特許第5660021号(P5660021)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5660021
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】苗移植機
(51)【国際特許分類】
   A01C 11/02 20060101AFI20150108BHJP
【FI】
   A01C11/02 350G
   A01C11/02 360A
   A01C11/02 311G
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-283686(P2011-283686)
(22)【出願日】2011年12月26日
(65)【公開番号】特開2013-132227(P2013-132227A)
(43)【公開日】2013年7月8日
【審査請求日】2014年8月26日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山崎 仁史
(72)【発明者】
【氏名】名本 学
(72)【発明者】
【氏名】石井 和彦
(72)【発明者】
【氏名】奥平 雄右
【審査官】 木村 隆一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−262121(JP,A)
【文献】 特開平09−191722(JP,A)
【文献】 特開平06−070609(JP,A)
【文献】 特開2011−115066(JP,A)
【文献】 特開2003−180111(JP,A)
【文献】 特開平08−116736(JP,A)
【文献】 特開2008−067666(JP,A)
【文献】 実開昭62−070718(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体(5)の後部に苗植付部(4)を昇降自在に設け、該走行車体(5)の前側に予備の苗を載置する予備苗載せ台(9)を複数備える予備苗枠(10)を設けた苗移植機において、
該予備苗枠(10)の機体内側に、予備苗載せ台(9)に載置した苗を掬い取る苗取り板(11)を保持する苗取り板保持部材(13)を設け、該苗取り保持部材(13)は、上部側に前記苗取り板(11)を差し込む差込口(12)を形成し、該差込口(12)の外周部に苗取り板(11)の把持部(14)を吊り下げて保持する吊下縁部(15)を形成し、該吊下縁部(15)前記苗取り板(11)の板面を支持する板面支持部(16)を形成すると共に、前記予備苗枠(10)に着脱自在に設け
前記走行車体(5)にサイドステップ(8)を設け、該サイドステップ(8)に苗箱の搬送を補助する複数の搬送補助ローラ(17)を設け、該搬送補助ローラ(17)の上面を前記サイドステップ(8)から突出させた状態で所定間隔毎に設けると共に、該搬送補助ローラ(17)に上方から苗箱よりも重い重量がかかると搬送補助ローラ(17)がサイドステップ(8)内に下動して退避する構成としたことを特徴とする苗移植機。
【請求項2】
走行車体(5)の後部に苗植付部(4)を昇降自在に設け、該走行車体(5)の前側に予備の苗を載置する予備苗載せ台(9)を複数備える予備苗枠(10)を設けた苗移植機において、
該予備苗枠(10)の機体内側に、予備苗載せ台(9)に載置した苗を掬い取る苗取り板(11)を保持する苗取り板保持部材(13)を設け、該苗取り板保持部材(13)は、上部側に前記苗取り板(11)を差し込む差込口(12)を形成し、該差込口(12)の外周部に苗取り板(11)の把持部(14)を吊り下げて保持する吊下縁部(15)を形成し、該吊下縁部(15)に前記苗取り板(11)の板面を支持する板面支持部(16)を形成すると共に、前記予備苗枠(10)に着脱自在に設け、
前記走行車体(5)にサイドステップ(8)を設け、
落下空間部(18)を形成した格子状形態の格子状フロア(19)と、苗箱に接触して搬送を補助する複数の搬送補助ローラ(17)を備える搬送フロア(20)を設け、該搬送補助ローラ(17)の上面を該搬送フロア(20)から突出させた状態で所定間隔毎に配置し、該格子状フロア(19)と搬送フロア(20)を前記サイドステップ(8)に選択的に装着する構成としたことを特徴とする苗移植機。
【請求項3】
