特許第5660162号(P5660162)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社大真空の特許一覧

特許5660162音叉型圧電振動片、および音叉型圧電振動デバイス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5660162
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】音叉型圧電振動片、および音叉型圧電振動デバイス
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/19 20060101AFI20150108BHJP
   H03H 9/215 20060101ALI20150108BHJP
   H03H 9/10 20060101ALI20150108BHJP
【FI】
   H03H9/19 Z
   H03H9/215
   H03H9/10
【請求項の数】11
【全頁数】39
(21)【出願番号】特願2013-130910(P2013-130910)
(22)【出願日】2013年6月21日
(62)【分割の表示】特願2010-515154(P2010-515154)の分割
【原出願日】2009年9月18日
(65)【公開番号】特開2013-232944(P2013-232944A)
(43)【公開日】2013年11月14日
【審査請求日】2013年6月24日
(31)【優先権主張番号】特願2008-248218(P2008-248218)
(32)【優先日】2008年9月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000149734
【氏名又は名称】株式会社大真空
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】特許業務法人あーく特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白井 崇
(72)【発明者】
【氏名】阪本 和靖
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 俊介
(72)【発明者】
【氏名】藤井 智
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 正人
(72)【発明者】
【氏名】森本 賢周
【審査官】 畑中 博幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭56−000736(JP,A)
【文献】 特開2005−039767(JP,A)
【文献】 特開2005−217727(JP,A)
【文献】 特開2005−150992(JP,A)
【文献】 特開昭62−265807(JP,A)
【文献】 特開昭53−133392(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 9/19
H03H 9/10
H03H 9/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
音叉型圧電振動片において、
少なくとも、振動部である複数本の脚部と、外部と接合する接合部と、これら前記脚部および前記接合部を突出して設けた基部とから構成され、
前記複数本の脚部は、前記基部の一端面から突出し、かつ、前記一端面に並設され、
前記接合部は、前記基部の一端面と対向する他端面の、前記基部の一端面の幅方向における前記複数本の脚部の中間位置に対向する位置から突出し、
少なくとも、前記接合部の基端部が、外部と接合する接合領域とされており、
前記接合部の基端部が、前記基部の前記他端面よりも幅狭となるように形成され、
前記接合部は、前記基端部を一辺とする平面視L字状に形成され
前記脚部に、一対の励振電極が形成され、前記接合部と前記基部とに、前記一対の励振電極から引き出された引出電極がそれぞれ形成され、
前記接合部の基端部に、前記一対の励振電極のうち一励振電極から引き出された前記引出電極が形成され、前記接合部の先端部に、前記一対の励振電極のうち他励振電極から引き出された前記引出電極が形成され、
前記接合部の先端部が、外部と接合する接合領域とされたことを特徴とする音叉型圧電振動片。
【請求項2】
請求項に記載の音叉型圧電振動片において、
前記接合部の基端部及び先端部が、前記接合領域とされ、
前記基端部の前記接合領域は、前記基端部の平面視L字状に成形された折曲箇所である折曲部であることを特徴とする音叉型圧電振動片。
【請求項3】
請求項に記載の音叉型圧電振動片において、
前記折曲部における折曲内側の側面は、曲面に形成されたことを特徴とする音叉型圧電振動片。
【請求項4】
請求項に記載の音叉型圧電振動片において、
前記折曲部における折曲内側の側面は、多角の折曲面に形成されたことを特徴とする音叉型圧電振動片。
【請求項5】
請求項1〜のうちのいずれか1つに記載の音叉型圧電振動片において、
前記接合部の基端部の両主面が、外部と接合する接合領域とされたことを特徴とする音叉型圧電振動片。
【請求項6】
請求項1〜のうちのいずれか1つに記載の音叉型圧電振動片において、
前記脚部に、一対の励振電極が形成され、前記接合部と前記基部とに、前記一対の励振電極から引き出された引出電極がそれぞれ形成され、
前記接合部の基端部に、前記一対の励振電極のうち一励振電極から引き出された前記引出電極が形成され、前記接合部の先端部に、前記一対の励振電極のうち他励振電極から引き出された前記引出電極が形成され、
前記接合部の基端部と先端部が、外部と接合する接合領域とされ、前記接合領域には、それぞれ外部と接合するバンプが形成され、
前記接合部の基端部の接合領域に形成された前記バンプは、前記接合部の先端部の接合領域に形成された前記バンプより小さいことを特徴とする音叉型圧電振動片。
【請求項7】
請求項1〜のうちのいずれか1つに記載の音叉型圧電振動片において、
前記基部は、平面視左右対称形状とされ、
前記基部の他端部は、前記一端面側から前記他端面側にかけて幅狭になるように形成されたことを特徴とする音叉型圧電振動片。
【請求項8】
請求項1〜のうちのいずれか1つに記載の音叉型圧電振動片において、
前記接合領域に、メッキバンプが形成されたことを特徴とする音叉型圧電振動片。
【請求項9】
請求項1〜のうちのいずれか1つに記載の音叉型圧電振動片において、
前記振動部の少なくとも一方の主面に溝が形成されたことを特徴とする音叉型圧電振動片。
【請求項10】
音叉型圧電振動デバイスにおいて、
請求項1〜のうちのいずれか1つに記載の音叉型圧電振動片と、前記音叉型圧電振動片を搭載する第1封止部材と、前記第1封止部材に搭載した前記音叉型圧電振動片を本体筐体内に気密封止するための第2封止部材と、が設けられたことを特徴とする音叉型圧電振動デバイス。
【請求項11】
請求項10に記載の音叉型圧電振動デバイスにおいて、
前記第1封止部材には、前記音叉型圧電振動片を搭載する段部が設けられ、
前記段部の端縁と前記接合部の基端部とが平面視重なることを特徴とする音叉型圧電振動デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音叉型圧電振動片、および音叉型圧電振動デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
