(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5659239
(24)【登録日】2014年12月5日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】インプラントの製造方法
(51)【国際特許分類】
A61C 8/00 20060101AFI20150108BHJP
【FI】
A61C8/00 Z
【請求項の数】14
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-542326(P2012-542326)
(86)(22)【出願日】2010年12月7日
(65)【公表番号】特表2013-513402(P2013-513402A)
(43)【公表日】2013年4月22日
(86)【国際出願番号】CH2010000307
(87)【国際公開番号】WO2011069271
(87)【国際公開日】20110616
【審査請求日】2013年12月6日
(31)【優先権主張番号】1906/09
(32)【優先日】2009年12月11日
(33)【優先権主張国】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】512116181
【氏名又は名称】ニュー・デント・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】NEW DENT AG
(73)【特許権者】
【識別番号】501485227
【氏名又は名称】ウッドウェルディング・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュベンター,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ペルラー,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】シュタウデンマン,ロジャー
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー,ヨルク
(72)【発明者】
【氏名】ミューラー,アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】ウェバー,ウルス
【審査官】
石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−072572(JP,A)
【文献】
特開平08−131460(JP,A)
【文献】
特表2007−522847(JP,A)
【文献】
特表2009−254808(JP,A)
【文献】
特開平02−209148(JP,A)
【文献】
特開平06−125979(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インプラントの製造方法であって、
第1の材料を有するコア要素(1)を提供するステップと、
前記インプラントのネガ型(21、22)を提供するステップと、
前記コア要素(1)、および熱可塑性を有する第2の材料からなる少なくとも1つのアンカー固定要素(11)を、前記ネガ型(21、22)の中に位置決めするステップと、
前記コア要素(1)および前記少なくとも1つのアンカー固定要素(11)が入った金型内部キャビティが形成されるように前記ネガ型(21、22)を封止し、高い変形温度を印加するステップとを備え、前記変形温度において、前記第2の材料は塑性的に変形可能であるか、粘性を有するか、液体であり、前記第1の材料は固体であり、前記方法はさらに、
前記コア要素(1)および前記アンカー固定要素(11)を有する前記ネガ型(21、22)を冷却するステップと、
前記コア要素(1)および前記コア要素(1)に取付けられた前記アンカー固定要素(11)を有する、得られた前記インプラントを、前記ネガ型(21、22)から取出すステップとを備え、
前記コア要素(1)は少なくとも1つの凹部(6)を有し、前記少なくとも1つの凹部(6)および前記少なくとも1つのアンカー固定要素(11)は、形状および数が一致しており、前記少なくとも1つのアンカー固定要素(11)は、前記コア要素(1)および前記少なくとも1つのアンカー固定要素の導入時に、またはこの導入の前に、前記少なくとも1つの凹部(6)の中に位置決めされ、
