特許第5660082号(P5660082)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5660082
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】プロセス制御装置及びシステム
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20150108BHJP
【FI】
   G05B23/02 302V
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-149352(P2012-149352)
(22)【出願日】2012年7月3日
(65)【公開番号】特開2014-10811(P2014-10811A)
(43)【公開日】2014年1月20日
【審査請求日】2013年7月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】神戸 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】山本 光浩
【審査官】 青山 純
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/047654(WO,A1)
【文献】 特開2005−267297(JP,A)
【文献】 特開2003−316433(JP,A)
【文献】 特表2009−506462(JP,A)
【文献】 特開2012−146070(JP,A)
【文献】 特開2001−202101(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラントに設けられるネットワークに接続され、前記プラントで実現される工業プロセスの制御に必要な測定及び操作の少なくとも一方を行う複数のフィールド機器の動作を前記ネットワークを介して制御するプロセス制御装置において、
ハードウェア上でハードウェアの代わりとして動作する仮想化部と、
前記仮想化部上で動作して、前記ネットワークを介して前記フィールド機器の動作を制御する第1,第2制御部と、
前記仮想化部に設けられ、前記フィールド機器からの信号を前記第1,第2制御部に分配する分配部と、
前記仮想化部に設けられ、前記第1,第2制御部の出力を取得して何れか一方の出力を前記複数のフィールド機器のうちの少なくとも1つのフィールド機器に出力する取得部と
を備えることを特徴とするプロセス制御装置。
【請求項2】
前記取得部は、取得した前記第1,第2制御部の出力の比較を行う比較部を備えることを特徴とする請求項1記載のプロセス制御装置。
【請求項3】
前記第1,第2制御部は、前記仮想化部上で動作するオペレーティングシステムと、前記オペレーティングシステム上で動作するアプリケーションとからなることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のプロセス制御装置。
【請求項4】
プラントで実現される工業プロセスの制御を行うプロセス制御システムにおいて、
前記プラントに設けられるネットワークと、
前記ネットワークに接続され、前記工業プロセスの制御に必要な測定及び操作の少なくとも一方を行う複数のフィールド機器と、
前記ネットワークに接続され、前記ネットワークを介して前記フィールド機器の動作を制御する請求項1から請求項3の何れか一項に記載のプロセス制御装置と
を備えることを特徴とするプロセス制御システム。
【請求項5】
前記ネットワークに接続され、前記プロセス制御装置の前記取得部で取得された前記第1,第2制御部の出力の比較を行う比較装置を備えることを特徴とする請求項4記載のプロセス制御システム。
【請求項6】
前記プロセス制御装置の前記取得部は、取得した前記第1,第2制御部の出力を、前記ネットワークを介して前記比較装置に送信することを特徴とする請求項5記載のプロセス制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロセス制御装置及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プラントや工場等(以下、これらを総称する場合には、単に「プラント」という)においては、工業プロセスにおける各種の状態量(例えば、圧力、温度、流量等)を制御するプロセス制御システムが構築されており、高度な自動操業が実現されている。従来のプロセス制御システムは、例えば以下の特許文献1の図7(特許文献2,3の図1(FIG.1))に示す通り、流量計や温度計等の複数のセンサとバルブ等のアクチュエータとが直接コントローラに接続された構成であり、コントローラがセンサの検出結果に応じてアクチュエータを制御することによって上述した各種の状態量が制御される。
【0003】
ここで、プラントは、寿命を約30年として設計されることが多いが、プロセス制御システムをなす各種機器(上述したコントローラ、センサ、アクチュエータ)は、汎用的な電子部品が用いられることが多いため、その寿命が電子部品の寿命で規定されてしまい約10年程度である。センサは寿命がきても単体で交換可能だが、コントローラのインターフェイス部であるI/Oカードに汎用的な電子部品が搭載されているため、コントローラの寿命は10年程度に制限され、プロセス制御システムの寿命も制限されてしまう。
【0004】
