特許第5660018号(P5660018)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5660018
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】卵黄代替組成物及びそれを使用した食品
(51)【国際特許分類】
   A23L 1/20 20060101AFI20150108BHJP
   A23L 1/22 20060101ALI20150108BHJP
   A23L 1/24 20060101ALI20150108BHJP
   A23L 1/39 20060101ALI20150108BHJP
   A23L 1/19 20060101ALI20150108BHJP
   A23L 1/187 20060101ALI20150108BHJP
   A21D 13/08 20060101ALI20150108BHJP
   A23G 3/50 20060101ALI20150108BHJP
【FI】
   A23L1/20 Z
   A23L1/22 D
   A23L1/24 A
   A23L1/39
   A23L1/19
   A23L1/187
   A21D13/08
   A23G3/00 102
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2011-271007(P2011-271007)
(22)【出願日】2011年12月12日
(65)【公開番号】特開2013-13397(P2013-13397A)
(43)【公開日】2013年1月24日
【審査請求日】2014年4月28日
(31)【優先権主張番号】特願2011-126871(P2011-126871)
(32)【優先日】2011年6月7日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000236768
【氏名又は名称】不二製油株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐本 将彦
(72)【発明者】
【氏名】金森 二朗
(72)【発明者】
【氏名】神田 真衣
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】植野 千鶴
(72)【発明者】
【氏名】足立 典史
(72)【発明者】
【氏名】小蒲 彩子
(72)【発明者】
【氏名】臼井 佑希
【審査官】 森井 文緒
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5397499(JP,B2)
【文献】 特表2009−528847(JP,A)
【文献】 特表2010−519928(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/155328(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 1/20
A23L 1/19
Thomson Innovation
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾物あたりの蛋白質含量が25重量%以上、脂質含量(クロロホルム/メタノール混合溶媒抽出物としての含量をいう。)が蛋白質含量に対して100重量%以上であって、LCI値が55%以上である大豆乳化組成物に、糖類、デンプン、香辛料、油脂、酸化防止剤及び凝固剤の群から選ばれる1種以上が添加されたものを含有することを特徴とする、卵黄代替組成物。
【請求項2】
乾物あたりの蛋白質含量が25重量%以上、脂質含量(クロロホルム/メタノール混合溶媒抽出物としての含量をいう。)が蛋白質含量に対して100重量%以上であって、LCI値が55%以上である大豆乳化組成物に蛋白質架橋酵素を作用させたものを含有することを特徴とする、卵黄代替組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の卵黄代替組成物を使用した卵黄代替食品。
【請求項4】
卵黄代替食品が調味料、菓子類、ソース類又は惣菜である、請求項3記載の卵黄代替食品。
【請求項5】
調味料がマヨネーズ、ドレッシング類、たれ類又は乾燥調味料である、請求項4記載の卵黄代替食品。
【請求項6】
菓子類が、クリーム類、デザート類又は焼き菓子である、請求項4記載の卵黄代替食品。
【請求項7】
乾物あたりの蛋白質含量が25重量%以上、脂質含量(クロロホルム/メタノール混合溶媒抽出物としての含量をいう。)が蛋白質含量に対して100重量%以上であって、LCI値が55%以上である大豆乳化組成物の卵黄代替組成物としての使用。
【請求項8】
乾物あたりの蛋白質含量が25重量%以上、脂質含量(クロロホルム/メタノール混合溶媒抽出物としての含量をいう。)が蛋白質含量に対して100重量%以上であって、LCI値が55%以上である大豆乳化組成物を卵黄原料の一部又は全部の代替として使用することを特徴とする、卵黄代替食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は卵黄代替組成物及びそれを使用した食品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
卵黄はその機能、栄養価等に優れた特徴を有することから、調味料、惣菜、菓子など様々な食品に幅広く利用されている。
しかし、近年、消費者の健康への意識が高まっていることから、コレステロール含量の高い卵の摂取が敬遠される傾向にある。また、元来「物価の優等生」と言われてきた鶏卵であるが、近年災害や鳥類感染症などの影響により、鶏卵価格の上昇や、供給の不安定等が懸念される。
【0003】
