(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記取付ブラケットの前記取付部が、前記車体側部材に固定される取付手段を貫通させるように、車幅方向に沿って貫通される取付孔を設け、かつ、該取付孔を上下に離して複数配置させて、前記挟持面部から前後方向で離れて配設されていることを特徴とする請求項1に記載のフード跳ね上げ装置。
前記取付ブラケットの取付部が、二枚の前記ブラケット板における前記挟持面部と前記締結部との間に、配設されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のフード跳ね上げ装置。
前記取付ブラケットの前記支点用係合部相互が、上方から見て、それぞれ、前記挟持面部から直線状に延びて直交交差するように、配設されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のフード跳ね上げ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のフード跳ね上げ装置では、アクチュエータの作動時におけるフードパネルの押し上げと、押上後におけるピストンロッドの後方側への曲げ変形との挙動を考えれば、シリンダの軸方向に沿った上下方向の移動規制と、シリンダの軸直交方向の移動規制との三次元的な移動規制を行ないつつ、取付ブラケットが、アクチュエータのシリンダを保持する必要がある。そのため、特許文献1のように、取付ブラケットの湾曲した半割り筒形状の部位で、アクチュエータのシリンダの外周面を保持し、かつ、シリンダをスポット溶接する場合には、的確に、シリンダの軸直交方向の移動規制とシリンダの軸方向に沿う移動規制との三次元的な移動規制を行なえるように、取付ブラケットの半割り筒形状部位の湾曲形状と、スポット溶接位置と、を、ある程度、厳格に管理しつつ組み付ける必要が生じ、組付時に手間がかかっていた。
【0008】
また、特許文献2に記載のフード跳ね上げ装置では、アクチュエータが、取付ブラケットにおける上下方向に貫通する貫通孔を設けた組付座に保持され、シリンダの軸直交方向の規制は、アクチュエータ側の雄ねじ部の配設された短い部位と、取付ブラケット側の貫通孔の内周面との間で行なわれるだけであって、十分とは言い難い。そのため、特許文献1に記載したように、上昇したピストンロッドを後方側に曲げ塑性変形させる場合には、特許文献2の構成では、シリンダの軸直交方向の移動を安定して規制する点に、課題が生ずる。
【0009】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、簡単な組み付けで、シリンダを安定した状態で取付ブラケットに保持させることができるフード跳ね上げ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
<請求項1の説明>
本発明に係るフード跳ね上げ装置は、軸方向を上下方向に沿わせて配設されるシリンダと、作動時にシリンダから上昇するピストンロッドと、を有して構成されるアクチュエータと、
該アクチュエータを保持して、車両のフードパネルの後部下方の車体側部材に取り付ける取付ブラケットと、
を備えて構成され、
前記アクチュエータの作動時、前記ピストンロッドを上昇させて、前記フードパネルの後部における押上部位を押し上げ、さらに、前記フードパネルの下降押圧時に、前記シリンダから突出した前記ピストンロッドを後方側へ曲げ塑性変形させる構成のフード跳ね上げ装置であって、
前記取付ブラケットが、前記車体側部材に取付可能な取付部を備えるとともに、前記シリンダの外周面を挟持可能な二枚のブラケット板を備えて構成され、
二枚の前記ブラケット板が、それぞれ、
前記シリンダの軸心を中心とした点対称となる位置の前記シリンダの外周面相互を挟持して、前記シリンダの軸直交方向の移動を規制可能な挟持面部と、
該挟持面部を間にした一方側に配設されて相互に係合する支点用係合部と、
前記挟持面部を間にした他方側に、締結孔を有して配設されて、該締結孔に挿通させて締結する締結手段により、相互に重ねて締結される締結部と、
を備えて構成されるとともに、
二枚の前記ブラケット板における前記支点用係合部が、
一方を貫通孔を設けた孔側係合部とし、他方を前記貫通孔に挿入させる挿入片部を有した挿入側係合部として構成されるとともに、