このように、プロセス制御システムをなす各種機器はプラントよりも寿命が短いことから、プラントの寿命を迎える前にプロセス制御システムをリプレース(再構築)する必要がある。そこで、以下の特許文献1の図1(特許文献2,3の図2(FIG.2))に示されている通り、プロセス制御システムをなす各種機器を同じネットワークに接続した構成にし、上記のI/Oカードを無くすことによってプロセス制御システムの寿命を延ばすことが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4399773号公報
【特許文献2】国際公開第2005/050336号
【特許文献3】米国特許出願公開第2007/0078980号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、プロセス制御システムをなす各種機器には、コントローラのI/Oカード以外の部分にも汎用的な電子部品が用いられている。また、近年においては、プロセス制御システムで用いられるオペレーティングシステム(OS)やアプリケーションプログラム等のソフトウェアの供給可能期間が5〜10年程度と短くなってきている。このため、上述の通り、I/Oカードを無くすことによってプロセス制御システムの寿命を延ばすことができたとしても、結局のところハードウェア及びソフトウェアの双方の面からプロセス制御システムのリプレースが必要になってしまう。
【0007】
また、近年においては、プロセス制御システムの機能を維持するだけでなく、様々な目的(例えば、省エネルギーを実現する目的、環境規制への対応を行う目的、或いは生産効率の向上を図る目的)から、プロセス制御システムの機能を積極的に向上させたいという要求も増加している。このような要求に応えるためには、プラントの寿命を迎える前に、プラントに既に構築されているプロセス制御システムを新たなプロセス制御システムにリプレースする必要がある。
【0008】
ここで、プロセス制御システムのリプレースを行う場合には、リプレース前後での制御性を担保した後、機能向上や新規機能の導入を行う安心・安全なリプレース手順が望まれる。そのため、リプレース前におけるプロセス制御システムの制御性が、リプレース後においても保証される必要がある。このため、プロセス制御システムのリプレースを行った場合には、リプレースが行われたプロセス制御システムの制御性の評価を十分に行わなければならず、評価に長時間を要するとともに多大なコストが必要になるという問題があった。
【0009】
プロセス制御システムをリプレースするに際し、既存のシステムと新たなシステムとを一時的に併存させて各々のシステムの制御性を評価し、評価を終えた後に既存のシステムを取り除くようにすれば、上記の評価の時間を短縮することができるとも考えられる。しかしながら、新旧2つのシステムが併存している場合には、各々のシステムで用いられる各種機器(例えば、コントローラ)を異なるタグ名で管理する必要があり、既存のシステムを取り除いた後のオペレーションがやりにくくなるという問題がある。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、既存システムを新たなシステムにリプレースする際の制御性の評価を容易に行うことが可能なプロセス制御装置及びシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明のプロセス制御装置は、プラントで実現される工業プロセスの制御を行うプロセス制御装置(20、20a、20b)において、ハードウェア(21)上でハードウェアの代わりとして動作する仮想化部(22)と、前記仮想化部上で動作して前記工業プロセスの制御に必要な測定及び操作の少なくとも一方を行う複数のフィールド機器(10)の動作を制御する第1,第2制御部(23a、24a,23b、24b)と、前記仮想化部に設けられ、前記フィールド機器からの信号を前記第1,第2制御部に分配する分配部(41)と、前記仮想化部に設けられ、前記第1,第2制御部の出力を取得して何れか一方の出力を前記複数のフィールド機器のうちの少なくとも1つのフィールド機器に出力する取得部(42、43)とを備えることを特徴としている。
この発明によると、フィールド機器からの信号が仮想化部に設けられた分配部によって仮想化部上で動作する第1,第2制御部に分配されるとともに、第1,第2制御部の出力が仮想化部に設けられた取得部によって取得され、取得された何れか一方の出力が複数のフィールド機器のうちの少なくとも1つのフィールド機器に出力される。
また、本発明のプロセス制御装置は、前記取得部が、取得した前記第1,第2制御部の出力の比較を行う比較部(42a)を備えることを特徴としている。
また、本発明のプロセス制御装置は、前記第1,第2制御部が、前記仮想化部上で動作するオペレーティングシステム(23a、23b)と、前記オペレーティングシステム上で動作するアプリケーション(24a、24b)とからなることを特徴としている。
本発明のプロセス制御システムは、プラントで実現される工業プロセスの制御を行うプロセス制御システム(1、2)において、前記プラントに設けられるネットワーク(N1)と、前記ネットワークに接続され、前記工業プロセスの制御に必要な測定及び操作の少なくとも一方を行う複数のフィールド機器(10)と、前記ネットワークに接続された上記の何れかに記載のプロセス制御装置とを備えることを特徴としている。
また、本発明のプロセス制御システムは、前記ネットワークに接続され、前記プロセス制御装置の前記取得部で取得された前記第1,第2制御部の出力の比較を行う比較装置(50)を備えることを特徴としている。
