特許第5659311号(P5659311)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5659311
(24)【登録日】2014年12月5日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】ピグ洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   B08B 9/04 20060101AFI20150108BHJP
【FI】
   B08B9/02 A
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-27070(P2014-27070)
(22)【出願日】2014年2月15日
【審査請求日】2014年5月7日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000206093
【氏名又は名称】大森機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092598
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 伸一
(72)【発明者】
【氏名】水野 博昭
(72)【発明者】
【氏名】江目 尚純
【審査官】 大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】 特開平9−192620(JP,A)
【文献】 特開2005−40742(JP,A)
【文献】 特開2008−48616(JP,A)
【文献】 特開2010−119926(JP,A)
【文献】 特開2002−263601(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 9/00−9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を移送する流体移送配管に接続され、その流体移送配管に対して待機状態にあるピグを発射するためのピグ発射装置と、
そのピグ発射装置内における前記ピグの位置を前記待機状態の位置と、その待機状態から後退移動して前記流体移送配管の内部空間と前記ピグ発射装置の内部空間を連通する洗浄位置との間で往復移動させるピグセット装置と、
を備え、
前記ピグセット装置は、ダイヤフラムとそのダイヤフラムを変位させるアクチュエータと備え、前記ダイヤフラムの変位に伴い前記ピグが前記待機状態の位置と前記洗浄位置との間で変位するように構成し、
前記ピグ発射装置は、前記ピグの発射口と反対側の後端面が開口し、
前記ダイヤフラムは前記後端面の開口部位を閉塞するように装着することを特徴とするピグ洗浄装置。
【請求項2】
前記ピグ発射装置は、本体の下側に、下方に向けて突出する排出管を備え、
前記ピグ発射装置の内部空間内に流入した洗浄液が、前記排出管を介して外部に排出可能としたことを特徴とする請求項1に記載のピグ洗浄装置。
【請求項3】
前記排出管からの流出を阻止し、前記ピグ発射装置の内部空間に洗浄液を貯留可能とするように構成することを特徴とする請求項2に記載のピグ洗浄装置。
【請求項4】
前記ピグの発射口側から洗浄液が供給されるようにし、
前記ピグが前記洗浄位置に存在している場合には、前記発射口側から供給される前記洗浄液が前記ピグ発射装置の内部空間に流入可能とするように構成することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のピグ洗浄装置。
【請求項5】
前記ピグ発射装置は、前記ピグを収納する筒状の収納部を備え、
前記収納部は、その側面にスリットが形成され、そのスリットを介して前記流体移送配管の内部空間と前記ピグ発射装置の内部空間とが連通可能としたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のピグ洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピグ洗浄装置に関するもので、より具体的には、例えば流動製品等を移送する流体移送管内でピグを移動させることによって流体移送管内に残留する製品等の回収や除去を行うピグ・システムにおけるピグ洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化学工場や食品工場、医薬品工場等において、原料流体(例えば、ペーストやクリーム等の粘性の高い液体)を配合槽まで移送したり、原料流体を配合して得られた中間製品流体を中間貯蔵タンクまで移送したり、あるいは、貯蔵タンクに貯蔵される製品流体を、チューブ容器や瓶詰め等を行うために充填装置まで移送したりする場合には、流体移送配管を用いたパイプラインにより直接移送することが行われている。
