特許第5659424号(P5659424)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5659424減少された固形物を含有するオリーブ果汁抽出物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5659424
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】減少された固形物を含有するオリーブ果汁抽出物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 1/212 20060101AFI20150108BHJP
   A23K 1/16 20060101ALI20150108BHJP
   A61K 8/97 20060101ALI20150108BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20150108BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20150108BHJP
【FI】
   A23L1/212 A
   A23K1/16 304C
   A61K8/97
   A61K8/34
   A61Q19/00
【請求項の数】17
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2010-521351(P2010-521351)
(86)(22)【出願日】2008年8月19日
(65)【公表番号】特表2010-536353(P2010-536353A)
(43)【公表日】2010年12月2日
(86)【国際出願番号】EP2008006790
(87)【国際公開番号】WO2009024318
(87)【国際公開日】20090226
【審査請求日】2011年8月1日
(31)【優先権主張番号】07016344.9
(32)【優先日】2007年8月21日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100094318
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 行一
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(72)【発明者】
【氏名】ウェルリ, クリストフ
【審査官】 小暮 道明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−219433(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/039262(WO,A1)
【文献】 国際公開第2006/005986(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A23K 1/
A61K 8/
A61Q19/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オリーブ果汁中に存在する固形物の少なくとも一部を除去する方法であって、
a)体積でオリーブ果汁の40〜200%に等しい量で、水混和性またはほぼ水混和性の溶媒を添加し、2相を形成すること、および
b)2相を分離すること
を含んでなり、
ステップa)の前に、ポリフェノール濃度が増加するまで、オリーブ果汁を60℃〜100℃の高温に維持すること、およびpHを6〜10まで上昇させることを含んでなるオリーブ果汁のポリフェノール濃度を増加させることを更に含む、方法。
【請求項2】
溶媒が、C〜Cアルコールおよびそれらの混合物からなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
溶媒がエタノールである請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ステップb)が、濾過ステップ、遠心分離ステップ、デカンテーションステップ、相の層を除去するステップ、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1ステップを含んでなる請求項1に記載の方法。
【請求項5】
c)ステップa)の溶媒を回収すること
をさらに含んでなる請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
pHを6未満に維持しながら、蒸発によって溶媒を回収する請求項5に記載の方法。
【請求項7】
存在する固形物が繊維ではない請求項1に記載の方法。
【請求項8】
