(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
薬液タンク(30)を搭載した機体(1)に、薬液を噴出する複数の噴霧ノズル(16,18)を備えたセンタブーム(12)を設けると共に、左右のサイドブーム(13L,13R)を機体側方に延出する状態と機体側面に収納する状態に開閉回動可能に設け、センタブーム(12)の噴霧ノズル(16,16…)の近傍に第1導電部(50C)を配設し、左右サイドブーム(13L,13R)の噴霧ノズル(18,18…)の近傍に第2,第3導電部(50SL,50SR)を夫々配設し、前記第1導電部〜第3導電部(50C,50SL,50SR)へ高電圧を供給する高電圧電源装置(51C,51SL,51SR)を設けた薬液散布作業機において、前記噴霧ノズル(16,18)は夫々に口径を異ならせた複数のノズル部(N1,N2,N3)を構成し、センタブーム(12)又はサイドブーム(13L,13R)に対して各ノズル部(N1,N2,N3)の一を選択して薬液噴出可能な使用状態に組み替えて装着できる構成とし、前記高電圧電源装置(51C,51SL,51SR)の給電圧を可変する電圧可変手段(90C,90SL,90SR)を設け、前記噴霧ノズル(16,18)の選択された使用状態にあるノズル部(N1,N2,N3)を判定するノズル部判定手段(R1,R2)を備え、
噴霧ノズル(16,18,29)をブーム本体等の固定側(L)に対し水平軸(P)回りに回動可能に設けた回動部(X)に放射状に複数のノズル部(N1,N2,N3)を備え、ノズル部判定手段(R2)は、固定側(L)と回動部(X)側との間にリードスイッチ(92L,92M,92R)と、これらに対応させたマグネット(93、94L,94R、95L,95M,95R)を配置し、リードスイッチ(92L,92M,92R)出力信号によってどのノズル部(N1,N2,N3)が使用状態であるかをノズル部判定手段(R1,R2)で判定し、該判定を表示部(40)に表示出力する構成とした薬液散布作業機。
薬液タンク(30)を搭載した機体(1)に、薬液を噴出する複数の噴霧ノズル(16,18)を備えたセンタブーム(12)を設けると共に、左右のサイドブーム(13L,13R)を機体側方に延出する状態と機体側面に収納する状態に開閉回動可能に設け、センタブーム(12)の噴霧ノズル(16,16…)の近傍に第1導電部(50C)を配設し、左右サイドブーム(13L,13R)の噴霧ノズル(18,18…)の近傍に第2,第3導電部(50SL,50SR)を夫々配設し、前記第1導電部〜第3導電部(50C,50SL,50SR)へ高電圧を供給する高電圧電源装置(51C,51SL,51SR)を設けた薬液散布作業機において、前記噴霧ノズル(16,18)は夫々に口径を異ならせた複数のノズル部(N1,N2,N3)を構成し、センタブーム(12)又はサイドブーム(13L,13R)に対して各ノズル部(N1,N2,N3)の一を選択して薬液噴出可能な使用状態に組み替えて装着できる構成とし、前記高電圧電源装置(51C,51SL,51SR)の給電圧を可変する電圧可変手段(90C,90SL,90SR)を設けると共に、該電圧可変手段(90C,90SL,90SR)には、連動手段(91C,91SL,91SR)への出力に基づいて給電圧を変更可能に設け、前記噴霧ノズル(16,18)の選択された使用状態にあるノズル部(N1,N2,N3)を判定するノズル部判定手段(R1,R2)を備え、
噴霧ノズル(16,18,29)をブーム本体等の固定側(L)に対し水平軸(P)回りに回動可能に設けた回動部(X)に放射状に複数のノズル部(N1,N2,N3)を備え、ノズル部判定手段(R2)は、固定側(L)と回動部(X)側との間にリードスイッチ(92L,92M,92R)と、これらに対応させたマグネット(93、94L,94R、95L,95M,95R)を配置し、リードスイッチ(92L,92M,92R)出力信号によってどのノズル部(N1,N2,N3)が使用状態であるかをノズル部判定手段(R1,R2)で判定し、
