特許第5659742号(P5659742)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5659742
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】地中熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28D 21/00 20060101AFI20150108BHJP
   F28D 7/12 20060101ALI20150108BHJP
   F24J 3/08 20060101ALI20150108BHJP
   E21B 43/00 20060101ALI20150108BHJP
【FI】
   F28D21/00 Z
   F28D7/12
   F24J3/08
   E21B43/00 C
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2010-268454(P2010-268454)
(22)【出願日】2010年12月1日
(65)【公開番号】特開2012-117758(P2012-117758A)
(43)【公開日】2012年6月21日
【審査請求日】2013年11月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】金子 正
(72)【発明者】
【氏名】毎田 泰之
(72)【発明者】
【氏名】三小田 憲司
【審査官】 柿沼 善一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−069508(JP,A)
【文献】 特開2001−108307(JP,A)
【文献】 特開2008−292107(JP,A)
【文献】 特開2002−013828(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0058225(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 21/00
E21B 43/00
F24J 3/08
F28D 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤との間で熱交換を行う地中熱交換器であって、
地盤の掘削孔内に配される可撓性の熱可塑性樹脂製コルゲート管と、
前記コルゲート管内に熱媒体を吐出する吐出口と、
前記地盤と熱交換した前記熱媒体を前記コルゲート管から排出する排出口と、
前記コルゲート管の一方の管端部に接続部を介して接続されることにより、前記管端部を封止する熱可塑性樹脂製キャップ部材と、を有し、
前記接続部は、前記管端部と、前記キャップ部材における前記管端部に当接すべき部分との両者が、互いに溶融状態で当接されて形成された融着接合部であり、
前記コルゲート管の他方の管端部には、一端部にフランジ継ぎ手部を一体に有する熱可塑性樹脂製の第2管部材が、接続部を介して接続されており、
前記接続部は、前記第2管部材における他端部及び前記コルゲート管の前記他方の管端部の両者が、互いに溶融状態で当接されて形成された融着接合部であり、
前記フランジ継ぎ手部に固定されて前記第2管部材の前記一端部の開口を封止するフランジ板には、前記吐出口用のホース部材及び前記排出口用のホース部材が装着されていることを特徴とする地中熱交換器。
【請求項2】
請求項1に記載の地中熱交換器であって、
前記フランジ板は、前記フランジ継ぎ手部のフランジ面に面接触されており、
前記フランジ板は、前記吐出口用のホース部材及び前記排出口用のホース部材をそれぞれ通すための貫通孔が形成されており、
各前記貫通孔の内周面には水密部材が設けられており、
前記吐出口用のホース部材及び前記排出口用のホース部材は、前記水密部材により水密状態で前記第2管部材に装着されていることを特徴とする地中熱交換器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の地中熱交換器であって、
前記キャップ部材は、円筒部と底部とを有し、
前記円筒部が、前記コルゲート管の前記一方の管端部に前記接続部を介して同軸に接続されていることを特徴とする地中熱交換器。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載の地中熱交換器であって、