また、本発明のプロセス制御システムは、前記プロセス制御装置の前記取得部が、取得した前記第1,第2制御部の出力を、前記ネットワークを介して前記比較装置に送信することを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、フィールド機器からの信号を仮想化部に設けられた分配部によって仮想化部上で動作する第1,第2制御部に分配するとともに、第1,第2制御部の出力を仮想化部に設けられた取得部によって取得し、取得した何れか一方の出力が複数のフィールド機器のうちの少なくとも1つのフィールド機器に出力しているため、第1,第2制御部の何れか一方で工業プロセスにおける状態量の制御を行いつつ、取得部によって取得した第1,第2制御部の出力を用いて、既存システムを新たなシステムにリプレースする際の制御性の評価を容易に行うことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態によるプロセス制御システムの要部構成を示すブロック図である。
図2】本発明の第1実施形態におけるコントローラの交換手順の概要を説明するための図である。
図3】本発明の第1実施形態におけるコントローラの動作を示すフローチャートである。
図4】本発明の第1実施形態におけるコントローラ内のデータの流れを示す図である。
図5】本発明の第2実施形態によるプロセス制御システムの要部構成を示すブロック図である。
図6】本発明の第2実施形態におけるコントローラ内のデータの流れを示す図である。
図7】本発明の第1,第2実施形態によるプロセス制御システムの第1応用例を説明するための図である。
図8】本発明の第1,第2実施形態によるプロセス制御システムの第2応用例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態によるプロセス制御システムについて詳細に説明する。
【0015】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態によるプロセス制御システムの要部構成を示すブロック図である。図1に示す通り、本実施形態のプロセス制御システム1は、フィールド機器10、コントローラ20(プロセス制御装置)、及び監視装置30を備えており、監視装置30の監視の下でコントローラ20がフィールド機器10を制御することによって、プラント(図示省略)で実現される工業プロセスの制御を行う。
【0016】
ここで、フィールド機器10及びコントローラ20はフィールドネットワークN1に接続され、コントローラ20及び監視装置30は制御ネットワークN2に接続される。フィールドネットワークN1は、例えばプラントの現場に敷設された有線のネットワークである。他方、制御ネットワークN2は、例えばプラントの現場と監視室との間を接続する有線のネットワークである。尚、これらフィールドネットワークN1及び制御ネットワークN2は、無線のネットワークであっても良い。
【0017】
フィールド機器10は、例えば流量計や温度センサ等のセンサ機器、流量制御弁や開閉弁等のバルブ機器、ファンやモータ等のアクチュエータ機器、その他のプラントの現場に設置される機器である。尚、図1においては、理解を容易にするために、プラントに設置されたフィールド機器10のうちの流体の流量を測定するセンサ機器11と流体の流量を制御(操作)するバルブ機器12とを図示している。
【0018】
フィールド機器10は、コントローラ20からフィールドネットワークN1を介して送信されてくる制御データに応じた動作を行う。例えば、コントローラ20からセンサ機器11に測定データ(流体の流量の測定結果を示すデータ)の送信要求が送信されてきた場合には、センサ機器11は、フィールドネットワークN1を介してコントローラ20に向けて測定データを送信する。また、コントローラ20からバルブ機器12に対して制御データ(開度を制御するデータ)が送信されてきた場合には、バルブ機器12は、流体が通過する弁の開度を制御データで指示される開度にする。
【0019】
コントローラ20は、監視装置30の監視の下でフィールド機器10(例えば、センサ機器11)からの測定データを収集するとともに、収集した測定データに基づいてフィールド機器10(例えば、バルブ機器12)を制御する。尚、コントローラ20は、フィールド機器10の状態を示すステータスの収集も行う。このコントローラ20の機能は、ソフトウェアがコンピュータに読み込まれて、ソフトウェアとハードウェア資源とが協働することによって実現される。
【0020】
具体的に、コントローラ20の機能は、MPU(Micro-Processing Unit:マイクロプロセッサ)やメモリ等からなるハードウェア21によって、インストールされたプログラムが実行されることによって実現される。ここで、コントローラ20には、ハイパーバイザ22(仮想化部)を実現するプログラム、オペレーティングシステム(OS)23a(第1制御部)を実現するプログラム、オペレーティングシステム23b(第2制御部)を実現するプログラム、アプリケーション24a(第1制御部)を実現するプログラム、及びアプリケーション24b(第2制御部)を実現するプログラムがインストールされている。
【0021】
上記のハイパーバイザ22は、ハードウェア21上でハードウェアの代わりとして仮想的に動作し、オペレーティングシステム23a,23b及びアプリケーション24a,24bを変更することなくハードウェア21の交換を可能にするために設けられる。また、ハイパーバイザ22は、オペレーティングシステム23a及びアプリケーション24aと、オペレーティングシステム23b及びアプリケーション24bとをそれぞれ独立して動作させるためにも設けられる。
【0022】
