特許第5660034号(P5660034)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5660034立方晶窒化硼素焼結体および被覆立方晶窒化硼素焼結体
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  • 特許5660034-立方晶窒化硼素焼結体および被覆立方晶窒化硼素焼結体 図000008
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5660034
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】立方晶窒化硼素焼結体および被覆立方晶窒化硼素焼結体
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/583 20060101AFI20150108BHJP
   C04B 41/87 20060101ALI20150108BHJP
   B23B 27/14 20060101ALI20150108BHJP
【FI】
   C04B35/58 103J
   C04B41/87 N
   B23B27/14 B
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-509370(P2011-509370)
(86)(22)【出願日】2010年4月16日
(86)【国際出願番号】JP2010056873
(87)【国際公開番号】WO2010119962
(87)【国際公開日】20101021
【審査請求日】2011年7月8日
(31)【優先権主張番号】特願2009-100642(P2009-100642)
(32)【優先日】2009年4月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000221144
【氏名又は名称】株式会社タンガロイ
(74)【代理人】
【識別番号】100078662
【弁理士】
【氏名又は名称】津国 肇
(74)【代理人】
【識別番号】100116919
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 房幸
(72)【発明者】
【氏名】福島 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】梅村 崇
【審査官】 正 知晃
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−176367(JP,A)
【文献】 特開平07−082031(JP,A)
【文献】 特開昭61−197469(JP,A)
【文献】 福島雄一郎 他,cBN-Ti(C,N)基焼結体の組織と機械的特性に及ぼすTi(C,N)原料粉のN/(C+N)比率の影響,粉体粉末冶金協会講演概要集平成19年度秋季大会,日本,粉体粉末冶金協会,2007年11月19日,第21頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/583
B23B 27/14
C04B 41/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化チタンおよび炭窒化チタンを含有する結合相と立方晶窒化硼素と不可避的不純物とからなり、Cu−Kα線を用いたX線回折測定における、炭窒化チタンの(200)面回折線のブラッグ角2θと窒化チタンの(200)面回折線のブラッグ角2θとの間隔が0.30°以上0.60°以下であり、炭窒化チタンの(200)面回折線の半価幅が0.30°以上0.50°以下であり、
酸化アルミニウム:立方晶窒化硼素焼結体全体に対して3〜30体積%と、
窒化チタンと炭窒化チタンの合計:立方晶窒化硼素焼結体全体に対して10〜60体積%と、
硼化チタン:立方晶窒化硼素焼結体全体に対して1〜30体積%と、
窒化アルミニウムおよび硼化アルミニウムの1種または2種:立方晶窒化硼素焼結体全体に対して10体積%以下とからなる