前記挿入片部を前記貫通孔に挿入させて相互に前記支点用係合部を係合させた際に、相互の係合部位を支点とし、相互の前記挟持面部を作用点とするように前記シリンダの外周面に当て、前記締結手段により、力点となるように前記締結部相互を締結させることによって、前記挟持面部を前記シリンダの外周面に圧接させて前記挟持面部により前記シリンダを挟持するように構成され、さらに、
前記シリンダの外周面における前記挟持面部に挟持される部位に、前記シリンダの軸直交方向に突出する突部が形成され、
前記シリンダの軸方向に沿った前記突部の上下移動を規制可能に、前記取付ブラケットに、前記突部を嵌合させる嵌合凹部が形成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明に係るフード跳ね上げ装置では、取付ブラケットにアクチュエータを保持させる際、取付ブラケットの各ブラケット板における支点用係合部相互について、まず、挿入片部を貫通孔に挿入させて、相互を係合させ、また、アクチュエータのシリンダの突部を嵌合凹部に嵌合可能に、シリンダを相互の挟持面部の間に配置させる。そして、相互の挟持面部をそれぞれシリンダの外周面に当てつつ、締結部相互を接近させ、支点用係合部の相互の係合部位をてこの支点として、その支点を回転中心とするように、二枚のブラケット板を回転させつつ接近させ、ついで、締結部相互を締結孔を挿通させる締結手段により締結させれば、締結部相互が力点となり、挟持面部相互が作用点となって、てこの原理で、二枚のブラケット板が挟持面部によりシリンダの外周面を強く挟持することができる。
【0012】
すなわち、この取付ブラケットでは、貫通孔に挿入片部を挿入させる相互の支点用係合部を係合させるとともに、相互の挟持面部の間に、シリンダを配置させ、その後、単に、締結部相互を締結手段により締結するだけで、簡単に、アクチュエータを強固に保持できる。
【0013】
そして、この保持態様では、シリンダの軸方向に沿った移動は、突部が嵌合凹部の内周面に当接して、位置規制され、また、シリンダの軸直交方向の移動は、シリンダの外周面が挟持面部で挟持され、挟持面部はシリンダの軸方向に沿って長く形成できることも相俟って、安定して規制され、その結果、取付ブラケットが安定してシリンダを保持することができる。
【0014】
したがって、本発明に係るフード跳ね上げ装置では、簡単な組み付けで、安定した状態でシリンダを取付ブラケットに保持させることができる。
【0015】
<請求項2の説明>
本発明に係るフード跳ね上げ装置では、前記取付ブラケットの前記取付部は、前記車体側部材に固定される取付手段を貫通させるように、車幅方向に沿って貫通される取付孔を設け、かつ、該取付孔を上下に離して複数配置させて、前記挟持面部から前後方向で離れて配設することが望ましい。
【0016】
このような構成では、上昇後のピストンロッドの後方側への曲げ塑性変形時、安定して、アクチュエータを保持できて、ピストンロッドを安定して塑性変形させることができる。
【0017】
すなわち、取付ブラケットの取付部は、挟持面部に対して車両の前後方向でずれて離れるように、配置され、さらに、車体側部材に対し、上下に離れて車幅方向に沿って貫通される複数の取付孔を貫通する取付手段により、取り付けられている。そのため、アクチュエータを挟持面部で保持している取付ブラケットが、上昇後のピストンロッドの後方側への曲げ塑性変形時、車両の前後方向に沿う回転モーメントを受けても、取付部を車体側部材に取り付けた上下の取付手段が、取付部に作用する回転モーメントに対して的確に対抗して、取付ブラケットを安定して車体側部材に取付固定しておくことができるからである。
【0018】
勿論、取付ブラケットの取付部は、車幅方向に沿って取付孔を貫通する取付手段に固定されて車体側部材に取り付けられており、車幅方向に沿う移動を防止して、アクチュエータを安定して車体側部材に取り付けておくことができる。
【0019】
<請求項3の説明>
本発明に係るフード跳ね上げ装置では、前記取付ブラケットの取付部は、二枚のブラケット板の一方にだけ、形成してもよい。
【0020】