このような背景から、これまで卵代替食品に関する検討が種々為されてきた。例えば、乾燥卵白粒子とカボチャの乾燥黄色粒子を使用したタマゴ様食品とその使用例として玉子焼きが提案されている(特許文献1)。また、大豆原料を使用した技術として、大豆タンパク質と卵白タンパク質等を含む低コレステロールの卵代替組成物とその応用例としてベーカリー製品(パウンドケーキ)に使用する技術(特許文献2)や、濃縮豆乳を含む乳化物とその応用例としてマヨネーズ様食品に使用する技術(特許文献3)が開示されている。また、単離ホエー蛋白質を使用した卵代替食品の製造方法とスポンジケーキやカスタードプリン等に応用した技術が開示されている(特許文献4)。
【0004】
しかし、特許文献1の技術では、卵黄の代わりにカボチャの黄色粒子を配合しているのみで、卵黄代替食品に要求されるコク味を付与できるものではなかった。また、特許文献2の技術では原料として用いられている大豆蛋白質に由来する青臭みのある風味が製品の風味に影響を及ぼす場合があり、また、卵白蛋白質が必要となるため、鶏卵の供給の不安定性の影響を受ける場合がある。また、特許文献3の技術では豆乳を濃縮することにより豆乳の不快臭の低減を図っているものの、風味において必ずしも満足できるものではなく、また、マヨネーズ様食品のコク味等の品質面においてもまだ改善する余地が有った。特許文献4の技術では、使用するホエー蛋白質をイオン交換法の吸着樹脂によって高純度にしなければならず、製造上の制約を受ける上、高価である問題があった。
【0005】
そのため、コクがあって、風味が良く、安価で供給可能な卵黄代替物が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−298963号公報
【特許文献2】特公表2007−521824号公報
【特許文献3】特開2002−34503号公報
【特許文献4】特開平2−42942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、コクがあって風味が良く、卵黄と比較すると安価であり安定的に供給可能な卵黄代替組成物及びそれを使用した食品を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意研究を行った結果、乾物あたりの蛋白質含量が25重量%以上、脂質含量(クロロホルム/メタノール混合溶媒抽出物としての含量をいう。)が蛋白質含量に対して100重量%以上であって、LCI値が55%以上である大豆乳化組成物がコクがあって風味の良い卵黄代替組成物として、調味料、菓子類、ソース類、惣菜等の食品に使用できるという知見を得、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
(1)乾物あたりの蛋白質含量が25重量%以上、脂質含量(クロロホルム/メタノール混合溶媒抽出物としての含量をいう。)が蛋白質含量に対して100重量%以上であって、LCI値が55%以上である大豆乳化組成物を含有することを特徴とする、卵黄代替組成物。
(2)さらに糖類、デンプン、香辛料、油脂、酸化防止剤及び凝固剤の群から選ばれる1種以上が添加されている、(1)記載の卵黄代替組成物。
(3)さらに蛋白質架橋酵素を作用させたものである、(1)又は(2)記載の卵黄代替組成物。
(4)(1)〜(3)の何れかに記載の卵黄代替組成物を使用した卵黄代替食品。
(5)卵黄代替食品が調味料、菓子類、ソース類又は惣菜である、(4)記載の卵黄代替食品。
(6)調味料がマヨネーズ、ドレッシング類、たれ類又は乾燥調味料である、(5)記載の卵黄代替食品。
(7)菓子類が、クリーム類、デザート類又は焼き菓子である、(5)記載の卵黄代替食品。
(8)乾物あたりの蛋白質含量が25重量%以上、脂質含量(クロロホルム/メタノール混合溶媒抽出物としての含量をいう。)が蛋白質含量に対して100重量%以上であって、LCI値が55%以上である大豆乳化組成物の卵黄代替組成物としての使用。
(9)乾物あたりの蛋白質含量が25重量%以上、脂質含量(クロロホルム/メタノール混合溶媒抽出物としての含量をいう。)が蛋白質含量に対して100重量%以上であって、LCI値が55%以上である大豆乳化組成物を卵黄原料の一部又は全部の代替として使用することを特徴とする、卵黄代替食品の製造方法。
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の大豆乳化組成物を含有する卵黄代替組成物を使用することにより、クリーミーでコクがあり、風味が良好な卵黄代替食品を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の卵黄代替組成物は、下記に説明する「大豆乳化組成物」を含有することが特徴である。詳しくは、日本国出願(特願2011−108598号)の明細書に開示されるものであるが、以下、該大豆乳化組成物について説明する。
【0011】
<大豆乳化組成物>
本発明の卵黄代替組成物に用いられる大豆乳化組成物は、大豆を由来とし、蛋白質のうち、グリシニンやβ−コングリシニン以外の脂質親和性蛋白質(あるいは別の指標としてリポキシゲナーゼ蛋白質)の割合が特に高く、中性脂質及び極性脂質を多く含む乳化組成物である。すなわち、乾物あたりの蛋白質含量が25重量%以上、乾物あたりの脂質含量(クロロホルム/メタノール混合溶媒抽出物としての含量をいう。)が乾物あたりの蛋白質含量に対して100重量%以上であって、LCI値が55%以上であることを主要な特徴とするものである。
【0012】
(脂質)
一般に脂質含量はエーテル抽出法で測定されるが、本発明に用いられる大豆乳化組成物中には中性脂質の他にエーテルで抽出されにくい極性脂質も多く含まれるため、本発明における脂質含量は、クロロホルム:メタノールが2:1(体積比)の混合溶媒を用い、常圧沸点において30分間抽出された抽出物量を総脂質量として、脂質含量を算出した値とする。溶媒抽出装置としてはFOSS社製の「ソックステック」を用いることができる。なお上記の測定法は「クロロホルム/メタノール混合溶媒抽出法」と称するものとする。
【0013】
本発明に用いられる大豆乳化組成物は、この大豆粉の脂質含量/蛋白質含量の比よりも高い値の脂質を含み、特に極性脂質に富むことが特徴である。該脂質は原料となる大豆に由来する脂質である。
【0014】