前記変形温度TDは、前記第2の材料のガラス転移温度TGと液化温度TMの間にあり、
前記変形温度について
TD:TG+1/4*(TM−TG)<TD<TM
が当てはまる、方法。
【請求項2】
前記アンカー固定要素(11)は、前記ネガ型(21,22)への導入時に固体である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記変形温度は37℃よりも高い、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記変形温度TDは、前記第2の材料のガラス転移温度TGよりも前記第2の材料の液化温度TMに近い、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
インプラントの製造方法であって、
第1の材料を有するコア要素(1)を提供するステップと、
前記インプラントのネガ型(21、22)を提供するステップと、
前記コア要素(1)、および熱可塑性を有する第2の材料からなる少なくとも1つのアンカー固定要素(11)を、前記ネガ型(21、22)の中に位置決めするステップと、
前記コア要素(1)および前記少なくとも1つのアンカー固定要素(11)が入った金型内部キャビティが形成されるように前記ネガ型(21、22)を封止し、高い変形温度を印加するステップとを備え、前記変形温度において、前記第2の材料は塑性的に変形可能であるか、粘性を有するか、液体であり、前記第1の材料は固体であり、前記方法はさらに、
前記コア要素(1)および前記アンカー固定要素(11)を有する前記ネガ型(21、22)を冷却するステップと、
前記コア要素(1)および前記コア要素(1)に取付けられた前記アンカー固定要素(11)を有する、得られた前記インプラントを、前記ネガ型(21、22)から取出すステップとを備え、
前記コア要素(1)は少なくとも1つの凹部(6)を有し、前記少なくとも1つの凹部(6)および前記少なくとも1つのアンカー固定要素(11)は、形状および数が一致しており、前記少なくとも1つのアンカー固定要素(11)は、前記コア要素(1)および前記少なくとも1つのアンカー固定要素の導入時に、またはこの導入の前に、前記少なくとも1つの凹部(6)の中に位置決めされ、
前記アンカー固定要素(11)は、前記変形温度においてペースト状であるが液体ではない、方法。
【請求項6】
少なくとも前記変形温度を印加する際に、前記コア要素(1)および前記少なくとも1つのアンカー固定要素(11)で充填された前記金型内部キャビティに圧力を印加する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
一部の領域では、高い変形温度を印加する際に、前記ネガ型は前記コア要素の表面と直接接触することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
インプラントの製造方法であって、
第1の材料を有するコア要素(1)を提供するステップと、
前記インプラントのネガ型(21、22)を提供するステップと、
前記コア要素(1)、および熱可塑性を有する第2の材料からなる少なくとも1つのアンカー固定要素(11)を、前記ネガ型(21、22)の中に位置決めするステップと、
前記コア要素(1)および前記少なくとも1つのアンカー固定要素(11)が入った金型内部キャビティが形成されるように前記ネガ型(21、22)を封止し、高い変形温度を印加するステップとを備え、前記変形温度において、前記第2の材料は塑性的に変形可能であるか、粘性を有するか、液体であり、前記第1の材料は固体であり、前記方法はさらに、
前記コア要素(1)および前記アンカー固定要素(11)を有する前記ネガ型(21、22)を冷却するステップと、
前記コア要素(1)および前記コア要素(1)に取付けられた前記アンカー固定要素(11)を有する、得られた前記インプラントを、前記ネガ型(21、22)から取出すステップとを備え、
前記コア要素(1)は少なくとも1つの凹部(6)を有し、前記少なくとも1つの凹部(6)および前記少なくとも1つのアンカー固定要素(11)は、形状および数が一致しており、前記少なくとも1つのアンカー固定要素(11)は、前記コア要素(1)および前記少なくとも1つのアンカー固定要素の導入時に、またはこの導入の前に、前記少なくとも1つの凹部(6)の中に位置決めされ、