合計して立方晶窒化硼素焼結体全体に対して20〜80体積%の結合相と、
立方晶窒化硼素焼結体全体に対して80〜20体積%の立方晶窒化硼素および不可避的不純物とから構成され、
Cu−Kα線を用いたX線回折測定における、炭窒化チタンの(200)面回折線のピーク強度ITiCNに対する窒化チタンの(200)面回折線のピーク強度ITiNのピーク強度比(ITiN/ITiCN)が0.1〜0.5である、立方晶窒化硼素焼結体。
【請求項2】
窒化チタンの(200)面回折線の半価幅が0.25°以上0.45°以下である請求項1に記載の立方晶窒化硼素焼結体。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の立方晶窒化硼素焼結体の表面に被膜を被覆した被覆立方晶窒化硼素焼結体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立方晶窒化硼素焼結体および被覆立方晶窒化硼素焼結体に関するものである。具体的には、切削工具、耐摩耗工具として最適な立方晶窒化硼素含有焼結体および被覆立方晶窒化硼素焼結体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
立方晶窒化硼素は、ダイヤモンドに次ぐ硬さと優れた熱伝導性を持ち、鉄との親和性が低いという特徴を持つ。立方晶窒化硼素と金属やセラミックスの結合相とでなる立方晶窒化硼素焼結体は切削工具や耐摩耗工具などに応用されてきた。立方晶窒化硼素焼結体の従来技術としては、立方晶窒化硼素と、酸化アルミニウムと、窒化アルミニウムおよび/またはホウ化アルミニウムと、炭化チタン、窒化チタンおよび/または炭窒化チタンと、ホウ化チタンとからなる立方晶窒化硼素焼結体がある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−82031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
加工能率を上げるため従来よりも切削条件が厳しくなる傾向の中で、これまでより工具寿命を長くすることが求められてきた。しかしながら、特許文献1に記載の立方晶窒化硼素焼結体ではこうした要求に十分に答えられなくなってきた。本発明は、このような問題を解決するもので、耐摩耗性を低下させずに耐欠損性および靭性を高め、切削工具や耐摩耗工具の工具寿命を長くする立方晶窒化硼素焼結体および被覆立方晶窒化硼素焼結体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、立方晶窒化硼素焼結体に関する研究を行ってきたところ、立方晶窒化硼素焼結体の靭性を高めるためには、発生した亀裂の伝播を抑制することが重要であり、そのためには、立方晶窒化硼素焼結体の結合相が多くの粒界を持つこと、結合相の粒子が強固に結合していることが有効であるという知見を得て本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明は、窒化チタンおよび炭窒化チタンを含有する結合相と、立方晶窒化硼素と、不可避的不純物とからなり、Cu−Kα線を用いたX線回折測定における、炭窒化チタンの(200)面回折線のブラッグ角2θと、窒化チタンの(200)面回折線のブラッグ角2θとの間隔が0.30°以上0.60°以下であり、炭窒化チタンの(200)面回折線の半価幅が0.30°以上0.50°以下であることを特徴とする立方晶窒化硼素焼結体である。本発明において、各回折線のブラッグ角2θとは、各回折線のX線回折強度が最大値(ピーク強度)を示すブラッグ角2θを意味し、炭窒化チタンの(200)面回折線のブラッグ角2θと、窒化チタンの(200)面回折線のブラッグ角2θとの間隔とは、それぞれのX線回折強度が最大値(ピーク強度)を示すブラッグ角2θ間の絶対値を意味する。また、各回折線の半価幅とは、各回折線についてX線回折強度が最大値(ピーク強度)が半分になる位置のピーク幅を意味する。