圧電振動デバイスの一つとして、基部とこの基部から突出された2つの脚部を有する振動部とからなる音叉型水晶振動片を用いた音叉型水晶振動子がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
上記したような音叉型水晶振動片では、さらに、外部と接合する接合部が、基部の2つの脚部を形成した一端面と対向する他端面から突出形成されている。これら基部の他端面から突出形成された接合部は、基部の他端面から両側面に沿ってT字状に2股に分かれて延出して成形され、それぞれ先端部は、2つの脚部の先端と同じ方向に向いている。
【0004】
この音叉型水晶振動子では、その本体筐体がベースと蓋とから構成され、本体筐体の内部には、ベース上に導電性材料により音叉型水晶振動片の接合部の先端部が電気機械的に接合され、この接合された音叉型水晶振動片が本体筐体の内部に気密封止されている。この音叉型水晶振動子によれば、振動漏れ(音響リーク)を防ぐことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−357178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したように、特許文献1に記載の音叉型圧電振動子によれば、ベース上に導電性材料により音叉型水晶振動片の接合部の先端部が電気機械的に接合されているので、振動部である脚部から、ベースの接合位置までの引回し電極が長くなり、脚部で生じる振動が伝わり難くなる。
【0007】
しかしながら、その反面、ベースへの接合位置が接合部の先端部であり、振動部が脚部であり、その基部を介した実質距離が長くなるので、振動の応力や、当該音叉型水晶振動子を外部から衝撃を加えた時の外力に対して耐え難く、基部や接合部で応力や外力を受けて、水晶振動片が割れ易くなる。また、接合部の平面視全長が長くなるので、平面視全長が長い接合部を搭載するためのベースの搭載領域を確保する必要があり、その結果、水晶振動子の本体筐体の小型化の妨げとなる。
【0008】
そこで、上記課題を解決するために、本発明は、音響リークを防ぐとともに、応力や外力に強い小型化に適した音叉型圧電振動片、および音叉型圧電振動デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明にかかる音叉型圧電振動片は、 少なくとも、振動部である複数本の脚部と、外部と接合する接合部と、これら前記脚部および前記接合部を突出して設けた基部とから構成され、前記複数本の脚部は、前記基部の一端面から突出し、かつ、前記一端面に並設され、前記接合部は、前記基部の一端面と対向する他端面の、前記基部の一端面の幅方向における前記複数本の脚部の中間位置に対向する位置から突出し、少なくとも、前記接合部の基端部が、外部と接合する接合領域とされており、前記接合部の基端部が、前記基部の前記他端面よりも幅狭となるように形成され、前記接合部は、前記基端部を一辺とする平面視L字状に形成され、前記脚部に、一対の励振電極が形成され、前記接合部と前記基部とに、前記一対の励振電極から引き出された引出電極がそれぞれ形成され、前記接合部の基端部に、前記一対の励振電極のうち一励振電極から引き出された前記引出電極が形成され、前記接合部の先端部に、前記一対の励振電極のうち他励振電極から引き出された前記引出電極が形成され、前記接合部の先端部が、外部と接合する接合領域とされたことを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、音響リークを防ぐとともに、応力や外力に強く、音叉型圧電振動片が割れるなどの不具合が生じるのを防ぐことが可能となり、さらに小型化に適している。
【0011】
具体的に、本発明によれば、少なくとも前記複数本の脚部と、前記接合部と、前記基部とから構成され、前記複数本の脚部は、前記基部の一端面から突出し、かつ、前記一端面に並設され、前記接合部は、前記基部の一端面と対向する他端面の、前記基部の一端面の幅方向における前記複数本の脚部の中間位置に対向する位置から突出し、少なくとも、前記接合部の基端部が、外部と接合する接合領域とされるので、前記基部付近の前記接合部の基端部を外部との前記接合領域として応力や外力に強い構成とすることを可能とする。さらに、前記基部の一端面の幅方向における前記複数本の脚部の中間位置に対向する位置から前記接合部を突出するので、音響リークを防止することが可能となる。例えば、当該音叉型圧電振動片を外部に搭載するなど当該音叉型圧電振動片を他の部材に接合したり、当該音叉型圧電振動片に外力がかかったりすることで発振周波数のズレなどが生じる場合があるが、本発明によれば、このようなことは生じない。
【0012】
また、本発明によれば、音響リークに対する悪影響を低減させるだけでなく、前記接合部の幅を太く設定することも可能であり、この場合、外力(例えば、当該音叉型圧電振動片の落下によって生じる当該音叉型圧電振動片への外力)が当該音叉型圧電振動片に加わったとしても、前記接合部において物理的および電気的な破断が発生するのを抑えることが可能となる。その結果、本発明によれば、例えば耐衝撃性などの耐久性を向上させることが可能となる。
【0013】
本発明において、前記接合部は平面視L字状に形成されている。例えば、前記接合部が、前記他端面に対して平面視垂直方向に突出した短辺部と、前記短辺部の先端部と連なり前記先端部において平面視直角に折曲されて前記基部の幅方向に延出する長辺部とから構成された平面視L字状に形成されてもよい。
【0014】
本発明によれば、前記接合部は平面視L字状に形成されるので、当該音叉型圧電振動片の全長や平面視幅の寸法を小さくして、当該音叉型圧電振動片の本体筐体の小型化に寄与する。さらに、当該音叉型圧電振動片を1枚のウエハから多数個形成する場合、1枚のウエハからの当該音叉型圧電振動片の取れ数を増やすことが可能となる。また、外部からの衝撃などの外力が加わった際に、厚み方向への撓みを抑えて、当該音叉型圧電振動片を外部部材(下記する第1封止部材や第2封止部材から構成される圧電振動デバイス)に搭載した際に、前記外部部材へ接触するのを防止することが可能となる。その結果、前記振動部が前記外部部材に接触して削れたりするのを防止し、発振周波数が変化するのを防止することが可能となる。また、前記振動部の振動により発生した漏れ振動を、平面視L字状に形成された折曲部位(下記する折曲部)において留めて前記接合部の先端部に伝わりにくくし、音響リークをさらに低減されることが可能となる。
【0016】
本発明によれば、特に、前記接合部の基端部および先端部が前記接合領域とされ、前記接合部の前記基端部に前記一励振電極が形成され、前記接合部の前記先端部に前記他励振電極が形成されるので、外部と接合する前記接合領域における短絡を防ぐことが可能であり、さらに、前記接合部の基端部および先端部において前記接合領域を設定することで、音響リークを防ぐとともに、応力や外力に強い構成とすることが可能となる。
【0017】
前記構成において、前記接合部の基端部及び先端部が、前記接合領域とされ、前記基端部の前記接合領域は、前記基端部の平面視L字状に成形された折曲箇所である折曲部であってもよい。
【0018】
この場合、前記接合部における外部と接合する接合領域は、前記折曲部と前記先端部とに形成されるので、前記振動部の振動により発生した漏れ振動を、前記折曲部において留めて前記先端部へ伝わるのを抑制することが可能となり、その結果、音響リークをより一層低減させることが可能となる。