【0003】
そして、係る流体移送管の内径に略等しい外径を有するピグを流体移送管内に配置し、当該ピグに対して水圧等をかけ、ピグを流体移送管内で移動させ、流体移送管内に残留している製品等の回収や除去を行うピグ・システムが開発されている。
【0004】
このピグ・システムを利用すると、管内に残留する流体を製品として回収することができて、製品の歩留りを向上させることができ、管内に残留する流体が少なくなるので、管内の洗浄に使用する洗浄液量を節約できると同時に、洗浄処理に要する時間を短縮することができ、更には、廃液処理設備の負荷を軽減することができるなどのさまざまなメリットを有する。
【0005】
ところで、ピグ・システムが用いられるようなプロセス設備は、厳しい衛生管理が要求される場合が多く、CIP(定置洗浄)およびSIP(定置滅菌)システムの導入が望まれる。よって例えば、衛生品質を維持するために、管路の洗浄処理等も、管路を分解せずに実施できるように整備することが多い。係る厳しい衛生管理に対応するためには、ピグ自体も十分に洗浄する必要がある。
【0006】
ピグの洗浄を行う一形態として、例えば特許文献1に開示されたピグ洗浄装置のように、流体移送管の端部、より具体的には流体移送管に対してピグを出入り可能に収容保持するステーションに隣接して、ピグの外径よりも広く広げたピグ洗浄室を設け、ピグを当該ピグ洗浄室内に位置させ、そこでピグの外周面を洗浄し、次いで、押し棒によりピグを押して洗浄後のピグをステーションに戻し、洗浄後のピグを流体移送管に対して出入り可能に復帰させるようにしたものがある。このようにすることで、ピグの洗浄を、流体移送管・ステーションから外部に取り出すことなく行える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−192620
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示されたピグ洗浄装置は、ピグ洗浄室内に位置するピグを流体移送管の洗浄後に、ピグを流体移送配管に対して出入り可能に復帰させるために、押し棒を配管内に挿入し、当該押し棒の先端をピグに接触させ、その状態で押し棒を下方に押してピグを復帰させていた。そのため、押し棒が配管の内外を貫通するようにセットされるため、当該押し棒が配管の壁部を貫通する部分での密閉性の問題が生じる。その結果、CIP(定置洗浄)およびSIP(定置滅菌)システムの導入が困難になる。
【0009】
また、押し棒の操作により復帰させるため、作業が繁雑であるとともに、押し棒の押し下げ量が一定でないと、ピグの復帰位置も一定にならない。さらに、ピグ洗浄室内の洗浄液は、上方に向けて流して廃棄する構造となっているため、吸引ポンプ等が必要となり、装置が大型化するという問題もある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、本発明のピグ洗浄装置は、(1)流体を移送する流体移送配管に接続され、その流体移送配管に対して待機状態にあるピグを発射するためのピグ発射装置と、そのピグ発射装置内における前記ピグの位置を前記待機状態の位置と、その待機状態から後退移動して前記流体移送配管の内部空間と前記ピグ発射装置の内部空間を連通する洗浄位置との間で往復移動させるピグセット装置と、を備え、前記ピグセット装置は、ダイヤフラムとそのダイヤフラムを変位させるアクチュエータと備え、前記ダイヤフラムの変位に伴い前記ピグが前記待機状態の位置と前記洗浄位置との間で変位するように構成し、前記ピグ発射装置は、前記ピグの発射口と反対側の後端面が開口し、前記ダイヤフラムは前記後端面の開口部位を閉塞するように装着するように構成した。
【0011】
