(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、航続可能距離を推定するには、走行用バッテリの残量(残存電力量)と電力量消費率(電費)とに基づいて算出することになる。このうち、電力量消費率は、特許文献1に記載のように所定期間における走行距離を消費電力量で除算することにより算出することができる。この場合、電力量消費率の算出のベースとなる「所定期間」によって、電力量消費率の算出値は異なるものになる。
【0007】
つまり、電力量消費率は車両の走行環境や、運転操作の傾向や、走行用バッテリの電力を使った電動補機類の作動非作動等によって変化する。例えば、路面のアップダウンや曲がりくねりの少ない道路や信号機等の停止要因の少ない道路(例えば、高速道路や自動車専用道路)では電力量消費率は高く(大きく)なる。逆に、路面のアップダウンや曲がりくねりの多い道路や信号機等の停止要因の多い道路等では電力量消費率は低く(小さく)なる。また、急加速や急停止を抑えた所謂エコノミー走行を行なえば電力量消費率は高くなるが、逆に、急加速や急停止を繰り返せば電力量消費率は低くなる。また、電動補機類が作動すれば電力量消費率は低くなるが、電動補機類が作動しなければ電力量消費率は高くなる。
【0008】
上記の「所定期間」、或いはこれに相当するものであって、電力量消費率を算出するためのデータ取得期間である「サンプリング区間」が短いほど、算出される電力量消費率は直近の走行環境や運転操作の傾向に依存した値となり、「所定期間」或いはこれに相当する「サンプリング区間」が長いほど、算出される電力量消費率は直近の走行環境や運転操作の傾向に依存しないより平均的な値となる。
【0009】
したがって、電力量消費率の算出のベースとなる「所定期間」或いはこれに相当する「サンプリング区間」の設定に応じて、電力量消費率やこれに基づく走行可能距離(航続可能距離)も異なるものになる。
ドライバは、この航続可能距離を把握しながら、航続可能距離が少なくなるとバッテリへの充電を行なうことになる。この充電の判断のためには、航続可能距離は確実に走行可能な値であることが要求される。例えば、車両が、電力量消費率の高い道路から、山岳路や渋滞路等の電力量消費率の低い道路に進入した場合には、電力量消費率が急激に低下することが考えられるが、この場合には、直近の急低下した電力量消費率に基づいて航続可能距離を推定して、これをドライバに知らせれば、適切なタイミングで充電を実施することができる。また、電力消費の少ない運転や電動補機類の作動抑制等の対策を実施することもできる。
【0010】
一方、充電完了直後のようにバッテリ残量が大きい場合には、電力量消費率の値によって推定される航続可能距離が大きく変動する。例えば、直近の電力量消費率が極端に低い場合に、この直近の電力量消費率に基づいて航続可能距離を推定すると、航続可能距離は極端に短くなることになる。充電完了直後であれば航続可能距離は本来十分に回復しているはずの航続可能距離がこのように短くなると、ドライバに対して、充電が不十分であったのか或いは充電系統に何らかの不具合が発生したのか等の違和感や不安を与えることになる。
【0011】
本発明は、このような課題に鑑み創案されたもので、電費(電力量消費率)を算出するためのサンプリング区間を適切に設定して、この電費に基づく航続可能距離を状況に応じて適切に推定することができるようにした、車両用航続可能距離推定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明の車両用航続可能距離推定装置は、車両の走行用バッテリの電力の残量を演算する残量演算手段と、第1のサンプリング区間における前記走行用バッテリの消費電力及び前記車両の走行距離に基づいて、前記走行用バッテリの単位容量あたりの走行距離を第1の電費として演算する第1の電費演算手段と、前記第1のサンプリング区間よりも長い第2のサンプリング区間における前記走行用バッテリの消費電力及び前記車両の走行距離に基づいて、前記走行用バッテリの単位容量あたりの走行距離を第2の電費として演算する第2の電費演算手段と、前記残量演算手段により演算された前記走行用バッテリの電力の残量と前記第1の電費演算手段により演算された前記第1の電費及び前記第2の電費演算手段により演算された前記第2の電費
のいずれかとを用いて、航続可能距離推定値を推定する航続可能距離推定手段とを備え
、前記航続可能距離推定手段は、予め規定された初期化条件の成立前は、前記第1の電費を用いて前記航続可能距離推定値を推定する一方、前記初期化条件が成立すると、前記第1の電費と前記第2の電費とのうち値の大きい方を用いて前記航続可能距離推定値を推定し、前記初期化条件は、前記走行用バッテリの充電が終了したことであって、前記走行用バッテリの充電の終了は、当該充電終了時の前記走行用バッテリの電力の残量が当該充電開始時の前記走行用バッテリの電力の残量よりも一定値以上大きくなったことにより判定することを特徴としている。
【0014】
前記航続可能距離推定手段は、前記初期化条件の成立後、予め規定された更新条件が成立すると、前記第1の電費を用いて前記航続可能距離推定値を推定することが好ましい。
前記更新条件は、前記初期化条件の成立後に前記車両が予め設定された距離だけ走行したことであることが好ましい。