さらには、本発明の立方晶窒化硼素焼結体において、窒化チタンの(200)面回折線の半価幅が0.25°以上0.45°以下であると好ましく、Cu−Kα線を用いたX線回折測定における、炭窒化チタンの(200)面回折線のピーク強度ITiCNに対する窒化チタンの(200)面回折線のピーク強度ITiNのピーク強度比(ITiN/ITiCN)が0.1〜0.5である立方晶窒化硼素焼結体であると好ましく、立方晶窒化硼素焼結体は、酸化アルミニウム:立方晶窒化硼素焼結体全体に対して3〜30体積%と、窒化チタンと炭窒化チタンの合計:立方晶窒化硼素焼結体全体に対して10〜60体積%と、硼化チタン:立方晶窒化硼素焼結体全体に対して1〜30体積%と、窒化アルミニウムおよび硼化アルミニウムの1種または2種:立方晶窒化硼素焼結体全体に対して10体積%以下とからなる合計して立方晶窒化硼素焼結体全体に対して20〜80体積%の結合相と、立方晶窒化硼素焼結体全体に対して20〜80体積%の立方晶窒化硼素および不可避的不純物とから構成されると好ましく、これらの立方晶窒化硼素焼結体の表面に被膜を被覆した被覆立方晶窒化硼素焼結体であると好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明の立方晶窒化硼素焼結体および被覆立方晶窒化硼素焼結体は、耐摩耗性、耐欠損性および靭性に優れる。そのため、本発明の立方晶窒化硼素焼結体および被覆立方晶窒化硼素焼結体を切削工具や耐摩耗工具として用いると工具寿命を延長することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の立方晶窒化硼素焼結体のX線回折図形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の立方晶窒化硼素焼結体は結合相と立方晶窒化硼素と不可避的不純物とからなる。本発明の立方晶窒化硼素は、結合相が立方晶窒化硼素焼結体全体に対して80体積%を超えて多くなると耐欠損性が低下し、結合相が立方晶窒化硼素焼結体全体に対して20体積%未満になると、耐摩耗性が低下するので、立方晶窒化硼素焼結体全体に対して20〜80体積%の結合相と、立方晶窒化硼素焼結体全体に対して20〜80体積%の立方晶窒化硼素と不可避的不純物とからなる立方晶窒化硼素焼結体が好ましい。さらに好ましくは、立方晶窒化硼素焼結体全体に対して30〜70体積%の結合相と、立方晶窒化硼素焼結体全体に対して70〜30体積%の立方晶窒化硼素と不可避的不純物とからなり、最も好ましくは、40〜60体積%の結合相と、60〜40体積%の立方晶窒化硼素と不可避的不純物とからなる立方晶窒化硼素焼結体である。
【0010】
本発明の結合相は窒化チタンおよび炭窒化チタンを含有する。本発明の結合相は、窒化チタンと炭窒化チタンとから構成されてもよいが、窒化チタンと炭窒化チタン以外に、周期表4(Ti,Zr,Hf等),5(V,Nb,Ta等),6(Cr,Mo,W等)族元素、アルミニウムの炭化物、窒化物、硼化物、珪化物およびこれらの相互固溶体、Fe、Co、Ni、Cr、Mo、Wおよびこれらの合金の中の少なくとも1種を含有しても好ましい。窒化チタンと炭窒化チタン以外の結合相として、具体的には、硼化チタン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、硼化アルミニウムなどを挙げることができる。
【0011】
原料粉末として窒化チタンと炭窒化チタンとを同時に添加して本発明の結合相を得ることができる。炭素と窒素の含有量が異なるチタン化合物の混合物を焼結することにより、相互固溶体を生成しやすくし、結合相粒子間の結合を強固にすることができる。本発明の立方晶窒化硼素焼結体について、Cu−Kα線を用いたX線回折測定を行うと、炭窒化チタンの(200)面回折線のブラッグ角2θと窒化チタンの(200)面回折線のブラッグ角2θとの間隔が0.30°以上0.60°以下になる。この間隔が0.30°未満になると結合相粒子間の結合が強化されにくくなり、この間隔が0.60°を超えて大きくなると高温下での鉄との耐反応性が低下するため、この間隔を0.30°以上0.60°以下とした。この間隔は、好ましくは0.30°以上0.50°以下であり、更に好ましくは0.30°以上0.45°以下である。
【0012】