このような構成の場合、フード跳ね上げ装置を搭載する車両が変更されても、取付部を設ける側のブラケット板を、搭載部位に対応させて変更させ、取付部を設けない側のブラケット板を変更せずに、対処することができる。すなわち、フード跳ね上げ装置を搭載する車両が変更されても、取付部を設けない側のブラケット板を、共用することができて、容易に対処することができる。
【0021】
<請求項4の説明>
本発明に係るフード跳ね上げ装置では、相互の前記締結部を、一つの締結手段によって、締結される構成として、
前記取付部の前記取付孔は、前記締結手段を間にした上下の両側に配置させることが望ましい。
【0022】
このような構成では、締結手段を一つにできることから、アクチュエータの組み付け作業が、一層、容易となる。さらに、取付ブラケットの取付部の取付孔が、一つの締結手段の上側と下側とに離れて配置されることから、取付ブラケットをバランスよく車体側部材に取り付けることができる。
【0023】
<請求項5の説明>
本発明に係るフード跳ね上げ装置では、前記取付ブラケットの取付部は、二枚の前記ブラケット板における前記挟持面部と前記締結部との間に、配設することが望ましい。
【0024】
このような構成では、取付部が挟持面部と締結部との間に配設されて、取付ブラケットの長さ寸法を、挟持面部と取付部とを間にした支点用係合部から締結部までの寸法とすることができることから、取付ブラケットをコンパクトに構成することができる。
【0025】
<請求項6の説明>
本発明に係るフード跳ね上げ装置では、前記取付ブラケットの前記支点用係合部相互は、上方から見て、それぞれ、前記挟持面部から直線状に延びて直交交差するように、配設することが望ましい。
【0026】
このような構成では、二枚のブラケット板の支点用係合部相互を、単に、挟持面部からシリンダの接線方向に延ばすように形成すればよく、容易に加工して形成できる。さらに、支点用係合部相互の係合時にも、挿入側係合部の挿入片部を、孔側係合部に対して略直交方向となるように向け、そして、貫通孔に挿入させるだけで、容易に係合でき、アクチュエータの組付作業も容易に行なえる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、実施形態のフード跳ね上げ装置(以下、適宜、跳ね上げ装置と略す)20は、
図1〜3に示すように、車両Vにおけるフードパネル10の後端(後部)10c側における左縁10d付近と右縁10e付近とに配設されるもので、それぞれ、アクチュエータ21と、取付ブラケット30と、を備えて構成される。取付ブラケット30は、アクチュエータ21を保持して、ボディ1側の取付座2bに取り付けるためのものである。取付座2bは、車体側部材として、フードリッジリインホース2に設けられており、取付ブラケット30を取り付けた際、アクチュエータ21を、フードパネル10の後端10cの押上部位(受け座)16の下方に、配置させるように、設定されている。
【0029】
なお、本明細書では、特に断らない限り、前後と上下の方向は、それぞれ、車両V(
図1参照)の前後と上下の方向に一致し、車幅方向WDとなる左右の方向は、車両Vの前方側から後方側を見た際の左右の方向に一致させている。また、本明細書では、左方側の跳ね上げ装置20について説明し、右方側の跳ね上げ装置20は、左方側と左右対称的に配設されているだけであり、説明を省略する。
【0030】
また、実施形態の場合、車両Vのフロントバンパ5には、
図1に示すように、歩行者との衝突を検知若しくは予測可能なセンサ6が、配設されており、センサ6からの信号を入力させている図示しない作動回路が、センサ6からの信号に基づいて車両Vと歩行者との衝突を検知若しくは予測した際に、跳ね上げ装置20のアクチュエータ21を作動させるように構成されている。
【0031】
フードパネル10は、
図1〜3に示すように、車両VにおけるエンジンルームERの上方を覆うように配設されるもので、左右方向の両縁側における後端10c近傍に配置されるヒンジ部11により、車両Vのボディ1側に対して、前開きで開閉可能に連結されている。フードパネル10は、アルミニウム合金等からなる板金製として、
図2,3に示すように、上面側のアウタパネル10aと、下面側に位置してアウタパネル10aより強度を向上させたインナパネル10bと、から構成されている。フードパネル10は、歩行者を受け止めた際に、歩行者の運動エネルギーを吸収できるように、塑性変形可能に構成されている。そして、実施形態では、車両Vと歩行者との衝突時に、アクチュエータ21が作動されて、
