(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、清澄剤を添加することは環境問題やコスト面から好ましくなく、また特許文献1のように溶融炉の流出口にバルブを装着するものでは、気泡の混入を効果的に低減することはできなかった。
【0008】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、紡糸されるガラス繊維中への気泡の混入を効果的に低減することが可能なガラス繊維製造用ガラス溶融装置及びこれを用いたガラス繊維の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のガラス繊維製造用ガラス溶融装置は、第1のガラス溶融槽と、第1のガラス溶融槽から下方に延びる導管と、第1のガラス溶融槽を減圧雰囲気に晒すための第1の吸引装置と、導管の下方に設けられ大気圧雰囲気に晒される第2のガラス溶融槽と、第2のガラス溶融槽の底部に設けられ多数のノズルを有するブッシングと、を備えることを特徴とする。
【0010】
このガラス溶融装置では、第1のガラス溶融槽において減圧雰囲気下でガラスを溶融することで、溶融ガラスから気泡を除くことができる。したがって、紡糸されるガラス繊維中への気泡の混入を効果的に低減することが可能となる。
【0011】
第1のガラス溶融槽、導管、第2のガラス溶融槽、及びブッシングのそれぞれは、独立して温度調整可能な加熱手段を備えると好ましい。このようにすれば、第1のガラス溶融槽、導管、第2のガラス溶融槽、及びブッシングをそれぞれ独立して温度調整することで、各領域で最適な温度条件を与えることができ、リボイルによる気泡発生を抑制することができる。
【0012】
導管の上部または第1の溶融槽と、導管の下部には、それぞれ電極部が設けられ、導管は通電加熱されると好ましい。ガラス繊維の製造においては、単位時間当たりに紡糸されるガラス重量が小さく、持込熱量が少ないため導管の途中で溶融ガラスが冷却され固まるおそれがある。そのため、電極部を介して導管自体を通電加熱することで、溶融ガラスの冷却を抑えることができる。
【0013】
導管の下部には、導管から分岐して上方に向けて延びる導管分岐部が形成されており、導管の上部または第1の溶融槽と、導管分岐部には、それぞれ電極部が設けられ、導管及び導管分岐部は通電加熱されることが好ましい。このように、導管の下端部から分岐された導管分岐部に電極部を設けることで、電極部との接続部と導管との間に所定距離をおくことができるため、導管の下端部も安定した設定温度に昇温させることができる。これにより、導管に導入された溶融ガラスを適切に昇温させることができる。
【0014】
第1のガラス溶融槽及び導管は、第1の吸引装置により減圧される減圧ハウジングによって覆われていると好ましい。このようにすれば、第1のガラス溶融槽の減圧制御が容易になる。また、導管をも減圧ハウジングによって覆うことで、減圧による導管の座屈が発生し難くなるため、導管の肉厚を薄くすることができる。このことは、白金などの高価な材料により導管を製造する場合に特に有効である。
【0015】
導管の下部と減圧ハウジングとは、水冷管を有するフランジを介して連結されていると好ましい。導管と減圧ハウジングとは、Oリング等のパッキンを用いて密閉すると好ましいが、この場合、導管と減圧ハウジングとの連結部の温度を、パッキンの耐熱温度以下に制御する必要がある。しかしながら、導管は高温になるため、このように水冷管を有するフランジを介して連結することで、パッキンを用いて密閉することが可能となる。
【0016】
第1のガラス溶融槽、導管、及び第2のガラス溶融槽は、少なくとも内面が白金または白金合金で形成されていると好ましい。耐火物レンガでこれらを形成した場合、溶融ガラスとの界面劣化により異物が混入するおそれがあるが、少なくとも内面を白金または白金合金で形成することで、異物の混入を最小限に抑えることができる。
【0017】
また、導管ばかりでなく、第1のガラス溶融槽、及び第2のガラス溶融槽も通電加熱することができる。
【0018】
第2のガラス溶融槽の下部には、ブッシングが複数設けられていると好ましい。このようにすることで、生産性を向上させることができ、しかも一つのブッシングで不具合が生じても、他のブッシングを介して紡糸を続けることで、安定したガラス繊維の製造が可能になる。
【0019】
多数のノズルを有するブッシングが底部に設けられており大気圧雰囲気に晒される第3のガラス溶融槽と、第2のガラス溶融槽と第3のガラス溶融槽とを連通させる連通管と、を備えると好ましい。このようにすれば、第2のガラス溶融槽と第3のガラス溶融槽とでそれぞれ紡糸をしていて、第2のガラス溶融槽や第3のガラス溶融槽で不具合が生じても、不具合が生じた溶融槽の下部のブッシングの温度を制御し、当該ブッシングから紡糸されないようにすることで、不具合が発生した以外の溶融槽の下部のブッシングから紡糸を続けることができ、安定したガラス繊維の製造が可能になる。
【0020】
本発明のガラス繊維の製造方法は、上記したガラス繊維製造用ガラス溶融装置を用いたガラス繊維の製造方法である。この方法では、第1のガラス溶融槽に溶融ガラス、ガラス塊、またはガラス原料を投入し、減圧雰囲気下で第1のガラス溶融槽を加熱して溶融ガラス、ガラス塊、またはガラス原料を溶融し、さらに導管、第2のガラス溶融槽、及びブッシングのそれぞれを加熱して溶融したガラスを第2のガラス溶融槽に導入し、ブッシングのノズルから溶融したガラスを紡糸してガラス繊維を製造することを特徴とする。
【0021】
このガラス繊維の製造方法では、第1のガラス溶融槽において減圧雰囲気下でガラスを溶融することで、ガラスから気泡を除くことができる。したがって、紡糸されるガラス繊維中への気泡の混入を効果的に低減することが可能となる。
【0022】
第1のガラス溶融槽の溶融ガラス液面を、第2のガラス溶融槽の溶融ガラス液面よりも150cm以上高くすると好ましい。この程度の高さにすれば、第1のガラス溶融槽の溶融ガラス液面を大気圧と比べて0.4気圧程度以上低くすることができる。この程度の減圧雰囲気下にすれば、溶融ガラス中のガスが連続的に既存の気泡内に拡散して泡径が急激に大きくなることで、大きな脱泡効果を得ることができる。
【0023】
換言すれば、第1のガラス溶融槽の溶融ガラス液面を大気圧と比べて0.4〜0.9気圧程度低くなるように、導管の長さや第1のガラス溶融槽の溶融ガラスの深さを適宜設定すれば、大きな脱泡効果を得ることができる。
【0024】
第1のガラス溶融槽が晒される減圧雰囲気の気圧と大気圧との圧力差が一定になるように、第1の吸引装置による吸引量を制御すると好ましい。このように、大気圧との圧力差が一定になるように制御することで、大気圧の微小な変動による溶融ガラスの液面変動を抑えることができる。
【0025】
第2のガラス溶融槽の溶融ガラス液面の高さに基づいて、第1のガラス溶融槽への溶融ガラス、ガラス塊、またはガラス原料の投入量を制御すると好ましい。また、第2のガラス溶融槽の溶融ガラス液面の面積は、第1のガラス溶融槽の溶融ガラス液面の面積以上とすることを特徴としてもよい。このようにすれば、第2のガラス溶融槽の液位の変動を少なくすることができ、第2のガラス溶融槽の壁面と溶融ガラスの接触面からの抱込み泡の発生を抑制することができる。また、紡糸するガラス繊維の太さの変動を抑制し、ガラス繊維の番手変動による成形品の強度や電気特性のバラツキを抑えることができる。
【0026】
ところで、上記ガラス繊維製造用ガラス溶融槽の場合、ガラス繊維の製造においては単位時間当たりに紡糸されるガラス重量が小さいため、導管を加熱しないと溶融したガラスが導管内で冷却されて固化してしまう。このため、ガラス繊維製造用ガラス溶融装置の立ち上げ時に導管を加熱するが、この加熱時の温度上昇により、導管及びこの導管を覆う減圧ハウジングは長手方向に膨張する。しかしながら、導管と減圧ハウジングとの間では、大きな温度差が発生するとともに熱膨張係数も異なることから、熱膨張による伸び量が大きく異なってしまう。このため、その伸縮量の相違により導管及び減圧ハウジングが破損する可能性が大きい。
【0027】
そこで、本発明は、更に、導管の加熱に起因する導管及び減圧ハウジングの破損を防止することができるガラス繊維製造用ガラス溶融装置及びこれを用いたガラス繊維の製造方法を提供することを目的とする。
【0028】
すなわち、本発明に係るガラス繊維製造用ガラス溶融装置は、第1のガラス溶融槽及び導管を覆って第1の吸引装置により減圧される減圧ハウジングと、第1のガラス溶融槽、導管、第2のガラス溶融槽、ブッシングをそれぞれ加熱する加熱装置と、を更に備え、減圧ハウジングには、伸縮可能な伸縮ハウジング部が設けられていることを特徴とする。
【0029】
本発明に係るガラス繊維製造用ガラス溶融装置では、第1のガラス溶融槽において減圧雰囲気下でガラスを溶融することで、溶融ガラスから気泡を除くことができるため、紡糸されるガラス繊維中への気泡の混入を効果的に低減することが可能となる。そして、導管の加熱により昇温された導管及び減圧ハウジングは、熱膨張係数の違いや温度の違いによりその伸縮量が異なるが、伸縮ハウジング部により減圧ハウジングを伸縮させることにより、両者の長さを一致させることができる。これにより、昇温による伸縮量の違いにより導管及び減圧ハウジングに与える負荷を軽減することができるため、導管及び減圧ハウジングの破損を防止することができる。
【0030】
この場合、減圧ハウジングには断熱材が収容されており、断熱材の少なくとも一部は、弾性を有する弾性断熱材であることが好ましい。このように構成することで、導管及び減圧ハウジングの熱膨張に伴い弾性断熱材が膨張するため、断熱材の隙間の発生による断熱効率の低下を抑制することができる。
【0031】
そして、減圧ハウジングには、断熱材を仕切る仕切部材が設けられていることが好ましい。このように構成することで、仕切部材の上部に配置された断熱材が仕切部材に支持されるため、減圧ハウジングに設けられた伸縮ハウジング部に作用する荷重を軽減することができる。しかも、導管及び減圧ハウジングの熱膨張により生じる断熱材の隙間の位置が特定されるため、弾性断熱材を適切な位置に挿入することができる。
【0032】
また、弾性断熱材は、仕切部材の付近に収容されていることが好ましい。導管及び減圧ハウジングが熱膨張すると、仕切部材により仕切られた断熱材の間に隙間が生じるため、この仕切部材の付近に弾性断熱材を収容することで、断熱材の隙間を適切に埋めることができる。
【0033】
そして、減圧ハウジングには、減圧ハウジング内に断熱材を挿入するための断熱材挿入口が形成されていることが好ましい。このように構成することで、導管及び減圧ハウジングの熱膨張により断熱材の隙間が生じたとしても、外部から減圧ハウジング内に断熱材を挿入することができるため、断熱効率の低下を抑制することができる。
【0034】
また、導管には、屈曲または湾曲されて導管を伸縮させる伸縮導管部が形成されていることが好ましい。このように構成することで、導管と導管ハウジングにおける導管を覆う部分(導管ハウジング部)の長さのズレが矯正されるため、導管と導管ハウジングの長さを一致させることができる。
【0035】
本発明に係るガラス繊維の製造方法は、上記したガラス繊維製造用ガラス溶融装置を用いたガラス繊維の製造方法であって、ガラス繊維の製造立上げ段階として、溶融ガラス、ガラス魂、またはガラス原料を第1のガラス溶融槽及び第2のガラス溶融槽の少なくとも一方に投入する段階(1)と、第1のガラス溶融槽及び第2のガラス溶融槽の少なくとも一方を加熱して、溶融ガラス、ガラス魂、またはガラス原料を溶融し、導管の下端部を溶融したガラスで塞ぐ段階(2)と、次いで、第1のガラス溶融槽を減圧雰囲気に晒す段階(3)と、第1のガラス溶融槽、導管、第2のガラス溶融槽、ブッシングを加熱し、ブッシングのノズルから溶融したガラスを紡糸する段階(4)と、を含み、ガラス繊維の製造立上げ段階に、導管の熱膨張量と減圧ハウジングの熱膨張量との関係に基づいて伸縮ハウジングの伸長量を調整することを特徴とする。
【0036】
