特許第5660185号(P5660185)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5660185
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】ボイラの設計方法
(51)【国際特許分類】
   F22B 21/06 20060101AFI20150108BHJP
   F22B 35/00 20060101ALI20150108BHJP
   F22B 37/10 20060101ALI20150108BHJP
   F23N 3/08 20060101ALI20150108BHJP
【FI】
   F22B21/06 A
   F22B35/00 H
   F22B37/10 N
   F23N3/08
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-206017(P2013-206017)
(22)【出願日】2013年10月1日
(62)【分割の表示】特願2009-112488(P2009-112488)の分割
【原出願日】2009年5月7日
(65)【公開番号】特開2014-25697(P2014-25697A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2013年10月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110685
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 方宜
(72)【発明者】
【氏名】大久保 智浩
【審査官】 渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−085555(JP,A)
【文献】 特開2008−267713(JP,A)
【文献】 特開2009−052796(JP,A)
【文献】 特開2001−074238(JP,A)
【文献】 実開平05−090101(JP,U)
【文献】 三浦工業株式会社,カタログ「ZボイラAI」,日本,2000年10月,p.6−7
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B21/06
F22B35/00
F22B37/10
F23N 3/08
F23N 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体燃料を燃焼させるボイラにおいて、
上部管寄せと下部管寄せとの間に円筒状に配列されて伝熱管列を構成する複数の伝熱管と、
前記伝熱管列を取り囲むように、前記上部管寄せと前記下部管寄せとの間に設けられる円筒状の缶体カバーとを備え、
燃焼ガスは、内外の伝熱管列間の上向き流路を介して、缶体カバー外へ排出され、
前記上向き流路内の所定高さまでバーナからの未燃液体燃料が炉内底部に溜まった場合、送風機による炉内への燃焼用空気の押し込みが阻止されることで、不着火にさせて運転を停止させ
前記上部管寄せと前記下部管寄せとの間に、内側伝熱管列と外側伝熱管列とが同心円筒状に配列されて設けられ、
前記内側伝熱管列は、複数の内側伝熱管が円筒状に配列されると共に、隣接する前記内側伝熱管間の隙間が下端部を残して内側縦ヒレで閉塞されて構成され、
前記外側伝熱管列は、複数の外側伝熱管が円筒状に配列されると共に、隣接する前記外側伝熱管間の隙間が上端部を残して外側縦ヒレで閉塞されて構成され、
前記上向き流路は、前記内側縦ヒレの下端部と前記外側縦ヒレの上端部との間において、前記内側伝熱管列と前記外側伝熱管列との間で構成される、ボイラの設計方法であって、
燃料の密度をγ、重力加速度をg、前記上向き流路の高さをh、送風機の最大吐出圧をP1とするとき、γ×g×h>P1の関係式を満たすように、送風機の選定、送風機をインバータ制御する場合の周波数の設定、送風機の運転中の最大吐出圧の設定、または前記上向き流路の高さhの設定を行う
ことを特徴とするボイラの設計方法。
【請求項2】
液体燃料を燃焼させるボイラにおいて、
上部管寄せと下部管寄せとの間に円筒状に配列されて伝熱管列を構成する複数の伝熱管と、
前記伝熱管列を取り囲むように、前記上部管寄せと前記下部管寄せとの間に設けられる円筒状の缶体カバーとを備え、
燃焼ガスは、内外の伝熱管列間の上向き流路を介して、缶体カバー外へ排出され、
前記上向き流路内の所定高さまでバーナからの未燃液体燃料が炉内底部に溜まった場合、送風機による炉内への燃焼用空気の押し込みが阻止されることで、不着火にさせて運転を停止させ
前記上部管寄せと前記下部管寄せとの間に、内側伝熱管列と外側伝熱管列とが同心円筒状に配列されて設けられ、