この間隔は、窒化チタンの(200)面回折線のブラッグ角2θの位置と、炭窒化チタンの(200)面回折線のブラッグ角2θの位置を調整することにより、調整することができる。窒化チタンの(200)面回折線のブラッグ角2θは、原料粉末の窒化チタン粉末に含まれる金属元素と非金属元素の比で調整することができる。具体的には、原料粉末の窒化チタン粉末に含まれる金属元素(Ti)に対する非金属元素(N)の原子比xが1よりも小さくなるに従って、焼結体の窒化チタンの(200)面回折線のブラッグ角2θは高角度側にシフトする。例えば、焼結体の窒化チタン(200)面回折線のブラッグ角2θについて、x=1のとき2θ=42.49〜42.59°、x=0.8のとき2θ=42.58〜42.68°、x=0.6のとき2θ=42.66〜42.76°になる。一方、炭窒化チタンの(200)面回折線のブラッグ角2θは、原料粉末の炭窒化チタン粉末に含まれる、金属元素と非金属元素の比と、炭素と窒素の比で調整することができる。具体的には、原料粉末の炭窒化チタン粉末に含まれる金属元素(Ti)に対する非金属元素(CN)の原子比xが1よりも小さくなるに従って、焼結体の炭窒化チタンの(200)面回折線のブラッグ角2θは高角度側にシフトする。例えば、原料粉末の炭窒化チタン粉末に含まれる炭素と窒素の合計に対する炭素の原子比xが0.5のとき、焼結体の炭窒化チタン(200)面回折線のブラッグ角2θについて、x=1のとき2θ=42.08〜42.18°、x=0.8のとき2θ=42.13〜42.23°、x=0.6のとき2θ=42.21〜42.31°になる。また、原料粉末の炭窒化チタン粉末に含まれる炭素と窒素の合計に対する炭素の原子比が多くなると、焼結体の炭窒化チタンの(200)面回折線のブラッグ角2θは低角度側にシフトする。例えば、原料粉末の炭窒化チタン粉末に含まれる金属元素(Ti)に対する非金属元素(CN)の原子比xを1とし、原料粉末の炭窒化チタン粉末に含まれる炭素と窒素の合計に対する炭素の原子比xを0.4にすると、焼結体の炭窒化チタンの(200)面回折線のブラッグ角2θは、2θ=42.16〜42.26°になる。また、原料粉末の炭窒化チタン粉末に含まれる金属元素(Ti)に対する非金属元素(CN)の原子比xを1とし、原料粉末の炭窒化チタン粉末に含まれる炭素と窒素の合計に対する炭素の原子比xを0.7にすると、焼結体の炭窒化チタンの(200)面回折線のブラッグ角2θは、2θ=41.91〜42.01°になる。本発明の立方晶窒化硼素焼結体の原料粉末としては、窒化チタン粉末に含まれる金属元素(Ti)に対する非金属元素(N)の原子比xが1である窒化チタン粉末と、炭窒化チタン粉末に含まれる金属元素(Ti)に対する非金属元素(CN)の原子比xが1であり、炭窒化チタン粉末に含まれる炭素と窒素の合計に対する炭素の原子比xが0.4〜0.7である炭窒化チタン粉末を用いると好ましい。xが1未満である窒化チタン粉末およびxが1未満である炭窒化チタン粉末よりも、x=1の窒化チタン粉末およびx=1の炭窒化チタン粉末を用いると好ましい理由は、xが1未満である窒化チタン粉末およびxが1未満である炭窒化チタン粉末は、非金属元素よりも過剰に金属元素が含まれるので、過剰な金属元素が立方晶窒化硼素、Al、チタン化合物などと反応生成物を生成しやすく、得られた焼結体は、粒界が不明確になり、クラックが進展しやすく、強度が低下する傾向を示すためである。
【0013】
本発明の立方晶窒化硼素焼結体に含まれる窒化チタンの(200)面回折線のピーク強度をITiN、炭窒化チタンの(200)面回折線のピーク強度をITiCNと表したとき、ITiCNに対するITiNのピーク強度比(ITiN/ITiCN)が0.1未満であると、窒化チタンが少なくなるため、鉄との耐反応性が低下する。逆に(ITiN/ITiCN)が0.5を超えて多くなると、本発明の結合相に含まれる窒化チタンが多くなるため立方晶窒化硼素焼結体の機械的強度が低下する。そのため、ITiCNに対するITiNのピーク強度比(ITiN/ITiCN)は0.1〜0.5であるとさらに好ましく、最も好ましくは0.1〜0.3である。ピーク強度比(ITiN/ITiCN)は、原料粉末の窒化チタン粉末と炭窒化チタン粉末の配合比により調整することができる。具体的には、原料粉末に含まれる炭窒化チタン粉末に対する窒化チタン粉末の配合比を体積比で、窒化チタン粉末/炭窒化チタン粉末=0.1〜0.5にすると、ピーク強度比(ITiN/ITiCN)を0.1〜0.5にすることができる。