つまり、ハイパーバイザ22は、ハードウェア21がMPUアーキテクチャ、メモリサイズ、キャッシュサイズ、メモリマップ、デバイスインターフェイス等が異なるものに変更されても、変更前と同様のインターフェイスをオペレーティングシステム23a,23bに対して提供する。これにより、ハイパーバイザ22上で動作するオペレーティングシステム23a,23bはハードウェア21の変更の影響を受けないため、従前用いられていたオペレーティングシステム23a,23b及びアプリケーション24a,24bを新たなハードウェア21上でそのまま動作させることができる。
【0023】
また、ハイパーバイザ22を設けることで、オペレーティングシステム23a,23b及びアプリケーション24a,24bを以下の通り動作させることができる。
・オペレーティングシステム23a及びアプリケーション24aのみの動作
・オペレーティングシステム23b及びアプリケーション24bのみの動作
・オペレーティングシステム23a及びアプリケーション24aと、オペレーティングシステム23b及びアプリケーション24bとの独立した動作
【0024】
図1に示す通り、ハイパーバイザ22は、入力分配部41(分配部)及び出力取得部42(取得部)を備える。入力分配部41は、フィールド機器10(例えば、センサ機器11)からの測定データやステータスを、オペレーティングシステム23a,23bを介してアプリケーション24a,24bにそれぞれ分配する。出力取得部42は、アプリケーション24a,24bから出力されてオペレーティングシステム23a,23bを介した制御データをそれぞれ取得し、取得した制御データの何れか一方(ここでは、アプリケーション24aから出力された制御データとする)をフィールド機器10(例えば、バルブ機器12)に出力する。ここで、出力取得部42は、取得した制御データ(アプリケーション24a,24bから出力された制御データ)の比較を行う出力比較部42aを備える。詳細は後述するが、このような入力分配部41及び出力取得部42をハイパーバイザ22に設けるのは、既存システムを新たなシステムにリプレースする際の制御性の評価を容易にするためである。
【0025】
オペレーティングシステム23a,23bは、ハイパーバイザ22上で独立して動作し、例えばアプリケーション24a,24bを動作させるために必要となるプロセス管理やメモリ管理等の各種管理をそれぞれ行う。アプリケーション24a,24bは、オペレーティングシステム23a,23b上でそれぞれ独立して動作し、プロセスの制御を行う上で必要なフィールド機器10の制御(例えば、センサ機器11からの測定データ等の収集やバルブ機器12に対する制御データの送信等)をそれぞれ行う。
【0026】
監視装置30は、例えばコンピュータによって実現され、運転員によって操作されてプロセスの監視のために用いられる。具体的に、監視装置30は、コントローラ20で動作するオペレーティングシステム23a,23bやアプリケーション24a,24bの動作状態のモニタや管理を行い、そのモニタ等の結果に応じて(或いは、運転員の操作指示に応じて)コントローラ20を制御する。
【0027】
次に、上記構成におけるプロセス制御システム1に設けられたコントローラの交換(リプレース)手順について説明する。尚、コントローラの交換は、例えばコントローラの処理能力を向上させる場合、或いはコントローラに新たな機能を追加する場合等に行われる。図2は、本発明の第1実施形態におけるコントローラの交換手順の概要を説明するための図である。尚、図2においては、図1中の監視装置30及び制御ネットワークN2の図示を省略している。
【0028】
ここで、前述したオペレーティングシステム23a及びアプリケーション24aは、交換前の従前のコントローラ(図2(a)に示すコントローラ100)で用いられていたソフトウェアであるとする。これに対し、前述したオペレーティングシステム23b及びアプリケーション24bは、交換後の新たなコントローラ(図1及び図2(b),(c)に示すコントローラ20)で用いられるソフトウェアであるとする。
【0029】
コントローラの交換作業が開始されると、まず現場の作業者によって交換すべきコントローラを特定する作業が行われる。ここでは、交換すべきコントローラとして、図2(a)に示すコントローラ100が特定されたとする。このコントローラ100は、ハードウェア101上で、オペレーティングシステム23a及びアプリケーション24aが動作しているものである。
【0030】
次に、特定された従前のコントローラ100をフィールドネットワークN1から取り外して新たなコントローラ20をフィールドネットワークN1に接続する作業が作業者によって行われる。このコントローラ20は、ハイパーバイザ22を実現するプログラム、オペレーティングシステム23a,23bを実現するプログラム、及びアプリケーション24a,24bを実現するプログラムがインストールされたものである。
【0031】
以上の作業が終了した後に、作業者がコントローラ20の電源を投入すると、インストールされたプログラムが実行され、図2(b)に示す通り、ハードウェア21上で、ハイパーバイザ22、オペレーティングシステム23a,23b、及びアプリケーション24a,24bが動作する。これにより、コントローラ20は、従前のコントローラ100で用いられていたソフトウェア(オペレーティングシステム23a及びアプリケーション24a)と、新たなソフトウェア(オペレーティングシステム23b及びアプリケーション24b)との双方が独立して実行されている状態になる。
【0032】
