(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
分割コア構造では、典型的には、回転電機の磁気抵抗を低減させるために、互いに隣接するコアブロックを嵌め合わせた際に凸部と凹部の隙間が小さくなるように構成される。しかしながら、特許文献1のコアブロックでは、鋼板の積層する方向に凸部および凹部が延びており、鋼板の板厚偏差が比較的大きいと、隣接するコアブロックの凸部および凹部の嵌め合わせを適切に行えないことがある。このため、特許文献1のコアブロックには、板厚偏差の比較的小さい材料から形成された鋼板を用いることが必要であり、材料選択の自由度が低く、コストの低減を図ることが困難であった。
【0006】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、板厚偏差の比較的大きな材料から形成された鋼板を使用可能なコアブロック、固定子、回転電機およびコアブロックの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるコアブロックは、複数の鋼板の積層された積層構造を備えるコアブロックであって、前記積層構造は、第1側面を含むヨーク部を有しており、前記ヨーク部の前記第1側面は、平坦領域と、凸部および凹部の少なくとも一方が設けられた少なくとも1つの段差領域とを有し、前記第1側面の前記平坦領域は、前記少なくとも1つの段差領域に対して積層方向に位置する積層方向平坦領域と、前記少なくとも1つの段差領域に対して径方向に位置し、前記積層方向平坦領域と同一平面に位置する径方向平坦領域とを含む。
【0008】
ある実施形態において、前記第1側面の前記径方向平坦領域は、前記少なくとも1つの段差領域に対して両側に位置する。
【0009】
ある実施形態において、前記ヨーク部の前記第1側面に、前記凸部および前記凹部の両方が設けられている。
【0010】
ある実施形態において、前記凸部および前記凹部のうちの一方は、前記第1側面の前記積層方向の長さを規定する2つの辺のうちの一方に位置しており、前記凸部および前記凹部のうちの他方は、前記第1側面の前記積層方向の長さを規定する前記2つの辺のうちの他方に位置している。
【0011】
ある実施形態において、前記第1側面に、前記凸部または前記凹部が2つ設けられている。
【0012】
ある実施形態において、前記2つの前記凸部または前記凹部のうちの一方は、前記第1側面の前記積層方向の長さを規定する2つの辺のうちの一方に位置しており、前記2つの前記凸部または前記凹部のうちの他方は、前記第1側面の前記積層方向の長さを規定する前記2つの辺のうちの他方に位置している。
【0013】
ある実施形態において、前記第1側面の前記積層方向平坦領域は、前記第1側面の径方向にわたって位置する。
【0014】
ある実施形態において、前記ヨーク部は第2側面をさらに含み、前記第2側面は、平坦領域と、凸部および凹部の少なくとも一方が設けられた少なくとも1つの段差領域とを有し、前記第2側面において、前記平坦領域は、前記少なくとも1つの段差領域に対して積層方向に位置する積層方向平坦領域と、前記少なくとも1つの段差領域に対して径方向に位置し、前記積層方向平坦領域と同一平面に位置する径方向平坦領域とを含む。
【0015】
ある実施形態において、前記第2側面の前記少なくとも1つの段差領域は前記第1側面の前記少なくとも1つの段差領域に対応する位置に設けられている。
【0016】
ある実施形態において、前記第2側面の前記少なくとも1つの段差領域に、前記凸部が設けられており、前記第2側面の前記少なくとも1つの段差領域に対応する前記第1側面の前記少なくとも1つの段差領域に、前記凸部が設けられている。
【0017】
ある実施形態において、前記第2側面の前記少なくとも1つの段差領域に、前記凸部が設けられており、前記第2側面の前記少なくとも1つの段差領域に対応する前記第1側面の前記少なくとも1つの段差領域に、前記凹部が設けられている。
【0018】
本発明による固定子は、上記に記載のコアブロックを複数備えるコアと、前記複数のコアブロックのそれぞれの前記ヨーク部に支持されたティース部とを備える。
【0019】
ある実施形態において、前記複数のコアブロックは、互いに隣接する第1コアブロックおよび第2コアブロックを含み、前記第1コアブロックの前記凸部は、前記第2コアブロックの前記凹部と嵌合している。
【0020】
ある実施形態において、前記複数のコアブロックは互いに同一の形状を有している。
