(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5659412
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】ディーゼルエンジンのタイミングチェーン騒音低減装置
(51)【国際特許分類】
F02B 67/06 20060101AFI20150108BHJP
F02F 7/00 20060101ALI20150108BHJP
F16H 55/30 20060101ALI20150108BHJP
【FI】
F02B67/06 G
F02F7/00 K
F16H55/30 C
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2010-91209(P2010-91209)
(22)【出願日】2010年4月12日
(65)【公開番号】特開2011-220254(P2011-220254A)
(43)【公開日】2011年11月4日
【審査請求日】2013年3月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500518050
【氏名又は名称】起亞自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鄭 炳 煥
【審査官】
後藤 泰輔
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−036174(JP,A)
【文献】
特表2008−509309(JP,A)
【文献】
特開2003−139160(JP,A)
【文献】
特開2000−008987(JP,A)
【文献】
特開2003−130143(JP,A)
【文献】
特開平09−209776(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 61/00−79/00
F16H 7/00−7/24,57/00−57/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向先端側に向けて縮径するように傾いて形成された傾斜軸部分を有する高圧ポンプ駆動シャフトにタイミングチェーンの回転動力を伝達するために前記タイミングチェーンが連結される高圧ポンプスプロケットの半径方向の振動を抑制する第1環状ガイドと、
前記第1環状ガイドと相互作用するようにタイミングチェーンカバーの軸方向先端側部分で軸方向先端側に向けて一体に突出して形成された第2環状ガイドと、を備え、
前記高圧ポンプ駆動シャフトの前記傾斜軸部分から拡径された基端側部分が貫通して嵌められる前記タイミングチェーンカバーの組み立て孔の径方向外側に形成された前記第2環状ガイドの直径が、前記高圧ポンプ駆動シャフトの前記傾斜軸部分が貫通して嵌められる前記高圧ポンプスプロケットの組み立て孔の径方向外側で軸方向基端側に向けて一体に突出して形成された前記第1環状ガイドの直径より大きく形成され、
前記第2環状ガイドが第1環状ガイドの内部に挿入されて径方向に30〜60マイクロメーターのギャップが形成されていることを特徴とするディーゼルエンジンのタイミングチェーン騒音低減装置。
【請求項2】
前記ギャップに潤滑オイルを供給するためにオイルジェットパイプが前記タイミングチェーンカバーに設けられることを特徴とする請求項1に記載のディーゼルエンジンのタイミングチェーン騒音低減装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジンのタイミングチェーン騒音低減装置に係り、特にタイミングチェーンが巻かれて結合されるスプロケットをタイミングチェーンカバーで半径方向に支持し、タイミングチェーンとスプロケットの噛み合い性の改善によってタイミングチェーンの駆動騒音を低減したディーゼルエンジンのタイミングチェーン騒音低減装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両に一般的に適用されているディーゼルエンジンのタイミングチェーンシステムは、
図1に示すように、ディーゼルエンジンのクランクスプロケット1に高圧ポンプスプロケット2がタイミングチェーン3を介して一体で回転するように連結され、高圧ポンプスプロケット2にはカムスプロケット4がタイミングチェーン3を介して一体で回転するように連結される。
【0003】
タイミングチェーン3の種類としてはローラチェーンとブッシュチェーンおよびサイレンスチェーン(silence chain)などがあるが、ローラチェーンは耐久性の側面で不利であり、サイレンスチェーンは原価の側面で不利であるため、通常、ブッシュチェーンが適用されている。
ブッシュチェーンを適用している従来のタイミングチェーン3は、エンジン駆動時にチェーンとスプロケットの噛み合いによる噛み合い音が大きく発生して車両のNVH性能を低下させる欠点があった。
【0004】
すなわち、
図2に断面を詳しく示すように、高圧ポンプスプロケット2は高圧ポンプの駆動シャフト5に嵌められて一体回転するように取り付けられ、高圧ポンプ駆動シャフト5はタイミングチェーンカバー6を貫通して突出するように設けられている。ディーゼルエンジンのクランクスプロケット1は、ディーゼルエンジンの駆動によって回転し、タイミングチェーン3を介して高圧ポンプスプロケット2が回転して高圧ポンプを駆動するようになっている。この時、タイミングチェーン3には張力が発生し、このような張力は高圧ポンプスプロケットを通して高圧ポンプ駆動シャフト5に伝達され、駆動シャフト5に曲げ振動が発生し、これは、スプロケットとタイミングチェーンの円滑な転がり接触を妨害して噛み合い騒音を発生させる原因となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−325355公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記問題点を解決するためになされたものであり、高圧ポンプの駆動シャフトに嵌められて一体回転するように取り付けられた高圧ポンプスプロケットをタイミングチェーンカバーで半径方向に適切に支持させ、高圧ポンプ駆動シャフトの曲げ振動を抑制して高圧ポンプスプロケットとタイミングチェーンの円滑な噛み合いを助長し、タイミングチェーンの駆動時に作動騒音を効果的に低減できるようにしたディーゼルエンジンのタイミングチェーン騒音低減装置を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記のような目的を達成するための本発明は、高圧ポンプ駆動シャフトにタイミングチェーンの回転動力を伝達するために前記タイミングチェーンが連結される高圧ポンプスプロケットの半径方向の振動を抑制する第1環状ガイドと、前記第1環状ガイドと相互作用するようにタイミングチェーンカバーに形成された第2環状ガイドと、を備えたことを特徴とする。