【0014】
本発明の立方晶窒化硼素焼結体に含まれる炭窒化チタンの(200)面回折線の半価幅は0.30°以上を示すと、炭窒化チタンの平均粒径は細かくなり立方晶窒化硼素焼結体の機械的強度が向上する。しかしながら、炭窒化チタンの(200)面回折線の半価幅は0.50°を超えて大きくなると、炭窒化チタンの平均粒径が細かくなり過ぎて亀裂伝播は粒界破壊が主となり、靭性が低下する。そのため、炭窒化チタンの(200)面回折線の半価幅を0.30°以上0.50°以下とした。この半価幅は、好ましくは0.30°以上0.45°以下であり、更に好ましくは0.30°以上0.40°以下である。この半価幅は、原料粉末の炭窒化チタンの平均粒径とボールミル混合時間により調整することができる。具体的には、炭窒化チタン粉末の平均粒径を0.8〜1.5μmとし、ボールミル混合時間を1〜120時間とすることにより、炭窒化チタンの(200)面回折線の半価幅を0.30°以上0.50°以下にすることができる。
【0015】
本発明の立方晶窒化硼素焼結体に含まれる窒化チタンの(200)面回折線の半価幅は0.25°以上を示すと、窒化チタンの平均粒径は細かくなり立方晶窒化硼素焼結体の機械的強度がさらに向上する。窒化チタンの(200)面回折線の半価幅は0.45°を超えて大きくなると、窒化チタンの平均粒径が細かくなって亀裂伝播は粒界破壊が主となり、靭性が低下する傾向を示す。そのため、窒化チタンの(200)面回折線の半価幅は0.25°以上0.45°以下であると好ましい。この半価幅は、好ましくは0.25°以上0.40°以下であり、更に好ましくは0.25°以上0.35°以下である。この半価幅は、原料粉末の窒化チタンの平均粒径とボールミル混合時間により調整することができる。具体的には、窒化チタン粉末の平均粒径を0.8〜1.5μmとし、ボールミル混合時間を1〜120時間とすることにより、窒化チタンの(200)面回折線の半価幅を0.25°以上0.45°以下にすることができる。
【0016】
炭窒化チタンの(200)面回折線と窒化チタンの(200)面回折線のブラッグ角2θと半価幅とピーク強度は市販のX線回折装置を用いて測定することができる。例えば、株式会社リガク製 X線回折装置RINT TTRIIIを用いて、Cu−Kα線を用いた2θ/θ集中光学系のX線回折測定を、出力:50kV、250mA、入射側ソーラースリット:5°、発散縦スリット:1/2°、発散縦制限スリット:10mm、散乱スリット2/3°、受光側ソーラースリット:5°、受光スリット:0.15mm、BENTモノクロメータ、受光モノクロスリット:0.8mm、サンプリング幅:0.02°、スキャンスピード:0.1°/min、2θ測定範囲:40〜46°という条件で行うと、炭窒化チタンの(200)面回折線と窒化チタンの(200)面回折線についてブラッグ角2θと半価幅とピーク強度を測定できる。炭窒化チタンの(200)面回折線と窒化チタンの(200)面回折線が重なっている場合は、X線回折装置付属の解析用ソフトウェアによるピーク分離を行って、炭窒化チタンの(200)面回折線と窒化チタンの(200)面回折線のブラッグ角2θと半価幅とピーク強度を個別に確認することができる。
【0017】
本発明の立方晶窒化硼素焼結体に含まれる、立方晶窒化硼素(cBN)とcBN以外の各相(例えば、TiN、Ti(C0.50.5)、Ti(C0.80.2)、Ti(C0.20.8)、TiB2,AlN、Al23など)の含有量(体積%)は、SEM観察、EDS分析、X線回折測定から求めることができる。具体的には、まず、立方晶窒化硼素焼結体の断面組織についてSEM観察およびEDS分析を行い、SEM写真の画像解析により得られるcBNの面積からcBNの含有量(体積%)を求め、残部を結合相の含有量(体積%)とする。