【0021】
本発明による回転電機は、上記に記載の固定子と、前記固定子の前記ティース部に巻きつけられたコイルと、回転子とを備える。
【0022】
本発明によるコアブロックの製造方法は、平坦領域と凸部および凹部の少なくとも一方が設けられた段差領域とを含む段差側面を有する第1鋼板を用意する工程と、平坦領域を含む側面を有する第2鋼板を用意する工程と、前記第2鋼板における前記側面の前記平坦領域が、前記第1鋼板における前記段差側面の前記段差領域に対して積層方向に位置するとともに前記段差側面の前記平坦領域に同一平面に位置するように前記第1鋼板および前記第2鋼板を積層する工程とを包含する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、板厚偏差の比較的大きな材料から形成された鋼板を用いてコアブロックを作製することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明によるコアブロック、固定子、回転電機およびコアブロックの製造方法の実施形態を説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0026】
図1に、本実施形態のコアブロック10の模式図を示す。コアブロック10は、鋼板12が複数積層された積層構造14を有している。積層構造14は、ヨーク部16を有している。積層構造14を構成する鋼板12は、例えば、電磁鋼板である。電磁鋼板は、無方向性電磁鋼板であってもよく、方向性電磁鋼板であってもよい。なお、コアブロック10の材料は、鉄に限定されることはなく、鉄にケイ素等の所定の不純物を添加したものであってもよい。コアブロック10の材料として強磁性材料を用いることが好ましい。
【0027】
ヨーク部16は、側面20a、20b、内周面20c、外周面20d、扇面20e、20fを有している。ヨーク部16は、ほぼ円筒形状の部材を母線方向かつ径方向に沿って2つの平面で切断した形状を有している。本明細書において、側面20aを第1側面20aと記載することがあり、側面20bを第2側面20bと記載することがある。このようなコアブロック10を複数組み合わせることによって円筒状のコアが形成される。
【0028】
図2に、
図1に示したコアブロック10を複数用いて構成されたコア110の模式図を示す。複数のコアブロック10から円筒状のコア110が形成される。ここでは、コア110は、12個のコアブロック10から構成されている。
図2において、方向Drは、コア110の径方向を示しており、方向Dcは、コア110の円周方向を示している。なお、複数のコアブロック10は、必要に応じて、治具等によって固定されてもよい。
【0029】
ここで、
図3および
図4を参照してコアブロック10の構成を説明する。
図3には、ヨーク部16の一方の側面20aが図示されており、
図4には、ヨーク部16の他方の側面20bが図示されている。なお、
図1に示したように、コアブロック10は、鋼板12の積層構造14を有しているが、図面が過度に複雑になることを避けるために、
図1、
図8および
図16以外の図面では、鋼板12の積層を省略して図示している。本明細書において、方向Drを径方向と記載し、方向Dcを円周方向と記載し、方向Dtを積層方向と記載することがある。径方向Drは、円周方向Dcおよび積層方向Dtのそれぞれと直交している。
【0030】
まず、
図3を参照して、ヨーク部16の側面20aの構成を説明する。側面20aの積層方向Dtに沿った長さは、側面20aおよび扇面20eの境界に位置する辺Eaと、側面20aおよび扇面20fの境界に位置する辺Ebとによって規定される。また、側面20aの径方向Drに沿った長さは、側面20aおよび内周面20cの境界に位置する辺Ecと、側面20aおよび外周面20dの境界に位置する辺Edとによって規定される。
【0031】
ヨーク部16の側面20aは、平坦領域20sと、平坦領域20sに対して突起および/または凹んだ段差領域20tとを有している。ここでは、側面20aに、平坦領域20sに対して突起した凸部20Pおよび凹んだ凹部20Qの両方が設けられているが、側面20aに、凸部20Pおよび凹部20Qの一方のみが設けられてもよい。
【0032】