前記苗取り保持部材(13)は線材を屈曲させて形成し、該苗取り板保持部材(13)を予備苗枠(10)に取り付ける取付部(57)を前後両端に形成し、該前後の取付部(57)の前後間で下方に向けて屈曲させて前記板面支持部(16)を形成したことを特徴とする請求項1または2に記載の苗移植機。
【請求項4】
前記苗取り板保持部材(13)は、上下方向に複数配置する予備苗載せ台(9)のうち、最上段に配置する予備苗載せ台(9)に着脱自在に設けたことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の苗移植機。
【請求項5】
前記走行車体(5)に機体を操縦する運転ボード(7)を設け、前記走行車体(5)の前部にブラケットアーム(68)を設け、該ブラケットアーム(68)の上部にセンターマーカ(48)とループ形状のハンドルアーム(67)を設け、該ハンドルアーム(67)の左右幅を前記運転ボード(7)の左右幅よりも短くしたことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の苗移植機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、苗植付部に補給する苗を予備苗枠を設けた苗移植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車体前部のサイドステップの上方位置に、苗箱搬送用の搬送ローラを上下動可能に設ける技術(例えば、特許文献1参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−115066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
苗移植機の運転者は、苗の植付作業中に予め予備苗枠に搭載している苗箱から苗を取り出しながら、後側の苗植付部の苗タンクに補給する苗補給作業を、車体前部のサイドステップ上を前後に移動しながら行う。サイドステップは、走行車体中央のステアリングハンドル等の操作部を配置する操縦部に配置すると共に、操縦部の左右外側には予備苗載せ台を複数段に構成の予備苗枠を設けている。
【0005】
しかしながら、サイドステップの上面の通路幅は狭く、運転者は幅の広い苗を支えながら移動する必要があるので、足元部を随時見ながら移動することは困難であり、サイドステップ上面での移動や作業操作の能率が低下する問題がある。
【0006】
そこで、この発明は、このサイドステップ上方部の操縦部と予備苗枠部との通路幅間隔を広く維持したり、サイドステップ上面のステップ面を歩き易くすることにより、運転者が苗補給作業を行い易くし、作業の能率の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、走行車体(5)の後部に苗植付部(4)を昇降自在に設け、該走行車体(5)の前側に予備の苗を載置する予備苗載せ台(9)を複数備える予備苗枠(10)を設けた苗移植機において、該予備苗枠(10)の機体内側に、予備苗載せ台(9)に載置した苗を掬い取る苗取り板(11)を保持する苗取り板保持部材(13)を設け、該苗取り保持部材(13)は、上部側に前記苗取り板(11)を差し込む差込口(12)を形成し、該差込口(12)の外周部に苗取り板(11)の把持部(14)を吊り下げて保持する吊下縁部(15)を形成し、該吊下縁部(15)前記苗取り板(11)の板面を支持する板面支持部(16)を形成すると共に、前記予備苗枠(10)に着脱自在に設け、前記走行車体(5)にサイドステップ(8)を設け、該サイドステップ(8)に苗箱の搬送を補助する複数の搬送補助ローラ(17)を設け、該搬送補助ローラ(17)の上面を前記サイドステップ(8)から突出させた状態で所定間隔毎に設けると共に、該搬送補助ローラ(17)に上方から苗箱よりも重い重量がかかると搬送補助ローラ(17)がサイドステップ(8)内に下動して退避する構成としたことを特徴とする苗移植機とした。
【0008】