前記コルゲート管を構成する熱可塑性樹脂と、前記キャップ部材を構成する熱可塑性樹脂とは、互いに同素材であることを特徴とする地中熱交換器。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかに記載の地中熱交換器であって、
前記キャップ部材は、現場搬入よりも前に、予め前記コルゲート管の前記一方の管端部に融着接合されていることを特徴とする地中熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤との間で熱交換を行う地中熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
通年の温度変動の小さい地中熱を利用して建物の冷暖房等を行う地中熱利用システムが注目されている。この地中熱利用システムでは、地盤との間で採・放熱を行うべく地中に地中熱交換器が設置される。そして、地中熱交換器は、例えば、夏場には地盤に放熱し、冬場には地盤から採熱する。
【0003】
その一例として、特許文献1には二重管構造の地中熱交換器が示されている。すなわち、図1Aの概略縦断面図に示すように、この地中熱交換器121は、地盤Gに鉛直に埋設される外筒としての鋼管131と、鋼管131内に配置された内筒としての管部材141と、を有している。そして、鋼管131の上端部に設けられた吐出口131aから鋼管131内に吐出された熱媒体26を、管部材141の下端部の排出口141aから取り出すことにより、地盤Gとの間で熱交換後の熱媒体26をヒートポンプ等へ送出するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−13828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、地中での熱交換効率を高めるべく、図1Bの概略縦断面図に示すように、外筒として、外形形状が波形のコルゲート管(corrugated pipe:波形管)31を用いることが考えられる。また、樹脂製のコルゲート管31を用いれば、その軽量且つ可撓性から現場搬入や掘削孔23への建て込みを行い易く、施工性の大幅な改善を期待できる。
【0006】
一方、かかるコルゲート管31の上下の管端部31a,31bの開口を封止する封止構造の一例としては、コルゲート管31の各管端部31a,31bに、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合)樹脂等のホットメルト系樹脂を密実に充填封止して、これを封止栓133a,133bとすることが考えられる。
【0007】
ここで、施工後の地中熱交換器の運転中には、熱交換後の熱媒体26をヒートポンプへ圧送等する関係上、コルゲート管31内の熱媒体26の圧力は、例えば0.3〜0.7MPaの高圧になる。そのため、運転中のコルゲート管31には、この圧力が作用して、管径方向に膨張などの弾性変形をする。
【0008】
しかしながら、この弾性変形に、硬化した上記EVA樹脂製の封止栓133a,133bが追随できずに、コルゲート管31の内周面31dと封止栓133a,133bの外周面133ac,133bcとの間で互いの密着が外れて隙間Sa,Sbを生じ、そこから熱媒体26が漏出する危険があった(図1B中の拡大図を参照)。
【0009】
また、上記の密着の外れは徐々に進行するとも考えられ、その場合には、加減圧の繰り返しにより進行が早まるが、この点につき、地中熱交換器の一般的な運転パターンとしては、起動/停止の繰り返しが想定されるため、この密着の外れは、地中熱交換器においては起き易いことであった。
【0010】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、その主な目的は、運転中の地中熱交換器において、その外筒として使用されるコルゲート管の管端部からの熱媒体の漏出を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる目的を達成するために請求項1に示す発明は、
地盤との間で熱交換を行う地中熱交換器であって、
地盤の掘削孔内に配される可撓性の熱可塑性樹脂製コルゲート管と、
前記コルゲート管内に熱媒体を吐出する吐出口と、
前記地盤と熱交換した前記熱媒体を前記コルゲート管から排出する排出口と、
前記コルゲート管の一方の管端部に接続部を介して接続されることにより、前記管端部を封止する熱可塑性樹脂製キャップ部材と、を有し、
前記接続部は、前記管端部と、前記キャップ部材における前記管端部に当接すべき部分との両者が、互いに溶融状態で当接されて形成された融着接合部であり、
前記コルゲート管の他方の管端部には、一端部にフランジ継ぎ手部を一体に有する熱可塑性樹脂製の第2管部材が、接続部を介して接続されており、