本発明によれば、ダイヤフラムの変位を利用してピグの位置を調整するようにしたため、システムを閉空間・クローズな環境に置くことができ、CIP(定置洗浄)およびSIP(定置滅菌)システムに適合させることができる。また、ピグは、ダイヤフラムの変位によりその位置を換えるため、ダイヤフラムの変位量を制御することで、ピグを所望の位置にセットすることができる。また、ピグのセットは、アクチュエータによりダイヤフラムを変位させることで行うので、作業・処理も簡単となる。さらにピグ発射装置は、ピグの発射口と反対側の後端面が開口し、前記ダイヤフラムは前記後端面の開口部位を閉塞するように装着したため、密閉空間を簡単な構成で実現できる。
【0012】
(2)前記ピグ発射装置は、本体の下側に、下方に向けて突出する排出管を備え、前記ピグ発射装置の内部空間内に流入した洗浄液が、前記排出管を介して外部に排出可能とするとよい。このようにすると、洗浄後の洗浄液が、吸引ポンプ等を設けることなく排出管を介して排出することができるのでよい。洗浄液は、ピグ発射装置の内部を常時流すようにしてもよいし、(3)前記排出管からの流出を阻止し、前記ピグ発射装置の内部空間に洗浄液を貯留可能とするように構成してもよい。(4)洗浄液を貯留するようにした場合、例えば前記ピグの発射口側から洗浄液が供給されるようにし、前記ピグが前記洗浄位置に存在している場合には、前記発射口側から供給される前記洗浄液が前記ピグ発射装置の内部空間に流入可能とするように構成するとよい。
【0013】
(5)前記ピグ発射装置は、前記ピグを収納する筒状の収納部を備え、前記収納部は、
その側面にスリットが形成され、そのスリットを介して前記流体移送配管の内部空間と前
記ピグ発射装置の内部空間とが連通可能とするとよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、簡単な構成で、ピグの洗浄を行うためのシステムを閉空間・クローズな環境に置くことができ、CIP(定置洗浄)およびSIP(定置滅菌)システムに適合させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】(a)は本発明に係るピグ洗浄装置が組み込まれたシステムの一例を示す図であり、(b)はピグの一例を示す図である。
図2】本実施形態のピグ洗浄装置を示す図である。
図3】ピグ洗浄装置の作用を説明する図である。
図4】本実施形態のピグ洗浄装置の分解図である。
図5】ピグ発射口要素とピグを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について図面に基づき、詳細に説明する。なお、本発明は、これに限定されて解釈されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加え得るものである。
【0017】
図1は、本発明に係るピグ洗浄装置が実装されるピグ・システムの一例を示している。ピグ・システム1は、例えば化学・薬品・食品等におけるプロセス設備に実装される。係るプロセス設備は、流体の搬送経路となる流体移送配管2を備える。流体移送配管2には、例えば図示省略する原料流体・製品流体を貯留するタンクに貯留している原料流体等が流れ込み、その原料流体等が流体移送配管2内を移動し、図示省略する別のタンク等に移送する。流体移送配管2は、任意の配管レイアウトをとる。図では、水平に延びる第一配管部2aと、その第一配管部2aの両端にそれぞれ位置する第二配管部2b,第三配管部2cと、第一配管部2aの中央から上方にのびる第四配管部2dを備える。第四配管部2dの先には、別途配管が連結される。第二配管部2bと第三配管部2cは、下方傾斜状に配置され、第一配管部2aとの連結部位よりも先端側の方が低位置になる。
【0018】
本実施形態における流体は、例えばクリームなどの粘性の高い流体である。その液体は、第四配管部2dの先につながる別途配管から流れ込み、第一配管部2a内に進み、第二配管部2bや第三配管部2cに移動する。
【0019】
一方、流体移送配管2の内部には、ピグ3を挿入配置する。ピグ3は、弾力性を有し、弾性変形して撓んだり元の形状に弾性復帰したりする可撓弾性体から構成する。可撓弾性体としては、例えばシリコンゴム・合成ゴム等を用いると良い。このピグ3は、外周を弾性変形させた状態で流体移送配管2内を移動する。
