(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記加熱手段は、前記第1の導管部及び前記第2の導管部の少なくとも何れか一方の上部と下部とに電極部を備え、前記電極部を通電加熱することを特徴とする請求項1又は2に記載のガラス繊維製造用ガラス溶融装置。
前記第1の導管部と前記第2の導管部とは、少なくとも一部が一体的に構成されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のガラス繊維製造用ガラス溶融装置。
前記第1の導管部及び前記第2の導管部は二重管構造を形成しており、前記第1の導管部及び前記第2の導管部の何れか一方が前記第1の導管部及び前記第2の導管部の何れか他方の内部に配置されていることを特徴とする請求項5に記載のガラス繊維製造用ガラス溶融装置。
1本の導管内に間仕切壁を形成することで、前記導管内に前記第1の導管部及び前記第2の導管部を形成することを特徴とする請求項8に記載のガラス繊維製造用ガラス溶融装置。
前記第1のガラス溶融槽には、前記第1のガラス溶融槽の底部に開口が形成されて溶融ガラスの上部を仕切る上部仕切板と、溶融ガラスの液面付近に開口が形成されて前記第1のガラス溶融槽の底部を仕切る下部仕切板との、少なくとも何れか一方が設けられていることを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載のガラス繊維製造用ガラス溶融装置。
前記第1のガラス溶融槽の溶融ガラス液面が、前記第2のガラス溶融槽及び前記第3のガラス溶融槽の溶融ガラス液面よりも250cm以上高くすることを特徴とする請求項11に記載のガラス繊維の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、清澄剤を添加することは環境問題やコスト面から好ましくなく、また特許文献1のように溶融炉の流出口にバルブを装着するものでは、気泡の混入を効果的に低減することができなかった。
【0010】
また、ガラス繊維の製造においては単位時間当たりに紡糸されるガラス重量が小さいため、導管を流れる溶融ガラスの流量は、一般的には50g/分〜5000g/分程度となる。
【0011】
このため、特許文献2のように予備溶融槽でガラスを溶融し、減圧下の溶融槽に溶融ガラスを導入する方法では、減圧下の溶融槽の高い減圧力により低粘性の溶融ガラスが予備溶融槽から吸引されるため、導入される溶融ガラスの流量調整が難しく、白金製のニードルバルブや温度調整が可能な導入管で高精度に流量制御することは困難である。
【0012】
一方、特許文献3,4のように溶融ガラスを上昇管により減圧下の溶融槽に導き、減圧下の溶融槽で脱泡を行い、溶融槽から下降管で別の溶融槽に導く方法では、上昇管と下降管とに大量の溶融ガラスを流して、溶融ガラス自体の持込熱量で上昇管と下降管とを加熱しなければ、管の途中で溶融ガラスが冷却されて固化してしまい、装置が停止する危険性がある。すなわち、特許文献3,4に記載の溶融槽は、月産数千トン以上の大量のガラスを溶融する場合に適したものであり、この場合は溶融ガラスの持込熱量で上昇管及び下降管が加熱されるため、内部のガラスを溶融した状態に保つことができる。しかし、ガラス繊維の製造においては、1つの溶融装置で溶融されるガラスは、一般に月産数百トン以下であるため、溶融ガラスの持ち込み熱量で上昇管及び下降管の内部のガラスを溶融した状態に保つことは不可能である。
【0013】
そこで、本発明は、紡糸されるガラス繊維中への気泡の混入を効果的に低減することができるガラス繊維製造用ガラス溶融装置及びこれを用いたガラス繊維の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係るガラス繊維製造用ガラス溶融装置は、吸引装置により減圧雰囲気に晒される第1のガラス溶融槽と、第1のガラス溶融槽から下方に延びる第1の導管部及び第2の導管部と、第1の導管部及び第2の導管部を一体的に覆う断熱ハウジングと、第1の導管部の下方に設けられ大気圧雰囲気に晒される第2のガラス溶融槽と、第2の導管部の下方に設けられ大気圧雰囲気に晒される第3のガラス溶融槽と、第3のガラス溶融槽の底部に設けられ多数のノズルを有するブッシングと、第1の導管部及び第2の導管部の少なくとも何れか一方、第1のガラス溶融槽、第2のガラス溶融槽、第3のガラス溶融槽、ブッシングをそれぞれ独立して加熱する加熱手段と、を備えることを特徴とする。
【0015】
本発明に係るガラス繊維製造用ガラス溶融装置では、第1の導管部及び第2の導管部を溶融ガラスで充填させた稼動状態にすると、第2のガラス溶融槽の溶融ガラスは、サイフォンの原理により、第1の導管部を上昇して第1のガラス溶融槽に導入され、第2の導管部を下降して第3のガラス溶融槽に導入され、ブッシングからガラス繊維が紡糸される。これにより、第2のガラス溶融槽と第3のガラス溶融槽との溶融ガラス液面の液位が同レベルになるため、第1のガラス溶融槽の雰囲気の気圧変動などによって第1のガラス溶融槽で液位変動が生じても、ブッシングからガラス繊維が紡糸される第3のガラス溶融槽の液位変動を抑制することができる。これにより、第3のガラス溶融槽の壁面と溶融ガラスの接触面からの抱きこみ泡の発生を抑制することができ、紡糸されるガラス繊維中への気泡の混入を効果的に低減することができる。
【0016】
また、ガラス原料は、大気圧雰囲気に晒される第2のガラス溶融槽に投入することができるため、ブッシングからガラス繊維が紡糸されることにより変化する溶融ガラスの液位を容易に調整することができる。しかも、第1のガラス溶融槽を気密にすることがきるため、第1のガラス溶融槽の雰囲気の気圧変動を抑制することができる。これにより、第3のガラス溶融槽の液位変動を更に抑制することができる。
【0017】
更に、ガラス原料を第2のガラス溶融槽で溶融することで、減圧雰囲気に晒される第1のガラス溶融槽を小さくすることができるため、第1のガラス溶融槽に液位変動が生じても第3のガラス溶融槽の液位変動を更に抑制することができる。しかも、ガラス繊維中の気泡を低減するためには、第1のガラス溶融槽は溶融ガラスを紡糸する紡糸装置の近く、すなわち、第3のガラス溶融槽の近くに配置することが好ましく、第1のガラス溶融槽を小さくすることで、容易にこれを達成することができる。
【0018】
ところで、第1のガラス溶融槽を減圧雰囲気下に晒すためには、第1のガラス溶融槽を第2のガラス溶融槽及び第3のガラス溶融槽から所定の高度差を設ける必要があるため、第1の導管部及び第2の導管部は必然的に長くなる。一方で、単位時間当たりに紡糸されるガラス重量が極めて小さいため、溶融ガラスが第1の導管部及び第2の導管部を通過するのに長時間を要する。このため、第1の導管部及び第2の導管部の少なくとも何れか一方を加熱すると共に、第1の導管部及び第2の導管部を断熱ハウジングで覆うことで、第1の導管部及び第2の導管部に導入された溶融ガラスが、温度の低下により固形化するのを防止することができる。しかも、この断熱ハウジングにより、第1の導管部と第2の導管部とを一体的に覆うため、断熱ハウジングの構造を簡略化することができ、第1の導管部と第2の導管部とを効率的に加熱保温することができる。
【0019】
なお、上述したように、本発明に係るガラス繊維製造用ガラス溶融装置では、第1の導管部及び第2の導管部での溶融ガラスの流量が極めて小さいため、第1の導管部及び第2の導管部の径を細くすることができ、しかも第1のガラス溶融槽も小さくすることができる。これにより、本発明では、断熱ハウジングにより、第1の導管部と第2の導管部とを一体的に覆うことが可能となる。
【0020】
更に、加熱手段により、第1の導管部及び第2の導管部の少なくとも何れか一方、第1のガラス溶融槽、第2のガラス溶融槽、第3のガラス溶融槽、ブッシングをそれぞれ独立して加熱することで、各領域で最適な温度条件を与えることができるため、リボイル(再沸騰)による溶融ガラスからの気泡発生を抑制することができる。
【0021】
この場合、断熱ハウジング内は、吸引手段により減圧されることが好ましい。このように、断熱ハウジング内を減圧することで、第1のガラス溶融槽の減圧による第1の導管部及び第2の導管部の座屈が発生し難くなるため、第1の導管部及び第2の導管部の壁厚を薄くすることができる。これにより、例えば、白金などの高価な材料により第1の導管部及び第2の導管部を製造する場合に、特に低コスト化を図ることができる。
【0022】
そして、加熱手段は、第1の導管部及び第2の導管部の少なくとも何れか一方の上部と下部とに電極部を備え、電極部を通電加熱することとしてもよい。このように、第1の導管部及び第2の導管部の少なくとも何れか一方の上部と下部とに備えられた電極部を通電加熱することで、第1の導管部及び第2の導管部の少なくとも何れか一方を全体的に加熱することができるため、第1の導管部及び第2の導管部の少なくとも何れか一方に導入された溶融ガラスの加熱保温を適切に行うことができる。
【0023】
一方、第1の導管及び第2の導管の少なくとも何れか一方の下部には、分岐して上方に向けて延びる導管分岐部が形成されており、加熱手段は、第1の導管部及び第2の導管部の少なくとも何れか一方の上部または第1の溶融槽と、導管分岐部とに電極部を備え、電極部を通電加熱することとしてもよい。このように、導管の下部から分岐された導管分岐部に電極部を設けることで、電極部との接続部と導管との間に所定距離をおくことができるため、導管の下端部も安定した設定温度に昇温させることができる。これにより、導管に導入された溶融ガラスを適切に昇温させることができる。