あるいは、前記更新条件は、前記初期化条件の成立後、前記第1のサンプリング区間が終了し、前記第1の電費が得られたことであることも好ましい。
【0015】
前記第1のサンプリング区間及び前記第2のサンプリング区間は、前記車両の走行距離に基づいて規定されることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の車両用航続可能距離推定装置によれば、第1のサンプリング区間において演算した第1の電費と、第1のサンプリング区間よりも長い第2のサンプリング区間において演算した第2の電費とを演算し、走行用バッテリの電力の残量と第1の電費及び第2の電費とを用いて、航続可能距離推定値を推定するので、航続可能距離を状況に応じて適切に推定することが可能になる。
【0017】
また、走行用バッテリの充電の終了などの初期化条件が成立すると、第1の電費と第2の電費とのうち値の大きい方によって航続可能距離推定値を推定することにより、この初期化条件成立時の航続可能距離推定値を比較的高い値とすることができ、満充電後にもかかわらず航続可能距離推定値が極端に小さいといった現象を回避することができる。
また、初期化条件の成立後、車両が予め設定された距離だけ走行した場合や、第1のサンプリング区間が終了し第1の電費が得られた場合などの更新条件が成立すると、初期化条件成立後の比較的短い第1のサンプリング区間に基づく第1の電費を用いて航続可能距離推定値を推定することにより、直近の走行に基づいた航続可能距離推定値を得ることができ、ドライバに、直近の道路環境や運転操作状態の航続可能距離への影響を知らせることができる。
【0018】
例えば電費が低下する道路環境や運転操作状態であれば、この更新条件成立に航続可能距離推定値が急減することから、ドライバは現状の運転状態が電費を低下させていることを認識することができる。これにより、ドライバは電費節約運転をしたり、電動補機類の作動を抑制させたりして電費を向上させるように対応することができ、充電のタイミングを適切の判断することもできる。逆に、電費が向上する道路環境や運転操作状態であれば、この更新条件成立時に航続可能距離推定値が増加したりあまり減少したりしないことから、ドライバは現状の運転状態が電費を節約していることを認識することができる。
【0019】
走行用バッテリの充電の終了を、かかる充電の終了時の走行用バッテリの電力の残量がかかる充電の開始時の走行用バッテリの電力の残量よりも一定値以上大きくなったことにより判定すれば、走行用バッテリの電力の残量のみから、充電ステーション等での充電操作による充電を、例えば回生充電とは切り離して把握することができ、航続可能距離推定値を推定するにあたっての初期化条件として適している。
【0020】
また、第1のサンプリング区間及び第2のサンプリング区間を車両の走行距離に基づいて規定すれば、シンプルなロジックで制御することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
図1は本実施形態にかかる車両の要部構成を説明する図である。本実施形態にかかる車両は、
図1に示すように、走行用バッテリ(以下、単にバッテリともいう)7の電力で電動発電機(以下、走行用モータ又は単にモータともいう)8が電動機として作動することによって走行する電気自動車である。車両には、通信ライン等を介して互いに接続された複数の電子制御装置が備えられる。
【0023】
電子制御装置間の接続に通信ラインを用いる場合、通信ラインは、例えばCAN,LIN,Ethernet(登録商標),MOST,FlexRay等の規格に準拠する車載LAN(
Local Area Network)のバス型が適用できるが、専用の信号線であってもよい。
電子制御装置としては、
図1に示すように、EV−ECU(Electric Vehicle - Electronic Control Unit,電気自動車用車両ECU)1,BMU(Battery Management Unit,バッテリ管理用ECU)2及びMCU(Motor Control Unit,モータ制御用ECU)3,エアコンECU4を備えている。これらの電子制御装置は、周知のマイクロプロセッサやROM,RAM等を集積したLSIデバイスや組み込み電子デバイスとして構成される。
【0024】
BMU2は、車両の走行用バッテリ7を管理するための電子制御装置である。バッテリ7は、車両の駆動輪に接続された走行用モータ8の主電源であり、例えば複数のリチウムイオン電池モジュールを直列に連結して構成される。バッテリ7に蓄えられた電力は、インバータ5を介してモータ8に供給される。BMU2は、インバータ5の動作を制御することによって、バッテリ7からモータ8に供給される電力を調整し、同時にバッテリ7の充電率を演算する。
【0025】
MCU3は、車両の走行状態や運転操作に応じてモータ8から出力されるトルク及び回転数(回転速度)を制御する電子制御装置である。車両の駆動輪(図示略)は、モータ8の回転数に応じた角速度で回転する。MCU3は、モータ8の回転数から車両の走行速度や走行距離を常時検出する。
