特許第5659531号(P5659531)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5659531
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】電機子および、モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/34 20060101AFI20150108BHJP
【FI】
   H02K3/34 B
   H02K3/34 D
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2010-80788(P2010-80788)
(22)【出願日】2010年3月31日
(65)【公開番号】特開2011-217448(P2011-217448A)
(43)【公開日】2011年10月27日
【審査請求日】2013年2月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】日本電産株式会社
(72)【発明者】
【氏名】福永 慶介
(72)【発明者】
【氏名】青野 真郷
【審査官】 西山 智宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−252031(JP,A)
【文献】 特開2006−115563(JP,A)
【文献】 特開2002−233092(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K1/00−1/16
H02K1/18−1/26
H02K1/28−1/34
H02K3/00−3/52
H02K15/00−15/02
H02K15/04−15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸を中心とする環状のコアバックと、
周方向において間隔を空けて配置され、前記コアバックから前記中心軸に向かって延びる複数のティースと、
前記各ティースを覆うインシュレータ部と、
前記各インシュレータ部に導電線が巻回されたコイルと、
を備え、
互いに隣接する前記コイル間には絶縁シートが配置され、
前記各インシュレータ部は鍔状のフランジ部を備え、
該フランジ部は前記絶縁シートよりも径方向内側に位置し、
互いに隣接する前記インシュレータ部のフランジ部は、径方向に空隙を介して対向する対向部を備え、
互いに隣接する前記インシュレータ部の対向部どうしは接触しない電機子。
【請求項2】
請求項1に記載の電機子において、
互いに隣接する前記インシュレータ部の対向部どうしは、軸方向両端部において、対向形状が異なる電機子。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電機子において、
前記絶縁シートは、長手方向に沿って湾曲または、屈曲されている電機子。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の電機子において、
前記絶縁シートは、略U字状であって、二つの長手部分と一つの短手部分を備え、
前記短手部分がコイルの軸方向端部を覆っている電機子。
【請求項5】
請求項4に記載の電機子において、
前記絶縁シートの数は、前記ティースの数の半分である電機子。
【請求項6】
請求項1ないし3のいずれかに記載の電機子において、
前記絶縁シートは、略C字状であって、二つの短手部分と一つの長手部分を備え、
前記短手部分がコイルの軸方向端部の一部を覆っている電機子。
【請求項7】
請求項4ないし6のいずれかに記載の電機子において、
前記絶縁シートの長手部分の長さは、前記ティースの軸方向寸法より長い電機子
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の電機子を用いたモータ。
【請求項9】
請求項8のモータにおいて、
前記複数のティースにおける軸方向一方端面の一部分を覆うバスバーが配置されているモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電機子および、モータに関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、電機子の製造過程において、各ティースに導電線を巻回する際、導電線の外周を覆っている絶縁被膜が剥れることがある。
【0003】
このような電機子を用いたモータでは、互いに隣接するコイル間の絶縁が確保できないことがある。そこで、例えば特開2002−171704号公報では、隣り合う相の巻線間に絶縁紙を挿入して、相間の絶縁を確保することが図られている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−171704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、絶縁紙を挿入しても、ステータの内周面よりモータの中心軸側へ絶縁紙が移動する場合がある。そのために、互いに隣り合う相の巻線間において絶縁を確保できないことがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一例の電機子は、電機子コア、インシュレータ部、コイル、および絶縁シートを備える。絶縁シートは、互いに隣接するコイル間に配置される。各インシュレータ部は鍔状のフランジ部を備える。フランジ部は絶縁シートよりも径方向内側に位置する。互いに隣接するインシュレータ部のフランジ部は、径方向に空隙を介して対向する対向部を備え、互いに隣接するインシュレータ部の対向部どうしは接触しない。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電機子の内周面よりモータの中心軸側へ絶縁シートが移動しないので、互いに隣接するコイル間の絶縁が確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本実施形態に係るモータの断面を模式的に示す図である。