前記ネガ型(21、22)は、少なくとも部分的に弾性を有する少なくとも2つの金型部を有し、前記金型内部キャビティは、前記金型部同士の間に形成可能である、方法。
【請求項9】
前記金型部は、少なくとも前記金型部同士の間の境界領域において、15〜60のショアA硬度を有することを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記コア要素(1)および前記少なくとも1つのアンカー固定要素(11)を有するネガ型(21、22)は、5分〜1時間の保持時間中、前記変形温度に保持されることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記コア要素(1)に加えて、複数のアンカー固定要素(11)が前記金型内部キャビティに導入され、前記アンカー固定要素(11)は、前記インプラントを前記コア要素から取出した後も互いに分離していることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記コア要素(1)は、少なくとも前記アンカー固定要素(11)との接触面の領域において、粗面化され、および/または巨視的構造を有する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
インプラントの製造方法であって、
第1の材料を有するコア要素(1)を提供するステップと、
前記インプラントのネガ型(21、22)を提供するステップと、
前記コア要素(1)、および熱可塑性を有する第2の材料からなる少なくとも1つのアンカー固定要素(11)を、前記ネガ型(21、22)の中に位置決めするステップと、
前記コア要素(1)および前記少なくとも1つのアンカー固定要素(11)が入った金型内部キャビティが形成されるように前記ネガ型(21、22)を封止し、高い変形温度を印加するステップとを備え、前記変形温度において、前記第2の材料は塑性的に変形可能であるか、粘性を有するか、液体であり、前記第1の材料は固体であり、前記方法はさらに、
前記コア要素(1)および前記アンカー固定要素(11)を有する前記ネガ型(21、22)を冷却するステップと、
前記コア要素(1)および前記コア要素(1)に取付けられた前記アンカー固定要素(11)を有する、得られた前記インプラントを、前記ネガ型(21、22)から取出すステップとを備え、
前記コア要素(1)は少なくとも1つの凹部(6)を有し、前記少なくとも1つの凹部(6)および前記少なくとも1つのアンカー固定要素(11)は、形状および数が一致しており、前記少なくとも1つのアンカー固定要素(11)は、前記コア要素(1)および前記少なくとも1つのアンカー固定要素の導入時に、またはこの導入の前に、前記少なくとも1つの凹部(6)の中に位置決めされ、
前記アンカー固定要素の表面は、プラズマまたはプライマーによって活性化されることを特徴とする、方法。
【請求項14】
インプラントの製造方法であって、
第1の材料を有するコア要素(1)を提供するステップと、
前記インプラントのネガ型(21、22)を提供するステップと、
前記コア要素(1)、および熱可塑性を有する第2の材料からなる少なくとも1つのアンカー固定要素(11)を、前記ネガ型(21、22)の中に位置決めするステップと、
前記コア要素(1)および前記少なくとも1つのアンカー固定要素(11)が入った金型内部キャビティが形成されるように前記ネガ型(21、22)を封止し、高い変形温度を印加するステップとを備え、前記変形温度において、前記第2の材料は塑性的に変形可能であるか、粘性を有するか、液体であり、前記第1の材料は固体であり、前記方法はさらに、
前記コア要素(1)および前記アンカー固定要素(11)を有する前記ネガ型(21、22)を冷却するステップと、
前記コア要素(1)および前記コア要素(1)に取付けられた前記アンカー固定要素(11)を有する、得られた前記インプラントを、前記ネガ型(21、22)から取出すステップとを備え、
前記コア要素(1)は少なくとも1つの凹部(6)を有し、前記少なくとも1つの凹部(6)および前記少なくとも1つのアンカー固定要素(11)は、形状および数が一致しており、前記少なくとも1つのアンカー固定要素(11)は、前記コア要素(1)および前記少なくとも1つのアンカー固定要素の導入時に、またはこの導入の前に、前記少なくとも1つの凹部(6)の中に位置決めされ、