【0019】
前記構成において、前記折曲部における折曲内側の側面は、曲面に形成されてもよい。
【0020】
この場合、前記折曲部における折曲内側の側面が曲面に形成されるので、前記折曲内側の側面において前記折曲部が起点となりクラックが発生するのを抑制することが可能となり、その結果、前記引出電極の短絡を防止することが可能となる。また、この場合、折曲部の強度を高めることが可能となり、その結果、周波数変動(周波数のシフト)を抑えることが可能となる。
【0021】
前記構成において、前記折曲部における折曲内側の側面は、多角の折曲面に形成されてもよい。
【0022】
この場合、前記折曲部における折曲内側の側面が多角の折曲面に形成されるので、前記折曲内側の側面において前記折曲部が起点となりクラックが発生するのを抑制することが可能となり、その結果、前記引出電極の短絡を防止することが可能となる。また、この場合、折曲部の強度を高めることが可能となり、その結果、周波数変動(周波数のシフト)を抑えることが可能となる。
【0023】
前記構成において、前記接合部の基端部の両主面が、外部と接合する接合領域とされてもよい。
【0024】
この場合、前記接合部の基端部の両主面が外部と接合する接合領域とされるので、音響リークを低減させながら当該音叉型圧電振動片の全長や平面視幅の寸法が大きくなるのを防ぐことが可能となり、当該音叉型圧電振動片の本体筐体の小型化に寄与する。その結果、当該音叉型圧電振動片を1枚のウエハから多数個形成する場合、1枚のウエハからの当該音叉型圧電振動片の取れ数を増やすことが可能となる。
【0025】
前記構成において、前記脚部に、一対の励振電極が形成され、前記接合部と前記基部とに、前記一対の励振電極から引き出された引出電極がそれぞれ形成され、前記接合部の基端部に、前記一対の励振電極のうち一励振電極から引き出された前記引出電極が形成され、前記接合部の先端部に、前記一対の励振電極のうち他励振電極から引き出された前記引出電極が形成され、前記接合部の基端部と先端部が、外部と接合する接合領域とされ、前記接合領域には、それぞれ外部と接合するバンプが形成され、前記接合部の基端部の接合領域に形成された前記バンプは、前記接合部の先端部の接合領域に形成された前記バンプより小さくてもよい。
【0026】
この場合、前記接合部の基端部の接合領域に形成された前記バンプは、前記接合部の先端部の接合領域に形成された前記バンプより小さいので、前記振動部との距離が遠い前記接合部の先端部の接合領域において当該圧電振動片の外部への接合強度を高めながら、前記振動部との距離が近い前記接合部の基端部の接合領域では前記振動部からの振動が伝わるのを低減させることが可能となる。その結果、前記振動部からの振動の影響を抑えながら当該圧電振動片の外部への接合強度を高めることが可能となる。
【0027】
前記構成において、前記基部は、平面視左右対称形状とされ、前記基部の他端部は、前記一端面側から前記他端面側にかけて幅狭になるように形成されてもよい。
【0028】
この場合、前記基部は平面視左右対称形状とされ、前記基部の他端部は、前記一端面側から前記他端面側にかけて幅狭になるように形成されるので、前記振動部の振動により発生した漏れ振動を前記他端部により減衰させることが可能となり、前記接合部へ漏れ振動が伝わるのを抑制することが可能となり、音響リーク(振動漏れ)を更に低減するのに好ましい。
【0029】
前記構成において、前記接合領域に、メッキバンプが形成されてもよい。
【0030】
この場合、前記接合領域に、前記メッキバンプが形成されるので、前記メッキバンプを当該音叉型圧電振動片に形成する際の位置決め精度を高めて、当該音叉型圧電振動片の接合部が小さくなった場合であっても、当該音叉型圧電振動片の適切な位置へ接合部材として前記メッキバンプを形成することが可能となる。また、前記メッキバンプの形成を、当該音叉型圧電振動片の他の金属材料(例えば励振電極など)の形成と一括して行うことが可能となる。
【0031】
前記構成において、前記振動部の少なくとも一方の主面に溝が形成されてもよい。
【0032】
この場合、前記振動部の少なくとも一方の主面に溝が形成されるので、当該音叉型圧電振動片の小型化によって劣化する直列共振抵抗値を改善することが可能となる。
【0033】
上記の目的を達成するため、本発明にかかる音叉型圧電振動デバイスは、上記した本発明にかかる音叉型圧電振動片と、前記音叉型圧電振動片を搭載する第1封止部材と、前記第1封止部材に搭載した前記音叉型圧電振動片を本体筐体内に気密封止するための第2封止部材と、が設けられたことを特徴とする。
【0034】
本発明によれば、音響リークを防ぐとともに、応力や外力に強く、音叉型圧電振動片が割れるなどの不具合が生じるのを防ぐことが可能となり、さらに小型化に適している。具体的に、本発明によれば、上記した本発明にかかる音叉型圧電振動片が設けられるので、上記した本発明にかかる音叉型圧電振動片と同様の作用効果を有する。
【0035】
前記構成において、前記第1封止部材には、前記音叉型圧電振動片を搭載する段部が設けられ、前記段部の端縁と前記接合部の基端部とが平面視重なってもよい。
【0036】
この場合、前記段部の端縁と前記接合部の基端部とが平面視重なるので、外力(例えば、当該音叉型圧電振動デバイスの落下によって生じる当該音叉型圧電振動デバイスへの外力)が当該音叉型圧電振動デバイスに加わったとしても、前記音叉型圧電振動片(特に、前記振動部と前記基部)が前記第1封止部材に接触するのを抑えることが可能となる。そのため、外力が前記音叉型圧電振動片に加わったとしても、周波数変動(周波数のシフト)を抑えることが可能となり、耐衝撃性などの耐久性を向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0037】
本発明にかかる音叉型圧電振動片、および音叉型圧電振動デバイスによれば、音響リークを防ぐとともに、応力や外力に強く、音叉型圧電振動片が割れるなどの不具合が生じるのを防ぐことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1図1は、本実施例にかかる水晶振動子の内部を公開した概略平面図である。
図2図2は、本実施例にかかる水晶振動片の一主面の概略平面図である。
図3図3は、本実施例にかかる水晶振動片の他主面の概略平面図である。
図4図4は、本実施例にかかる水晶振動子の落下テストの結果を示したグラフ図である。
図5図5は、本実施例の比較例にかかる水晶振動片の一主面の概略平面図である。
図6図6は、本実施例の比較例にかかる水晶振動片の他主面の概略平面図である。
図7図7は、本実施例の比較例にかかる水晶振動子の落下テストの結果を示したグラフ図である。
図8図8は、本実施例の他の例にかかる水晶振動片の一主面の概略平面図である。
図9図9は、本実施例の他の例にかかる水晶振動片の一主面の概略平面図である。
図10図10は、本実施例の他の例にかかる水晶振動片の一主面の概略平面図である。
図11図11は、本実施例の他の例にかかる水晶振動片の一主面の概略平面図である。
図12図12は、本実施例の他の例にかかる水晶振動片の他主面の概略平面図である。
図13図13は、本実施例の他の例にかかる水晶振動子の内部を公開した概略斜視図である。