図3に示すように、上昇したフードパネル10の後端10cと、エンジンルームERと、の間に、変形スペースSを形成できることから、曲げ塑性変形時の塑性変形量を増大させることができる。
【0032】
ヒンジ部11は、フードパネル10の後端10c側における左縁10dと右縁10eとに配設され(
図1参照)、それぞれ、ボディ1側のフードリッジリインホース2に連結された取付座2aに固定されるヒンジベース12と、フードパネル10側に固定されるヒンジアーム14と、を備えて構成されている。各ヒンジアーム14は、板金製のアングル材を下向きに突出させるように略半円弧状に湾曲させた形状として構成され、ヒンジベース12側の元部端14aが、支持軸13を利用してヒンジベース12に対して回動可能に連結されている。また、各ヒンジアーム14は、元部端14aから離れる先端14b側に、先端14bから前後方向に略沿うように延びる連結板部15を備え、この連結板部15が、フードパネル10の後端10cにおける下面側に溶接等を利用して結合されている。
【0033】
そして、実施形態の場合、連結板部15は、前部側の下面を、上昇時のピストンロッド26の上端の頭部27を当接させる受け座16となり、この受け座16が、ピストンロッド26の押上部位となる。
【0034】
各支持軸13は、それらの軸方向を、車両Vの左右方向(車幅方向)WDに沿わせるように、配設されている。そして、エンジンルームERの点検等によってフードパネル10を開く際には、左右の支持軸13を回転中心として、各ヒンジアーム14の先端14b側とともに、フードパネル10の前端10f側(
図1参照)を前開きで上昇させれば、フードパネル10を前開きで開くことができる。
【0035】
また、ヒンジアーム14の先端14b付近には、下縁を略円形状に切り欠くように構成される切欠凹部14cが、形成されており、この切欠凹部14cの周囲の部位が、アクチュエータ21の作動時においてピストンロッド26がフードパネル10の後端10cを押し上げる際に、塑性変形する塑性変形部14dとして、フードパネル10の後端10cの上昇を可能にしている。なお、フードパネル10の前端10f側には、通常閉塞用として、前端10fに配置された図示しないフードロックストライカを係止するラッチ機構が配設されており、フードパネル10の後端10cの上昇時でも、フードパネル10の前端10fは、図示しないフードロックストライカを係止するラッチ機構により、ボディ1側から外れない。
【0036】
さらに、フードパネル10の後方には、
図2に示すように、ボディ1側の剛性の高いカウルパネル7aと、カウルパネル7aの上方における合成樹脂製のカウルルーバ7bと、からなるカウル7が、配設されている。カウルルーバ7bは、後端側をフロントウィンドシールド3の下部3a側に連ならせるように配設されている。また、フロントウィンドシールド3の左右には、フロントピラー4,4が、配設されている。
【0037】
実施形態のアクチュエータ21は、ガス発生器を内部に配置させた円筒状のシリンダ22と、塑性変形可能な金属材から形成され、シリンダ22に保持されて、上端側の頭部27をシリンダ22から突出させるピストンロッド26と、を備えて構成されている。そして、アクチュエータ21は、シリンダ22内に図示しないガス発生器を備えて構成され、センサ6からの信号を入力させている図示しない作動回路が、作動信号を出力した際、図示しないガス発生器が作動して所定の作動用ガスを発生させれば、ピストンロッド26が上昇し、頭部27がフードパネル10の後端10cの押上部位としての受け座16に当たり、さらに、後端10cを跳ね上げるように押し上げられることとなる(
図3参照)。また、アクチュエータ21は、ピストンロッド26を最上昇位置に配置させた状態で、ピストンロッド26の下降を規制するロック機構を配設させており、上昇したピストンロッド26は、ロック機構により、フードパネル10の後端10cを上昇させた状態で、フードパネル10を保持することとなる。その後、後端10cを上昇させたフードパネル10に歩行者が干渉して、歩行者がフードパネル10の後端10c側を斜め後下方に押圧すれば、シリンダ22から突出しているピストンロッド26の軸部28が、