【0020】
ピグ3は、略円柱状の本体3aの軸方向両端にそれぞれ首部3bを介して球状部3cを連結した外観構成をとる。本体3aは軸方向の中央に行くに従って外径が徐々に細くなるくびれた形状となる。そして軸方向の両端の接触部位3eの外径R2が、流体移送配管2の内径より若干大きい設定とする。また、ガイドとして機能する球状部3cの外径R1は、流体移送配管2の内径より一回り小さい設定とする。これにより、流体移送配管2内に存在するピグ3は、接触部位3eが流体移送配管2の内周面に接触し、例えば第一配管部2aのように直線部分に位置する球状部3cは当該内周面に非接触の状態となる。また、例えば第二配管部2bと第一配管部2aの接続部分のように配管の進行方向が変位する部位では、進行方向前側に位置する球状部3cが配管の内周面に接触し、例えば首部3bが適宜屈曲しながら球状部3cが流体移送配管2内を前進し、それに続いて本体3aも移動する。このとき、本体3aの接触部位3eは、流体移送配管2の内周面に接触した状態のまま移動するため、例えばピグ3の進行方向の前方に位置する流体移送配管2内の流体は、ピグ3に押し出されて前方に移動する。
【0021】
さらに一方の球状部3c内には、磁石3dを埋め込み設置する。この磁石3dが発する磁界を流体移送配管2の外部に設けた磁気センサで検知することで、流体移送配管2における磁石3dひいてはピグ3の位置を検知する。
【0022】
第二配管部2bと第三配管部2cの先端には、それぞれピグ発射装置10を接続する。ピグ発射装置10は、ガス圧・水圧等の圧力をピグ3に与え、その圧力を利用してピグ3を前方に押し出すものであり、本実施形態ではガス圧を利用している。
【0023】
一方のピグ発射装置10から発射されたピグ3は、流体移送配管2内を移動し、他方のピグ発射装置10に至る。そして、係る他方のピグ発射装置10から発射されたピグ3は、流体移送配管2内を上記と逆方向に移動して一方のピグ発射装置10に至る。このように本実施形態では、ピグ3は流体移送配管2内を往復移動するようになっている。そして本実施形態のピグ発射装置10は、ピグ3を発射するランチャーとしての機能と、ピグ3を受け取るキャッチャーとしての機能を備える。
【0024】
プロセス設備の稼働時、すなわち、流体移送配管2内を流体が移動する際には、ピグ3は、第二配管部2b側のピグ発射装置10と第三配管部2c側のピグ発射装置10のいずれかに位置している。そして、後述するようにピグ3が存在しているピグ発射装置10に接続される第二配管部2bあるいは第三配管部2cは、当該ピグ3により閉塞される。一方、ピグ3が存在していないピグ発射装置10の内部空間は、接続される第三配管部2cあるいは第二配管部2bと連通している。よって、仮に第三配管部2c側のピグ発射装置10にピグ3が存在している場合、プロセス設備の稼働時では、第四配管部2dを経由して第二配管部2b,第三配管部2cに流れ込んできた流体は、先端がピグ3により閉塞された第三配管部2c内では貯留し、第二配管部2b内ではさらに前進移動してピグ発射装置10の内部空間に流れ込む。さらに、後述するように、ピグ発射装置10は、排出管を備えており、ピグ発射装置10内に流れ込んだ流体は、係る排出管から外部に排出される。また、第二配管部2b側のピグ発射装置10にピグ3が存在している場合、上記と逆に流体は第三配管部2cからピグ発射装置10内に移動する。つまり、ピグ発射装置10は、プロセス設備の稼働時では、流体の移動経路の一部を構成する。さらにピグ発射装置10は、ピグ3を洗浄する機能も備える。それら各機能を備えたピグ発射装置10の具体的な構成は、以下の通りである。
【0025】
図2図5に示めすように、ピグ発射装置10は、筒状の基部要素11と、基部要素11に装着されるピグ発射口要素12を備える。基部要素11は、前後が開口された筒状本体11aを有し、筒状本体11a内に前端開口部11bからピグ発射口要素12が挿入配置される。筒状本体11aの外周面の後半部位には、その上方側にピグ発射用エア入口管11cを突出形成する。このピグ発射用エア入口管11cには、図示省略の圧縮空気用配管が接続され、ピグ発射用エア入口管11cから筒状本体11aの内部空間内に圧縮空気が供給される。
【0026】