請求項2に記載の発明は、走行車体(5)の後部に苗植付部(4)を昇降自在に設け、該走行車体(5)の前側に予備の苗を載置する予備苗載せ台(9)を複数備える予備苗枠(10)を設けた苗移植機において、該予備苗枠(10)の機体内側に、予備苗載せ台(9)に載置した苗を掬い取る苗取り板(11)を保持する苗取り板保持部材(13)を設け、該苗取り板保持部材(13)は、上部側に前記苗取り板(11)を差し込む差込口(12)を形成し、該差込口(12)の外周部に苗取り板(11)の把持部(14)を吊り下げて保持する吊下縁部(15)を形成し、該吊下縁部(15)に前記苗取り板(11)の板面を支持する板面支持部(16)を形成すると共に、前記予備苗枠(10)に着脱自在に設け、前記走行車体(5)にサイドステップ(8)を設け、落下空間部(18)を形成した格子状形態の格子状フロア(19)と、苗箱に接触して搬送を補助する複数の搬送補助ローラ(17)を備える搬送フロア(20)を設け、該搬送補助ローラ(17)の上面を該搬送フロア(20)から突出させた状態で所定間隔毎に配置し、該格子状フロア(19)と搬送フロア(20)を前記サイドステップ(8)に選択的に装着する構成としたことを特徴とする苗移植機とした。
【0009】
請求項3に記載の発明は、前記苗取り保持部材(13)は線材を屈曲させて形成し、該苗取り板保持部材(13)を予備苗枠(10)に取り付ける取付部(57)を前後両端に形成し、該前後の取付部(57)の前後間で下方に向けて屈曲させて前記板面支持部(16)を形成したことを特徴とする請求項1または2に記載の苗移植機とした。
【0010】
請求項4に記載の発明は、前記苗取り板保持部材(13)は、上下方向に複数配置する予備苗載せ台(9)のうち、最上段に配置する予備苗載せ台(9)に着脱自在に設けたことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の苗移植機とした。
【0011】
請求項5に記載の発明は、前記走行車体(5)に機体を操縦する運転ボード(7)を設け、前記走行車体(5)の前部にブラケットアーム(68)を設け、該ブラケットアーム(68)の上部にセンターマーカ(48)とループ形状のハンドルアーム(67)を設け、該ハンドルアーム(67)の左右幅を前記運転ボード(7)の左右幅よりも短くしたことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の苗移植機とした。
【0012】
(削除)
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、予備苗枠(10)に苗取り板(11)を保持する苗取り板保持部材(13)を設けたことにより、苗取り板(11)を用いない苗の植付作業中に、苗取り板(11)が機体の振動や風によって走行車体(5)上や機外に落下することを防止できるので、落下した苗取り板(11)を拾う必要が無く、作業能率が向上する。
【0014】
また、苗取り板保持部材(13)を予備苗枠(10)の機体内側に設ける構成としたことにより、苗取り板(11)を着脱することが容易になると共に、機体の左右幅を抑えることができるので、作業能率が向上すると共に、機体の大型化が防止される。
そして、苗取り板(11)を保持する苗取り板保持部材(13)に板面支持部(16)を形成したことにより、差込口(12)の吊下縁部(15)に吊り下げられた苗取り板(11)の振動を板面支持部(16)で規制することができるので、苗取り板(11)の揺動による騒音や脱落が防止される。
また、複数の搬送補助ローラ(17)によって走行車体(5)の前側から苗箱を後側に移動させることができるので、作業に要する労力が軽減される。
さらに、搬送補助ローラ(17)に苗箱よりも重い重量がかかると、搬送補助ローラ(17)が下方に退避移動して上面がサイドステップ(8)から突出しなくなるので、作業者が搬送補助ローラ(17)上に足を乗せたときに搬送補助ローラ(17)が回転することが防止され、作業者は搬送補助ローラ(17)に影響されること無くフロアステップ(8)上を移動することができ、作業能率が向上する。
そして、搬送補助ローラ(17)を所定間隔を空けて配置したことにより、作業者が搬送補助ローラ(17)を踏みにくくなるので、作業者はサイドステップ(8)上を移動しやすく、作業能率が向上する。
【0015】
請求項2に記載の発明は、苗取り板(11)を保持する苗取り板保持部材(13)に板面支持部(16)を形成したことにより、差込口(12)の吊下縁部(15)に吊り下げられた苗取り板(11)の振動を板面支持部(16)で規制することができるので、苗取り板(11)の揺動による騒音や脱落が防止される。