本発明に用いられる大豆乳化組成物の脂質含量は、乾物あたりの蛋白質含量に対して100重量%以上、好ましくは120〜250重量%、さらに好ましくは120〜200重量%であり、蛋白質よりも脂質が多いことが特徴である。また構成に必須ではないが、脂質含量を絶対量で表す場合、乾物あたり35重量%以上、好ましくは40重量%以上であるのが適当である。大豆乳化組成物を繊維質等が除去されたものとすれば脂質含量を乾物あたり50重量%以上にもすることができる。また脂質含量の上限は限定されないが、好ましくは75重量%以下、より好ましくは70重量%以下である。
【0015】
(蛋白質)
本発明に用いられる大豆乳化組成物の蛋白質含量は乾物あたり25重量%以上、好ましくは30重量%以上である。また蛋白質含量の上限は限定されないが、好ましくは50重量%以下、より好ましくは40重量%以下である。
【0016】
○蛋白質含量の分析
本発明における蛋白質含量はケルダール法により窒素量として測定し、該窒素量に6.25の窒素換算係数を乗じて求めるものとする。
【0017】
○蛋白質の各成分の組成分析
本発明に用いられる大豆乳化組成物の蛋白質の各成分組成はSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)により分析することができる。
界面活性剤であるSDSと還元剤であるメルカプトエタノールの作用によって蛋白質分子間の疎水性相互作用、水素結合、分子間のジスルフィド結合が切断され、マイナスに帯電した蛋白質分子は固有の分子量に従った電気泳動距離を示ことにより、蛋白質に特徴的な泳動パターンを呈する。電気泳動後に色素であるクマシーブリリアントブルー(CBB)にてSDSゲルを染色した後に、デンシトメーターを用い、全蛋白質のバンドの濃さに対する各種蛋白質分子に相当するバンドの濃さが占める割合を算出する方法により求めることができる。
【0018】
(リポキシゲナーゼ蛋白質)
本発明に用いられる大豆乳化組成物は、一般に大豆中のオイルボディにはほとんど含まれないリポキシゲナーゼ蛋白質が特定量以上含まれることが大きな特徴であり、大豆乳化組成物中の全蛋白質あたり少なくとも4%以上含有し、好ましくは5%以上含有するものである。
通常の未変性(NSI 90以上)の大豆を原料とした場合ではリポキシゲナーゼ蛋白質は可溶性の状態で存在するため、水抽出すると水溶性画分側へ抽出される。一方、本発明ではリポキシゲナーゼ蛋白質が原料大豆中において加熱処理によって失活され不溶化しているため、不溶性画分側に残る。
蛋白質中におけるリポキシゲナーゼ蛋白質の割合が高まることによって油脂の乳化状態が安定化されるばかりでなく、グロブリン蛋白質を主体とした通常の大豆蛋白質組成では得られない滑らかな物性の食感を得ることができ、また素材にコクのある風味が付与される。
【0019】
リポキシゲナーゼ蛋白質の場合は通常L-1、L-2、L-3の3種類が存在し、上記の電気泳動法により、リポキシゲナーゼ蛋白質に相当するこれらのバンドの濃さから含量を算出できる。
【0020】
(脂質親和性蛋白質)
本発明に用いられる大豆乳化組成物は、蛋白質の種類の中では脂質親和性蛋白質(Lipophilic Proteins)が一般の大豆素材より多く含まれることが特徴である。脂質親和性蛋白質は、大豆の主要な酸沈殿性大豆蛋白質の内、グリシニン(7Sグロブリン)とβ−コングリシニン(11Sグロブリン)以外のマイナーな酸沈殿性大豆蛋白質群をいい、レシチンや糖脂質などの極性脂質を多く随伴するものである。以下、単に「LP」と略記することがある。
LPは雑多な蛋白質が混在したものであるが故、各々の蛋白質を全て特定し、LPの含量を厳密に測定することは困難であるが、下記LCI(Lipophilic Proteins Content Index)値を求めることにより推定することができる。これによれば、大豆乳化組成物中の蛋白質のLCI値は通常55%以上であり、好ましくは58%以上、より好ましくは60%以上であり、さらに好ましくは63%以上、最も好ましくは65%以上である。
通常の未変性(NSI 90以上)の大豆を原料とした場合ではLPは可溶性の状態で存在するため、水抽出すると水溶性画分側へ抽出される。一方、本発明に用いられる大豆乳化組成物の場合、LPが原料大豆中において加熱処理によって失活され不溶化しているため、不溶性画分側に残る。
蛋白質中におけるLPの割合が高まることによって油脂の乳化状態が安定化されるばかりでなく、グロブリン蛋白質を主体とした通常の大豆蛋白質組成では得られない滑らかな物性の食感を得ることができ、また素材にコクのある風味が付与される。
【0021】
〔LP含量の推定・LCI値の測定方法〕
(a) 各蛋白質中の主要な蛋白質として、7Sはαサブユニット及びα'サブユニット(α+α')、11Sは酸性サブユニット(AS)、LPは34kDa蛋白質及びリポキシゲナーゼ蛋白質(P34+Lx)を選択し、SDS−PAGEにより選択された各蛋白質の染色比率を求める。電気泳動は表1の条件で行うことが出来る。
(b) X(%)=(P34+Lx)/{(P34+Lx)+(α+α’)+AS}×100(%)を求める。
(c) 低変性脱脂大豆から調製された分離大豆蛋白のLP含量を加熱殺菌前に上記方法1,2の分画法により測定すると凡そ38%となることから、X=38(%)となるよう(P34+Lx)に補正係数k*=6を掛ける。
(d) すなわち、以下の式によりLP推定含量(Lipophilic Proteins Content Index、以下「LCI」と略する。)を算出する。
【0022】
(表1)

【0023】
(乾物含量)
本発明に用いられる大豆乳化組成物は通常生クリーム様の性状であり、通常の乾物(dry matter)は20〜30重量%程度であるが、特に限定されるものではない。すなわち加水により低粘度の液状としたものや、濃縮加工されてより高粘度のクリーム状としたものであってもよく、また粉末加工されて粉末状としたものであってもよい。
【0024】
(大豆乳化組成物の製造態様)