エアコンECU4は、車両に搭載されたエアコン装置(空調装置)9を制御する電子制御装置である。ここでは、モータ8以外に走行用バッテリ7の電力を使用する車載機器類(電力消費車載機器類)の代表的なものとしてエアコン装置(空調装置)9を取り上げている。エアコンECU4は、各種センサの検出情報から把握される車室内外の環境条件に基づき、運転者,乗員の操作によって入力設定された目標温度,目標風量が得られるようにエアコン装置9を制御する。エアコンECU4の制御内容としては、温度制御,風量制御のほか、吹き出し口切換制御,吸気切換制御等が挙げられる。
【0026】
EV−ECU1は、他の電子制御装置よりも上位の電子制御装置であり、BMU2,MCU3及びエアコンECU4を統括管理する機能を有する。例えば、EV−ECU1は他の電子制御装置で実施される制御のタイミングや制御量を監視し、必要に応じて各制御に介入する。また、EV−ECU1には、インストルメントパネルに内蔵された表示装置(表示手段)6が接続される。
【0027】
また、本実施形態のEV−ECU1は、他の電子制御装置で検出された情報に基づいて、走行用バッテリ7の残りの電力で走行することができると予想される航続可能距離(航続距離)Dpを演算する機能を有する。ここで演算された航続可能距離Dpは、随時、表示装置6に表示される。
BMU2,MCU3,エアコンECU4及びEV−ECU1についてさらに説明する。
【0028】
BMU2は、SOC演算部(残量演算手段)21を有する。SOC演算部21は、公知の推定方法を用いて走行用バッテリ7の充電率(SOC,State Of Charge)Cを検出又は演算する。例えば、バッテリ7を満充電した後、バッテリ放電時における電流値及び電圧値に基づいて放電量が積算され、バッテリ充電(回生充電)時における電流値及び電圧値に基づいて充電量が積算され、その放充電量と満充電の充電容量とに応じて現在の充電容量を算出し、満充電の充電容量に対する割合として算出される充電率Cを例えば百分率で表した値が演算される。
【0029】
この場合、満充電の充電容量は、走行用バッテリ7の規格に応じて既知であるが、走行用バッテリ7の劣化を考慮した満充電の充電容量を推定する公知の技術を適用しても良い。例えば、外部充電開始時のバッテリの充電率(充電開始時充電率)を予め把握されているバッテリの開放電圧と充電状態との関係から推定し、充電開始から充電完了までの充電電流の積算値を算出し、充電完了時のバッテリの充電率(充電完了時充電率)を上記の関係から推定し、積算値を充電完了時充電率から充電開始時充電率との差の値で除算することにより満充電容量を推定することができる。
【0030】
また、走行用バッテリ7の内部抵抗値,開放電圧,バッテリ温度等を検出しこれらに基づく演算を用いて充電率を求める公知の手法もあり、かかる手法を用いて充電率の推定を行なってもよい。
このようにして、BMU2で検出又は演算された充電率Cの情報は、EV−ECU1に送られる。
【0031】
MCU3は、走行距離演算部(走行距離演算手段)31及びモータ電力演算部(走行用バッテリ7のモータ8で消費された消費電力を演算するモータ消費電力演算手段)32を有する。
走行距離演算部31は、モータ8の回転数から車両の走行距離(即ち、車両が実際に走行した距離[km])を演算する。この走行距離演算部31では、モータ8の回転数を常時積算しており、この積算した走行距離値を所定周期(例えば、数十ms)でEV−ECU1に出力する。この場合の走行距離値としては、新車当初から走行距離積算値(積算走行距離)でもよく、後述する初期化信号を受けた時点等に0にリセットされた値でもよい。
【0032】
また、モータ電力演算部32は、例えばモータ8の電圧及び電流の検出値又は推定値に基づいてモータ8で消費された電力(モータ消費電力)EPM[kW]を所定周期(例えば、数十ms)で演算する。演算されたモータ消費電力EPMは、所定周期(例えば、数十ms)でEV−ECU1に出力される。
エアコンECU4は、エアコン電力演算部(車載機器類消費電力演算手段)41を有する。エアコン電力演算部41は、例えばエアコン9の電圧及び電流の検出値又は推定値に基づいてエアコン装置9で実際に消費された電力(エアコン消費電力)EPA[kW]を所定周期(例えば、数十ms)で演算する。ここでは、エアコン装置9のコンプレッサやヒーター,ファンに供給される電圧及び電流を計測し、これらの計測値に基づいてエアコン消費電力EPA[kW]を演算する。演算されたエアコン消費電力EPAは、所定周期(例えば、数十ms)でEV−ECU1に出力される。
【0033】
EV−ECU1は、初期化条件判定部(初期化条件判定手段)11と、電池残量演算部(電池残量演算手段)12と、消費電力量演算部(消費電力量演算手段)13と、電費演算部(電費演算手段)14と、航続可能距離演算部(航続可能距離演算手段)15とを有する。
初期化条件判定部11は、航続可能距離を初期化するための初期化条件が成立したかを判定する。この初期化条件は、走行用バッテリ7の充電が終了したこととしており、走行用バッテリ7の充電の終了を、かかる充電終了時の走行用バッテリ7の電力の残量EC
Eがかかる充電開始時の走行用バッテリ7の電力の残量EC
Sよりも一定増分ΔEC以上大きくなった場合に、走行用バッテリ7の充電が終了し初期化条件が成立したと判定する。
【0034】