また、筒状本体11aの外周面の後半側には、その下方側に排出管11dを突出形成する。この排出管11dは、筒状本体11aの内部空間と連通している。さらに、排出管11dの先端には、図示省略する配管が接続される。ピグ発射装置10内に流入してきた流体は、排出管11dを経由して外部の配管に流出可能となる。さらに図示省略するが、ピグ発射用エア入口管11c並びに排出管11d自身、あるいはそれらに接続される外部の配管には開閉バルブが設けられており、筒状本体11aを閉塞し、外部の配管等との間での流体の出入りを阻止することができる。
【0027】
ピグ発射口要素12は、前後が開口された円筒体を基本とし、外周面の軸方向中央部に外側に突出するフランジ部12aを有する。フランジ部12aの前方側が外部に露出する発射口部12bとなり、フランジ部12aの後方側が収納部12cとなる。発射口部12bと収納部12cは、連通している。ピグ発射口要素12は、収納部12cを基部要素11の筒状本体11a内に挿入した状態で、基部要素11と連結する。この連結した状態では、フランジ部12aが筒状本体11aの前端開口部11bを閉塞する。
【0028】
また、発射口部12bの内径R3は、ピグ3の本体3aの両端の接触部位3eの外径R2よりは小さく、球状部3cの外径R1よりは大きい設定とする。発射口部12bの先端縁12b′を第二配管部2bあるいは第三配管部2cの先端と付き合わせた状態で連結する。
【0029】
そして本実施形態では、発射口部12bの内径R3は、接続する第二配管部2bあるいは第三配管部2cの内径と等しくしている。よって、発射口部12bと第二配管部2bあるいは第三配管部2cとを付き合わせて連結した状態では、内周面はスムーズに連続した状態となる。よって、ピグ3は、発射口部12bと、第二配管部2bあるいは第三配管部2cとの間でスムーズに行き来する。さらに、発射口部12bの内径R3は、ピグ3の接触部位3eの外径R2よりも小さいため、ピグ3の接触部位3eが発射口部12b内に位置する状態では、接触部位3eが発射口部12bの内周面に密着する。これにより、第二配管部2bあるいは第三配管部2c内を移動してきた流体は、そのまま発射口部12b内にも進入してくるが、ピグ3によりそれ以上の移動が阻止される。
【0030】
また、収納部12c内にピグ3が存在しない場合、ピグ発射口要素12は前後が開口しているため、発射口部12b内に進入してきた流体は、さらにそのまま収納部12c側に進み、収納部12cの先端開口部から排出される。そして、係る排出された流体は、基部要素11の筒状本体11aの内部空間に至り、排出管11dを経由して外部の配管に流出する。つまり、プロセス設備の稼働時では、ピグ発射口要素12(発射口部12b,収納部12c)並びに基部要素11(筒状本体11a,排出管11d)も流体の移動経路の一部を構成する。
【0031】
また、収納部12cには、その外周面に軸方向に延びるスリット12dが形成される。このスリット12dによっても収納部12cの内外が連通する。よって、例えば収納部12c内にピグ3が存在しており、仮に収納部12cの先端開口部が閉塞するようなことがあったとしても、スリット12dを介して収納部12cの内部と、筒状本体11aの内部空間とは連通する。
【0032】
さらに本実施形態では、収納部12cの前後方向両側の端部12eは、それぞれ先端に向けて径が広くなる拡開部となる。それぞれの端部12eの広がった部分の内径は、ピグ3の接触部位3eの外径R2よりも大きくする。また、図4に示すように、スリット12dの発射口部12b側の一端は、収納部12cの端部12e形成領域にまで位置する。これにより、ピグ3の接触部位3eが収納部12cに位置する状態では、発射口部12bと筒状本体11aとは、端部12eに位置するスリット12dを介して連通する(図3(b)参照)。
【0033】
ピグ発射装置10は、ピグ3の洗浄機能を備えている。洗浄機能は、ピグ発射装置10内に位置するピグ3を洗浄するものである。すなわち、上述したようにプロセス設備の稼働時では、ピグ3は、一方の接触部位3eが発射口部12bに位置し、一方の配管部を閉塞する待機状態となる。この待機状態からピグ3が後退移動し、接触部位3eが発射口部12bから離脱してピグ3の本体3aの全体が収納部12cに位置した状態でピグ発射装置10の内部に洗浄液を充填し、ピグ3を洗浄する。よって、ピグ発射装置10の内部空間が、洗浄室を構成する。
【0034】