次に、立方晶窒化硼素焼結体をX線回折測定して、立方晶窒化硼素焼結体の各相を同定するとともに、各相のピーク強度を測定する。さらに、立方晶窒化硼素焼結体におけるcBNのピーク強度に対する各相のピーク強度比を算出する。次に、立方晶窒化硼素焼結体に含まれる各相と同じ成分の粉末を用意する。立方晶窒化硼素焼結体のSEM観察で得られたcBNの含有量(体積%)とcBN粉末の配合量(体積%)と同じにして、cBN以外の粉末についてはいくつか配合比を変えて、これらの粉末を配合する。このとき、cBN以外の粉末の配合量(体積%)の合計を、立方晶窒化硼素焼結体のSEM観察で得られた結合相の含有量(体積%)と同じにする。このような比率で配合した粉末をよく混合する。得られた混合粉末についてX線回折測定を行い、各相のピーク強度を測定し、混合粉末におけるcBNのピーク強度に対する各相のピーク強度比を算出する。次に、混合粉末におけるcBNのピーク強度に対する各相のピーク強度比と、各相の配合量(体積%)の関係を示す検量線を得る。この検量線を用いて、立方晶窒化硼素焼結体におけるcBN以外の各相のピーク強度比から、立方晶窒化硼素焼結体におけるcBN以外の各相の含有量(体積%)を求めることができる。
【0018】
本発明の立方晶窒化硼素焼結体は、酸化アルミニウム:立方晶窒化硼素焼結体全体に対して3〜30体積%と、窒化チタンと炭窒化チタンの合計:立方晶窒化硼素焼結体全体に対して10〜60体積%と、硼化チタン:立方晶窒化硼素焼結体全体に対して1〜30体積%と、窒化アルミニウムおよび硼化アルミニウムの1種または2種:立方晶窒化硼素焼結体全体に対して10体積%以下とからなる合計して立方晶窒化硼素焼結体全体に対して20〜80体積%の結合相と、立方晶窒化硼素焼結体全体に対して80〜20体積%の立方晶窒化硼素および不可避的不純物とから構成されると、立方晶窒化硼素焼結体の耐摩耗性と靭性のバランスが良く工具として用いたときに寿命をさらに長くする効果が得られるので好ましい。これは以下の理由による。製造過程で原料粉末中のアルミニウム粉末は、原料粉末に吸着した酸素や、空気中の酸素と結合して酸化アルミニウムを形成するが、酸化アルミニウムが立方晶窒化硼素焼結体全体に対して3体積%未満になると靭性が低下し、逆に酸化アルミニウムが立方晶窒化硼素焼結体全体に対して30体積%を超えて多くなると耐摩耗性が低下する。窒化チタンと炭窒化チタンの合計が立方晶窒化硼素焼結体全体に対して10体積%未満になると耐摩耗性が低下し、逆に窒化チタンと炭窒化チタンの合計が60体積%を超えて多くなると他の結合相成分が相対的に少なくなるため靭性および耐熱性は低下する。硼化チタンが立方晶窒化硼素焼結体全体に対して1体積%未満になると靭性が低下し、逆に硼化チタンが立方晶窒化硼素焼結体全体に対して30体積%を超えて多くなると耐摩耗性が低下する。窒化アルミニウムおよび硼化アルミニウムの1種または2種が立方晶窒化硼素焼結体全体に対して10体積%を超えて多くなると機械的強度および靭性が低下する。より好ましくは、立方晶窒化硼素焼結体全体に対し、酸化アルミニウム:3〜20体積%、窒化チタンと炭窒化チタンの合計:20〜55体積%、硼化チタン:1〜20体積%、窒化アルミニウムおよび硼化アルミニウムの1種または2種:9体積%以下からなる結合相であり、更に好ましくは、酸化アルミニウム:3〜15体積%、窒化チタンと炭窒化チタンの合計:30〜55体積%、硼化チタン:1〜10体積%、窒化アルミニウムおよび硼化アルミニウムの1種または2種:8体積%以下からなる結合相である。
【0019】
本発明の立方晶窒化硼素焼結体に不可避的に含有される不純物としては、立方晶窒化硼素焼結体の原料粉末から混入されるCu等が挙げられる。不可避的不純物の合計量は、一般的には立方晶窒化硼素焼結体全体に対して0.5重量%以下であり、通常は立方晶窒化硼素焼結体全体に対して0.2重量%以下に抑えることができるので、本発明の特性値に影響を及ぼすことはない。なお、本発明においては、本発明の立方晶窒化硼素焼結体の特性を損わない範囲で、立方晶窒化硼素と結合相と不可避的不純物に他に、不可避的不純物とはいえない他の成分を少量含有してもよい。
【0020】