また、サイドステップ(8)に落下空間部(18)を形成した格子状フロア(19)を設けたときは、作業者の足に付着した泥土などを落下空間部(18)から圃場に落下させることができるので、フロアステップ(8)に泥土が残りにくく、作業後の掃除に要する労力や時間が軽減される。
さらに、作業状態に合わせて格子状フロア(19)と搬送補助フロア(20)を付け替えて使用することにより、いっそう作業後の掃除に要する労力や時間が軽減される。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項1または記載の発明の効果に加えて、線材を屈曲させて苗取り板保持部材(13)を形成することにより、軽量に構成することができると共に、板面が形成されないので、風圧の影響を受けることが防止される。
また、取付部(57)の前後間の中央位置を下方に向けて屈曲させて板面支持部(16)を形成したことにより、板面支持部(16)で苗取り板(11)を確実に押さえることができる。
【0017】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、予備苗枠(10)の最上段の予備苗載せ台(9)に苗取り板保持部材(13)を着脱自在に配置することにより、苗取り板保持部材(13)の上下長さを長くすることができるので、苗取り板(11)が確実に差込口(12)に接触して保持され、苗取り板(11)の落下や揺れが確実に防止される。
【0018】
(削除)
【0019】
請求項5に記載の発明は、請求項1からのいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、走行車体(5)の前側に設けるブラケットアーム(68)にハンドルアーム(67)を設けると共に、このハンドルアーム(67)の左右幅を操縦ボード(7)の左右幅よりも狭くすることにより、ハンドルアーム(67)が周辺の障害物と接触しにくくすることができる。
【0020】
(削除)
【0021】
(削除)
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】苗移植機の側面図
図2】苗移植機の平面図
図3】苗移植機の予備苗枠部の側面図
図4】苗移植機の平面図
図5】苗移植機の一部の正面図
図6】苗取り板保持部材部の平面図(A)、側面図(B)、正面部(C)、苗取り板の平面図(D)、側面図(E)
図7】サイドステップ部の別例を示す平面図(A)と、サイドステップの一部の断面図(B)
図8】サイドステップ部の別例を示す平面図(a)、格子状フロアを示す部分平面図(b)、搬送補助フロアを示す部分平面図(c)
図9】フロントハンドル部の側面図
図10】フロントハンドル部の正面図
【発明を実施するための形態】
【0023】
図例に基づいて、乗用四輪走行形態の走行車体5の後側に、苗タンク1、植付装置3、苗植フレーム23、フロート2、及び代掻ロータ25等から構成される苗植付部4が、リフトシリンダ27の伸縮によって昇降される昇降リンク28を介して連結される。前記車体5は、中央部にエンジン29、及びエンジンカバー30を配置し、このエンジンカバー30の上側に運転席21を搭載する。この運転席21の前方に運転ボード7、及びステアリングハンドル6を有するステアリングポスト22を立設し、このステアリングハンドル6によって前輪31を操向する。
【0024】
また、前記エンジン29からベルト連動される主変速のHST(油圧無段変速装置)32、及びこのHST32から連動される副変速装置等を有するミッションケース33等が前部に配置されて、このミッションケース32から左右両側部に張出すフロントアクスルハウジング34に前輪31が操向可能に軸装される。
【0025】
前記車体5の後端部には、左右両側部にリヤアクスルハウジング35を配置して、後輪35を軸37に軸装して、前記ミッションケース33から取出される後輪連動軸38を介して連動する。
【0026】
また、この車体5の後端部にはリヤフレーム39を介して、上方の施肥装置26を搭載し、後側に平行リンク形態の昇降リンク28を昇降自在に連結して、この後端のリンクヒッチ40に、前記苗植フレーム23の中央部をローリング軸41周りに回動可能にして連結する。又、この苗植付部4の入力軸42は、前記ミッションケース32から取出されるPTO軸43を経て前記施肥装置26等と共に伝動される形態である。
【0027】