本発明に用いられる大豆乳化組成物は、例えば水溶性窒素指数(Nitrogen Solubility Index、以下「NSI」と称する。)が20〜77、好ましくは20〜70、乾物あたりの脂質含量が15重量%以上の全脂大豆などの含脂大豆に対して、加水して懸濁液を調製する工程の後、該懸濁液を固液分離し、中性脂質及び極性脂質を不溶性画分に移行させて、蛋白質及び糖質を含む水溶性画分を除去し、不溶性画分を回収することにより得ることができる。以下、該製造態様について示す。
【0025】
・原料大豆及びその加工
大豆乳化組成物の原料である大豆としては、全脂大豆あるいは部分脱脂大豆等の含脂大豆を用いる。部分脱脂大豆としては、全脂大豆を圧搾抽出等の物理的な抽出処理により部分的に脱脂したものが挙げられる。一般に全脂大豆中には脂質が乾物あたり約20〜30重量%程度含まれ、特殊な大豆品種については脂質が30重量%以上のものもあり、特に限定されないが、用いる含脂大豆としては、少なくとも脂質を15重量以上、好ましくは20重量%以上含むものが適当である。原料の形態は、半割れ大豆、グリッツ、粉末の形状でありうる。
過度に脱脂され脂質含量が少なすぎると本発明に用いられる脂質に富む大豆乳化組成物を得ることが困難となる。特にヘキサン等の有機溶媒で抽出され、中性脂質の含量が1重量%以下となった脱脂大豆は、大豆の良い風味が損なわれ好ましくない。
【0026】
上記含脂大豆は天然の状態では蛋白質の多くが未変性で可溶性の状態にあり、NSIとしては通常90を超えるが、本発明においては、NSIが20〜77好ましくは20〜70になるよう加工処理を施した加工大豆を用いるのが適当である。より好ましいNSIの下限値は40以上、より好ましくは41以上、さらに好ましくは43以上、最も好ましくは45以上とすることができる。より好ましいNSIの上限値は75未満、より好ましくは70未満とすることができ、またさらに65未満、あるいは60未満、あるいは58未満の低NSIのものを用いることができる。
そのような加工大豆は、加熱処理やアルコール処理等の加工処理を行って得られる。加工処理の手段は特に限定されないが、例えば乾熱処理、水蒸気処理、過熱水蒸気処理、マイクロ波処理等による加熱処理や、含水エタノール処理、高圧処理、およびこれらの組み合わせ等が利用できる。
【0027】
NSIが低すぎると、大豆乳化組成物中の蛋白質の割合が高くなりやすく、蛋白質に対する脂質含量が低くなる。また過加熱による焙煎臭等の雑味が生じやすくなる。逆にNSIが例えば80以上の高い数値になると大豆乳化組成物中の蛋白質の割合が低下し、大豆からの脂質の回収率も低下しやすくなる。また風味は青臭みが強くなる。
例えば過熱水蒸気による加熱処理を行う場合、その処理条件は製造環境にも影響されるため一概に言えないが、おおよそ120〜250℃の過熱水蒸気を用いて5〜10分の間で加工大豆のNSIが上記範囲となるように処理条件を適宜選択すれば良く、加工処理に特段の困難は要しない。簡便には、NSIが上記範囲に加工された市販の大豆を用いることもできる。
【0028】
なお、NSIは所定の方法に基づき、全窒素量に占める水溶性窒素(粗蛋白)の比率(重量%)で表すことができ、本発明においては以下の方法に基づいて測定された値とする。
すなわち、試料2.0gに100mlの水を加え、40℃にて60分攪拌抽出し、1400×gにて10分間遠心分離し、上清1を得る。残った沈殿に再度100mlの水を加え、40℃にて60分攪拌抽出し、1400×gにて10分遠心分離し、上清2を得る。上清1および上清2を合わせ、さらに水を加えて250mlとする。No.5Aろ紙にてろ過したのち、ろ液の窒素含量をケルダール法にて測定する。同時に試料中の窒素含量をケルダール法にて測定し、ろ液として回収された窒素(水溶性窒素)の試料中の全窒素に対する割合を重量%として表したものをNSIとする。
【0029】
前記の加工大豆は水抽出の前に、予め乾式又は湿式による粉砕、破砕、圧偏等の組織破壊処理を施されることが好ましい。組織破壊処理に際して、あらかじめ水浸漬や蒸煮により膨潤させても良く、これによって組織破壊に必要なエネルギーを低減させたり、ホエー蛋白質やオリゴ糖等の不快味を持つ成分を溶出させ除去できると共に、保水性やゲル化性の能力が高いグロブリン蛋白質(特にグリシニン及びβ−コングリシニン)の全蛋白質に対する抽出比率、すなわち水溶性画分への移行比率をより高めることができる。
【0030】
・原料大豆からの水抽出
水抽出は含脂大豆に対して3〜20重量倍、好ましくは4〜15重量倍程度の加水をし、含脂大豆を懸濁させて行われる。加水倍率は高い方が水溶性成分の抽出率が高まり、分離を良くすることができるが、高すぎると濃縮が必要となりコストがかかる。また、抽出処理を2回以上繰り返すと水溶性成分の抽出率をより高めることができる。
【0031】
抽出温度には特に制限はないが、高い方が水溶性成分の抽出率が高まる反面、油脂も可溶化されやすくなり、大豆乳化組成物の脂質が低くなるため、70℃以下、好ましくは55℃以下で行うと良い。あるいは5〜80℃、好ましくは50〜75℃の範囲で行うこともできる。
【0032】
抽出pH(加水後の大豆懸濁液のpH)も温度と同様に高いほうが水溶性成分の抽出率が高まる反面、油脂も可溶化されやすくなり、大豆乳化組成物の脂質が低くなる傾向にある。逆にpHが低すぎると蛋白質の抽出率が低くなる傾向にある。具体的には下限をpH6以上、もしくはpH6.3以上、もしくはpH6.5以上に調整して行うことができる。また上限は脂質の分離効率を上げる観点でpH9以下、もしくはpH8以下、もしくはpH7以下に調整して行うことができる。あるいは蛋白質の抽出率を高める観点でpH9〜12のよりアルカリ性側に調整して行うことも可能である。
【0033】
・水抽出後の固液分離
水抽出後、含脂大豆の懸濁液を遠心分離、濾過等により固液分離する。この際、中性脂質のみならず極性脂質も含めた大部分の脂質を水抽出物中に溶出させず、不溶化した蛋白質や食物繊維質の方に移行させ沈殿側(不溶性画分)とすることが重要である。具体的には含脂大豆の脂質の70重量%以上を沈殿側に移行させる。また抽出の際に上清側にも少量の脂質が溶出するが、豆乳中の脂質のように微細にエマルション化されたものではなく、15,000×g以下、あるいは5,000×g程度以下の遠心分離によっても容易に浮上させ分離することができ、この点で遠心分離機を使用するのが好ましい。なお遠心分離機は使用する設備によっては10万×g以上の超遠心分離を使用することも可能であるし、本発明に用いられる減脂大豆蛋白素材の場合は超遠心分離機を用いなくとも実施が可能である。