【0024】
また、第1の導管部と第2の導管部とは、少なくとも一部が一体的に構成されていることが好ましい。このように、第1の導管部と第2の導管部とを一体的に構成することで、第1の導管部及び第2の導管部の強度が向上させることができるため、第1の導管部及び第2の導管部の座屈が発生し難くなる。これにより、断熱ハウジング内を大気圧とすることができるため、第1の導管部及び第2の導管部と断熱ハウジングとの厳密なシールが不要となる。これにより、第1の導管部及び第2の導管部と断熱ハウジングとの熱膨張による伸縮差を吸収する機構を特別に設ける必要がなくなるため、第1の導管部及び第2の導管部と断熱ハウジングとの連結部を簡易な構成とすることができる。
【0025】
そして、第1の導管部及び第2の導管部は二重管構造を形成しており、第1の導管部及び第2の導管部の何れか一方が第1の導管部及び第2の導管部の何れか他方の内部に配置されていてもよい。このように、第1の導管部及び第2の導管部を二重管構造とするため、第1の導管部及び第2の導管部の何れか一方を加熱することで、この輻射熱などにより第1の導管部及び第2の導管部の何れか他方を間接的に加熱することができる。これにより、第1の導管部及び第2の導管部の加熱を効率的に行うことができる。しかも、内側の導管部は導管の内外で圧力差が殆ど無いので、内側の導管の壁厚を薄くすることができる。
【0026】
この場合、第1の導管部は、二重管構造の外側に配置されており、第2の導管部は、二重管構造の内側に配置されていることが好ましい。このように構成することで、第1の導管部のみを加熱することで、第2の導管部は第1の導管部の加熱により間接的に加熱されるため、第2の導管部の温度を第1の導管部の温度よりも低くすることが容易にできる。これにより、リボイルによる気泡の発生を抑制することができる。
【0027】
一方、第1の導管部と第2の導管部とが一体的に接合されていてもよい。このように、第1の導管部と第2の導管部とが接合されているため、第1の導管部及び第2の導管部を加熱した場合に、第1の導管部及び第2の導管部が略同一挙動で熱膨張する。このため、第1の導管部と第2の導管部との熱膨張による伸縮差による不具合を防止することができる。
【0028】
この場合、1本の導管内に間仕切壁を形成することで、導管内に第1の導管部及び第2の導管部を形成することが好ましい。このように、1本の導管内に間仕切壁を形成して第1の導管部と第2の導管部とを形成することで、第1の導管部及び第2の導管部を容易に製作することができる。しかも、導管内の間仕切壁によって導管が補強されているので、第1の導管部及び第2の導管部の壁厚を薄くすることができる。換言すると、第1の導管部及び第2の導管部の壁厚を適切に設定すれば、断熱ハウジング内を減圧せずに大気圧としても導管の座屈の発生を抑制することができる。
【0029】
また、第1のガラス溶融槽には、第1のガラス溶融槽の底部に開口が形成されて溶融ガラスの上部を仕切る上部仕切板と、溶融ガラスの液面付近に開口が形成されて第1のガラス溶融槽の底部を仕切る下部仕切板との、少なくとも何れか一方が設けられていることが好ましい。このように、上部仕切板を設けることで、溶融ガラスから除かれて浮上している気泡が溶融ガラスの流れに伴って進行するのを阻害することができるため、この気泡が第2の導管部に流れていくのを防止することができる。一方、下部仕切板を設けることで、溶融ガラスは、下部仕切板を乗り越えないと第2の導管部に流れて行かないため、第1のガラス溶融槽において、溶融ガラスから気泡を除くために十分な滞留時間を確保することができる。しかも、溶融ガラスから除かれた気泡が、第1のガラス溶融槽の底部の早流れに乗って第2の導管部に流れていくのを防止することができる。これらの結果、紡糸されるガラス繊維中への気泡の混入をより効果的に低減することが可能となる。
【0030】
本発明に係るガラス繊維の製造方法は、上記したガラス繊維製造用ガラス溶融装置を用いたガラス繊維の製造方法であって、第1のガラス溶融槽を減圧雰囲気に晒して、第2のガラス溶融槽でガラス原料が溶融された溶融ガラスを、第1の導管部から第1のガラス溶融槽に導入するとともに、第2の導管部から第3のガラス溶融槽に導入し、第1の導管部及び第2の導管部の少なくとも何れか一方、第1のガラス溶融槽、第2のガラス溶融槽、第3のガラス溶融槽、ブッシングをそれぞれ独立して加熱し、ブッシングのノズルからガラス繊維を紡糸することを特徴とする。
【0031】
本発明に係るガラス繊維の製造方法によれば、第1のガラス溶融槽を減圧雰囲気に晒して、第2のガラス溶融槽でガラス原料が溶融された溶融ガラスを第1の導管部から第1のガラス溶融槽に導入するとともに、第2の導管部から第3のガラス溶融槽に導入することで、サイフォンの原理により、溶融ガラスが第2のガラス溶融槽から第1のガラス溶融槽を経て第3のガラス溶融槽に導入され、ブッシングからガラス繊維が紡糸される。これにより、第2のガラス溶融槽と第3のガラス溶融槽との溶融ガラス液面の液位が同レベルになるため、第1のガラス溶融槽の雰囲気の気圧変動などによって第1のガラス溶融槽で液位変動が生じても、ブッシングからガラス繊維が紡糸される第3のガラス溶融槽の液位変動を抑制することができる。これにより、第3のガラス溶融槽の壁面と溶融ガラスの接触面からの抱きこみ泡の発生を抑制することができ、紡糸されるガラス繊維中への気泡の混入を効果的に低減することができる。
【0032】
そして、第1の導管部及び第2の導管部の少なくとも何れか一方、第1のガラス溶融槽、第2のガラス溶融槽、第3のガラス溶融槽、ブッシングをそれぞれ独立して加熱することで、各領域で最適な温度条件を与えることができるため、リボイル(再沸騰)による溶融ガラスからの気泡発生を抑制することができる。
【0033】
この場合、第1のガラス溶融槽の溶融ガラス液面が、第2のガラス溶融槽及び第3のガラス溶融槽の溶融ガラス液面よりも250cm以上高くすることが好ましい。このようにすれば、第1のガラス溶融槽の気圧を大気圧と比べて0.4〜0.9気圧程度以上低くすることができる。そして、この程度の減圧雰囲気下にすれば、溶融ガラス中のガスが連続的に既存の気泡内に拡散して泡径が急激に大きくなるため、大きな脱泡効果を得ることができる。
【0034】
また、第2のガラス溶融槽の溶融ガラス液面の面積と第3のガラス溶融槽の溶融ガラス液面の面積との和が、第1のガラス溶融槽の溶融ガラス液面の面積の10倍以上とすることが好ましい。このようにすれば、第2のガラス溶融槽の溶融ガラス液面と第3のガラス溶融槽の溶融ガラス液面の液位は同レベルなので、第1のガラス溶融槽の雰囲気の気圧変動などにより、第1のガラス溶融槽での液位変動が生じても、第3のガラス溶融槽の溶融ガラス液面の液位変動を少なくすることができる。これにより、第3のガラス溶融槽の壁面と溶融ガラスの接触面からの抱込み泡の発生を抑制することができる。また、紡糸するガラス繊維の太さの変動を抑制し、ガラス繊維の番手変動による成形品の強度や電気特性のバラツキを抑えることができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、紡糸されるガラス繊維中への気泡の混入を効果的に低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面を参照して、本発明に係るガラス繊維製造用ガラス溶融装置及びこれを用いたガラス繊維の製造方法の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、全図中、同一または相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0038】
[第1実施形態]
図1は、第1の実施形態に係るガラス繊維製造用ガラス溶融装置の構成を示す断面図である。
図1に示すように、ガラス繊維製造用ガラス溶融装置(以下、「ガラス溶融装置」ともいう。)10は、第一ガラス溶融槽12と、第二ガラス溶融槽14と、第三ガラス溶融槽16と、上昇導管18と、下降導管20と、減圧ハウジング22と、ブッシング24と、を備えている。
【0039】
第一ガラス溶融槽12は、溶融ガラスを加熱保温するものであり、上方が開口している。
【0040】
この第一ガラス溶融槽12は、溶融ガラスを加熱保温するための加熱手段を備えている。この加熱手段は、第一ガラス溶融槽12の対向する側面に接続された一対の電極部26と、この電極部26に電流を供給する電源28とを備えている。そして、加熱手段は、この電極部26から通電することにより槽を自己発熱させるものである。自己発熱させる場合は、槽は通電により発熱する材料で少なくとも内壁が形成されていると好ましく、例えば白金や白金合金から構成されていると好ましい。なお、加熱手段は、バーナや電気ヒータなどであってもよい。
【0041】
第二ガラス溶融槽14は、第一ガラス溶融槽12の下方に配置されており、ガラス粉、溶融ガラス、及びガラス塊などのガラス原料を投入して、これらのガラス原料を溶融するものである。そして、第二ガラス溶融槽14は、上方が開口しており、大気圧雰囲気に晒されている。
【0042】
この第二ガラス溶融槽14は、ガラス原料の溶融のための加熱手段を備えている。この加熱手段は、第二ガラス溶融槽14の上部に配置された電熱線30と、電熱線30に電流を供給する電源32とを備える電気ヒータにより構成されている。なお、加熱手段は、バーナであってもよく、第二ガラス溶融槽14に接続した電極から通電して槽を自己発熱させるものであってもよい。自己発熱させる場合は、槽は通電により発熱する材料で少なくとも内壁が形成されていると好ましく、例えば白金や白金合金から構成されていると好ましい。
