14B−2との境界位置(端子配列壁部14Aの上端面の高さ位置)に狭い段部が形成されている。
【0027】
側縁斜面14B−1は、端子配列方向に対して平行をなすとともに、コネクタ幅方向内方へ向かうにつれて下方へ傾斜する斜面として形成されている。該側縁斜面14B−1は、コネクタ嵌合過程にて、プラグコネクタ2をコネクタ幅方向内方すなわち受入部17側へ向けて案内する案内面として機能する。垂立側面14B−2は、コネクタ幅方向に対して直角な面をなしており、上述した端子配列壁部14Aの内壁面14A−2と相俟って一つの平坦面をなし、受入部17の内周面の一部を形成している。
【0028】
端壁15の上端面は、
図1に見られるように、後述の隅壁16の上端面よりも下方に位置しており、コネクタ幅方向での中央域では、さらに段状に没して凹部15Aが形成されている。該凹部15Aは、後述するように捻り傾斜姿勢にあるプラグコネクタ2に対する逃げのために形成されている。該端壁15の内壁面(受入部17を内周面の一部を形成する面)は、後述する端子20の接触部21の高さ位置よりも下方に位置する境界稜線15Bに対して上方に形成された端縁斜面15Cと、上記境界稜線15Bに対して下方に形成された垂立端面15Dとを有している(
図3をも参照)。
【0029】
端縁斜面15Cは、コネクタ幅方向に対して平行をなすとともに、端子配列方向内方へ向かうにつれて下方へ傾斜する斜面として形成されている。該端縁斜面15Cは、端子20の接触部21よりも下方まで延びており(
図3をも参照)、コネクタ嵌合過程にて、プラグコネクタ2を端子配列方向内方すなわち受入部17側へ向けて案内する案内面として機能する。また、垂立端面15Dは、端子配列方向に対して直角な面をなしており、受入部17の内周面の一部を形成している。
【0030】
隅壁16の上端面は、側壁端部14Bの上端面と同じ高さに位置しており、該上端面と相俟って一つの平坦面をなしている。隅壁16の内壁面(受入部17を形成する面)は、端子配列方向およびコネクタ幅方向の両方向の成分をもって形成されており、上記端壁15の境界稜線15Bと同じ高さに位置する境界稜線16Aに対して上方に形成された移行斜面16Bおよび隅斜面16Cと、該境界稜線16Aに対して下方に形成された垂立隅面16Dとを有している。
【0031】
移行斜面16Bは、周方向で側壁14の側縁斜面14B−1と隅壁16の隅斜面16Cの間に位置しており、受入部17側へ向かうにつれて端子配列方向およびコネクタ幅方向の両方向の成分をもって拡がるように下方へ傾斜している。該移行斜面16Bは、側壁14の側縁斜面14B−1および垂立側面14B−2、そして隅壁16の隅斜面16Cに囲まれて三角形状をなしている。
図1によく見られるように、移行斜面16Bの下辺、すなわち、該移行斜面16Bと側壁14の垂立側面14B−2との境界稜線は、上下方向にて垂立側面14B−2の上縁位置から隅壁16の境界稜線16Aの位置にまで下がるように延びている。つまり、移行斜面16Bは、端子20の接触部21よりも下方まで延びており、コネクタ嵌合過程にて、プラグコネクタ2を端子配列方向内方およびコネクタ幅方向内方、すなわち受入部17側へ向けて案内する案内面として機能する。
【0032】
隅斜面16Cは、下方に向かうにつれて受入部17の内方側へ傾斜する斜面として形成されており、移行斜面16Bと相俟って、側壁14の側縁斜面14B−1と端壁15の端縁斜面15Cとを連結している。隅斜面16Cは、端子20の接触部21よりも下方まで延びており(
図3をも参照)、上述した移行斜面16Bと同様に、コネクタ嵌合過程にて、プラグコネクタ2を端子配列方向内方およびコネクタ幅方向内方、すなわち受入部17側へ向けて案内する案内面として機能する。また、垂立隅面16Dは、底壁11に対して直角に延びており、側壁端部14Bの垂立側面14B−2と端壁15の垂立端面15Dとを連結している。
【0033】