図3は、本発明の第1実施形態におけるコントローラの動作を示すフローチャートである。また、図4は、本発明の第1実施形態におけるコントローラ内のデータの流れを示す図である。尚、図3に示すフローチャートは、作業者による交換作業が終了してコントローラ20の電源が投入された後に、センサ機器11からの測定データ(或いは、ステータス)が入力されると開始される。
【0033】
図3に示すフローチャートの処理が開始されると、まずセンサ機器11からの測定データを新旧アプリケーションに分配する処理が行われる(ステップS11)。具体的には、図4(a)に示す通り、センサ機器11から出力されてフィールドネットワークN1を介してコントローラ20に入力された測定データが入力分配部41によって分配され、オペレーティングシステム23a,23bを介してアプリケーション24a,24bにそれぞれ入力される。
【0034】
フィールド機器10からの測定データが入力されると、入力された測定データに応じたバルブ機器12の制御量がアプリケーション24a,24bでそれぞれ求められ、その制御量を示す制御データがアプリケーション24a,24bからそれぞれ出力される。すると、新旧アプリケーションの出力を取得する処理(ステップS12)、取得した旧アプリケーションの出力をバルブ機器12に出力する処理(ステップS13)、及び新旧アプリケーションの出力を比較する処理(ステップS14)が順次行われる。
【0035】
具体的には、図4(b)に示す通り、アプリケーション24a,24bから出力されてオペレーティングシステム23a,23bを介した制御データが出力取得部42でそれぞれ取得される。そして、取得された制御データのうち、アプリケーション24aからの制御データが、出力取得部42からフィールドネットワークN1を介してバルブ機器12に出力される。また、出力取得部42で取得されたアプリケーション24a,24bからの制御データが出力比較部42aに入力され、出力比較部42aにおいて制御値や出力タイミングが比較される。
【0036】
次に、ステップS14の比較の結果、旧アプリケーションに対する新アプリケーションの制御性の差(制御データの制御値や出力タイミングの差)が予め規定された基準内であるか否かが出力比較部42aによって判断される(ステップS15)。制御性の差が予め規定された基準内であると判断された場合(ステップS15の判断結果が「YES」の場合)には、ハイパーバイザ22によって、旧アプリケーションを新アプリケーションに切り替える処理が行われる(ステップS16)。
【0037】
具体的には、オペレーティングシステム23a及びアプリケーション24aを実現するプログラムの実行を停止する処理が行われる。かかる処理によって、図2(c)に示す通り、コントローラ20のハイパーバイザ22上で、オペレーティングシステム23b及びアプリケーション24bを実現するプログラムのみが実行される状態になる。尚、旧アプリケーションから新アプリケーションへの切り替えは、監視装置30を操作する運転員による切り替え許可の指示があってから行うようにしても良い。
【0038】
これに対し、制御性の差が予め規定された基準外であると判断された場合(ステップS15の判断結果が「NO」の場合)には、ステップS14で行われた比較結果を監視装置30に通知する処理が行われる(ステップS17)。かかる通知がなされると、監視装置30を操作する運転員は、通知された比較結果を参照して、新旧アプリケーションの切り替えを指示するか否か、新アプリケーションに対するパラメータを変更して制御性を改善してから新旧アプリケーションの切り替えを指示するか否か、等を判断する。尚、運転員によって新旧アプリケーションの切り替えが指示された場合には、ステップS16の処理と同様の処理が行われて新旧アプリケーションの切り替えが行われる。
【0039】
以上の通り、本実施形態では、ハードウェア21上でハードウェアの代わりとしてハイパーバイザ22を動作させ、センサ機器11からの測定データ等を入力分配部41によってハイパーバイザ22上で動作するアプリケーション24a,24bに分配し、これらアプリケーション24a,24bからの出力を取得して何れか一方の出力(アプリケーション24aの出力)をバルブ機器12に出力するとともに、取得した出力を比較するようにしている。これにより、旧システムで用いられていたアプリケーション(アプリケーション24a)を新たなシステムで用いられるプリケーション(アプリケーション24b)に切り替える際の制御性の評価を容易に行うことができる。しかも、旧システムで用いられていたアプリケーション(アプリケーション24a)で工業プロセスにおける状態量の制御を行いつつ上記の制御性の評価を行うことができるため、プラント更新をより安全かつ短時間で行うことができる。
【0040】
〔第2実施形態〕
図5は、本発明の第2実施形態によるプロセス制御システムの要部構成を示すブロック図である。尚、図5においては、図1に示す構成と同じブロックについては同一の符号を付してある。図5に示す通り、本実施形態のプロセス制御システム2は、アプリケーション24a,24bから出力された制御データの比較を、コントローラ20の外部で行うものである。具体的に、プロセス制御システム2は、図1に示す出力取得部42に代えて出力取得部43を設け、出力比較装置50を新たに追加した構成である。
【0041】
出力取得部43は、図1に示す出力取得部42と同様に、アプリケーション24a,24bから出力されてオペレーティングシステム23a,23bを介した制御データをそれぞれ取得し、取得した制御データの何れか一方(アプリケーション24aから出力された制御データ)をフィールド機器10(例えば、バルブ機器12)に出力する。但し、出力取得部43は、出力比較部42aが省略されており、取得した制御データの双方を出力比較装置50に向けて送出する点において、図1に示す出力取得部42とは相違する。