本発明の被膜は、周期表4、5、6族元素、Al、Siの金属、酸化物、炭化物、窒化物、硼化物およびこれらの相互固溶体の中の少なくとも1種からなる。具体的には、TiN、TiC、TiCN、TiAlN、TiSiN、CrAlNなどを挙げることができる。被膜は単層または2層以上の積層のいずれでも好ましく、組成が異なる層厚5〜200nmの薄膜を交互に積層した交互積層膜でも好ましい。被膜の平均膜厚は、0.5μm未満であると期待する工具寿命の延長効果が小さくなり、15μmを超えると耐欠損性が低下する傾向を示すことから、0.5〜15μmであると好ましく、その中でも1〜10μmがさらに好ましく、その中でも1.5〜5μmがさらに好ましい。
【0021】
本発明の立方晶窒化硼素焼結体は、炭窒化チタンに含まれる炭素と窒素の合計に対する炭素の原子比が0.3〜0.7である平均粒径0.5〜1.0μmの炭窒化チタン粉末と、平均粒径0.5〜1.2μmの窒化チタン粉末と、アルミニウム粉末と、立方晶窒化硼素粉末と、パラフィンとを混合し、得られた混合物を成型し、圧力1X10-3Torr以下の真空中にて温度700〜1000℃で真空熱処理を行って、パラフィンなどの有機物を除去した後、超高圧高温発生装置に入れて、圧力4〜6GPa、温度1400〜1600℃の条件で焼結することで得られる。
【0022】
本発明の立方晶窒化硼素焼結体および被覆立方晶窒化硼素焼結体は、耐摩耗性、耐欠損性および靭性に優れるため、切削工具、耐摩耗工具に応用されると好ましく、その中でも切削工具に応用されるとさらに好ましい。
【実施例】
【0023】
[実施例1]
平均粒径2μmの立方晶窒化硼素(cBN)粉末、表1に示す平均粒径のTi(C0.50.5)粉末、Ti(C0.80.2)粉末、Ti(C0.20.8)粉末およびTiN粉末(いずれも金属元素と非金属元素の比率が原子比で1:1の化学量論組成であるTi化合物)、平均粒径2μmのAl粉末を用いて表1に示す配合組成に配合した。配合した原料粉末を超硬合金製ボールとヘキサン溶媒とパラフィンとともにボールミル用のシリンダーに入れてボールミル混合を48時間行った。ボールミルで混合粉砕して得られた混合粉末を圧粉成型した後、1X10-5Torr、850℃の条件で脱パラフィン処理をした。脱パラフィン処理をした圧粉成型体を金属カプセルに封入し、金属カプセルを超高圧高温発生装置に入れて、圧力5.5GPa、温度1500℃、保持時間30分の条件で焼結して、発明品および比較品の立方晶窒化硼素焼結体を得た。
【0024】
【表1】
【0025】
こうして得られた立方晶窒化硼素焼結体の断面組織をSEM観察し、EDS分析して、cBNの含有量(体積%)と結合相の含有量(体積%)を求めた。次に、立方晶窒化硼素焼結体をX線回折測定して立方晶窒化硼素焼結体の各相(cBN、Ti(C0.50.5)、Ti(C0.80.2)、Ti(C0.20.8)、TiN、TiB2、Al23、AlNなど)を同定した。立方晶窒化硼素焼結体に含まれている各相と同じ組成(cBN、Ti(C0.50.5)、Ti(C0.80.2)、Ti(C0.20.8)、TiN、TiB2、Al23、AlNなど)の粉末を用意した。立方晶窒化硼素焼結体のSEM観察で得られたcBNの含有量とcBN粉末の配合組成が同じになるように、cBN以外の粉末については配合組成を変えて、これらの粉末を配合した。このとき、cBN以外の粉末の体積%の合計は、立方晶窒化硼素焼結体のSEM観察で得られた結合相の含有量(体積%)と同じになるようにした。このような比率で配合した粉末をよく混合した。得られた混合粉末についてX線回折測定を行い、各相のピーク強度を測定し、cBNのピーク強度に対する各相のピーク強度比を算出した。次に、cBNのピーク強度に対する各相のピーク強度比と、各相の配合組成(体積%)の関係を示す検量線を得た。この検量線を用いて、立方晶窒化硼素焼結体のcBN以外の各相のピーク強度比から、立方晶窒化硼素焼結体に含まれるcBN以外の各相の含有量(体積%)を求めた。さらに立方晶窒化硼素焼結体の破壊靭性値K1Cを測定した。これらの結果は表2に示した。
【0026】
【表2】
【0027】