前記金型内部キャビティは、前記少なくとも1つのアンカー固定要素の領域内に構造を有し、前記構造は、当初の状態における前記少なくとも1つのアンカー固定要素の形状とは異なり、前記構造は、得られた前記インプラントの前記アンカー固定要素の少なくとも1つのエネルギ指向器(41、42)を規定することを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医用工学の分野に属し、インプラント、特に歯科インプラントに関する。特に、本発明は、たとえば金属製またはセラミック製のコアと、表面の一部を形成する少なくとも1つの構成要素とを有するハイブリッドインプラントの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コアと、生体適合性を有し、かつ当初の状態ではポリマーの材料からなる被膜とを有するインプラントが、たとえばDE 20 2004 009 060に開示されている。この文献の教示内容によると、ポリマー膜を接着接合、収縮、ワニス塗布、吹付け、浸漬塗装などによって塗布した後、無酸素雰囲気中で炭化する。
【0003】
また、硬質コアと、ポリマー材料からなる被膜とを有するインプラントが、WO 97/33017に開示されている。この文献によると、分子鎖が長手方向に方向付けられた繊維の形態のPMMAをコアに巻付け、当該繊維が収縮して相互に結合するように、処理時に形成されるカバーを加熱する。加熱は、圧力印加と同時に行なわれ得る。
【0004】
熱可塑性材料からなる表面領域と、この熱可塑性材料とは異なる材料からなるコアとを有するインプラントが、たとえばUS 7,008,226に開示されている。機械的振動を、意図したとおりに移植時にこのようなインプラントに結合する。この振動による機械的エネルギが、高応力集中が起こる熱可塑性材料内で熱エネルギに変換される。熱可塑性材料は局所的に融解し、移植時に印加される圧力によって、キャビティおよび/または周囲組織の他の構造に圧入される。機械的振動をオフにした後、熱可塑性材料は固化し、これによって組織の構造との噛み合い嵌合を形成する。
【0005】
標的化された態様で塗布され、高応力集中によって点を形成する熱可塑性材料の構造は、しばしば「エネルギ方向伝達部(Energierichtungsgeber)」と称される。このようなエネルギ方向伝達部は、端縁、先端および同様の幾何学的構造の形態で存在することが多い。このような幾何学的構造の機械的作業性は、特に高度な小型化の場合に制限される。したがって、これらの構造を有する熱可塑性要素を別の材料からなるコアにどのように取付けることができるのかという問題が生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の1つの目的は、第1の材料からなるコアと、インプラントの表面領域を形成し、かつ第2の熱可塑性材料からなる少なくとも1つのアンカー固定要素とを有するインプラントの製造方法を提供することであり、当該方法は、アンカー固定要素が微細構造を有する場合にも好適である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの局面によると、インプラントの製造方法は、
第1の材料からなるコア要素を提供するステップと、
インプラントのネガ型を提供するステップと、
コア要素、および熱可塑性を有する第2の材料からなる少なくとも1つのアンカー固定要素を、ネガ型に導入するステップと、
ネガ型を封止し、高い変形温度を印加するステップとを備え、変形温度において、第2の材料は塑性的に変形可能であるか、粘性を有するか、液体であり、第1の材料は固体であり、当該方法はさらに、
コア要素およびアンカー固定要素を有するネガ型を冷却するステップと、
コア要素およびアンカー固定要素からなる、得られたインプラントを、ネガ型から取出すステップとを含む。
【0008】
ここで、「高温」とは、室温よりも高く、好ましくは、後の段階でインプラントが移植される体温よりも高く、すなわちより特定的には37℃よりも高い温度である。第2の材料についてガラス転移温度が規定される範囲内で、高温は好ましくは当該ガラス転移温度よりも高い。高温は液化温度よりも低くてもよい。特に好ましい温度範囲は、たとえば液化温度とガラス転移温度との差の少なくとも4分の1または少なくとも3分の1だけガラス転移温度よりもはるかに高いが、液化温度よりも低い温度である。