【0042】
出力比較装置50は、フィールドネットワークN1に接続されており、コントローラ20からフィールドネットワークN1を介して送信されてきた制御データ(アプリケーション24a,24bから出力された制御データ)の比較を行う。この出力比較装置50は、フィールドネットワークN1に常時接続されている必要は必ずしもなく、例えば新旧アプリケーションの切り替えが行われる際の制御性の評価を行う場合のみフィールドネットワークN1に接続される。また、また、出力比較装置50は、フィールドネットワークN1に接続されていても制御ネットワークN2に接続されていても良い。
【0043】
上記構成におけるプロセス制御システム2の動作は、アプリケーション24a,24bから出力された制御データの比較がコントローラ20の外部に設けられた出力比較装置50で行われる点を除いて、図1に示すプロセス制御システム1の動作と同様である。つまり、図3のフローチャートに示す通り、まずセンサ機器11からの測定データを新旧アプリケーションに分配する処理が行われる(ステップS11)。これにより、アプリケーション24a,24bからは、分配された制御データに応じた制御量を示す制御データが出力される。
【0044】
次に、新旧アプリケーションの出力を取得する処理(ステップS12)、取得した旧アプリケーションの出力をバルブ機器12に出力する処理(ステップS13)、及び新旧アプリケーションの出力を比較する処理(ステップS14)が順次行われる。具体的には、図6に示す通り、アプリケーション24a,24bから出力されてオペレーティングシステム23a,23bを介した制御データが出力取得部43でそれぞれ取得される。そして、取得された制御データのうち、アプリケーション24aからの制御データが、出力取得部43からフィールドネットワークN1を介してバルブ機器12に出力される。また、出力取得部43で取得されたアプリケーション24a,24bからの制御データが、フィールドネットワークN1を介して出力制御部50に送信され、出力制御部50において制御値や出力タイミングが比較される。図6は、本発明の第2実施形態におけるコントローラ内のデータの流れを示す図である。
【0045】
以上の処理が終了すると、旧アプリケーションに対する新アプリケーションの制御性の差(制御データの制御値や出力タイミングの差)が予め規定された基準内であるか否かが出力比較装置50によって判断される(ステップS15)。そして、制御性の差が予め規定された基準内であると判断された場合(ステップS15の判断結果が「YES」の場合)には、ハイパーバイザ22によって、旧アプリケーションを新アプリケーションに切り替える処理が行われる(ステップS16)。これに対し、制御性の差が予め規定された基準外であると判断された場合(ステップS15の判断結果が「NO」の場合)には、ステップS14で行われた比較結果を、ネットワークN1,N2を接続するゲートウェイ(図示せず)を介して、監視装置30に通知する処理が行われる(ステップS17)。
【0046】
以上の通り、本実施形態では、アプリケーション24a,24bからの出力の比較をコントローラ20の外部に設けられた比較装置50で行っている点において相違するものの、第1実施形態と同様に、ハードウェア21上でハイパーバイザ22を動作させ、入力分配部41による測定データ等の分配、アプリケーション24a,24bからの出力の取得等を行っている。このため、第1実施形態と同様に、旧システムで用いられていたアプリケーション(アプリケーション24a)を新たなシステムで用いられるアプリケーション(アプリケーション24b)に切り替える際の制御性の評価を容易に行うことができる。しかも、旧システムで用いられていたアプリケーション(アプリケーション24a)で工業プロセスにおける状態量の制御を行いつつ上記の制御性の評価を行うことができるため、プラント更新をより安全かつ短時間で行うことができる。
【0047】
〔応用例〕
次に、上述した第1,第2実施形態によるプロセス制御システムの応用例について説明する。前述した第1,第2実施形態は、図2(b)に示す通り、ハイパーバイザ22が動作し、ハイパーバイザ22上で2つのアプリケーション24a,24bの動作が可能であるコントローラ20を用いることで、従前の1台のコントローラ100(図2(a)参照)を、新たな1台のコントローラ20(図2(c)参照)に交換するものであった。これに対し、本応用例は、ハイパーバイザ22を動作させ、ハイパーバイザ22上で3つ以上のアプリケーションの動作を可能とすることで、従前の複数台のコントローラを、少なくとも1台の新たなコントローラに交換するものである。
【0048】
〈第1応用例〉
図7は、本発明の第1,第2実施形態によるプロセス制御システムの第1応用例を説明するための図である。図7に示す通り、本応用例は、ハイパーバイザ22が動作し、ハイパーバイザ22上で4つのアプリケーション(旧AP1〜旧AP3,新AP)の動作が可能であるコントローラ20を用いることで、従前の3台のコントローラ111〜113を、1台の新たなコントローラ20に交換するものである。尚、図7においては、表記の都合上、アプリケーションを「AP」と表記している。また、図7中の出力取得部42,43は、図1に示した出力取得部42或いは図5に示した出力取得部43を表している。
【0049】