前記接続部は、前記第2管部材における他端部及び前記コルゲート管の前記他方の管端部の両者が、互いに溶融状態で当接されて形成された融着接合部であり、
前記フランジ継ぎ手部に固定されて前記第2管部材の前記一端部の開口を封止するフランジ板には、前記吐出口用のホース部材及び前記排出口用のホース部材が装着されていることを特徴とする。
【0012】
上記請求項1に示す発明によれば、上記融着接合部を介してキャップ部材はコルゲート管の管端部に一体に取り付けられる。ここで、融着接合部は、コルゲート管の母材と、キャップ部材の母材とが互いに溶け合って固化したものであり、一体不可分の状態になっている。よって、高い強度を有し得て、これにより、融着接合部は、地中熱交換器の運転時に作用し得る熱媒体の圧力に破断無く耐えることができる。
また、融着接合部は、高い強度を有しつつコルゲート管の定常部やキャップ部材の定常部との両者に対して一体に連続しているので、コルゲート管内の熱媒体の圧力の作用によってコルゲート管が膨張などの変形をしても、当該融着接合部を介して膨張に係る力が、その近傍のキャップ部材の部分に伝達されて、当該部分も追随して速やかに変形可能である。よって、コルゲート管とキャップ部材との間に隙間が生じるようなこともない。
以上のことから、コルゲート管の一方の管端部からの熱媒体の漏出を防止可能となる。
【0014】
また、上記融着接合部を介して第2管部材は、コルゲート管の管端部に一体に取り付けられる。ここで、融着接合部は、コルゲート管の母材と、第2管部材の母材とが互いに溶け合って固化したものであり、一体不可分の状態になっている。よって、高い強度を有し得て、これにより、融着接合部は、地中熱交換器の運転時に作用し得る熱媒体の圧力に破断無く耐えることができる。
また、融着接合部は、高い強度を有しつつコルゲート管の定常部や第2管部材の定常部との両者に対して一体に連続しているので、コルゲート管内の熱媒体の圧力の作用によってコルゲート管が膨張などの変形をしても、当該融着接合部を介して膨張に係る力が、その近傍の第2管部材の部分に伝達されて、当該部分も追随して速やかに変形可能であり、もって、コルゲート管と第2管部材との間に隙間が生じることも無い。
以上のことから、コルゲート管の他方の管端部からの熱媒体の漏出を防止可能となる。
【0015】
更に、第2管部材は、フランジ継ぎ手部を一体に有しており、フランジ継ぎ手部には、吐出口用のホース部材及び排出口用のホース部材が装着されたフランジ板が固定されている。よって、フランジ継ぎ手部とフランジ板との所謂フランジ接合に基づいて高い密閉性で、これら吐出口用のホース部材及び排出口用のホース部材をコルゲート管に取り付け可能となる。
【0016】
請求項2に示す発明は、請求項1に記載の地中熱交換器であって、
前記フランジ板は、前記フランジ継ぎ手部のフランジ面に面接触されており、
前記フランジ板は、前記吐出口用のホース部材及び前記排出口用のホース部材をそれぞれ通すための貫通孔が形成されており、
各前記貫通孔の内周面には水密部材が設けられており、
前記吐出口用のホース部材及び前記排出口用のホース部材は、前記水密部材により水密状態で前記第2管部材に装着されていることを特徴とする。
請求項3に示す発明は、請求項1又は2に記載の地中熱交換器であって、
前記キャップ部材は、円筒部と底部とを有し、
前記円筒部が、前記コルゲート管の前記一方の管端部に前記接続部を介して同軸に接続されていることを特徴とする。
【0017】
上記請求項3に示す発明によれば、コルゲート管と接続部を介して接続されているキャップ部材の部分は、円筒部なので、コルゲート管内の熱媒体の圧力の作用によってコルゲート管が管径方向に膨張などの変形をした場合に、当該キャップ部材の円筒部も熱媒体から同様の管径方向の圧力を受けて、コルゲート管の変形と連動して膨張などの変形をする。よって、コルゲート管とキャップ部材との変形差は抑えられて、接続部たる融着接合部に作用し得る変形差起因の応力の軽減を図れ、当該融着接合部での破断は有効に防止される。
【0018】
請求項4に示す発明は、請求項1乃至3の何れかに記載の地中熱交換器であって、
前記コルゲート管を構成する熱可塑性樹脂と、前記キャップ部材を構成する熱可塑性樹脂とは、互いに同素材であることを特徴とする。
【0019】
上記請求項4に示す発明によれば、コルゲート管及びキャップ部材に係る熱可塑性樹脂同士が互いに同素材であることから、融着接合部は、コルゲート管やキャップ部材の母材と成分系はほぼ同一となり、もって、母材並の高い強度を有する。これにより、融着接合部の強度を格段に高めることができる。