前記内側伝熱管列は、複数の内側伝熱管が円筒状に配列されると共に、隣接する前記内側伝熱管間の隙間が下端部を残して内側縦ヒレで閉塞されて構成され、
前記外側伝熱管列は、複数の外側伝熱管が円筒状に配列されると共に、隣接する前記外側伝熱管間の隙間が上端部を残して外側縦ヒレで閉塞されて構成され、
前記上向き流路は、前記内側縦ヒレの下端部と前記外側縦ヒレの上端部との間において、前記内側伝熱管列と前記外側伝熱管列との間で構成される、ボイラの設計方法であって、
燃料の密度をγ、重力加速度をg、前記上向き流路の高さをh、送風機の運転中の最大吐出圧をP2とするとき、γ×g×h>P2の関係式を満たすように、送風機の選定、送風機をインバータ制御する場合の周波数の設定、送風機の運転中の最大吐出圧の設定、または前記上向き流路の高さhの設定を行う
ことを特徴とするボイラの設計方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気ボイラ、温水ボイラおよび熱媒ボイラを含む各種ボイラと、その設計方法に関するものである。特に、液体燃料を燃焼させるボイラと、その設計方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に開示されるように、内側水管列(7)と外側水管列(8)とを同心円筒状に備え、内側水管列(7)には、下端部の設定領域を残して、隣接する内側水管(5,5)間の隙間を閉塞するように、内側縦ヒレ(9)が設けられる一方、外側水管列(8)には、上端部の設定領域を残して、隣接する外側水管(6,6)間の隙間を閉塞するように、外側縦ヒレ(11)が設けられたボイラ(1)が知られている。
【0003】
この種のボイラ(1)では、バーナ(17)による燃焼ガスは、内側水管列(7)の下端部における隙間(10)を介して、内側水管列(7)と外側水管列(8)との隙間を上方へ進み、外側水管列(8)の上端部における隙間(12)を介して外方へ導出される。その後、排ガスとして、缶体カバー(13)に接続された煙道(14)を介して、外部へ排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−267713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
灯油、軽油または重油などの液体燃料を燃焼させるバーナの場合、空燃比の乱れなどに伴い、炉内下部に未燃燃料が溜まるおそれがある。その未燃燃料は、炉内圧力により、燃焼ガスの流路に沿って押し出され、缶体カバーと煙道(またはエコノマイザ)との接続部などから、炉外に漏れ出るおそれもある。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、炉内に未燃燃料が所定以上溜まった場合には、送風機による炉内への燃焼用空気の押し込みを防止することで、不着火として安全性を一層高めることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、液体燃料を燃焼させるボイラにおいて、上部管寄せと下部管寄せとの間に円筒状に配列されて伝熱管列を構成する複数の伝熱管と、前記伝熱管列を取り囲むように、前記上部管寄せと前記下部管寄せとの間に設けられる円筒状の缶体カバーとを備え、燃焼ガスは、内外の伝熱管列間の上向き流路を介して、缶体カバー外へ排出され、前記上向き流路内の所定高さまでバーナからの未燃液体燃料が炉内底部に溜まった場合、送風機による炉内への燃焼用空気の押し込みが阻止されることで、不着火にさせて運転を停止させ、前記上部管寄せと前記下部管寄せとの間に、内側伝熱管列と外側伝熱管列とが同心円筒状に配列されて設けられ、前記内側伝熱管列は、複数の内側伝熱管が円筒状に配列されると共に、隣接する前記内側伝熱管間の隙間が下端部を残して内側縦ヒレで閉塞されて構成され、前記外側伝熱管列は、複数の外側伝熱管が円筒状に配列されると共に、隣接する前記外側伝熱管間の隙間が上端部を残して外側縦ヒレで閉塞されて構成され、前記上向き流路は、前記内側縦ヒレの下端部と前記外側縦ヒレの上端部との間において、前記内側伝熱管列と前記外側伝熱管列との間で構成される、ボイラの設計方法であって、燃料の密度をγ、重力加速度をg、前記上向き流路の高さをh、送風機の最大吐出圧をP1とするとき、γ×g×h>P1の関係式を満たすように、送風機の選定、送風機をインバータ制御する場合の周波数の設定、送風機の運転中の最大吐出圧の設定、または前記上向き流路の高さhの設定を行うことを特徴とするボイラの設計方法である。