ここで、導管の下端部を溶融したガラスで塞ぐ段階(2)を効率的に行うためには、段階(1)において、溶融ガラス、ガラス魂、またはガラス原料を第2のガラス溶融槽に投入し、段階(2)において、第2のガラス溶融槽を加熱することが好ましい。さらに、ガラス繊維の製造立上げ段階の作業を効率的に行うために、段階(1)において、第1のガラス溶融槽にも、溶融ガラス、ガラス魂、またはガラス原料を、導管へ多量に流出しない程度に投入し、段階(2)において、第1の溶融槽も加熱することが好ましく、さらに、段階(2)において、導管も加熱することが最も好ましい。
【0037】
本発明に係るガラス繊維の製造方法では、ガラス繊維の製造立上げ段階として、溶融したガラスで導管の下端部を塞ぐことで、第1のガラス溶融槽が密閉されるため、第1ガラス溶融槽を減圧雰囲気に晒すことができる。そして、第1のガラス溶融槽において減圧雰囲気下でガラスを溶融することで、溶融ガラスから気泡を除くことができるため、紡糸されるガラス繊維中への気泡の混入を効果的に低減することが可能となる。そして、導管の加熱により昇温された導管及び減圧ハウジングは、熱膨張係数の違いや温度の違いによりその伸縮量が異なるが、伸縮ハウジング部により減圧ハウジングを伸縮させることにより、両者の長さを一致させることができる。これにより、昇温による伸縮量の違いにより導管及び減圧ハウジングに与える負荷を軽減することができるため、導管及び減圧ハウジングの破損を防止することができる。
【0038】
この場合、導管及び減圧ハウジングの昇温に伴い、減圧ハウジング内に断熱材を挿入することが好ましい。導管及び減圧ハウジングが昇温すると導管及び減圧ハウジングが熱膨張して断熱材に隙間が生ずるが、外部から減圧ハウジング内に断熱材を挿入することで、断熱効率の低下を抑制することができる。
【0039】
ところで、ガラス溶融槽において溶融ガラスの液位が変動すると、ガラス溶融槽の壁面と溶融ガラスの接触面からの抱込み泡が発生することが多い。しかしながら、上記ガラス繊維製造用ガラス溶融装置では、第1のガラス溶融槽の圧力変動により第1のガラス溶融槽における溶融ガラスの液位が変動するため、固形原料を第1のガラス溶融槽に投入する際に、如何にして第1のガラス溶融槽の気圧変動を抑制するかが重要な問題となる。
【0040】
そこで、本発明は、更に、固形原料を第1のガラス溶融槽に投入する際に、第1のガラス溶融槽の圧力変動を抑えることができるガラス繊維製造用ガラス溶融装置及びこれを用いたガラス繊維の製造方法を提供することを目的とする。
【0041】
すなわち、本発明に係るガラス繊維製造用ガラス溶融装置は、第1のガラス溶融槽及び導管を覆って第1の吸引装置により減圧される減圧ハウジングと、減圧ハウジングに連結されて第1のガラス溶融槽に投入する固形原料が収容され、固形原料の入口側に設けられた第1の開閉機構と、固形原料の出口側に設けられた第2の開閉機構と、が設けられた投入容器と、投入容器内を減圧する第2の吸引装置と、を更に備えることを特徴とする。
【0042】
本発明に係るガラス繊維製造用ガラス溶融装置では、第1のガラス溶融槽において減圧雰囲気下で固形原料を溶融することで、溶融ガラスから気泡を除くことができるため、紡糸されるガラス繊維中への気泡の混入を効果的に低減することが可能となる。そして、第2の開閉機構を閉めた状態で投入容器に固形原料を投入し、第1の開閉機構及び第2の開閉機構を閉じた状態で投入容器内を減圧し、次いで第2の開閉機構のみを開けて固形原料を第1のガラス溶融槽に投入することで、第1のガラス溶融槽を大気圧に晒すことなく固形原料を第1のガラス溶融槽に投入することができるため、第1のガラス溶融槽の圧力変動を抑えることができる。これにより、第1のガラス溶融槽における溶融ガラスの液位変動が抑えられるため、第1のガラス溶融槽の壁面と溶融ガラスの接触面からの抱込み泡の発生を抑制することができる。なお、第1のガラス溶融槽における溶融ガラスの液位変動が抑えられるため、第2のガラス溶融槽における溶融ガラスの液位変動も抑えられ、第2のガラス溶融槽の壁面と溶融ガラスの接触面からの抱込み泡の発生を抑制することができる。これにより、紡糸するガラス繊維の太さの変動を抑制し、ガラス繊維の番手変動による成形品の強度や電気特性のばらつきを抑えることができる。
【0043】
この場合、第1のガラス溶融槽には、投入容器から固形原料が投入される位置に配置されて開口が形成された溶融槽内容器が設けられていることが好ましい。固形原料を直接第1のガラス溶融槽に投入すると、第1のガラス溶融槽の底部の早流れにより、溶融ガラスから気泡を除くための十分な滞留時間が確保できないおそれがあるが、このように構成することで、投入容器から投入された固形原料は、溶融槽内容器において溶融された後に、開口から流出して第1のガラス溶融槽から導管に流れていく。これにより、第1のガラス溶融槽内において、溶融ガラスから気泡を除くための十分な滞留時間を確保することができるため、紡糸されるガラス繊維中への気泡の混入をより効果的に低減することが可能となる。
【0044】
そして、第1のガラス溶融槽には、溶融ガラスの上部を仕切る上部仕切板が設けられていることが好ましい。このように構成することで、溶融ガラスから除かれた気泡が溶融ガラスの流れに伴って進行するのを上部仕切板により阻害することができるため、この気泡が導管に流れていくのを防止することができる。これにより、紡糸されるガラス繊維中への気泡の混入をより効果的に低減することが可能となる。
【0045】
また、第1のガラス溶融槽には、溶融ガラスの下部を仕切る下部仕切板が設けられていることが好ましい。このように構成することで、第1のガラス溶融槽において溶融された溶融ガラスは、下部仕切板を乗り越えた後に導管に流れていくため、溶融ガラスから気泡を除くために十分な滞留時間を確保することができるとともに、溶融ガラスから除かれた気泡が、第1のガラス溶融槽の底部の早流れに乗って導管に流れていくのを防止することができる。これにより、紡糸されるガラス繊維中への気泡の混入をより効果的に低減することが可能となる。しかも、完全に溶融していない固形原料は、下部仕切板により進行を阻害されるため、この固形原料が導管に流れていくのを防止することができる。
【0046】
なお、第1の溶融槽には、上記の上部仕切板及び下部仕切板の少なくとも一方が設けられていることが好ましいが、上部仕切板及び下部仕切板の両方ともが設けられていることがより好ましい。
【0047】
なお、第1の吸引装置と第2の吸引装置とは同一としてもよい。このように構成することで、第1のガラス溶融槽の気圧と投入容器内の気圧とを容易に一致させることができる。しかも、一つの吸引装置で第1のガラス溶融槽と投入容器との双方を減圧させることができるため、コストを低減することができる。
【0048】
本発明に係るガラス繊維の製造方法は、上記したガラス繊維製造用ガラス溶融装置を用いたガラス繊維の製造方法であって、第2の開閉機構を閉めた状態で第1の開閉機構を開けて投入容器に固形原料を投入し、第1の開閉機構を閉じて第2の吸引装置により投入容器内を減圧した状態で、第2の開閉機構を開けて、第1のガラス溶融槽に固形原料を投入し、減圧雰囲気下で第1のガラス槽を加熱して固形原料を溶融し、導管、第2のガラス溶融槽、及びブッシングのそれぞれを加熱して溶融した溶融ガラスを第2のガラス溶融槽に投入し、ブッシングのノズルから溶融ガラスを紡糸してガラス繊維を製造することを特徴とする。
【0049】
本発明に係るガラス繊維の製造方法では、第1のガラス溶融槽において減圧雰囲気下で固形原料を溶融することで、溶融ガラスから気泡を除くことができるため、紡糸されるガラス繊維中への気泡の混入を効果的に低減することが可能となる。そして、第2の開閉機構を閉めた状態で投入容器に固形原料を投入し、第1の開閉機構及び第2の開閉機構を閉じた状態で投入容器内を減圧し、第2の開閉機構のみを開けて固形原料を第1のガラス溶融槽に投入することで、第1のガラス溶融槽を大気圧に晒すことなく固形原料を第1のガラス溶融槽に投入することができるため、第1のガラス溶融槽の圧力変動を抑えることができる。これにより、第1のガラス溶融槽における溶融ガラスの液位変動が抑えられるため、第1のガラス溶融槽の壁面と溶融ガラスの接触面からの抱込み泡の発生を抑制することができる。なお、第1のガラス溶融槽における溶融ガラスの液位変動が抑えられるため、第2のガラス溶融槽における溶融ガラスの液位変動も抑えられ、第2のガラス溶融槽の壁面と溶融ガラスの接触面からの抱込み泡の発生を抑制することができる。これにより、紡糸するガラス繊維の太さの変動を抑制し、ガラス繊維の番手変動による成形品の強度や電気特性のばらつきを抑えることができる。
【発明の効果】
【0050】
本発明によれば、紡糸されるガラス繊維中への気泡の混入を効果的に低減することが可能なガラス繊維製造用ガラス溶融装置及びこれを用いたガラス繊維の製造方法を提供することができる。
【0051】
また、本発明によれば、導管の加熱に起因する導管及び減圧ハウジングの破損を防止することができる。
【0052】
また、本発明によれば、固形原料を第1のガラス溶融槽に投入する際に、第1のガラス溶融槽の圧力変動を抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0055】
[第1実施形態]
図1は、第1の実施形態に係るガラス繊維製造用ガラス溶融装置の構成を示す断面図である。
図2は、減圧ハウジングを取り除いた状態のガラス繊維製造用ガラス溶融装置の構成を模式的に示す斜視図である。
図1及び
図2に示すように、第1の実施形態に係るガラス繊維製造用ガラス溶融装置(以下、「ガラス溶融装置」ともいう。)100は、第1のガラス溶融槽12と、導管14と、減圧ハウジング16と、吸引装置18と、第2のガラス溶融槽20と、ブッシング22と、を備えている。
【0056】
第1のガラス溶融槽12は、投入された溶融ガラス、ガラス塊、またはガラス原料を受け入れて溶融するものであり、上方が開口している。
【0057】
この第1のガラス溶融槽12は、溶融ガラス、ガラス塊、ガラス原料の溶融のための図示しない加熱手段を備えている。この加熱手段としては、例えばバーナや電気ヒータであってもよく、あるいは槽に接続した電極から通電して槽を自己発熱させるものであってもよい。自己発熱させる場合は、槽は通電により発熱する材料で少なくとも内壁が形成されていると好ましく、例えば白金や白金合金から構成されていると好ましい。
【0058】
導管14は、第1のガラス溶融槽12から下方に延びており、第1のガラス溶融槽12で溶融されたガラスを第2のガラス溶融槽20に送る。この導管14は、溶融ガラスの加熱のための加熱手段30を備えている。この加熱手段30は、導管14の上部及び下部に設けたフランジ状の電極部32から通電して自己発熱させるものである。よって、導管14は通電により発熱する材料で形成されており、例えば白金や白金合金から構成されている。なお、電極部32の設置位置は導管14の上部に換えて、第1の溶融槽の壁面としてもよい。この場合、第1の溶融槽の加熱手段の障害にならないように、電極部32は第1の溶融槽の底面部や側面部下方に設けることが好ましい。
【0059】
減圧ハウジング16は、導管14の下端が突き出た状態で、第1のガラス溶融槽12及び導管14を気密に覆っている。減圧ハウジング16の材質及び構造は、気密性及び強度を有するものであれば特に限定されず、ステンレス等の金属材料から形成されていると好ましい。
【0060】
この減圧ハウジング16の上壁には、溶融ガラス、ガラス塊、またはガラス原料を導入する導入口16aが設けられている。導入口16aは開閉可能な構造を備えている。また、減圧ハウジング16の側壁には、吸引装置18に接続された減圧のための吸引口16bが設けられている。なお、減圧ハウジング16と第1のガラス溶融槽12及び導管14との間の空間には、断熱材24が設けられていると断熱効率の向上のため好ましい。
【0061】
吸引装置18は、減圧ハウジング16内のガスを真空ポンプにより吸引して減圧ハウジング16内を減圧雰囲気にする。
【0062】