図3の二点鎖線に示すように、シリンダ22の近傍の部位28aを曲げ塑性変形させ、フードパネル10の塑性変形とともに、軸部28の塑性変形により、歩行者の運動エネルギーを吸収することとなる。
【0038】
また、アクチュエータ21は、
図2〜5に示すように、シリンダ22の上下方向の中間部位の外周面23に、全周にわたって鍔状に突出する突部24を配設させている。
【0039】
取付ブラケット30は、既述したように、作動時に上昇するピストンロッド26を押上部位としての受け座16に当接させるように、換言すれば、ピストンロッド26を受け座16の下方に配置させるように、アクチュエータ21を保持して車体側部材としてのフードリッジリインホース2の取付座2bに取り付けるものである。
【0040】
そして、取付ブラケット30は、
図4〜7に示すように、取付座2bに取付可能な取付部50を備えるとともに、シリンダ22の外周面23を挟持可能な二枚のブラケット板31,41を備えて構成されている。
【0041】
二枚のブラケット板31,41は、それぞれ、板金から形成されて、相互にシリンダ22の外周面23を挟持する挟持面部35,45、相互に係合する支点用係合部32,42、及び、相互に締結される締結部37,47、を備えて構成されている。支点用係合部32,42と締結部37,47とは、挟持面部35,45を間にした両側に配設されており、実施形態の場合、締結部37,47を挟持面部35,45の前方側に配置させ、支点用係合部32,42を挟持面部35,45の後方側に配置させており、支点用係合部32,42と締結部37,47とが、挟持面部35,45を間にした前後両側に配設されている。
【0042】
また、二枚のブラケット板31,41は、相互に係合する支点用係合部32,42を支点FPとしたてこの原理を利用して、シリンダ22の外周面23を挟持するものであり、締結部37,47がてこの力点PPとなり、挟持面部35,45がてこの作用点APとなるように、構成されている。
【0043】
なお、ブラケット板41は、実施形態では、取付部50を有して、取付手段としての取付ボルト57によって、取付座2bに取り付けられる取付側ブラケット板41となり、他方のブラケット板31は、取付部50を備えない非取付側ブラケット板31としている。
【0044】
挟持面部35,45は、シリンダ22の軸心Cを中心とした点対称となる位置のシリンダ22の外周面23相互を挟持して、シリンダ22の前後左右等の軸直交方向HDの移動を規制可能な略半割り円筒形としている。挟持面部35は、内側の挟持面35aを、車両搭載状態でのシリンダ22の外周面23における前面側でかつエンジンルームER側となる前内側面23aに当接させ、挟持面部45は、内側の挟持面45aを、車両搭載状態でのシリンダ22の外周面23における後面側でかつ車外側となる後外側面23bに当接させるように構成されている。各挟持面35a,45aは、それぞれ、シリンダ22の外周面23における軸心Cを中心とした90度の角度範囲を僅かに超える状態で、前内側面23aと後外側面23bとに圧接させるように、湾曲して形成されている。
【0045】
なお、実施形態の場合、挟持面部35,45の上下方向の長さは、シリンダ22の上下方向の長さの略半分程度以上の外周面23を挟持できるように、長く設定され、そして、挟持面部45は、上下方向の長さ寸法を、挟持面部35より長くして構成されている。
【0046】
また、挟持面部35,45には、それぞれ、シリンダ22の突部24を嵌合させるように、スリット状に表裏を貫通した孔から形成される嵌合凹部36,46を配設させている。これらの嵌合凹部36,46は、突部24を嵌合させて、内周面36a,46aの上下の面に突部24を当接させて、シリンダ22の軸方向VDに沿った移動を規制することとなる。
【0047】
なお、実施形態の場合、突部24が、シリンダ22の外周面23の全周から突出する鍔部から形成されており、嵌合凹部36,46は、挟持面部35,45を越えて、後述する連結部39,49の一部や支点用係合部32,42の一部まで、延設されている。
【0048】
支点用係合部32,42は、それぞれ、ブラケット板31,41の後方側の端部(後端部位)31b,41bに配設されており、一方が貫通孔44を設けた孔側係合部43とし、他方を貫通孔44に挿入させる挿入片部34を有した挿入側係合部33として構成されている。
【0049】