【0020】
請求項5に示す発明は、請求項1乃至4の何れかに記載の地中熱交換器であって、
前記キャップ部材は、現場搬入よりも前に、予め前記コルゲート管の前記一方の管端部に融着接合されていることを特徴とする。
【0021】
上記請求項5に示す発明によれば、現場搬入よりも前に、予めコルゲート管にキャップ部材は融着接合されている。よって、施工現場でコルゲート管にキャップ部材を取り付けずに済み、そして、他の施工条件が許せば、現場搬入後に直ちに掘削孔へ建て込むこともできて、工期短縮を図れる。また、融着接合用の専用装置が装備された工場等において、効率良く且つ正確に融着接合処置を行うこともできて、その結果、高品質且つ安価な地中熱交換器を提供可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、運転中の地中熱交換器において、その外筒として使用されるコルゲート管の管端部からの熱媒体の漏出を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1Aは、従来の二重管構造の地中熱交換器121の概略縦断面図であり、図1Bは、参考例の地中熱交換器であって、外筒にコルゲート管31を用いた地中熱交換器の概略縦断面図である。
図2】本実施形態に係る地中熱交換器21を用いた地中熱利用システム11の説明図である。
図3】本実施形態に係る地中熱交換器21の概略縦断面図である。
図4図4A及び図4Bは、それぞれ、冬場及び夏場での運転例を示す地中熱交換器21の概略縦断面図である。
図5】地中熱交換器21の外筒に用いられるコルゲート管31の斜視図である。
図6図6A乃至図6Dは、融着接合装置による融着接合処理の様子を示す概略側面図である。
図7図7Aは、炭化ケイ素の長粒物27aを含有した充填材27の説明図であり、図7Bは、その比較例たる球形状の炭化ケイ素を含有した充填材27の説明図であり、図7Cは、図7Aの長粒物27aが充填材27内に形成する高熱伝導率の伝熱経路(ヒートブリッジ)の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
===本実施形態===
図2は、本実施形態に係る地中熱交換器21を用いた地中熱利用システム11の説明図である。図3は、一部を側面視で示す地中熱交換器21の概略縦断面図である。また、図4A及び図4Bは、それぞれ、冬場及び夏場での運転例を示す地中熱交換器21の概略縦断面図である。図5は、地中熱交換器21の外筒に用いられるコルゲート管31の斜視図である。
【0025】
図2に示すように、この地中熱利用システム11は、地盤Gとの間で熱交換を行う地中熱交換器21と、地中熱交換器21の熱媒体26からの熱を利用して建物1の暖房のための温水や冷房のための冷水を生成するヒートポンプ15と、を有する。なお、ヒートポンプ15の構成は周知なので、その説明は省略する。
【0026】
図3に示すように、この地中熱交換器21は、ボアホール方式の二重管型である。すなわち、地盤Gに鉛直に形成された掘削孔としての竪孔23と、竪孔23に鉛直方向に沿って挿入された外筒としてのコルゲート管31と、コルゲート管31内に配置された第1内筒としての第1ホース部材41と、同コルゲート管31内に配置された第2内筒としての第2ホース部材45と、竪孔23とコルゲート管31との間の空間SP23に充填される充填材27と、を有している。
【0027】
そして、例えば、冬場には、図4Aに示すように、ヒートポンプ15から第1ホース部材41を経由して、水又は不凍液等の熱媒体26が送られて、当該熱媒体26は、コルゲート管31の下端部31aに設けられた第1ホース部材41の管端開口41e(「吐出口」に相当)から、コルゲート管31内に吐出される。すると、当該熱媒体26は、コルゲート管31内において地盤Gの地中熱により暖められて自然対流に基づきコルゲート管31内を上方へ移動し、しかる後に、コルゲート管31の上端部31bに設けられた第2ホース部材45の管端開口45e(「排出口」に相当)から該第2ホース部材45内へ流入しヒートポンプ15へ向けて送出される。そして、ヒートポンプ15にて温水生成に供される。
【0028】