前記苗植付部4は周知のように多数のマット苗を苗タンク1に載置して左右方向へ往復移動しながら、底部の繰出ベルト44の間歇回動によって後下部の苗取出口45へ繰出しながら、前記植付装置3の植付爪46を作動Dさせて、各フロート2で均平される土壌面へ植付けるものである。植付爪46は多条植形態の各苗タンク1の苗取出口45毎に対向して、略楕円形状の植付軌跡線Dを描いて昇降作動さしながら、マット苗から適数本の苗を分離保持しながら土壌面へ植付ける。
【0028】
前記苗植付部4は、センタフロート2の上下動によって土壌面の深さを検出しながら、土壌面が深いときは、リフトシリンダ27によって苗植付部4を上昇制御し、逆に浅いときは下降制御して、苗植付深さを一定に維持するように制御する。この各フロート2の前側に配置の代掻ロータ25は、前記苗植付部4と一体的に昇降されるが、この苗植付部4のフロート2に対する上下関係位置を調節、変更可能の構成として、代掻ロータ25を作用位置や、非作用位置へ切替えることができる。
【0029】
これにより、前記リヤアクスルハウジング35内の伝動機構部から連動軸47を介して伝動する。車体5の前端中央部に走行方向を視準するセンタマーカ48を設けている。
前記車体5は、中央部に沿って前端部に運転ボード7を配置し、この後側部にセンタフロア49を設けて、後部にエンジンルームを覆うエンジンカバー30を配置する。これら運転ボード7、センタフロア49、及びエンジンカバー30等の左右外側部に沿ってサイドステップ8を張出形成して、運転者がこのサイドステップ8上面を前後方向へ移動することができる。このサイドステップ8の後端部は、運転席21の後部横側において後上り傾斜に形成して、後輪36上部を覆うフェンダー部50を兼ねた形態として、この後端上部位置に運転席21の後側部を横方向に亘って形成のリヤフロア51を形成し、前記リヤフレーム39に支持させている。
【0030】
運転者が苗タンク1にマット苗を補給するときは、このリヤフロア51上面を踏むことによって苗の補給姿勢を安定支持することができる。前記補給用のマット苗(苗トレイに育苗収容したマット状形態の苗)を収容支持する予備苗枠10が、車体1の前部に位置して、サイドステップ8の外側部上に配置される。この予備苗枠10は複数段の苗棚9を有して、多数のマット苗を載置することができ、各苗棚9の前側から供給載置したマット苗を、サイドステップ上面の運転者が各苗棚9の後側から取出して、後方の苗植付部4側へ運んで各苗タンク1へ供給することができる。
【0031】
前記予備苗枠10は、サイドステップ8を支持する車体5フレームの支持ブラケット56部から立設の支柱52を有し、この支柱52の上端部に支軸53を嵌合して着脱可能にしている。この支軸53の上部には複数段の予備苗載せ台9を適宜高さ間隔に形成して、各段の苗載棚9上面にはマット苗を収容した苗トレイを1〜数枚毎並べて載せることができる。
【0032】
また、各段の予備苗載せ台9は、図1のように前後一対の平行リンク54、55で前後回動可能に支持して、上段の予備苗載せ台9を、下段の予備苗載せ台9に対して前側へ回動下降させることにより、この下段の予備苗載せ台9の前側に同高さ位置に連接させて(図2)、各予備苗載せ台9上面での苗トレイの前後移送や、苗トレイの積、降作業を行い易く構成することもできる。そして、前記苗トレイ内のマット苗を掬い取るための苗取り板11は、一枚のマット苗を掬い取るに適した略同広さの矩形状の平板に形成して、この一辺に直角状に折曲げた形態の把持縁14を形成し、作業者はこの把持縁14部を把持した状態で、先端部をマット苗の底部と苗トレイ内面との間に差込むことによって、苗トレイ内のマット苗を掬い取ることができ、この掬い取ったマット苗を苗タンク1へ移動して供給するものである。
【0033】
該苗取り板11は、使わないときは、予備苗枠10の上部内側(サイドステップ8側)上方位置の苗取り板保持部材13に差込んで保持させておくものである。又、前記予備苗枠10は、支持軸53の回りに水平回動して予備苗載せ台9の向きを前後方向に変更させることができるように構成している。
【0034】