図14図14は、本実施例の他の例にかかる水晶振動子の内部を公開した概略斜視図である。
図15図15は、本実施例の他の例にかかる水晶振動片の一主面の概略平面図である。
図16図16は、本実施例の他の例にかかる水晶振動片の接合部の拡大概略平面図である。
図17図17は、本実施例の他の例にかかる水晶振動片の接合部の拡大概略平面図である。
図18図18は、本実施例の他の例にかかる水晶振動片の接合部の拡大概略平面図である。
図19図19は、本実施例の他の例にかかる水晶振動片の接合部の拡大概略平面図である。
図20図20は、図19に示すA−A線断面図である。
図21図21は、本実施例の他の例にかかる水晶振動片の接合部の拡大概略平面図である。
図22図22は、本実施例の他の例にかかる水晶振動片の接合部の拡大概略平面図である。
図23図23は、本実施例の他の例にかかる水晶振動子の内部を公開した概略平面図である。
図24図24は、本実施例の他の例にかかる水晶振動子の概略分解斜視図である。
図25図25は、図24に示す水晶振動片の概略平面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 音叉型水晶振動子(音叉型圧電振動デバイス)
2 音叉型水晶振動片(音叉型圧電振動片)
21 第1脚部(脚部)
211 第1脚部の先端部(脚部の先端部)
22 第2脚部(脚部)
221 第2脚部の先端部(脚部の先端部)
23 接合部
231 短辺部
232 長辺部
233 先端部
234 折曲部
235 側面
236 枠体
24 メッキバンプ
25 基部
251 一端面
252 他端面
254 他端部
26 主面
27 溝部
28 側面
291 第1励振電極
292 第2励振電極
293,294 引出電極
295 金属膜
3 ベース(第1封止部材)
31 底部
32 堤部
33 メタライズ層
34 電極パッド
4 蓋
41 天部
42 壁部
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、以下に示す実施例では、音叉型圧電振動デバイスとして音叉型水晶振動子に本発明を適用した場合を示す。しかしながら、これは好適な例であり、本発明は、音叉型水晶振動子に限定されるものではなく、圧電材料を用いた音叉型圧電振動片を搭載した音叉型圧電振動デバイスであればよい。
【0041】
本実施例にかかる音叉型水晶振動子1(以下、水晶振動子という)は、図1に示すように、フォトリソグラフィ法で成形された音叉型水晶振動片2(本発明でいう音叉型圧電振動片であり、以下、水晶振動片という)と、この水晶振動片2を搭載する(保持する)第1封止部材であるベース3と、ベース3に搭載した(保持した)水晶振動片2を本体筐体内に気密封止するための第2封止部材である蓋(図示省略)と、が設けられて構成されている。
【0042】
この水晶振動子1では、ベース3と蓋とが接合されて本体筐体が構成されている。具体的に、ベース3と蓋とが封止材(図示省略)を介して接合され、この接合により本体筐体の内部空間11が形成されている。そして、この本体筐体の内部空間11内のベース3上に、メッキバンプ24を介して水晶振動片2が保持接合されているとともに、本体筐体の内部空間11が気密封止されている。この際、ベース3に水晶振動片2が、金属材料(例えば金)からなるメッキバンプ24を用いてFCB法により超音波接合されるとともに電気機械的に接合されている。なお、本体筐体内において、後述する電極パッド341を電極パッド342に対して大きく形成することで、平面視L字状の接合部23を有する水晶振動片2の第1脚部21および第2脚部22は、内部空間11の平面視中央寄りに配される。
【0043】
次に、この水晶振動子1の各構成について説明する。
【0044】
ベース3は、図1に示すように、底部31と、この底部31から上方に延出した堤部32とから構成される箱状体に形成されている。また、堤部32は、2層が積層されてなり、内部空間11に段部35が設けられる。このベース3は、セラミック材料からなる平面視矩形状の一枚板上に、セラミック材料の直方体が積層して凹状に一体的に焼成されている。また、堤部32は、図1に示す底部31の平面視外周に沿って成形されている。この堤部32の上面には、蓋と接合するためのメタライズ層33が設けられている。なお、メタライズ層33は、例えば、タングステン層、あるいはモリブデン層上にニッケル,金の順でメッキした構成からなる。また、セラミック材料が積層して凹状に一体的に焼成されたベース3では、その内部空間11における長手方向の一端部および長手方向に沿った端部の一部に段部35が形成され、この段部35に、図1に示すように、平面視面積の大きな電極パッド341と平面視面積の小さな電極パッド342が形成され、これら電極パッド341,342上に水晶振動片2が搭載保持されている。これら電極パッド341,342は、それぞれに対応した引回電極(図示省略)を介して、ベース3の裏面に形成される端子電極(図示省略)に電気的に接続され、これら端子電極が外部部品や外部機器の外部電極に接続される。なお、これら電極パッド341,342、引回電極、端子電極は、タングステン、モリブデン等のメタライズ材料を印刷した後にベース3と一体的に焼成して形成される。そして、これら電極パッド341,342、引回電極、端子電極のうち一部のものについては、メタライズ上部にニッケルメッキが形成され、その上部に金メッキが形成されて構成される。
【0045】
蓋は、例えば金属材料からなり、平面視矩形状の一枚板に成形されている。この蓋の下面には、封止材の一部が形成されている。この蓋は、シーム溶接やビーム溶接、加熱溶融接合等の手法により封止材を介してベース3に接合されて、蓋とベース3とによる水晶振動子1の本体筐体が構成される。
【0046】
次に、内部空間11に配された水晶振動片2の各構成について説明する。
【0047】
水晶振動片2は、異方性材料の水晶片である水晶素板(図示省略)から、ウエットエッチング形成された水晶Z板である。そのため、この水晶振動片2は量産に好適である。
【0048】
この水晶振動片2は、図1〜3に示すように、振動部である2本の第1脚部21(本発明でいう脚部)および第2脚部22(本発明でいう脚部)と、外部(本実施例ではベース3の電極パッド341,342)と接合する接合部23と、これら第1脚部21および第2脚部22と接合部23を突出して設けた基部25とから構成された外形からなる。
【0049】
基部25は、平面視左右対称形状とされ、図1に示すように、振動部(第1脚部21,第2脚部22)より幅広に形成されている。また、基部25の他端部254(他端面252参照)付近が、一端面251から他端面252にかけて幅狭になるように漸次段差形成されている。
【0050】
2本の第1脚部21および第2脚部22は、図1に示すように、基部25の一端面251から突出して隙間部253を介して並設されている。なお、ここでいう隙間部253は、一端面251の幅方向の中央位置(中央領域)に設けられている。これら第1脚部21および第2脚部22の先端部211,221は、第1脚部21および第2脚部22の他の部位と比べて突出方向に対して直交する方向に幅広に成形され、さらにそれぞれ隅部は曲面形成されている。このように先端部211,221を幅広に成形することで、先端部211,221(先端領域)を有効に利用することができ、水晶振動片2の小型化に有用であり、低周波数化にも有用である。また、それぞれ先端部211,221の隅部を曲面形成することで、外力を受けた時などに堤部32などに接触するのを防止することができる。