また水抽出の際あるいは水抽出後に解乳化剤を添加して豆乳からの脂質の分離を促進させることも可能であり、解乳化剤は特に限定されない。ただし本発明に用いられる減脂大豆蛋白素材を調製する場合は解乳化剤を用いなくとも実施が可能である。
【0034】
水抽出工程後の固液分離により、中性脂質のみならず極性脂質を不溶性画分に移行させ、これを回収することにより大豆乳化組成物の画分を得ることができる。
固液分離として遠心分離を用いる場合、二層分離方式、三層分離方式のいずれも使用することができる。二層分離方式の場合は沈殿層である不溶性画分を回収する。また三層分離方式を用いる場合は、(1)浮上層(脂質を含む比重の最も小さいクリーム画分)、(2)中間層(脂質が少なく蛋白質、糖質を多く含む水溶性画分)、(3)沈殿層(脂質と食物繊維を多く含む不溶性画分)、の三層の画分に分けられる。この場合、脂質含量の少ない水溶性画分の中間層(2)を除去又は回収し、不溶性画分として浮上層(1)又は沈殿層(3)を回収するか、あるいは(1)と(3)を合わせて回収するとよい。
【0035】
得られた不溶性画分(1)、(3)はそのまま、あるいは必要により濃縮工程、加熱殺菌工程、粉末化工程等を経て本発明に用いられる大豆乳化組成物とすることができる。
【0036】
・食物繊維の除去
得られた不溶性画分が食物繊維を含む場合、例えば上記(3)又は(1)及び(3)の画分である場合、必要により加水し、高圧ホモゲナイザーあるいはジェットクッカー加熱機等による均質化した後、該均質化液をさらに固液分離して上清を回収する工程を経ることにより、食物繊維(オカラ)を除去することもでき、コクのある風味がより濃縮された大豆乳化組成物を得ることができる。該均質化の前後いずれかにおいて必要により加熱処理工程、アルカリ処理工程等を付加することにより蛋白質をより抽出しやすくすることもできる。この場合、乾物あたりの食物繊維含量は10重量%以下であり、5重量%以下がより好ましい。なお、本発明において食物繊維含量は、「五訂増補日本食品標準成分表」(文部科学省、2005)に準じ、酵素−重量法(プロスキー変法)により測定することができる。
【0037】
(大豆乳化組成物の特徴)
本発明に用いられる上記の大豆乳化組成物は、脂質(中性脂質及び極性脂質)及び蛋白質が特定の範囲で含まれ、蛋白質のうち特にLP含量が高く、必要により繊維質も含まれる乳化組成物であり、大豆が本来有する自然な美味しさが濃縮されており、従来の問題とされていた青臭味や収斂味、渋味等の不快味がないか非常に少なく、非常にコクのある風味を有するものである。
通常の大豆粉や分離大豆蛋白に水、油脂を加えて該大豆乳化組成物と類似の組成の乳化組成物にすることは可能であるが、リポキシゲナーゼ蛋白質含量あるいはLCI値を同等なレベルに調整することは困難である。そして本技術により調製された大豆乳化組成物は、このような組み立て製品に比べて格段に風味が良好であり、食品素材としての利用適性が高いことに特徴を有する。
【0038】
(卵黄代替組成物)
本発明の卵黄代替組成物は、上記の大豆乳化組成物を含有することを特徴としており、各食品に配合される卵黄の一部又は全部を代替することができるものである。各食品中の卵黄の本発明で代替できる卵黄とは、生卵黄、殺菌卵黄、加塩卵黄、加糖卵黄、乾燥卵黄等である。
【0039】
本発明の卵黄代替組成物は、上記の大豆乳化組成物に、糖類、デンプン、香辛料、酸化防止剤、油脂、凝固剤を添加することで、品質、物性を改良した卵黄代替組成物として使用することができる。これらの物質は、1種以上を併用することができる。
また、本発明の卵黄代替組成物は、上記の大豆乳化組成物に蛋白質架橋酵素を作用させたり、上記の大豆乳化組成物に、糖類、デンプン、香辛料、酸化防止剤、油脂及び凝固剤の群から選ばれる1種以上を添加したものに蛋白質架橋酵素を作用させることで、品質、物性を改良した卵黄代替組成物として使用することができる。
【0040】
(糖類)
本発明の卵黄代替組成物は、大豆乳化組成物に糖類を添加して、さらに風味を改善した卵黄代替組成物とすることができる。ここで糖類とは、少糖類およびオリゴ糖類であり、具体的には、メープルシロップ、はちみつ、黒糖、グラニュー糖、砂糖、カラメル、果糖、果糖ぶどう糖液糖、水飴、マルトース、マルトトリオース、トレハロース、マルチトース等が例示できる。これらの糖類は、1種以上を併用することができる。
上記糖類の含有量は、卵黄代替組成物中、好ましくは0.5〜50重量%、さらに好ましくは3〜30重量%である。
【0041】
(香辛料)
本発明の卵黄代替組成物は、大豆乳化組成物に香辛料を添加して、さらに風味を改善した卵黄代替組成物とすることができる。香辛料として、からし、ワサビ、タイム、バジル、アニスシード、クローブ、フェンネル、ジンジャー、シナモン、ペパー、ターメリック、パプリカ、フェヌグリークシード、ナツメグ、スターアニス、オレガノ、ローレル、マジョラム、ローズマリー、ペパーミント、タラゴン、ディルシード等が例示できる。これらの香辛料は、1種以上を併用することができる。
上記香辛料の含有量は、卵黄代替組成物中、好ましくは0.001〜20重量%、さらに好ましくは0.01〜10重量%である。
【0042】
(酸化防止剤)
本発明の卵黄代替組成物は、大豆乳化組成物に酸化防止剤を添加して、酸化による風味劣化が抑制された卵黄代替組成物とすることができる。酸化防止剤として、トコフェロール、ヤマモモ抽出物、アスコルビン酸、カテキン類、茶抽出物、例えばクエン酸ナトリウムのようなキレート効果のある物質等が例示できる。これらの酸化防止剤は、1種以上を併用することができる。
上記酸化防止剤の含有量は、卵黄代替組成物中、好ましくは0.001〜20重量%、さらに好ましくは0.01〜10重量%である。