ここにおいて、後側の苗タンク1、及びこの苗タンク1から繰出すマット苗を分離保持してフロート2で均平された土壌面に植付ける植付装置3等からなる苗植付部4を装着する苗移植機車体5前部で、ステアリングハンドル6等を配置する運転ボード7の左右外側部に位置して前後方向に沿って形成のサイドステップ8の外側上方位置に、前記苗植付部3に対する補給用のマット苗を複数段に載せる予備苗載せ台9を有する予備苗枠10を設ける苗移植機において、前記予備苗枠10のサイドステップ8側上方位置に、苗トレイからマット苗を掬い取るための苗取り板11の板面を立てた状態で、かつ前後方向に沿わせた状態にして、この苗取り板11を上端の差込口12から下方へ差込んで保持する苗取り板保持部材13を設けた苗移植機の補助苗載装置の構成とする。
【0035】
前記苗移植機の補助苗載装置の形態は、運転ボード7とこの外側の予備苗枠10との間のサイドステップ8上の通路幅を制限し難くして、運転者が移動し易い形態に維持する。後部苗植付部4の苗タンク1に対してマット苗を補給するときは、運転者はサイドステップ8上を移動して、予備苗枠10の内側上方部の苗取り板保持部材13の差込口12から、苗取り板11を上方へ引き抜いて取外し、この苗取り板11を予備苗載せ台9のマット苗の底面に差込んで、苗トレイ内のマット苗を掬い取る。この苗取り板11によって掬い取ったマット苗を、運転者がサイドステップ8上面を後方へ移動することによって苗タンク1に挿込案内して補給する。
【0036】
この苗補給作用が終ると予備苗載せ台9上面に空の苗トレイを戻して載置し、苗取り板11を前記予備苗枠10上の苗取り板保持部材13の差込口12へ上方から差込んで、把持縁14を吊下縁15に係合させて、吊下状態にして支持収容させる。このとき、苗取り板11は、板面を上部の差込口12の前後方向と平行状態に沿わせて、かつ、サイドステップ8の外側部を前後方向に沿った状態にして、この苗取り板11の下端部を支持部16に支持規制させて、内側のサイドステップ8上面側への揺動や、振れ出しを規制する。このため、サイドステップ8の上部幅を常に幅広く維持することができる。
【0037】
また、前記苗取り板保持部材13は、上端部の差込口12の外周部に、苗取り板11の端縁部をカギ形状に形成して把持しうる把持縁14を係合させて吊下状態に保持する吊下縁15を形成し、この吊下縁15の下方に沿ってこの苗取り板11の板面を支持する支持部16を形成して前記予備苗枠10に着脱可能に設ける。
【0038】
前記苗タンク1に対するマット苗の補給を行うときは、運転者がサイドステップ8上面を移動しながら、予備苗枠10上内側に位置する苗取り板保持部材13の差込口12から苗取り板11を取外して、この苗取り板11を用いて予備苗載せ台9上の苗トレイ内のマット苗を掬い取って、後方の苗タンク1へ運んで差込み案内させて供給する。このマット苗の補給作用が終ると、苗取り板11は差込口12へ上側から差込んで苗取り板保持部材13へ保持収容させる。この収容状態の苗取り板11は、上端部の把持縁14が、差込口12部の吊下縁15に係合して吊下げられて、苗取り板11の板面の内側面は、この苗取り板保持部材13の支持部16によって支持案内され、外側面は、この外側に位置する予備苗枠10によって支持案内されて、苗取り板11の左右揺動が行われ難い状態に収納維持される。
【0039】
そして、後側の苗タンク1、及びこの苗タンク1から繰出すマット苗を分離保持してフロート2で均平された土壌面に植付ける植付装置3等からなる苗植付部4を装着する苗移植機車体5前部で、ステアリングハンドル6等を配置する運転ボード7の左右外側部に位置して前後方向に沿って形成のサイドステップ8の外側上方位置に、前記苗植付部3に対する補給用のマット苗を複数段に載せる予備苗載せ台9を有する予備苗枠10を設ける苗移植機において、前記サイドステップ8は、通路面幅域の外側部に苗トレイ底面を支持して搬送案内するロール17を低く露出して、粗間隔に配置する。
【0040】
前記のように運転者乃至作業者が、サイドステップ8上を移動しながら、予め苗植作業時に搭載していた予備苗載せ台9の苗トレイのマット苗を、苗取り板11によって掬い取しながら後方の苗タンク1内へ挿填したり、前記予備苗載せ台9に対する苗トレイ、又は空の苗トレイ等の積、降を行う場合や、車体5後部の施肥装置に対する肥料供給を行う等の作業においては、前記苗トレイをサイドステップ8の上面に載せて、底面をロール17に支持させて滑動案内させて移動させる。この場合、苗トレイはマット苗の面積に従って広く平面状に形成されているため、少なくとも前後左右の複数個所の配置ロール17によって支持させることによって、サイドステップ8の底面から低く浮上されて、円滑な移動案内される状態となる。