【0051】
また、2つの第1脚部21および第2脚部22の両主面26(表側主面,裏側主面)には、水晶振動片2の小型化により劣化する直列共振抵抗値(本実施例ではCI値、以下同様)を改善させるために、溝部27がそれぞれ形成されている。また、水晶振動片2の外形のうち側面28は両主面26に対して傾斜して成形されている。これは、水晶振動片2を湿式でエッチング成形する際に基板材料の結晶方向(X軸,Y軸方向)へのエッチングスピードが異なることに起因している。
【0052】
接合部23は、図1に示すように、下記する引出電極293,294を外部電極(本発明でいう外部であり、本実施例ではベース3の電極パッド341,342)と電気機械的に接合するためのものである。具体的に、接合部23は、2本の第1脚部21および第2脚部22が突出した基部25の一端面251と対向する他端面252の、基部25の一端面251の幅方向における第1脚部21および第2脚部22の中央位置(中央領域)から突出形成されている。すなわち、2本の第1脚部21と第2脚部22との間に配された隙間部253と正対向する位置に、接合部23が突出形成されている。このように、2本の第1脚部21と第2脚部22との間に配された隙間部253と正対向する他端面252の位置から接合部23が突出するので、接合部23から第1脚部21および第2脚部22への実質的な距離(直線距離)が、それぞれ同じ距離となる。
【0053】
接合部23は、基部25の他端面252に対して平面視垂直方向に突出した短辺部231(本発明でいう接合部の基端部に対応)と、短辺部231の先端部と連なり短辺部231の先端部において平面視直角に折曲されて基部25の幅方向に延出する長辺部232(本発明でいう接合部の先端部に対応)とから構成され、接合部23の先端部233は基部25の幅方向に向いている。すなわち、接合部23は、平面視L字状に成形され、平面視L字状に成形された折曲箇所である折曲部234が短辺部231の先端部に対応する。なお、本実施の形態では、接合部23の突出方向である長辺部232の延出方向が−X軸方向となっている。そのため、水晶振動片2を湿式でエッチング成形する際に、接合部23の側面は、両主面26に対して傾斜して成形されている。この接合部23の側面の傾斜により接合部の強度を高めることができる。
【0054】
また、本実施例では、接合部23の基端部にあたる短辺部231の折曲部234が、外部と接合する接合領域とされ、接合部23の先端部233にあたる長辺部232の先端部が、外部と接合する接合領域とされる。そして、接合部23の基端部である短辺部231には下記する第1励振電極291(本発明でいう一励振電極)から引き出された引出電極293が形成され、接合部の先端部である長辺部232に、下記する第2励振電極292(本発明でいう他励振電極)から引き出された引出電極294が形成されている。
【0055】
具体的に、接合部の片主面26(図1では裏側主面)には、ベース3との接合部位となる2つのメッキバンプ24が形成される。具体的に、1つ目のメッキバンプ24は、接合部23の折曲部234に形成され、2つ目のメッキバンプ25は、接合部23の先端部233に形成されている。
【0056】
なお、接合部23へのメッキバンプ24の形成に関して、接合部23にメッキバンプ24を電解メッキ法などの手法によりメッキ形成し、メッキ形成したメッキバンプをフォトリソグラフィ法によりメタルエッチングして所望の形状(平面視円形や平面視楕円形などの円形や、平面視長方形や平面視正方形などの多角形)に形成してアニール処理を施す。具体的に、接合部23の折曲部234と先端部233に対してそれぞれ1点のメッキバンプ24を形成し、その後にこれらメッキバンプ24にアニール処理を施す。
【0057】
このように、バンプにメッキバンプ24を用いることで、安定してベース3上に水晶振動片2をメッキバンプ24を介して電気機械的に接合することができる。具体的に、バンプにメッキバンプ24を用いることで、水晶振動片2を外部(ベース3)に搭載する前に、水晶振動片2にメッキバンプ24を形成することができる。その結果、常に水晶振動片2の所望の形成位置にメッキバンプ24を形成しているので、例えば、水晶振動片2の外部(ベース3)への搭載位置が所望位置からずれた場合であっても、水晶振動片2が外部(ベース3)にバンプがずれた状態で搭載されることを防止することができ、安定したベース3への水晶振動片2の搭載を行うことができる。
【0058】
また、本実施例にかかる水晶振動片2には、異電位で構成された2つの第1励振電極291および第2励振電極292と、これら第1励振電極291および第2励振電極292を電極パッド341,342に電気的に接続させるためにこれら第1励振電極291および第2励振電極292から引き出された引出電極293,294とが設けられている。なお、本実施例でいう引出電極293,294は、2つのこれら第1励振電極291および第2励振電極292から引き出された電極パターンのことをいう。
【0059】
また、2つの第1励振電極291および第2励振電極292の一部は、溝部27の内部に形成されている。このため、水晶振動片2を小型化しても第1脚部21および第2脚部22の振動損失が抑制され、CI値を低く抑えることができる。
【0060】
第1励振電極291は、第1脚部21の両主面26(表側主面,裏側主面)と第2脚部22の両側面28に形成されている。同様に、第2励振電極292は、第2脚部22の両主面26(表側主面,裏側主面)と第1脚部21の両側面28に形成されている。
【0061】
上記した水晶振動片2の第1励振電極291および第2励振電極292や引出電極293,294は、金属蒸着によって各第1脚部21および第2脚部22上にクロム層が形成され、このクロム層上に金属が形成されて構成される薄膜である。この薄膜は、真空蒸着法等の手法により基板全面に形成された後、フォトリソグラフィ法によりメタルエッチングして所望の形状に形成される。なお、第1励振電極291,第2励振電極292および引出電極293,294がクロム,金の順に形成されているが、例えば、クロム,銀の順や,クロム,金,クロムの順や,クロム,銀,クロムの順等であってもよい。
【0062】
また、各第1脚部21および第2脚部22の先端部211,221には、周波数調整用錘としての金属膜295がそれぞれ形成されている。具体的に、金属膜295と第1励振電極291と引出電極293とが一体形成され、金属膜295と第2励振電極292と引出電極294とが一体形成されている。
【0063】
上記したように、本実施例にかかる水晶振動子1に設けた水晶振動片2によれば、音響リークを防ぐとともに、応力や外力に強く、水晶振動片2が割れるなどの不具合が生じるのを防ぐことができ、さらに小型化に適している。
【0064】
具体的に、本実施例によれば、2本の第1脚部21および第2脚部22と、接合部23と、基部25とから構成され、第1脚部21および第2脚部22は、基部25の一端面251から突出し、かつ、一端面251に並設され、接合部23は、基部25の一端面251と対向する他端面252から突出し、接合部23は、他端面252であって、基部25の一端面251の幅方向における第1脚部21および第2脚部22の中間位置に対向する位置から突出し、少なくとも、接合部23の基端部である短辺部231が、外部(本実施例では電極パッド341,342)と接合する接合領域とされるので、基部25付近の接合部23の基端部を電極パッド341,342との接合領域として応力や外力に強い構成とすることができる。