第2のガラス溶融槽20は、導管14の下方に設けられ、導管14から供給される溶融ガラスを受け入れて溶融する。この第2のガラス溶融槽20は、上方が開口しており、大気圧雰囲気に晒されている。この第2のガラス溶融槽20は、溶融ガラスを加熱するための図示しない加熱手段を備えている。この加熱手段としては、例えばバーナや電気ヒータであってもよく、あるいは槽に接続した電極から通電して槽を自己発熱させるものであってもよい。自己発熱させる場合は、槽は通電により発熱する材料で少なくとも内壁が形成されていると好ましく、例えば白金や白金合金から構成されていると好ましい。
【0063】
ブッシング22は、第2のガラス溶融槽20の底部に設けられている。このブッシング22は、紡糸のための多数(例えば、100〜4000程度)のノズル22aを有している。このブッシング22は、溶融ガラスの加熱のための加熱手段を備えている。この加熱手段は、ブッシング22に設けた図示しない電極から通電して自己発熱させるものである。よって、ブッシング22は通電により発熱する材料で形成されており、例えば白金や白金合金から構成されている。
【0064】
上記した第1のガラス溶融槽12、導管14、第2のガラス溶融槽20、及びブッシング22を加熱する加熱手段のそれぞれは、独立して温度調整可能にしている。
【0065】
ここで、前述したように、減圧ハウジング16は導管14をも覆っているため、導管14の下部と減圧ハウジング16との連結が重要である。そこで本実施形態では、
図3に示すように、導管14の下部と減圧ハウジング16とは、水冷管50を有するフランジ40を介して連結されている。なお、
図3は、導管の下部における導管と減圧ハウジングとの連結の様子を示す図であり、(a)は一部破断正面図であり、(b)は(a)のb−b線断面図である。
【0066】
より詳細には、このフランジ40は、導管14下部に一体的に設けられフランジ状に設けられた電極部32を挟み込む上フランジ42と下フランジ44とを有している。上フランジ42は、ボルト等により減圧ハウジング16の下端に接続され、電極部32を上側から挟み込む。下フランジ44は、導管14の下端から挿通され、電極部32を下側から挟み込む。これら上フランジ42及び下フランジ44は環状の部材で例えばステンレス等の金属から形成されており、内側には断熱材24が配されている。
【0067】
このように、上フランジ42と下フランジ44が電極部32を上下から挟み込んだ状態で、これらが一体としてボルト等により連結されている。なお、上フランジ42と電極部32との間、下フランジ44と電極部32との間には、気密性及び電気絶縁性を確保するためのパッキン46が設けられている。また、減圧ハウジング16と上フランジ42との間には、気密性を確保するためのOリング48が設けられている。このようにして、導管14の下部と減圧ハウジング16との間は、上フランジ42及び下フランジ44により気密に挟み込まれた電極部32により、気密性が保持されている。
【0068】
ここで、電極部32は、直接通電により加熱されるため、電極部32自体が高温になる。したがって、連結部分での温度は300℃以上になり、Oリング48やパッキン46の耐熱温度以上となるおそれがあることから、気密性を保持できなくなるおそれがある。そこで、上フランジ42と下フランジ44には、
図3に示すように、水冷管50が設けられている。本実施形態では、水冷管50は、上フランジ42及び下フランジ44の肉部を刳り抜いて形成されている。
【0069】
ただし、水冷は導管14を冷却し、導管14を流れる溶融ガラスの温度を低下させることにもつながるため、水冷管50の位置は導管14からなるべく離したほうがよい。しかしながら、水冷管50の位置を導管14から離すことにより減圧ハウジング16の大型化にもつながるため、導管14からの距離が90mm〜200mm程度となるように設計するのがよい。また、水冷管50の断面形状は円形が望ましいが、加工性を考慮すると矩形でもよい。
【0070】
また、水冷管50はOリング48やパッキン46を均一に冷却するために、周状に配置することが望ましい。また、水冷管50はパッキン46直下、直上に設けることにより、効率的に冷却が行なえる。
【0071】
なお、第1のガラス溶融槽12、導管14、及び第2のガラス溶融槽20は、少なくとも内面が白金または白金合金で形成されていると好ましい。上記説明では、通電加熱の観点からこれら第1のガラス溶融槽12、導管14、及び第2のガラス溶融槽20が白金または白金合金で形成してもよい旨を説明したが、異物混入防止の観点からは、少なくとも内面を白金または白金合金で形成することで、耐火物レンガでこれらを形成する場合に発生し得る、溶融ガラスとの界面劣化による異物の混入を最小限に抑えることができる。
【0072】
次に、上記したガラス繊維製造用ガラス溶融装置100を用いたガラス繊維の製造方法について説明する。
【0073】
まず、第1のガラス溶融槽12に、溶融ガラス、ガラス塊、またはガラス原料を投入する。ガラス原料は、クレー、ライムストーン、ドロマイト、コレマナイト、シリカサンド、アルミナ、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウムなどの粉状の混合物である。溶融ガラスは、この混合物を第1の溶融槽に投入するに先立ち予め溶融させたものである。ガラス塊は、溶融ガラスを一旦冷却固化させたものである。
【0074】
一方、吸引装置18により減圧ハウジング16内の圧力損失が大気圧に対して0.4〜0.9気圧低くなるように、減圧ハウジング16内を減圧する。また、溶融ガラスの温度が1350〜1550℃となるように第1のガラス溶融槽12を加熱して、上記溶融ガラス、ガラス塊、ガラス原料を溶融する。
【0075】
さらに、導管14、第2のガラス溶融槽20、及びブッシング22のそれぞれを独立に加熱する。それぞれの温度は、導管14で1300〜1450℃、第2のガラス溶融槽20で1290〜1400℃、ブッシング22で1250〜1300℃とする。なお、導管14、第2のガラス溶融槽20、及びブッシング22の中の溶融ガラスの温度より、第1のガラス溶融槽12の中の溶融ガラスの温度が高くなるように温度制御することが好ましい。このようにすることにより、リボイルによる気泡の発生を抑制することができる。次に、第1のガラス溶融槽12から導管14を通して第2のガラス溶融槽20に溶融ガラスを導入する。そして、溶融ガラスをブッシング22のノズル22aから図示しない巻取り機により高いテンションで巻き取られることで溶融ガラスを紡糸し繊維化する。一のノズル22aからの溶融ガラスの吐出流量は、例えば0.05〜5.0g/分である。
【0076】
このように、第1のガラス溶融槽12の溶融ガラスを減圧雰囲気下に晒すことで、ガラスから効果的に気泡を除くことができる。また、第1のガラス溶融槽12、第2のガラス溶融槽20、及びブッシング22を加熱するだけでなく導管14をも加熱し、しかも独立に温度制御することで、導管14でガラスが固まるのを抑制することができる。すなわち、ガラス繊維の製造においては、単位時間当たりに紡糸されるガラス重量が小さく、持込熱量が少ないため導管14の途中で溶融ガラスが冷却され固まるおそれがあるが、本実施形態では上記構成により導管14でガラスが固まるのを抑制している。
【0077】
ここで、本実施形態では、第1のガラス溶融槽12の溶融ガラス液面が、第2のガラス溶融槽20の溶融ガラス液面よりも150cm以上高い状態で紡糸する。より好ましくは、230cm〜460cmとする。この程度の高さにすれば、第1のガラス溶融槽12の溶融ガラス液面を大気圧と比べて0.4〜0.9気圧程度低くすることができ、溶融ガラス中のガスが連続的に既存の気泡内に拡散して泡径が急激に大きくなることで、大きな脱泡効果を得ることができる。
【0078】
また、第1のガラス溶融槽12が晒される減圧雰囲気、すなわち減圧ハウジング16内の気圧と大気圧との圧力差が一定になるように、吸引装置18による吸引量を制御する。このようにすることで、大気圧の微小な変動による溶融ガラスの液面変動を抑えることができる。
【0079】
第1のガラス溶融槽12への溶融ガラス、ガラス塊、ガラス原料の投入量は、第2のガラス溶融槽20の溶融ガラス液面の高さに基づいて、その高さが一定になるように制御する。また、第2のガラス溶融槽20の溶融ガラス液面の面積を、第1のガラス溶融槽12の溶融ガラス液面の面積以上とする。このようにすれば、第2のガラス溶融槽20の液位の変動を少なくすることができ、第2のガラス溶融槽20の壁面と溶融ガラスの接触面からの抱込み泡の発生を抑制することができる。また、紡糸するガラス繊維の太さの変動を抑制し、ガラス繊維の番手変動による成形品の強度や電気特性のバラツキを抑えることができる。
【0080】
以上詳述したように、本実施形態のガラス溶融装置100では、第1のガラス溶融槽12において減圧雰囲気下でガラスを溶融することで、溶融ガラスから気泡を除くことができる。したがって、清澄剤を用いることなく紡糸されるガラス繊維中への気泡の混入を効果的に低減することが可能となる。例えば、溶融ガラスを減圧雰囲気下で脱泡せず大気雰囲気下で紡糸したガラス繊維と比べて、同じ長さのガラス繊維中に含まれる気泡の数を1/10〜1/1000に減少させることができる。
【0081】
また、第1のガラス溶融槽12、導管14、第2のガラス溶融槽20、及びブッシング22のそれぞれは、独立して温度調整可能な加熱手段を備えるため、第1のガラス溶融槽12、導管14、第2のガラス溶融槽20、及びブッシング22をそれぞれ独立して温度調整することで、各領域で最適な温度条件を与えることができ、気泡発生を抑制するためのリボイルの制御がし易くなる。
【0082】
また、導管14の上部と下部にはそれぞれ電極部32が設けられ、通電加熱されるため、導管14において溶融ガラスが冷却して固まるのを抑えることができる。
【0083】
また、第1のガラス溶融槽12及び導管14は、吸引装置18により減圧される減圧ハウジング16によって覆われているため、第1のガラス溶融槽12の減圧制御が容易になる。また、導管14をも減圧ハウジング16によって覆うことで、減圧による導管14の座屈が発生し難くなるため、導管14の肉厚を薄くすることができる。このことは、白金などの高価な材料により導管14を製造する場合に特に有効である。
【0084】
また、導管14の下部と減圧ハウジング16とは、水冷管50を有するフランジ40を介して連結されているため、導管14と減圧ハウジング16とを、パッキン46やOリング48を用いて密閉することが可能となる。
【0085】
[第2実施形態]
次に、
図4及び
図5を参照して、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態に係るガラス繊維製造用ガラス溶融装置200は、基本的に第1の実施形態に係るガラス繊維製造用ガラス溶融装置100と同じ構成をしている。このため、以下では、第1の実施形態と相違する点のみ説明し、第1の実施形態と同じ点の説明を省略する。
【0086】
図4は、第2の実施形態に係るガラス繊維製造用ガラス溶融装置の構成を示す断面図である。
図5は、導管の下部における導管と減圧ハウジングとの連結の様子を示す図であり、(a)は一部破断正面図であり、(b)は(a)のb−b線断面図である。
図4及び
図5に示すように、ガラス繊維製造用ガラス溶融装置200は、第1のガラス溶融槽12と、導管214と、減圧ハウジング16と、吸引装置18と、第2のガラス溶融槽20と、ブッシング22と、を備えている。
【0087】
導管214は、第1の実施形態と同様に第1のガラス溶融槽12から下方に延びており、第1のガラス溶融槽12で溶融されたガラスを第2のガラス溶融槽20に送る。そして、導管214の下端部に、導管214から分岐する導管分岐部214aが形成されている。
【0088】