実施形態の場合、孔側係合部43は、取付側ブラケット板41に配設されており、挟持面部45の後端45bから、シリンダ22の外周面23の接線に沿うように、車幅方向WDのエンジンルームER側に延びて配設されている。また、挿入側係合部33は、挟持面部35の後端35bから、シリンダ22の外周面23の接線に沿うように、前後方向LDの後方側に延びて配設されている。
【0050】
そして、孔側係合部43は、貫通孔44を、上下方向に長いスリット状として、前後方向LDに沿って貫通させるように、配設させ、挿入側係合部33は、その上下方向の全長にわたって、挿入片部34を挿入させるように、長方形板状に形成されている。貫通孔44は、挿入片部34を挿入可能として、上下方向の開口長さ寸法L1(
図5参照)を、挿入片部34の上下方向の長さ寸法L2と略一致させ、車幅方向WDの開口幅寸法Bを、挿入片部34の厚さ寸法Tより、僅かに大きく設定されている。
【0051】
また、挿入片部34を貫通孔44に挿入させて相互に支点用係合部32,42を係合させた際に、相互の係合部位、特に、貫通孔44のエンジンルームER側の内周面44aとその内周面44aに当接する挿入片部34の当接部34aとの部位が、てこの支点FPを構成することとなる。
【0052】
締結部37,47は、それぞれ、挟持面部35の前端35c,45cから前方に延びた端部(前端部位)31a,41aに配置されるとともに、車幅方向WDに貫通する一つの締結孔38,48を有して構成されている。そして、締結部37,47は、締結孔38,48に挿通させる締結手段としてのリベット55により、相互に車幅方向WDに重ねられて、締結されることとなる。
【0053】
この締結は、既述したように、てこの原理の力点PPとして、ブラケット板31,41に作用されることとなる。
【0054】
また、非取付側ブラケット板31では、締結部37と挟持面部35の前端35cとの間には、挟持面部35から上下方向の幅寸法を狭めた状態で前方に延びる帯状の連結部39が配設されている。そして、連結部39から挟持面部35を経た挿入側係合部33の当接部34a近傍までの部位の上下の縁には、補強用リブ31cが突設されている。
【0055】
取付側ブラケット板41では、締結部47が、リベット55の端部55aを収納するように、底壁部47aと底壁部47aの両縁から延びる二つの側壁部47b,47cとを有した断面U字形状として、その底壁部47aの部位を締結部37に当接させる部位とし、底壁部47aの上下方向中央の幅広部位47abに、締結孔48を設けて構成されている。また、締結部47と挟持面部45の前端45cとの間の連結部49は、取付座2bに当接するような長方形板状の側壁部47b側の底壁部49aと、底壁部49aと挟持面部45との間の側壁部49bと、を備えて構成され、底壁部49aが、取付ブラケット30を取付座2bに取り付ける取付部50を構成している。
【0056】
この取付部50は、リベット55を挿入させる締結孔38,48を間にした上下の位置における連結部39の上方と下方とに、それぞれ、車幅方向WDに貫通する取付孔51を配設させている。各取付孔51には、取付座2bのねじ部2cに螺合する取付手段としての取付ボルト57が、挿通される。
【0057】
実施形態の跳ね上げ装置20では、取付ブラケット30にアクチュエータ21を保持させる際、取付ブラケット30の各ブラケット板31,41における支点用係合部32,42相互について、まず、
図6のAに示すように、挿入片部34を貫通孔44に挿入させて、相互を係合させ、また、アクチュエータ21のシリンダ22の突部24を嵌合凹部36,46に嵌合可能に、シリンダ22を相互の挟持面部35,45の間に配置させる。そして、相互の挟持面部35,45をそれぞれシリンダ22の外周面23に当てつつ、締結部37,47相互を接近させ、支点用係合部32,42の相互の係合部位34a,44aをてこの支点FPとして、その支点FPを回転中心とするように、二枚のブラケット板31,41を回転させつつ接近させ、ついで、
図6のBに示すように、締結部37,47相互を締結孔38,48を挿通させるリベット55により締結させれば、締結部37,47相互が力点PPとなり、挟持面部35,45相互が作用点APとなって、てこの原理で、二枚のブラケット板31,41が挟持面部35,45によりシリンダ22の外周面23を強く挟持することができる。