【0043】
第三ガラス溶融槽16は、第一ガラス溶融槽12の下方に配置されており、溶融ガラスを加熱保温するものである。そして、第三ガラス溶融槽16は、上方が開口しており、大気圧雰囲気に晒されている。
【0044】
この第三ガラス溶融槽16は、溶融ガラスの加熱のための加熱手段を備えている。この加熱手段は、第三ガラス溶融槽16の上部に配置された電熱線34と、電熱線34に電流を供給する電源36とを備える電気ヒータにより構成されている。なお、加熱手段は、バーナであってもよく、第三ガラス溶融槽16に接続した電極から通電して槽を自己発熱させるものであってもよい。自己発熱させる場合は、槽は通電により発熱する材料で少なくとも内壁が形成されていると好ましく、例えば白金や白金合金から構成されていると好ましい。
【0045】
そして、第二ガラス溶融槽14及び第三ガラス溶融槽16は、第二ガラス溶融槽14の溶融ガラスの液面と第二ガラス溶融槽14の溶融ガラスの液面とを足し合わせた面積が、第一ガラス溶融槽12の溶融ガラスの液面の面積に対して10倍以上となる大きさに形成されるのが好ましい。
【0046】
上昇導管18は、第二ガラス溶融槽14で溶融された溶融ガラスを上昇させて第一ガラス溶融槽12に送るものであり、第一ガラス溶融槽12から第二ガラス溶融槽14に向けて下方に延びる細長い円筒状に形成されている。
【0047】
この上昇導管18は、溶融ガラスの加熱のための加熱手段を備えている。この加熱手段は、上昇導管18の上部壁面及び下部壁面に設けた一対のフランジ状の電極部38と、この電極部38に電流を供給する電源40とを備えている。そして、加熱手段は、この電極部38から通電することにより上昇導管18を自己発熱させるものである。よって、上昇導管18は通電により発熱する材料で形成されており、例えば白金や白金合金から構成されている。なお、電極部38の設置位置は上昇導管18の上部壁面に換えて、第一ガラス溶融槽12の壁面としてもよい。この場合、第一ガラス溶融槽12の加熱手段の障害にならないように、電極部38は第一ガラス溶融槽12の底面部や側面部下方に設けることが好ましい。
【0048】
下降導管20は、第一ガラス溶融槽12から溶融ガラスを下降させて第三ガラス溶融槽16に送るものであり、第一ガラス溶融槽12から第三ガラス溶融槽16に向けて下方に延びる細長い円筒状に形成されている。
【0049】
この下降導管20は、溶融ガラスの加熱のための加熱手段を備えている。この加熱手段は、下降導管20の上部壁面及び下部壁面に設けた一対のフランジ状の電極部42と、この電極部42に電流を供給する電源44とを備えている。そして、加熱手段は、この電極部42から通電することにより下降導管20を自己発熱させるものである。よって、下降導管20は通電により発熱する材料で形成されており、例えば白金や白金合金から構成されている。なお、電極部42の設置位置は下降導管20の上部壁面に換えて、第一ガラス溶融槽12の壁面としてもよい。この場合、第一ガラス溶融槽12の加熱手段の障害にならないように、電極部42は第一ガラス溶融槽12の底面部や側面部下方に設けることが好ましい。
【0050】
減圧ハウジング22は、第一ガラス溶融槽12、上昇導管18及び下降導管20を減圧雰囲気に晒すためのものであり、上昇導管18及び下降導管20の下端が突き出た状態で、第一ガラス溶融槽12、上昇導管18及び下降導管20を一体的に気密に覆うものである。減圧ハウジング22の材質及び構造は、気密性及び強度を有するものであれば特に限定されず、ステンレス等の金属材料から形成されていると好ましい。
【0051】
この減圧ハウジング22と、第一ガラス溶融槽12、上昇導管18及び下降導管20との間の空間には、断熱効率を向上させるための断熱材46が収容されている。この断熱材46は、減圧ハウジング22と、第一ガラス溶融槽12、上昇導管18及び下降導管20との間を断熱するものであり、減圧ハウジング22の温度を耐熱温度以下にするものである。よって、断熱材46は、減圧ハウジング22の温度を耐熱温度以下にして長期的に構造が保持される材料で形成されており、例えば、形状保持性や経済性の優れる耐火断熱レンガや、弾性構造を有する弾性断熱材などで構成されるのが好ましい。
【0052】
ところで、上昇導管18及び下降導管20が加熱されると、上昇導管18及び下降導管20と減圧ハウジング22とが熱膨張により伸縮する。しかしながら、上昇導管18及び下降導管20と減圧ハウジング22とは、その熱膨張の違いにより伸縮差が生じる。そこで、減圧ハウジング22には、上昇導管18及び下降導管20と減圧ハウジング22との熱膨張による伸縮差を吸収する、図示しない伸縮機構が取り付けられている。
【0053】
この減圧ハウジング22の側壁には、吸引装置48に接続された減圧のための吸引口22aが設けられている。
【0054】
吸引装置48は、減圧ハウジング22内のガスを真空ポンプにより吸引して減圧ハウジング22内を減圧雰囲気にするものである。
【0055】
そして、減圧ハウジング22は、上昇導管18及び下降導管20の下端部において、上昇導管18及び下降導管20と連結されている。この連結部は、上昇導管18及び下降導管20と減圧ハウジング22との気密性を確保する気密構造となっており、図示しないOリングやパッキンなどのシーリング部材が介挿されている。詳細は後述する。
【0056】
ブッシング24は、第三ガラス溶融槽16の底部に設けられている。このブッシング24は、紡糸のための多数(例えば、100〜4000程度)のノズル24aを有している。
【0057】
このブッシング24は、溶融ガラスの加熱のための加熱手段を備えている。この加熱手段は、ブッシング24に設けた図示しない電極部と、この電極部に電流を供給する電源50とを備えている。そして、加熱手段は、この電極部から通電することにより自己発熱させるものである。よって、ブッシング24は通電により発熱する材料で形成されており、例えば白金や白金合金から構成されている。
【0058】
そして、上記した第一ガラス溶融槽12、第二ガラス溶融槽14、第三ガラス溶融槽16、上昇導管18、下降導管20及びブッシング24を加熱する加熱手段のそれぞれは、独立して温度調整可能にしている。
【0059】
ここで、前述したように、減圧ハウジング22は上昇導管18及び下降導管20をも覆っているため、上昇導管18及び下降導管20の下部と減圧ハウジング22との連結が重要である。そこで本実施形態では、
図2に示すように、上昇導管18及び下降導管20の下部と減圧ハウジング22とは、水冷管74を有するフランジ58を介して連結されている。なお、
図2は、導管の下部における導管と減圧ハウジングとの連結の様子を示す図であり、(a)は一部破断正面図であり、(b)は(a)のb−b線断面図である。
【0060】
より詳細には、このフランジ58は、上昇導管18及び下降導管20の下部に一体的に設けられフランジ状に設けられた電極部38及び電極部42を挟み込む上フランジ58aと下フランジ58bとを有している。なお、電極部38と電極部42とは一体となっているが、絶縁体を介在させるなどして、電極部38と電極部42とを電気的に分離してもよい。上フランジ58aは、ボルト等により減圧ハウジング22の下端に接続され、電極部38及び電極部42を上側から挟み込む。下フランジ58bは、上昇導管18及び下降導管20の下端から挿通され、電極部38及び電極部42を下側から挟み込む。これら上フランジ58a及び下フランジ58bは環状の部材で例えばステンレス等の金属から形成されており、内側には断熱材46が配されている。
【0061】
このように、上フランジ58aと下フランジ58bが電極部38及び電極部42を上下から挟み込んだ状態で、これらが一体としてボルト等により連結されている。なお、上フランジ58aと電極部38及び電極部42との間、下フランジ58bと電極部38及び電極部42との間には、気密性及び電気絶縁性を確保するためのパッキン80が設けられている。また、減圧ハウジング22と上フランジ58aとの間には、気密性を確保するためのOリング90が設けられている。このようにして、上昇導管18及び下降導管20の下部と減圧ハウジング22との間は、上フランジ58a及び下フランジ58bにより気密に挟み込まれた電極部38及び電極部42により、気密性が保持されている。
【0062】
ここで、電極部38及び電極部42は、直接通電により加熱されるため、電極部38及び電極部42自体が高温になる。したがって、連結部分での温度は300℃以上になり、Oリング90やパッキン80の耐熱温度以上となるおそれがあることから、気密性を保持できなくなるおそれがある。そこで、上フランジ58aと下フランジ58bには、
図2に示すように、水冷管74が設けられている。本実施形態では、水冷管74は、上フランジ58a及び下フランジ58bの肉部を刳り抜いて形成されている。
【0063】
ただし、水冷は上昇導管18及び下降導管20を冷却し、上昇導管18及び下降導管20を流れる溶融ガラスの温度を低下させることにもつながるため、水冷管74の位置は上昇導管18及び下降導管20からなるべく離したほうがよい。しかしながら、水冷管74の位置を上昇導管18及び下降導管20から離すことにより減圧ハウジング22の大型化にもつながるため、上昇導管18及び下降導管20からの距離が90mm〜200mm程度となるように設計するのがよい。また、水冷管74の断面形状は円形が望ましいが、加工性を考慮すると矩形でもよい。