【0043】
(油脂)
本発明の卵黄代替組成物は、大豆乳化組成物に油脂を添加してボディ感の付与等の物性改良機能を付与した卵黄代替組成物とすることができる。油脂として、食用に適する油脂であればよく、例えば、大豆油、菜種油、コーン油、綿実油、オリーブ油、落花生油、米油、べに花油、ひまわり油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、サル脂、マンゴ脂、乳脂等や、更にこれらの硬化油、分別油、エステル交換油等の物理的または化学的処理を施した油脂を使用することができる。これらの油脂は、1種以上を併用することができる。
上記油脂の含有量は、卵黄代替組成物中、好ましくは0.5〜50重量%、さらに好ましくは3〜30重量%である。
【0044】
(デンプン)
本発明の卵黄代替組成物は、大豆乳化組成物にデンプンを添加して、ボディ感の付与等の物性改良機能を付与した卵黄代替組成物とすることができる。デンプンとして、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、小麦デンプン、米デンプン、馬鈴薯デンプン、タピオカデンプン、甘藷デンプン、サゴデンプン等を使用でき、さらには、これらの化工デンプンも使用できる。該化工デンプンとしては、例えば、酸化デンプン、酸処理デンプン、酵素処理デンプン、酢酸デンプン、リン酸デンプン、コハク酸デンプン、オクテニルコハク酸デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、架橋デンプン、湿熱処理デンプン等いずれも用いることができる。これらのデンプンは、1種以上を併用することができる。
上記デンプンの含有量は、卵黄代替組成物中、好ましくは0.5〜50重量%、さらに好ましくは3〜30重量%である。
【0045】
(凝固剤)
本発明の卵黄代替組成物は、大豆乳化組成物に凝固剤を添加して、卵黄様の凝固機能を付与した卵黄代替組成物とすることができる。凝固剤として、にがり、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、グルコノデルタラクトン、硫酸カルシウム等が挙げられる。これらの凝固剤は、1種以上を併用することができる。
上記凝固剤の含有量は、卵黄代替組成物中、好ましくは0.001〜10重量%、さらに好ましくは0.01〜5重量%である。
【0046】
(蛋白質架橋酵素)
本発明の卵黄代替組成物は、大豆乳化組成物に蛋白質架橋酵素を作用させて、乳化力等の乳化性能を上げた卵黄代替組成物とすることができる。この高い乳化性能は、特に酸性下の乳化物を調製する際において発揮される。
蛋白質架橋酵素として、蛋白質分子同士の架橋を触媒する酵素であれば特に限定されないが、例えばアミノ基が関与するグルタミン残基とリジン残基の縮合反応、アスパラギン残基とリジン残基の縮合反応等のε-アミノ基が関与する反応を触媒するものが挙げられる。また、アミノ基は関与しないが、システイン残基のチオール基同士の縮合反応を触媒するものも使用できる。具体的には、グルタミン残基とリジン残基の縮合を触媒するトランスグルタミナーゼ、チオール基同士を縮合しジスルフィド結合の形成を触媒するチオール・ジスルフィド交換酵素等が挙げられ、これらの酵素は1種以上を併用して使用することができる。
これらの酵素の中でもトランスグルタミナーゼを使用することが好ましい。トランスグルタミナーゼの起源は特に限定されず、動物由来、微生物由来、植物由来のものをいずれも使用できる。また、精製した酵素を使用しても良いし、市販の製剤を使用することも可能である。
蛋白質架橋酵素の使用量は、大豆乳化組成物の固形分に対して、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、さらにより好ましくは0.9重量%以上である。また、酵素量は多過ぎても効果に差が出ない場合があるため、好ましくは15重量%以下、より好ましくは10重量%以下が適当である。
蛋白質架橋酵素の作用温度は、概ね10〜80℃、好ましくは20〜70℃、より好ましくは40〜60℃が適当である。温度が低すぎると酵素反応が遅くなる場合があり、温度が高すぎると酵素の失活が促進される場合がある。
蛋白質架橋酵素の作用時間は概ね0.01〜120分、好ましくは1〜60分が適当である。作用時間が短すぎると十分な反応効果が得られない場合があり、作用時間が長すぎても効果に差がでない。
【0047】
(その他の原料)
本発明の卵黄代替組成物は、必要に応じて、乳化剤、増粘剤、ゲル化剤、蛋白質、無機塩、有機塩、着色料、香料、酸味料等を添加して使用することができる。
【0048】
(卵黄代替食品)
本発明の大豆乳化組成物を含有する卵黄代替組成物は以下に記載するように様々な食品に使用することができる。本発明の大豆乳化組成物を含有する卵黄代替組成物を配合することにより、コクがあり、大豆由来の青臭みが抑制された風味の良い卵黄代替食品が得られる。
本発明の大豆乳化組成物を含有する卵黄代替組成物の使用量は本発明の大豆乳化組成物の風味的特徴が明確に出る量であれば特に制限はないが、概ね乾物換算で卵黄代替食品に対し0.5重量%以上、好ましくは0.5〜60重量%、最も好ましくは1〜50重量%である。下限未満では、本発明の大豆乳化組成物の風味的特徴が明確に出ないため、好ましくない。本発明の卵黄代替食品は、各食品を製造するのに用いられる一般的な製法を用いて製造することができる。なお、本発明の卵黄代替食品は、卵黄代替組成物の他、上述の糖類、デンプン、香辛料、酸化防止剤、油脂、凝固剤、乳化剤、増粘剤、ゲル化剤、蛋白質、無機塩、有機塩、着色料、香料、酸味料等を添加して製造することができるし、卵黄代替組成物に蛋白質架橋酵素を作用させて製造することができる。
本発明の卵黄代替食品として、調味料、菓子類、ソース類、惣菜等が例示できる。
【0049】
(調味料)
本発明における調味料として、例えば、ドレッシング類、たれ類、マヨネーズ類、乾燥調味料等が挙げられる。
ドレッシング類として、半固体状ドレッシング、乳化液状ドレッシング、分離液状ドレッシングが例示できる。