また、請求項2に記載の発明は、液体燃料を燃焼させるボイラにおいて、上部管寄せと下部管寄せとの間に円筒状に配列されて伝熱管列を構成する複数の伝熱管と、前記伝熱管列を取り囲むように、前記上部管寄せと前記下部管寄せとの間に設けられる円筒状の缶体カバーとを備え、燃焼ガスは、内外の伝熱管列間の上向き流路を介して、缶体カバー外へ排出され、前記上向き流路内の所定高さまでバーナからの未燃液体燃料が炉内底部に溜まった場合、送風機による炉内への燃焼用空気の押し込みが阻止されることで、不着火にさせて運転を停止させ、前記上部管寄せと前記下部管寄せとの間に、内側伝熱管列と外側伝熱管列とが同心円筒状に配列されて設けられ、前記内側伝熱管列は、複数の内側伝熱管が円筒状に配列されると共に、隣接する前記内側伝熱管間の隙間が下端部を残して内側縦ヒレで閉塞されて構成され、前記外側伝熱管列は、複数の外側伝熱管が円筒状に配列されると共に、隣接する前記外側伝熱管間の隙間が上端部を残して外側縦ヒレで閉塞されて構成され、前記上向き流路は、前記内側縦ヒレの下端部と前記外側縦ヒレの上端部との間において、前記内側伝熱管列と前記外側伝熱管列との間で構成される、ボイラの設計方法であって、燃料の密度をγ、重力加速度をg、前記上向き流路の高さをh、送風機の運転中の最大吐出圧をP2とするとき、γ×g×h>P2の関係式を満たすように、送風機の選定、送風機をインバータ制御する場合の周波数の設定、送風機の運転中の最大吐出圧の設定、または前記上向き流路の高さhの設定を行うことを特徴とするボイラの設計方法である。
【0008】
請求項1および請求項2に記載の発明によれば、炉内に未燃燃料が所定以上溜まった場合には、送風機による炉内への燃焼用空気の押し込みが不能となるので、不着火により安全性を一層高めることができる。
【0010】
請求項1および請求項2に記載の発明によれば、上向き流路は、内側縦ヒレの下端部と外側縦ヒレの上端部との間において、内側伝熱管列と外側伝熱管列との間で構成される。これにより、簡易な構成で、上向き流路の形成と、その高さ設定を行うことができる。
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、送風機の選定、送風機をインバータ制御する場合の周波数の設定、送風機の運転中の最大吐出圧の設定、および上向き流路の高さhの設定の内、いずれか一以上を調整することで、送風機を最大吐出圧で運転しても、上向き流路の上端まで未燃燃料を押し上げられないことになる。これにより、炉内に未燃燃料が所定以上溜まった場合には、送風機による炉内への燃焼用空気の押し込みが不能となるので、不着火により安全性を一層高めることができる。また、炉外への燃料漏れを確実に防止することができる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、送風機の選定、送風機をインバータ制御する場合の周波数の設定、送風機の運転中の最大吐出圧の設定、および上向き流路の高さhの設定の内、いずれか一以上を調整することで、ボイラの運転中、送風機の吐出圧が最大となる際にも、上向き流路の上端まで未燃燃料を押し上げられないことになる。これにより、炉内に未燃燃料が所定以上溜まった場合には、送風機による炉内への燃焼用空気の押し込みが不能となるので、不着火により安全性を一層高めることができる。また、炉外への燃料漏れを確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、炉内に未燃燃料が所定以上溜まった場合には、送風機による炉内への燃焼用空気の押し込みを防止することで、不着火となるので安全性を一層高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明のボイラの一実施例を示す概略縦断面図である。
図2図1のボイラに未燃燃料が溜まった状態を示す概略縦断面図である。
図3図1のボイラの送風機の性能曲線の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明のボイラの一実施例を示す概略縦断面図である。本実施例のボイラ1は、円筒状の缶体2を備えた多管式の貫流ボイラである。缶体2は、上部管寄せ3と下部管寄せ4との間を、円筒状に配列された多数の水管(伝熱管)5,6で接続して構成される。
【0018】
上部管寄せ3と下部管寄せ4とは、上下に離隔して平行に配置され、それぞれ中空の円環状とされている。また、上部管寄せ3と下部管寄せ4とは、それぞれ水平に配置されると共に、同一軸線上に配置される。
【0019】
各水管5,6は、垂直に配置され、上端部が上部管寄せ3に接続される一方、下端部が下部管寄せ4に接続される。各水管5,6は、上部管寄せ3と下部管寄せ4との周方向へ順次に配列されることで、円筒状の水管列7,8を構成する。本実施例では、内側水管列7と外側水管列8とが同心円筒状に設けられる。内側水管列7は、円筒状に配列された内側水管5,5,…にて構成される。一方、外側水管列8は、内側水管列7を取り囲むように、円筒状に配列された外側水管6,6,…にて構成される。