【0064】
また、水冷管74はOリング90やパッキン80を均一に冷却するために、周状に配置することが望ましい。また、水冷管74はパッキン80直下、直上に設けることにより、効率的に冷却が行なえる。
【0065】
なお、第一ガラス溶融槽12、第二ガラス溶融槽14、第三ガラス溶融槽16、上昇導管18及び下降導管20は、少なくとも内面が白金または白金合金で形成されていると好ましい。上記説明では、通電加熱の観点からこれら第一ガラス溶融槽12、第二ガラス溶融槽14、第三ガラス溶融槽16、上昇導管18、下降導管20が白金または白金合金で形成してもよい旨を説明したが、異物混入防止の観点からは、少なくとも内面を白金または白金合金で形成することで、耐火断熱レンガでこれらを形成する場合に発生し得る、溶融ガラスとの界面劣化による異物の混入を最小限に抑えることができる。
【0066】
次に、上記したガラス溶融装置10を用いたガラス繊維の製造方法について説明する。
【0067】
まず、ガラス溶融装置10の稼動を開始する際は、ガラス繊維を製造するガラス繊維の製造工程に先立って、ガラス繊維の製造準備を行うガラス繊維の製造立上げ工程を行う。
【0068】
このガラス繊維の製造立上げ工程では、まず、第一ガラス溶融槽12、第二ガラス溶融槽14及び第三ガラス溶融槽16に、ガラス粉、溶融ガラス、及びガラス塊などのガラス原料を投入する。ガラス粉は、クレー、ライムストーン、ドロマイト、コレマナイト、シリカサンド、アルミナ、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウムなどの粉状の混合物である。溶融ガラスは、この混合物を投入するに先立ち予め溶融させたものである。ガラス塊は、溶融ガラスを一旦冷却固化させたものである。
【0069】
次に、投入されたガラス原料が溶融するように、第一ガラス溶融槽12、第二ガラス溶融槽14及び第三ガラス溶融槽16を加熱する。なお、この際に上昇導管18及び下降導管20も加熱する。そして、第一ガラス溶融槽12、第二ガラス溶融槽14及び第三ガラス溶融槽16に投入された上記ガラス原料を溶融して、上昇導管18及び下降導管20の下端部を溶融ガラスで塞ぐ。その後、吸引装置48により減圧ハウジング22内の気圧が大気圧に対して0.4〜0.9気圧低くなるように、減圧ハウジング22内を減圧する。すると、この減圧ハウジング22の減圧により、上昇導管18及び下降導管20内の溶融ガラスの液面が上昇し、上昇導管18及び下降導管20内が溶融ガラスで満たされる。
【0070】
さらに、第一ガラス溶融槽12、第二ガラス溶融槽14、第三ガラス溶融槽16、上昇導管18、下降導管20及びブッシング24のそれぞれを独立に加熱して、各領域を規定温度に調節する。それぞれの温度は、例えば、第二ガラス溶融槽14、上昇導管18、第一ガラス溶融槽12、下降導管20、第三ガラス溶融槽16、ブッシング24で1200〜1500℃の範囲で適宜設定する。
【0071】
また、吸引装置48で減圧ハウジング22内のガスを吸引して、減圧ハウジング22内を所定の減圧雰囲気に調節する。減圧ハウジング22内の気圧は、大気圧に対して0.4〜0.9気圧低くする。
【0072】
そして、溶融ガラスをブッシング24のノズル24aから引き出し、第二ガラス溶融槽14から上昇導管18を通して第一ガラス溶融槽12に溶融ガラスを導入し、更に、第一ガラス溶融槽12から下降導管20を通して第三ガラス溶融槽16に溶融ガラスを導入する。なお、ガラス繊維の製造立上げ工程では、ブッシング24のノズル24aから溶融ガラスを引き出すことなく、単にノズル24aから溶融ガラスを垂れ流すだけであってもよい。
【0073】
そして、ガラス溶融装置10が規定の温度及び気圧になると、ガラス繊維の製造立上げ工程を終了し、ガラス繊維の製造工程を開始する。
【0074】
ガラス繊維の製造工程では、第一ガラス溶融槽12、第二ガラス溶融槽14及び第三ガラス溶融槽16の溶融ガラス液面の液位が略一定となるように、ブッシング24から紡糸される溶融ガラスの量分、第二ガラス溶融槽14にガラス原料を投入する。そして、溶融ガラスの温度が1350〜1550℃となるように第二ガラス溶融槽14を加熱して、上記ガラス原料を溶融する。
【0075】
また、吸引装置48により減圧ハウジング22内の気圧が大気圧に対して0.4〜0.9気圧低くなるように、減圧ハウジング22内を減圧した状態にする。
【0076】
さらに、第一ガラス溶融槽12、第二ガラス溶融槽14、第三ガラス溶融槽16、上昇導管18、下降導管20及びブッシング24のそれぞれを独立に加熱する。それぞれの温度は、例えば、第二ガラス溶融槽14で1350〜1550℃、上昇導管18で1300〜1500℃、第一ガラス溶融槽12で1300〜1500℃、下降導管20で1250〜1450℃、第三ガラス溶融槽16で1250〜1450℃、ブッシング24で1200〜1400℃の範囲で適宜設定する。
【0077】
なお、第二ガラス溶融槽14において、ガラス原料を溶融させ、ある程度清澄させることが好ましい。また、第三ガラス溶融槽16における溶融ガラスの温度は、第一ガラス溶融槽12や第二ガラス溶融槽14における溶融ガラスの温度より低くなるように温度制御することが好ましい。このようにすることにより、リボイルによる気泡の発生を抑制することができる。
【0078】
そして、第二ガラス溶融槽14から上昇導管18を通して第一ガラス溶融槽12に溶融ガラスを導入し、第一ガラス溶融槽12において溶融ガラスを減圧雰囲気下に晒して、溶融ガラスの脱泡を行う。その後、第一ガラス溶融槽12から下降導管20を通して第三ガラス溶融槽16に溶融ガラスを導入する。そして、溶融ガラスをブッシング24のノズル24aから図示しない巻取り機により高いテンションで巻き取ることにより、溶融ガラスを紡糸して繊維化する。一のノズル24aからの溶融ガラスの吐出流量は、例えば0.05〜5.0g/分である。
【0079】
このとき、第一ガラス溶融槽12の溶融ガラス液面を、第二ガラス溶融槽14及び第三ガラス溶融槽16の溶融ガラス液面よりも150cm以上高くする。より好ましくは、230〜460cmとし、その中でも、250cm以上が特に好ましい。このようにすることで、第一ガラス溶融槽12の気圧を大気圧と比べて0.4〜0.9気圧程度以上低くすることができる。そして、この程度の減圧雰囲気下にすれば、溶融ガラス中のガスが連続的に既存の気泡内に拡散して泡径が急激に大きくなるため、大きな脱泡効果を得ることができる。
【0080】
また、第一ガラス溶融槽12が晒される減圧雰囲気、すなわち減圧ハウジング22内の気圧と大気圧との圧力差(気圧差)が一定になるように、吸引装置48による吸引量を制御する。このようにすることで、大気圧の微小な変動による溶融ガラスの液面変動を抑えることができる。
【0081】
更に、第二ガラス溶融槽14へのガラス原料の投入量は、第三ガラス溶融槽16の溶融ガラス液面の高さに基づいて、その高さが一定になるように制御する。
【0082】
また、第二ガラス溶融槽14の溶融ガラス液面と第三ガラス溶融槽16の溶融ガラス液面とを足し合わせた面積を、第一ガラス溶融槽12の溶融ガラス液面の面積の10倍以上とする。すなわち、各ガラス溶融槽の溶融ガラス液面の面積は、下記の式(1)を満足するようにする。更に好ましくは、下記の式(2)及び式(3)の少なくとも何れか一方を満たすようにすることが好ましい。
(S2+S3)≧S1×10 …(1)
S2≧S1×10 …(2)
S1×50≧S3/N≧S1×0.5 …(3)
但し、
S1:第一ガラス溶融槽12の溶融ガラス液面の面積(cm
2)
S2:第二ガラス溶融槽14の溶融ガラス液面の面積(cm
2)
S3:第三ガラス溶融槽16の溶融ガラス液面の面積(cm
2)
N:第三ガラス溶融槽16の底部に設けられたブッシング24の数(個)
式(1)を満足すれば、第三ガラス溶融槽16の溶融ガラス液面の液位変動が少なくなるため、第三ガラス溶融槽16の壁面と溶融ガラスの接触面からの抱込み泡の発生を抑制することができ、紡糸するガラス繊維の太さの変動を抑制し、ガラス繊維の番手変動による成形品の強度や電気特性のバラツキを抑えることができる。しかも、第一ガラス溶融槽12を小型化できる。更に、式(2)を満足すれば、第二ガラス溶融槽14で清澄がある程度進み、効率よく溶融ガラスから気泡を除去することができる。更に、式(3)を満足すれば、第三ガラス溶融槽での気泡の発生を抑制でき、ガラス繊維中の気泡の発生を十分に抑制することができる。
【0083】
以上詳述したように、本実施形態のガラス溶融装置10では、上昇導管18及び下降導管20を溶融ガラスで充填させた稼動状態にすると、第二ガラス溶融槽14で溶融された溶融ガラスは、サイフォンの原理により、上昇導管18を上昇して第一ガラス溶融槽12に導入され、下降導管20を下降して第三ガラス溶融槽16に導入され、ブッシング24からガラス繊維が紡糸される。これにより、第二ガラス溶融槽14と第三ガラス溶融槽16との溶融ガラス液面の液位が同レベルになるため、第一ガラス溶融槽12の雰囲気の気圧変動などによって第一ガラス溶融槽12で液位変動が生じても、ブッシング24からガラス繊維が紡糸される第三ガラス溶融槽16の液位変動を抑制することができる。これにより、第三ガラス溶融槽16の壁面と溶融ガラスの接触面からの抱きこみ泡の発生を抑制することができ、紡糸されるガラス繊維中への気泡の混入を効果的に低減することができる。
【0084】