次に、得られた焼結体について、株式会社リガク製X線回折装置RINT TTRIIIを使用して、出力:50kV、250mA、入射側ソーラースリット:5°、発散縦スリット:1/2°、発散縦制限スリット:10mm、散乱スリット2/3°、受光側ソーラースリット:5°、受光スリット:0.15mm、BENTモノクロメータ、受光モノクロスリット:0.8mm、サンプリング幅:0.02°、スキャンスピード:0.1°/min、2θ測定範囲:40〜46°という条件で、Cu−Kα線を用いた2θ/θ集中光学系のX線回折測定を行った。得られたX線回折図形をピーク分離して、ピーク分離後の炭窒化チタン(Ti(C0.20.8)、Ti(C0.50.5)またはTi(C0.80.2))の(200)面回折線と窒化チタン(TiN)の(200)面回折線について、それぞれのブラッグ角2θ、ピーク強度、半価幅を測定し、それらを表3に示した。
【0028】
【表3】
【0029】
また、炭窒化チタンの(200)面回折線のブラッグ角2θと窒化チタンの(200)面回折線のブラッグ角2θの間隔、炭窒化チタン(Ti(C0.20.8)、Ti(C0.50.5)またはTi(C0.80.2))の(200)面回折線のピーク強度ITiCNに対する窒化チタン(TiN)の(200)面回折線のピーク強度ITiNのピーク強度比(ITiN/ITiCN)を算出し、それらを表4に示した。
【0030】
【表4】
【0031】
発明品および比較品について、焼結体をワイヤ放電加工機で、所定の形状にカットして超硬合金基材にろう付けし、研削仕上げ加工をしてISO規格CNGA120408切削インサート形状の切削工具を得た。これらの切削インサートを用いて、下記の切削試験(1)及び(2)を行った。その結果を表5に示す。
【0032】
切削試験(1)
外周連続乾式切削(旋削)、
被削材:SCM415H(HRC60.9〜61.7)、
被削材形状:円柱φ63mm×L200mm、
切削速度:250m/min、
切込み:0.25mm、
送り:0.1mm/rev、
切削インサート形状:ISO規格CNGA120408、
評価:VBc=0.15mmに達するまでの切削時間あるいは欠損までの切削時間。
【0033】
切削試験(2)
外周弱断続乾式切削(旋削)、
被削材:SCM435H(HRC60.9〜61.7)、
被削材形状:90°V溝2本入り円柱φ48mm×L200mm、
切削速度:200m/min、
切込み:0.25mm、
送り:0.1mm/rev、
切削インサート形状:ISO規格CNGA120408、
評価:VBc=0.15mmに達するまでの切削時間あるいは欠損までの切削時間。
【0034】
【表5】
【0035】
本発明の焼結体は従来の立方晶窒化硼素焼結体に比べて破壊靭性値K1Cが高く、その結果、切削時の耐欠損性が上昇し、連続切削および弱断続切削において従来品に比べて欠損を生じにくい。炭窒化チタンのピーク強度に対する窒化チタンのピーク強度の比(ITiN/ITiCN)が0.1〜0.5の場合には、特に優れた切削性能を示し、工具寿命が長い。
【0036】
[実施例2]
実施例1の発明品3の表面にPVD装置を用いて被覆処理を行った。平均膜厚3μmのTiNを被覆したものを発明品6、平均膜厚3μmのTiAlNを被覆したものを発明品7とした。発明品6、7について実施例1と同じ切削試験(1)(2)を行った。その結果を表6に示す。
【0037】
【表6】
【0038】
被膜を被覆した発明品6、7は、被膜を被覆していない発明品3よりも、さらに工具寿命を長くすることができた。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の立方晶窒化硼素焼結体および被覆立方晶窒化硼素焼結体は、耐摩耗性、耐欠損性および靱性に優れ、特に切削工具や耐摩耗工具として用いた場合に工具寿命を延長できるので、産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0040】
1 ピーク分離する前のX線回折図形
2 ピーク分離した後の炭窒化チタンの(200)面回折線
3 ピーク分離した後の窒化チタンの(200)面回折線
4 ピーク分離した後の立方晶窒化硼素の(111)面回折線
図1