この導管分岐部214aは、減圧ハウジング16の下端部付近において、導管214の下端部から導管214を覆うように折り返されている。そして、導管分岐部214aは、導管214から所定距離離間するとともに導管214に沿って鉛直方向上方に向けて延びる円筒状に形成されている。このため、導管214と導管分岐部214aとにより二重管が形成される。そして、導管分岐部214aの先端が、導管214と水冷管50との間において、上フランジ42と下フランジ44とで挟み込まれる電極部32に接続されている。このため、電極部32と導管214とが所定距離離間している。このようにして、導管214の下部と減圧ハウジング16との間は、導管分岐部214aと上フランジ44及び下フランジ42により気密に挟み込まれた電極部32とにより、気密性が保持されている。このため、吸引装置18による吸引により、導管214と導管分岐部214aとの間も減圧雰囲気となる。そして、導管分岐部214aは、導管214と同様に、通電により発熱する材料で形成されており、例えば白金や白金合金から構成されている。このため、導管214への通電は、電極部32から導管分岐部214aを介して行われる。
【0089】
そして、減圧ハウジング16と導管214との間に収容される断熱材24は、導管214と導管分岐部214aとの間にも収容されている。このため、電極部32と導管214との間に形成される空間に断熱材24が配置される。これにより、上フランジ42及び下フランジ44に設けられる水冷管50による冷却作用が、導管214に及ぼす影響を小さくすることができる。
【0090】
また、下フランジ44には、導管分岐部214aを覆うハウジング216が連結されており、このハウジング216と導管分岐部214aとの間にも、断熱材24が収容されている。これにより、導管分岐部214aの加熱効率を向上させることができる。なお、導管分岐部214aとハウジング216との間の領域と、導管分岐部214aと導管214との間の領域とは、導管分岐部214aにより分断されているため、吸引装置18で吸引しても、導管分岐部214aとハウジング216との間の領域は、減圧雰囲気とならない。
【0091】
図6は、一対の電極部に挟まれる導管の温度分布を示している。なお、
図6において、導管214は、便宜上、一直線状に延ばして図示している。
図6に示すように、一対の電極部32から通電加熱されると、導管214の中央部分では、温度勾配が小さく設定温度に昇温されるが、電極部32との接続部付近は、大きな温度勾配により端部に向かうほど温度が低下する。ここで、第1のガラス溶融槽12側に配置された電極部32との接続部付近では、第1のガラス溶融槽12から導入された溶融ガラスの持込熱量により、導管214の過冷却を防止することができる。しかしながら、第2のガラス溶融槽20側に配置された電極部32の接続部付近では、このような持込熱量が少ないため、設定温度未満になって過冷却される可能性がある。そこで、導管214の下端部から分岐された導管分岐部214aの先端に電極部32を接続することで、電極部32との接続部と導管214との間に所定距離をおくことができるため、導管214の下端部も安定した設定温度に昇温させることができる。これにより、導管214に導入された溶融ガラスを適切に昇温させることができる。なお、導管214における溶融ガラスの加熱領域を確保する観点から、導管214から導管分岐部214aが分岐する位置をできるだけ下方に配置することが好ましい。
【0092】
[第3実施形態]
次に、
図7及び
図8を参照して、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態に係るガラス繊維製造用ガラス溶融装置300は、基本的に第1の実施形態に係るガラス繊維製造用ガラス溶融装置100と同じ構成をしている。このため、以下では、第1の実施形態と相違する点のみ説明し、第1の実施形態と同じ点の説明を省略する。
【0093】
図7は、第3の実施形態に係るガラス繊維製造用ガラス溶融装置の構成を示す断面図である。
図8は、
図7に示すガラス繊維製造用ガラス溶融装置の一部を拡大した断面図であり、(a)は正面断面図であり、(b)は(a)のb−b線断面図である。
図7及び
図8に示すように、ガラス繊維製造用ガラス溶融装置300は、第1のガラス溶融槽12と、導管14と、減圧ハウジング316と、吸引装置18と、第2のガラス溶融槽20と、ブッシング22と、を備えている。
【0094】
減圧ハウジング316は、第1のガラス溶融槽12を覆う溶融槽ハウジング317aと、導管14を覆う導管ハウジング317bとにより構成されており、導管14の下端が突き出た状態で、第1のガラス溶融槽12及び導管14を気密に覆っている。減圧ハウジング316の材質及び構造は、気密性及び強度を有するものであれば特に限定されず、ステンレス等の金属材料から形成されていると好ましい。
【0095】
この減圧ハウジング316と第1のガラス溶融槽12及び導管14との間の空間には、断熱効率を向上させるための断熱材24が収容されている。この断熱材24は、第1のガラス溶融槽12及び導管14と減圧ハウジング316との間を断熱するものであり、減圧ハウジング316の温度を耐熱温度以下にするものである。よって、断熱材24は、減圧ハウジング316の温度を耐熱温度以下にして長期的に構造が保持される材料で形成されており、例えば、形状保持性や経済性の優れる耐火断熱レンガ24aや、弾性構造を有する弾性断熱材24bから構成されている。なお、弾性断熱材24bは、例えば、ファイバーフラックスなどのウール系の断熱材であって、グラスウールなどで構成される。
【0096】
ここで、前述したように、導管14が加熱手段30により加熱されると、導管14及び導管ハウジング317bが熱膨張により伸長する。そこで、本実施形態では、溶融槽ハウジング317aに収容される断熱材24は、積層された耐火断熱レンガ24aにより構成されており、導管ハウジング317bに収容される断熱材24は、積層された耐火断熱レンガ24aの間に弾性断熱材24bが挿入されて構成されている。これにより、導管14及び導管ハウジング317bの伸長に伴って弾性断熱材24bが膨張し、導管ハウジング317b内が常に断熱材24で充填された状態となる。なお、弾性断熱材24bは、任意の位置において耐火断熱レンガ24aの間に挿入してもよいが、耐火断熱レンガ24aの自重を考慮すると、上部に配置される耐火断熱レンガ24aの間に挿入するのが好ましい。
【0097】
溶融槽ハウジング317aは、ガラス溶融装置300が設置される建造物に設置されており、例えば、建物の床面に載置されている。このため、溶融槽ハウジング317aに収容される断熱材24は、この建物の床面に支持されている。
【0098】
この溶融槽ハウジング317aの上壁には、溶融ガラス、ガラス塊、またはガラス原料を投入する導入口316aが設けられている。導入口316aは開閉可能な構造を備えている。また、溶融槽ハウジング317aの側壁には、吸引装置18に接続された減圧のための吸引口316bが設けられている。
【0099】
ここで、前述したように、導管14が加熱手段30により加熱されると、導管14は1400℃程度まで昇温される。ところが、導管ハウジング317bは、断熱材24により断熱されるとともに外気に晒されているため、300℃程度までしか昇温されない。このため、導管14と導管ハウジング317bとの温度差及びその熱膨張率の相違により、導管14の熱膨張量と導管ハウジング317bの熱膨張量とが相違して、その長さにずれが生じる。そこで、本実施形態では、
図8に示すように、導管ハウジング317bの胴部の一部に、長手方向(上下方向)に伸縮可能な伸縮ハウジング部360が設けられている。
【0100】
この伸縮ハウジング部360は、導管ハウジング317bを長手方向に伸縮させるものである。伸縮ハウジング部360は、第2のガラス溶融槽20の輻射熱による悪影響を抑制して、長期耐久性や作業性を考慮し、導管ハウジング317bの長手方向において中央より上部に設けられている。そして、伸縮ハウジング部360は、蛇腹部361と、第1フランジ部362と、第2フランジ部363と、支持部364と、を備えている。
【0101】
蛇腹部361は、蛇腹状に屈曲されて伸縮可能に構成されている。また、蛇腹部361は、導管ハウジング317bと同様な横断面を有しており、導管ハウジング317bの胴部を構成している。このため、蛇腹部361の材質及び構造は、気密性及び強度を有するものであれば特に限定されず、ステンレス等の金属材料から形成されていると好ましい。
【0102】
第1フランジ部362は、蛇腹部361の上部において、導管ハウジング317bから突出したフランジ上に形成されている。第2フランジ部363は、蛇腹部361の下部において、導管ハウジング317bから突出したフランジ上に形成されている。そして、第1フランジ部362と第2フランジ部363とは、蛇腹部361を挟み込むように互いに対向して配置されている。
【0103】
支持部364は、第1フランジ部362と第2フランジ部363とを伸縮可能に支持するものである。このため、支持部364は、導管14、導管ハウジング317b及び導管ハウジング317bに収容される断熱材24を支えるだけの耐荷重性を有し、伸縮可能な構造により構成されている。具体的には、第1フランジ部362及び第2フランジ部363に螺着される複数本のボルト及びナットにより構成される。そして、例えば、ボルトを緩めると、第1フランジ部362と第2フランジ部363との離間距離が広がって伸縮ハウジング部360が伸長し、ボルトを締めると、第1フランジ部362と第2フランジ部363との離間距離が狭まって伸縮ハウジング部360が短縮する構造となっている。
【0104】
また、導管ハウジング317bの側壁には、断熱材24を挿入する断熱材挿入口370が設けられている。断熱材挿入口370は、断熱材24を挿入する際の作業性を考慮して、導管ハウジング317bの上部に設けられており、詳細には、積層された耐火断熱レンガ24aの間であって弾性断熱材24bが挿入された位置に設けられている。
【0105】
そして、導管ハウジング317bは、
図9に示すように、導管14の下部において、水冷管50を有するフランジ40を介して連結されている。
【0106】
次に、上記したガラス溶融装置300を用いたガラス繊維の製造方法について説明する。
【0107】
まず、ガラス溶融装置300の稼動を開始する際は、ガラス繊維を製造するガラス繊維の製造工程に先立って、ガラス繊維の製造準備を行うガラス繊維の製造立上げ工程を行う。
【0108】
このガラス繊維の製造立上げ工程では、まず、第1のガラス溶融槽12及び第2のガラス溶融槽20に、溶融ガラス、ガラス塊、またはガラス原料を投入する。ガラス原料は、クレー、ライムストーン、ドロマイト、コレマナイト、シリカサンド、アルミナ、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウムなどの粉状の混合物である。溶融ガラスは、この混合物を第1のガラス溶融槽12に投入するに先立ち予め溶融させたものである。ガラス塊は、溶融ガラスを一旦冷却固化させたものである。
【0109】
次に、投入された溶融ガラス、ガラス塊、またはガラス原料が溶融するように、第1のガラス溶融槽12及び第2のガラス溶融槽20を加熱する。なお、この際に導管14も加熱する。そして、第1のガラス溶融槽12及び第2のガラス溶融槽20に投入された上記溶融ガラス、ガラス塊、ガラス原料を溶融して、導管14の下端部を溶融したガラスで塞ぐ。その後、吸引装置18により減圧ハウジング316内の気圧が大気圧に対して0.4〜0.9気圧低くなるように、減圧ハウジング316内を減圧する。すると、この減圧ハウジング316の減圧により、導管14内の溶融ガラスの液面が上昇する。
【0110】
さらに、第1のガラス溶融槽12、導管14、第2のガラス溶融槽20、及びブッシング22のそれぞれを独立に加熱する。それぞれの温度は、第1のガラス溶融槽12で1350〜1550℃、導管14で1300〜1450℃、第2のガラス溶融槽20で1290〜1400℃、ブッシング22で1250〜1300℃とする。そして、第1のガラス溶融槽12から導管14を通して第2のガラス溶融槽20に溶融ガラスを導入し、溶融ガラスをブッシング22のノズル22aから引き出す。なお、ガラス繊維の製造立上げ工程では、ブッシング22のノズル22aから溶融ガラスを引き出すことなく、単にノズル22aから溶融ガラスを垂れ流すだけであってもよい。
【0111】