本実施形態のピグ発射装置10は、ピグ3を待機状態の位置と、洗浄する際の位置にそれぞれセットするためのピグセット装置20を備えた。このピグセット装置20は、アクチュエータ21とダイヤフラム22とを備える。アクチュエータ21は、電磁石等の駆動源を内蔵し、外部に突出する出力ピン21aを軸方向に往復移動させる。また、この出力ピン21aが突出する面には、円筒状の外周壁21bが設けられる。外周壁21bは、その中心位置が、出力ピン21aと一致する。そして、外周壁21bの先端面と、筒状本体11aの端面とを突き合せた状態でアクチュエータ21と基部要素11を連結する。
【0035】
ダイヤフラム22は、ダイヤフラム本体24と、そのダイヤフラム本体24に連結する台座部23を備える。台座部23の裏面の中央に設けた取付部23aに、出力ピン21aの先端を嵌め併せて連結する。これにより、出力ピン21aの往復動作に伴い、台座部23も往復移動する。台座部23の表面の頂部23bは平面となり、頂部23bの中心に凹部23cを形成する。となる。
【0036】
皿状のダイヤフラム本体24は、表面24bが凸の状態(図3(a),図4等参照)と、裏面24cが凸の状態(図3(b)参照)を遷移する。ダイヤフラム本体24の裏面24cの中央に設けた凸部24aと、台座部23の頂部23bに形成した凹部23cを符合させた状態で接着一体化する。また、ダイヤフラム本体24の外径は、台座部23の外径より一回り大きい寸法に設定しており、ダイヤフラム本体24が表面24bが凸の状態のとき、台座部23はダイヤフラム本体24の裏面24c側の内部空間に入り込み、台座部23の頂部23bがダイヤフラム本体24の裏面に面接触して支える。よって、仮にダイヤフラム本体24がゴム等の弾性体で剛性が比較的低くても、台座部23が金属あるいは樹脂等の適宜の強度を持った材料で構成することで、台座部23により荷重を受けることができる。
【0037】
さらにダイヤフラム本体24の外周縁は、アクチュエータ21の外周壁21bの先端面と、基部要素11の筒状本体11aの端面との間で挟み込まれて支持・固定される。これにより、筒状本体11aの後端開口部11eは、ダイヤフラム本体24により閉塞される。そして、ダイヤフラム本体24の外周縁が固定されることで、アクチュエータ21の出力ピン21aが往動作により前進して大きく突出すると、図3(a)に示すように台座部23がダイヤフラム本体24を前方に付勢し、表面24bが凸の状態にする。この状態でピグ3の球状部3cがダイヤフラム本体24に接触すると、前側の接触部位3eが発射口部12b内に位置する待機状態となる。
【0038】
一方、アクチュエータ21の出力ピン21aが複動作により後退すると、図3(b)に示すように台座部23がダイヤフラム本体24を後方に引っ張るように付勢し、裏面24cが凸の状態にする。この状態でピグ3の球状部3cがダイヤフラム本体24に接触すると、本体3aが収納部12c内に位置することができるようになる。
【0039】
次に、上述した構成からなるプロセス設備における洗浄方法を説明する。上述したようにプロセス設備の稼働時は、ピグ3は一方のピグ発射装置10内で待機状態となっており、第四配管部2dから第一配管部2a内に流入した流体は、ピグ3が存在しないピグ発射装置10の内部を下流側の経路に流出する。
【0040】
そして、例えば使用する流体を換えるなど、流体移送配管2やピグ3を洗浄する必要が発生した場合には、まずピグ3が待機状態にあるピグ発射装置10を動作させ、ピグ3を発射する。具体的には、当該ピグ発射装置10の内部にピグ発射用エア入口管11cから圧縮空気を供給する。すると、ピグ発射装置10の基部要素11の内部空間のエア圧力が上昇し、かかるエア圧力がピグ3にかかる。これにより、ピグ3は前方へ移動し、発射口部12bから流体移送配管2に進み、反対側のピグ発射装置10に至る。この移動時に、ピグ3は、進行歩行前方側にある流体移送配管2内に残っている流体を付勢し、流体を押しながら前進するこれにより、流体移送配管2内の流体は、ピグ発射装置10内に流れ込み、排出管11dを経由して外部の配管に押し出される。そして、ピグ3は、係る反対側のピグ発射装置10内において待機状態となる。
【0041】