従前のコントローラ111〜113は、ハードウェア上で1つのオペレーティングシステム及び1つのアプリケーションが動作しているものである。具体的には、図7(a)に示す通り、コントローラ111は、オペレーティングシステム(旧OS1)及びアプリケーション(旧AP1)が動作し、コントローラ112は、オペレーティングシステム(旧OS2)及びアプリケーション(旧AP2)が動作し、コントローラ113は、オペレーティングシステム(旧OS3)及びアプリケーション(旧AP3)が動作している。
【0050】
以上の従前の3台のコントローラ111〜113をフィールドネットワークN1から取り外し、新たなコントローラ20をフィールドネットワークN1に接続する。ここで、新たなコントローラ20は、ハイパーバイザ22を実現するプログラム、オペレーティングシステム(旧OS1〜旧OS3,新OS)を実現するプログラム、及びアプリケーション(旧AP1〜旧AP3,新AP)を実現するプログラムがインストールされたものである。
【0051】
以上の交換を終えた後に、コントローラ20の電源を投入すれば、インストールされたプログラムが実行され、図7(b)に示す通り、ハードウェア21上で、ハイパーバイザ22、オペレーティングシステム(旧OS1〜旧OS3,新OS)、及びアプリケーション(旧AP1〜旧AP3,新AP)が動作する。尚、ハイパーバイザ22内の入力分配部41は、センサ機器11からの測定データやステータスを、アプリケーション(旧AP1〜旧AP3,新AP)に分配する。また、ハイパーバイザ22内の出力取得部42,43は、アプリケーション(旧AP1〜旧AP3,新AP)の出力を取得し、取得した出力のうちのアプリケーション(旧AP1〜旧AP3)の出力をバルブ機器12に出力する。
【0052】
図7(b)に示す状態で、アプリケーション(旧AP1〜旧AP3)の出力とアプリケーション(新AP)の出力とを比較することで、切り替えを行う際の制御性の評価を行うことができる。その後、オペレーティングシステム(旧OS1〜旧OS3)及びアプリケーション(旧AP1〜旧AP3)を実現するプログラムを停止させれば、コントローラ20のハイパーバイザ22上で、オペレーティングシステム(新OS)及びアプリケーション(新AP)を実現するプログラムのみが実行される状態になる(図7(c)参照)。
【0053】
〈第2応用例〉
図8は、本発明の第1,第2実施形態によるプロセス制御システムの第2応用例を説明するための図である。図8に示す通り、本応用例は、ハイパーバイザ22がそれぞれ動作し、ハイパーバイザ22上で4つのアプリケーション(旧AP1〜旧AP3,新AP11)の動作が可能であるコントローラ20aと、ハイパーバイザ22上で3つのアプリケーション(旧AP4,旧AP5,新AP12)の動作が可能であるコントローラ20bとを用いることで、従前の5台のコントローラ121〜125を、2台の新たなコントローラ20a,20bに交換するものである。尚、図8においても、表記の都合上、アプリケーションを「AP」と表記しており、図8中の出力取得部42,43は、図1に示した出力取得部42或いは図5に示した出力取得部43を表している。
【0054】
従前のコントローラ121〜125は、ハードウェア上で1つのオペレーティングシステム及び1つのアプリケーションが動作しているものである。具体的には、図8(a)に示す通り、コントローラ121は、オペレーティングシステム(旧OS1)及びアプリケーション(旧AP1)が動作し、コントローラ122は、オペレーティングシステム(旧OS2)及びアプリケーション(旧AP2)が動作し、コントローラ123は、オペレーティングシステム(旧OS3)及びアプリケーション(旧AP3)が動作している。また、コントローラ124は、オペレーティングシステム(旧OS4)及びアプリケーション(旧AP4)が動作し、コントローラ125は、オペレーティングシステム(旧OS5)及びアプリケーション(旧AP5)が動作している。
【0055】
以上の従前の5台のコントローラ121〜125をフィールドネットワークN1から取り外し、新たなコントローラ20a,20bをフィールドネットワークN1に接続する。ここで、新たなコントローラ20aは、ハイパーバイザ22を実現するプログラム、オペレーティングシステム(旧OS1〜旧OS3,新OS11)を実現するプログラム、及びアプリケーション(旧AP1〜旧AP3,新AP11)を実現するプログラムがインストールされたものである。また、新たなコントローラ20bは、ハイパーバイザ22を実現するプログラム、オペレーティングシステム(旧OS4,旧OS5,新OS12)を実現するプログラム、及びアプリケーション(旧AP4,旧AP5,新AP12)を実現するプログラムがインストールされたものである。
【0056】
以上の交換を終えた後に、コントローラ20a,20bの電源を投入すれば、インストールされたプログラムが実行される。つまり、図8(b)に示す通り、コントローラ20aにおいては、ハードウェア21上で、ハイパーバイザ22、オペレーティングシステム(旧OS1〜旧OS3,新OS11)、及びアプリケーション(旧AP1〜旧AP3,新AP11)が動作する。また、コントローラ20bにおいては、ハードウェア21上で、ハイパーバイザ22、オペレーティングシステム(旧OS4,旧OS5,新OS12)、及びアプリケーション(旧AP4,旧AP5,新AP12)が動作する。
【0057】