他方、夏場の熱媒体26の流れ方向は、上述の逆となる。すなわち、図4Bに示すように、ヒートポンプ15から第2ホース部材45を経由して熱媒体26が送られて、当該熱媒体26は、コルゲート管31内の上端部31bに設けられた上記第2ホース部材45の管端開口45e(「吐出口」に相当)からコルゲート管31内に吐出される。そして、当該熱媒体26は、コルゲート管31内において地盤Gの地中熱により冷やされて自然対流に基づきコルゲート管31内を下方へ移動し、しかる後に、コルゲート管31の下端部31aに設けられた第1ホース部材41の前記管端開口41e(「排出口」に相当)から第1ホース部材41内へ流入しヒートポンプ15へ向けて送出される。そして、ヒートポンプ15にて冷水生成に供される。
【0029】
以下、地中熱交換器21に係る各構成要素23,31,41,45,27について詳細に説明する。
【0030】
(1)竪孔23
図3に示すように、竪孔23は、ボーリング掘削機により地面にほぼ垂直に掘削された孔であり、その直径は100〜200mm、深さは30〜150mである。
【0031】
(2)コルゲート管31
コルゲート管31は、熱可塑性樹脂の一例としての高密度ポリエチレン製(密度が、950kg/mのポリエチレン)であって、その管壁部が、図3及び図5に示すような波形形状の管部材である。この波形形状は、コルゲート管31の管軸C31を中心軸とする螺旋形であり、また、管壁部の厚み(壁厚)は全長に亘りほぼ一定厚みである。よって、コルゲート管31の外周面31c及び内周面31dのどちらの面も、略同形の螺旋波形形状になっている。より詳しくは、図3に示すように、外周面31cの螺旋波形形状に係る山部と内周面31dの螺旋波形形状に係る谷部、若しくは外周面31cの螺旋波形形状に係る谷部と内周面31dの螺旋波形形状に係る山部とは、互いに壁厚方向に隣り合わせで位置している。
【0032】
そして、このような螺旋波形形状により、管壁部の外周面31c及び内周面31dの表面積は拡大されているので、地盤Gとコルゲート管31内の熱媒体26との間の熱交換効率は格段に高められている。
【0033】
コルゲート管31の下端部31a(「一方の管端部」に相当)には、この下端部31aの管端開口31edを水密に封止するキャップ部材33が、接続部32を介して一体に設けられている。これにより、コルゲート管31内の熱媒体26の前記管端開口31edから地盤Gへの漏出が防止される。
【0034】
詳しくは、キャップ部材33は、熱可塑性樹脂の一例としての高密度ポリエチレン製の一体成型部材であり、円筒部33aと、この円筒部33aから同軸且つ一体に管軸方向C33の下方に延出した略裁頭円錐状の底部33bとを有した閉鎖形状部材である。そして、円筒部33aの上端縁部33aeuが、コルゲート管31の下端部31aにおける縁部31edに、互いの管軸C31,C33を略同軸に揃えつつ突き合わされて、上記接続部32を介して接続されており、つまり、これら上端縁部33aeuと下端部31aにおける縁部31edとの間に、上述の接続部32が形成されている。
【0035】
この接続部32は、コルゲート管31の下端部31aの縁部31edと、キャップ部材33の上端縁部33aeu(当接すべき部分に相当)との両者が、互いに溶融状態で突き合わされて全周に亘り接合された融着接合部32である。すなわち、当該融着接合部32は、コルゲート管31の母材たる高密度ポリエチレンと、キャップ部材33の母材たる高密度ポリエチレンとが互いに溶け合って固化したものであり、母材とほぼ同種の成分系で一体不可分な状態になっている。よって、コルゲート管31の母材部分たる定常部やキャップ部材33の母材部分たる定常部とほぼ同等の強度を有し、これにより、融着接合部32は、地中熱交換器21の運転時に作用し得る熱媒体26の圧力に破断無く耐えることができる。
【0036】
また、融着接合部32は、上述のように母材並の強度を有しつつ、コルゲート管31の定常部やキャップ部材33の定常部との両者に対して一体に連続しているので、コルゲート管31内の熱媒体26の圧力の作用によってコルゲート管31が膨張などの変形をしても、当該融着接合部32を通じて上記膨張に係る力が、その近傍のキャップ部材33の部分に伝達されて、当該部分も追随して速やかに変形する。更に、上記の「その近傍のキャップ部材33の部分」というのは、円筒部33aであるので、熱媒体26から上述と同種の圧力を管径方向に受けて、コルゲート管31と連動して膨張などの変形をする。よって、コルゲート管31とキャップ部材33との変形差は抑えられて、接続部32たる融着接合部32に作用し得る変形差起因の応力の軽減を図れ、当該融着接合部32での破断は有効に防止される。その結果、コルゲート管31の下端部31aからの熱媒体26の漏出は確実に防止される。
【0037】