このノズル部判定手段(R1,R2)の判定に基づいて、前記連動手段(91C,91SL,91SR)へ出力する構成とした薬液散布作業機。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面に基づいて、この発明の実施例を説明する。まず、構成から説明すると、1は主として畑や水田の中でカルチ作業や防除作業を行う乗用管理機の機体である。この乗用管理機は同径の前輪2と後輪3を備え、機体1の前部にエンジン4を搭載している。エンジン4およびマフラー(図示省略)はボンネット5で覆われ、ボンネット5の左右両側部にはマスト7,7が立設され、このマスト7,7には上部リンク8と下部リンク9とからなる昇降リンク機構10が構成されている。上部リンク8と下部リンク9とは前後長さが略等しく、従って、昇降リンク機構10は側面から見ると平行四辺形を構成する。昇降リンク機構10はボンネット5の外側方に設けた左右一対の昇降シリンダ11,11により昇降される。この昇降シリンダ11,11は電動シリンダによって構成されるが、油圧で構成しても良い。
【0019】
また、前記昇降リンク10の前部には後述するセンターブーム12、サイドブーム13,13を取付けるための支持枠14が連結される。この支持枠14は正面から見ると矩形状をなし、支持枠14の下部中央には前後方向に沿う揺動軸15が設けられている。
【0020】
揺動軸15には、前後一対のブーム枠12F,12Rを有する前記センターブーム12が前後軸芯回りに上下回動自在に枢支され、前側のセンターブーム枠12Fに複数個の下向きに薬液を噴出しうるノズル16,16…が取り付けられている。
【0021】
左右サイドブーム13L,13Rは後側のセンターブーム枠12Rの左右両端部に上下方向の支点ピン17,17にて回動自在に枢支され、このサイドブーム13L,13Rの下端面にも適当間隔をあけて複数個の噴霧ノズル18,18…が設けられている。従って、サイドブーム13L,13Rを広げた状態でセンターブーム12とサイドブーム13L,13Rとは一体で前記揺動軸15廻りに上下揺動調整又は上下揺動制御することができる。
【0022】
また、前記支持枠14側と後側センターブーム枠12R側との間にはアクチュエータとしての油圧シリンダ機構20が垂直姿勢で設けられている。20aは油圧シリンダ機構20のピストンロッドである。
【0023】
センターブーム12の適宜位置には水平制御用の制御弁(図示せず)が設けられ、油圧ポンプからの圧油を油圧シリンダ機構20へ供給し又は排出させることによりセンターブーム12及びサイドブーム13L,13Rを上下揺動すべく構成している。従って、油圧シリンダ機構20のピストンロッド20aが伸縮するとブームが揺動軸14の廻りに揺動する。前記支持枠14の左右方向中央部には上下方向に沿わせてプレート21が設けられ、このプレート21には揺動角センサ22が取り付けられて、乗用管理機1の機体適所に設ける水平センサ23との連携によって前記油圧シリンダ機構20を伸縮制御し、センターブーム12及びサイドブーム13L,13Rを水平制御する構成である。
【0024】
また、
図1において、前記支持枠14の頂部とサイドブーム13L,13Rの基部との間にはサイドブーム13L,13Rを夫々独立的に上下回動させる上下動シリンダ25L,25Rを備え、一方前記支持枠14と、サイドブーム13L,13Rの基部に一体でセンターブーム枠12Rに対し前記支点ピン17,17回りに回動しうる連結プレート26との間にはサイドブーム13L,13Rを開閉させる開閉シリンダ27L,27Rを備えている。
【0025】
なお、サイドブーム13L,13Rには夫々延長用のスライドブーム28L,28Rを接続構成する。すなわち、固定側となるサイドブーム13L,13Rにはノズル18及び薬液配管部13pを保持する直線状の固定フレーム13mを備え(
図3)、この固定フレーム13mに跨設して長手方向にスライド自在に摺動フレーム28sを設け、この摺動フレーム28sにスライド側となるスライドブーム28L,28Rを一体的に装着している。スライドブーム28L,28Rにも夫々配管部28pを備え噴霧ノズル29,29…を配設している。