図2図2は、電機子コア35全体の上面を模式的に示す図である。
図3図3は、インシュレータ部37を装着した電機子コア35全体の上面を模式的に示す図である。
図4図4は、インシュレータ部37を模式的に示す斜視図である。
図5A図5Aは、電機子要素35aの軸方向中間位置より軸方向一方側における、電機子要素35aとインシュレータ部37の断面を模式的に示す図である。
図5B図5Bは、電機子要素35aの軸方向中間位置より軸方向他方側における、電機子要素35aとインシュレータ部37の断面を模式的に示す図である。
図6図6は、絶縁シート5を模式的に示す図である。
図7図7は、絶縁シート5が配置されている電機子31の上面を模式的に示す図である。
図8図8は、変形例の絶縁シート6を模式的に示す図である。
図9図9は、変形例の絶縁シート6が配置されている電機子31の上面を模式的に示す図である。
図10図10は、変形例の絶縁シート7を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。ただし、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物あるいはその用途を制限するものではない。
【0010】
図1は、本実施形態に係るモータの断面を模式的に示す図である。図1に示すように、モータ1は、回転体2、固定体3、および、軸受機構4を備える。
【0011】
回転体2は、シャフト21、ロータコア22、および、ロータマグネット23を備える。シャフト21は、略円柱状に形成され、中心軸J1と同軸に配置される。ロータコア22は、シャフト21の外周面に固定される。また、ロータコア22は、磁性を有する平板状の鋼板を軸方向に複数枚積層することによって形成される。ロータマグネット23は、ロータコア22の外周面に、周方向にN極とS極とが交互に並ぶように複数個固定される。
【0012】
固定体3は、電機子31、ハウジング32、バスバーユニット33、および、ブラケット34を備える。電機子31は、ロータマグネット23の外周面と径方向に対向して配置される。電機子31は、電機子コア35、コイル36、および、インシュレータ部37を備える。電機子コア35は、磁性を有する鋼板を軸方向に複数枚積層して形成される。コイル36は、電機子コア35に導電線を巻きつけることにより形成される。インシュレータ部37は、樹脂材料からなり、電機子コア35とコイル36との間に介在し、電機子コア35とコイル36との電気的絶縁を図る。ハウジング32は、電機子31を保持する円筒部321と、電機子31およびロータコア22を軸方向他方側から覆う底部322とを有する。バスバーユニット33は、電機子31と制御装置(不図示)とを電気的に接続する。また、バスバーユニット33は、電機子31の軸方向一方を覆うように配置されている。このような構成により、後から詳述する絶縁シート5は、電機子の軸方向一方端面から軸方向一方側へ移動することがない。ブラケット34は、電機子31、ロータコア22、および、バスバーユニット33を軸方向一方側から覆う。
【0013】
軸受機構4は、軸方向に離間した2つのボールベアリング41、および、ボールベアリング42を備える。ボールベアリング41は、ブラケット34に固定される。また、ボールベアリング42は、ハウジング32の底部322に固定される。そして、ボールベアリング41、および、ボールベアリング42は、シャフト21にそれぞれ固定されることによって、回転体2を固定体3に対し中心軸J1を中心に回転可能に支持する。
【0014】
図2は、電機子コア35全体を上から見たときの模式図である。図2に示すように、電機子コア35は、円環状のコアバック351と、コアバック351から中心軸J1に向かい伸びる複数のティース352と、を備える。電機子コア35は、複数の電機子要素35aが周方向に結合されることによって構成される。各電機子要素35aは、中心軸J1を中心とした周方向に伸びる略円弧形状の要素コアバック351aと、要素コアバック351aから中心軸J1に向かい伸びる1つのティース352から構成される。要素コアバック351aと、ティース352とは一体である。要素コアバック351aの全てが結合されることによって、コアバック351を構成する。
【0015】
図3は、インシュレータ部37を装着した電機子コア35全体を上から見たときの模式図である。図4は、インシュレータ部37を模式的に示す斜視図である。図3に示すように各ティース352にはインシュレータ部37が装着されている。図3および図4に示すように、インシュレータ部37は、鞍状の本体部371、鍔状のフランジ部372、および外壁部373を備える。本体部371は、ティース352を覆っている。フランジ部372と外壁部373は、それぞれ本体部371の内周縁と外周縁に備えられる。フランジ部372および外壁部373によって、ティース352の内周縁および外周縁に対応する位置に巻回される導電線が径方向に崩れることを防止できる。
【0016】
ここで、フランジ部372は、周方向両端にそれぞれ対向部372a、372bを備える。対向部372aは、先端側に徐々に幅が細くなる先細り形状である。対向部372bは、段差を有する段付き形状である。対向部372a、372bは、それぞれ、インシュレータ部37の軸方向に渡って備えられている。
【0017】
図3に示すように、互いに隣接するインシュレータ部37の対向部372a、372bどうしは、径方向に空隙を介して対向する。また、周方向にも空隙を介して対向する。すなわち、互いに隣接する対向部372a、372bどうしは接触しない。したがって、本実施形態のインシュレータ部37を用いることで、電機子コア35の真円度を確保しつつ、後から詳述する絶縁シート5を電機子31の内周面より中心軸J1側へ移動しにくくすることができる。
【0018】
二つの同一形状のインシュレータ部37は、それぞれティース352の軸方向一方側および他方側から装着される。したがって、ティース352の軸方向中間位置で、軸方向一方から挿入されるインシュレータ部37の対向部372aと、軸方向他方から挿入されるインシュレータ部37の対向部372bとは、互いに対向して当接している。