一方、コルゲート管31の上端部31b(「他方の管端部」に相当)には、この上端部31bの管端開口31euを封止しつつ前述の第1ホース部材41や第2ホース部材45を装着する目的で、鍔状のフランジ継ぎ手部35fを有した略円筒体状の管継ぎ手部材35(「第2管部材」に相当)が、上述と同種の接続部34を介して接続されている。つまり、この接続部34も融着接合部34であり、当該融着接合部34は、コルゲート管31の上端部31bの縁部31euと管継ぎ手部材35の下端縁部35edとの両者が互いに溶融状態で全周に亘り突き合わされて形成されている。
【0038】
より詳しくは、管継ぎ手部材35は、熱可塑性樹脂の一例としての高密度ポリエチレン製であるため、融着接合部34は、コルゲート管31の母材たる高密度ポリエチレンと、管継ぎ手部材35の母材たる高密度ポリエチレンとが互いに溶け合って固化して形成されている。よって、融着接合部34は、母材とほぼ同種の成分系で一体不可分な状態になっており、コルゲート管31の母材部分たる定常部や管継ぎ手部材35の母材部分たる定常部とほぼ同等の強度を有する。これにより、この融着接合部34も、地中熱交換器21の運転時に作用し得る熱媒体26の圧力に破断無く耐えることができる。
【0039】
また、融着接合部34は、上述のように母材並の強度を有しつつ、コルゲート管31の定常部や管継ぎ手部材35の定常部との両者に対して一体に連続しているので、コルゲート管31内の熱媒体26の圧力の作用によってコルゲート管31が膨張などの変形をしても、当該融着接合部34を通じて上記膨張に係る力が、その近傍の管継ぎ手部材35の部分に伝達されて、当該部分も追随して変形する。更に、上記の「その近傍の管継ぎ手部材35の部分」というのは、略円筒体状の部分であるので、熱媒体26から上述と同種の圧力を管径方向に受けて、コルゲート管31と連動して膨張などの変形をする。よって、コルゲート管31と管継ぎ手部材35との変形差は抑えられて、接続部34たる融着接合部34に作用し得る変形差起因の応力の軽減を図れ、当該融着接合部34での破断は有効に防止される。その結果、コルゲート管31の上端部31bからの熱媒体26の漏出は確実に防止される。
【0040】
他方、この管継ぎ手部材35が上端縁部35euに備えるフランジ継ぎ手部35fのフランジ面には、フランジ板36が面接触状態でボルト止めされ、これにより、管継ぎ手部材35の上端縁部35euの開口は閉塞されている。また、このフランジ板36には、第1ホース部材41及び第2ホース部材45を通すための貫通孔36h,36hが板厚方向(上下方向)に沿って形成されているが、各貫通孔36hの内周面には、水密部材の一例としてパッキン36pが設けられており、これにより、第1ホース部材41及び第2ホース部材45は、水密状態で管継ぎ手部材35に装着されている。よって、当該管継ぎ手部材35を含め、コルゲート管31の上端部31bからの熱媒体26の漏出は確実に防止される。
【0041】
このようなキャップ部材33や管継ぎ手部材35をコルゲート管31に融着接合する融着接合処理は、例えば、地中熱交換器21の設置場所たる施工現場ではなく、専用の融着接合装置が装備された工場等で事前になされ、しかる後に、コルゲート管31はキャップ部材33や管継ぎ手部材35と一体となった状態でコイル状に巻き取られて、現場搬入される。
【0042】
よって、この場合には、施工現場では、キャップ部材33や管継ぎ手部材35の取り付け作業を行わずに済み、工期短縮を図れる。また、融着接合処理を、専用の融着接合装置により正確且つ効率良く行うこともできるので、高品質且つ安価な地中熱交換器を提供可能となる。
【0043】
図6A乃至図6Dは、かかる融着接合装置による融着接合処理の様子を示す概略側面図である。
【0044】
融着接合装置は、図6Aに示すように、コルゲート管31を把持等して保持する第1保持部91と、キャップ部材33を把持等して保持する第2保持部93と、を有する。そして、第1保持部91と第2保持部93とは、コルゲート管31及びキャップ部材3のうちの各々対応する部材31,33を保持した状態において、コルゲート管31の管軸方向C31とキャップ部材33の管軸方向C33とが互いに同軸に揃うような位置関係で配置されており、更には、第1保持部91及び第2保持部93のどちらも、適宜なガイドレール95によって管軸方向C31,C33に往復移動可能に案内されている。
【0045】
また、図6Aに示すような準備状態、つまり、コルゲート管31の融着接合対象部たる管端面31edと、キャップ部材33の融着接合対象部たる管端面33aeuとの両者が、互いの間に間隔Dをもって対向した準備状態において、当該間隔Dの内側に挿抜可能な位置に、板状のヒーター部材97が設置されている。そして、このヒーター部材97の両側の板面97a,97aが加熱面であるが、これら加熱面97a,97aの法線方向が上記管軸方向C31,C33を向くように当該ヒーター部材97は配されている。