すなわち、変形温度TDは、第2の材料のガラス転移温度TGと液化温度TMの間にあり、変形温度について、TD:TG+1/4*(TM−TG)<TD<TMが当てはまる。第2の要素の材料組成によっては、変形温度は、ガラス転移温度よりも液化温度に近い方が有利であり得る。
【0009】
変形温度においてペースト状で練り粉のような、当初は固体の少なくとも1つのアンカー固定要素を用いて本発明が実行されるように、材料および変形温度を選択することが有利であり得る。
【0010】
変形温度は一定である必要はないが、温度プロファイルを有し得る。この場合、高温に関する上述の説明が最高温度に当てはまる。
【0011】
好ましくは、高圧、すなわち大気圧よりも高い圧力が、高温を印加する際に印加される。一例として、ネガ型は、互いに補完してネガ型を形成する2つ以上の金型部を有し得る。これらの金型部は、好適な機械系によって、または上部に位置する金型部に重りを置くことによって、互いに押付けられる。空気圧、静水圧、油圧または他の手段で金型内部キャビティに圧力を印加することも可能である。
【0012】
1つ以上のアンカー固定要素が変形温度で、かつ加圧下で変形し、この結果、非常に優れたエネルギ方向伝達部を形成することも可能である。同時に、少なくとも1つのアンカー固定要素はコア要素に接続する。得られる接続は特に密接して安定していることが判明した。
【0013】
本発明の1つの局面によると、少なくとも1つのアンカー固定要素の形態の液化可能材料がこうしてネガ型に挿入され、たとえば、当初の液体状態ではインサート成形によってコア要素の周りに形成されない。このようなインサート成形に必要な射出成形機、射出金型などの機器は非常に複雑で高価であることが周知であるため、これは大きな利点である。さらに、加熱および冷却相、ならびに任意に保持相を自由に実現することができ、インサート成形法とは異なり、予め定められたサイクル時間はない。標的化された緩速処理によって、液化可能材料に応力を閉じ込めないことも可能になる。本発明の本局面に係る方法ではさらに、弾性金型の使用も可能である。第1に、これは、射出成形工具とは異なり、金型を良好に封止するための封止端縁の高精度な寸法決めおよび位置決めが不要であるため、有利である。第2に、たとえばセラミック製の脆性コア要素を使用する場合、これらが損傷する危険性が低下する。
【0014】
そして、一例として、金型を「弾性の」と称することができるのは、一般的な力の場合に、インプラント表面上の構造の特徴的な寸法と比べて顕著な弾性変形がもたらされ得る場合である。特に、弾性変形は少なくとも部分的にエントロピー弾性に由来し得、および/またはネガ型はエラストマーもしくは(別の)プラスチックから製造され得る。
【0015】
実施例では、コア要素、アンカー固定要素およびネガ型は、処理時に、すなわち、ネガ型が、たとえば一般的な接触面が機械的圧力下にあるようにコア要素およびアンカー固定要素を囲む間、ネガ型がコア要素表面と直接接触するように、互いに合わされる。
【0016】
弾性金型の有用性にさらに加えて、寸法精度、型ずれ、および形状正確度に関する要件が、射出成形法の場合よりも大幅に低くなるが、非常に微細な構造であっても、液化可能材料内に形成可能である。
【0017】
本発明の実施例のさらなる可能な利点は、材料の節約である。一般的に、液化可能材料の液化温度未満のペースト状態は、再成形および接着に十分である。したがって、多くの場合、材料の変色および分解を避けることができる。本方法は制御が容易である。本方法は、個別部品および少ロット、ならびに比較的大ロットにも好適である。
【0018】
実施例では、金型(ネガ型)は保持時間中、変形温度で保持される。いくつかの実施例では、これに加えて、またはこの代わりに、制御された緩慢な態様で冷却が行なわれ得る。
【0019】
第1の材料、すなわちコア要素の材料は、たとえばチタンもしくはチタン系物質などの金属、たとえば酸化ジルコニウムもしくは酸化ジルコニウム系物質などのセラミック物質、または、第2の材料よりも液化温度が高い、任意に強化された熱硬化性ポリマーもしくは任意に強化された熱可塑性ポリマーであり得る。もちろん、コア要素自体が多くの材料の混合物であってもよく、すなわち、コア要素が第1の材料を有していることは、さらなる材料の存在を排除しない。一例として、コア要素自体は、金属製コアピン、およびセラミック系またはポリマー系のクラッディングを有し得る。