たれ類とは、煮焼きに用いる調味液であり、例えば焼き肉のたれ、焼き鳥のたれ、照り焼きのたれ、しゃぶしゃぶのたれ、肉、魚介類の煮物用たれ等を挙げることができる。
マヨネーズ類として、マヨネーズ、マヨネーズ風調味料、マヨネーズ様調味料等が挙げられる。
マヨネーズ類に関して、蛋白質架橋酵素を作用させた卵黄代替組成物を使用することにより、例えば70重量%以上の油分の系において、特に卵黄を100%代替した場合にも、良好な乳化状態を維持し、風味の良好なマヨネーズ類を調製することができる。
【0050】
(菓子類)
本発明における菓子類として、例えば、クリーム類、デザート類、焼き菓子等が挙げられる。
クリーム類とは、油相と水相とを混合し乳化したものであり、例としてカスタードクリーム、アイスクリーム、ホイップクリームなどが挙げられる。
カスタードクリームに関して、本発明の卵黄代替組成物とホワイトチョコレートを併用することでカスタードクリーム様食品の調製も可能となる。本発明で使用するホワイトチョコレートには、コーティング用のホワイトチョコレートも含まれる。なお、本発明におけるチョコレートとは全国チョコレート業公正取引協議会、チョコレート利用食品公正取引協議会で規定されるチョコレート、準チョコレート、チョコレート利用食品をいう。
本発明のホワイトチョコレートと卵黄代替組成物の配合割合は特に制限されず、概ね1:99〜99:1(重量比)の割合であり、ホワイトチョコレートの融点等の物性に応じて適宜重量比を変えて調製することができる。
デザート類として、プリン、ババロア、ブリュレ等が挙げられる。プリンとして、カスタードタイプのプリン等が挙げられる。カスタードタイプのプリンには、オーブンの中で蒸し焼きする焼きタイプとレトルト釜や蒸し器等で蒸気加熱する蒸しタイプが含まれる。
焼き菓子として、スポンジケーキ、パウンドケーキ、シフォンケーキ、パンケーキ、ロールケーキ、カステラ、ドーナツ、マドレーヌ、ビスケット、クッキー、ブリオッシュ、マフィン、ワッフル、ブラウニー、スフレ等が挙げられる。
【0051】
(ソース類)
本発明におけるソース類として、カルボナーラソース、クリームソース、クリームスープ、オランデーズソース、カスタードソース、タルタルソース等が挙げられ、上記で例示したとおりスープも含まれる。
【0052】
(惣菜)
本発明における惣菜として、茶碗蒸し、卵豆腐、卵雑炊等が挙げられる。
【実施例】
【0053】
以下に本発明の実施例を記載する。なお、以下「%」は特に断りのない限り「重量%」を意味する。脂質の分析は特に断りがない限りクロロホルム/メタノール混合溶媒抽出法に準じて行ったものである。
【0054】
(製造例1) 大豆乳化組成物の調製1
湿熱加熱処理によりNSI 59.4とした大豆粉3.5kgに対して4.5倍量、50℃の水を加えて懸濁液とし、保温しながら30分間攪拌し、水抽出した。このときのpHは6.7であった。3層分離方式の遠心分離を6,000×gにて連続的に行い、(1)浮上層・(2)中間層・(3)沈殿層に分離させた。そして浮上層と沈殿層を合わせた画分6.3kgを回収し、大豆乳化組成物Aを調製した。
【0055】
(製造例2) 大豆乳化組成物の調製2
製造例1にて調製した大豆乳化組成物Aに対して0.5重量倍の加水を行い、さらに13MPaにて高圧ホモゲナイザーで均質化した後、該均質化液を蒸気直接吹き込み方式で142℃7秒間加熱処理し、連続式遠心分離機にて6,000×gにて不溶性の繊維質を分離除去し、上清画分を得、これを大豆乳化組成物Bとした。
【0056】
製造例1,2で得られた大豆乳化組成物A,Bを分析用に一部凍結乾燥し、一般成分として乾物、並びに、乾物あたりの蛋白質(ケルダール法による)、脂質(クロロホルム/メタノール混合溶媒抽出法による)及び灰分を測定し、さらにSDS-PAGEによりリポキシゲナーゼ蛋白質含量、LPの含量の推定値としてLCI値の分析を行った。また比較として、原料に用いた大豆粉、及び、米国特許第6,548,102号公報の方法で製造されていると推定される市販の大豆乳化組成物「Soy Supreme Kreme」(サンオプタ社(SunOpta Grains and Foods Group)製、粉末タイプ)についても同様に分析を行った。各分析値を表2に示す。
【0057】
(表2)
※ カッコ内の数値は蛋白質あたりの脂質含量(%)を示す。
【0058】
(マヨネーズへの応用)(実施例1〜2、比較例1)
下記の表3に示した配合表に従って、米酢、油以外の原料を混合してホモミキサーで撹拌し、そこに米酢を加えてさらに撹拌を続けながら油を数回に分けて添加し、充分撹拌し、製造例2で得られた大豆乳化組成物Bを配合したマヨネーズを調製した。対照の配合は、マヨネーズの配合として一般的に用いられる配合をベースとした。なお、実施例1、2、比較例1における卵黄代替率はそれぞれ、50、70、53%であった。
【0059】
(表3)マヨネーズ配合(%)
【0060】
各配合で調製したマヨネーズについて、粘度、食感、風味の評価を行った結果を表4に示した。
卵黄の50〜70%を大豆乳化組成物Bで置換した実施例1、2のマヨネーズは、対照である市販のマヨネーズと同様の粘性を有し、マヨネーズ様の食感が得られた。また、大豆の青臭みがなく、クリーミーでかつコク味があり、風味は良好だった。
一方、卵黄の53%を無調整豆乳で置換した比較例1のマヨネーズは、粘度が低下し、マヨネーズ様の食感が得られなかった。また、大豆の青臭みはほとんど感じられないものの、コク味がなく、風味があっさりとしすぎていて良くなかった。
【0061】
(表4)
(*1)粘度:BM型粘度計を用いて、No.4ローターを使用し、10℃、6rpm、1分で測定を行なった。
(*2)食感の評価基準
合格:対照と比べて、同様の粘度、粘性を有する。
不合格:対照と比べて、異なる粘度及び粘性を有する。
(*3)コク味の評価基準
合格:対照と同様のコク味を有する。
不合格:対照と比べて、コク味が不足する。
(*4)青臭みの評価基準
合格:大豆の青臭みがないか、ほとんど感じられない。
不合格:大豆の青臭みがある。
【0062】