【0041】
また、この苗トレイの積、降搬送処理を行った後で、苗補給等の作業を行うために運転者がサイドステップ8上面を踏んで歩くときは、前記サイドステップ8上面のロール17の突出高さが低くなって、しかもロール17の配置間隔が広くなっているために、このサイドステップ8上面を踏む足裏(底面)がロール間隔部のサイドステップ8上面に踏圧し易くなり、ロール17による踏滑りを少なくして、運転者の安全で歩き易いフロア面とすることができる。
【0042】
さらに、前記サイドステップ8のロール17は、苗トレイの搭載を受けて搬送可能状態に支持する搬送姿勢とし、運転者がサイドステップ8上面に立って苗補給を行う作業姿勢では、この運転者の踏付圧力によってフロア面下に下動して露出高さを低くするか、又は、下動退避するように出退作動する。
【0043】
前記サイドステップ8上面にマット苗を収容した苗トレイを載置して前後方向へ移送するときの搬送姿勢では、この苗トレイの重量は比較的軽量であるため、ロール17がサイドステップ8の上面に露出して、苗トレイの底面を搬送可能の高さに支持するため、この苗トレイを前後方向へ押引移動させることによって搬送することができる。
【0044】
また、運転者がサイドステップ8の上面に立って苗補給作業等を行う作業姿勢では、運転者がロール17を踏み付けた状態にあっても、この踏付圧力によって、この踏付位置のロール17が下動して、ロール17の露出高さが低くなって、足裏がロール17外周のフロア上面に直接広く支持されることとなり、足元のロール17による滑りを軽減することができ、安定した踏付支持による作業を安全に行うことができる。
【0045】
そして、運転者の踏付圧力によってロール17がフロア上面よりも下位に下動退避する場合も、ロール17は全く露出しない状態に切替えられるため、より安定した作業姿勢を維持することができる。
【0046】
更に、前記サイドステップ8は、漏下穴18を形成した格子状形態の格子状フロア19上面に、ロール17の上頂面をフロア面上に低く露出させて粗間隔に配置して苗トレイ底面を支持して搬送案内する搬送フロア20を着脱可能に設け、又は、これら格子状フロア19と、搬送フロア20を選択して付替可能に設ける。
【0047】
前記予備苗載せ台9のマット苗を苗取り板11で掬い取りしながら後方の苗タンク1へ補給するときは、搬送フロア20を取外して格子状フロア19の形態とする。このときサイドステップ8は、格子状に漏下穴18の形成された形態であるから、運転者は滑り難く、歩行移動し易い。又、サイドステップ8上面に泥土等が落下しても、格子状の漏下穴18から漏下し易く、サイドステップ8上面の泥土等の堆積をなくして、運転者の移動性を良好に維持する。又、苗植作業前、後における苗トレイの積、降時等においては、前記格子状フロア19の上面に搬送フロア20を重合搭載して、この搬送フロア20上面に苗トレイを載せて搬送させることができる。
【0048】
この状態で運転者がこの搬送フロア20の上面を直接踏んで移動しても、ロール17の露出高さが低く、粗間隔に配置されているため、踏付足裏面のフロア8面に対する踏付圧力が大きく、ロール17による滑動を小さくして、足元の滑りを少くして安全な作業移動を行うことができる。又、この搬送フロア20を使用する場合に、この搬送フロア20上面に飛散する泥土があっても、ロール17回転の間障部から下側へ漏下する泥土は、下側の格子状フロア19の漏下穴18から漏下されて、搬送フロア20上面の泥土堆積を少なくすることができる。
【0049】
前記格子状フロア19と搬送フロア20を格別に用意しておいて、作業状態に応じて適切な格子状フロア19か、又は搬送フロア20を選択して、サイドステップ8部位置の車体5フレーム上に付替えて設置する場合も上記と同様である。
【0050】
前記苗取り板保持部材13は、太目の鋼線材を折曲げて、図6のように側面視V字状形態の支持部16を中央部として、この支持部16の両上端部に平面視U字状形態の差込口12、及び吊下縁15を一体成形する。この差込口12の先端部側で、前記予備苗枠10に対する取付部側に取付ピン(取付部)57を形成し、この前後一対の取付ピン57を予備苗枠10のピン穴58に差込むことによって取付けることができる。この苗取り板保持部材13の構成は軽量、簡潔であり、取扱が簡単、容易であり、該苗取り板保持部材13自体は板面を形成しないため、風圧等を受け難い。