電気自動車の充電には、外部充電以外に回生制動時にモータ8が発電機として作動する際の充電もあり、また、外部充電であっても、満充電或いは満充電近傍まで十分に充電されない場合もある。ここでは、満充電或いは満充電近傍まで十分に充電された場合を初期化条件とするので、そうでない場合と区別するために、充電により走行用バッテリ7の残量ECが一定値ΔEC以上大きくなったことを、初期化条件(第1推定条件)としている。
【0035】
なお、この初期化条件判定部11による初期化条件の判定は、BMU2のSOC演算部21から充電率Cの情報を所定周期で取得しながら、充電率Cが上昇したら、この上昇開始時点の充電率Csを記憶し、充電率の上昇が終わった時点で得られる充電率Ceと、充電率の上昇開始時点の充電率Csとの差ΔC(=Ce−Cs)が一定値ΔC1以上大きい場合(この場合、充電終了時の走行用バッテリ7の電力の残量が充電開始時の走行用バッテリ7の電力の残量よりも一定値ΔC1以上大きくなる)に、走行用バッテリ7の充電が終了して初期化条件が成立したと判定してもよい。
【0036】
初期化条件判定部11では、こうして初期化条件が成立したと判定したら、初期化信号を出力する。
この「初期化条件(第1推定条件)」の他に「更新条件(第2推定条件)」を後述するが、これらの「初期化条件」及び「更新条件」は、いずれも「航続可能距離推定値」を推定する際の条件であり、ここで言う「初期化」とは、「航続可能距離推定値」を初期値に戻すという意味ではなく、初期化条件、つまり、満充電或いは満充電近傍まで十分に充電された場合に、航続可能距離推定値の通常の更新時(更新条件が成立した際の航続可能距離推定値の推定)とは別の態様で新たに推定するため、「更新」と区別して表記したものである。
【0037】
電池残量演算部12は、走行用バッテリ9の電池残量(残存容量)EC[kWh]を検出又は演算する。ここでは、例えば充電率Cと走行用バッテリ7の総容量(満充電容量)TECとから、これらを乗算することにより電池残量EC(=TEC×C)を演算する。あるいは、走行用バッテリ7の内部抵抗値,開放電圧,バッテリ温度等を検出しこれらに基づく演算を用いて電池残量ECを求める公知の手法もあり、かかる手法を用いて電池残量ECの推定を行なってもよい。こうして求められた電池残量ECは、航続可能距離演算部15に出力される。
【0038】
消費電力量演算部13は、MCU3のモータ電力演算部32から入力されたモータ消費電力EPM[kW]に基づいてモータ消費電力量EEM[kWh]を演算し、エアコンECU4のエアコン電力演算部41から入力されたエアコン消費電力EPA[kW]に基づいてエアコン消費電力量EEA[kWh]を演算し、演算したモータ消費電力量EEMとエアコン消費電力量EEAとを加算してバッテリ消費電力量EE[kWh]を演算する。
【0039】
このため、消費電力量演算部13には、モータ消費電力量EEMを演算するモータ消費電力量演算部(モータ消費電力量演算手段)13aと、エアコン消費電力量EEAを演算するエアコン消費電力量演算部(車載機器類消費電力量演算手段)13bと、これらからバッテリ7から消費される総消費電力量EE[kWh]を演算する総消費電力量演算部(総消費電力量演算手段)13cと、が設けられている。
【0040】
モータ消費電力量演算部13aでは、モータ電力演算部32から入力されたモータ消費電力EPMを積算(時間積分)することによりモータ消費電力量EEM[kWh]を演算する。このモータ消費電力量演算部13aでは、上記初期化信号を受けると、この時点から,予め設定した車両走行距離単位で、モータ消費電力EPMを積算(時間積分)してモータ消費電力量EEMを演算する。ここでは、車両が単位距離D1(例えば、5km)走行する毎に、モータ消費電力量EEMを演算し、この演算結果EEM(k)を総消費電力量演算部13cに出力すると共に、この時点から、また次のモータ消費電力量EEM(k+1)を演算する。次に初期化信号を受けるまで、この処理を繰り返す。
【0041】
同様に、エアコン消費電力量演算部13bでは、エアコン電力演算部41から入力されたエアコン消費電力EPAを積算(時間積分)することによりエアコン消費電力量EEA[kWh]を演算する。本エアコン消費電力量演算部13bでも、上記初期化信号を受けると、この時点から,予め設定した車両走行距離単位で、エアコン消費電力EPAを積算(時間積分)してエアコン消費電力量EEAを演算する。ここでは、車両が単位距離D1(例えば、5km)走行する毎に、エアコン消費電力量EEAを演算し、この演算結果EEA(k)を総消費電力量演算部13cに出力すると共に、この時点から、また次のエアコン消費電力量EEA(k+1)を演算する。初期化信号を受けるまで、この処理を繰り返す。
【0042】
総消費電力量演算部13cでは、車両が単位距離D1(ここでは、5km)走行する毎に入力される単位走行距離(5km)あたりのモータ消費電力量EEM(k)及びエアコン消費電力量EEA(k)を加算した総消費電力量EE(k)[kWh]を逐次記憶して、直近の複数の総消費電力量EE(k)から、車両の第1の走行距離(第1の基準距離)DTSに対する総消費電力量(第1の総消費電力量)EESと、車両の第2の走行距離(第2の基準距離)DTLに対する総消費電力量(第2の総消費電力量)EELと、を求める。
【0043】