本実施形態のコアブロック10において、平坦領域20sは、段差領域20tに対して積層方向Dtに位置する積層方向平坦領域20s1と、段差領域20tに対して径方向Drに位置する径方向平坦領域20s2とを含む。積層方向平坦領域20s1および径方向平坦領域20s2は同一平面に位置しており、径方向平坦領域20s2は積層方向平坦領域20s1と連続した平面を形成している。なお、本明細書において、積層方向平坦領域20s1および径方向平坦領域20s2を、それぞれ、平坦領域20s1、20s2と記載することがある。
【0033】
本実施形態のコアブロック10では、側面20aにおいて、平坦領域20s1が段差領域20tに対して積層方向Dtに位置しており、段差領域20tの積層方向Dtに沿った長さは比較的短い。このため、鋼板12の板厚偏差が多少大きくても、他のコアブロック10と容易に組み合わせることができ、板厚偏差の比較的大きな材料から形成された鋼板12を使用することができる。また、コアブロック10では、平坦領域20s1、20s2が段差領域20tに対して積層方向Dtおよび径方向Drにそれぞれ設けられており、これにより、平坦領域20sの面積を比較的大きくでき、隣接するコアブロック10との密着をより確実にして隣接するコアブロック10との隙間を低減させることができる。
【0034】
なお、
図3に示したコアブロック10では、凸部20Pは、第1側面20aの積層方向Dtに沿った端部に位置しており、具体的には、凸部20Pは側面20aの辺Ebおよびその近傍に位置している。また、凸部20Pは第1側面20aの径方向Drに沿った中央に位置しており、凸部20Pの両側には平坦領域20s2が位置している。
【0035】
凹部20Qは、第1側面20aの積層方向Dtに沿った端部に位置しており、具体的には、凹部20Qは側面20aの辺Eaおよびその近傍に位置している。また、凹部20Qは第1側面20aの径方向Drに沿った中央に位置しており、凹部20Qの両側には平坦領域20s2が位置している。
【0036】
なお、段差領域20tの径方向Drに沿った長さは比較的小さく、平坦領域20s2の径方向Drに沿った長さは比較的大きいことが好ましい。例えば、平坦領域20s2の径方向Drに沿った長さは段差領域20tの径方向Drに沿った長さよりも大きくてもよい。
【0037】
また、平坦領域20s1の積層方向Dtに沿った長さは比較的大きいことが好ましい。例えば、平坦領域20s1の積層方向Dtに沿った長さは平坦領域20s2の積層方向Dtに沿った長さよりも大きくてもよい。平坦領域20sの面積が大きい場合、隣接するコアブロック10間の隙間が小さくなる。このため、後述するように、回転電機の磁気抵抗を低減させることができる。
【0038】
なお、
図3に示したコアブロック10では、平坦領域20s1は、段差領域20tの積層方向Dtに位置するだけでなく、平坦領域20s2の積層方向Dtにも位置している。ここでは、平坦領域20s1は径方向Drに沿って辺Ecから辺Edにまたがっており、平坦領域20s1は側面20aの径方向Drにわたって位置している。このため、平坦領域20s1の径方向Drに沿った長さは平坦領域20s2の径方向Drに沿った長さよりも大きい。
【0039】
次に、
図4を参照して、ヨーク部16の側面20bの構成を説明する。ヨーク部16の側面20bは、平坦領域20sと、段差領域20tとを有している。ここでは、側面20bの段差領域20tに、平坦領域20sに対して突起した凸部20Pおよび凹んだ凹部20Qの両方が設けられているが、側面20bに、凸部20Pおよび凹部20Qの一方のみが設けられてもよい。
【0040】
側面20bにおいて、平坦領域20sは、段差領域20tに対して積層方向Dtに位置する積層方向平坦領域20s1と、段差領域20tに対して径方向Drに位置する径方向平坦領域20s2とを含む。積層方向平坦領域20s1および径方向平坦領域20s2は同一平面に位置している。
【0041】
典型的には、側面20a、20bは、円周方向Dcに垂直であり、積層方向Dtに平行である。ただし、側面20a、20bは、円周方向Dcに垂直でなくてもよく、積層方向Dtに平行でなくてもよい。また、典型的には、径方向Drは、側面20a、20bの平坦領域20s1、20s2に平行である。
【0042】
図3および
図4に示したコアブロック10において、2つの凸部20Pは側面20a、20bの円周方向Dcに沿って対応する位置に設けられており、2つの凹部20Qは側面20a、20bの円周方向Dcに沿って対応する位置に設けられている。
【0043】