【0026】
乗用管理機1の機体後部には薬液タンク30を搭載し、前記のセンターブーム12、サイドブーム13L,13R、及びスライドブーム28L,28Rの各噴霧ノズルに薬液を供給する構成としている。すなわち、
図4において、薬液タンク30に貯留する薬液は防除ポンプ31の駆動によって元配管32を圧送され、センターブーム12及び左右のサイドブーム13L,13R側の3方に分岐した分岐配管33C,33S,33Sを介してセンターブーム12の噴霧ノズル16、サイドブーム13L,13R及びスライドブーム28L,28Rの各噴霧ノズル18,29に供給される。元配管32部には流量制御弁34を介在し、流量を制御できる構成としている。
【0027】
乗用管理機1の運転席35の前方には操縦ハンドル36等の走行操作部を備えると共に、該運転席35の右側方には散布用操作盤37を設けている。該操作盤37には、前記分岐配管33C,33S,33S毎に対応する開閉コック38C,38S,38S、防除ポンプ31駆動スイッチ39,液晶表示部40を備えた制御コントローラ41、前記昇降リンク機構10を昇降する昇降シリンダ11を伸縮作動させるブームスイッチ42、前記左右の開閉シリンダ27L,27Rを伸縮作動させる一対の左右スイッチ43L,43R、左右のサイドブーム13L,13Rを夫々単独に上・下動させる上下動シリンダ25L,25R伸縮用、及びスライドブーム28L,28Rを夫々スライド作動させるスライド用モータ44L,44Rを正・逆転させる十字レバー形態のスイッチ45L,45R等を装着し、運転席35に座ったままで操作できる構成としている。なお、本実施例における散布用操作盤37は運転席35から前方のセンターブーム12、サイドブーム13L,13R、及びスライドブーム28L,28Rからの噴霧状態を目視で確認しながら操作でき、後方にこれらブームを装着する形態に比較して身体の後ろ向きの姿勢をとらなくとも良く便利である。
【0028】
更に前記制御コントローラ41に関連する構成として、液晶表示部40の周囲に操作スイッチ類を配設し、薬液散布を散布設定スイッチ46及び増・減スイッチ47による単位面積当り散布量の設定と機体1の走行速度に基づき自動的に前記流量制御弁34をコントロールして噴霧ノズルからの薬液散布量を大小に自動制御する自動モードを行わせる場合にオンする自動スイッチ48を備える。なお、この自動スイッチ48をオンしないで散布作業を行なうときには、前記増・減スイッチ47の設定に基づく散布量を常時一定に散布する手動モードが実行される。
【0029】
なお、前記個々の静電スイッチ58のほか、主静電スイッチ53を設けて静電散布を行わない通常散布形態か、静電防除形態かを選択できる形態でもよい。59は静電散布状態を表わす表示ランプである。
【0030】
前記センターブーム12の噴霧ノズル16,16…、サイドブーム13L,13Rの噴霧ノズル18,18…、及びスライドブーム28L,28Rの噴霧ノズル29,29…の夫々には各ブームの長手方向に沿い所定間隔の噴霧ノズル夫々からの薬液の拡散範囲に介在して互いに平行な2本の線状の導電部50を配設し、もって静電噴霧装置を構成している。導電部50は、銅線、鋼管等を絶縁体と樹脂外層で被覆して所謂棒電極を構成し、センターブーム12の噴霧ノズル16,16…に対応して配設される第1導電部50C、サイドブーム13L,13Rにそれぞれ配設される第2、第3導電部50SL,50SR、及びスライドブーム28L,28Rにそれぞれ配設される第4、第5導電部50LL,50LRを各対応させて設けている。これら第1〜第5の各導電部50には高電圧電源装置として機能するインバータ51をそれぞれ接続し、導電部50に高電圧が供給されて噴霧ノズル16,18,29から噴霧される薬液に負の電荷が与えられる。植物の葉の近傍に負電荷が存在すると、葉は表面及び裏面が正、内部が負に分極し、このため、負に帯電している薬液が農作物の表面に引き付けられ、葉の表面にも裏面にも万遍なく付着する。なお、インバータ51には前記第1〜第5導電部と共通の符号を用いて対応関係を表わしている。
【0031】