pHが少なくとも10分間不変のままとなるまで、高温が維持される請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
NaOHもしくはKOHまたはそれらの混合物の添加によってpHが調節される請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
高温が60〜90℃であり、pHが7〜9である請求項8に記載の方法。
【請求項11】
オリーブ果汁を凍結乾燥させるか、または噴霧乾燥させることをさらに含んでなる請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法によって製造された苦味がないヒドロキシチロソル富化オリーブ果汁抽出物。
【請求項13】
少なくとも2〜8%のヒドロキシチロソルおよび他のオリーブポリフェノールを含んでなるが、固形物を含まない、請求項12に記載の苦味がないヒドロキシチロソル富化オリーブ果汁抽出物。
【請求項14】
粉末状である、請求項12または13に記載の苦味がないヒドロキシチロソル富化オリーブ果汁抽出物。
【請求項15】
請求項12〜14のいずれか一項に記載のオリーブ果汁抽出物を含んでなる栄養組成物。
【請求項16】
請求項12〜14のいずれか一項に記載のオリーブ果汁抽出物を含んでなる飼料組成物。
【請求項17】
請求項12〜14のいずれか一項に記載のオリーブ果汁抽出物を含んでなる化粧品組成物。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、減少された量の固形物を含有するオリーブ果汁抽出物と、これらの抽出物を製造する方法に関する。オリーブ果汁抽出物は強力な酸化防止活性を有するため、栄養補給剤として使用可能である。これらの新規抽出物を含有する栄養組成物も本発明の一部である。
【0002】
[発明の背景]
オリーブ油とオリーブ抽出物の薬効については広く認識されている。オリーブ油を製造するために、オリーブ果実をペースト状に粉砕する。このペーストに圧力を加え、粉砕された果実から油を分離する。押圧することによって、オリーブ油が提供されることに加えて、多くの水溶性植物化学物質を含有するオリーブ果実の水含有物も放出される。この水は、「植物水、オリーブ果汁およびオリーブ廃水」を含むいくつかの名前で知られている。興味深いことに、オリーブ果汁およびその処分については、オリーブ油製作者にとっては問題となるが、このオリーブ果汁は、有利な栄養特性を有し得るフェノール化合物の望ましい豊富な供給源であり得る。
【0003】
過去には、栄養オリーブ果汁を濃縮する方法は、時間がかかる培養、濾過および/または遠心分離および/または噴霧乾燥ステップを含んでいた。もう1つの問題は、オリーブ果汁のにおい、苦味および混濁のため、ならびに活性ポリフェノールの1種であるヒドロキシチロソルの含有量が低いため、食品または栄養補助食品での乾燥または液体オリーブ果汁の有用性は限定的であることである。
【0004】
したがって、全て天然で、ヒドロキシチロソルが豊富であり、苦味がないオリーブ果汁抽出物であって、効率的で費用効果のよいものを製造するためのより良好な方法を開発することが望ましいであろう。
【0005】
[発明の説明]
本発明により、全て天然で、ヒドロキシチロソルが豊富であり、苦味がないオリーブ果汁抽出物を製造するための新規プロセスが提示される。新規果汁抽出物、および本新規オリーブ果汁抽出物を含有する組成物も本発明の一部である。したがって、本発明は、オリーブ果汁中に存在する固形物の少なくとも一部を除去する方法であって、a)(体積で)オリーブ果汁の約40〜400%に等しい量で、水混和性またはほぼ水混和性の溶媒を添加し、2相を形成すること、およびb)2相を分離することを含んでなる方法に関する。
【0006】
典型的なオリーブは、約50%の水、22%の油、19%の炭水化物、6%のセルロース、2%のタンパク質、ならびに(組み合わせて)0.2%のオレウロペイン(oleuropein)およびヒドロキシチロソルを含有する。果実(およびその後の抽出物)の正確な構成は、使用されるオリーブの品種、収穫の時期、さらには成長条件次第で異なることは理解されるべきである。
【0007】
文献報告(例えば、Brianteら,2002,J.Biotechn.93:109−119,およびSoler−Rivasら 2000,J Sci Food Agric 80:1013−1023を参照のこと)に反して、本発明に従って、苦味をオリーブ果汁に与える未知の化合物は、ヒドロキシチロソルでもオレウロペインでもないことが見出された。理論に束縛されることは望ましくないが、それらは不安定なフェノールエステル基を含有し得る。苦味の化合物の識別に関係なく、それらは塩基に非常に感応性であり、より高いpHでは安定でない。
【0008】
本明細書および特許請求の範囲を通して使用される場合、以下の定義が適用される。