また、ガラス原料は、大気圧雰囲気に晒される第二ガラス溶融槽14に投入することができるため、ブッシング24からガラス繊維が紡糸されることにより変化する溶融ガラスの液位を容易に調整することができる。しかも、第一ガラス溶融槽12を気密にすることができるため、第一ガラス溶融槽12の雰囲気の気圧変動を抑制することができる。これにより、第三ガラス溶融槽16の液位変動を更に抑制することができる。
【0085】
更に、ガラス原料を第二ガラス溶融槽14で溶融し、ある程度清澄させることで、減圧雰囲気に晒される第一ガラス溶融槽12を小さくすることができるため、第一ガラス溶融槽12に液位変動が生じても第三ガラス溶融槽16の液位変動を更に抑制することができる。しかも、ガラス繊維中の気泡を低減するためには、第一ガラス溶融槽12は溶融ガラスを紡糸するブッシング24の近く、すなわち、第三ガラス溶融槽16の近くに配置することが好ましく、第一ガラス溶融槽12を小さくすることで、容易にこれを達成することができる。
【0086】
ところで、第一ガラス溶融槽12を減圧雰囲気下に晒すためには、第一ガラス溶融槽12を第二ガラス溶融槽14及び第三ガラス溶融槽16から所定の高度差を設ける必要があるため、上昇導管18及び下降導管20は必然的に長くなる。一方で、単位時間当たりに紡糸されるガラス重量が極めて小さいため、溶融ガラスが上昇導管18及び下降導管20を通過するのに長時間を要する。このため、上昇導管18及び下降導管20を加熱して減圧ハウジング22で覆うことで、上昇導管18及び下降導管20に導入された溶融ガラスが、温度の低下により固形化するのを防止することができる。しかも、この減圧ハウジング22により、上昇導管18及び下降導管20を一体的に覆うため、減圧ハウジング22の構造を簡略化することができ、上昇導管18及び下降導管20を効率的に加熱保温することができる。
【0087】
更に、加熱手段により、第一ガラス溶融槽12、第二ガラス溶融槽14、第三ガラス溶融槽16、上昇導管18及び下降導管20をそれぞれ独立して加熱することで、各領域で最適な温度条件を与えることができるため、リボイル(再沸騰)による溶融ガラスからの気泡発生を抑制することができる。
【0088】
また、減圧ハウジング22内を減圧することで、減圧による上昇導管18及び下降導管20の座屈が発生し難くなるため、上昇導管18及び下降導管20の壁厚を薄くすることができる。これにより、例えば、白金などの高価な材料により上昇導管18及び下降導管20を製造する場合に、特に低コスト化を図ることができる。
【0089】
また、上昇導管18及び下降導管20の上部壁面と下部壁面とに備えられた電極部38及び電極部42を通電加熱することで、上昇導管18及び下降導管20を全体的に加熱することができる。これにより、上昇導管18及び下降導管20に導入された溶融ガラスの加熱保温を適切に行うことができる。
【0090】
[第2実施形態]
次に、
図3〜
図5を参照して、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態に係るガラス繊維製造用ガラス溶融装置110は、基本的に第1の実施形態に係るガラス繊維製造用ガラス溶融装置10と同じ構成をしている。そして、このガラス繊維製造用ガラス溶融装置110は、上昇導管と下降導管とが1本の2重管で構成されている点と、第一ガラス溶融槽12に仕切板が設けられている点のみ、第1の実施形態に係るガラス繊維製造用ガラス溶融装置10と相違する。このため、以下では、第1の実施形態と相違する点のみ説明し、第1の実施形態と同じ点の説明を省略する。
【0091】
図3は、第2の実施形態に係るガラス繊維製造用ガラス溶融装置の構成を示す断面図である。
図4は、
図3に示すIV−IV線端面図である。
図5は、
図3に示す第一ガラス溶融槽を詳細に示した透視斜視図である。
【0092】
図3に示すように、ガラス繊維製造用ガラス溶融装置110は、第一ガラス溶融槽12と、第二ガラス溶融槽14と、第三ガラス溶融槽16と、上昇導管部52と、下降導管部54と、減圧ハウジング22と、ブッシング24と、を備えている。
【0093】
上昇導管部52は、第二ガラス溶融槽14で溶融された溶融ガラスを上昇させて第一ガラス溶融槽12に送るものであり、第一ガラス溶融槽12から第二ガラス溶融槽14に向けて下方に延びている。
【0094】
下降導管部54は、第一ガラス溶融槽12から溶融ガラスを下降させて第三ガラス溶融槽16に送るものであり、第一ガラス溶融槽12から第三ガラス溶融槽16に向けて下方に延びている。また、下降導管部54の上端は、第一ガラス溶融槽12を貫通しており、第一ガラス溶融槽12内において溶融ガラス液面よりも高い位置まで突出している。
【0095】
そして、
図3及び
図4に示すように、上昇導管部52と下降導管部54とは、上昇導管部52が外側に配置されるとともに下降導管部54が内側に配置される二重管構造を形成しており、一体的に構成されている。上昇導管部52及び下降導管部54は、共に細長い円筒状に形成されている。そして、上昇導管部52及び下降導管部54は、二重管構造の状態で一体的に第一ガラス溶融槽12から下方に延びており、その下端部で、下降導管部54が上昇導管部52の外側に飛び出して、上昇導管部52と下降導管部54とが分離されている。
【0096】
また、上昇導管部52には、その上端部に第一ガラス溶融槽12と連通される流入連通孔60が形成されており、下降導管部54には、その上端部に第一ガラス溶融槽12と連通される流出連通孔62が形成されている。このため、上昇導管部52を上昇した溶融ガラスは、流入連通孔60から第一ガラス溶融槽12に流入し、第一ガラス溶融槽12に導入された溶融ガラスは、流出連通孔62から下降導管部54に流出する。
【0097】
この上昇導管部52及び下降導管部54は、溶融ガラスの加熱のための加熱手段を備えている。この加熱手段は、上昇導管部52の上部壁面及び下部壁面に設けた一対のフランジ状の電極部56と、この電極部56に電流を供給する電源40とを備えている。そして、加熱手段は、この電極部56から通電することにより上昇導管部52を自己発熱させるものである。なお、下降導管部54は、上昇導管部52の自己発熱により加熱された溶融ガラスにより間接的に加熱されると共に、上昇導管部52との接合部分からの通電により自己発熱する。よって、上昇導管部52及び下降導管部54は通電により発熱する材料で形成されており、例えば白金や白金合金から構成されている。なお、電極部56の設置位置は上昇導管部52の上部壁面に換えて、第一ガラス溶融槽12の壁面としてもよい。この場合、第一ガラス溶融槽12の加熱手段の障害にならないように、電極部56は第一ガラス溶融槽12の底面部や側面部下方に設けることが好ましい。
【0098】
図5に示すように、第一ガラス溶融槽12には、仕切板64と、上部仕切板66とが設けられている。
【0099】
仕切板64及び上部仕切板66は、それぞれ第一ガラス溶融槽12内に突出した下降導管部54と第一ガラス溶融槽12の壁面とに結合されており、第一ガラス溶融槽12内を、流入連通孔60が設けられた領域と、流出連通孔62が設けられた領域とに仕切るものである。
【0100】
仕切板64は、上部仕切板66よりも流入連通孔60及び流出連通孔62に近接した位置に配置されており、溶融ガラスの行き来を遮断するものである。このため、仕切板64は、第一ガラス溶融槽12の底面から溶融ガラス液面よりも高い位置まで立設されている。
【0101】
上部仕切板66は、仕切板64よりも流入連通孔60及び流出連通孔62に遠離した位置に配置されており、溶融ガラスの液面付近での通過を遮断して、溶融ガラスの底面付近の通過のみを許可するものである。このため、上部仕切板66は、第一ガラス溶融槽12の底面から溶融ガラス液面よりも高い位置まで立設されており、第一ガラス溶融槽12の底面付近に貫通孔68が形成されている。
【0102】
次に、
図6をも参照して、上記したガラス溶融装置110を用いたガラス繊維の製造方法について説明する。
図6は、第一ガラス溶融槽内における溶融ガラスの流れを示した図である。
【0103】
まず、ガラス繊維の製造立上げ工程において、第一ガラス溶融槽12、第二ガラス溶融槽14及び第三ガラス溶融槽16に、ガラス原料を投入する。そして、第一ガラス溶融槽12、第二ガラス溶融槽14、第三ガラス溶融槽16及び上昇導管部52を加熱してガラス原料を溶融し、この溶融したガラスで上昇導管部52及び下降導管部54の下端部を塞いだ後、吸引装置48により減圧ハウジング22内を減圧して、上昇導管部52及び下降導管部54内の溶融ガラスの液面を上昇させ、上昇導管部52及び下降導管部54内を溶融ガラスで満たす。
【0104】
さらに、第一ガラス溶融槽12、第二ガラス溶融槽14、第三ガラス溶融槽16、上昇導管部52及びブッシング24のそれぞれを独立に加熱して、各領域を規定温度に調節する。それぞれの温度は、上述した第1の実施形態と同様に適宜設定すればよい。
【0105】
また、吸引装置48で減圧ハウジング22内のガスを吸引して、減圧ハウジング22内を所定の減圧雰囲気に調節する。減圧ハウジング22内の気圧は、大気圧に対して0.4〜0.9気圧低くする。
【0106】
そして、この溶融ガラスをブッシング24のノズル24aから引き出し、第二ガラス溶融槽14から上昇導管18を通して第一ガラス溶融槽12に溶融ガラスを導入し、更に、第一ガラス溶融槽12から下降導管20を通して第三ガラス溶融槽16に溶融ガラスを導入する。なお、ガラス繊維の製造立上げ工程では、ブッシング24のノズル24aから溶融ガラスを引き出すことなく、単にノズル24aから溶融ガラスを垂れ流すだけであってもよい。
【0107】