(ドレッシングへの応用)(実施例3)
水280gに水溶性大豆多糖類(ソヤファイブ-S;不二製油(株)製)3gを添加し攪拌しながら溶解した。次いで砂糖70g、醤油70g、食塩10g、食酢160g、鰹節エキス7g、を添加する。よく攪拌混合した後、製造例2で得られた大豆乳化組成物B 400gを徐々に添加し全量を1000gとした。その後更にホモミキサーで均質化し、90℃まで加熱して容器に充填しドレッシングを得た。
得られたドレッシングは、コク味があり、良好な風味であった。
【0063】
(たれへの応用)(実施例4)
鍋にみりん100gを入れ火にかけて煮沸し、煮切りみりんとした。次いで水500gと醤油150gを加え、煮立ってきたら削り節20gを加えて暫く煮詰めた。その後火を止めて室温で冷却し、ガーゼで削り節を漉し取り、つゆ部を調製した。
上記の方法で得た、つゆ部300gと製造例1で得られた大豆乳化組成物A 700gをホモミキサーを用いて均質化し、90℃まで加熱後容器に充填してたれを得た。
得られたたれは滑らかな食感でコク味があり、良好な風味であった。
【0064】
(カスタードクリーム様食品(メープルシロップ配合)への応用)(実施例5)
製造例2で得られた大豆乳化組成物B 200g、薄力粉15g、果糖ぶどう糖液糖(FC;王子コーンスターチ(株)製)15g、上白糖30g、オリゴトース(三菱化学フーズ(株)製)5g、メープルシロップ(メープルシロップNo1 ミディアム;共立食品(株)製)10g、水45gを混合後、一度濾した。濾したものを鍋に入れ加熱し、沸騰後5分間練り、蒸発した水分量の分だけ水を添加して混合し、メープルシロップを配合したカスタードクリーム様食品を調製した。
得られた、カスタードクリーム様食品は滑らかな食感で、コク味があり、大豆の青臭みが感じられず、良好な風味であった。
【0065】
(比較例2)
大豆乳化組成物Bの代わりに、「Soy Supreme Kreme」(サンオプタ社(SunOpta Grains and Foods Group)製、粉末タイプ)を水と混合して固形分含量を18.2%にしたものを200g使用した以外は、実施例5と同様にしてカスタードクリーム様食品を調製した。
得られたカスタードクリーム様食品はコク味がやや不足しており、また、大豆の青臭みが感じられ風味として好ましいものではなかった。
【0066】
(カスタードクリーム様食品(黒糖配合)への応用)(実施例6)
製造例2で得られた大豆乳化組成物B 200g、薄力粉15g、果糖ぶどう糖液糖(FC;王子コーンスターチ(株)製)15g、上白糖32g、オリゴトース(三菱化学フーズ(株)製)5g、黒砂糖(上野砂糖(株)製)5g、水48gを混合後、一度濾した。濾したものを鍋に入れ加熱し、沸騰後5分間練り、蒸発した水分量の分だけ水を添加して混合し、黒糖を配合したカスタードクリーム様食品を調製した。
得られた、カスタードクリーム様食品は滑らかな食感で、コク味があり、良好な風味であった。
【0067】
(プリン様食品への応用)(実施例7)
全卵28g、砂糖14g、製造例2で得られた大豆乳化組成物B 58gを混合し、80℃で加熱後、オーブンで湯煎焼成(150℃)してプリン様食品を調製した。得られたプリン様食品は食感、風味とも良好であった。
【0068】
(ババロア様食品への応用)(実施例8)
製造例2で得られた大豆乳化組成物B 92g、砂糖7gを混合後80℃で加熱し、40℃に冷却後、あらかじめ少量の水で膨潤させたゼラチン1gを添加し、冷蔵庫で4時間冷却して固め、ババロア様食品を調製した。
得られたババロア様食品は食感、風味とも良好であった。
【0069】
(ブリュレ様食品への応用)(実施例9)
製造例2で得られた大豆乳化組成物B 80g、砂糖8g、にがり(Brix=41)0.1gを混合後、蒸し器で95℃、25分蒸した後、カラメリゼ処理を行いブリュレ様食品を調製した。得られたブリュレ様食品は、適度な固さがあり、滑らかな食感で良好な風味であった。
【0070】
(カルボナーラソースへの応用)(実施例10)
製造例1により得られた大豆乳化組成物A 52g、粉チーズ25g、ベーコン15g、ベーキングパウダー0.5gを混合して、カルボナーラソースを調製した。
得られたカルボナーラソースは、コク味があり良好な風味であった。また、このソースを茹でたパスタと和えた場合も、パスタと和えやすく、良好な風味であった。
【0071】
(茶碗蒸しへの応用)(実施例11)
製造例2で得られた大豆乳化組成物B 50g、卵25g、だし汁120g、食塩1gを混合後、型に入れ、蒸し器で85℃、15分で蒸し、茶碗蒸しを得た。得られた茶碗蒸しは適度な硬さで滑らかな食感であり、良好な風味であった。
【0072】
(マヨネーズへの応用)(実施例12)
製造例2で得られた大豆乳化組成物Bにトランスグルタミナーゼ(商品名:アクティバ、味の素(株)製)を大豆乳化組成物Bに対して0.5%(大豆乳化組成物Bの固形分に対して2.7%)添加して、55℃、30分間反応させた後90℃、30分間加熱して反応を停止し、トランスグルタミナーゼを作用させた卵黄代替組成物を得た。
この卵黄代替組成物40g、粉からし0.7g、食塩3g、グルタミン酸ナトリウム0.25g、りんご酢と酢酸を混合して酸度10%に調整したもの8g、水8gを混合し、これに菜種油140gをフードカッターで攪拌しながら添加してマヨネーズを調製した。このマヨネーズの油分は70%であった。
このマヨネーズは卵黄を、卵黄代替組成物に100%代替して調製したものであるが、乳化状態は非常に良好で安定しており、大豆を酢漬けしたような特有の風味もなく、コク味があり風味も良好であった。
【0073】
(カスタードクリーム様食品への応用)(実施例13)
ホワイトチョコレート(商品名:ホワイトコーチングYDV36、不二製油(株)製)4重量部を50℃の湯煎で溶解した。湯煎から外したホワイトチョコレートに、製造例2で得られた大豆乳化組成物B 3重量部を少量ずつ添加しながら静かに攪拌して混合し、カスタードクリーム様食品を調製した。
得られたカスタードクリーム様食品は滑らかな食感でコク味があり、大豆の青臭みも感じられず良好な風味であった。