「HT」は、ヒドロキシチロソルを意味する。
「オリーブ果汁」、「オリーブ廃水」および「植物水」は、全て交換可能に使用される用語である。それらは、オリーブ油製造の間に製造される水相を指す。それは、HTおよびオレウロペインなどの対象の化合物との炭水化物の錯体混合物によるスラリーである(結合したHTを含有し、その後分解してHTが生じてもよい)。
【0009】
[A.同時の苦味の除去およびHT量の増加]
以下のステップは、本発明の実施において、任意であるが好ましいステップである。本願と同時に出願された同時係属特許出願[代理人整理番号26252]を参照のこと。所望であれば、下記B項に記載の手順によって本プロセスを開始することができる。
【0010】
本発明のプロセスのための出発物質としてオリーブ果汁のいかなる形態が使用されてもよいが、最適な結果を得るために、本プロセスの若干の変更が必要とされてもよい。典型的に約85〜90%の水分と10〜15%の固形物質を含有する新鮮な果汁を購入して、本発明のプロセスの出発物質として使用することができる。固形物の一部または全部を除去するために供給元によって濾過された、商業的に入手可能な他の形態のオリーブ果汁も同様に適切な出発物質である。濃縮された形態(例えば3〜4倍)で購入されるか、または当該技術分野で既知の単純な蒸発技術によって使用前に濃縮されたオリーブ果汁も適切である。
【0011】
その他の場合、安定化され、乾燥凍結された形態で、安定化の目的でクエン酸が添加されたオリーブ果汁を都合よく購入してもよい。例えば、CreAgri(California,USA)からのHIDROXである。乾燥オリーブ果汁は、典型的に、約60%の炭水化物、10%の繊維、10%の脂肪および6%のポリフェノール(これは、約2%のヒドロキシチロソル、0.2%のチロソルおよび他のポリフェノールを含む)、ならびに有機酸、タンパク質およびミネラルを含有する。本発明の出発物質として、この乾燥された形態を使用するためには、水和しなければならない。得られた果汁は、好ましい出発物質である。
【0012】
本発明の一態様に従って、オリーブ果汁を高温に維持し、pHを少なくとも6まで増加させることによって、いかなる種類のオリーブ果汁のポリフェノール濃度も増加させることができることが見出された。
【0013】
高温とは広範囲に及び、すなわち、約20℃から約100℃までとし得る。実際の温度は、オリーブ果汁の沸点未満である限り、特に重要でない。好ましい温度範囲は、約60℃〜約80℃、より好ましい温度は約80℃である。
【0014】
温度の上昇とともに、果汁のpHを、未処理のオリーブ果汁での最初のpHよりも高いpHに調節しなければならない。調節されたpHは、約6〜約11の範囲になければならない。好ましいpHは約7〜約10であり、より好ましい範囲は約8〜約9である。約10を越えるpHでは、最終的なHTの分解が引き起こされる可能性があるため、これは好ましくない。pH調節可能ないかなる塩基性化合物も使用可能であり、好ましい化合物は、NaOH、KOHおよびそれらの混合物である。一般に、必要とされる量はバッチ間で異なるが、典型的な必要とされる量は、バッチの重量に基づき、約10〜15重量%である。
【0015】
高温および高pHの条件下で、結合したHTを含有する錯化合物は分解し、HTを放出する。したがって、反応が実質的に完了した後、果汁は、出発物質より多い量のHTを含有する。反応が起こっている間、pHは変化し得、そして所望のpHを維持するために、再調節が必要とされてもよい。反応間に連続的にpHを調節することが好ましい。反応が実質的に完了したことを決定する1つの方法は、pHが、少なくとも約10分間、比較的安定(すなわち比較的不変)のままであることである。バッチが約10分間の安定点に達するためにかかる時間は、バッチの個々の組成次第で非常に異なる。一般に、温度およびpHが高いほど、反応にかかる時間は短い。
【0016】
この時点で、部分的に加工されたオリーブ果汁はもはや苦くない。したがって、本発明は、上記条件までオリーブ果汁の温度およびpHを上げることを含んでなる、オリーブ果汁抽出物から苦味を除去する方法も含む。この時点で、当該技術分野で既知の処理ステップ、または、場合により、以下に提示されるステップのいずれかを使用して、所望のとおり、オリーブ果汁はプロセスであってよい。
【0017】
[B.固形物および繊維の除去]
このステップの出発物質は、上記の説明Aに従って製造された、苦味をなくし、HTが増加された果汁か、または記載された任意のステップの出発物質として適切であるとA項に記載されるもののような、いずれかの出発物質であってもよい。一般に濃縮果汁は経済的な理由のため好ましいが、この方法は様々な果汁で有効である。したがって、出発物質中には、固形物、脂肪(油)および/または繊維が存在してもよい。