次いで、当該反対側のピグ発射装置10が動作し、待機状態にあるピグ3を発射させる。これにより、係るピグ3は、流体移送配管2内を移動し、元の一方のピグ発射装置10に至る。このとき、一方のピグ発射装置10側に接続したピグセット装置20のアクチュエータ21を作動させ、出力ピン21aを複動作させて後退させ、図3(b)に示すように台座部23がダイヤフラム本体24を後方に引っ張るように付勢し、裏面24cが凸の状態にする。すると、一方のピグ発射装置10内に進入してきたピグ3は、球状部3cがダイヤフラム本体24に接触するまで進み、本体3aが収納部12c内に位置する。
【0042】
また、適宜のタイミングで、ピグ発射装置10の排出管11dやピグ発射用エア入口管11cに連係する開閉バルブを閉じ、その後、流体移送配管2内に洗浄液を供給する。すると、係る洗浄液は、流体移送配管2からピグ発射装置10の発射口部12b内に進入する。そして、ピグ3の本体3aが収納部12cに位置しているため、発射口部12b内の洗浄液は、収納部12c側に進入し、さらに収納部12cからスリット12dを経由して筒状本体11aの内部空間に至る。排出管11dが閉じているため、洗浄液の流出経路が無くなり、流体移送配管2並びにピグ発射装置10の内部空間が洗浄液で充満する。これにより、ピグ3の外周面が洗浄される。
【0043】
その後、排出管11dに連係する開閉バルブを開くと、ピグ発射装置10内に充填されていた洗浄液、ひいては、流体移送配管2の内周面内の洗浄液が、排出管11dを経由して外部の配管側へ排出される。本実施形態では、排出管11dを筒状本体11aの下側であって、下方に向けて突出するようにしたため、ピグ発射装置10内に充填された洗浄液は、自重により外部に排出される。よって、特に吸引ポンプなど設けなくてもよく、装置の簡易化、小型化を図ることができるので良い。さらに、第二配管部2bあるいは第三配管部2cを下方傾斜状にし、ピグ発射装置10自体も斜めに取り付けるようにしたため、流体移送配管2内の洗浄液も、自重によりピグ発射装置10内に流れ込み、そのまま外部に排出できるので好ましい。続いて、再び開閉バルブを閉じ、蒸気を充満させることで滅菌を行う。
【0044】
上記のようにしてピグ3の洗浄と滅菌が行われたならば、アクチュエータ21を動作させ、出力ピン21aを往動作により前進して所定量突出させ、ダイヤフラム22を前方に付勢し、ダイヤフラム本体24を前方に凸、表面24bが凸の状態にする。これにより、図3(a)に示すように、ピグ3は前方に押し出され、前側の接触部位3eが発射口部12b内に位置し、待機状態になる。
【0045】
上述した実施形態では、流体としてクリームのように粘性の高い流体としたが、本発明が適用される装置における流体は、これに限ることは無く粘性が低いものでも良いし、液体でも良い。また、上述した実施形態では、ピグ3の使用形態として、流体移送配管2内に残留する流体を押し出すようにしたが、本発明はこれに限ることは無く、例えば流体移送配管の内周壁に付着する付着物を除去するものなど各種のものに適用できる。
【符号の説明】
【0046】
2 流体移送配管
2a 第一配管部
2b 第二配管部
2c 第三配管部
2d 第四配管部
3 ピグ
3a 本体
3c 球状部
3e 接触部位
10 ピグ発射装置
11 基部要素
11a 筒状本体
11b 前端開口部
11c ピグ発射用エア入口管
11d 排出管
12 ピグ発射口要素
12b 発射口部
12c 収納部
12d スリット
20 ピグセット装置
21 アクチュエータ
22 ダイヤフラム
23 台座部
24 ダイヤフラム本体
【要約】
【課題】 簡単な構成で、ピグの洗浄を行うシステムを閉空間・クローズな環境に置き、CIP(定置洗浄)・SIP(定置滅菌)に適するようにする。
【構成】 流体を移送する流体移送配管に接続され、その流体移送配管に対して待機状態にあるピグ3を発射するためのピグ発射装置10と、ピグ発射装置内におけるピグの位置を待機状態の位置(a図参照)と、その待機状態から後退移動して流体移送配管の内部空間とピグ発射装置の内部空間を連通する洗浄位置(b図参照)との間で往復移動させるピグセット装置20と、を備える。ピグセット装置は、ダイヤフラム22とそのダイヤフラムを変位させるアクチュエータ21と備え、ダイヤフラムの変位に伴いピグが待機状態の位置と洗浄位置との間で変位するように構成した。
【選択図】 図3
図1
図2
図3
図4
図5