以下、受入部17について、上下方向で三つの空間に区分して説明する。受入部17は、端壁15および隅壁16のそれぞれの境界稜線15B,16Aよりも下方位置では、側壁14の内壁面14A−2および垂立側面14B−2、端壁15の垂立端面15D、隅壁16の垂立隅面16Dで形成された内周面と、該内周面に対向する突壁12の外周面との間に形成された環状空間(以下、「下側環状空間」)をなしている。該下側環状空間を形成する上記内周面および外周面はコネクタ挿抜方向(底壁11の面に対して直角をなす上下方向)に延びており、該コネクタ挿抜方向に対して傾斜していない。
【0034】
また、受入部17は、端子配列壁部14Aの上端面と境界稜線15B,16Aとの間の上下方向範囲では、側壁14の内壁面14A−2および垂立側面14B−2、端壁15の端縁斜面15C、隅壁16の移行斜面16Bおよび隅斜面16Cで形成された内周面と、該内周面に対向する突壁12の外周面との間に形成された環状空間(以下、「上側環状空間」)をなしている。該上側環状空間は、上方に向かうにつれて、端壁15の端縁斜面15Cの範囲で端子配列方向外方へ、そして隅壁16の移行斜面16Bおよび隅斜面16Cの範囲で端子配列方向外方およびコネクタ幅方向外方へ徐々に拡がっている。
【0035】
また、受入部17は、端子配列壁部14Aの上端面よりも上方、換言すると、突壁12の上端面よりも上方では、側壁14の側縁斜面14B−1を含む面(仮想面)、端壁15の端縁斜面15C、隅壁16の移行斜面16Bおよび隅斜面16Cで形成された内周面に囲まれた空間をなしている。該空間は、上述の上側環状空間と連続して上記端縁斜面15C、移行斜面16Bおよび隅斜面16Cの位置で端子配列方向外方そしてコネクタ幅方向外方へ拡がっていることに加え、側壁14の側縁斜面14B−1の位置で、上方に向かうにつれてコネクタ幅方向外方へ徐々に拡がっている。
【0036】
また、
図1に見られるように、底壁11は、端子配列方向での両端壁15寄り位置、換言すると、端子配列範囲外の位置に、固定金具30を保持するための固定金具保持溝11Aが形成されている。該固定金具保持溝11Aは、上下方向に延びるスリット状をなしており、下方そしてコネクタ幅方向外方へ向けて開放されている。
【0037】
端子20は、
図1に見られるように、金属板を打ち抜いて得られた帯状片を板厚方向に屈曲して作られている。該端子20は、端子配列方向に見て全体がU字状部分と逆U字状部分を連結して得られる横S字状をなしており、プラグコネクタ2に設けられた相手端子50と接触するように屈曲された接触部21が一端側にそして回路基板の対応回路部に半田接続される接続部22が他端側に形成されている。該端子20は、上記端子配列方向に見たとき、逆U字形状部分をなす被保持部23が側壁14を跨ぐようにして、上方から端子保持溝14A−1内に圧入されて取り付けられており、該側壁14の長手方向で等間隔をなして配列されている。被保持部23には、上記相手端子50と係止するためのロック突部23Aが上記接触部21側へ向けて突出して形成されている。
【0038】
上記端子20が上記端子保持溝14A−1で保持された状態では、
図1に見られるように、該端子20の接触部21が突壁12の側面から受入部17の内方へ向けて突出するとともに、上記ロック突部23Aが側壁14の端子配列壁部14Aの内壁面14A−2から受入部17の内方へ向けて突出する。また、上記端子20の接続部22がレセプタクル側ハウジング10の底面(底壁11の下面)とほぼ同じ高さでコネクタ幅方向外方へ向けて該レセプタクル側ハウジング10から延出している。
【0039】
固定金具30は、金属板の平坦面を維持するようにして該金属板を打ち抜いて作られており、レセプタクル側ハウジング10の固定金具保持溝11Aへ下方から圧入されて保持されている。上記固定金具30は、回路基板の対応部(図示せず)に半田付けされることにより、該回路基板に対するレセプタクルコネクタ1の固定に寄与する。
【0040】
次に、
図1および
図2にもとづいて、相手コネクタたるプラグコネクタ2の構成を説明する。プラグコネクタ2は、略直方体外形をなすプラグ側ハウジング40と、該プラグ側ハウジング40の長手方向を端子配列方向として該プラグ側ハウジング40によって二列に配列保持される複数の相手端子50とを有している。該プラグコネクタ2は、