第1の走行距離DTS及び第2の走行距離DTLは、電費(電力量消費率)Eefを演算するためのデータサンプリングの区間を規定する車両の走行距離であり、第2の走行距離DTLは第1の走行距離DTSよりも長い距離に設定されている。ここでは、第1のサンプリング区間を規定する第1の基準距離DTSは25kmと設定され、第2のサンプリング区間を規定する第2の基準距離DTLは100kmと設定されている。
【0044】
したがって、第1の基準距離DTSは単位距離D1(5km)の5倍に、第2の基準距離DTLは単位距離D1(5km)の20倍に、また、第1の基準距離DTSの4倍に設定されていることになる。
このため、現時点で最新の総消費電力量演算部13cとしては、直近の5つの総消費電力量EE(k)〜EE(k+4)の加算値として第1の総消費電力量EESを求めることができる。また、直近の20の総消費電力量EE(k)〜EE(k+19)の加算値として第2の総消費電力量EELを求めることができ、或いは、直近の4つの第1の総消費電力量EESの加算値として第2の総消費電力量EELを求めることができる。
【0045】
したがって、ある時点で、
図3(a)に示すように、直近の5つの単位距離D1の各総消費電力量EE(k)[kWh]の加算値が第1の基準距離DTSにおける第1の総消費電力量EESとなり、直近の20の単位距離D1の各総消費電力量EE(k)[kWh]の加算値が第2の基準距離DTLにおける第2の総消費電力量EELとなる。
次に、車両の走行により、
図3(b)に示すように、新たな単位距離D1の総消費電力量EE(k)[kWh]が得られると、この新たな単位距離D1の総消費電力量EE(k)を含んだ直近の5つの単位距離D1の各総消費電力量EE(k)[kWh]の加算値が第1の基準距離DTSにおける第1の総消費電力量EESとなり、同様に直近の20の単位距離D1の各総消費電力量EE(k)[kWh]の加算値が第2の基準距離DTLにおける第2の総消費電力量EELとなる。
【0046】
このように、第1の総消費電力量EES及び第2の総消費電力量EELは、車両が単位距離D1(ここでは、5km)走行する毎に、最新のデータに基づく値に更新される。
電費演算部14は、比較的短い第1のサンプリング区間に基づいた第1の電費(特性反映電費)を演算する第1電費演算部(第1電費演算手段)14aと、比較的長い第2のサンプリング区間に基づいた第2の電費(平均化電費)を演算する第2電費演算部(第2電費演算手段)14bと、を備えている。
【0047】
第1電費演算部14aは、総消費電力量演算部13cから入力される最新の第1の総消費電力量EESとこの第1の総消費電力量EESにかかる第1のサンプリング区間における車両の走行距離(つまり、第1の基準距離)DTS[km]とから、第1のサンプリング区間における第1の電費Eef1(=DTS/EES[km/kWh])を演算する。
第2電費演算部14bは、総消費電力量演算部13cから入力される最新の第2の総消費電力量EELとこの第2の総消費電力量EELにかかる第2のサンプリング区間における車両の走行距離(つまり、第2の基準距離)DTL[km]とから、第2のサンプリング区間における第2の電費Eef2(=DTL/EEL[km/kWh])を演算する。
【0048】
第1の電費Eef1及び第2の電費Eef2は、第1の総消費電力量EES及び第2の総消費電力量EELの更新と対応して、車両が単位距離D1(ここでは、5km)走行する毎に、最新の値に更新される。
換言すれば、第1の電費Eef1及び第2の電費Eef2は、いずれも、車両が単位距離D1走行する毎に得られる入力される単位走行距離(5km)あたりの総消費電力量EE(k)[kWh]に基づく、移動平均燃費とも言える。
【0049】
そして、更新された第1の電費Eef1及び第2の電費Eef2は、電費演算部14から航続可能距離演算部15に出力される。
航続可能距離演算部15は、第1の電費Eef1及び第2の電費Eef2の最新値を記憶し、これらの第1の電費Eef1及び第2の電費Eef2のいずれかと、電池残量演算部12で演算された電池残量ECとから、航続可能距離Dpを演算する。
【0050】
本装置では、初期化条件判定部11から航続可能距離演算部15に初期化信号が入力されると、航続可能距離演算部15では、電池残量EC[kWh]に第1のサンプリング区間に基づいた第1の電費Eef1[km/kWh]を乗算して得られる第1の航続可能距離(第1の航続可能距離演算値)Dp1(=EC/Eef1)[km]と、第1のサンプリング区間よりも長い第2のサンプリング区間に基づいた第2の電費Eef2[km/kWh]を用いて、電池残量EC[kWh]に第2の電費Eef2[km/kWh]を乗算して得られる第2の航続可能距離(第2の航続可能距離演算値)Dp2(=EC/Eef2)[km]とのうち、大きい方を推定航続可能距離Dpと推定する。
【0051】
そして、初期化信号が入力された時点から、車両が第1の基準距離DTS[km]だけ走行すると、以降は、次に初期化信号が入力されるまで、航続可能距離演算部15では、より短い第1のサンプリング区間に基づいた第1の電費Eef1[km/kWh]を用いて、電池残量EC[kWh]に第1の電費Eef1[km/kWh]を乗算して得られる第1の航続可能距離(第1の航続可能距離演算値)Dp1(=EC/Eef1)[km]を推定航続可能距離(航続可能距離推定値)Dpと推定する。
【0052】