ここで、導管14の温度と導管ハウジング317bの温度を計測して、これらの温度に基づいて導管14及び導管ハウジング317bの熱膨張による伸び量を算出し、導管14の伸び量と導管ハウジング317bの伸び量との差分を算出する。
【0112】
導管14の伸び量と導管ハウジング317bの伸び量との差分λは、式(1)により求められる。
λ=L(α
1Δt
1−α
2Δt
2) …(1)
ここで、Lは、昇温前の導管14及び導管ハウジング317bの長さ、α
1は、昇温後の導管14温度における導管14の熱膨張係数、Δt
1は、昇温前の雰囲気温度と昇温後の導管14温度との温度差、α
2は、昇温後の導管ハウジング317b温度における導管ハウジング317bの熱膨張係数、Δt
2は、昇温前の雰囲気温度と昇温後の導管ハウジング317b温度との温度差を示している。
【0113】
例えば、導管14及び導管ハウジング317bの長さが350cmであって、導管14が白金で形成され、導管ハウジング317bがステンレスで形成されたガラス溶融装置300において、外界の雰囲気温度が20℃のときに、導管14を1400℃に昇温させることにより、導管ハウジング317bが300℃に昇温した場合について考える。この場合、導管14の熱膨張係数は1.0×10
−5(/℃)、導管ハウジング317bの熱膨張係数は1.7×10
−5(/℃)となるため、導管14は約4.83cm伸び、導管ハウジング317bは約1.67cm伸び、導管14は導管ハウジング317bよりも約3.2cm長く伸びる。
【0114】
そして、このように算出された熱膨張による伸び量の差分がゼロとなるように、伸縮ハウジング部360のボルトを緩めて導管ハウジング317bを伸長させ、導管14と導管ハウジング317bの長さを一致させる。なお、ガラス溶融装置300を停止するために導管14の加熱を停止したときは、伸縮ハウジング部360のボルトを締めて導管ハウジング317bを短縮させ、導管14と導管ハウジング317bの長さを一致させる。
【0115】
ところで、断熱材24として導管ハウジング317b内に積層された耐火断熱レンガ24aは伸縮性が非常に小さい。このため、熱膨張により導管14及び導管ハウジング317bが伸びるとともに、伸縮ハウジング部360の調整により導管ハウジング317bが伸びると、耐火断熱レンガ24a間に隙間が生じる。このとき、耐火断熱レンガ24aの間に挿入された弾性断熱材24bが膨張するため、耐火断熱レンガ24a間の隙間が弾性断熱材24bにより埋められる。そして、導管14及び導管ハウジング317bの伸び量が大きく、弾性断熱材24bの膨張だけでは耐火断熱レンガ24a間の隙間を完全に埋めることができない場合や、弾性断熱材24bのかさ密度が小さくなった場合は、断熱材挿入口370から、新たに弾性断熱材24bなどの断熱材24を導管ハウジング317b内に挿入することにより、耐火断熱レンガ24a間の隙間を完全に埋めることができる。
【0116】
そして、ガラス溶融装置300が規定の温度及び気圧になると、ガラス繊維の製造立上げ工程を終了し、ガラス繊維の製造工程を行う。
【0117】
このガラス繊維の製造工程では、第1のガラス溶融槽12の液位が略一定となるように、第1のガラス溶融槽12に、溶融ガラス、ガラス塊、またはガラス原料を投入する。
【0118】
また、吸引装置18により減圧ハウジング316内の気圧が大気圧に対して0.4〜0.9気圧低くなるように、減圧ハウジング316内を減圧した状態にする。また、溶融ガラスの温度が1350〜1550℃となるように第1のガラス溶融槽12を加熱して、上記溶融ガラス、ガラス塊、ガラス原料を溶融する。
【0119】
さらに、導管14、第2のガラス溶融槽20、及びブッシング22のそれぞれを独立に加熱する。それぞれの温度は、導管14で1300〜1450℃、第2のガラス溶融槽20で1290〜1400℃、ブッシング22で1250〜1300℃とする。なお、導管14、第2のガラス溶融槽20、及びブッシング22の中の溶融ガラスの温度より、第1のガラス溶融槽12の中の溶融ガラスの温度が高くなるように温度制御することが好ましい。このようにすることにより、リボイルによる気泡の発生を抑制することができる。
【0120】
そして、第1のガラス溶融槽12から導管14を通して第2のガラス溶融槽20に溶融ガラスを導入する。そして、溶融ガラスをブッシング22のノズル22aから図示しない巻取り機により高いテンションで巻き取られることで溶融ガラスを紡糸し繊維化する。一のノズル22aからの溶融ガラスの吐出流量は、例えば0.05〜5.0g/分である。
【0121】
このように、第1のガラス溶融槽12の溶融ガラスを減圧雰囲気下に晒すことで、ガラスから効果的に気泡を除くことができる。また、第1のガラス溶融槽12、第2のガラス溶融槽20、及びブッシング22を加熱するだけでなく導管14をも加熱し、しかも独立に温度制御することで、導管14でガラスが固まるのを抑制することができる。すなわち、ガラス繊維の製造においては、単位時間当たりに紡糸されるガラス重量が小さく、持込熱量が少ないため導管14の途中で溶融ガラスが冷却され固まるおそれがあるが、本実施形態では上記構成により導管14でガラスが固まるのを抑制している。
【0122】
そして、第1のガラス溶融槽12の溶融ガラス液面が、第2のガラス溶融槽20の溶融ガラス液面よりも150cm以上高い状態で紡糸する。より好ましくは、230cm〜460cmとする。この程度の高さにすれば、第1のガラス溶融槽12の溶融ガラス液面を大気圧と比べて0.4〜0.9気圧程度低くすることができ、溶融ガラス中のガスが連続的に既存の気泡内に拡散して泡径が急激に大きくなることで、大きな脱泡効果を得ることができる。
【0123】
また、第1のガラス溶融槽12が晒される減圧雰囲気、すなわち減圧ハウジング316内の気圧と大気圧との圧力差が一定になるように、吸引装置18による吸引量を制御する。このようにすることで、大気圧の微小な変動による溶融ガラスの液面変動を抑えることができる。
【0124】
更に、第1のガラス溶融槽12への溶融ガラス、ガラス塊、ガラス原料の投入量は、第2のガラス溶融槽20の溶融ガラス液面の高さに基づいて、その高さが一定になるように制御する。また、第2のガラス溶融槽20の溶融ガラス液面の面積を、第1のガラス溶融槽12の溶融ガラス液面の面積以上とする。このようにすれば、第2のガラス溶融槽20の液位の変動を少なくすることができ、第2のガラス溶融槽20の壁面と溶融ガラスの接触面からの抱込み泡の発生を抑制することができる。また、紡糸するガラス繊維の太さの変動を抑制し、ガラス繊維の番手変動による成形品の強度や電気特性のバラツキを抑えることができる。
【0125】
以上詳述したように、本実施形態のガラス溶融装置300では、第1のガラス溶融槽12において減圧雰囲気下でガラスを溶融することで、溶融ガラスから気泡を除くことができるため、紡糸されるガラス繊維中への気泡の混入を効果的に低減することが可能となる。そして、導管14の加熱により昇温された導管14及び導管ハウジング317bは、熱膨張係数の違いや温度の違いによりその伸縮量が異なるが、伸縮ハウジング部360により導管ハウジング317bを伸縮させることにより、両者の長さを一致させることができる。これにより、昇温による伸縮量の違いにより導管14及び導管ハウジング317bに与える負荷を軽減することができるため、導管14及び導管ハウジング317bの破損を防止することができる。
【0126】
しかも、本実施形態のガラス溶融装置300を用いてガラス繊維を製造する際、ガラス繊維の製造立上げ工程として、溶融したガラスで導管の下端部を塞ぐことで、第1のガラス溶融槽が密閉されるため、第1のガラス溶融槽12を減圧雰囲気に晒すことができる。そして、第1のガラス溶融槽12において減圧雰囲気下でガラスを溶融することで、溶融ガラスから気泡を除くことができるため、紡糸されるガラス繊維中への気泡の混入を効果的に低減することが可能となる。
【0127】
そして、断熱材24の一部を弾性断熱材24bとすることで、導管14及び導管ハウジング317bの熱膨張に伴い弾性断熱材24bが膨張するため、断熱材24の隙間の発生による断熱効率の低下を抑制することができる。
【0128】
しかも、導管ハウジング317bに断熱材挿入口370を設けることで、弾性断熱材24bの膨張によっても断熱材24の隙間が埋まらない場合に、導管ハウジング317b内に弾性断熱材24bなどの断熱材24を新たに挿入することができるため、断熱材24の隙間の発生による断熱効率の低下を更に抑制することができる。
【0129】
[第4実施形態]
次に、
図10及び
図11を参照して、第4の実施形態について説明する。第4の実施形態に係るガラス繊維製造用ガラス溶融装置400は、基本的に第3の実施形態に係るガラス繊維製造用ガラス溶融装置300と同じ構成をしている。そして、このガラス繊維製造用ガラス溶融装置400は、導管ハウジング317bに断熱材24を仕切る仕切部材420が設けられた点のみ、第3の実施形態に係るガラス繊維製造用ガラス溶融装置300と相違する。このため、以下では、第3の実施形態と相違する点のみ説明し、第3の実施形態と同じ点の説明を省略する。
【0130】
図10は、第4の実施形態に係るガラス繊維製造用ガラス溶融装置の構成を示す断面図である。
図11は、
図10に示すガラス繊維製造用ガラス溶融装置の一部を拡大した断面図であり、(a)は正面断面図であり、(b)は(a)のb−b線断面図である。
図10及び
図11に示すように、ガラス繊維製造用ガラス溶融装置400には、導管ハウジング317bに仕切部材420が設けられている。
【0131】
この仕切部材420は、導管ハウジング317bに収容された断熱材24を仕切り、仕切部材420よりも上部に配置される断熱材24を支持するものである。仕切部材420は、断熱材挿入口370の直上に配置されており、導管ハウジング317bの内壁から内側に突出するフランジ状に形成されている。具体的には、導管ハウジング317b内に積層された耐火断熱レンガ24aが仕切部材420により仕切られており、仕切部材420の上部に配置された耐火断熱レンガ24aが仕切部材420により支持されている。このように、仕切部材420は、耐火断熱レンガ24aを支持するため、できるだけ導管ハウジング317bの上部に配置されることが好ましい。そして、仕切部材420により仕切られた耐火断熱レンガ24aの間に、弾性断熱材24bが挿入されている。これにより、断熱材挿入口370は、仕切部材420により支持されている耐火断熱レンガ24aの下に挿入された弾性断熱材24bに接続されている。
【0132】
次に、
図12を参照して、上記したガラス溶融装置400を用いたガラス繊維の製造方法について説明する。
【0133】
まず、第3の実施形態に係るガラス溶融装置300と同様に、ガラス繊維の製造立上げ工程において、第1のガラス溶融槽12及び第2のガラス溶融槽20に、溶融ガラス、ガラス塊、またはガラス原料を投入する。そして、第1のガラス溶融槽12及び第2のガラス溶融槽20と、さらに導管14を加熱して溶融ガラス、ガラス塊、またはガラス原料を溶融し、この溶融したガラスで導管14の下端部を塞いだ後、吸引装置18により減圧ハウジング316内を減圧して、導管14内の溶融ガラスの液面を上昇させる。その後、第1のガラス溶融槽12、導管14、第2のガラス溶融槽20、及びブッシング22のそれぞれを独立に加熱して、第1のガラス溶融槽12から導管14を通して第2のガラス溶融槽20に溶融ガラスを導入し、溶融ガラスをブッシング22のノズル22aから引き出す。
【0134】
すると、導管14及び導管ハウジング317bが熱膨張により伸長するため、伸縮ハウジング部360により導管ハウジング317bを伸長させて、導管14と導管ハウジング317bの長さを一致させる。
【0135】
このとき、