【0058】
すなわち、この取付ブラケット30では、貫通孔44に挿入片部34を挿入させる相互の支点用係合部32,42を係合させるとともに、相互の挟持面部35,45の間に、シリンダ22を配置させ、その後、単に、締結部37,47相互を締結手段としてのリベット55により締結するだけで、簡単に、アクチュエータ21を強固に保持できる。
【0059】
そして、この保持態様では、シリンダ22の軸方向VDに沿った移動は、突部24が嵌合凹部36,46の内周面36a,46aに当接して、位置規制され、また、シリンダ22の軸直交方向HDの移動は、シリンダ22の外周面23が挟持面部35,45の挟持面35a,45aで挟持され、挟持面部35,45はシリンダ22の軸方向VDに沿って長く形成できることも相俟って、安定して規制され、その結果、取付ブラケット30が安定してシリンダ22を保持することができる。
【0060】
したがって、実施形態の跳ね上げ装置20では、簡単な組み付けで、安定した状態でシリンダ22を取付ブラケット30に保持させることができる。
【0061】
そして、このようにアクチュエータ21を取付ブラケット30に組み付けた後、取付手段としての取付ボルト57を、取付孔51,51を挿通させて、ねじ部2cに締結させ、取付部50を取付座2bに取り付ければ、アクチュエータ21をフードパネル10の押上部位としての受け座16の直下に配置させることができる。その後、所定の作動回路から延びるリード線をシリンダ22の所定のガス発生器に結線すれば、フード跳ね上げ装置20を車両Vに搭載することができる。
【0062】
実施形態の跳ね上げ装置20の車両Vへの搭載後、作動回路からの作動信号を入力して、アクチュエータ21が作動すれば、ピストンロッド26が上昇して、フードパネル10の後端10cを跳ね上げ、そして、歩行者の干渉により、フードパネル10が後下方に押し下げられれば、ピストンロッド26が後方側へ曲げ塑性変形して、フードパネル10の塑性変形とピストンロッド26の塑性変形とによって、歩行者の運動エネルギーを吸収し、歩行者の受ける衝撃力を緩和させることができる。
【0063】
そして、実施形態の跳ね上げ装置20では、取付ブラケット30の取付部50が、車体側部材としての取付座2bに固定される取付手段としての取付ボルト57を貫通させるように、車幅方向WDに沿って貫通される取付孔51を設け、かつ、取付孔51を上下に離して複数(実施形態では二つ)配置させて、挟持面部35,45から前後方向で離れて配設されている。
【0064】
そのため、実施形態では、上昇後のピストンロッド26の後方側への曲げ塑性変形時、安定して、アクチュエータ21を保持できて、ピストンロッド26を安定して塑性変形させることができる。
【0065】
すなわち、取付ブラケット30の取付部50が、挟持面部35,45に対して車両Vの前後方向でずれて離れるように、配置され、さらに、車体側部材としての取付座2bに対し、上下に離れて車幅方向WDに沿って貫通される複数の取付孔51を貫通する取付手段としての取付ボルト57により、取り付けられている。そのため、アクチュエータ21を挟持面部35,45で保持している取付ブラケット30が、上昇後のピストンロッド26の後方側への曲げ塑性変形時、車両Vの前後方向に沿う回転モーメントを受けても、取付部50を車体側部材として取付座2bに取り付けた上下の取付ボルト57が、取付部50に作用する回転モーメントに対して的確に対抗して、取付ブラケット30を安定して取付座2bに取付固定しておくことができるからである。
【0066】
勿論、取付ブラケット30の取付部50は、車幅方向WDに沿って取付孔51を貫通する取付ボルト57に固定されて取付座2bに取り付けられており、車幅方向WDに沿う移動を防止して、アクチュエータ21を安定して車体側部材としての取付座2bに取り付けておくことができる。
【0067】
また、実施形態の跳ね上げ装置20では、取付ブラケット30の取付部50が、二枚のブラケット板31,41の一方の取付側ブラケット板41側にだけ、形成されている。
【0068】
このような構成の場合、跳ね上げ装置20を搭載する車両Vが変更されても、取付部50を設ける側の取付側ブラケット板41を、搭載部位に対応させて変更させ、取付部50を設けない側の非取付側ブラケット板31を変更せずに、対処することができる。すなわち、跳ね上げ装置20を搭載する車両が変更されても、取付部50を設けない側の非取付側ブラケット板31を、共用することができて、容易に対処することができる。