また、ここでは、凸部20Pは三角柱形状を有しており、その三角形状の面は扇面20e、20fと平行である。円周方向Dcに沿って凸部20Pが高くなるにつれて、凸部20Pの径方向Drに沿った長さは小さくなる。また、凹部20Qは三角柱形状に対応する形状を有しており、その三角形状の面は扇面20e、20fと平行である。円周方向Dcに沿って凹部20Qが深くなるにつれて、凹部20Qの径方向Drに沿った長さは小さくなる。
【0044】
なお、側面20bにおける凸部20Pおよび凹部20Qの大きさおよび形状は、側面20aにおける凸部20Pおよび凹部20Qの大きさおよび形状とほぼ等しいことが好ましい。また、側面20a、20bにおいて、凹部20Qの円周方向Dcに沿った深さは、凸部20Pの円周方向Dcに沿った高さとほぼ等しいことが好ましい。ただし、厳密には、凹部20Qの円周方向Dcに沿った深さは、凸部20Pの円周方向Dcに沿った高さよりも若干大きいことが好ましい。
【0045】
例えば、側面20a、20bの積層方向Dtに沿った長さは25.0mm以上150.0mm以下であり、凸部20Pまたは凹部20Qの積層方向Dtに沿った長さは2.5mm以上15.0mm以下である。また、側面20a、20bの径方向Drに沿った長さは4.0mm以上8.5mm以下であり、凸部20Pまたは凹部20Qの径方向Drに沿った長さは1.2mm以上2.0mm以下である。
【0046】
ヨーク部16の外径の円周方向Dcに沿った長さ(外周面20dの円周方向Dcに沿った長さ)は22.0mm以上45.0mm以下であり、ヨーク部16の内径の円周方向Dcに沿った長さ(内周面20cの円周方向Dcに沿った長さ)は20.0mm以上39.0mm以下である。また、側面20a、20bの凸部20Pの円周方向Dcに沿った高さは2.0mm以上3.0mm以下であり、側面20a、20bの凹部20Qの円周方向Dcに沿った深さは2.02mm以上3.02mm以下である。なお、
図1に示した各鋼板12の厚さは0.35mm以上0.50mm以下である。
【0047】
図3および
図4を参照して上述示したコアブロック10では、側面20bの段差領域20tは側面20aの段差領域20tと対応する位置に設けられている。
【0048】
図5(a)、
図5(b)および
図5(c)に、このコアブロック10を、外周面20d、扇面20eおよび扇面20fからそれぞれ見た模式図を示す。ここでは、側面20bには、側面20aの凹部20Qが設けられた領域に対応して、凹部20Qが設けられており、側面20aの凸部20Pが設けられた領域に対応して、凸部20Pが設けられている。
【0049】
図6に示すように、コアブロック10を複数組み合わせることにより、
図2に示したコア110が作製される。組み合わせの際に、互いに隣接する2つのコアブロック10のうちの一方のコアブロック10の凸部20Pは、他方のコアブロック10の凹部20Qと嵌め合わされる。
図6では、互いに隣接する2つのコアブロック10に着目し、この2つのコアブロック10のうち一方をコアブロック10aと記載し、他方をコアブロック10bと記載している。
【0050】
コアブロック10aの凹部20Qは、コアブロック10bの凸部20Pに対応する形状および大きさを有しており、コアブロック10bの凸部20Pがコアブロック10aの凹部20Qと嵌め合わされる。また、コアブロック10aの凸部20Pは、コアブロック10bの凹部20Qに対応する形状および大きさを有しており、コアブロック10aの凸部20Pはコアブロック10bの凹部20Qと嵌め合わされる。このような嵌合により、鋼板12の板厚偏差が比較的大きい場合でも、コアブロック10a、10bを確実に組み合わせることができる。
【0051】
なお、複数のコアブロック10は、互いに同一の形状を有していることが好ましい。この場合、コアブロック10の製造コストを低減させることができる。ここでは、コアブロック10bはコアブロック10aとほぼ同一の形状を有しており、コアブロック10aの凸部20Pの設けられる位置がコアブロック10bの凸部20Pと反対側を向くように配置されている。
【0052】
上述したコアブロック10では、側面20a、20bのそれぞれにおいて、凸部20Pは三角柱形を有しており、凹部20Qは三角柱形状に対応する形状を有している。
【0053】
図7は、扇面20eから見たコアブロック10a、10bの嵌合を示す模式図である。
図7に示すように、コアブロック10bの凸部20Pはコアブロック10aの凹部20Qと嵌合している。なお、コアブロック10aの凹部20Qの円周方向Dcに沿った深さは、コアブロック10bの凸部20Pの円周方向Dcに沿った高さとほぼ等しい。ただし、厳密には、コアブロック10aの凹部20Qの円周方向Dcに沿った深さは、コアブロック10bの凸部20Pの円周方向Dcに沿った高さよりも若干大きい。
