【実施例】
【0037】
図1から
図3において、本例の四輪自動車におけるストラット型サスペンションに用いるための滑り軸受1は、合成樹脂製としてポリアセタール樹脂製の環状面2を有した第一の軸受体としての上ケース3と、上ケース3に当該上ケース3の軸心Oの回りでR方向に回転自在となるように重ね合わされると共に当該上ケース3の環状面2に対面した合成樹脂製の環状面4を有する第二の軸受体5と、両環状面2及び4間に介在されていると共に、上ケース3及び軸受体5のうちの少なくとも一方、本例では上ケース3及び軸受体5の両方に摺動自在に当接している合成樹脂製の環状のシート6とを具備している。
【0038】
合成樹脂製の上ケース3は、中央部の円形状孔11を規定する内周面12を有すると共に環状面2を有した円環状の上ケース本体部13と、上ケース本体部13の径方向の内周縁に一体に形成されていると共に軸受体5に向かって垂下した最内周側円筒状垂下部14と、最内周側円筒状垂下部14の径方向の外側に配されていると共に環状面2に一体に形成されており、しかも、軸受体5に向かって垂下した内周側円筒状垂下部15と、上ケース本体部13の径方向の外周縁に一体に形成された円筒状垂下係合部16と、円筒状垂下係合部16の径方向の内側であって内周側円筒状垂下部15の径方向の外側に配されていると共に環状面2に一体に形成されている外周側円筒状垂下部17と、円筒状垂下係合部16の径方向の内周面に形成された係合フック部18とを備えて、一体形成されている。
【0039】
内周側の内側円環状突起19と内側円環状突起19の径方向の外側であって内側円環状突起19と略同心に配された外側円環状突起20とからなって環状面4に一体的に形成された突起を有した軸受体5は、軸受部材としてのポリアセタール樹脂製の下ケース21と、下ケース21と上ケース3との間に当該上ケース3の軸心Oの回りで上ケース3及び下ケース21のうちの少なくとも一方、本例では両方に対して回転自在に配されていると共に合成樹脂製、好ましくはポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂及びフッ素樹脂のうちの少なくとも一つを含む合成樹脂からなっている環状片22とを具備している。
【0040】
合成樹脂製の下ケース21は、内周面30を有すると共に環状面31を有した円環状の下ケース本体部32と、下ケース本体部32の径方向の内周縁に一体に形成されていると共に最内周側円筒状垂下部14及び内周側円筒状垂下部15間に配されるように上ケース3に向かって突出した最内周側円筒状突出部33と、最内周側円筒状突出部33の径方向の外側に配されていると共に環状面31に一体に形成されており、しかも、上ケース3に向かって突出した内周側円筒状突出部34と、下ケース本体部32の径方向の外周縁に一体に形成されていると共に、円筒状垂下係合部16及び外周側円筒状垂下部17間に配されるように上ケース3に向かって突出した円筒状突出係合部35と、円筒状突出係合部35の径方向の内側であって内周側円筒状突出部34の径方向の外側に配されていると共に環状面31に一体に形成されており、しかも、上ケース3に向かって突出した外周側円筒状突出部36と、円筒状突出係合部35の径方向の外周面に形成されていると共に、係合フック部18に係合する係合フック部37と、下ケース本体部32の径方向の内周側において当該下ケース本体部32の外面38に一体に形成されていると共に内周面30に連続した内周面39を有して下方に突出した円筒部40とを備えて、一体形成されており、内周面30と内周面39とによって円形状孔11と略同心の下ケース本体部32の中央部の円形状孔41が規定されている。
【0041】
最内周側円筒状突出部33は、環状面31からのその高さH1が同じく環状面31からの内周側円筒状突出部34の高さH2よりも低くなるように形成されており、円筒状突出係合部35もまた、環状面31からのその高さH3が同じく環状面31からの外周側円筒状突出部36の高さH4よりも低くなるように形成されている(
図5参照)。なお、本発明はこれらに限定されず、例えば最内周側円筒状突出部33と内周側円筒状突出部34とを同一の高さ(H1=H2)としてもよく、同じく円筒状突出係合部35と外周側円筒状突出部36とを同一の高さ(H3=H4)としてもよい。
【0042】