【0046】
よって、かかる構成の融着接合装置によれば、次のようにしてコルゲート管31とキャップ部材35との両者を、互いの管端面31ed,33aeu同士を突き合わされた状態で融着接合することができる。
【0047】
先ず、図6Aに二点鎖線で示すように、上述の間隔Dにヒーター部材97を挿入する。そして、図6Bに示すように、ヒーター部材97の対応する加熱面97a,97aへ向けて、コルゲート管31及びキャップ部材33の両者をそれぞれ管軸方向C31,C33に沿って移動し、加熱対象の管端面31ed,33aeuをヒーター部材97の各加熱面97a,97aに面接触状態で当接させて加熱する。
【0048】
ここで、加熱面97aの設定温度は、加熱対象のコルゲート管31の融点及びキャップ部材33の融点うちで高い方の融点よりも高い温度に設定されている。これにより、コルゲート管31及びキャップ部材33の両者を確実に融解(溶融)させることができる。この例では、コルゲート管31及びキャップ部材33の両者とも、高密度ポリエチレンを素材としているので、加熱面97aの設定温度は、高密度ポリエチレンの融点たる131℃よりも高い温度の例えば280℃に設定されている。
【0049】
そして、所定時間経過後に、コルゲート管31及びキャップ部材33の管端面31ed,33aeuが融解したら、図6Cに示すように、第1保持部91及び第2保持部93を管軸方向C31,C33に沿ってヒーター部材97から後退させ、これにより、当該ヒーター部材97の加熱面97a,97aからコルゲート管31及びキャップ部材33を離す。そして、ヒーター部材97を上記間隔Dから抜く。
【0050】
そうしたら、各保持部91,93の移動により、コルゲート管31及びキャップ部材33をヒーター部材97の方へ移動して、これにより、図6Dに示すように、融解状態の管端面31ed,33aeu同士を突き合わせて当接させ、そして、管軸方向C31,C33に所定の押圧力で互いの管端面31ed,33aeu同士を押し合わせて圧着する。
【0051】
そして、この押圧状態のまま一定時間冷却する。すると、コルゲート管31とキャップ部材33との間には融着接合部34が形成されて、つまり、コルゲート管31とキャップ部材33とは融着接合される。
【0052】
なお、コルゲート管31の上端部31bに、管継ぎ手部材35を融着接合する手順も上述と同じなので、その説明については省略する。
【0053】
(3)第1ホース部材41及び第2ホース部材45
図3に示すように、第1ホース部材41及び第2ホース部材45は、例えばポリエチレン等の樹脂製の管部材である。そして、第1ホース部材41の下端部の管端開口41eは、コルゲート管31の下端部31aに配置されている一方、第2ホース部材45の下端部の管端開口45eは、コルゲート管31の上端部31bに配置されている。これにより、熱媒体26は、冬場には前述した図4Aのルートで、また夏場には前述した図4Bのルートで、コルゲート管31内を自然対流等に基づき上昇又は下降しながら地盤Gと熱交換する。
【0054】
(4)充填材27
充填材27は、例えば、川砂や山砂、珪砂等を基材27bとし、図3に示すように、コルゲート管31と竪孔23との間の空間SP23に密実に充填される。これにより、充填材27を介して、コルゲート管31内の熱媒体26と地盤Gとの間で熱交換が行われる。
【0055】
この熱交換効率を高めるべく、図7Aに示すように、充填材27には、1〜20%の容積含有率(=長粒物27aの総容積/充填材27の総容積)で、炭化ケイ素、アルミナ、及び高炉スラグのうちの少なくとも何れか1種からなる長粒物27aが混入され、この例では、炭化ケイ素27aが混入されている。そして、当該炭化ケイ素27aの熱伝導率は、168(W/mK)という具合に高い。よって、当該炭化ケイ素27aの混入により充填材27の熱伝導率は飛躍的に高められている。
【0056】
また、炭化ケイ素27aの形状は、長粒形状(針状形状、棒状)である。よって、図7Aに示すように充填材27内において互い隣り合う炭化ケイ素27a,27a同士が接触する確率は、図7Bに示す球形状の場合と比べて格段に高くなり、これにより、充填材27内には、図7Cに示すような熱の通り道(ヒートブリッジ)が形成され易くなる。つまり、炭化ケイ素27aの含有率をあまり高めずとも、充填材27内に高熱伝導率の伝熱経路を確実に形成可能となる。よって、砂よりも高価な炭化ケイ素27aの含有率を低くすることができて、その結果、地中熱交換器21の製造コストを低く抑えながらも、充填材27の熱伝導性を確実に高めることができる。