【0020】
一例として、第2の材料は、熱可塑性ポリマー系材料である。第2の材料は、任意に添加物を含む、吸収可能または吸収不可能な熱可塑性ポリマーであり得る。一例として、好適な材料の具体例がWO 2008/095 327の特に16〜18頁に記載されており、ここでは明確に、利用可能な液化可能材料に関するこの文献の教示内容を参照する。しかし、この文献中に言及されていない材料(単相材料または複合物)も可能であり、これらの材料は機械的エネルギ、特に機械的振動の影響下で液化し、エネルギ流入の停止後に再固化し得る。
【0021】
好ましくは、2つ以上のアンカー固定要素が存在し、これらは、変形および/または接合処理(すなわちこれらがネガ型に入れられて高温に晒される間)の間および後に、分離し続け、すなわち、互いに流れ込まない。しかし、隣接したアンカー固定要素が1つのみ存在することや、当初は分離した複数のアンカー固定要素が変形および/または接合処理時に融合することも可能である。
【0022】
一例として、1つ以上のアンカー固定要素は本質的に寸法的に安定しており、処理時に、好ましくは有形の小型要素である。
【0023】
好ましい実施例では、インプラント、またはその骨内領域は、第1の材料からなる表面領域および第2の材料からなる表面領域を有し、これらはたとえば、移植後に両方とも骨組織に接触するように配置される。一例として、製造方法が完了した後でも隣接していない複数のアンカー固定要素があってもよい。より特定的には、アンカー固定要素はコアをクラッディング状に囲まないことを規定してもよい。インプラント/移植軸を規定する(たとえば歯科インプラントまたは領域内のピン状の別のインプラント内と同様に)場合、実施例におけるアンカー固定要素は、移植軸に垂直な少なくとも1つの平面内において、第1の材料からなる表面領域および第2の材料からなる表面領域の両方が円周線に沿って存在するように、より特定的に配置される。
【0024】
コア要素は好ましくは、少なくとも1つの凹部、たとえば各アンカー固定要素に1つの凹部を有し、対応するアンカー固定要素がこの凹部に挿入され、アンカー固定要素は、コア要素の外形を越えて突出するように凹部内にアンカー固定される。凹部は、その基部に、アンカー固定要素のための規定された、たとえば平面の支持部を形成し得る。凹部はスロット、長方形ポケット、円形ポケット、多角形ポケット、楕円形ポケット、これらの形状のいずれかに近似する形状もしくはいずれかの他の形状のポケットの形状を有し得る。凹部はさらに、形状的な噛み合い嵌合によってアンカー固定要素をコア要素にさらに接続するためのアンダーカットも有し得る。
【0025】
コア要素と1つ以上のアンカー固定要素との間の接触面、すなわち、たとえば凹部の基部は、接着を向上させるために、変形および/または接合処理の前に処理され得る。一例として、これは、サンドブラスト仕上げ、ショットピーニング、エッチング、レーザ処理もしくは他の表面改質、ストリッピングおよび/または他の被覆方法によってもたらされ得る。アンカー固定要素および/または、組成によってはコア要素も、接着を向上させるために、プラズマおよび/またはプライマーによって活性化され得る。
【0026】
使用するネガ型は少なくとも2つの金型部を有し、これらは、所望のインプラント形状の内部キャビティが得られるように互いに位置決めされ得る。位置決め補助器具が金型部上に存在してもよく、当該補助器具は、相対位置が規定されるように金型部が接合されると互いに係合する。特に位置決め補助器具を用いる実施例の場合、方向付けられた力の形態の圧力が印加され得、金型部が互いに押付けられる。重りは、そのような方向付けられた力の一例である。
【0027】
ネガ型は、好ましくは少なくとも金型部同士の間の境界領域において弾性を有し、たとえば完全に弾性材料からなり得る。さらに、射出成形と比較して、ネガ型は比較的軟質であり、硬度はたとえば20ショアOO〜100ショアD、より特定的には10ショアA〜80ショアD、10〜100ショアAまたは10〜60ショアA、特に好ましくは15〜40ショアAである。ネガ型の可能な材料は、とりわけシリコーンを含むが、たとえばポリウレタン、ニトリルゴムなどの、変形温度に容易に耐える他の弾性材料も含む。