環状片22は、環状面2に対面する環状面4と、環状面4に一体的に形成された内側円環状突起19及び外側円環状突起20に加えて、環状面4に対向して配された他の環状面55と、内周側の内側円環状突起56及び内側円環状突起56の径方向の外側であって内側円環状突起56と略同心に配された外側円環状突起57とからなって環状面55に一体的に形成された他の突起とを有しており、環状片22の環状面55に対面する下ケース21の合成樹脂製の環状面31は、内側円環状突起19及び外側円環状突起20と同様に形成された内側円環状突起56及び外側円環状突起57に摺動自在に当接している。
【0043】
環状面4には内側円環状突起19及び外側円環状突起20で囲まれた環状の閉塞凹所58が形成されており、環状面55には内側円環状突起56及び外側円環状突起57で囲まれた環状の閉塞凹所59が形成されており、閉塞凹所58及び59にはグリース及び潤滑油のうちの少なくとも一つ、好ましくはシリコーン系グリースからなる流体60及び61が一杯に充填されている。
【0044】
合成樹脂製、好ましくは、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂及びフッ素樹脂のうちの少なくとも一つを含む合成樹脂からなっていると共に、0.05mmから1.0mmの厚みを有しているシート6は、内側円環状突起19及び外側円環状突起20からなる突起と環状面2との間に介在されていると共に、内側円環状突起19及び外側円環状突起20からなる突起と環状面2とのうちの少なくとも一方、本例では両方に摺動自在に当接している。
【0045】
閉塞凹所58は、シート6に対面するその面積がシート6に摺動自在に当接する内側円環状突起19及び外側円環状突起20の合計面積よりも大きくなるように、内側円環状突起19及び外側円環状突起20で囲まれている、換言すれば、閉塞凹所58は、シート6に接触する流体60の面積がシート6に摺動自在に当接する内側円環状突起19及び外側円環状突起20の合計面積よりも大きくなるように、内側円環状突起19及び外側円環状突起20で囲まれており、閉塞凹所59は、環状面31に対面するその面積が環状面31に摺動自在に当接する内側円環状突起56及び外側円環状突起57の合計面積よりも大きくなるように、内側円環状突起56及び外側円環状突起57で囲まれている、換言すれば、閉塞凹所59は、環状面31に接触する流体61の面積が環状面31に摺動自在に当接する内側円環状突起56及び外側円環状突起57の合計面積よりも大きくなるように、内側円環状突起56及び外側円環状突起57で囲まれている。
【0046】
内側円環状突起19及び外側円環状突起20は、スラスト荷重下で、閉塞凹所58の流体充填容積を小さくして閉塞凹所58の流体60に内圧を生じさせるように撓み変形してシート6に当接するようになっており、内側円環状突起56及び外側円環状突起57もまた、スラスト荷重下で、閉塞凹所59の流体充填容積を小さくして閉塞凹所59の流体61に内圧を生じさせるように撓み変形して環状面31に当接するようになっている。
【0047】
上ケース3は、その径方向の外周縁部の円筒状垂下係合部16の係合フック部18で下ケース21における径方向の外周縁部の円筒状突出係合部35の係合フック部37にスナップフィット式に弾性係合して下ケース21に弾性嵌着されるようになっている。
【0048】
上ケース3及び下ケース21のその径方向の外周縁部及び内周縁部のうちの少なくとも一方、本例では両縁部において、上ケース3及び下ケース21間には、上ケース本体部13、円筒状垂下係合部16及び外周側円筒状垂下部17と下ケース本体部32、円筒状突出係合部35及び外周側円筒状突出部36とによりラビリンス(迷路)65が形成されるようになっており、上ケース本体部13、最内周側円筒状垂下部14及び内周側円筒状垂下部15と下ケース本体部32、最内周側円筒状突出部33及び内周側円筒状突出部34とによりラビリンス66が形成されるようになっており、斯かる外周縁部のラビリンス65及び内周縁部のラビリンス66により閉塞凹所58及び59への外部からの塵埃、泥水等の侵入が防止されている。
【0049】
以上の滑り軸受1は、
図4に示すようなストラット型サスペンションアセンブリにおけるコイルばね71の上部ばね座72と、油圧ダンパのピストンロッド73が固着される車体側の取付部材74との間に装着されて用いられる。この場合、円形状孔11及び41にピストンロッド73の上部が上ケース3及び下ケース21に対して軸心Oの回りでR方向に回転自在になるようにして挿通される。