【0054】
以下に、
図8を参照してコアブロック10の製造方法を説明する。例えば、
図3〜
図7を参照して説明したコアブロック10は3種類の鋼板12を用いて製造される。
【0055】
まず、
図8(a)に示すように、側面12a1、12a2を有する鋼板12aを用意する。ここでは、複数の鋼板12aのそれぞれはほぼ同一の形状を有している。側面12a1は、平坦部12sと、凹部12qが設けられた段差部12tとを有する段差側面である。同様に、側面12a2は、平坦部12sと、凹部12qが設けられた段差部12tとを有する段差側面である。複数の鋼板12aの凹部12qによってコアブロック10の側面20a、20bの凹部20Qが形成され、複数の鋼板12aの平坦部12sによってコアブロック10の側面20a、20bの平坦領域20s2が形成される。
【0056】
また、
図8(b)に示すように、側面12b1、12b2を有する鋼板12bを用意する。ここでは、複数の鋼板12bのそれぞれはほぼ同一の形状を有している。側面12b1は平坦部12sを有しており、側面12b2は平坦部12sを有している。複数の鋼板12bの平坦部12sによってコアブロック10の側面20a、20bの平坦領域20s1が形成される。
【0057】
さらに、
図8(c)に示すように、側面12c1、12c2を有する鋼板12cを用意する。ここでは、複数の鋼板12cのそれぞれはほぼ同一の形状を有している。側面12c1は、平坦部12sと、凸部12pが設けられた段差部12tとを有する段差側面である。同様に、側面12c2は、平坦部12sと、凸部12pが設けられた段差部12tとを有する段差側面である。複数の鋼板12cの凸部12pによってコアブロック10の側面20a、20bの凸部20Pが形成され、複数の鋼板12cの平坦部12sによってコアブロック10の側面20a、20bの平坦領域20s2が形成される。なお、本明細書において、鋼板12aを第1鋼板12aと記載し、鋼板12bを第2鋼板12bと記載し、鋼板12cを第3鋼板12cと記載することがある。
【0058】
次に、
図8(d)に示すように、鋼板12cの上に鋼板12bを積層する。この場合、鋼板12bにおける側面12b1の平坦部12sが、鋼板12cにおける側面12c1の段差部12tに対して積層方向Dtに位置するとともに側面12c1の平坦部12sと同一平面に位置している。また、鋼板12bにおける側面12b2の平坦部12sが、鋼板12cにおける側面12c2の段差部12tに対して積層方向Dtに位置するとともに側面12c2の平坦部12sと同一平面に位置している。
【0059】
また、鋼板12bの上に鋼板12aを積層する。この場合、鋼板12bにおける側面12b1の平坦部12sは鋼板12aにおける側面12a1の段差部12tに対して積層方向Dtに位置するとともに側面12a1の平坦部12sと同一平面に位置している。また、鋼板12bにおける側面12b2の平坦部12sは鋼板12aにおける側面12a2の段差部12tに対して積層方向Dtに位置するとともに側面12a2の平坦部12sと同一平面に位置している。以上のようにして第1〜第3鋼板12a〜12cの積層された積層構造14を備えるコアブロック10が作製される。
【0060】
例えば、鋼板12a、12b、12cは、順送り金型装置における鋼板の打ち抜きによって作製される。例えば、複数の鋼板12a、12b、12cは異なる金型を用いて打ち抜かれ、その後、複数の鋼板12a、12b、12cはカシメを介して所定の位置で積層される。
【0061】
なお、上述したコアブロック10では、凸部20Pおよび凹部20Qはそれぞれ三角柱形状または三角柱形状に対応する凹形状を有していたが、本発明はこれに限定されない。例えば、
図9(a)に示すように、凸部20Pは、円周方向Dcに沿って平坦領域20s2から延びた幅狭部20P1と、平坦領域20s2に対して幅狭部20P1よりも円周方向Dcに沿って離れて位置し、幅狭部20P1の径方向Drに沿った幅よりも大きな直径の断面球状を有する円柱部20P2とを有してもよい。または、
図9(b)に示すように、凸部20Pの断面は台形状であってもよい。ここでは、台形状において、凸部20Pの径方向Drに沿った長さは、円周方向Dcに沿って平坦領域20s2から離れるにつれて大きくなる。あるいは、