図12に示すように、導管ハウジング317b内では、仕切部材420の上部に配置された耐火断熱レンガ24aが仕切部材420に支持され、導管ハウジング317bの伸長に伴い、仕切部材420で仕切られた耐火断熱レンガ24aの間に隙間が生じる。すると、この間に挿入された弾性断熱材24bが膨張して、耐火断熱レンガ24a間の隙間が弾性断熱材24bにより埋められる。このとき、断熱材挿入口370が仕切部材420の直下に配置されているため、耐火断熱レンガ24aの間に形成された隙間に断熱材挿入口370が連通される。そこで、導管14及び導管ハウジング317bの伸び量が大きく、弾性断熱材24bの膨張だけでは耐火断熱レンガ24a間の隙間を完全に埋めることができない場合や、弾性断熱材24bのかさ密度が小さくなった場合は、減圧ハウジング316内を減圧する前に、断熱材挿入口370から、新たに弾性断熱材24bなどの断熱材24を導管ハウジング317b内に挿入して、耐火断熱レンガ24a間の隙間を完全に埋める。
【0136】
このようにしてガラス繊維の製造立上げ工程が終了すると、ガラス繊維の製造工程を行う。すなわち、第1のガラス溶融槽12から導管14を通して第2のガラス溶融槽20に溶融ガラスを導入し、溶融ガラスをブッシング22のノズル22aから図示しない巻取り機により高いテンションで巻き取られることで溶融ガラスを紡糸し繊維化する。
【0137】
以上詳述したように、本実施形態のガラス溶融装置400では、導管ハウジング317bに仕切部材420を設けることで、仕切部材420の上部に配置された耐火断熱レンガ24aが仕切部材420に支持されるため、導管ハウジング317bに設けられた伸縮ハウジング部360に作用する荷重を軽減することができる。しかも、導管14及び導管ハウジング317bの熱膨張により形成される耐火断熱レンガ24a間の隙間の位置が特定されるため、弾性断熱材24bを適切な位置に挿入することができるとともに、断熱材挿入口370を適切な位置に設置することができる。
【0138】
この場合、導管14及び導管ハウジング317bが熱膨張すると、仕切部材420により仕切られた耐火断熱レンガ24aの間に隙間が生じるため、仕切部材420により仕切られた耐火断熱レンガ24aの間に弾性断熱材24bを挿入することで、断熱材の隙間を適切に埋めることができる。
【0139】
また、導管ハウジング317bに断熱材挿入口370を設けることで、導管14及び導管ハウジング317bの熱膨張により耐火断熱レンガ24aの間に隙間が生じたとしても、外部から導管ハウジング317b内に弾性断熱材24bを挿入することができるため、断熱効率の低下を抑制することができる。
【0140】
[第5実施形態]
次に、
図13を参照して、第5の実施形態について説明する。第5の実施形態に係るガラス繊維製造用ガラス溶融装置500は、基本的に第3の実施形態に係るガラス繊維製造用ガラス溶融装置300と同じ構成をしている。そして、このガラス繊維製造用ガラス溶融装置500は、導管14の一部が変形している点のみ、第3の実施形態に係るガラス繊維製造用ガラス溶融装置300と相違する。このため、以下では、第3の実施形態と相違する点のみ説明し、第3の実施形態と同じ点の説明を省略する。
【0141】
図13は、第5の実施形態における導管の一部拡大図を示した図であり、(a)〜(d)は導管の変形例を示した図である。
図13(a)〜(d)に示すように、ガラス繊維製造用ガラス溶融装置500の導管14には、導管14を長手方向に伸縮させる伸縮導管部514a〜514dが形成されている。
【0142】
この伸縮導管部514a〜514dは、導管14の一部が屈曲または湾曲して形成されている。伸縮導管部514a〜514dの形状は、導管14を長手方向に伸縮させることができれば如何なる形状であってもよく、導管14を湾曲または屈曲させて形成するのが好ましい。例えば、
図13(a)では、導管14を蛇腹状に屈曲させた形状の伸縮導管部514aを採用しており、
図13(b)では、導管14の径が膨らんで湾曲させた形状の伸縮導管部514bを採用しており、
図13(c)では、導管14を一方向に湾曲させた形状の伸縮導管部514cを採用しており、
図13(d)では、導管14を波状に湾曲させた形状の伸縮導管部514dを採用している。なお、導管14には、伸縮導管部514a〜514dの少なくとも一つが形成されていればよい。
【0143】
なお、導管14は比較的長い筒状体なので、
図13(a)の態様の導管が作製上好ましい。ここで、ガラス溶融装置の組立て時の作業性や輸送コストを考慮した場合、2つ以上に分割されていることが好ましい。この場合、分割された導管14を、一端若しくは両端を外側に屈曲させた筒状体や、一端若しくは両端にフランジが設けられた筒状体とし、ガラス溶融装置の組立て時に、屈曲部の先端同士やフランジの先端同士を溶接することが好ましい。これにより、効率的に組立てが行うことができ、伸縮導管部514a〜514dを有する導管14を容易に作成することができる。
【0144】
次に、上記したガラス溶融装置500を用いたガラス繊維の製造方法について説明する。
【0145】
まず、第3の実施形態に係るガラス溶融装置300と同様に、ガラス繊維の製造立上げ工程において、第1のガラス溶融槽12及び第2のガラス溶融槽20に、溶融ガラス、ガラス塊、またはガラス原料を投入する。そして、第1のガラス溶融槽12及び第2のガラス溶融槽20、さらに導管14を加熱して、溶融ガラス、ガラス塊、またはガラス原料を溶融し、この溶融したガラスで導管14の下端部を塞いだ後、吸引装置18により減圧ハウジング316内を減圧して、導管14内の溶融ガラスの液面を上昇させる。その後、第1のガラス溶融槽12、導管14、第2のガラス溶融槽20、及びブッシング22のそれぞれを独立に加熱して、第1のガラス溶融槽12から導管14を通して第2のガラス溶融槽20に溶融ガラスを導入し、溶融ガラスをブッシング22のノズル22aから引き出す。
【0146】
すると、導管14及び導管ハウジング317bが熱膨張により伸長するため、上記した式(1)により算出された差分λに基づいて伸縮ハウジング部360を調整し、導管14と導管ハウジング317bの長さを一致させる。
【0147】
このとき、実際には、導管14や導管ハウジング317bの温度分布が一様ではないため、必ずしも、理論値と、実際に生じた実現象とは一致しない。このため、伸縮ハウジング部360で調整したとしても、導管14と導管ハウジング317bの長さが一致しない場合がある。そこで、導管14に形成された伸縮導管部514a〜514dが伸縮することで、導管14と導管ハウジング317bの長さのズレが矯正されて、導管14と導管ハウジング317bの長さが一致する。
【0148】
このようにしてガラス繊維の製造立上げ工程が終了すると、ガラス繊維の製造工程を行う。すなわち、第1のガラス溶融槽12から導管14を通して第2のガラス溶融槽20に溶融ガラスを導入し、溶融ガラスをブッシング22のノズル22aから図示しない巻取り機により高いテンションで巻き取られることで溶融ガラスを紡糸し繊維化する。
【0149】
以上詳述したように、本実施形態のガラス溶融装置500では、導管14に伸縮導管部514a〜514dを形成することで、伸縮ハウジング部360の調整で導管14と導管ハウジング317bの長さが一致しない場合でも、導管14と導管ハウジング317bの長さのズレが矯正されるため、導管14と導管ハウジング317bの長さを一致させることができる。
【0150】
[第6実施形態]
次に、
図14を参照して、第6の実施形態について説明する。第6の実施形態に係るガラス繊維製造用ガラス溶融装置600は、基本的に第1の実施形態に係るガラス繊維製造用ガラス溶融装置100と同じ構成をしている。このため、以下では、第1の実施形態と相違する点のみ説明し、第1の実施形態と同じ点の説明を省略する。
【0151】
図14は、実施形態に係るガラス繊維製造用ガラス溶融装置の構成を示す断面図である。
図14に示すように、ガラス繊維製造用ガラス溶融装置600は、第1のガラス溶融槽612と、導管14と、減圧ハウジング616と、第1の吸引装置618と、第2のガラス溶融槽20と、ブッシング22と、原料計量部626と、圧力容器628と、第2の吸引装置630と、同圧化バルブ632と、を備えている。
【0152】
第1のガラス溶融槽612は、投入されたガラス塊やガラス原料などの固形原料を溶融して導管14に導出するものであり、上方が開口している。
【0153】
この第1のガラス溶融槽612は、固形原料の溶融のための図示しない加熱手段を備えている。この加熱手段としては、例えばバーナや電気ヒータであってもよく、あるいは槽に接続した電極から通電して槽を自己発熱させるものであってもよい。自己発熱させる場合は、槽は通電により発熱する材料で少なくとも内壁が形成されていると好ましく、例えば白金や白金合金から構成されていると好ましい。
【0154】
そして、第1のガラス溶融槽612には、固形原料が投入されるバスケット634と、第1のガラス溶融槽612を仕切る上部仕切板636及び下部仕切板638とが設けられている。なお、バスケット634、上部仕切板636及び下部仕切板638の詳細は後述する。
【0155】
導管14は、第1のガラス溶融槽612で溶融されたガラスを第2のガラス溶融槽20に送るものであり、第1のガラス溶融槽612から下方に延びる細長い円筒状に形成されている。
【0156】
この導管14は、溶融ガラスの加熱のための図示しない加熱手段を備えている。この加熱手段は、導管14の上部及び下部に設けた図示しない電極部から通電して自己発熱させるものである。よって、導管14は通電により発熱する材料で形成されており、例えば白金や白金合金から構成されている。
【0157】
減圧ハウジング616は、導管14の下端が突き出た状態で、第1のガラス溶融槽612及び導管14を気密に覆っている。減圧ハウジング616の材質及び構造は、気密性及び強度を有するものであれば特に限定されず、ステンレス等の金属材料から形成されていると好ましい。
【0158】
この減圧ハウジング616の上壁には、固形原料を導入する導入口616aが設けられている。また、減圧ハウジング616の側壁には、第1の吸引装置618に接続された減圧のための吸引口616bが設けられている。そして、減圧ハウジング616と第1のガラス溶融槽612及び導管14との間の空間には、断熱材24が設けられている。この断熱材24は、減圧ハウジング616の温度を耐熱温度以下にして長期的に構造が保持される材料で形成されており、例えば、形状保持性や経済性の優れる耐火断熱レンガや、弾性構造を有する弾性断熱材などで構成されている。なお、弾性断熱材は、例えば、ファイバーフラックスなどのウール系の断熱材であって、グラスウールなどで構成される。
【0159】
第1の吸引装置618は、減圧ハウジング616内のガスを真空吸引して減圧ハウジング616内を減圧雰囲気にするものであり、真空ポンプにより構成されている。
【0160】
原料計量部626は、第1のガラス溶融槽612に投入する固形原料を計量するものであり、減圧ハウジング616の上方に設けられている。この原料計量部626は、固形原料の形状に合わせて適宜変更することが好ましく、その計量方式は、例えば、固形原料がマーブルなどの場合は、マーブルを数えるカウンター方式が採用され、固形原料がカレットやバッチなどの場合は、ロードセルなどの重量測定方式が採用される。
【0161】
圧力容器628は、第1のガラス溶融槽612に投入する固形原料を収容するものであり、減圧ハウジング616の上部に設けられている。この圧力容器628は、原料計量部626に連結されるとともに、減圧ハウジング616の導入口616aに連結されており、容器部628aと、上部開閉機構628bと、下部開閉機構628cと、を備えている。
【0162】
容器部628aは、原料計量部626で所定量に計量された固形原料を第1のガラス溶融槽612に投入するための容器である。そして、容器部628aは、上部開閉機構628bを介して原料計量部626と連通されており、下部開閉機構628cを介して減圧ハウジング616の導入口616aと連通されている。
【0163】
上部開閉機構628bは、容器部628aの固形原料の入口側である原料計量部626側に設けられており、容器部628aと原料計量部626との間を開閉するものである。この上部開閉機構628bは、例えば、シャッターなどにより構成されている。そして、上部開閉機構628bが開けられると、原料計量部626と容器部628aとが連通されて、原料計量部626で計量された固形原料が容器部628aに投入される。一方、上部開閉機構628bが閉められると、原料計量部626と容器部628aとの間が密閉される。