【0050】
図4に示すように滑り軸受1を介して装着されたストラット型サスペンションアセンブリでは、ステアリング操作に際してはコイルばね71を介する上部ばね座72の軸心Oの回りでの相対的なR方向の回転は、上ケース3に対する下ケース21の同方向の相対的な回転で滑らかに行われる。
【0051】
そして、滑り軸受1によれば、上ケース3の上ケース本体部13並びに環状片22の内側円環状突起19及び外側円環状突起20に摺動自在に当接している合成樹脂製の環状のシート6が両環状面2及び4間に介在されているために、斯かるシート6を交換するだけで、上ケース3及び環状片22の間の摩擦係数を簡易に調整できて最適な摩擦係数を得ることができ、ストラット型サスペンションにスラスト滑り軸受として組込んでもころがり軸受と同等の滑らかなステアリング操作を確保し得る上に、ステアリングハンドルのフラッタ現象をなくし得るように最適な摩擦係数に容易に調節することができる。
【0052】
加えて、滑り軸受1によれば、シート6に摺動自在に当接する内側円環状突起19及び外側円環状突起20で囲まれた閉塞凹所58が環状面4に形成されて、斯かる閉塞凹所58にシリコーン系グリースからなる流体60が充填されるようになっていると共に、内側円環状突起19及び外側円環状突起20は、スラスト荷重下で、閉塞凹所58の流体充填容積を小さくして閉塞凹所58の流体60に内圧を生じさせるように撓み変形してシート6に当接するようになっている結果、閉塞凹所58に充填された流体60でもスラスト荷重を分担して受容できるようになり、換言すればシート6に対する下ケース21の摺動面が、シート6に接触する内側円環状突起19及び外側円環状突起20の面と閉塞凹所58に充填されてシート6に接触する流体60の面とで構成されることになる。
【0053】
また滑り軸受1によれば、閉塞凹所58に充填されてシート6に接触する流体60の面の面積が、シート6に摺動自在に当接する内側円環状突起19及び外側円環状突起20の合計面積よりも大きくなるように設定してあるので、内側円環状突起19及び外側円環状突起20で負担するスラスト荷重が大幅に減少し、内側円環状突起19及び外側円環状突起20とシート6との摩擦抵抗が大幅に減少すると共に、シート6に接触する流体60の面による摩擦抵抗は非常に小さいので全体として極めて低い摩擦抵抗が得られる。したがって、上ケース3に対する当該上ケース3の軸心Oの回りでの下ケース21のR方向の相対的な回転をスラスト荷重下でも極めて低い摩擦抵抗でもって行わせることができ、しかも、斯かる流体60がシール体としても機能し得るシート6でもって密封された閉塞凹所58に充填されているために長期の使用でも低い摩擦係数を維持できる上に、摺動面での摩擦音の発生をなくし得、ストラット型サスペンションに組込んでもころがり軸受と同等の滑らかなステアリング操作を確保し得ることになる。
【0054】
滑り軸受1では、閉塞凹所59にも流体61が充填されて、内側円環状突起56及び外側円環状突起57がスラスト荷重下で閉塞凹所59の流体充填容積を小さくして閉塞凹所59の流体61に内圧を生じさせるように撓み変形して環状面31に当接するようになっているために、シート6と内側円環状突起19及び外側円環状突起20との間の摩擦抵抗が何らかの原因で大きくなっても、前記と同様にして内側円環状突起56及び外側円環状突起57と環状面31との極めて低い摩擦抵抗をもった摺動を確保できて、而して、上ケース3に対する当該上ケース3の軸心Oの回りでの下ケース21のR方向の相対的な回転をスラスト荷重下でも極めて低い摩擦抵抗でもって行わせることができてフェールセーフなものとなる。
【0055】
上記では、シート6を環状面2にぴたりと沿わせて内側円環状突起19及び外側円環状突起20からなる突起と環状面2との間に介在させたが、これに代えて、
図5に示すように、閉塞凹所58に対応する環状の閉塞空間81がシート6と環状面2との間に形成されるように、シート6を環状面4にぴたりと沿わせて内側円環状突起19及び外側円環状突起20からなる突起と環状面2との間に介在させてもよく、この場合には、閉塞空間81に流体60を一杯に充填し、閉塞空間81に充填された流体60でもって上述と同様にしてスラスト荷重を受容するとよい。また、シート6を環状面2又は4にぴたりと沿わせる代わりに、閉塞凹所58と閉塞空間81との両方が環状面2と環状面4との間に形成されるようにシート6を撓ませて、しかも、閉塞凹所58と閉塞空間81との両方に流体60を一杯に充填してもよい。