なお前記静電噴霧装置の電源回路52に静電スイッチ53を介在し、バッテリ54からの給電をオン/オフ切替できるよう構成している。
前記制御コントローラ41には走行速度検出手段Sを構成している。即ち、乗用管理機1には走行変速装置Mを備え、該走行変速装置内の伝動機構のうち、左右後車輪を伝導する車軸部分に車軸回転を検出出力するピックアップ手段69(例えば、後車軸を連動する回転ギヤ歯部のピックアップ信号)を構成し、該ピックアップ手段69からの速度データを入力する制御コントローラ41は、この速度データから機体1の走行速度vを演算する構成である。
【0032】
以下静電噴霧装置について具体的に説明する。
センターブーム12の静電噴霧装置について、前記センターブーム12の噴霧ノズル16,16…装着側である前側ブーム枠12Fに、二脚状のサポート部材55,55を噴霧ノズル16,16…配設の間に位置して吊下支持し、このサポート部材55,55に2本の第1導電部50C,50Cを着脱自在に支持している。また、上記前側ブーム枠12Fの上面に、鞍型のブラケット56を介して第1インバータ51Cを装着している。
【0033】
また同様に、サイドブーム13L,13Rには、第2、第3インバータ51SL,51SR、及び第2,第3導電部50SL,50SR、スライドブーム28L,28Rには第4、第5インバータ51LL,51LR、及び第4,第5導電部50LL,50LRを装着するものである。前記のように、固定側となるサイドブーム13L,13Rにはノズル18及び薬液配管部13pを保持する直線状の固定フレーム13mを備え、この固定フレーム13mに跨設して長手方向にスライド自在に摺動フレーム28sを設け、この摺動フレーム28sにスライド側となるスライドブーム28L,28Rを一体的に装着する。そして固定フレーム13mに対する摺動フレーム28sとの関係はスライドブーム28L,28Rにも夫々配管部28pを備え噴霧ノズル29,29…を配設している。このように構成したサイドブーム13L,13Rとスライドブーム28L,28Rとは、スライドブーム28L,28Rが前側となるよう前後に配置される関係にある。固定フレーム13mの基端側においてブラケット57を介して該ブラケット57の後面に第2,第3インバータ51SL,51SRを着脱自在に取り付け、一方摺動フレーム28sにはその前面に直接的に第4,第5インバータ51LL,51LRをその基端側に取り付けている。
【0034】
つまり、サイドブーム13L,13Rの固定フレーム13mと摺動フレーム28sとは前後に配置し、第2、第3インバータ51SL,51SRを摺動フレーム28s存在側とは反対側の面に装着し、第4、第5高電圧電源装置51LL,51SRを固定フレーム13mの存在側とは反対側の面に装着するもので、固定フレーム13mと摺動フレーム28sとの間にインバータ51SL,51SRを設けないため、両フレーム13m,28sの組付けに影響を及ぼさず、静電装置を備えない機種に対し容易に導電部50とインバータ51とを組合せて静電噴霧構成とすることができる。
【0035】
そして、センターブーム12と同様に、固定フレーム13mには二脚状のサポート部材55,55…を所定間隔毎に配設し、サイドブーム13L,13R用の第2、第3導電部50LL,50LRを取り付け、摺動フレーム28s側のサポート部材55,55…にスライドフレーム28L,28R用の第4、第5導電部50LL,50LRを取り付けている。
【0036】
給電は、バッテリ54から電源回路52を経由して電源ラインから行われ、各インバータ51に通電する。各インバータ51では高電圧に変換され、各導電部50にこの高電圧が印加される構成である。前記構成では、センターブーム12、左右のサイドブーム13L,13R及び左右のスライドブーム28L,28Rの夫々に高電圧電源装置として機能するインバータ51を対応配置したから、昇降動作、折り畳み開閉動作、及びスライド動作を各単独に行うこととなるが、これらの動きに円滑に対応できる。すなわち、インバータ51単位で導電部50との組合せを構成し、個別のブームに組み合わせることより、関節的な動きを生ずる部分に高圧の導電部50を接続構成する必要がない。つまり分割構成されたブームの導電部50に共通のインバータ51を設置するときは、関節的な動きの部分に導電部50を配置するため繰返し屈曲動作で折損の恐れがあるが、前記のように導電部とインバータとを個別組合せとするときは関節的動きの部分を導電部で接続する必要がないために折損がなく漏電の恐れも少なく安全であり、かつ取扱い性が容易である。