【0008】
前記第1環状ガイド及び第2環状ガイドが環状で形成され、前記第1環状ガイドが第2環状ガイドの内部に挿入されるか、または、前記第2環状ガイドが第1環状ガイドの内部に挿入されてギャップが形成されることを特徴とする。
【0009】
前記タイミングチェーンカバーに形成された前記第2環状ガイドの直径が前記高圧ポンプスプロケットに形成された前記第1環状ガイドの直径より大きく形成されることを特徴とする。
【0010】
前記ギャップに潤滑オイルを供給するためにオイルジェットパイプが前記タイミングチェーンカバーに設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るディーゼルエンジンのタイミングチェーン騒音低減装置によれば、高圧ポンプ駆動シャフトに嵌められて取り付けられた高圧ポンプスプロケットがタイミングチェーンの張力によって半径方向に振動する時、タイミングチェーンカバーに形成された環状のガイドと高圧ポンプスプロケットに形成された環状のガイドの相互作用によって高圧ポンプスプロケットの半径方向の振動が効果的に抑制され、高圧ポンプスプロケットとタイミングチェーンの噛み合い性が効果的に改善されて円滑な動力伝達がなされるだけでなく、噛み合い性の不良によるタイミングチェーンの作動騒音が効果的に低減されて車両のNVH性能が向上する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】従来技術によりタイミングチェーンを介して各スプロケットが連結された状態の斜視図である。
【
図2】従来技術により高圧ポンプスプロケットが高圧ポンプ駆動シャフトに嵌められて結合された状態の断面図である。
【
図3】本発明に係るディーゼルエンジンのタイミングチェーン騒音低減装置の斜視図である。
【
図4】本発明に係るディーゼルエンジンのタイミングチェーン騒音低減装置が備えられた高圧ポンプスプロケットが高圧ポンプ駆動シャフトに嵌められて結合された状態の断面図である。
【
図5】本発明に係るオイル供給装置の構成図である。
【
図6】本発明と従来のタイミングチェーン作動騒音の比較グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を添付した図面に基づいてより詳しく説明する。
図3は、本発明に係るディーゼルエンジンのタイミングチェーン騒音低減装置の斜視図である。
図3に示す通り、高圧ポンプスプロケット10は、円形のスプロケットボディー10aと、このスプロケットボディー10aの中央に高圧ポンプ駆動シャフトに嵌めて結合するために貫通して形成された組み立て孔10b、およびスプロケットボディー10aの円周面に形成された複数の歯型10cを各々備える。
【0014】
組み立て孔10bから半径方向の外側には、円周方向に環状をなす第1環状ガイド10dが軸方向に一体に突出して形成される。
また、各スプロケットを駆動させるタイミングチェーンをカバーして保護するタイミングチェーンカバー11には高圧ポンプ駆動シャフト12が貫通して嵌められるように組み立て孔11aが形成され、組み立て孔11aの半径方向の外周には円周方向に環状をなす第2環状ガイド11bが軸方向に一体に突出して形成され、第2環状ガイド11bは高圧ポンプスプロケットの第1環状ガイド10dより大きい直径を有するように形成される。
【0015】
図4に断面として詳しく示す通り、タイミングチェーンカバー11に形成された組み立て孔11aを通して高圧ポンプの駆動シャフト12が貫通し嵌められる。この状態で駆動シャフト12にタイミングチェーンの回転力を伝達するために高圧ポンプスプロケット10が一体で回転するように嵌められて組み立てられる。この場合、高圧ポンプスプロケット10の第1環状ガイド10dはタイミングチェーンカバー11の第2環状ガイド11bの内側に挿入される。
【0016】
上記のように高圧ポンプスプロケットの第1環状ガイド10dがタイミングチェーンカバー11の第2環状ガイド11bの内部に挿入された状態で、第1環状ガイド10dと第2環状ガイド11bの間に30〜60マイクロメーター(μm)程度のギャップが形成されるよう各ガイド(10d、11b)のサイズを適切に形成する。
【0017】
また、
図5に詳しく示すように、第1環状ガイド10dと第2環状ガイド11bの間に形成されるギャップにオイルを供給して潤滑するために、タイミングチェーンカバー11にはオイルジェットパイプ13を設け、エンジンオイルがオイルジェットパイプ13を介して第1環状ガイド10dと第2環状ガイド11bの間に形成されるギャップに適切に供給されるようにして各ガイドを潤滑する。
【0018】
上記のように高圧ポンプスプロケット10を半径方向に支持する第1環状ガイド10dと第2環状ガイド11bを形成することによって、高圧ポンプスプロケット10がタイミングチェーンの回転駆動によって発生する張力を受け、半径方向に振動する時に、第1環状ガイド10dと第2環状ガイド11bがスプロケットを半径方向に適切に支持する。これにより、タイミングチェーンと高圧ポンプスプロケットの噛み合い性が向上するだけでなく、
図6において比較グラフで示すように、従来に比べ、タイミングチェーンの作動騒音が顕著に改善され、車両のNVH性能が効果的に向上する。
【0019】
一方、高圧ポンプスプロケットの第1環状ガイド10dの直径をタイミングチェーンカバーの第2環状ガイド11bの直径より大きく形成し、高圧ポンプスプロケットの第1環状ガイド10dの内部にタイミングチェーンカバーの第2環状ガイド11bが挿入されるように形成することもできる。
【符号の説明】
【0020】
1 クランクスプロケット
2、10 高圧ポンプスプロケット
3 タイミングチェーン
4 カムスプロケット
5 駆動シャフト
6 タイミングチェーンカバー6
10d 第1環状ガイド
11 タイミングチェーンカバー
11b 第2環状ガイド
12 高圧ポンプ駆動シャフト
13 オイルジェットパイプ