【0028】
以下、本発明の例示的な実施例を図面に基づいてより詳細に説明する。図面は同じ割合で描かれていない。図中、同一の参照符号は同一または類似の要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図2】変形および/または接合処理前のアンカー固定要素を示す図である。
【
図3】変形および/または接合処理前のコア要素、2つのアンカー固定要素、および方法を実行するためのネガ型を示す分解図である。
【
図4】閉じられた状態の加圧下のネガ型を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
歯科インプラントを形成するための
図1のコア要素1は、本質的に公知の態様で、移植後の状態において骨内にアンカー固定されるアンカー固定部2と、アンカー固定部2と一体の、クラウンまたは別の要素を取付けるための組立部3とを有する。拡張部4が移行領域に形成されており、拡張部4は、たとえば、移植後に歯茎上に支持される封止肩部を形成可能である。当業者であれば、本発明の教示内容は、別個のアバットメントを有する二部分からなる装置用のインプラント金型をも含む歯科インプラント用の他のインプラント金型にも容易に適用可能であり、さらに、機械的エネルギによって、かつインプラントの液化可能材料の少なくとも部分的な液化状態で移植可能な非歯科用インプラントにも容易に適用可能であることを容易に認識するであろう。
【0031】
一例として、コア要素は、たとえば酸化ジルコニウム系のチタン物質またはセラミック物質から製造される。
【0032】
2つのスロット状凹部6がアンカー固定部2の領域に存在している(図中には一方の凹部しか見えず、第2の凹部は、図中には見えない第1の凹部の反対側の領域にある)。この凹部の基部は粗面化される。残りの骨内表面領域(すなわち、移植後の状態において骨組織によって囲まれるアンカー固定部の表面領域)も少なくとも部分的に粗面化され得、この残りの表面領域の粗度はオッセオインテグレーションのために最適化される。この残りの表面領域の粗度の平均深さはたとえば1μm〜10μmであり、粗度の最大深さはたとえば3μm〜15μmである。
【0033】
図2のアンカー固定要素11は、示される当初の状態では、スロット6と形状が一致しており、厚みはスロットの深さよりも大きい。エネルギ方向伝達部などの特定の構造は存在する必要がない。
【0034】
一例として、アンカー固定要素11は吸収可能または吸収不可能な(任意に添加物を含む)熱可塑性ポリマー、たとえばポリ乳酸(PLA)またはポリメチルメタクリレート(PMMA)から製造される。
【0035】
図3は、上述の種類のコア要素1および2つのアンカー固定要素11に加えて、二部分からなるネガ型を示す。分離面に沿って分離された2つの金型部21、22は、ともにネガ型を形成する。ネガ型は、たとえばシリコーン物質などの弾性材料から製造される。ネガ型の2つの部分21、22を接合することによって、すべての構造とともに製造されるインプラントの形状を有するキャビティ23がその内部に、すなわちより特定的にはエネルギ方向伝達部も有して形成される。金型部21、22は金型芯出し手段(位置決め補助器具)も有し得、これによって金型部の相対位置が正確に規定され得る。この場合、位置決め補助器具は、第1の金型部の円錐形の位置決め突起25の形状を有し、これは、接合されると、第2の金型部の対応する凹部(図示せず)に嵌まる。
【0036】
変形および/または接着処理を実行するため、
図3に示すように、コア要素およびアンカー固定要素を意図した位置および向きでネガ型に挿入し、ネガ型を、たとえば温度を制御可能なオーブン内で変形高温に晒す。また、圧力を有利に印加し、これによって、若干弾性を有する金型部を互いに押付ける。
図4に示す実施例では、これは重り31によって起こる。しかし、たとえば静水圧、油圧または空気圧などの圧力を印加する他のメカニズムも可能である。
【0037】
その後、ネガ型を、組立後の状態のまま、かつ好ましくは加圧下のまま、徐冷する。これは、オーブン温度を制御可能な態様で低下させることによって、またはオーブンから金型を取出して、たとえば室温などの周囲温度で徐冷することによってもたらされ得る。