【0051】
また、予備苗枠10の内側、サイドステップ8側に取付けるが、差込口12の幅は1枚、又は数枚の苗取り板11を差込保持するに十分な間隔に設定すればよく、かつ、この取付位置をサイドステップ8面よりも高い位置に設定して、サイドステップ8側上面への張出幅を小さくすることができ、このサイドステップ8上面、乃至足元部の移動作業を邪魔し難い形態とすることができる。
【0052】
図7(A)及び(B)において、サイドステップに配置のロール17は、一枚の苗トレイを3乃至6個所等の適宜個数のロール17によって支持して搬送可能状態に構成し、できるだけロール17面個所以外のフロア面積域を広くし、フロア面積比を大きくするように構成している。従って、サイドステップ8幅の中央部に、又は左右一側部に位置して前後方向に沿って広い面積間隔のフロア面60を形成し、このフロア面60の左右両側部に、乃至左右一側部に前後方向に沿ってロール17を配置して、運転者がフロア面60部を踏んで歩き易くするロール配置の形態に形成している。
【0053】
しかも、これら各ローラ17は、前記マット苗を収容した苗トレイを載置したときは、この苗トレイを支持した状態で回動して前後方向へ搬送させることができ、運転者が踏み付けたときは、この踏付けられたローラ17が踏付圧力によってフロア面60に対して下動して、このローラ17のフロア面60に対する露出高さが低くなるように構成している。又は、このロール17の上頂面がフロア面60よりも下側に退避するように構成することもできる。このようなロール17のフロア面60に対する上下動、乃至出退作動形態は、適宜弾性係数に設定のスプリングや、フロアマット等の弾性力に抗して踏み付け下動するようにロール17の軸受構成(図面省略)とし、踏付力を解除することによってロール17が上動復帰するように構成することができる。
【0054】
前記各ロール17は、サイドステップ8に形成のフロア溝61に嵌合した状態で、上下に移動できるが、このフロア溝61内には泥水が浸入することがあるため、この泥水を排出するための水抜穴62をフロア溝61の底部に形成している。このような、ロール17の配置域は、予備苗枠10の苗載棚9の前後長さ域に対応するように設定する。そして、前記のように苗載枠10を支持軸53の周りに前後方向に切り替え回動する形態にあっては、このロール17配置の後端を苗載棚9の最長後端部位置にわたるように長く設定している。
【0055】
図8(a)〜(c)において、左側のサイドステップ8部に格子状フロア19を取付け、右側のサイドステップ8部に搬送フロア20を取付けたものである。各フロア19、20を直接車体5フレームに取付ける形態では、車体5フレーム縦桟、横桟等の支持桟を構成して、この支持桟の上面に載置してボルト締め等によって取り付ける。
【0056】
次に、主として図9図10において、前記車体5の前端部にフロントハンドル65、及びセンタマーカ48を設けているが、このフロントハンドル65に緊急停止スイッチ66を設けている。このフロントハンドル65を把持して操作中に緊急事態発生時には、この緊急停止スイッチ66を操作して走行駆動を停止させるものである。このフロントハンドル65は、ループ状に形成したハンドルアーム67の上部に左右水平状形態に形成されて、この横端部に前記スイッチ66を取付けている。
【0057】
また、このハンドルアーム67は車体5の前端部に固定のブラケットアーム68に取付けて、後側の運転ボード7の横幅よりも狭い幅域に形成して、障害物に接触し難く形成している。
【0058】
そして、ブレーキを手動操作するための機体停止レバー70をサイドステップ8の後部に設けている。71は主変速操作用のHSTレバーで、運転ボード7の後部一側部に設けている。
【符号の説明】
【0059】
1 苗タンク
2 フロート
3 植付装置
4 苗植付部
5 車体
6 ステアリングハンドル
7 運転ボード
8 サイドステップ
9 予備苗載せ台
10 予備苗枠
11 苗取り板
12 差込口
13 苗取り板保持部材
14 把持縁
15 吊下縁
16 支持部
17 ロール
18 漏下穴
19 格子状フロア
20 搬送フロア
21 運転席
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10