【0065】
また、基部25の一端面251の幅方向における第1脚部21および第2脚部22の中間位置に対向する位置から接合部23を突出するので、音響リークを防止することができる。例えば当該水晶振動片2を電極パッド341,342に搭載するなど当該水晶振動片2を他の部材に接合したり、当該水晶振動片2に外力がかかったりすることで発振周波数のズレなどが生じる場合があるが、本実施例によれば、このようなことは生じない。
【0066】
また、本実施例によれば、音響リークに対する悪影響を低減させるだけでなく、接合部23の幅を太く設定することもでき、この場合、外力(例えば、水晶振動片2の落下によって生じる水晶振動片2への外力)が水晶振動片2に加わったとしても、接合部23において物理的および電気的な破断が発生するのを抑えることができる。その結果、本実施例によれば、例えば耐衝撃性などの耐久性を向上させることができる。
【0067】
また、特に、接合部23の基端部である短辺部231および先端部である長辺部232が、電極パッド341,342と接合する接合領域とされ、接合部23の短辺部231に第1励振電極291が形成され、接合部23の長辺部232に第2励振電極292が形成されるので、電極パッド341,342と接合する接合領域における短絡を防ぐことができ、さらに、接合部23の短辺部231および長辺部232において接合領域を設定することで、音響リークを防ぐとともに、応力や外力に強い構成とすることができる。
【0068】
また、接合部23は平面視L字状に形成されるので、水晶振動片2の全長や平面視幅の寸法を小さくして、水晶振動片2の本体筐体の小型化に寄与する。さらに、水晶振動片2を1枚のウエハから多数個形成する場合、1枚のウエハからの水晶振動片2の取れ数を増やすことができる。また、外部からの衝撃などの外力が加わった際に、厚み方向への撓みを抑えて、水晶振動片2を外部部材(ベース3と蓋とから構成される水晶振動子1)に搭載した際に、外部部材へ接触するのを防止することができる。その結果、第1脚部21および第2脚部22が外部部材に接触して削れたりするのを防止し、発振周波数が変化するのを防止することができる。また、第1脚部21および第2脚部22の振動により発生した漏れ振動を、平面視L字状に形成された折曲部位(本実施例では折曲部234)において留めて接合部23の先端部233に伝わりにくくし、音響リークをさらに低減されることができる。
【0069】
また、接合部23における外部と接合する接合領域は、折曲部234と先端部233とに形成されるので、第1脚部21および第2脚部22の振動により発生した漏れ振動を、折曲部234において留めて先端部233へ伝わるのを抑制することができ、その結果、音響リークをより一層低減させることができる。
【0070】
また、基部25は平面視左右対称形状とされ、基部25の他端部254は、基部25の全長方向に沿って一端面251側から他端面252側にかけて幅狭になるように形成されるので、振動部である第1脚部21および第2脚部22の振動により発生した漏れ振動を他端面252により減衰させることができ、接合部23へ漏れ振動が伝わるのを抑制することができ、音響リーク(振動漏れ)を更に低減するのに好ましい。
【0071】
また、接合領域とされた接合部23の基端部である短辺部231および先端部である長辺部232に、メッキバンプ24が形成されるので、メッキバンプ24を水晶振動片2に形成する際の位置決め精度を高めて、水晶振動片2の接合部23が小さくなった場合であっても、水晶振動片2の適切な位置へ接合部材としてメッキバンプ24を形成することができる。また、メッキバンプ24の形成を、水晶振動片2の他の金属材料(例えば第1励振電極291、第2励振電極292、引出電極293,294など)の形成と一括して行うことができる。
【0072】
また、本実施例によれば、メッキバンプ24を用いて水晶振動片2をベース3にバンプ接合しているので、接合の際に生じるアウトガスの影響がなく、水晶振動子1の筐体の内部空間11における内圧が上がるのを抑制することができる。
【0073】
次に、本実施例にかかる水晶振動片2を搭載した水晶振動子1の落下テストを行なった。その結果を図4に示す。具体的に、10回のサイクルで6個の水晶振動子1に対して落下テストを行なった。
【0074】
また、本実施例の落下テストの比較として、上記した従来技術を同じ構成からなる水晶振動片を搭載した水晶振動子(以下、比較例という)を用いた。この比較例にかかる水晶振動片9は、本実施例の構成と比べて、図5,6に示すように、第1脚部と第2脚部の先端部の形状と、接合部の形状が本実施例と異なる。具体的に、比較例にかかる水晶振動片9では、接合部94は、基部93の2つの第1脚部91および第2脚部92を形成した一端面931と対向する他端面932から突出形成され、基部93の他端面932から両側面933に沿ってT字状に2股に分かれて延出して成形され、それぞれ先端部941,942が基部93の一端面931から突出形成された2本の第1脚部91および第2脚部92と同一方向に向くように屈折形成されている。なお、図5,6の符号95はメッキバンプを示す。
【0075】
そして、この比較例についても、本実施例と同じ条件で10回のサイクルで6個の水晶振動子の落下テストを行なった。その結果を図7に示す。
【0076】
図4に示す本実施例にかかる水晶振動子1の落下テストと、図7に示す比較例にかかる水晶振動子の落下テストとを比較すると明らかなように、本実施例と比較例との外力(落下による衝撃)によって発振周波数の変動量に差が生じる。図4に示す本実施例では、略発振周波数の変動がない。つまり、発振周波数のズレが生じない。これに対して、図7に示す比較例では、発振周波数の変動が見られる。
【0077】
上記したように、本実施例によれば、比較例で示す従来技術と比較して、音響リークを防ぐとともに、応力や外力に強い構成であることは明らかである。
【0078】
また、本実施例では、接合部23は平面視L字状に成形されているが、これに限定されるものではなく、接合部23の短辺部231にてベース3に水晶振動片2が接合されていれば、図8に示すような略平面視L字状に接合部23が成形されてよい。さらに、図9に示すような平面視T字状に接合部23が成形されてよい。
【0079】
また、本実施例では、接合部23の基端部にあたる短辺部231の折曲部234と、接合部23の先端部233にあたる長辺部232の先端部とが、外部と接合する接合領域とされ、これら短辺部231の折曲部234と長辺部232の先端部とにおいてそれぞれ1点のメッキバンプ24がそれぞれ形成されている。しかしながら、メッキバンプ24の個数は本実施例に限定されるものではなく、短辺部231の折曲部234と長辺部232の先端部との少なくとも一方において複数点のメッキバンプ24が形成されてもよく、図10に示すように短辺部231の折曲部234と長辺部232の先端部とのそれぞれにおいて各4点のメッキバンプ24が形成されてもよい。
【0080】