【0020】
内側水管列7には、下端部の設定領域を残して、隣接する内側水管5,5間の隙間を閉塞するように、内側縦ヒレ9が設けられる。つまり、内側水管5,5間の隙間は、下端部の設定領域を残して、内側縦ヒレ9にて閉塞される。内側水管列7は、内側縦ヒレ9が設けられない下端部において、隣接する内側水管5,5間に隙間が空けられる。この隙間は、内側水管列7の内側と外側とを連通するための連通部(内列連通部という)10とされる。
【0021】
外側水管列8には、上端部の設定領域を残して、隣接する外側水管6,6間の隙間を閉塞するように、外側縦ヒレ11が設けられる。つまり、外側水管6,6間の隙間は、上端部の設定領域を残して、外側縦ヒレ11にて閉塞される。外側水管列8は、外側縦ヒレ11が設けられない上端部において、隣接する外側水管6,6間に隙間が空けられる。この隙間は、外側水管列8の内側と外側とを連通するための連通部(外列連通部という)12とされる。
【0022】
各内側水管5や各外側水管6には、その周側面に所望により突部を設けて、伝熱面積の拡大を図ってもよい。たとえば、各内側水管5には、円筒状の内側水管列7の外周面を構成する面に、横ヒレやスタッドを設けたり、各外側水管6には、円筒状の外側水管列8の内周面を構成する面に、横ヒレやスタッドを設けたりしてもよい。なお、各内側水管5および/または各外側水管6に横ヒレを設ける場合、横ヒレは、水平状態に設置してもよいし、缶体2の周方向一方へ行くに従って上方へ傾斜して設けてもよい。
【0023】
上部管寄せ3と下部管寄せ4との間にはさらに、外側水管列8を取り囲むように、円筒状の缶体カバー13が設けられる。図示例では、缶体カバー13は、内筒14と、それより大径の外筒15とから構成される。内筒14は、下端部が下部管寄せ4に固定され、上端部が外列連通部12の下端部と対応する高さに配置される。一方、外筒15は、上端部が上部管寄せ3に固定され、下端部が内筒14の上下方向中途部と対応する高さに配置される。このようにして、缶体カバー13は、内筒14の下端部が下部管寄せ4との隙間を封止され、外筒15の上端部が上部管寄せ3との隙間を封止される。また、外筒15の下端部において、内筒14と外筒15との隙間が封止される。さらに、缶体カバー13の内筒14と、外側水管列8との間の円筒状隙間には、断熱材16が充填される。
【0024】
缶体カバー13の外筒15には、周方向一部において、煙道17が接続される。さらに、ボイラ1には、缶体カバー13を取り囲むように、円筒状のケーシング18が設けられる。このケーシング18を貫通して、煙道17が缶体2の外方へ導出される。
【0025】
上部管寄せ3の下面および下部管寄せ4の上面には、各管寄せ3,4と各水管5,6との接続部を覆うように、耐火材19,19が設けられる。この際、下部管寄せ4側の耐火材19は、下部管寄せ4の中央部をも閉塞するように設けられる。下部管寄せ4側の耐火材19の中央部には、逆円錐台状の凹部20が形成されている。
【0026】
ところで、図示例では、各内側水管5は、内列連通部10と対応した位置に、小径部21を有する。これは、燃焼ガスが内列連通部10を介して内外の水管列7,8間の燃焼ガス流路22へ入る際の圧力損失を減少させるためである。一方、図示例では、各外側水管6は、外列連通部12と対応した位置に小径部を有しないが、各内側水管5と同様に小径部を有してもよい。
【0027】
上部管寄せ3の中央部には、下方へ向けてバーナ23が設けられる。このバーナ23には、液体燃料(たとえばA重油)が供給されると共に、燃焼用空気が供給される。具体的には、缶体2内へは、液体燃料が燃料ポンプ24および燃料弁25を介してバーナ23から噴霧されると共に、燃焼用空気が送風機26からウィンドボックス27を介して吐出される。従って、噴霧される燃料に点火装置(図示省略)で着火すれば、缶体2内において燃料の燃焼が図られる。この際、内側水管列7の内側は、燃焼室28として機能する。なお、燃料および燃焼用空気の流量を変えることで、燃焼量の調整が可能とされる。その際、燃焼用空気の流量は、送風機26のモータ(図示省略)をインバータ制御してもよいし、それに代えてまたはそれに加えて、送風機26からウィンドボックス27への送風路に設けたダンパ(図示省略)の開度を調整してもよい。
【0028】
燃焼室で28の燃料の燃焼による燃焼ガスは、内列連通部10を介して、内側水管列7と外側水管列8との間の燃焼ガス流路22へ導出される。そして、その燃焼ガスは、外列連通部12を介して缶体カバー13へ導出される。その後、缶体カバー13に接続された煙道17を介して、排ガスとして外部へ排出される。この間、燃焼ガスは各水管5,6内の水と熱交換し、各水管5,6内の水は加熱が図られる。これにより、上部管寄せ3から蒸気を取り出すことができ、その蒸気は気水分離器(図示省略)などを介して、蒸気使用設備(図示省略)へ送られる。ところで、煙道17には、エコノマイザを設置してもよい。