図9(c)に示すように、凸部20Pは、円周方向Dcに沿って平坦領域20s2から延びた幅狭部20P1と、平坦領域20s2に対して幅狭部20P1よりも円周方向Dcに沿って離れて位置し、径方向Drに沿った幅が幅狭部20P1よりも大きい幅広部20P2とを有してもよい。このように、凸部20Pと凹部20Qの形状を、円周方向Dcに互いに係り合う形状にすることにより、組み立てられたコアブロック10の固定を確実にすることができる。
【0062】
また、
図6を参照して上述したようにコアブロック10の側面20a、20bのそれぞれの両端に凸部20Pおよび凹部20Qが設けられているとともに、これらの凸部20Pおよび凹部20Qが
図7、
図9(a)、
図9(b)または
図9(c)に示したように互いに対応する形状を有するように構成すれば、組み立てられたコアブロック10の固定を確実にすることができ、また、コアブロック10を積層方向Dtから簡単に差し込むことができるため、複数のコアブロック10の組み立ても容易である。
【0063】
なお、上述した説明では、側面20a、20bのそれぞれに、凸部20Pおよび凹部20Qの両方が設けられていたが、本発明はこれに限定されない。側面20aに、凸部20Pおよび凹部20Qの一方が複数設けられてもよい。また、この場合、側面20bに、凸部20Pおよび凹部20Qの他方が複数設けられてもよい。
【0064】
ここで、
図10を参照して本実施形態のコアブロック10を説明する。
図10(a)および
図10(b)に、外周面20dおよび扇面20eからそれぞれ見たコアブロック10の模式図を示す。
図10に示したコアブロック10では、側面20aに2つの凹部20Qが設けられており、2つの凹部20Qは積層方向Dtに沿って並んでいる。また、側面20bに2つの凸部20Pが設けられており、2つの凸部20Pは積層方向Dtに沿って並んでいる。なお、側面20bにおいて2つの凸部20Pが設けられている領域は、側面20aにおいて2つの凹部20Qが設けられている領域に対応している。
【0065】
図11は、コアブロック10a、10bの嵌合を示す模式図である。
図11に示すように、隣接するコアブロック10のうちの一方(コアブロック10a)の凸部20Pを他方(コアブロック10b)の凹部20Qに嵌め合わせ、これにより、コア110が作製される。側面20a、20bの端部に、凸部20Pおよび凹部20Qがそれぞれ設けられていることにより、鋼板12の板厚偏差が比較的大きくても、コアブロック10a、10bの嵌合を確実に行うことができる。
【0066】
なお、上述した説明では、1つのコアブロック10における2つの凸部20Pは円周方向Dcまたは積層方向Dtに位置していたが、本発明はこれに限定されない。1つのコアブロック10において、凸部20Pの円周方向Dcおよび積層方向Dtにはそれぞれ凹部20Qが位置してもよい。
【0067】
ここで、
図12および
図13を参照してコアブロック10の構成を説明する。
図12には、ヨーク部16の一方の側面20aが図示されており、
図13は、ヨーク部16の他方の側面20bが図示されている。
【0068】
図12に示すように、側面20aにおいて、凹部20Qは辺Eaおよびその近傍に位置しており、凸部20Pは辺Ebおよびその近傍に位置している。これに対して、
図13に示すように、側面20bにおいて、凹部20Qは辺Ebおよびその近傍に位置しており、凸部20Pは辺Eaおよびその近傍に位置している。
【0069】
図12および
図13に示したコアブロック10では、側面20bの段差領域20tは側面20aの段差領域20tに対応する位置に設けられている。側面20bには、側面20aの凸部20Pが設けられた領域に対応して、凹部20Qが設けられており、側面20aの凹部20Qが設けられた領域に対応して、凸部20Pが設けられている。このように、側面20bの段差領域20tに、凸部20Pおよび凹部20Qの一方が設けられており、側面20bの段差領域20tに対応する側面20aの段差領域20tに、凸部20Pおよび凹部20Qの他方が設けられてもよい。
【0070】
図14は、コアブロック10a、10bの嵌合を示す模式図である。
図14に示すように、側面20a、20bにそれぞれ凸部20Pおよび凹部20Qの設けられたコアブロック10を嵌め合わせ、これにより、上述したコア110が作製される。側面20a、20bのそれぞれに、凸部20Pおよび凹部20Qの両方が設けられていることにより、鋼板12の板厚偏差が比較的大きくても、コアブロック10a、10bの嵌合を確実に行うことができる。