また、本実施例では、接合部23は平面視L字状に成形されているが、これに限定されるものではなく、図11,12に示すように、本実施例でいう短辺部231だけで接合部23が構成されてもよい。図11は、水晶振動片2の一主面26の概略平面図であり、図12は、水晶振動片2の他主面26の概略平面図である。この図11,12に示す実施例では、接合部23の基端部である短辺部231の両主面26が、外部(本実施例では電極パッド341,342)と接合する接合領域とされている。また、図11,12に示すように、水晶振動片28の一主面26の接合部23の短辺部231には第1励振電極291から引き出された引出電極293が形成され、水晶振動片28の他主面26の接合部23の短辺部231には第2励振電極292から引き出された引出電極294が形成されている。
【0081】
この図11,12に示す水晶振動片2は、図13に示すようにベース2に搭載される。この図13に示す実施例では、図12に示す水晶振動片2の他主面26がベース3と対面するように配され、水晶振動片2の他主面26の接合部23に形成されたメッキバンプ24を用いてFCB法により水晶振動片2がベース3に超音波接合されるとともに電気機械的に接合されている。また、図11に示す水晶振動片2の一主面26の接合部23にワイヤWにより水晶振動片2がベース3にワイヤボンディングされるとともに電気機械的に接合されている。
【0082】
この図11,12に示す水晶振動片2によれば、接合部23の基端部である短辺部231の両主面26が外部と接合する接合領域とされるので、音響リークを低減させながら水晶振動片2の全長や平面視幅の寸法が大きくなるのを防ぐことができ、水晶振動片2の本体筐体の小型化に寄与する。その結果、水晶振動片2を1枚のウエハから多数個形成する場合、1枚のウエハからの水晶振動片2の取れ数を増やすことができる。
【0083】
また、この図11,12に示す水晶振動片2によれば、図14に示すように、板状体のプレートPとベース3との間に挟んでベース3上に水晶振動片2を接合搭載してもよい。この場合、図12に示す水晶振動片2の他主面26がベース3と対面するように配され、水晶振動片2の他主面26の接合部23に形成されたメッキバンプ24を用いてFCB法により水晶振動片2がベース3に超音波接合されるとともに電気機械的に接合されている。また、図11に示す水晶振動片2の一主面26の接合部23に形成されたメッキバンプ24を用いてFCB法により水晶振動片2がプレートPに超音波接合され、プレートPに形成された図示しない導通部により接合部23がベース3に電気的に接合されている。
【0084】
また、上記した図11,12に示す水晶振動片2では、接合部23の基端部である短辺部231の両主面26を外部と接合する接合領域としているが、図15に示すように、接合部23の基端部である短辺部231の片方の主面26において、2つのメッキバンプ24を並べて形成してもよい。
【0085】
なお、本実施例では、圧電材料として水晶を用いているが、これは好適な例でありこれに限定されるものではなく、水晶以外の圧電材料、例えば、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウム等であってもよい。
【0086】
また、本実施例でいうベース3には、セラミック材料が用いられているが、これに限定されるものではなく、水晶やガラスなどであってもよい。
【0087】
また、本実施例でいう溝部27は、図1に示すような断面凹形状としているが、これに限定されるものではなく、窪み部であってもよい。
【0088】
また、本実施例では、第1脚部21および第2脚部22に溝部27を形成しているが、これは好適な例であり、この場合、振動部である第1脚部21および第2脚部22に溝部27の少なくとも一方の主面26に溝部27が形成されるので、水晶振動片2の小型化によって劣化する直列共振抵抗値(本実施例ではCI値)を改善することができる。しかしながら、CI値の改善を図る必要がない場合、例えば、第1脚部21および第2脚部22に溝部が形成されていない水晶振動片2にも本発明を適用することができる。
【0089】
また、本実施例では、第1脚部21および第2脚部22のそれぞれ両主面26に溝部27を形成しているが、これは好適な例であり、これに限定されるものではなく、いずれか一方の主面26に溝部27が形成されても、溝部27を形成することで生じる効果は有する。
【0090】
また、本実施例では、バンプとしてメッキバンプ24を用いているが、これに限定されるものではなく、スタッドバンプを用いてもよい。
【0091】
また、本実施例では、振動部として第1脚部21および第2脚部22を用いているが、その本数は2本に限定されるものではない。
【0092】
また、本実施例では、ベース3と蓋とから本体筐体を構成しているが、これに限定されるものではなく、本発明でいう第1封止部材と第2封止部材に対応する部材により、水晶振動片2の第1励振電極291,第2励振電極292を封止することができれば、二つのベース2により本体筐体を構成してもよく、その形態は問わない。
【0093】
また、本実施例にかかる接合部23では、基部25の他端面252に対して平面視垂直方向に突出した短辺部231と、短辺部231の先端部と連なり短辺部231の先端部において平面視直角に折曲されて基部25の幅方向に延出する長辺部232とから構成され、折曲部234における折曲内側の側面235が、直角に形成されているが、これに限定されるものではなく、図16〜18に示すように、折曲部234における折曲内側の側面235が他の形態に形成されてもよい。
【0094】
なお、上記したように本実施の形態では、接合部23の突出方向である長辺部232の延出方向が−X軸方向となっている。そのため、湿式での水晶振動片2のエッチング成形した際に形成される傾斜面を、これら図16〜18に示す折曲部234における折曲内側の側面235、もしくは側面235の一部として用いてもよい。
【0095】
図16に示す折曲部234における折曲内側の側面235は、曲面(R面)に形成されている。この場合、折曲部234における折曲内側の側面235が曲面に形成されるので、折曲内側の側面235において折曲部234が起点となりクラックが発生するのを抑制することができ、その結果、引出電極294の短絡を防止することができる。また、この場合、折曲部234の強度を高めることができ、その結果、周波数変動(周波数のシフト)を抑えることができる。
【0096】
また、図17に示す折曲部234における折曲内側の側面235は、面取り形成されて多角の折曲面に形成されている。この場合、折曲部234における折曲内側の側面235が面取り形成されて多角の折曲面に形成されるので、折曲内側の側面235において折曲部234が起点となりクラックが発生するのを抑制することができ、その結果、引出電極294の短絡を防止することができる。また、この場合、折曲部234の強度を高めることができ、その結果、周波数変動(周波数のシフト)を抑えることができる。
【0097】
上記した図17に示す形態の水晶振動子1、および外部基板(図示省略)に実装した状態の水晶振動子1の落下テストを行なった。具体的に、20個の水晶振動子1単品を自由落下させる落下テストと、外部基板に実装した状態の水晶振動子1に対して150cmと180cmの高さから6方向落下させる工程(外部基板の各面(6面)に対して、各面を垂直下に向けた状態で合計6回落下させる工程)を1回とした実装落下テストを行なった。その結果、表1に示す。
【0098】
【表1】
【0099】