図1および
図2に示される姿勢でレセプタクルコネクタ1に嵌合接続される。
【0041】
上記プラグ側ハウジング40は、例えば樹脂等の電気絶縁材で作られており、回路基板の実装面(図示せず)と平行な一方向を長手方向(端子配列方向)として形成されている。該プラグ側ハウジング40は、上記実装面に対して平行な底壁41と、該底壁41から
図1での下方へ向けて延びる枠状の周壁43とを有している。該周壁43は、既述したレセプタクル側ハウジング10の受入部17の下側環状空間に適合した外周形状をなしているとともに、該周壁43の内周面で形成され下方へ開口する空間(図示せず)が、レセプタクルコネクタ1の突壁12を受け入れるための受入部として形成されている。周壁43は、各隅位置にて、レセプタクル側ハウジング10の隅壁16の垂立隅面16Dに適合するように面取りされている。また、周壁43は、上記端子配列方向に延びる一対の側壁44と、該端子配列方向に対して直角なコネクタ幅方向に延び上記一対の側壁44の端部同士を連結する一対の端壁45とを有している。
【0042】
相手端子50は、金属板を打ち抜いて得られた帯状片を板厚方向に屈曲して作られている。該相手端子50は、プラグ側ハウジング40の各側壁44に一体モールド成形されて保持されており、該側壁44の長手方向で等間隔をなして配列されている。該相手端子50は、プラグ側ハウジング40の底壁41とほぼ同じ高さ位置で側壁44からコネクタ幅方向外方へ延出する直状の接続部51と、該接続部51に連続して
図1での下方へ向けて屈曲されるとともにU字状に折り返され上記側壁44に埋没保持されるU字状部分とを有している。該U字状部分は、上記側壁44に沿って延びていて、U字状の板面が該側壁44と同一面を形成するようにして露呈している。
【0043】
上記相手端子50のU字状部分の二つの脚部のうち、側壁44の内側面側に位置する一方の脚部(図示せず)は、レセプタクルコネクタ1の端子20の突状の接触部21を受け入れて該接触部21と接触するための接触凹部(図示せず)が板面から没して形成されている。また、側壁44の外側面側に位置する他方の脚部は、上記端子20のロック突部23Aを受け入れて該ロック突部23Aと係止するための被ロック凹部53が板面から没して形成されている。
【0044】
次に、
図1および
図2にもとづいて、レセプタクルコネクタ1とプラグコネクタ2とのコネクタ嵌合動作について説明する。まず、レセプタクルコネクタ1およびプラグコネクタ2をそれぞれ対応する回路基板に半田接続により取り付ける。次に、
図1に見られるように、レセプタクルコネクタ1を受入部17が上方へ向いた姿勢とするとともに、該レセプタクルコネクタ1の上方で、プラグコネクタ2の受入部(図示せず)が下方へ向いた姿勢とする。
【0045】
次に、
図1の姿勢を維持したままプラグコネクタ2を降下させて、レセプタクルコネクタ1の突壁12をプラグコネクタ2の上記受入部内へ下方から進入させるとともに、プラグコネクタ2の周壁43をレセプタクルコネクタ1の受入部17内へ上方から進入させる。この結果、レセプタクルコネクタ1の端子20の接触部21そしてロック突部23Aが、プラグコネクタ2の相手端子50の接触凹部(図示せず)内そして被ロック凹部53内にそれぞれ突入係止して、端子同士の電気的な接触及びコネクタ抜出方向(上方)へのロックがなされる。
【0046】
また、
図2に示されるように、コネクタ嵌合状態では、プラグ側ハウジング40の底壁41の底面(
図2にて上面)が、レセプタクル側ハウジング10の周壁13の四隅に位置する最上面とほぼ同じ高さに位置しており、プラグコネクタ2のプラグ側ハウジング40の全体がレセプタクルコネクタ1の受入部17内に収容されている。つまり、本実施形態では、プラグ側ハウジング40全体が嵌合部として機能している。また、既述したように、プラグ側ハウジング40の周壁43は、レセプタクル側ハウジング10の受入部17の下側環状空間に適合した形状をなしている。したがって、コネクタ嵌合状態では、上記周壁43の外壁周面が、周壁13の内壁周面とほとんど隙間をもたない状態で上記下側環状空間に収容されている。