なお、ここでは、初期化後に、推定航続可能距離Dpを第1の航続可能距離Dp1に切り換える(更新する)更新条件(第2推定条件)を、初期化信号が入力された時点から、車両が第1の基準距離DTSだけ走行したことに設定しているが、これは、満充電の終了直後に第2の航続可能距離算出値Dp2に基づく航続可能距離推定値Dpから第1の航続可能距離算出値Dp1に基づく航続可能距離推定値Dpに更新すると、航続可能距離推定値Dpが急変してドライバに違和感を与え易いため、これを回避するためである。
【0053】
そして、このように演算された推定航続可能距離Dpの信号は表示装置6に送られて、表示装置6の表示部に表示されるようになっている。
本発明の一実施形態としての車両用航続可能距離推定装置は、上述のように構成されているので、EV−ECU1では、例えば
図4〜
図7のフローチャートに示すように航続可能距離を推定する。なお、
図4〜
図7のフローチャートは互いに同期した所定の周期(例えば、数十ms)で繰り返し実行されるものとする。
【0054】
まず、初期化条件判定部11による初期化判定を説明すると、
図5に示すように、初期化条件判定部11では、電池残量演算部12で演算された電池残量(バッテリ残量)EC[kWh]を取得して(ステップB10)、フラグF2が1であるか否かを判定する(ステップB20)。このフラグF2は、充電が開始されると1にセットされ、充電が終了されると0にリセットされる。
【0055】
前回の制御周期で充電が開始されていなければ、フラグF2は0であるので、ステップB30に進み、充電が開始されたか否かを判定する。ここで、今回も充電が開始されていなければ、この周期の判定処理を終了し、この周期で、充電開始と判定されたら、この時の電池残量ECを充電開始時電池残量EC
Sとして記憶し、ステップB30に進み、フラグF2を1にセットする。
【0056】
この後は、フラグF2が1なので、ステップB10からステップB20を経て、ステップB60に進み、充電が終了されたか否かを判定する。ここで、充電が続行されていれば、この周期の判定処理を終了し、一方、充電終了と判定されたら、ステップB70に進み、この時の電池残量ECを充電終了時電池残量EC
Eとして記憶し、ステップB80に進み、充電終了時電池残量EC
Eが充電開始時電池残量EC
Sよりも予め設定された増分ΔEC以上増加したか否かを判定する。
【0057】
そして、充電終了時電池残量EC
Eが充電開始時電池残量EC
Sよりも増分ΔEC以上増加していれば、バッテリ7が満充電或いは満充電近傍まで十分に充電されたとして初期化条件(電費初期化条件)成立と判定し(ステップB90)、フラグF2を0にリセットする(ステップB100)。充電終了時電池残量EC
Eが充電開始時電池残量EC
Sよりも増分ΔEC以上増加していなければ、初期化条件は成立しない。
【0058】
EV−ECU1の航続可能距離演算部15では、このような初期化情報等に基づいて、続可能距離(推定航続可能距離)Dpを演算する。
つまり、
図4に示すように、充電率Cに基づき電池残量演算部12で演算された電池残量ECと、電費演算部14からの第1の電費及び第2の電費の情報と、初期化条件判定部11からの初期化情報(初期化信号の有無)と、走行距離演算部31から走行距離情報とを取得する(ステップA10)。
【0059】
そして、フラグF1が1であるか否かを判定する(ステップA20)。このフラグF1は、初期化条件成立時(初期化信号の発信時)後に、第1の電費Eef1及び第2の電費Eef2の大きい方を推定用電費として用いる場合に1とされ、その後、第1の電費Eef1を推定用電費として用いるようになると0とされる。
初期化条件成立から一定期間以上経過していれば、第1の電費Eef1を推定用電費として用いており、フラグF1は0とされているので、ステップA30に進み、初期化条件成立(初期化信号が入力された)かを判定する。
【0060】
ここで、初期化条件成立ならば、ステップA40に進み、フラグF1を1にセットし、ステップA52に進み、第1の電費Eef1及び第2の電費Eef2の大きい方を推定用電費とする。
一方、初期化条件成立でないならば、ステップA30からステップA80に進み、第1の電費Eef1を推定用電費とする。
【0061】
初期化条件成立後は、フラグF1が1にセットされているので、ステップA10からステップA20を経て、ステップA60に進み、初期化後の走行距離Dが第1の基準距離DTSに達したかを判定する。初期化後の走行距離Dが第1の基準距離DTSに達していなければ、ステップA52に進み、第1の電費Eef1及び第2の電費Eef2の大きい方を推定用電費とする。
【0062】
一方、初期化後の走行距離Dが第1の基準距離DTSに達していれば、ステップA70に進み、フラグF1を0にセットし、ステップA80に進み、第1の電費Eef1を推定用電費とする。
このようにして、ステップA52において第1の電費Eef1及び第2の電費Eef2の大きい方を推定用電費とするか、ステップA80において第1の電費Eef1を推定用電費とすると、ステップA90に進み、航続可能距離演算部15では、推定用電費Eef1又はEef2と、電池残量ECとから、航続可能距離(推定航続可能距離)Dpを演算する。
【0063】
この航続可能距離Dpの信号は表示装置6に送られて、表示装置6の表示部に表示される(ステップA100)。
なお、電費演算部14では、第1の電費Eef1及び第2の電費Eef2を例えば