【0056】
また上記の滑り軸受1では、環状面55に内側円環状突起56と外側円環状突起57とを有した環状片22を用いたが、これに代えて、
図6に示すように内側円環状突起56と外側円環状突起57とを設けることなしに、平坦な環状面55を有した環状片22を用い、環状面55を下ケース本体部32の平坦な環状面31に摺動自在に接触させて滑り軸受1を構成してもよく、更には、上記のように下ケース21と別体の環状片22とで軸受体5を構成する代わりに、
図7に示すように環状片22と同等の環状中央突出部82を下ケース本体部32に一体的に形成して、環状中央突出部82の環状面4に一体的に内側円環状突起19と外側円環状突起20とからなる突起を形成して、内側円環状突起19と外側円環状突起20とからなる突起をシート6に摺動自在に当接させてもよく、この場合、
図7に示すように内周側円筒状突出部34と外周側円筒状突出部36とを環状中央突出部82に一体化してもよく、これに代えて、内周側円筒状突出部34及び外周側円筒状突出部36との間に径方向の隙間を生じさせて環状中央突出部82を下ケース本体部32に一体的に形成しても又は内周側円筒状突出部34と外周側円筒状突出部36とを省いて環状中央突出部82を下ケース本体部32に一体的に形成してもよい。
【0057】
また上記の滑り軸受1では、シート6を環状面2及び4間に介在させたが、これに代えて、
図8から
図10に示すように、シート6を環状面31及び環状面55間に介在させて、内側円環状突起56及び外側円環状突起57からなる突起と環状面31との両方にシート6を摺動自在に当接させてもよく、ここで、
図8に示すように、環状片22の内側円環状突起19及び外側円環状突起20からなる突起を環状面2に摺動自在に当接させてもよく、
図9に示すように、環状片22の平坦な環状面4を環状面2に摺動自在に当接させてもよく、また
図10に示すように、上ケース本体部13に一体的に形成されていると共に環状片22と同等であって環状中央突出部82と同様の環状中央突出部83をもって上ケース3を構成してもよく、いずれの場合も、閉塞凹所59にシリコーン系グリースからなる流体61を一杯に充填するとよく、また、閉塞空間81と同等の閉塞空間を環状面31と環状面55との間に形成して斯かる閉塞空間に前記と同様にシリコーン系グリース等の流体61を一杯に充填してもよい。
【0058】
加えて、例えば
図11に示すように、シート6を環状面2及び環状面4間に介在させると共に、環状面31及び環状面55間にも他のシート6を介在させてもよく、この場合、環状面2並びに内側円環状突起19及び外側円環状突起20にシート6を摺動自在に当接させると共に、環状面31並びに内側円環状突起56及び外側円環状突起57に合成樹脂製の他のシート6を摺動自在に当接させてもよいが、
図11に示すように、平坦な環状面4及び55を有した環状片22を用いて、両シート6を平坦な環状面4及び55の夫々に摺動自在に当接させてもよい。合成樹脂製の他のシート6もまた、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂及びフッ素樹脂のうちの少なくとも一つを含む合成樹脂からなって、0.05mmから1.0mmの厚みを有しているとよい。
【0059】
ところで、上記の滑り軸受1では、上ケース本体部13の環状面2に最内周側円筒状垂下部14と内周側円筒状垂下部15とを一体に形成して上ケース3を構成し、下ケース本体部32の環状面31に最内周側円筒状突出部33と内周側円筒状突出部34等とを一体に形成して下ケース21を構成したが、これに代えて、
図12に示すように、上ケース本体部13の環状の外面90に一体的に形成された円筒状部91と、円筒状部91に一体的に形成された環状部92と、環状部92に一体的に形成された円筒状垂下部93とを具備して上ケース3を構成すると共に、下ケース本体部32の環状面31に一体的に形成されていると共に、円筒状部91と略同心であって円筒状部91の径方向内方に配された円筒状部95と、下ケース本体部32の環状面31及び円筒状部95の円筒状の外面96に一体的に形成されている環状突部97と、円筒状部95の環状の端面98に一体的に形成されていると共に、円筒状部91及び円筒状垂下部93間に配された円筒状突部99とを具備して下ケース21を構成してもよい。
【0060】