【0029】
なお、内側水管列7と外側水管列8との間の燃焼ガス流路22の内、内側縦ヒレ9の下端部から外側縦ヒレ11の上端部までの領域を、上向き流路29ということにする。つまり、上向き流路29とは、燃焼ガス流路22の内、図1において、高さhで示された領域をいう。
【0030】
図2は、本実施例のボイラ1を運転中、万一、空燃比の乱れなどに伴い、炉内に未燃燃料30が溜まった状態を示している。未燃燃料30は、燃焼室28内の底部に溜まるが、量が増すと、炉内圧力により上向き流路29を上方へ進むように溜まっていくことになる。但し、本実施例のボイラ1は、万一このような事態になっても、その未燃燃料30が上向き流路29を超えて缶体2外へ押し出されないように構成される。
【0031】
すなわち、バーナ23からの未燃燃料30が炉内底部に溜まった場合でも、上向き流路29を超えて未燃燃料30を押し出せない炉内圧力で運転する。たとえば、本実施例のボイラ1は、燃料の密度をγ、重力加速度をg、上向き流路29の高さをh、送風機26の性能上の最大吐出圧をP1とするとき、γ×g×h>P1の関係式を満たすよう構成される。あるいは、本実施例のボイラ1は、燃料の密度をγ、重力加速度をg、上向き流路29の高さをh、送風機26の運転中の最大吐出圧をP2とするとき、γ×g×h>P2の関係式を満たすよう構成される。いずれの場合も、前記関係式を満たすように、送風機26を選定したり、もしくは送風機26をインバータ制御する場合の周波数を設定したり、または上向き流路29の高さhを定めたりすればよい。
【0032】
たとえば、燃料としてA重油(密度0.86g/cm)を用い、上向き流路29の高さhを935mmとする場合、0.86×9.8×935=7880Paとなるので、送風機26の吐出圧を7880Pa未満で運転させればよいことになる。
【0033】
このような構成の場合、炉内に未燃燃料が溜まっても、炉内圧力との関係で、高さhの上向き流路29の上端まで燃料を押し上げることができない。これにより、炉外への燃料の流出を防止することができる。また、送風機26による炉内への燃焼用空気の押し込みが阻止されるので、不着火にさせてボイラ1の運転を停止させることで、安全性を高めることができる。
【0034】
図3は、送風機26の性能曲線の一例を示す図であり、横軸は風量、縦軸は静圧を示している。このような性能曲線から送風機26の最大吐出圧P1が分かるので、上述した関係式γ×g×h>P1を満たすように、送風機26を選定するか、上向き流路29の高さhを決めればよい。
【0035】
また、最大吐出圧P1未満で送風機26を運転する場合、運転中の最大吐出圧P2により、上述した関係式γ×g×h>P2を満たすように、送風機26を選定するか、運転中の最大吐出圧P2を決定するか、上向き流路29の高さhを決めればよい。
【0036】
また、送風機26をインバータ制御する場合も同様に、たとえば図3において破線で示す性能曲線で運転する場合、その最大吐出圧P1´を用いて、関係式γ×g×h>P1´を満たすように設計すればよいし、最大吐出圧P1´未満で運転する場合、運転中の最大吐出圧P2´を用いて、関係式γ×g×h>P2´を満たすように設計すればよい。その際、上向き流路29の高さhを先に決めて、送風機26をインバータ制御する場合の周波数(図3における破線)を設定したり、性能曲線中のどの範囲で運転するかを設計したりすればよい。
【0037】
本発明のボイラ1は、前記実施例の構成に限らず、適宜変更可能である。特に、上向き流路29をいずれかの箇所に有し、その上向き流路29の高さと、炉内圧力との関係で、上向き流路29の上端まで送風機26で液体燃料を押し上げられない構成であれば、ボイラ1の構成は適宜に変更可能である。たとえば、外側水管列8を省略して、内側水管列7と缶体カバー13との間に上向き流路29を形成してもよい。その場合、上向き流路29は、内側縦ヒレ9の下端から、内筒14の上端(または缶体カバー13が単なる円筒状の場合、缶体カバー13から煙道17への開口部の下端)までの高さとなる。
【0038】
また、蒸気ボイラや温水ボイラ以外でも、たとえば熱媒ボイラにも適用することができる。この場合、前記実施例において、水管を伝熱管、水管列を伝熱管列と言い換えることができる。
【符号の説明】
【0039】
1 ボイラ
2 缶体
3 上部管寄せ
4 下部管寄せ
5 内側水管(内側伝熱管)
6 外側水管(外側伝熱管)
7 内側水管列(内側伝熱管列)
8 外側水管列(外側伝熱管列)
9 内側縦ヒレ
11 外側縦ヒレ
13 缶体カバー
22 燃焼ガス流路
23 バーナ
26 送風機
29 上向き流路
30 未燃燃料
図1
図2
図3