【0047】
次に、コネクタ抜出動作について説明する。レセプタクルコネクタ1とのコネクタ嵌合状態にあるプラグコネクタ2は、端子同士のロック力よりも大きい抜出力で上方へもち上げられることにより抜出される。この抜出動作は、プラグコネクタ2が配されている回路基板を掴んで行われる。また、プラグコネクタ2は、端子配列方向およびコネクタ幅方向の少なくとも一方の成分をもって傾斜した姿勢(以下、「傾斜姿勢」という)で抜出動作がなされることが多い。以下、上記傾斜姿勢のうち、端子配列方向およびコネクタ幅方向の両方の成分をもって捻るように傾斜した姿勢(
図4参照)を「捻り傾斜姿勢」という。
【0048】
既述したように、コネクタ嵌合状態において、端壁15および隅壁16のそれぞれの境界稜線15B,16Aよりも下方位置では、受入部17の下側環状空間を形成する内周壁面と上記周壁43の外周壁面との間にほとんど隙間が形成されておらず、ゆとり空間が存在していない。したがって、プラグコネクタ2の下端が上記境界稜線15B,16Aよりも下方に位置している時点で、該プラグコネクタ2を傾斜姿勢にしようとしても、該プラグコネクタ2の周壁43の移動が受入部17の上記内周壁面によって規制されるので、傾斜姿勢にすることはできない。この結果、プラグコネクタ2は、いずれの方向にも傾斜することなく上方(コネクタ抜出方向)へ向けて移動する。
【0049】
そして、抜出動作の途中であっても、プラグコネクタ2の下端が上記境界稜線15B,16Aよりも上方位置に達すると、該プラグコネクタ2と端壁15の端縁斜面15Cとの間には端子配列方向でゆとり空間が形成され、また、上記プラグコネクタ2と隅壁16の移行斜面16Bおよび隅斜面16Cとの間には端子配列方向およびコネクタ幅方向の両方向でゆとり空間が形成される。したがって、プラグコネクタ2は、端縁斜面15Cとの間のゆとり空間によって端子配列方向での移動が許容されるとともに、移行斜面16Bおよび隅斜面16Cとの間のゆとり空間によって端子配列方向およびコネクタ幅方向の両方向での移動が許容される。
【0050】
この結果、抜出過程において、プラグコネクタ2が端子配列方向の成分をもった傾斜姿勢とされても、該プラグコネクタ2は端縁斜面15Cと干渉することがない。また、プラグコネクタ2が端子配列方向およびコネクタ幅方向の両方向の成分をもった捻り傾斜姿勢(
図4参照)とされても、該プラグコネクタ2は移行斜面16Bおよび隅斜面16Cと干渉することがない。また、本実施形態では、端壁15の上端面に段状に没入形成された凹部15Aが上記捻り傾斜姿勢のプラグコネクタ2に対すて逃げとして機能するので、該プラグコネクタ2とレセプタクル側ハウジング10の端壁15との当接をより確実に回避できる。したがって、本実施形態によれば、プラグコネクタ2の下端がまだ端子20の接触部21よりも下方に位置している時点で該プラグコネクタ2が傾斜姿勢とされても、レセプタクルコネクタ1のレセプタクル側ハウジング10の損傷を防止できる。
【0051】
また、上記ゆとり空間の範囲内でのプラグコネクタ2の移動が許容される結果、該プラグコネクタ2とレセプタクルコネクタ1の端子20の接触部21との間には隙間が生じる。したがって、プラグコネクタ2の下端がまだ端子20の接触部21よりも下方に位置している時点で捻り傾斜姿勢とされても、該プラグコネクタ2が接触部21に干渉することを回避できる。したがって、本実施形態によれば、端子20の接触部21の損傷をも防止できる。
【0052】
プラグコネクタ2がさらに上方へ向けて移動して、該プラグコネクタ2の下端が端子配列壁部14Aの上端面位置、換言すると、側壁端部14Bの垂立側面14B−2の上縁位置に達すると、プラグコネクタ2と側縁斜面14B−1との間にもコネクタ幅方向でゆとり空間が形成される。したがって、該ゆとり空間によってコネクタ幅方向への移動が許容されるようになり、プラグコネクタ2がコネクタ幅方向の成分をもって傾斜姿勢とされても、該プラグコネクタ2は側縁斜面14B−1と干渉することがない。この結果、レセプタクルコネクタ1のレセプタクル側ハウジング10の損傷を防止できる。