また、本実施例の落下テストの比較として、折曲部における折曲内側の側面が直角に形成された形態の水晶振動子単品、および外部基板に実装した状態の水晶振動子の落下テストを行なった。具体的に、16個の水晶振動子単品を自由落下させる落下テストと、外部基板に実装した状態の水晶振動子を150cmの高さから6方向落下させる工程を1回とした実装落下テストを行なった。その結果を表2に示す。なお、比較例では、上記した折曲内側の側面の点で、図17に示す形態の水晶振動片と異なるだけであり、他の構成は同一構成である。
【0100】
【表2】
【0101】
表1,2に示す落下テストの結果から、図17に示す形態(表1参照)の水晶振動子1単品、および外部基板に実装した状態の水晶振動子1では、1つも破損がなく、耐衝撃性に耐えうるものであり、これに対して、比較例(表2参照)の水晶振動子単品、および外部基板に実装した状態の水晶振動子では、水晶振動子単品の落下テストで水晶振動子に2つ破損があり、外部基板に実装した状態の水晶振動子の実装落下テストで水晶振動子に1つ破損があった。すなわち、比較例では、合計3つの水晶振動子に破損があった。
【0102】
次に、図18に示す折曲部234における折曲内側の側面235は、多角の折曲面に形成されている。この場合、折曲部234における折曲内側の側面235が多角の折曲面に形成されるので、折曲内側の側面235において折曲部234が起点となりクラックが発生するのを抑制することができ、その結果、引出電極294の短絡を防止することができる。また、この場合、折曲部234の強度を高めることができ、その結果、周波数変動(周波数のシフト)を抑えることができる。
【0103】
また、上記した本実施例では、例えば図1〜3に示すように接合部23の接合領域に形成される2つのメッキバンプ24の形状は同一形状となっているが、これに限定されるものではなく、例えば、図19,20に示す接合部23の基端部である短辺部231の接合領域に形成されたメッキバンプ24は、接合部23の先端部である長辺部232の接合領域に形成されたメッキバンプ24より小さくてもよい。
【0104】
図19,20に示す他の実施例では、接合部23の基端部である短辺部231の接合領域に形成されたメッキバンプ24は、径が小さい円柱形状に形成されている。また、接合部23の先端部である長辺部233の接合領域に形成されたメッキバンプ24は、先端部の表面が球状体となり、基端部が、径が大きい円柱形状に形成されて構成される。
【0105】
この図19,20に示す他の実施例によれば、振動部である第1脚部21および第2脚部22との距離が遠い接合部23の先端部である長辺部232の接合領域において水晶振動片2の外部への接合強度を高めながら、振動部である第1脚部21および第2脚部22との距離が近い接合部23の基端部である短辺部231の接合領域では振動部である第1脚部21および第2脚部22からの振動が伝わるのを低減させることができる。その結果、振動部である第1脚部21および第2脚部22からの振動の影響を抑えながら水晶振動片2の外部への接合強度を高めることができる。
【0106】
また、図19,20に示すようなメッキバンプ24は、上記した全ての実施例に適用可能であり、例えば、図9に示す水晶振動片2に適用した場合、図21に示す形態になり、図15に示す水晶振動片2に適用した場合、図22に示す形態になる。
【0107】
また、本実施例では、図1に示すベース3を用いているが、ベース3の形態はこれに限定されるものではなく、図23に示すような形態のベースであってもよい。
【0108】
図23に示すベース3は、図1に示すベース3と比べて段部35の形状が異なるだけで他の構成は同一である。具体的に、図23に示すベース3では、その内部空間11における長手方向の一端部および長手方向に沿った端部全てに段部35が形成されている。また、内部空間11における長手方向の一端部に形成された段部35の幅は、図1に示すベース3と比べて短く設定されている。そのため、ベース3に水晶振動片2を搭載すると、図23に示すように、段部35の端縁36と接合部23の基端部である短辺部231が平面視重なる。
【0109】
この場合、段部35の端縁36と接合部23の基端部である短辺部231とが平面視重なるので、外力(例えば、水晶振動子1の落下によって生じる水晶振動子1への外力)が水晶振動子1に加わったとしても、水晶振動片2(特に、第1脚部21,第2脚部22,基部25)がベース3の段部35の端縁36に接触するのを抑えることができる。そのため、外力が水晶振動片2に加わったとしても、周波数変動(周波数のシフト)を抑えることができ、耐衝撃性などの耐久性を向上させることができる。
【0110】
また、上記した本実施例では、水晶振動片2自体を、ベース3と蓋とにより水晶振動子1の本体筐体を構成し、ベース3と蓋とにより気密封止しているが、水晶振動片はこれに限定されるものではなく、水晶振動片2も水晶振動子1の本体筐体の一部であってもよい。具体的に、図24,25に水晶振動子2を本体筐体の一部とした形態を示す。なお、図24,25に示す水晶振動子1では、蓋の構成と、水晶振動片2の構成が異なるだけで、他の構成は同一構成となっている。そのため、図24,25に示す水晶振動子1では、図1に示す水晶振動子1とは異なる構成のみについて説明する。なお、同一構成による作用効果及び変形例は、上記した実施例と同様の作用効果及び変形例を有する。
【0111】
蓋4は、図24に示すように、天部41と、この天部41から下方に延出した壁部42とから構成される箱状体に形成されている。壁部42は、図24に示す天部41の平面視外周に沿って成形されている。この蓋4は、セラミック材料からなる平面視矩形状の一枚板上に、セラミック材料の直方体が積層して凹状に一体的に焼成され、上下反転させて用いる。なお、図24の例では、蓋4にセラミック材料を用いているが、これに限定されるものではなく、ガラス、水晶、金属材料などを用いてもよい。
【0112】
水晶振動片2には、ベース3上に搭載した際に、ベース3の堤部32上に配する枠体236が形成され、枠体236と接合部23の先端部233とが繋がるように一体形成されている。
【0113】
この図24,25に示す水晶振動子1では、ベース3と蓋4との間に枠体236を介在させた状態で、ベース3上に水晶振動片2、蓋4の順で積層する。
【0114】
なお、図24,25に示す水晶振動子1では、上記した本実施例にかかる水晶振動子1と同様に、接合部23においてベース3に電気機械的に接合しているが、これに限定されるものではなく、枠体236を接合部23の一部として用い、枠体236において水晶振動片2とベース3とが電気的に接続され、少なくとも接合部23の短辺部231において水晶振動片2がベース3に接合されてもよい。
【0115】
なお、本発明は、その精神や主旨または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施例はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【0116】
また、この出願は、2008年9月26日に日本で出願された特願2008−248218号に基づく優先権を請求する。これに言及することにより、その全ての内容は本出願に組み込まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明は、音叉型圧電振動片、音叉型圧電振動デバイスに適用でき、特に音叉型水晶振動子に好適である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25