図12に示す滑り軸受1では、上ケース3及び下ケース21間には、円筒状部91、環状部92及び円筒状垂下部93と円筒状部95及び円筒状突部99とでもってラビリンス66が形成されるようになっており、円筒状部95の円筒状の内面101で規定される円形状孔102にピストンロッド73の上部が上ケース3及び下ケース21に対して軸心Oの回りでR方向に回転自在になるようにして挿通されるようになっている。そして、
図12に示す滑り軸受1でも、前記と同様に、上ケース3及び下ケース21間には、上ケース本体部13、円筒状垂下係合部16及び外周側円筒状垂下部17と下ケース本体部32、円筒状突出係合部35及び外周側円筒状突出部36とによりラビリンス65が形成されていると共に、シート6が例えば両環状面2及び4間に介在されている。
【0061】
上ケース3及び下ケース21を更に
図13に示すように構成してもよい。
図13に示す滑り軸受1では、上ケース3は、上述の上ケース本体部13、円筒状垂下係合部16、外周側円筒状垂下部17及び係合フック部18に加えて、上ケース本体部13の環状面2に一体的に形成された垂下円筒状部111と、垂下円筒状部111の端面112に一体的に形成されている互いに略同心の一対の垂下環状部113及び114と、上ケース本体部13の環状面2及び垂下円筒状部111の径方向の外側の円筒状面115に一体的に形成されている円筒状部116とを具備しており、下ケース21は、上述の下ケース本体部32、内周側円筒状突出部34、円筒状突出係合部35、外周側円筒状突出部36及び係合フック部37に加えて、下ケース本体部32の径方向の内周側における下ケース本体部32の外面38に一体に形成されている円筒部121と、環状の段部126を形成して円筒部121の端面に一体に形成されている中空の截頭円錐部122と、截頭円錐部122の内周面に一体に形成されている環状部123と、環状部123の環状面124に一体に形成されていると共に一対の垂下環状部113及び114間に配された円筒状突部125とを具備している。
【0062】
図13に示す滑り軸受1では、上ケース3及び下ケース21間には、前記と同様のラビリンス65に加えて、垂下円筒状部111、一対の垂下環状部113及び114と、環状部123及び円筒状突部125とによりラビリンス66が形成されていると共に、シート6が例えば両環状面2及び4間並びに両環状面31及び55間に介在されており、垂下円筒状部111の円筒状の内面131で規定される円形状孔132にピストンロッド73の上部が上ケース3及び下ケース21に対して軸心Oの回りでR方向に回転自在になるようにして挿通されるようになっている。
【0063】
ところで、
図13に示す滑り軸受1のように、垂下円筒状部111の径方向の外側の円筒状面115と円筒状面115に対面する円筒部121の径方向の内側の円筒状面142との間に円筒状のラジアル軸受体145及び円筒状のシート146を介在させてもよく、ここで、ラジアル軸受体145は、
図14に示すように、円筒部140と、円筒部140の一方の環状の端面149から円筒部140の他方の環状の端面150まで伸びていると共に円筒部140の円筒状の内面147に一体的に形成された複数の突起148とを有しており、円筒状のシート146は、シート6と同様に、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂及びフッ素樹脂のうちの少なくとも一つを含む合成樹脂からなっていると共に0.05mmから1.0mmの厚みを有しており、ラジアル軸受体145内に配されて、その円筒状の外面161では、複数の突起148の各頂面162に摺動自在に当接しており、その円筒状の内面163では垂下円筒状部111の円筒状面115に摺動自在に当接している。
【0064】
斯かる互いに対面する円筒状面115及び142を夫々有した上ケース3及び軸受体5を具備して、両円筒状面115及び142間に合成樹脂製の円筒状のシート146が介在されて、円筒状のシート146が両円筒状面115及び142のうちの少なくとも一方に、本例では円筒状面115に摺動自在に当接し、円筒部140の円筒状の外面165が円筒状面142に摺動自在に当接している滑り軸受1では、上ケース3に対する軸受体5のラジアル方向(径方向)荷重をラジアル軸受体145及び円筒状のシート146を介して受容でき、而して、ラジアル荷重下でも上ケース3に対する当該上ケース3の軸心Oの回りでの下ケース21のR方向の相対的な回転を極めて低い摩擦抵抗でもって行わせることができる。