【0164】
下部開閉機構628cは、容器部628aの固形原料の出口側である減圧ハウジング616側に設けられており、容器部628aと減圧ハウジング616との間を開閉するものである。この下部開閉機構628cは、例えば、シャッターなどにより構成されている。そして、下部開閉機構628cが開けられると、容器部628aと減圧ハウジング616とが連通されて、容器部628aに収容された固形原料が減圧ハウジング616の導入口616aから第1のガラス溶融槽612に投入される。一方、下部開閉機構628cが閉められると、容器部628aと減圧ハウジング616との間が密閉されて、減圧ハウジング616内が気密に保たれる。
【0165】
第2の吸引装置630は、容器部628a内のガスを真空吸引して容器部628a内を減圧雰囲気にするものであり、真空ポンプにより構成されている。
【0166】
同圧化バルブ632は、容器部628a内の気圧と減圧ハウジング616内の気圧とを同一にするものである。この同圧化バルブ632は、容器部628aと減圧ハウジング616の導入口616aとに連通された配管に取り付けられており、この配管を開閉するバルブである。そして、同圧化バルブ632が開けられると、容器部628aと減圧ハウジング616とが連通されて、容器部628a内の気圧と減圧ハウジング616内の気圧とが同圧化される。一方、同圧化バルブ632が閉められると、容器部628aと減圧ハウジング616とが分断されて、減圧ハウジング616内が気密に保たれる。
【0167】
そして、上述したバスケット634は、圧力容器628から投入された固形原料が投入されるものであり、圧力容器628が取り付けられる導入口616aの直下に配置されて、上方が開口している。なお、バスケット634は、少なくとも表面が白金または白金合金で形成されていると好ましい。
【0168】
このバスケット634は、パンチングプレートが組み合わされた箱型に形成された容器であり、複数の開口634aが形成されている。この開口634aは、バスケット634の中央部及び上部にのみ形成されており、バスケット634の底面及び下部に形成されていない。このように、バスケット634の底面及び下部に開口634aを形成しないことで、ガラス溶融装置600の立ち上げ時や気圧の変動などの理由で第1のガラス溶融槽612の液位がバスケット634よりも低下した場合でも、バスケット634内に溶融ガラスを溜めておくことができる。このため、圧力容器628から投入された固形原料が直接バスケット634に衝突することにより生じるバスケット634の変形や、バスケット634の白金が異物となって溶融ガラスに混ざるのを防止することができる。
【0169】
そして、このバスケット634は、第1のガラス溶融槽612において持ち上げられた状態で保持されており、その底部が浮いた状態となっている。第1のガラス溶融槽612では、底部よりも上部に向かうほど溶融ガラスの温度が高くなるため、このように、バスケット634を持ち上げた状態とすることで、圧力容器628から投入された固形原料をより高い温度で確実に溶融させることができる。
【0170】
上部仕切板636は、溶融ガラスの上部を仕切るものであり、溶融ガラスの液面付近での通過を遮断して、第1のガラス溶融槽612の底面付近での溶融ガラスの通過のみを許可するものである。この上部仕切板636は、第1のガラス溶融槽612を横断するように形成されており、第1のガラス溶融槽612の中段部から溶融ガラスの液面よりも高い位置まで立設されている。これにより、上部仕切板636の下方からのみ、溶融ガラスの通過が可能となっている。そして、この上部仕切板636は、バスケット634と導管14との間に2枚設けられている。
【0171】
下部仕切板638は、溶融ガラスの下部を仕切るものであり、第1のガラス溶融槽612の底面付近での溶融ガラスの通過を遮断して、溶融ガラスの液面付近での通過のみを許可するものである。この下部仕切板638は、第1のガラス溶融槽612を横断するように形成されており、第1のガラス溶融槽612の底面から溶融ガラス液面よりも低い位置まで立設されている。これにより、下部仕切板638の上方からのみ、溶融ガラスの通過が可能となっている。そして、この下部仕切板638は、バスケット634と導管14との間に2枚設けられている。
【0172】
そして、上部仕切板636と下部仕切板638とは交互に並んで配置されており、バスケット634側に上部仕切板636が配置されるとともに、導管14側に下部仕切板638が配置されている。なお、上部仕切板636及び下部仕切板638は、少なくとも表面が白金または白金合金で形成されていると好ましい。
【0173】
なお、上記した第1のガラス溶融槽612、導管14、第2のガラス溶融槽20、及びブッシング22を加熱する加熱手段のそれぞれは、独立して温度調整可能にしている。
【0174】
次に、上記したガラス溶融装置600を用いたガラス繊維の製造方法について説明する。
【0175】
まず、上部開閉機構628b、下部開閉機構628c及び同圧化バルブ632を閉めて、第1の吸引装置618により減圧ハウジング616内の圧力が大気圧に対して0.4〜0.9気圧低くなるように、減圧ハウジング616内を減圧する。
【0176】
次に、原料計量部626に、固形原料を投入して、所定量の固形原料を計測する。固形原料は、ガラス原料やガラス魂などである。ガラス原料は、クレー、ライムストーン、ドロマイト、コレマナイト、シリカサンド、アルミナ、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウムなどの粉状の混合物である。ガラス塊は、溶融ガラスを一旦冷却固化させてマーブル状またはカレット状などに形成したものである。
【0177】
次に、下部開閉機構628cを閉めた状態で上部開閉機構628bのみを開けて、原料計量部626で計量された固形原料を容器部628aに投入する。そして、上部開閉機構628bを閉じて容器部628aを密閉し、第2の吸引装置630により容器部628a内の気圧が大気圧に対して0.4〜0.9気圧低くなるように、容器部628a内を減圧する。このとき、第1の吸引装置618と第2の吸引装置630との個体差などにより、減圧ハウジング616内の気圧と容器部628a内の気圧とが一致しない場合がある。そこで、同圧化バルブ632を開き、減圧ハウジング616内の気圧と容器部628a内の気圧とを同圧化する。その後、上部開閉機構628bを閉めた状態で下部開閉機構628cのみを開けて、容器部628aに収容されている固形原料を落下させ、減圧ハウジング616の導入口616aから第1のガラス溶融槽612に投入する。このとき、固形原料は、第1のガラス溶融槽612に設けられたバスケット634に投入される。
【0178】
そして、溶融ガラスの温度が1350〜1550℃となるように第1のガラス溶融槽612を加熱して、固形原料を溶融する。このとき、第1のガラス溶融槽612では、バスケット634に投入された固形原料が溶融して、この溶融ガラスがバスケット634の開口634aから第1のガラス溶融槽612内に流出する。そして、この溶融ガラスは、上部仕切板636の下方を潜るとともに、下部仕切板638の上方を乗り越えて、導管14に導出される。
【0179】
さらに、導管14、第2のガラス溶融槽20、及びブッシング22のそれぞれを独立に加熱する。それぞれの温度は、導管14で1300〜1450℃、第2のガラス溶融槽20で1290〜1400℃、ブッシング22で1250〜1300℃とする。なお、導管14、第2のガラス溶融槽20、及びブッシング22の中の溶融ガラスの温度より、第1のガラス溶融槽612の中の溶融ガラスの温度が高くなるように温度制御することが好ましい。このようにすることにより、リボイルによる気泡の発生を抑制することができる。
【0180】
その後、第1のガラス溶融槽612から導管14を通して第2のガラス溶融槽20に溶融ガラスを導入する。そして、溶融ガラスをブッシング22のノズル22aから図示しない巻取り機により高いテンションで巻き取られることで溶融ガラスを紡糸し繊維化する。一のノズル22aからの溶融ガラスの吐出流量は、例えば0.05〜5.0g/分である。
【0181】
このように、第1のガラス溶融槽612の溶融ガラスを減圧雰囲気下に晒すことで、ガラスから効果的に気泡を除くことができる。また、第1のガラス溶融槽612、第2のガラス溶融槽20、及びブッシング22を加熱するだけでなく導管14をも加熱し、しかも独立に温度制御することで、導管14でガラスが固まるのを抑制することができる。すなわち、ガラス繊維の製造においては、単位時間当たりに紡糸されるガラス重量が小さく、持込熱量が少ないため導管14の途中で溶融ガラスが冷却され固まるおそれがあるが、本実施形態では上記構成により導管14でガラスが固まるのを抑制している。
【0182】
そして、第1のガラス溶融槽612の溶融ガラス液面が、第2のガラス溶融槽20の溶融ガラス液面よりも150cm以上高い状態で紡糸する。より好ましくは、230cm〜460cmとする。この程度の高さにすれば、第1のガラス溶融槽612の溶融ガラス液面を大気圧と比べて0.4〜0.9気圧程度低くすることができ、溶融ガラス中のガスが連続的に既存の気泡内に拡散して泡径が急激に大きくなることで、大きな脱泡効果を得ることができる。
【0183】
また、第1のガラス溶融槽612が晒される減圧雰囲気、すなわち減圧ハウジング616内の気圧と大気圧との圧力差が一定になるように、第1の吸引装置618による吸引量を制御する。このようにすることで、大気圧の微小な変動による溶融ガラスの液面変動を抑えることができる。
【0184】
更に、第1のガラス溶融槽612への固形原料の投入量は、第2のガラス溶融槽20の溶融ガラス液面の高さに基づいて、その高さが一定になるように制御する。また、第2のガラス溶融槽20の溶融ガラス液面の面積を、第1のガラス溶融槽612の溶融ガラス液面の面積以上とする。このようにすれば、第2のガラス溶融槽20の液位の変動を少なくすることができ、第2のガラス溶融槽20の壁面と溶融ガラスの接触面からの抱込み泡の発生を抑制することができる。また、紡糸するガラス繊維の太さの変動を抑制し、ガラス繊維の番手変動による成形品の強度や電気特性のバラツキを抑えることができる。
【0185】
以上詳述したように、本実施形態のガラス溶融装置600では、第1のガラス溶融槽612において減圧雰囲気下で固形原料を溶融することで、溶融ガラスから気泡を除くことができるため、紡糸されるガラス繊維中への気泡の混入を効果的に低減することが可能となる。そして、下部開閉機構628cを閉めた状態で容器部628aに固形原料を投入し、上部開閉機構628b及び下部開閉機構628cを閉じた状態で容器部628a内を減圧し、下部開閉機構628cのみを開けて固形原料を第1のガラス溶融槽612に投入することで、第1のガラス溶融槽612を大気圧に晒すことなく固形原料を第1のガラス溶融槽612に投入することができるため、第1のガラス溶融槽612の圧力変動を抑えることができる。これにより、第1のガラス溶融槽612における溶融ガラスの液位変動が抑えられるため、第1のガラス溶融槽612の壁面と溶融ガラスの接触面からの抱込み泡の発生を抑制することができる。なお、第1のガラス溶融槽612における溶融ガラスの液位変動が抑えられるため、第2のガラス溶融槽20における溶融ガラスの液位変動も抑えられ、第2のガラス溶融槽20の壁面と溶融ガラスの接触面からの抱込み泡の発生を抑制することができる。これにより、紡糸するガラス繊維の太さの変動を抑制し、ガラス繊維の番手変動による成形品の強度や電気特性のばらつきを抑えることができる。
【0186】
このとき、固形原料を直接第1のガラス溶融槽612に投入すると、第1のガラス溶融槽612の底部の早流れにより、溶融ガラスから気泡を除くための十分な滞留時間が確保できないおそれがある。しかしながら、減圧ハウジング616の導入口616a直下にバスケット634を設けることで、圧力容器628から投入された固形原料は、バスケット634内において溶融された後に、開口634aから流出して第1のガラス溶融槽612から導管14に流れていく。これにより、第1のガラス溶融槽612内において溶融ガラスから気泡を除くための十分な滞留時間を確保することができるため、紡糸されるガラス繊維中への気泡の混入をより効果的に低減することが可能となる。