【0037】
また、各インバータ51毎に第1〜第5入切スイッチ58を設けることにより、噴霧作業に必要な個所のインバータ51のみONにすることができ、噴霧作業を行わない個所の電源を切ることによって省電力の効果、無駄な危険を回避できる効果がある。符号は前記導電部50及びインバータ51に対応関係を明確にすべく同一の符号を用いている。なお、入切スイッチ58の構成としては、静電スイッチ53のほかに電源回路52中に各インバータ51に給電する回路を構成し夫々に第1〜第5入切スイッチ58を設ける。また、各インバータ51を収容するボックスに入切スイッチを設けておくことで、任意に電源を切り操作することができる。
【0038】
図示の例では左右に平行する導電部50は夫々独立して接続関係にないが、これらを接続してU状に折り曲げて平行状態を構成してもよい。
図9はサイドブーム13L,13Rとスライドブーム28L,28Rの拡大正面図である。前記のように固定フレーム13mの基部には第2,第3インバータ51SL,51SRを着脱自在に取り付けるものであるが、その近傍にはマスト60を立設し、この固定フレーム13mの先端側のマスト61との間にワイヤ62を掛け渡し、このワイヤ62にコイルホース63を保持している。高圧の薬液が前記分岐配管33SからT型継手64に作用すべく両者を接続する。T型継手64の一方にはサイドブーム13L又は13Rに接続するための接続管65を備え、他方はコイルホース63に接続される。そしてコイルホース63の終端はスライドブーム28L又は28Rに接続された接続管66に繋ぐ構成である。従って、スライド用モータ44L又は44Rの駆動によってスライドブーム28L又は28Rがスライド移動するに際し、コイルホース63によって伸出しまたは短縮化して当該移動に追従しながら薬液を供給できる構成としている。本実施例では、コイルホース63に一体的に電源回路52から延設された配線部67を分岐して一方をサイドブーム13L又は13Rの第2、第3インバータ51SL,51SRに接続し、他方をコイルホース63に止着した延長配線部68としその終端をスライドブーム28L又は28Rの第4,第5インバータ51LL又は51LRに接続している。このように構成すると、コイルホース63のコイル復元力を利用して中間の延長配線部68を収容でき別に延出し収納構成を必要とせずコストダウンが図れる。
【0039】
前記制御コントローラ41には、給電切替手段Kが組み込まれている。すなわち、
図10に示すように、各主静電スイッチ53には自動接点87を直列接続している。自動接点87は、前記走行速度検出手段Sによる検出走行速度vが、予め設定した低速側設定値v1(例えばv1=0)以下であるか否かを判定し、その結果、低速側設定値v1以下であるときにはオン信号を出力せず自動接点87はオフを継続する。したがってこの低速側設定値v1以下のときには例え静電スイッチ53がオンであっても制御コントローラ41には静電スイッチ信号は入力されない。つまり、機体1の走行速度vが「0」の機体停止状態のとき、各インバータ51に給電されず、各導電部50は帯電されない。走行速度vが低速側所定値v1を超えると、つまり所定に前進しているときには、自動接点87は作動信号を受けて接点をオンする。したがって、主静電スイッチ58を予めオンに設定しておくことにより、機体1が前進するに伴ない自動的に主静電スイッチ53信号が出力されることになり、導電部50が自動的にオンされる。このため散布作業中、旋回時や作業中断の時、都度静電スイッチ56を操作する必要なく自動的にオフするから、不測の漏電やショート(短絡)による事故を少なくできる。
【0040】