【0018】
典型的に未加工のオリーブ果汁には、大量の微細な繊維が含まれる。これらは膜フィルターを詰まらせる傾向があり、膨大なメンテナンスを必要とするため、濾過することが難しい。本発明のもう1つの態様として、オリーブ果汁中に存在する繊維、残留油および脂質および/または他の固形物を凝塊形成し、それから、a)(体積で)オリーブ果汁または部分的に濃縮されたオリーブ果汁の約40〜400%に等しい量で溶媒を添加し、2相を形成し、次いで、b)2相を分離することによって容易に除去することができることが見出された。
【0019】
本プロセスに使用可能な溶媒は、n−ブタノールのような水混和性またはほぼ混和性のいかなる溶媒または溶媒混合物でもあり得る。特に最終製品が、食品中、あるいは医薬品または栄養補給製品の一部として使用される場合、アルコール、特にC1〜C4(またはそれらの混合物)が好ましく、そしてエタノールが特に好ましい。利用可能な他の溶媒としては、アセトニトリル、アセトンおよびグリコールも挙げられる。
【0020】
溶媒の量は特に重要ではなく、混合物中の水の量に依存する。通常、存在する水の量と少なくとも等しい量で溶媒が必要である。例えば、エタノールが溶媒である場合、水500mlに対して約600mlのEtOHが必要である。しかしながら、これは広範囲:水の量と比較して約40〜400重量%の溶媒、好ましくは、水の量と比較して100〜240%、より好ましくは約160〜220%の溶媒となる傾向がある。重要な基準は、2つの明白な相が形成されるように十分な溶媒が添加されることである。
【0021】
このステップの温度は特に重要ではなく、0℃〜約80℃、または混合物の沸点未満のいかなる温度の範囲に及んでもよい。都合がよいのは、温度が約20℃〜60℃、最も都合がよいのは室温または約25℃である。
【0022】
この時点で、2つの相が存在し、2つの相を分離するためにいかなる都合のよい手段も使用可能である。分離方法は、材料の実際の構成次第である。ある種のバッチに関しては、ここで濾過器および/または遠心分離機を容易に使用可能である。他のバッチは、単純なデカンテーション(あまり多くの固形物が存在しない場合、または物質が容器の壁に貼り付いている場合)、あるいは通常の相分離によって簡単に加工処理することができる。
【0023】
本発明のもう1つの実施形態において、繊維を除去するために加工処理されたが、前記の項で記載された苦味除去/HT濃縮ステップを経た出発オリーブ果汁で同プロセスを使用可能である。溶媒の添加および結果として生じる相の分離によって、苦味除去プロセスの間に形成されたいかなる沈殿物の分離も可能である。
【0024】
[C.溶媒の回収]
所望であれば、プロセスをより経済的にするため、溶媒を再利用のために回収可能である。蒸発は、一般に、そのように溶媒を回収する最も簡単な方法である。この時点で、本発明のさらにもう1つの態様において、溶媒を回収するために蒸発ステップを使用することが選択された場合、抽出物のpHを6未満まで、好ましくは5未満まで調節することによって、蒸発プロセスの間の不必要な発泡を防止することが見出された。
【0025】
この時点で、結果として得られた苦味がなく、固形物を含まないオリーブ果汁抽出物は、本発明のもう1つの態様を形成し、いかなる所望の様式でも、そのまま使用可能である。例えば、それを栄養組成物、例えば食品または飲料組成物に直接組み込むことができる。この食品は人間による消費に適切であり得、または動物の飼料となり得る。あるいは、それを栄養補給剤へと製造することができ、例えば、既知の方法を使用して、それをカプセル、タブレットなどへと調製することができる。あるいは、組成物を化粧品組成物中に使用することができる。
【0026】
本発明の他の実施形態において、従来技術を使用して、苦味がなく、固形物を含まない抽出物を噴霧乾燥またはフリードライし、粉末派生物を形成し、次いで最終製品に組み込む。場合により、乾燥ステップの前に安定剤などを果汁に添加してもよい。得られた粉末は栄養組成物に直接組み込み可能であるか、または動物飼料とし得る。あるいは栄養補給剤へと製造可能であり、例えば、既知の方法を使用して、カプセル、タブレットなどへと調製することができる。あるいは、組成物を化粧品組成物中に使用することができる。
【0027】
本発明の他の実施形態において、苦味がなく、固形物を含まない抽出物に、脱脂、さらなる抽出またはHTの蒸留などのさらなる処理ステップを受けさせる。そのようなプロセスは既知の技術であるか、または同時係属特許出願[代理人整理番号26253]に記載の技術を使用してもよい。
【0028】
本発明を以下の非限定的な実施例においてさらに例示する。
【0029】
[実施例]
[実施例1]
[出発物質]