図6,
図7に示すように演算する。
第1の電費Eef1については、
図6に示すように、総消費電力量演算部13cで、車両が単位距離D1(ここでは、5km)走行する毎(ステップC10)に入力される単位走行距離(5km)あたりのモータ消費電力量EEM(k)及びエアコン消費電力量EEA(k)を加算した総消費電力量EE(k)[kWh]を逐次取得して(ステップC20)、直近の複数の総消費電力量EE(k)から、車両の第1の走行距離DTSに対する総消費電力量(第1の総消費電力量)EESを求める(ステップC30)。
【0064】
ここでは、第1の基準距離DTSは単位距離D1(5km)の5倍になっているので、直近の総消費電力量EE(n),EE(n−1),・・・,EE(n−4)の5つの総消費電力量EE(k)を加算して、車両の第1の基準距離DTSに対する総消費電力量(第1の総消費電力量)EESを求める。
次に、第1の走行距離DTSをこの区間に要した総消費電力量(第1の総消費電力量)EESで除算することにより、第1の電費(電力量消費率)Eef1を演算する(ステップC40)。
【0065】
第1の電費Eef1については、
図7に示すように、総消費電力量演算部13cで、車両が単位距離D1(ここでは、5km)走行する毎(ステップD10)に入力される単位走行距離(5km)あたりのモータ消費電力量EEM(k)及びエアコン消費電力量EEA(k)を加算した総消費電力量EE(k)[kWh]を逐次取得して(ステップD20)、直近の複数の総消費電力量EE(k)から、車両の第2の走行距離DTLに対する総消費電力量(第2の総消費電力量)EELを求める(ステップD30)。
【0066】
ここでは、第2の基準距離DTSは単位距離D1(5km)の20倍になっているので、直近の総消費電力量EE(n),EE(n−1),・・・,EE(n−19)の20の総消費電力量EE(k)を加算して、車両の第2の基準距離DTLに対する総消費電力量(第2の総消費電力量)EELを求める。
次に、第2の走行距離DTLをこの区間に要した総消費電力量(第2の総消費電力量)EELで除算することにより、第2の電費(電力量消費率)Eef2を演算する(ステップD40)。
【0067】
本発明の車両用航続可能距離推定装置によれば、このようにして、第1のサンプリング区間として規定した第1の走行距離DTSにおいて演算した第1の電費Eef1と、第1のサンプリング区間よりも長い第2のサンプリング区間として規定した第2の走行距離DTLにおいて演算した第2の電費Eef2とを演算し、走行用バッテリ7の電力の残量ECと第1の電費Eef1とに基づいた第1の航続可能距離算出値Dp1と、走行用バッテリ7の電力の残量ECと第2の電費Eef2とに基づいた第2の航続可能距離算出値Dp2とに基づいて、航続可能距離推定値Dpを推定するので、航続可能距離を状況に応じて適切に推定することが可能になる。
【0068】
また、走行用バッテリ7の満充電の終了などの初期化条件が成立すると、比較的短い第1のサンプリング区間に基づく第1の航続可能距離Dp1と、比較的長い第2のサンプリング区間に基づく第2の航続可能距離算出値Dp2とのうちの値の大きい方を用いて航続可能距離推定値Dpを推定する(初期化する)ことにより、初期化条件成立時の航続可能距離推定値は、比較的安定した違和感のない値とすることができる。
【0069】
つまり、比較的短い第1のサンプリング区間に基づく第1の電費Eef1は大きく変化する。特に、第1の電費Eef1が極端に悪化すると、満充電時のように電池残量ECが大きいと、第1の航続可能距離Dp1は極端に低下し、この第1の航続可能距離Dp1を推定航続可能距離Dpに採用すると、十分に充電したにもかかわらず航続可能距離Dpが小さいといった違和感をドライバに与える。
【0070】
逆に、第1の電費Eef1が大幅に向上すると、満充電時のように電池残量ECが大きいと、第1の航続可能距離Dp1も大幅に向上する。この第1の電費Eef1の向上は、例えば直近のドライバの省エネ運転に起因する場合もある。このため、むしろこの大幅に向上した第1の航続可能距離Dp1を推定航続可能距離Dpに採用する方が、違和感もなく、ドライバの省エネ運転を評価する上でも好ましい。
【0071】
また、初期化条件成立後、第1のサンプリング区間が終了し、新たな第1の航続可能距離演算値Dp1が得られた場合などの更新条件が成立すると、初期化条件成立後の比較的短い第1のサンプリング区間に基づく第1の航続可能距離算出値Dp1を用いて航続可能距離推定値Dpを推定する(更新する)ことにより、直近の走行に基づいた航続可能距離推定値を得ることができ、ドライバに、直近の道路環境や運転操作状態の航続可能距離への影響を知らせることができる。
【0072】
満充電の終了直後に第1の航続可能距離Dp1と第2の航続可能距離算出値Dp2とのうちの値の大きい方に基づく航続可能距離推定値Dpから第1の航続可能距離算出値Dp1に基づく航続可能距離推定値Dpに更新されると、航続可能距離推定値Dpが急変してドライバに違和感を与え易いが、第1のサンプリング区間が終了するまでは、比較的安定した第2の航続可能距離算出値Dp2に基づく航続可能距離推定値Dpとするので、こうした違和感を与え難い。
【0073】