【0053】
本実施形態では、側縁斜面14B−1は上方に向かうにつれてコネクタ幅方向外方に、端縁斜面15Cは上方に向かうにつれて端子配列方向外方に、そして移行斜面16Bおよび隅斜面16Cはコネクタ幅方向外方および端子配列方向外方の両方向に向けて傾斜しているので、プラグコネクタ2と各斜面との間のゆとり空間は、該プラグコネクタ2が上方へ移動するにつれて大きくなる。したがって、プラグコネクタ2が上方へ移動するにつれて、該プラグコネクタ2をより大きな傾斜角度で傾斜姿勢にすることが可能となるので、プラグコネクタ2を容易に抜出することができる。
【0054】
プラグコネクタ2の抜出動作は、該プラグコネクタ2を傾斜姿勢にしながら抜出する動作が振動的に繰り返して行われ、その際、ゆとり空間の分だけ自由度があるので、プラグコネクタ2を容易に傾斜姿勢とすることができる。そして、該プラグコネクタ2をレセプタクルコネクタ1の受入部17外にもたらすことにより、抜出動作が完了する。
【0055】
<第二実施形態>
第一実施形態では、レセプタクル側ハウジング10の隅壁16の内壁面に、端子20の接触部21の下方まで延びる移行斜面16Bが形成されていることとしたが、第二実施形態では、隅壁の内壁面に移行斜面が形成されておらず、側壁の側縁斜面が端子の接触部の下方まで延びて形成されているおり、この点で、第一実施形態と構成が異なっている。
第二実施形態のレセプタクルコネクタ1は、隅壁の内壁面および側壁の内壁面の形状を除き、第一実施形態のレセプタクルコネクタ1と構成が同じであるので、第一実施形態と対応する部分には「100」を加えた符号を付して説明を省略する。
【0056】
図5は、第二実施形態に係るレセプタクルコネクタ101を示す斜視図である。第二実施形態では、側壁114の側壁端部114Bの内壁面は、端子120の接触部121よりも下方に位置する境界稜線114B−3に対して上方に位置する側縁斜面114B−1と、該境界稜線114B−3に対して下方に位置する垂立側面114B−2とを有している。側縁斜面114B−1は、コネクタ幅方向内方に向かうにつれて下方へ傾斜して境界稜線114B−3の位置まで、すなわち、端子120の接触部121よりも下方位置まで延びる斜面として形成されている。
【0057】
また、隅壁116の内壁面は、上記境界稜線114B−3と同じ高さに位置する境界稜線116Aに対して上方に位置する隅斜面116Cと、該境界稜線116Aに対して下方に位置する垂立隅面116Dとを有している。第二実施形態では、隅壁116の内壁面には、第一実施形態のような移行斜面は形成されておらず、上記隅斜面116Cによって、側壁端部114Bの側縁斜面114B−1と端壁15の端縁斜面115Cとが連結されている。
【0058】
第二実施形態では、側壁端部114Bの側縁斜面114B−1が端子120の接触部121の下方まで延びているので、コネクタ抜出過程において、プラグコネクタ102(図示せず)の下端が境界稜線114B−3の高さ位置に達すると、プラグコネクタ102と側縁斜面114B−1との間にコネクタ幅方向でゆとり空間が形成される。したがって、プラグコネクタ102の下端がまだ端子120の接触部121より下方に位置している時点で、該プラグコネクタ102のコネクタ幅方向での移動が許容される。この結果、プラグコネクタ102がコネクタ幅方向の成分をもった傾斜姿勢とされても、側縁斜面114B−1と当接そして端子120の接触部121との干渉を防止できる。
【0059】
また、第一および第二実施形態では、相手コネクタは回路基板用電気コネクタであることとしたが、相手コネクタの種類はこれに限られず、例えば、ケーブルに接続されるケーブル用電気コネクタであることとしてもよい。
【0060】
第一および第二実施形態では、レセプタクル側ハウジングに突壁を設けることとしたが、該突壁は必須の構成ではない。レセプタクル側ハウジングに突壁を設けない場合には、プラグ側ハウジングに受入部を形成する必要がなくなる。また、このとき、レセプタクルコネクタの端子の接触部は、例えば側壁の端子配列壁部の内壁面から受入部側に突出して設けられる。