尚、コントローラ20aで動作するハイパーバイザ22内の入力分配部41は、センサ機器11からの測定データやステータスを、アプリケーション(旧AP1〜旧AP3,新AP11)に分配する。また、ハイパーバイザ22内の出力取得部42,43は、アプリケーション(旧AP1〜旧AP3,新AP11)の出力を取得し、取得した出力のうちのアプリケーション(旧AP1〜旧AP3)の出力をバルブ機器12に出力する。
【0058】
同様に、コントローラ20bで動作するハイパーバイザ22内の入力分配部41は、センサ機器11からの測定データやステータスを、アプリケーション(旧AP4,旧AP5,新AP12)に分配する。また、ハイパーバイザ22内の出力取得部42,43は、アプリケーション(旧AP4,旧AP5,新AP12)の出力を取得し、取得した出力のうちのアプリケーション(旧AP4,旧AP5)の出力をバルブ機器12に出力する。
【0059】
図8(b)に示す状態で、コントローラ20aにおけるアプリケーション(旧AP1〜旧AP3)の出力とアプリケーション(新AP11)の出力とを比較し、コントローラ20bにおけるアプリケーション(旧AP4,旧AP5)の出力とアプリケーション(新AP12)の出力とを比較する。これにより、切り替えを行う際の制御性の評価を行うことができる。
【0060】
その後、コントローラ20aにおいて、オペレーティングシステム(旧OS1〜旧OS3)及びアプリケーション(旧AP1〜旧AP3)を実現するプログラムを停止させれば、コントローラ20aのハイパーバイザ22上で、オペレーティングシステム(新OS11)及びアプリケーション(新AP11)を実現するプログラムのみが実行される状態になる。また、コントローラ20bにおいて、オペレーティングシステム(旧OS4,旧OS5)及びアプリケーション(旧AP4,旧AP5)を実現するプログラムを停止させれば、コントローラ20bのハイパーバイザ22上で、オペレーティングシステム(新OS12)及びアプリケーション(新AP12)を実現するプログラムのみが実行される状態になる(図8(c)参照)。
【0061】
以上、本発明の実施形態によるプロセス制御システムについて説明したが、本発明は上述した実施形態に制限されることなく、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、上記実施形態では、複数のオペレーティングシステムやアプリケーションを動作させ得る仮想環境をハイパーバイザ22によってコントローラ20,20a,20bに実現する例について説明したが、このような仮想環境を実現する手段はハイパーバイザ22に限られるものではない。例えば、上記の仮想環境をハードウェアによって実現しても良い。
【0062】
また、上述した第1,第2実施形態及びその応用例では、コントローラの交換(リプレース)をオフラインで行う(一時的にプロセス制御システムを停止させて行う)例について説明したが、コントローラの交換をオンラインで行う(プロセス制御システムを停止させずに行う)ことも可能である。具体的には、従前のコントローラがフィールドネットワークN1に接続されている状態で新たなコントローラをフィールドネットワークN1に接続し、電源を投入して新たなコントローラを動作させた後で、従前のコントローラをフィールドネットワークN1から取り外せば、プラント制御システムを停止させることなくリプレースすることができる。
【0063】
また、コントローラが冗長化されている場合にも、冗長化されたコントローラの交換をオンラインで行うことが可能である。具体的には、冗長化された従前のコントローラ(制御コントローラ及び待機コントローラ)がフィールドネットワークN1に接続されている状態で、まず新たなコントローラをフィールドネットワークN1に接続して動作させ、待機コントローラをフィールドネットワークN1から取り外す。次に、もう1つの新たなコントローラをフィールドネットワークN1に接続して動作させ、制御コントローラの制御権を新たなコントローラの一方に移譲した後で、制御コントローラをフィールドネットワークN1から取り外す。このようにして、コントローラが冗長化されている場合にも、プラント制御システムを停止させることなくリプレースすることができる。
【0064】
また、上述した実施形態では、フィールド機器10がフィールドネットワークN1を介したディジタル通信が可能なものを例に挙げて説明したが、アナログ信号の入出力を行うフィールド機器を用いることもできる。このようなフィールド機器を用いる場合には、フィールド機器で入出力される信号(アナログ信号)とフィールドネットワークN1を介して通信される信号(ディジタル信号)との変換を行うIOノードをフィールドネットワークN1に接続し、このIOノードとフィールド機器とをアナログ伝送路(例えば、「4〜20mA」信号の伝送に使用される伝送線)で接続すれば良い。
【0065】
更に、前述した第1,第2実施形態を組み合わせ、図1に示す出力比較部42aが設けられているコントローラと、図5に示す出力比較装置50とがフィールドネットワークN1に接続された構成にすることも可能である。かかる構成にすれば、出力比較部42aと出力比較装置50との何れによって比較を行うかを選択することができ、システムの構成に応じた柔軟な運用を実現することができる。
【符号の説明】
【0066】
1,2 プロセス制御システム
10 フィールド機器
20 コントローラ
20a,20b コントローラ
21 ハードウェア
22 ハイパーバイザ
23a,23b オペレーティングシステム
24a,24b アプリケーション
41 入力分配部
42 出力取得部
42a 出力比較部
43 出力取得部
50 出力比較装置
N1 フィールドネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8