そして、ガラス溶融装置110が規定の温度及び気圧になると、ガラス繊維の製造立上げ工程を終了し、ガラス繊維の製造工程を開始する。
【0108】
ガラス繊維の製造工程では、第1の実施形態と同様に、第二ガラス溶融槽14にガラス原料を投入する。そして、溶融ガラスの温度が1350〜1550℃となるように第二ガラス溶融槽14を加熱して、上記ガラス原料を溶融する。また、吸引装置48で減圧ハウジング22内のガスを吸引して、減圧ハウジング22内の気圧が大気圧に対して0.4〜0.9気圧低くなるように、減圧ハウジング22内を減圧した状態にする。
【0109】
さらに、第一ガラス溶融槽12、第二ガラス溶融槽14、第三ガラス溶融槽16、上昇導管部52、下降導管部54及びブッシング24のそれぞれを独立に加熱する。それぞれの温度は、上述した第1の実施形態と同様に行う。
【0110】
なお、二重管構造に形成された上昇導管部52及び下降導管部54にあっては、上昇導管部52のみを加熱し、下降導管部54は上昇導管部52の加熱により間接的に加熱することで、下降導管部54の温度を上昇導管部52の温度よりも低くすることが容易にできる。これにより、リボイルによる気泡の発生を抑制することができる。
【0111】
そして、第二ガラス溶融槽14から上昇導管部52を通して第一ガラス溶融槽12に溶融ガラスを導入し、第一ガラス溶融槽12において溶融ガラスを減圧雰囲気下に晒して、溶融ガラスの脱泡を行う。
【0112】
ここで、
図6に示すように、溶融ガラスは、流入連通孔60から第一ガラス溶融槽12に流入し、流入連通孔60から遠離した上部仕切板66の貫通孔68を通った後、貫通孔68から遠離した流出連通孔62から下降導管部54に流れて行く。このとき、減圧雰囲気に晒されることにより溶融ガラスから脱泡された気泡は液面に向けて上昇するが、上部仕切板66により溶融ガラスの液面付近での通過が遮断される。このため、溶融ガラスから脱泡された気泡が流出連通孔62から下降導管部54に導出されるのを効果的に抑止することができる。
【0113】
その後、第一ガラス溶融槽12から下降導管部54を通して第三ガラス溶融槽16に溶融ガラスを導入し、溶融ガラスをブッシング24のノズル24aから図示しない巻取り機により高いテンションで巻き取り、溶融ガラスを紡糸して繊維化する。
【0114】
以上詳述したように、本実施形態のガラス溶融装置110によれば、上昇導管部52及び下降導管部54を二重管構造とするため、上昇導管部52を加熱することで、この輻射熱などにより下降導管部54が間接的に加熱される。これにより、上昇導管部52及び下降導管部54の加熱を効率的に行うことができる。しかも、下降導管部54は、導管の内外で圧力差が殆ど無いため、壁厚を薄くすることができる。
【0115】
また、仕切板64及び上部仕切板66を設けることで、流入連通孔60から流入した溶融ガラスは、上部仕切板66に形成された貫通孔68を通過してから流出連通孔62から流出される。このため、上部仕切板66により、溶融ガラスから除かれて浮上している気泡が溶融ガラスの流れに伴って進行するのを阻害することができるため、この気泡が下降導管部54に流れていくのを防止することができる。これにより、紡糸されるガラス繊維中への気泡の混入をより効果的に低減することが可能となる。
【0116】
[第3実施形態]
次に、
図7を参照して、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態に係るガラス繊維製造用ガラス溶融装置210は、基本的に第2の実施形態に係るガラス繊維製造用ガラス溶融装置110と同じ構成をしている。そして、このガラス繊維製造用ガラス溶融装置210は、第一ガラス溶融槽12と、上昇導管部52及び下降導管部54とを覆うハウジングの構成が異なる点のみ、第2の実施形態に係るガラス繊維製造用ガラス溶融装置110と相違する。このため、以下では、第2の実施形態と相違する点のみ説明し、第2の実施形態と同じ点の説明を省略する。
【0117】
図7は、第3の実施形態に係るガラス繊維製造用ガラス溶融装置の構成を示す断面図である。
【0118】
図7に示すように、ガラス繊維製造用ガラス溶融装置210は、第一ガラス溶融槽12と、第二ガラス溶融槽14と、第三ガラス溶融槽16と、上昇導管部52と、下降導管部54と、減圧ハウジング70と、断熱ハウジング72と、ブッシング24と、を備えている。
【0119】
減圧ハウジング70は、第一ガラス溶融槽12を減圧雰囲気に晒すためのものであり、第一ガラス溶融槽12を気密に覆うものである。減圧ハウジング70の材質及び構造は、気密性及び強度を有するものであれば特に限定されず、ステンレス等の金属材料から形成されていると好ましい。
【0120】
この減圧ハウジング70と、第一ガラス溶融槽12との間の空間には、断熱効率を向上させるための断熱材46が収容されている。
【0121】
そして、この減圧ハウジング70の側壁には、吸引装置48に接続された減圧のための吸引口70aが設けられている。
【0122】
断熱ハウジング72は、上昇導管部52及び下降導管部54の下端が突き出た状態で、上昇導管部52及び下降導管部54を一体的に覆うものである。断熱ハウジング72の材質及び構造は、強度を有するものであれば特に限定されず、ステンレス等の金属材料から形成されていると好ましい。
【0123】
この断熱ハウジング72と、上昇導管部52及び下降導管部54との間の空間には、断熱効率を向上させるための断熱材46が収容されている。そして、断熱ハウジング72の下端72aには、断熱材46を支持する支持部材(不図示)が取り付けられており、上昇導管部52及び下降導管部54との間を気密にするための構造は特に設けられていない。また、断熱ハウジング72には、吸引装置も接続されていない。このため、断熱ハウジング72内は、常圧(大気圧)となっている。
【0124】
なお、ガラス繊維製造用ガラス溶融装置210を用いたガラス繊維の製造方法は、第2の実施形態に係るガラス繊維製造用ガラス溶融装置110の場合と同様である。
【0125】
以上詳述したように、本実施形態のガラス溶融装置210によれば、上昇導管部52と下降導管部54とを一体的に構成することで、上昇導管部52及び下降導管部54の壁厚を適宜設定すれば、強度を向上させることができるため、上昇導管部52と下降導管部54の座屈が発生し難くなる。これにより、上昇導管部52及び下降導管部54を覆う断熱ハウジング72内を減圧する必要がなく、断熱ハウジング72内を大気圧とすることができるため、上昇導管部52及び下降導管部54と断熱ハウジング72との厳密なシールが不要となる。これにより、上昇導管部52及び下降導管部54と断熱ハウジング72との熱膨張による伸縮差を吸収する伸縮機構を特別に設ける必要がなくなるため、上昇導管部52及び下降導管部54と断熱ハウジング72との連結部を簡易な構成とすることができる。
【0126】
[第4実施形態]
次に、
図8を参照して、第4の実施形態について説明する。第4の実施形態に係るガラス繊維製造用ガラス溶融装置310は、基本的に第3の実施形態に係るガラス繊維製造用ガラス溶融装置210と同じ構成をしている。そして、このガラス繊維製造用ガラス溶融装置310は、二重管構造の上昇導管部と下降導管部との内外が入れ替わっている点のみ、第3の実施形態に係るガラス繊維製造用ガラス溶融装置210と相違する。このため、以下では、第3の実施形態と相違する点のみ説明し、第3の実施形態と同じ点の説明を省略する。
【0127】
図8は、第4の実施形態に係るガラス繊維製造用ガラス溶融装置の構成を示す断面図である。
【0128】
図8に示すように、ガラス繊維製造用ガラス溶融装置310は、第一ガラス溶融槽12と、第二ガラス溶融槽14と、第三ガラス溶融槽16と、上昇導管部76と、下降導管部78と、減圧ハウジング70と、断熱ハウジング72と、ブッシング24と、を備えている。
【0129】
上昇導管部76は、第二ガラス溶融槽14で溶融された溶融ガラスを上昇させて第一ガラス溶融槽12に送るものであり、第一ガラス溶融槽12から第二ガラス溶融槽14に向けて下方に延びている。また、上昇導管部76の上端は、第一ガラス溶融槽12を貫通しており、第一ガラス溶融槽12内において溶融ガラス液面よりも高い位置まで突出している。
【0130】
下降導管部78は、第一ガラス溶融槽12から溶融ガラスを下降させて第三ガラス溶融槽16に送るものであり、第一ガラス溶融槽12から第三ガラス溶融槽16に向けて下方に延びている。
【0131】
そして、上昇導管部76と下降導管部78とは、上昇導管部76が内側に配置されるとともに下降導管部78が外側に配置される二重管構造を形成しており、一体的に構成されている。上昇導管部76及び下降導管部78は、共に細長い円筒状に形成されている。そして、上昇導管部76及び下降導管部78は、二重管構造の状態で一体的に第一ガラス溶融槽12から下方に延びており、その下端部で、上昇導管部76が下降導管部78の外側に飛び出して、上昇導管部76と下降導管部78とが分離されている。
【0132】
そして、ガラス繊維製造用ガラス溶融装置310を用いてガラス繊維を製造する際は、第3の実施形態と同様に、第二ガラス溶融槽14から上昇導管部76を通して第一ガラス溶融槽12に溶融ガラスを導入し、第一ガラス溶融槽12において溶融ガラスの脱泡を行う。その後、第一ガラス溶融槽12から下降導管部78を通して第三ガラス溶融槽16に溶融ガラスを導入し、ブッシング24のノズル24aから溶融ガラスを図示しない巻取り機により高いテンションで巻き取り、溶融ガラスを紡糸して繊維化する。