また、走行速度検出手段Sによる検出走行速度vが予め設定した高速側所定値v2を超えると自動接点87がオフする構成としている。高速側所定値v2を通常散布作業が行われる走行速度よりもやや高い速度に設定しておくことにより、この高速側所定値v2を超える状態、つまり非散布作業で路上走行や圃場間移動による走行状態と推定され、このような場合には、導電部50をオフして機体停止時と同様、前記不測の漏電やショート(短絡)による事故を少なくできる。
【0041】
次に、ノズル種類設定による給電圧制御について説明する。
図11(A)(B)に示すように、噴霧ノズル16,18,29はいずれもブーム本体等の固定側Lに対し水平軸P回りに回動可能に設けた回動部Xに放射状に3種類のノズル部N1,N2,N3を備えている。ここで、例えばN1は慣行ノズル部で100リットル散布、N2は除草剤用ノズル部で150リットル散布、N3は少量散布用ノズル部で25リットル散布に供されるものである。このように、散布量が異なるがその相違はノズル径によって設定している。
【0042】
ところで、このように散布量が異なるノズルN1,N2,N3の組合せを取る場合、前記導電部50の電圧も対照的に相違させておくのがのぞましい。例えば、N1の慣行ノズル部では7千V、N2の除草剤用ノズル部では1万V、N3の少量散布用ノズル部では5千Vの如きである。このため、前記高電圧電源装置としてのインバータ51C,51SL,51SR,51LL,51LRに電圧可変手段としての電圧変更ダイヤル90C,90SL,90SR,90LL,90LRによって電圧変更可能に設けるとともに、液晶表示部40には、ノズルN1,N2,N3のいずれがセット状態にあるかを推定して表示する構成とし、オペレータにはこの旨を知らせることができる構成である。なお、符号51C、90Cの「C」はセンタブーム用、同51SL、90SLの「S」はサイドブーム用、「L」は左側用、同51SR、90SRの「R」は右側用、同51LL、90LLの最初の「L」はスライドブーム用、後側の「L」は左側用、同51LR、90LRの「R」は右側用を示す。以下においても同じ。
【0043】
即ち、
図12に基づいて、オペレータは予め行おうとする作業に適正なノズル部N1,N2,N3のいずれかを選択しておき、散布量の設定を行なう(ステップ101)。なお、散布量の設定は、前記制御コントローラ41のスイッチ群のうち表示切換スイッチに基づいて散布設定モードを選択し、増減スイッチによって液晶表示部40に表示される数値を所望の数値に変更し、所定の数値にて散布設定スイッチ46をオンすることで設定完了となる。オペレータは通常散布作業の形態により、設定散布量との関係を熟知しており、この設定散布量の値を液晶表示部40にて目視確認することで、いずれのノズル種類であるかを判定できる(ステップ102)(ノズル部判定手段R1)。そしてこの判定結果に基づき液晶表示部40にノズル種類を表記出力すると共に(ステップ103〜108)、この表記を目視判定して所望の給電圧を付与する(ステップ109〜111)。ここでステップ110の「標準給電圧+α」は標準給電圧よりも高い電圧、例えば1万ボルトを指し、ステップ111の「標準給電圧―β」は標準給電圧よりも低い電圧、例えば5千ボルトを指す。こうしてオペレータは電圧変更ダイヤル90を操作して前記第1〜第5のインバータ51の全部への給電圧を設定し得る。以後走行レバーを操作して(ステップ112)、散布作業を行なう(ステップ113)。
【0044】
図12に示すノズル種類判定による給電圧制御(I)では、電圧変更ダイヤル90をもって手動設定を行う構成としたが、
図13,14のように自動設定でもよい。即ち、
図13に示すように、ノズル種類判定し(ステップ203〜205)、ノズル種類を液晶表示(ステップ206〜208)の後、前記電圧変更ダイヤル90の回動ツマミ部を連動する電動モータ(連動手段)91C,91SL,91SR,91LL,91LRを正逆転に回転させて所定の給電圧に制御するものである(ステップ209〜ステップ211)(ノズル種類判定による給電圧制御(II))。なお、標準給電圧、+α、−βの趣旨は前記と共通である。
【0045】