例えば電費が低下する道路環境や運転操作状態であれば、この更新により航続可能距離推定値が急減することから、ドライバは現状の運転状態が電費を低下させていることを認識することができる。これにより、ドライバは電費節約運転をしたり、電動補機類の作動を抑制させたりして電費を向上させるように対応することができ、充電のタイミングを適切の判断することもできる。逆に、電費が向上する道路環境や運転操作状態であれば、この更新時に航続可能距離推定値が増加したりあまり減少したりしないことから、ドライバは現状の運転状態が電費を節約していることを認識することができる。
【0074】
また、走行用バッテリ7の充電の終了を、かかる充電の終了時の走行用バッテリ7の電力の残量がかかる充電の開始時の走行用バッテリの電力の残量よりも一定値以上大きくなったことにより判定しているので、走行用バッテリ7の電力の残量のみから、充電ステーション等での充電操作による外部充電を、例えば回生充電とは切り離して把握することができ、航続可能距離推定値を推定する(初期化する)にあたっての初期化条件として適している。
【0075】
また、第1のサンプリング区間及び第2のサンプリング区間を車両の走行距離に基づいて規定しているので、シンプルなロジックで制御することができる。
さらに、本実施形態では、第1の電費Eef1及び第2の電費Eef2は、車両が単位距離D1(ここでは、5km)走行する毎に、最新の値に更新されるので、比較的直近の運転情報を反映させながら、一定長さの第1のサンプリング区間、及び、これよりも長い第1のサンプリング区間を得ることができ、車両の運転に対して応答性良く、第1の電費Eef1及び第2の電費Eef2を得ることができる。したがって、航続可能距離推定値についても車両の運転に対して応答性のよい値となる。
【0076】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は上記実施形態の限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で上記実施形態を適宜変更して或いは適宜応用して実施しうるものである。
例えば、上記実施形態では、航続可能距離演算部15が、電池残量EC[kWh]に第1の電費Eef1[km/kWh]を乗算して得られる第1の航続可能距離(第1の航続可能距離演算値)Dp1(=EC/Eef1)[km]及び電池残量EC[kWh]に第2の電費Eef2[km/kWh]を乗算して得られる第2の航続可能距離(第2の航続可能距離演算値)Dp2(=EC/Eef2)[km]のいずれかに基づいて航続可能距離推定値Dpを推定しているが、電池残量EC[kWh]に第1の電費Eef1[km/kWh]を乗算して得られた値を航続可能距離推定値Dpとする構成とし、初期化条件が成立した場合は、第1の電費Eef1に第2の電費Eef2を代入して航続可能距離推定値Dpを演算するように航続可能距離演算部15を構成してもよい。この場合、初期化条件の成立後に新たな第1のサンプリング区間が終了し、新たな第1の電費Eef1が得られたなどの更新条件が成立すると、新たに得られた第1の電費Eef1を用いて、航続可能距離推定値Dpが演算され更新される。
【0077】
また、上記実施形態では、第1の電費Eef1及び第2の電費Eef2を、車両が単位距離D1(ここでは、5km)走行する毎に、最新の値に更新しているが、この場合の単位距離D1はより短くしてもよく、より長くしてもよい。ただし、単位距離D1を第1のサンプリング区間に対応する車両走行距離よりも十分に短くし、特に、単位距離D1の整数倍を第1のサンプリング区間に対応する車両走行距離とすること、さらには、第1のサンプリング区間に対応する車両走行距離の整数倍を第2のサンプリング区間に対応する車両走行距離とすることにより、シンプルなロジックで単位距離D1走行する毎に、第1の電費Eef1及び第2の電費Eef2を最新の値に更新することができる。
【0078】
また、上記実施形態では、航続可能距離推定値Cpを推定するにあたっての初期化条件を、充電終了時電池残量EC
Eが充電開始時電池残量EC
Sよりも増分ΔEC以上増加したこととしているが、例えば、外部充電時には充電口に充電ガン等が挿入されるため、これを検知すること等により外部充電であるか否かを判定し、外部充電の終了を初期化条件としてもよい。
【0079】
また、初期化条件成立後、第1のサンプリング区間が終了し、新たな第1の航続可能距離演算値Dp1が得られた場合などの更新条件が成立すると、初期化後の比較的短い第1のサンプリング区間に基づく第1の航続可能距離算出値Dp1を用いて航続可能距離推定値Dpを推定しているが、この場合の更新条件もこれに限定されるものではない。例えば、初期化条件成立後に、車両の走行距離が第1のサンプリング区間とは別に設定される所定の距離に達したら、第1の航続可能距離算出値Dp1を用いて航続可能距離推定値Dpを推定するようにしてもよい。
【0080】
また、上記の実施形態では、電気自動車を例示しているが、走行用モータと走行用エンジン(内燃機関)とを有するハイブリッド車にも適用可能である。かかるハイブリッド車の場合には、電費に基づく航続可能距離の推定に本発明を適用し、燃費に基づく航続可能距離の推定には周知技術を用いて、これらの2つの航続可能距離に基づいて、例えば、2つの航続可能距離を加算するなどによって、車両の航続可能距離を推定することができる。