【0038】
その後、2つの金型部を互いに分離することによって、形成されたインプラントを金型から取出す。
【0039】
形成されたインプラントを
図5に示す。図面の上部にあり、コア要素1に着実に接着している、アンカー固定要素11に形成された構造が、示される例示的な実施例において明らかに見られる。遠位方向に突出する2つの先端41の形態のエネルギ方向伝達部、およびそこから近位に配置された軸方向に延在するリブ42が見られる。
【0040】
実施例1
アンカー固定要素を製造するために、プレートに予め圧入する、Boehringer Ingelheim社の吸収可能なポリ乳酸LR706を使用する。Resomer(登録商標)LR706はL-ラクチドとR-ポリマーの混合物であり、ガラス転移温度は50°〜60°、液化温度は170℃〜210℃である。
【0041】
適切な外側寸法を有する細片(たとえば
図2参照)を、従来のミリングマシンを用いてプレート材料からミリング加工する。これらの細片はアンカー固定要素になる。
【0042】
ネガ型を製造するため、コンピュータ援用設計(CAD)システムを用いてポジ型を成形し、次に当該金型をステレオリソグラフィによって層毎に作る。このように形成したポジ型を、Simed社の二成分シリコーンDublosil(歯科用技術における複製集団としてしばしば用いられる)で充填する。完全に連結した後、それぞれのネガ型によって2つのシリコーンブロックが得られ、これらは、ネガまたはポジの金型芯出し手段(位置決め補助器具)も有する。2つの金型部のショア硬度は、24〜26ショアAである。
【0043】
コア要素は、直径4mmで骨内長さ10mmのサンドブラスト仕上げされた表面を有する、等級4チタンからなる。また、インプラント本体には、幅1.5mm、長さ5mmおよび深さ0.5mmの2つのスロットが設けられる(
図1参照)。
【0044】
第1のアンカー固定要素をインプラント本体(すなわちコア要素)上に置き、インプラント本体とともに、与えられた金型の片方に入れる。次に、第2の細片をコア要素の上側に置き、金型のもう1つの片方によって閉じる。質量500グラムの鋼鉄シリンダを重りとして用いる。
【0045】
パッケージ全体を、従来の手法でインキュベータ内で30分間130度まで加熱した後、オーブン外部の空気中で20分間冷却するが、重りは用いたままである。
【0046】
これによって、所望のエネルギ方向伝達部と、コア要素とアンカー固定要素との優れた密接な接続とを有するインプラントが得られる。
【0047】
実施例2
実施例1と同様のコア要素を使用する。実施例1とは異なり、アンカー固定要素はアクリルガラスXT(PMMA;ガラス転移温度約115℃)から製造される。ネガ型は、硬度が32ショアAの、Zhermack社のElite Double32シリコーンから製造される。
【0048】
アンカー固定要素を、コア要素とともに、与えられたネガ型に入れ、ネガ型を閉じる。質量500グラムの鋼鉄シリンダを重りとして用いる。
【0049】
パッケージ全体を、従来の手法でインキュベータ内で20分間140度まで加熱した後、オーブン外部の空気中で20分間冷却するが、重りは用いたままである。
【0050】
この結果、同様に、所望のエネルギ方向伝達部と、コア要素とアンカー固定要素との密接な接続とを有するインプラントが得られる。
【0051】
実施例3
実施例1と同様であるが、酸化ジルコニウム(10%未満の酸化イットリウムの成分を含む)からなるコア要素をコア要素として使用する。具体的には、イットリア安定化正方晶の、一部結晶質の二酸化ジルコニウムを使用する。ここで、使用する二酸化ジルコニウムセラミックは、「外科用インプラント−イットリア安定化正方晶ジルコニア(Y−TZP)系のセラミック材料」に関するISO規格13356:2008を満たす。
【0052】
コア要素とアンカー固定要素との間に、同様に良好な接続が存在する。金型が弾性を有するため、処理時にコア要素が機械的に損傷する危険性は低い。
【0053】
多くのさらなる実施例が可能である。したがって、たとえば、ネガ型は、互いに隣り合って、またはマトリックス形式で、またはいずれかの他の規則的もしくは不規則的な態様で配置された複数の内部キャビティを有し得、各内部キャビティは、対応する数のアンカー固定要素を有するコア要素毎に設けられる。