図14に示すものは、前記の固定側Lとノズル部N1,N2,N3付き回動部Xとの間に、いずれのノズル部が下向くセット位置にあるかを判別する設定ノズル部検出手段R2を構成し、この検出結果を前記制御コントローラ41が入力できるよう構成する。したがって、制御コントローラ41は、ノズル部判定手段R2の検出結果によるノズル部N1,N2又はN3を判別し、この判別に基づき、予め設定してある電圧が出力されるべき信号を導電部50に出力する構成である(ノズル種類判定による給電圧制御(III))。具体的には、
図11(C)に記載のように、固定側Lの下部位置に3条のリードスイッチ92L,92M,92Rを貼付しておき、回動部X側に120度の位相角で配置された3個のノズル部N1,N2,N3のそれぞれに対応させて、1条のマグネット93、2条のマグネット94L,94R、3条のマグネット95L,95M,95Rを配置して、リードスイッチ92L,92M,92Rのうちいずれが出力信号を発生するかによってどのノズルN1,N2,N3が下向くものかを判定するもので、例えば、3条のうち中央のリードスイッチ92Mが出力するのは、マグネット93による励磁によるものとしてノズルN1が下向く状態と判定できる。また、3条のリードスイッチのうち、左右2つのリードスイッチ92L,92Rが出力するのはマグネット94による励磁によるものとしてノズルN2が下向く状態と判定できる。さらに、3条のリードスイッチのうち3条全部のリードスイッチが出力するのはマグネット95による励磁によるものとして、ノズルN3が下向く状態と判定できる。
【0046】
上記のようにノズルN1,N2,N3の直接の回転変更を検出していずれが下向くかを検出し、この下向くノズルの判定に基づき、前記電動モータ91を正逆転に回転させて所定の給電圧に制御するものである(ステップ304〜ステップ306)。なお、標準給電圧、+α、−βの趣旨は前記と共通である。
【0047】
なお、上記のようにリードスイッチとマグネットとの組合せを構成すると、リードスイッチからの出力がなかったり、正規のリードスイッチ以外のところから出力されることにより、正規の位置からわずかにずれてセットされていることの発見に寄与でき、不測の散布作業を未然に防止できる。
【0048】
前記のノズル種類判定による給電圧制御を組み込んだ作用について、
図15のフローチャートに基づき説明する。
図外キースイッチをオンしてエンジン1を起動し、制御コントローラ41に通電する(ステップ401)。ついで自動スイッチ48のオンの有無による自動モードか否かが判定される(ステップ402)。自動モードと判定された後、散布量設定を行い(ステップ403)、防除ポンプ駆動スイッチ39、ブームスイッチ42をONして散布準備を行う(ステップ404,405)。
【0049】
次いで、主静電スイッチ53、第1〜第5静電スイッチ58のON、OFFを判定する。主静電スイッチ53をONし第1〜第5静電スイッチ58のいずれかをONしたときには静電散布のスイッチ条件は整う(ステップ406,407)。なお主静電スイッチ53がOFFか又は第1〜第5静電スイッチを全てOFFにするときは静電散布は実行されない。
【0050】
静電散布作業が選択されたと判定されると、ステップ408でノズル種類判定による給電制御の設定がなされる。すなわち前述のように選択されたノズルに基づき、給電圧が設定される。
【0051】
更にブロアスイッチ93をオンし、開閉コックを開き(ステップ409〜410)、散布準備を行う。
走行レバーを操作することによって機体1を前進させると(ステップ411)、走行速度検出手段Sの検出データを入力し(ステップ412)、予め設定した低速側所定値v1(実施例ではv1=0)、および予め設定した高速側所定値v2との対比を行う(ステップ413、415)。v>v1のときは防除ポンプ用自動接点88オン出力する(ステップ414)。
【0052】
なお、この防除ポンプ自動接点88は、前記防除ポンプ駆動スイッチ39と直列に設けられ駆動スイッチ39がオン条件の下で自動接点88のオン出力とが揃うと制御コントローラ41において防除ポンプ駆動出力がなされる構成である。