【0071】
なお、上述した説明では、側面20a、20bは、互いに分離された2つの段差領域20tを有しており、側面20a、20bのそれぞれに、凸部20Pおよび凹部20Qの少なくとも一方が2つ設けられていたが、本発明はこれに限定されない。側面20a、20bのそれぞれに、凸部20Pおよび凹部20Qの少なくとも一方が3つ以上設けられてもよい。あるいは、側面20a、20bのそれぞれに、凸部20Pまたは凹部20Qが1つ設けられてもよい。
【0072】
図15(a)および
図15(b)に、外周面20dおよび扇面20eからそれぞれ見たコアブロック10の模式図を示す。
図15に示したコアブロック10は、側面20aおよび側面20bに、1つの凸部20Pおよび凹部20Qがそれぞれ設けられている点を除いて
図10および
図11を参照して上述したコアブロック10と同様の構成を有しており、冗長を避けるために重複する説明を省略する。
【0073】
図15に示したコアブロック10において、側面20aは、平坦領域20sと、段差領域20tとを有しており、段差領域20tには、平坦領域20sに対して凹んだ凹部20Qが設けられている。また、側面20bは、平坦領域20sと、段差領域20tとを有しており、段差領域20tには、平坦領域20sに対して突起した凸部20Pが設けられている。
【0074】
以下に、
図16を参照して、
図15に示したコアブロック10の製造方法を説明する。
図15に示したコアブロック10は2種類の鋼板12を用いて製造される。
【0075】
まず、
図16(a)に示すように、側面12a1、12a2を有する鋼板12aを用意する。ここでは、複数の鋼板12aのそれぞれはほぼ同一の形状を有している。側面12a1は、平坦部12sと、凹部12qが設けられた段差部12tとを有する段差側面である。側面12a2は、平坦部12sと、凸部12pが設けられた段差部12tとを有する段差側面である。複数の鋼板12aの凹部12qによってコアブロック10の側面20aの凹部20Qが形成され、複数の鋼板12aの凸部12pによってコアブロック10の側面20bの凸部20Pが形成される。また、複数の鋼板12aの平坦部12sによってコアブロック10の側面20a、20bの平坦領域20s2が形成される。
【0076】
また、
図16(b)に示すように、側面12b1、12b2を有する鋼板12bを用意する。ここでは、複数の鋼板12bのそれぞれはほぼ同一の形状を有している。側面12b1は平坦部12sを有しており、側面12b2は平坦部12sを有している。複数の鋼板12bの平坦部12sによってコアブロック10の側面20a、20bの平坦領域20s1が形成される。なお、本明細書において、鋼板12aを第1鋼板12aと記載し、鋼板12bを第2鋼板12bと記載することがある。
【0077】
次に、
図16(c)に示すように、鋼板12bの上に鋼板12aを積層する。この場合、鋼板12bにおける側面12b1の平坦部12sが、鋼板12aにおける側面12a1の段差部12tに対して積層方向Dtに位置するとともに側面12a1の平坦部12sと同一平面に位置する。また、鋼板12bにおける側面12b2の平坦部12sが、鋼板12aにおける側面12a2の段差部12tに対して積層方向Dtに位置するとともに側面12a2の平坦部12sと同一平面に位置する。以上のようにして積層構造14を有するコアブロック10が作製される。
【0078】
なお、
図15および
図16を参照した説明では、コアブロック10の側面20aに凸部20Pが設けられ、側面20bに凹部20Qが設けられていたが、本発明はこれに限定されない。側面20aに凹部20Qが設けられ、側面20bに凸部20Pが設けられてもよい。以上のように、側面20aに、凸部20Pおよび凹部20Qの少なくとも一方が1つ設けられてもよく、同様に、側面20bに、凸部20Pおよび凹部20Qの少なくとも一方が1つ設けられてもよい。
【0079】
なお、上述した説明では、段差領域20tは、積層方向Dtに沿ったコアブロック10の側面20a、20bの端部に位置していたが、本発明はこれに限定されない。段差領域20tは、側面20a、20bの積層方向Dtに沿った端部以外の場所(例えば、中央)に位置してもよい。
【0080】