【0069】
勿論、この点を考慮しなければ、両方のブラケット板31、41に取付部50を設けてもよい。
【0070】
また、実施形態の跳ね上げ装置20では、相互の締結部37,47が、一つの締結手段としてのリベット55によって、締結される構成として、取付部50の取付孔51が、リベット55を間にした上下の両側に配置されている。
【0071】
そのため、実施形態では、締結手段としてのリベット55を一つにできることから、アクチュエータ21の組み付け作業が、一層、容易となる。さらに、取付ブラケット30の取付部50の取付孔51が、一つのリベット55の上側と下側とに離れて配置されることから、取付ブラケット30をバランスよく車体側部材としての取付座2bに取り付けることができる。
【0072】
この点を考慮しなければ、リベット55等の締結手段を二つ以上使用するようにしてもよい。
【0073】
なお、締結手段としては、リベット55の他、ボルト・ナット等が利用できる。
【0074】
さらに、実施形態の跳ね上げ装置20では、取付ブラケット30の取付部50が、二枚のブラケット板31,41における挟持面部35,45と締結部37,47との間に、配設されている。
【0075】
そのため、実施形態では、取付部50が挟持面部35,45と締結部37,47との間に配設されて、取付ブラケット30の前後方向LDの長さ寸法を、挟持面部35,45と取付部50とを間にした支点用係合部32,42から締結部37,47までの寸法とすることができることから、取付ブラケット30をコンパクトに構成することができる。
【0076】
この点を考慮しなければ、
図8のA,Bに示す取付ブラケット30Aのように、挟持面部35,45と締結部37,47との間から外れて、挟持面部35,45から離れる締結部37,47の前方側に、取付部50を設けたり、
図9のA,Bに示す取付ブラケット30Bのように、挟持面部35,45と締結部37,47との間から外れて、挟持面部35,45から離れる支点用係合部32,42の後方側に、取付部50を設けてもよい。
【0077】
また、これらの場合、取付部50は、挟持面部35,45の内の取付座2bに接近している側に限らず、
図9の取付ブラケット30Bのように、挟持面部35,45の内の取付座2bから離れた側のブラケット板31側に、取付部50を設けてもよい。
【0078】
さらに、実施形態の跳ね上げ装置20では、取付ブラケット30の支点用係合部32,42相互が、上方から見て、それぞれ、挟持面部35,45から直線状に延びて直交交差するように、配設されている。
【0079】
そのため、実施形態では、二枚のブラケット板31,41の支点用係合部32,42相互を、単に、挟持面部35,45からシリンダ22の接線方向に延ばすように形成すればよく、容易に加工して形成できる。さらに、支点用係合部32,42相互の係合時にも、挿入側係合部33の挿入片部34を、孔側係合部43に対して略直交方向となるように向け、そして、貫通孔44に挿入させるだけで、容易に係合でき、アクチュエータ21の組付作業も容易に行なえる。
【0080】
なお、実施形態では、アクチュエータ21のシリンダ22の外周面23の全周にわたって、鍔状の突部24を設け、取付ブラケット30側の二つの挟持面部35,45に、ともに、突部24を嵌合させる嵌合凹部36,46を設けた。しかし、シリンダ22の軸方向VDに沿った移動を規制できれば、挟持面部35,45の一方にだけ、嵌合凹部を形成し、この嵌合凹部に対応して、シリンダ22の外周面23に突部を形成してもよい。
【0081】
また、実施形態の取付ブラケット30では、挿入側係合部33を非取付側ブラケット板31に設け、孔側係合部43を取付側ブラケット板41に設けた場合を示したが、孔側係合部と挿入側係合部とは、相互の係合時、離れることなく、取付ブラケットのブラケット板相互を、てこのように利用できて、相互の係合部位をてこの原理の支点として、構成できればよい。そのため、実施形態と逆の構成とするように、非取付側ブラケット板31側に貫通孔44を設け、取付側ブラケット板41側に貫通孔44に挿入される挿入片部34を配設してもよい。