【0133】
このように、二重管構造の上昇導管部76と下降導管部78とを内外で入れ替えても、第3の実施形態と同様に、気泡の混入の少ないガラス繊維を製造することができる。
【0134】
[第5実施形態]
次に、
図9及び
図10を参照して、第5の実施形態について説明する。第5の実施形態に係るガラス繊維製造用ガラス溶融装置410は、基本的に第3の実施形態に係るガラス繊維製造用ガラス溶融装置210と同じ構成をしている。そして、このガラス繊維製造用ガラス溶融装置410は、上昇導管部及び下降導管部の構成が異なる点のみ、第3の実施形態に係るガラス繊維製造用ガラス溶融装置210と相違する。このため、以下では、第3の実施形態と相違する点のみ説明し、第3の実施形態と同じ点の説明を省略する。
【0135】
図9は、第5の実施形態に係るガラス繊維製造用ガラス溶融装置の構成を示す断面図である。
図10は、
図9に示すX−X線端面図である。
【0136】
図9に示すように、ガラス繊維製造用ガラス溶融装置410は、第一ガラス溶融槽12と、第二ガラス溶融槽14と、第三ガラス溶融槽16と、上昇導管部82と、下降導管部84と、減圧ハウジング70と、断熱ハウジング72と、ブッシング24と、を備えている。
【0137】
上昇導管部82は、第二ガラス溶融槽14で溶融された溶融ガラスを上昇させて第一ガラス溶融槽12に送るものであり、第一ガラス溶融槽12から第二ガラス溶融槽14に向けて下方に延びる半円筒状に形成されている。また、上昇導管部82の上端は、第一ガラス溶融槽12を貫通しており、第一ガラス溶融槽12内において溶融ガラス液面よりも高い位置まで突出している。
【0138】
下降導管部84は、第一ガラス溶融槽12から溶融ガラスを下降させて第三ガラス溶融槽16に送るものであり、第一ガラス溶融槽12から第三ガラス溶融槽16に向けて下方に延びる半円筒状に形成されている。また、下降導管部84の上端は、第一ガラス溶融槽12を貫通しており、第一ガラス溶融槽12内において溶融ガラス液面よりも高い位置まで突出している。
【0139】
そして、
図9及び
図10に示すように、半円筒状の上昇導管部82と下降導管部84とは、一体的に接合されて内部に間仕切壁の形成された一本の円筒状の導管に形成されている。すなわち、一本の円筒状の導管内に間仕切壁が形成されることにより、上昇導管部82と下降導管部84とが形成されている。なお、上昇導管部82と下降導管部84とにより形成される導管は、半円筒状の導管を接合することにより製作してもよく、円筒状の導管の内側に上昇導管部82と下降導管部84とを分離する間仕切壁を設けることにより製作してもよい。そして、上昇導管部82及び下降導管部84は、接合した状態で一体的に第一ガラス溶融槽12から下方に延びており、その下端部で、上昇導管部82と下降導管部84とが分離されている。
【0140】
また、上昇導管部82には、その上端部に第一ガラス溶融槽12と連通される流入連通孔94が形成されており、下降導管部84には、その上端部に第一ガラス溶融槽12と連通される流出連通孔96が形成されている。このため、上昇導管部82を上昇した溶融ガラスは、流入連通孔94から第一ガラス溶融槽12に流入し、第一ガラス溶融槽12に導入された溶融ガラスは、流出連通孔96から下降導管部84に流出する。
【0141】
この上昇導管部82及び下降導管部84は、溶融ガラスの加熱のための加熱手段を備えている。この加熱手段は、上昇導管部82と下降導管部84とにより一体的に構成される円筒状の導管の上部壁面及び下部壁面に設けた一対のフランジ状の電極部86と、この電極部86に電流を供給する電源88とを備えている。そして、加熱手段は、この電極部86から通電することにより上昇導管部82及び下降導管部84を自己発熱させるものである。よって、上昇導管部82及び下降導管部84は通電により発熱する材料で形成されており、例えば白金や白金合金から構成されている。なお、電極部86の設置位置は上昇導管部82及び下降導管部84の上部壁面に換えて、第一ガラス溶融槽12の壁面としてもよい。この場合、第一ガラス溶融槽12の加熱手段の障害にならないように、電極部86は第一ガラス溶融槽12の底面部や側面部下方に設けることが好ましい。なお、加熱手段は、上昇導管部82と下降導管部84とに独立した電極を設け、これらに独立して通電することにより、上昇導管部82と下降導管部84とを独立して自己発熱させるものとしてもよい。
【0142】
次に、上記したガラス溶融装置410を用いたガラス繊維の製造方法について説明する。
【0143】
まず、第一ガラス溶融槽12、第二ガラス溶融槽14、第三ガラス溶融槽16、上昇導管部82及び下降導管部84を加熱するとともに、吸引装置48により減圧ハウジング22内を減圧して、上昇導管部82及び下降導管部84内を溶融ガラスで満たす。
【0144】
さらに、第一ガラス溶融槽12、第二ガラス溶融槽14、第三ガラス溶融槽16、上昇導管部82、下降導管部84及びブッシング24のそれぞれを独立に加熱して、各領域を規定温度に調節する。それぞれの温度は、第1の実施形態又は第3の実施形態と同様に行えばよい。
【0145】
また、吸引装置48で減圧ハウジング22内のガスを吸引して、減圧ハウジング22内を所定の減圧雰囲気に調節する。減圧ハウジング22内の気圧は、大気圧に対して0.4〜0.9気圧低くする。
【0146】
そして、第二ガラス溶融槽14で溶解された溶融ガラスを、第二ガラス溶融槽14から上昇導管部82を通して上昇させ、流入連通孔94から第一ガラス溶融槽12に導入し、第一ガラス溶融槽12において溶融ガラスの脱泡を行う。その後、溶融ガラスを、流出連通孔96から下降導管部84を通して下降させ、第三ガラス溶融槽16に導入する。そして、ブッシング24のノズル24aから溶融ガラスを図示しない巻取り機により高いテンションで巻き取り、溶融ガラスを紡糸して繊維化する。
【0147】
以上詳述したように、本実施形態のガラス溶融装置410によれば、上昇導管部82と下降導管部84とが一体的に接合されているため、上昇導管部82及び下降導管部84を加熱した場合に、上昇導管部82と下降導管部84が略同一挙動で熱膨張する。このため、上昇導管部82と下降導管部84との熱膨張による伸縮差による不具合を防止することができる。
【0148】
この場合、1本の導管内に間仕切壁を形成して上昇導管部82と下降導管部84とを形成することで、上昇導管部82と下降導管部84を容易に製作することができる。しかも、導管内の間仕切壁によって導管が補強されているので、上昇導管部82及び下降導管部84の壁厚を薄くすることができる。換言すると、上昇導管部82及び下降導管部84の壁厚を適切に設定すれば、断熱ハウジング72内を減圧せずに大気圧としても導管の座屈の発生を抑制することができる。
【0149】
[第6実施形態]
次に、
図11及び
図12を参照して、第6の実施形態について説明する。第6の実施形態に係るガラス繊維製造用ガラス溶融装置510は、基本的に第1の実施形態に係るガラス繊維製造用ガラス溶融装置10と同じ構成をしている。そして、このガラス繊維製造用ガラス溶融装置510は、第一ガラス溶融槽12内に仕切板が設けられている点のみ、第1の実施形態に係るガラス繊維製造用ガラス溶融装置10と相違する。このため、以下では、第1の実施形態と相違する点のみ説明し、第1の実施形態と同じ点の説明を省略する。
【0150】
図11は、第6の実施形態に係るガラス繊維製造用ガラス溶融装置の構成を示す断面図である。
図12は、第一ガラス溶融槽内における溶融ガラスの流れを示した図である。
【0151】
図11に示すように、ガラス繊維製造用ガラス溶融装置510の第一ガラス溶融槽12には、1枚の仕切板98aと、2枚の上部仕切板98bと、3枚の下部仕切板98cとにより構成されている。
【0152】
仕切板98aは、溶融ガラスの行き来を遮断するものである。仕切板98aは、このため、仕切板98aは、上昇導管18と下降導管20との間に配置されている。そして、仕切板98aは、第一ガラス溶融槽12の底面から溶融ガラス液面よりも高い位置まで立設されている。
【0153】
各上部仕切板98bは、溶融ガラスの液面付近での通過を遮断して、溶融ガラスの底面付近の通過のみを許可するものである。各上部仕切板98bは、仕切板98aに連結されるとともに、仕切板98aとの間にそれぞれ上昇導管18と下降導管20とが配置されている。そして、各上部仕切板98bは、第一ガラス溶融槽12の底面から溶融ガラス液面よりも高い位置まで立設されるとともに、第一ガラス溶融槽12の底面付近に貫通孔98dが形成されている。
【0154】
各下部仕切板98cは、第一ガラス溶融槽12の底面付近の通過を遮断して、溶融ガラスの液面付近の通過のみを許可するものである。各下部仕切板98cは、仕切板98a及び一対の上部仕切板98bの間に配置されており、仕切板98aとの間にそれぞれ上昇導管18と下降導管20とが配置されている。このため、上昇導管18及び下降導管20は、仕切板98aで分離されるとともに、仕切板98aと、この仕切板98aに隣接する一対の下部仕切板98cとの間に配置されている。そして、各下部仕切板98cは、第一ガラス溶融槽12の底面から溶融ガラス液面よりも低い位置まで立設されている。
【0155】
そして、