特記されない限り、記載される全ての%は重量パーセントを指す。
【0030】
出発物質はHIDROX6%(CreAgri,Haywood,CA)であった。その含有量は以下の通りである(ロット6022406002で。これは、クエン酸によって安定化された凍結乾燥オリーブ果汁である。重量%):
炭水化物:約60%
脂質(オリーブ油):約15%
繊維:約10%
ヒドロキシチロソル:2.1%
水:約2%
外観:
水での溶解度:混濁した微細な懸濁液
風味:苦い
色:ベージュブラウン粉末
【0031】
[実施例2]
[エタノールによる固形物の凝塊形成]
窒素雰囲気中、100gのHIDROX(CreAgri、実施例1から)6%ポリフェノールおよび80mlの水を反応フラスコに添加した。この混合物を80℃まで加温し、pH9.0に調節して、続いて、pHを維持するために10モル/lの水酸化ナトリウムを合計38ml連続的に添加しながら、80℃、pH9.0で30分間攪拌した。懸濁液を60℃まで冷却した。
【0032】
ヒドロキシチロソルの含有量は、塩基処理によって約130%まで増加した。
【0033】
200gのエタノールを添加することによって、固形物は60℃で沈殿した。混合物を冷却し、30分間、周囲条件で撹拌し、ブフナー漏斗で濾過した。濾過ケーキを、50gのエタノール70%/水30%で洗浄した。
【0034】
10モル/lの塩酸約5mlを用いて濾液をpH5に調節し、そしてローターベイパー(20ミリバール、60℃)で蒸発させ、エタノールを回収し、非揮発性残渣33.5gを得た。
含有量[重量%]:7.4%のヒドロキシチロソル、0.8%のチロソル。
収率:最初のヒドロキシチロソルの119%。
抽出物は水中1mg/mlで苦くなかった。
【0035】
[実施例3]
以下の表1中、「収率%」は、乾燥された濾液中のHTの含有量[重量%]を指す。収率[重量%]は、出発物質(HIDROX 6%)の最初の含有量に基づく。
【0036】
【表1】

【0037】
[実施例4]
不活性ガス雰囲気中、100gのHIDROX6%ポリフェノール(CreAgri、実施例1)および80mlの水を反応フラスコに添加した。混合物を窒素ブランケット下で60℃まで加温し、そしてpH6.0に調節し、続いて、pHを維持するために10モル/lの水酸化ナトリウムを合計36ml連続的に添加しながら、60℃、pH6.0で30分間攪拌した。
【0038】
ヒドロキシチロソルの含有量は、塩基処理によって約115%まで増加した。
【0039】
240gのエタノールを添加することによって、固形物は60℃で沈殿した。混合物を冷却し、30分間、周囲条件で撹拌し、ブフナー漏斗で濾過した。濾過ケーキを、50のエタノール70%/水30%で洗浄した。
【0040】
ローターベイパー(20ミリバール、60℃)で濾液を蒸発させ、エタノールを回収した。残渣33.5gを回収した。含有量[重量%]:6.3%のヒドロキシチロソル、0.7%のチロソル。残渣は水中1mg/mlでわずかに苦かった。
【0041】
[実施例5]
上記の実施例に従って、以下の試料を製造した。
【0042】
100gのHIDROX6%(出発物質、実施例1)を100gの水と混合し、50%溶液を得た。10mの水酸化ナトリウムを用いて、80℃でpHをpH9に調節した。80℃で約30分後、結合型であったヒドロキシチロソルが放出し、収率は増加する(理論的な収率は約135%である)。pHを上げることによって、下記の表中に記載されるように、粒子を凝塊形成するために必要とされるエタノールはより少ない。エタノールが少なすぎると、効率的に沈殿させて簡単に除去可能な部分を形成するために十分な粒子を凝塊形成させない。エタノールの量が多いほど、より高い収率がもたらされる。濾液中の最も高いヒドロキシチロソル濃度は、pH8〜9で得られた。50%溶液のオリーブ果汁に関して、ほぼ同量のエタノールが最適なようである。
【0043】
【表2】

【0044】
[実施例6]
供給元によって加工処理されて繊維が除去された(含有量=0.89%ヒドロキシチロソル)商業的に入手可能なオリーブ果汁抽出物243gを真空下で190gまで濃縮した。窒素雰囲気下の反応フラスコで、濃縮物を80℃まで加熱し、pHを8.0まで調節して、続いて、pHを維持するために10モル/lの水酸化ナトリウムを合計24ml連続的に添加しながら、80℃、pH8.0で30分間攪拌した。
【0045】
暗色混合物に280gのエタノールを添加し、沈殿物を形成した。混合物を冷却し、周囲条件で1時間撹拌した。溶液の上澄みを沈殿物からデカンテーションし、ローターベイパーで蒸発させ、エタノールを回収した。不揮発性残渣は78gであった。含有量[重量%]:2.6%のヒドロキシチロソル、0.6%のチロソル。収率:最初のヒドロキシチロソルの93%。残渣は水中1mg/mlで苦くなかった。