【0065】
ラジアル軸受体145としては、複数の突起148を設けないで円筒部140のみで構成してもよく、また、円筒部140の外面165に一体的に複数の突起148を形成してもよく、この場合には、ラジアル軸受体145の径方向の外側にシート146を配置するとよく、更には、円筒部140の内面147及び外面165の両方に一体的に複数の突起148を形成してもよく、ラジアル軸受体145の斯かるいずれの態様においても、シート146をラジアル軸受体145の径方向の外側及び内側の両方に配してもよい。
【0066】
環状片22としては、内側円環状突起19及び外側円環状突起20並びに内側円環状突起56及び外側円環状突起57の少なくとも一方に加えて、
図15に示すように、内側円環状突起19(56)並びに外側円環状突起20(57)の夫々に一体に連結されて径方向に伸びていると共に、円周方向において等間隔に配された複数の放射方向突起151を有して環状面4(55)に一体的に形成された突起をもって構成してもよく、
図15に示す環状片22の場合には、内側円環状突起19(56)及び外側円環状突起20(57)と複数の放射方向突起151とによって囲まれていると共に互いに独立な複数の閉塞凹所152に前記と同様のシリコーン系グリースからなる流体60(61)を一杯に充填するとよい。
【0067】
更に環状片22としては、内側円環状突起19(56)並びに外側円環状突起20(57)を有した突起を具備して構成する代わりに、
図16に示すように、環状面4及び55の少なくとも一方に一体的に形成されていると共に円周方向において等間隔に配された複数の放射方向突起171からなる突起を具備して構成してもよく、環状面4及び55の両方に複数の放射方向突起171を形成する場合には、環状面4の複数の放射方向突起171と環状面55の複数の放射方向突起171とを円周方向において互いに位置をずらして配置するとよい。
【0068】
また、内側円環状突起19及び外側円環状突起20並びに内側円環状突起56及び外側円環状突起57の少なくとも一方に加えて、
図17及び
図18に示すように、径方向における内側円環状突起19と外側円環状突起20との間であって内側円環状突起19と外側円環状突起20と略同心に配されていると共に環状面4に一体的に形成されている中間円環状突起181を更に有した突起と、径方向における内側円環状突起56と外側円環状突起57との間であって内側円環状突起56と外側円環状突起57と略同心に配されていると共に環状面55に一体的に形成されている他の中間円環状突起182を更に有した他の突起とのうちの少なくとも一方を具備して環状片22を構成してもよい。
【0069】
図1に示す態様の上ケース3、シート6及び下ケース21に
図17及び
図18に示す環状片22を用いた滑り軸受1では、閉塞凹所58は、内側円環状突起19及び中間円環状突起181で囲まれた環状の内側閉塞凹所185と中間円環状突起181及び外側円環状突起20で囲まれた環状の外側閉塞凹所186とからなり、閉塞凹所59は、内側円環状突起56及び中間円環状突起182で囲まれた環状の内側閉塞凹所187と中間円環状突起182及び外側円環状突起57で囲まれた環状の外側閉塞凹所188とからなる。
【0070】
内側円環状突起19及び56並びに外側円環状突起20及び57に加えて中間円環状突起181及び182を有した突起を具備している
図17及び
図18に示す環状片22を用いた滑り軸受1では、当該滑り軸受1にスラスト方向における偏荷重が加わっても、内側円環状突起19及び56並びに外側円環状突起20及び57の不均一な撓みを少なくできる上に、内側閉塞凹所185と外側閉塞凹所186とからなる閉塞凹所58及び内側閉塞凹所187と外側閉塞凹所188とからなる閉塞凹所59の閉塞状態(密閉状態)を好ましく保持でき、閉塞凹所58及び59から流体60及び61を漏出させないで流体60及び61によるスラスト荷重の受容を長期に亘って維持できる。
【0071】
斯かる中間円環状突起181及び182は、
図5から
図10、
図12、
図13及び
図15に示す各態様の環状片22及び滑り軸受1に上記と同様にして必要に応じて適用されてよく、また、中間円環状突起181及び182の夫々は、一個に限定されないのであって互いに略同心に配された複数個からなっていてもよく、加えて、中間円環状突起181及び182のうちのいずれかを省いてもよい。