図12に示すように、第一ガラス溶融槽12に上昇導管18から溶融ガラスが流入すると、仕切板98aにより上昇導管18と下降導管20との行き来が遮断されているため、溶融ガラスは、2枚の上部仕切板98bと3枚の下部仕切板98cとを通り抜けて、下降導管20に流出される。すなわち、第一ガラス溶融槽12に上昇導管18から溶融ガラスが流入すると、まず、液面付近の溶融ガラスのみが1番目の下部仕切板98cを乗り越え、次に、第一ガラス溶融槽12の底面付近の溶融ガラスのみが1番目の上部仕切板98bに形成された貫通孔98dを潜り抜け、次に、液面付近の溶融ガラスのみが2番目の下部仕切板98cを乗り越え、次に、第一ガラス溶融槽12の底面付近の溶融ガラスのみが2番目の上部仕切板98bに形成された貫通孔98dを潜り抜け、次に、液面付近の溶融ガラスのみが3番目の下部仕切板98cを乗り越え、その後、第一ガラス溶融槽12から下降導管20に導出される。
【0156】
以上詳述したように、本実施形態のガラス溶融装置510によれば、上部仕切板98bを設けることで、溶融ガラスから除かれて浮上している気泡が溶融ガラスの流れに伴って進行するのを阻害することができるため、この気泡が下降導管20に流れていくのを防止することができる。
【0157】
また、下部仕切板98cを設けることで、溶融ガラスは、下部仕切板98cを乗り越えないと下降導管20に流れて行かないため、第一ガラス溶融槽12において、溶融ガラスから気泡を除くために十分な滞留時間を確保することができる。しかも、溶融ガラスから除かれた気泡が、第一ガラス溶融槽12の底部の早流れに乗って下降導管20に流れていくのを防止することができる。
【0158】
これらの結果、紡糸されるガラス繊維中への気泡の混入をより効果的に低減することが可能となる。
【0159】
本発明に係るガラス繊維製造用ガラス溶融装置において、溶融ガラスの流量は非常に小さいが、第一ガラス溶融槽12も小さくすることが好ましい。各ガラス溶融槽の容積や、各ガラス溶融槽における溶融ガラスの温度を適宜設定したり、第二ガラス溶融槽14でガラス原料を溶融するとともに、必要であれば第一ガラス溶融槽12に上部仕切板98bや下部仕切板98cを設けたりすることで、溶融ガラスの脱泡が効果的に行われるため、第一ガラス溶融槽12の小型化を達成することができる。
【0160】
この場合、溶融ガラスの流量は非常に小さいため、溶融ガラスの流量に対する第一ガラス溶融槽12の中の溶融ガラス液面の面積を、20(m
2・時/トン)〜200(m
2・時/トン)と比較的大きな値になるように装置設計しても、第一ガラス溶融槽12を十分に小型化することができる。
【0161】
[第7実施形態]
次に、
図13及び
図14を参照して、第7の実施形態について説明する。第7の実施形態に係るガラス繊維製造用ガラス溶融装置610は、基本的に第1の実施形態に係るガラス繊維製造用ガラス溶融装置10と同じ構成をしている。このため、以下では、第1の実施形態と相違する点のみ説明し、第1の実施形態と同じ点の説明を省略する。
【0162】
図13は、第7の実施形態に係るガラス繊維製造用ガラス溶融装置の構成を示す断面図である。
図14は、導管の下部における導管と減圧ハウジングとの連結の様子を示す図であり、(a)は一部破断正面図であり、(b)は(a)のb−b線断面図である。
図13及び
図14に示すように、ガラス繊維製造用ガラス溶融装置610は、第一ガラス溶融槽12と、第二ガラス溶融槽14と、第三ガラス溶融槽16と、上昇導管618と、下降導管620と、減圧ハウジング22と、ブッシング24と、を備えている。
【0163】
上昇導管618は、第1の実施形態と同様に、第二ガラス溶融槽14で溶融された溶融ガラスを上昇させて第一ガラス溶融槽12に送るものであり、第一ガラス溶融槽12から第二ガラス溶融槽14に向けて下方に延びる細長い円筒状に形成されている。
【0164】
下降導管620は、第1の実施形態と同様に、第一ガラス溶融槽12から溶融ガラスを下降させて第三ガラス溶融槽16に送るものであり、第一ガラス溶融槽12から第三ガラス溶融槽16に向けて下方に延びる細長い円筒状に形成されている。
【0165】
そして、上昇導管618及び下降導管620の下端部に、上昇導管618及び下降導管620から分岐する導管分岐部622が形成されている。
【0166】
この導管分岐部622は、減圧ハウジング22の下端部付近において、上昇導管618及び下降導管620の下端部から上昇導管618及び下降導管620を覆うように折り返されている。そして、導管分岐部622は、上昇導管618及び下降導管620から所定距離離間するとともに上昇導管618及び下降導管620に沿って鉛直方向上方に向けて延びる円筒状に形成されている。このため、上昇導管618と導管分岐部622とにより二重管が形成されている。そして、導管分岐部622の先端が、上昇導管618及び下降導管620と水冷管74との間において、上フランジ58aと下フランジ58bとで挟み込まれる電極部38(42)に接続されている。このため、電極部38(42)と上昇導管618及び下降導管620とが所定距離離間する。このようにして、上昇導管618及び下降導管620の下部と減圧ハウジング22との間は、導管分岐部622と上フランジ58a及び下フランジ58bにより気密に挟み込まれた電極部38(42)とにより、気密性が保持されている。このため、吸引装置48による吸引により、上昇導管618及び下降導管620と導管分岐部622との間も減圧雰囲気となる。そして、導管分岐部622は、上昇導管618及び下降導管620と同様に、通電により発熱する材料で形成されており、例えば白金や白金合金から構成されている。このため、上昇導管618及び下降導管620への通電は、電極部38(42)から導管分岐部622を介して行われる。
【0167】
そして、減圧ハウジング22と上昇導管618及び下降導管620との間に収容される断熱材46は、上昇導管618及び下降導管620と導管分岐部622との間にも収容されている。このため、電極部38(42)と上昇導管618及び下降導管620との間に形成される空間に断熱材46が配置される。これにより、上フランジ58a及び下フランジ58bに設けられる水冷管74による冷却作用が、上昇導管618及び下降導管620に及ぼす影響を小さくすることができる。
【0168】
また、下フランジ58bには、導管分岐部622を覆うハウジング624が連結されており、このハウジング624と導管分岐部622との間にも、断熱材46が収容されている。これにより、導管分岐部622の加熱効率を向上させることができる。なお、導管分岐部622とハウジング624との間の領域と、導管分岐部622と上昇導管618及び下降導管620との間の領域とは、導管分岐部622により分断されているため、吸引装置48で吸引しても、導管分岐部622とハウジング624との間の領域は、減圧雰囲気とならない。
【0169】
図15は、一対の電極部に挟まれる上昇導管及び下降導管の温度分布を示している。なお、
図15において、上昇導管618及び下降導管620は、便宜上、一直線状に延ばして図示している。
図15に示すように、一対の電極部38(42)から通電加熱されると、上昇導管618及び下降導管620の中央部分では、温度勾配が小さく設定温度に昇温されるが、電極部38(42)との接続部付近は、大きな温度勾配により端部に向かうほど温度が低下する。ここで、下降導管620における第一ガラス溶融槽12側に配置された電極部42との接続部付近では、第二ガラス溶融槽14及び第一ガラス溶融槽12から導入された溶融ガラスの持込熱量により、上昇導管618及び下降導管620の過冷却を防止することができる。しかしながら、上昇導管618における第一ガラス溶融槽12側に配置された電極部38との接続部付近、及び、下降導管620における第三ガラス溶融槽16側に配置された電極部42との接続部付近では、このような持込熱量が少ないため、設定温度未満になって過冷却される可能性がある。そこで、上昇導管618及び下降導管620の下端部から分岐された導管分岐部622の先端に電極部38(42)を接続することで、電極部38(42)との接続部と上昇導管618及び下降導管620との間に所定距離をおくことができるため、上昇導管618及び下降導管620の下端部も安定した設定温度に昇温させることができる。これにより、上昇導管618及び下降導管620に導入された溶融ガラスを適切に昇温させることができる。なお、上昇導管618及び下降導管620における溶融ガラスの加熱領域を確保する観点から、上昇導管618及び下降導管620から導管分岐部622が分岐する位置をできるだけ下方に配置することが好ましい。
【0170】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0171】
例えば、上記第1〜7の実施形態を種々組み合わせることができる。具体的には、第4の実施形態や第5の実施形態に示す導管部を備え、第2の実施形態に示す断熱ハウジングを採用することもできる。また、第6の実施形態に示す第一ガラス溶融槽中の仕切板を備え、第2〜第5の実施形態に示す導管を備えることもできる。また、第7の実施形態に示す導管分岐部の構造を、第2〜第6の実施形態に示す導管に備えることもできる。
【0172】
更に、例えば、上記実施形態において、吸引装置は1つであるものとして説明したが、第一ガラス溶融槽を減圧するための吸引装置と、導管を減圧するための吸引装置とを別個に設けてもよい。
【0173】
また、上記実施形態において、一体化される上昇導管及び下降導管は、ハウジング内において分離されるものとして説明したが、ハウジング外において分離されるものとしてもよい。
【0174】
また、上記第7の実施形態において、導管分岐部は、上昇導管と下降導管の双方から分岐して形成されるものとして説明したが、上層導管及び下降導管の何れか一方のみから分岐して形成されるものとしてもよい。