【0187】
そして、第1のガラス溶融槽612に上部仕切板636を設けることで、溶融ガラスから除かれた気泡が溶融ガラスの流れに伴って進行するのを上部仕切板636により阻害することができるため、この気泡が導管14に流れていくのを防止することができる。これにより、紡糸されるガラス繊維中への気泡の混入をより効果的に低減することが可能となる。
【0188】
また、第1のガラス溶融槽612に下部仕切板638を設けることで、第1のガラス溶融槽612において溶融された溶融ガラスは、下部仕切板638を乗り越えた後に導管14に流れていくため、溶融ガラスから気泡を除くために十分な滞留時間を確保することができるとともに、溶融ガラスから除かれた気泡が、第1のガラス溶融槽612の底部の早流れに乗って導管14に流れていくのを防止することができる。これにより、紡糸されるガラス繊維中への気泡の混入をより効果的に低減することが可能となる。しかも、完全に溶融していない固形原料は、下部仕切板638により進行を阻害されるため、この固形原料が導管14に流れていくのを防止することができる。
【0189】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく、種々の変形が可能である。例えば、第1の実施形態では、一の第1のガラス溶融槽12から一の第2のガラス溶融槽20に溶融ガラスを供給して紡糸する場合について説明したが、
図15に示すガラス溶融装置100aのように、多数のノズル22aを有するブッシング22が底部に設けられた第3のガラス溶融槽60を備えていてもよい。
【0190】
第3のガラス溶融槽60の構造は、第2のガラス溶融槽20と同様である。このガラス溶融装置100aでは、第3のガラス溶融槽60を複数備えており、これら第3のガラス溶融槽60は上部が開口され大気圧雰囲気に晒されている。第2のガラス溶融槽20と第3のガラス溶融槽60とは、連通管62により連通されており、第2のガラス溶融槽20から第3のガラス溶融槽60へと溶融ガラスが供給されるようになっている。ここで、連通管62および第3のガラス溶融槽60には独立して温度制御可能な加熱手段が設けられていると好ましい。
【0191】
このガラス溶融装置100aは、第3のガラス溶融槽60を備えるため、一の第1のガラス溶融槽12を共用して、より多くのガラス繊維を効率よく製造することができる。また、第2のガラス溶融槽20や一の第3のガラス溶融槽60に不具合が発生しても、当該溶融槽の下部のブッシングの温度を低くして紡糸を停止し、第2の溶融槽や他の第3の溶融槽の下部のブッシングのノズルから紡糸を継続することができる。
【0192】
なお、更に第3のガラス溶融槽60を設け、第3のガラス溶融槽60同士を連通管62で連通してもよい。また、第2及び第3のガラス溶融槽20,60の液位の変動を少なくする観点からは、第2及び第3のガラス溶融槽20,60の溶融ガラス液面の面積を実質的に同一にし、第2及び第3のガラス溶融槽20,60の溶融ガラス液面の面積の合計を、第1のガラス溶融槽12の溶融ガラス液面の面積以上とすると好ましい。
【0193】
また、
図16に示すガラス溶融装置100bのように、導管14から直接溶融ガラスが供給される第2のガラス溶融槽20を複数備えてもよい。この場合、導管14は途中で第2のガラス溶融槽20の数だけ分岐される。このようにしても、一の第1のガラス溶融槽12を共用して、より多くのガラス繊維を効率よく製造することができる。なお、第2のガラス溶融槽20は互いに連通管で連通していてもよい。
【0194】
また、複数の第2のガラス溶融槽20の液位の変動を少なくする観点からは、それぞれの第2のガラス溶融槽20の溶融ガラス液面の面積を実質的に同一にし、複数の第2のガラス溶融槽20の溶融ガラス液面の面積の合計を、第1の溶融槽の溶融ガラス液面の面積以上とすることが好ましい。
【0195】
また、第1の実施形態では、一の第1のガラス溶融槽12から一の第2のガラス溶融槽20に溶融ガラスを供給して紡糸する場合について説明したが、複数の第1のガラス溶融槽12から一の第2のガラス溶融槽20に溶融ガラスを供給するようにしてもよい。このようにすれば、一の第1のガラス溶融槽12での溶融ガラスの供給に不具合が生じた場合は、不具合が発生した第1のガラス溶融槽12やその下部の導管14で溶融ガラスを冷却することで、溶融ガラスを固めて一の第1のガラス溶融槽12からの溶融ガラスの供給を停止しつつ、他の第1のガラス溶融槽12からの溶融ガラスの供給により紡糸を継続することができる。なお、この場合においても、第2のガラス溶融槽20の液位の変動を少なくする観点からは、第1のガラス溶融槽12の溶融ガラス液面の面積を実質的に同一にし、第2のガラス溶融槽20の溶融ガラス液面の面積を、複数の第1のガラス溶融槽12の溶融ガラス液面の面積の合計以上とすると好ましい。
【0196】
また、第1の実施形態では、第2のガラス溶融槽20にブッシング22が一つ設けられる形態について説明したが、
図17に示すガラス溶融装置100cのように、第2のガラス溶融槽20を大きくして、底部にブッシング22を複数設けるように構成してもよい。このようにすれば、一つのブッシング22で不具合が生じても、他のブッシング22を介して紡糸を続けることで、安定したガラス繊維の製造が可能になる。
【0197】
さらに、
図1に示すガラス溶融装置100や、
図17に示すガラス溶融装置100cを複数並列に設け、それぞれの第2のガラス溶融槽を連通管で連通することもできる。この場合、第1の溶融槽や導管で不具合が発生しても、また第2の溶融槽や連通管で不具合が発生しても、作業を中断することなく安定して連続してガラス繊維を製造することができる。
【0198】
また、第3及び第4の実施形態では、導管ハウジング317b内に耐火断熱レンガ24aと弾性断熱材24bとが収容されているものとして説明したが、初期状態で耐火断熱レンガ24aのみを収容しておき、導管14及び導管ハウジング317bが熱膨張したときに、断熱材挿入口370から弾性断熱材24bを挿入するものとしてもよい。
【0199】
また、第4の実施形態において、仕切部材420は、導管ハウジング317bの内壁から内側に突出するフランジ状に形成されるものとして説明したが、断熱材24を仕切るとともに支持することができれば如何なる形状であってもよく、導管ハウジング317bの内壁から内側に突出する舌片状や矩形板状であってもよい。
【0200】
また、第6の実施形態では、第2の吸引装置630により圧力容器628の容器部628a内を減圧するものとして説明したが、
図18に示すガラス溶融装置600aのように、第1の吸引装置618により圧力容器628の容器部628a内を減圧するものとしてもよい。この場合、第1の吸引装置618と容器部628aとを連通する配管にバルブ650を取り付けておき、通常時はバルブ650を閉めておき、容器部628a内を減圧するときのみバルブ650を開ける。このように構成することで、第1のガラス溶融槽612の気圧と容器部628a内の気圧とを容易に一致させることができる。しかも、第1の吸引装置618のみで第1のガラス溶融槽612と容器部628aとの双方を減圧させることができるため、コストを低減することができる。
【0201】
また、第6の実施形態では、導入口616aの直下にバスケット634を設けるものとして説明したが、
図19に示すガラス溶融装置600bのように、バスケット634の代わりに第1のガラス溶融槽612を仕切る仕切板660を設けるものとしてもよい。この仕切板660は、上部仕切板636及び下部仕切板638よりも導入口616aに近接した位置であって、上部仕切板636及び下部仕切板638よりも上流に配置されている。仕切板660は、第1のガラス溶融槽612を横断するように第1のガラス溶融槽612の底面から上方に向けて延在しており、中央部及び上部に複数の開口660aが形成されている。このため、開口660aは、溶融ガラスの液面付近に配置される。
【0202】
このように構成することで、第1のガラス溶融槽612に投入された固形原料670は、仕切板660に仕切られた領域内に収容された状態で溶融され、溶融した溶融ガラスのみが開口660aから導管14に向けて流れ出す。そして、仕切板660の下部に開口660aを形成しないことで、ガラス溶融装置600の立ち上げ時や気圧の変動などの理由で第1のガラス溶融槽612の液位がバスケット634よりも低下した場合でも、仕切板660に仕切られた導入口616a直下の領域に溶融ガラスを溜めておくことができる。このため、圧力容器628から投入された固形原料が直接第1のガラス溶融槽612に衝突することにより生じる第1のガラス溶融槽612の変形や、第1のガラス溶融槽612の白金が異物となって溶融ガラスに混ざるのを防止することができる。
【0203】
また、第6の実施形態では、容器部628a内の気圧と減圧ハウジング616内の気圧とを同圧化させるために同圧化バルブ632を設けるものとして説明したが、例えば、下部開閉機構628cを僅かに開けることで、容器部628a内の気圧と減圧ハウジング616内の気圧とを同圧化させるものとしてもよい。
【0204】
また、第6の実施形態では、上部仕切板636及び下部仕切板638をそれぞれ2組ずつ設けるものとして説明したが、その数、組み合わせ、配置方法などは適宜選択することができ、例えば、1組ずつ設けてもよく、何れか一方のみを設けてもよい。
【実施例】
【0205】
次に、
図1に示すガラス溶融装置100を用いてガラス繊維を製造した場合における、脱泡効果を確かめる実証試験とその試験結果について説明する。
【0206】
この実証試験では、
図1に示すガラス溶融装置100を用いて、第1のガラス溶融槽12にEガラスマーブルを直接投入し、溶融と減圧脱泡を同時に行い、導管14、第2のガラス溶融槽20を介して、ブッシング22でガラス繊維の溶融紡糸を行なった。そして、このガラス溶融装置100を用いて溶融ガラスを高速で紡糸し、良好にガラス繊維を得ることができることを確かめた。そして、脱泡効果を確かめるため、第2の溶融槽のブッシング22のノズルから溶融ガラスを流下させビーズ状にすることで、ビーズ内に混入する気泡の個数を顕微鏡観察により調べた。
【0207】
ここで、原料投入量のばらつきにより、ブッシング22のノズル22aから吐出される流量と等価にならない場合を想定して、第2のガラス溶融槽20の液面面積は、第1のガラス溶融槽12の液面面積と同等(34000mm
2)とすることで、第2のガラス溶融槽20の液面変動を制御しやすく、ガラス繊維の繊維径への原料投入量のばらつきによる影響を低くした。
【0208】
減圧脱泡による溶融紡糸の定常運転が開始された後、ブッシング22のノズル22aから吐出された溶融ガラスをビーズ状になるまで保持した後、これを採取した。
【0209】
なお、この実証試験における各条件を表1に示す。
【表1】
【0210】
1個当たり約3〜10g(平均約6g)のガラスビーズ50kgを顕微鏡観察し、ビーズ内の気泡の個数を調べた。気泡の数は1個/kgであった。
【0211】
また、別個の溶融槽で第1の溶融槽、導管、および第2の溶融槽中の溶融ガラスと同重量のガラスマーブルを大気圧下で溶融し、得られたガラスマーブルの気泡数を同様の方法で調べた。気泡数は約100個/kgであった。このことから減圧脱泡によるガラス溶融装置100の脱泡効果が高いことが分わかった。
【0212】
図20は、大気圧でのみガラスを溶融し、ガラスの静水圧によりブッシングのノズルから溶融ガラスを流下させて作製したガラス塊(同図(a))と、
図1のガラス溶融装置100により溶融ガラスを減圧脱泡してガラスを溶融して、溶融ガラスを流下させて作製したガラス塊(同図(b))のガラスビーズを顕微鏡で観察した写真である。
図20に示すように、本実施形態のガラス溶融装置100により溶融ガラスを減圧脱泡して紡糸した場合、顕著な脱泡効果が得られることが分かる。