また、上述した説明では、段差領域20tは径方向Drに沿って側面20a、20bの中央に位置しており、段差領域20tに対して径方向Drに沿った両側に平坦領域20s2が位置していたが、本発明はこれに限定されない。段差領域20tは側面20a、20bの径方向Drに沿った端部に位置しており、平坦領域20s2は段差領域20tに対して径方向Drに沿った一方側のみに位置してもよい。なお、段差領域20tに対して径方向Drに沿った両側に平坦領域20s2が位置している場合、隣接するコアブロック10の凸部20Pおよび凹部20Qの嵌め合わせにより、コアブロック10の拘束をより確実にすることができる。
【0081】
なお、上述した説明では、ほぼ同一形状のコアブロック10を用いてコア110を作製したが、本発明はこれに限定されない。コア110は、形状の異なるコアブロック10を用いて作製されてもよい。
【0082】
コアブロック10は、固定子の作製に好適に用いられる。
図17に、本実施形態の固定子(ステータ)100の模式図を示す。固定子100は、複数のコアブロック10から構成されたコア110と、各コアブロック10のヨーク部16に支持されたティース部120とを備える。
【0083】
ティース部120は、コア110とは別途作製され、コア110に取り付けられてもよい。この場合、鋼板12として方向性電磁鋼板を用いることが好ましい。
【0084】
あるいは、ティース部120はヨーク部16と一体的に形成されてもよい。上述したように、コアブロック10のヨーク部16は鋼板12の積層構造から構成されるが、ティース部120もヨーク部16と同じ鋼板12の積層構造から構成されてもよい。この場合、鋼板12として無方向性電磁鋼板を用いることが好ましい。ここで、
図18および
図19を参照して、ヨーク部16およびティース部120が一体的に形成されたコアブロック10を説明する。
【0085】
まず、
図18を参照して、側面20a、20bのそれぞれに凸部20Pおよび凹部20Qの両方が設けられたコアブロック10を説明する。
図18(a)、
図18(b)および
図18(c)に、外周面20d、扇面20eおよび扇面20fからそれぞれ見たコアブロック10の模式図を示す。
図18(a)〜
図18(c)に示したコアブロック10は、ティース部120が設けられた点を除いて、
図5(a)〜
図5(c)を参照して上述したコアブロックと同様の構成を有しており、冗長を避けるために、重複する記載を省略する。
図18(b)および
図18(c)から理解されるように、コアブロック10では、ティース部120がヨーク部16から延びている。
【0086】
次に、
図19を参照して、側面20a、20bに2つの凸部20Pおよび2つの凹部20Qがそれぞれ設けられたコアブロック10を説明する。
図19(a)および
図19(b)に、外周面20dおよび扇面20eからそれぞれ見たコアブロック10の模式図を示す。
図19(a)および
図19(b)に示したコアブロック10は、ティース部120が設けられた点を除いて、
図10(a)および
図10(b)を参照して上述したコアブロックと同様の構成を有しており、冗長を避けるために、重複する記載を省略する。
図19(b)から理解されるように、コアブロック10では、ティース部120がヨーク部16から延びている。
【0087】
上述した固定子100は、回転電機の作製に好適に用いられる。
【0088】
図20に、本実施形態の回転電機200の模式図を示す。回転電機200は、モータとして用いられてもよく、あるいは、発電機として用いられてもよい。
【0089】
回転電機200は、固定子100と、固定子100のティース部120に巻きつけられたコイル210と、回転子220とを備える。コイル210は、集中巻で巻かれてもよく、分布巻で巻かれてもよい。なお、本実施形態の回転電機200では、上述したように、固定子100のコア110において、隣接するコアブロック10間の隙間を低減できるため、磁気抵抗の低減を図ることができる。
【0090】
図21に、回転電機200の別の模式図を示す。円筒状のフレーム112は、電磁鋼板を積層して形成されたコア110の外周を覆っている。コイル210は、図示していない薄い絶縁物を介してコア110内に巻装されている。コア110はフレーム112内に収められている。
【0091】
回転子220は、コア110の内側を貫通するように配置されている。回転子220は、シャフト222と、永久磁石224とを有している。永久磁石224は、シャフト222の軸方向中央部分の表面に固着されている。シャフト222の一端部は出力軸として機能する。軸受234は、シャフト222の両端に位置するブラケット232の内周に配置されており、シャフト222を回転可能に支持している。