【0057】
ここで望ましくは、炭化ケイ素の長粒物27aの長手方向の寸法を10〜50mmにし、また、長手方向と直交する方向の寸法を1〜3mmにすると良い。そして、長手方向の寸法を10mm以上にすれば、互いに隣り合う長粒物27a,27a同士の接触確率を高めることができる。また、同寸法を50mm以下にすれば、長粒物27aの製造はさほど困難にならず、製造コストの抑制を図れ、更には、竪孔23への充填時の長粒物27aの折損等も有効に防止できて、つまり、製造コストに見合った寸法長さの長粒物27aを、竪孔23内に確実に配することができる。
【0058】
また、長粒物27aの長手方向と直交する方向の寸法たる1〜3mmは、一般に充填材27の基材27bとして用いられる砂等の粒状物の粒径とほぼ同サイズである。よって、当該長粒物27aは、充填材27の基材27b内に偏在すること無く均一に混入され易く、その結果、充填材27の全域に亘り高い熱伝導性を確保することができる。
【0059】
ちなみに、上述の寸法範囲によれば、長粒物27aの最小サイズは、10mm×1mmとなる。よって、その粒径がミクロンオーダーの微粉の場合に起こりがちな、地下水に混ざって充填材27から長粒物27aが流出するという不具合も確実に防止できて、充填材27は長期に亘り高い熱伝導性を維持可能となる。
【0060】
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で以下に示すような変形が可能である。
【0061】
上述の実施形態では、コルゲート管31、キャップ部材33、及び管継ぎ手部材35の素材たる熱可塑性樹脂の一例として高密度ポリエチレンを例示していた。つまり、上述の場合には、キャップ部材33及び管継ぎ手部材35の素材は、コルゲート管31の素材と完全に揃えていたが、同素材でなくても良い。より詳しく言うと、加熱により軟化・溶融し冷却により固化する熱可塑性樹脂であれば、融着接合は可能なので、例えば、コルゲート管31が高密度ポリエチレンである場合に、キャップ部材33及び管継ぎ手部材35の方が、高密度ポリエチレン以外の熱可塑性樹脂であっても良い。但し、何れも同素材に揃っている方が、融着接合部32,34の成分系がほぼ同一になって、その強度も母材並となるので、望ましくは、同素材に揃えると良い。
【0062】
上述の実施形態では、キャップ部材33の一例として、円筒部33aと略裁頭円錐状の底部33bとを有した部材を示したが、その形状は何等これに限るものではなく、例えば、キャップ部材が、円筒部33aと、円筒部33aの端縁に全周に亘って一体に形成された平板状の底部(不図示)とからなる単純形状の有底円筒体であっても良い。
【0063】
上述の実施形態では、コルゲート管31内の熱媒体26の流れ方向を鉛直方向にした垂直方式の地中熱交換器21を例示したが、何等これに限るものではなく、水平方式でも良い。すなわち、水平方向に広い掘削孔内に、コルゲート管31の管軸方向C31を水平にしながら収容し、これにより、コルゲート管31内の熱媒体26の流れ方向を水平方向にしても良い。なお、掘削孔に収容後は、充填材27により埋め戻されるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0064】
1 建物、11 地中熱交換システム、15 ヒートポンプ、
21 地中熱交換器、23 竪孔(掘削孔)、26 熱媒体、
27 充填材、27a 長粒物、27b 基材、
31 コルゲート管、31a 下端部(一方の管端部)、
31b 上端部(他方の管端部)、31c 外周面、31d 内周面、
31ed 縁部(管端開口、管端面)、31eu 縁部(管端開口)、
32 融着接合部(接続部)、33 キャップ部材、33a 円筒部、
33aeu 上端縁部(管端面、当接すべき部分)、
33b 略裁頭円錐状の底部、34 融着接合部(接続部)、
35 管継ぎ手部材(第2管部材)、35ed 下端縁部、35eu 上端縁部、
35f フランジ継ぎ手部、36 フランジ板、36h 貫通孔、36p パッキン、
41 第1ホース部材(ホース部材)、41e 管端開口、
45 第2ホース部材(ホース部材)、45e 管端開口、
91 第1保持部、93 第2保持部、95 ガイドレール、
97 ヒーター部材、97a 加熱面、
SP23 空間、G 地盤、D 間隔
図4
図6
図7
図1
図2
図3
図5