【0019】
図5Aは、電機子要素35aの軸方向中間位置より軸方向一方側における、電機子要素35aとインシュレータ部37の断面を模式的に示す図である。図5Bは、電機子要素35aの軸方向中間位置より軸方向他方側における、電機子要素35aとインシュレータ部37の断面を模式的に示す図である。図5Aに示すように、電機子要素35aの軸方向中間位置より軸方向一方側では、インシュレータ部37の対向部372aと、隣り合うインシュレータ部37の対向部372bどうしが、対向している。しかし、図5Bに示すように、電機子要素35aの軸方向中間位置より軸方向他方側では、インシュレータ部37の対向部372bと、隣り合うインシュレータ部37の対向部372aどうしが、対向している。したがって、互いに隣接する対向部372a、372bどうしは、軸方向両端部において、対向形状が異なる。このような構成により、後述の絶縁シート5は、電機子31の内周面よりモータ1の中心軸J1側へ、より移動しにくくなる。
【0020】
図6は、絶縁シート5を模式的に示す図である。図6に示すように、絶縁シート5は略U字状であり、二つの長手部分51と、一つの短手部分52を備える。
【0021】
図7は、絶縁シート5が配置されている電機子31を上から見たときの模式図である。図7に示すように、絶縁シート5は複数用意され、各絶縁シート5の長手部分51は互いに隣接するコイル36間に配置される。各絶縁シート5の短手部分52は、各コイル36の軸方向一端部を覆っている。各絶縁シート5は、各インシュレータ部37のフランジ部372よりも径方向外側に配置される。また、互いに隣接するインシュレータ部37の対向部372a、372bどうしが、径方向に空隙を介して対向するので、絶縁シート5は、電機子31の内周面より中心軸J1側へ移動しない。したがって、互いに隣接するコイル36間の絶縁が確保できる。
【0022】
互いに隣接するコイル36間の隙間を以下スロットと呼ぶ。スロット数とティース352の数は同一である。したがって、絶縁シート5の数は、ティース352の数の半分で済む。よって、本実施形態の絶縁シート5形状を適用すると、絶縁シート5の数を削減することができる。
【0023】
絶縁シート5の長手部分51の長さLは、ティース352の軸方向寸法Sより長い。すなわち、互いに隣り合うコイル36どうしが対向する部分全体は、ほぼ絶縁シート5と面している。したがって、絶縁シート5を用いると、互いに隣接するコイル36間の絶縁を確保することができる。
【0024】
また、絶縁シート5は、絶縁シート5の長手方向に沿って屈曲されている(図6参照)。絶縁シート5は屈曲されることにより、周方向に拡がり、スロットにおいて移動しにくい。したがって、このような絶縁シート5を用いた場合、屈曲部分がない絶縁シート5を用いた場合に比べ、電機子31の内周面より中心軸J1側へ絶縁シート5がより移動しにくい。なお、絶縁シート5は、屈曲されるのではなく、湾曲されても良い。
【0025】
図8は、変形例の絶縁シート6を模式的に示す図である。図8に示すように、絶縁シート6は略C字状で一つの長手部分61と、二つの短手部分62を備えていても良い。
【0026】
図9は、変形例の絶縁シート6が配置されている電機子31を上から見たときの模式図である。図9に示すように、各絶縁シート6の長手部分61は互いに隣接するコイル36間に配置される。各絶縁シート6の2つの短手部分62は、それぞれ各コイル36の軸方向両端部の少なくとも一部を覆っている。ここで、各絶縁シート6の一つの長手部分61は、一つのスロットに挿入される。したがって、絶縁シート6の数は、ティース352の数と同一である。
【0027】
絶縁シート6の長手部分61の長さLは、ティース352の軸方向寸法Sより長い。すなわち、互いに隣り合うコイル36どうしが対向する部分全体は、ほぼ絶縁シート6と面している。したがって、絶縁シート6を用いると、互いに隣接するコイル36間の絶縁を確保することができる。
【0028】
図10は、変形例の絶縁シート7を模式的に示す図である。図10に示すように、絶縁シート7は略S字状で一つの長手部分71と、二つの短手部分72を備えていても良い。各絶縁シート7の長手部分71は互いに隣接するコイル36間に配置される。各絶縁シート7の2つの短手部分72は、それぞれ各コイル36における軸方向一方端部の少なくとも一部と、隣り合うコイル36における軸方向他方端部の少なくとも一部を覆っている。
【0029】
なお、本発明に係る電機子およびモータは、前記実施形態に限定されず、それ以外の種々の構成をも包含する。
【0030】
例えば、本発明は前記実施形態のように、電機子コアが複数の電機子要素から構成されたものではなく、一部材で構成されていてもよい。また、互いに隣り合うティースに装着されるインシュレータ部どうしは別体で構成されたものではなく、一部材で構成されていてもよい。このように、電機子コアやインシュレータ部の形がどうであれ、絶縁シートが必要な電機子であれば本発明を適用することができる。さらに絶縁シート5は、紙や、プラスチックなど、絶縁部材であれば材料は限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明のモータは、電動パワーステアリング装置に用いられるモータなど、車両に搭載されるモータに利用できる。
【符号の説明】
【0032】
1 モータ
2 回転体
21 シャフト
22 ロータコア
23 ロータマグネット
3 固定体
31 電機子
32 ハウジング
33 バスバーユニット
34 ブラケット
35 電機子コア
351 コアバック
352 ティース
35a 電機子要素
351a 要素コアバック
36 コイル
37 インシュレータ部
371 本体部
372 フランジ部
373 外壁部
372a、372b 対向部
5 絶縁シート
51 長手部分
52 短手部分
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10