【0053】
更に前記ステップ415でv<v2の作業適正範囲にあるときは、静電スイッチ自動接点87がオン出力し、主静電スイッチ53のオン操作と相俟って制御コントローラ41に静電スイッチオン情報が入力される(ステップ416)。このように、ステップ414、416の条件が整うと、検出走行速度vに比例して流量Qを制御しながら散布作業が行われる(ステップ417)。なお、流量Qの制御は、走行速度vと設定散布量qとから算出された流量Qとなるように、前記流量制御弁34をコントロールする構成である(ステップ419)。また、ステップ414、416の条件が整わないときは、静電スイッチ自動点87をオフ継続する(ステップ418)。
【0054】
その後キースイッチオフ操作があるまで作業を継続し、該キースイッチがオフ操作されると防除ポンプ用自動接点88、静電スイッチ用自動接点89共にオフとなる(ステップ421、422)。
【0055】
また、前記ステップ406,ステップ407で静電スイッチがOFFで静電散布と判断できないときには、静電を伴なわない通常散布と判定すると、散布設定量補正制御が行われる(ステップ423)。元来静電散布を伴なわない通常散布に対し、静電散布は葉裏面への薬液付着の効率が高く、従って、ステップ423では通常散布を行うため、所定割合(例えば2割程度)の増量補正を行う。なお、逆に静電散布を行う場合に、通常散布より2割程度削減するよう設定してもよい。つまり、静電散布の場合には通常散布の場合に比較して葉面付着効果が高いため、薬剤の使用を削減できる効果がある。本フローチャートはこの削減(又は増量)の効果を予め散布量に換算しておくものである。なお、ノズル種類によって削減(又は増量)の程度を変更設定することもできる。
【0056】
また、前記の例では、走行速度vが、低速側及び高速側所定値v1,v2の範囲であるときは、所定に自動モードでの散布作業および散布量制御がなされ、これら範囲を超えると散布作業は牽制されるが、特に高速側での牽制について、走行速度vの管理に基づくものでなく、走行用操作レバーやペダル等、例えばHST無段変速装置用のHSTレバーやHSTペダルの操作量を検出できる構成とし、この検出結果に基づき、機体が所定速度以上で走行することが予測される場合には、防除ポンプ用自動接点88、静電スイッチ用自動接点89共にオフとして散布作業を牽制することができる。
【0057】
前記ステップ402で自動スイッチのON操作がなく手動モードと判定されると、散布量設定(ステップ424)、各種スイッチON操作(ステップ425)の後、主静電スイッチ、及び第1〜第5の各静電スイッチのいずれかがONする静電散布を行うと判定されると(ステップ426,427)、前記ステップ408と同様、ノズル種類判定による給電制御の設定がなされ、前述のように選択されたノズルに基づき、給電圧が設定される(ステップ428)。
【0058】
また、上記の実施例では、ノズル種類の変更に基づいて供給電圧を大小に変更する構成としたが、前記流量制御弁34への変更制御出力に基づいて、供給電圧を共に変更制御する構成としてもよい。このように構成することによってきめ細かい静電散布制御を行うことができる。
【0059】
なお、ノズル部の種類変更による散布作業は、車速に連動して散布量を大小に制御する自動モードであるか、散布量を一定とする手動モードとするかを問わず、いずれのモードにおいても同様に効果がある。
【0060】
図16は、前記のノズル部判定手段R2の判定の正否を判定するフローチャートである。ノズル部判定手段R2によるノズル部N1,N2またはN3と、オペレータによる散布量設定による適正ノズル(又は対応ノズル)との関係を比較し(ステップ501〜505)、一致していれば、ノズル部判定手段R2の判定は正しいとし、不一致の場合にはノズル設定の誤りか、散布量設定の誤りと判定し、液晶表示部40に「一致」又は「不一致」の表示を行う(ステップ506,507)。このように構成することによって、ノズル部と設定散布量との関係が不一致のままで散布作業を開始させることがなく、薬剤の無駄を防止できる。