(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1流体及び第2流体が互いに接しながら流れる主流路であって、前記主流路において前記第1流体及び前記第2流体が流れる方向である主流方向に垂直な方向である主流路深さ方向に並列された第1流路及び第2流路からなり、前記主流路における前記主流方向に垂直な断面において、前記主流路深さ方向に垂直な方向である主流路幅方向の長さが前記主流路深さ方向の長さよりも大きい主流路と、
前記第1流路における前記主流方向上流側の端部に連通され、前記主流方向に対して同方向に前記第1流体を前記第1流路に導入する第1導入路であって、前記第1導入路において前記第1流体が流れる方向である第1導入方向の上流側から下流側に向かって、前記第1導入方向に垂直な断面における、前記主流路幅方向と同方向の長さが次第に大きくなるとともに、前記主流路幅方向に垂直な方向の長さが次第に小さくなる領域を有する、第1導入路と、
前記第2流路における前記主流方向上流側の端部に連通され、前記主流方向に対して同方向又は前記主流路深さの方向側から前記主流方向に対して鋭角に前記第2流体を前記第2流路に導入する第2導入路であって、前記第2導入路において前記第2流体が流れる方向である第2導入方向の上流側から下流側に向かって、前記第2導入方向に垂直な断面における、前記主流路幅方向と同方向の長さが次第に大きくなるとともに、前記主流路幅方向に垂直な方向の長さが次第に小さくなる領域を有する、第2導入路と、
前記主流路における前記主流方向下流側の端部に連通され、前記主流方向に対して同方向に前記第1流体及び前記第2流体を前記主流路から排出する排出路であって、前記排出路において前記第1流体及び前記第2流体が流れる方向である排出方向の上流側から下流側に向かって、前記排出方向に垂直な断面における、前記主流路幅方向と同方向の長さが次第に小さくなるとともに、前記主流路幅方向に垂直な方向の長さが次第に大きくなる領域を有する、排出路と、を有するマイクロ流体装置。
前記第1流路及び前記第2流路のうち、前記親水層が形成された流路における前記主流路幅方向に沿った面と、前記疎水層及び前記疎水層が形成された流路における前記主流路幅方向に沿った面と、の少なくとも一方が光透過性を有し、かつ、前記親水層が二酸化チタンの層である、請求項2に記載のマイクロ流体装置。
前記第1流路及び前記第2流路の少なくとも一方は、前記主流方向に沿って形成されるとともに前記主流路幅方向に並列した複数の溝からなる、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のマイクロ流体装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付することとし、重複する説明は適宜省略する。
【0014】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るマイクロ流体装置における流路全体の概略を示す斜視図である。
図2(A)は、第1実施形態に係るマイクロ流体装置の平面図である。
図2(B)は、
図2(A)における2B−2B端面図である。
図3は、
図2(B)における3−3端面図である。なお、
図2(B)及び
図3には、第1実施形態のマイクロ流体装置に2つの流体を流した状態の一例を併せて示している。
【0015】
図1及び
図2に示すように、第1実施形態に係るマイクロ流体装置100は、主流路10と、主流路10の一端である合流部16に連通された第1導入路40及び第2導入路50と、主流路10の他端である連通部18に連通された排出路60と、を含んで構成されている。
【0016】
本実施形態のマイクロ流体装置100を用いる際には、2つの流体のうち一方の流体である第1流体70を、第1導入路40における合流部16と反対の端部である第1導入口42から第1導入路40に導入する。また、2つの流体のうち他方の流体である第2流体80を、第2導入路50における合流部16と反対の端部である第2導入口52から第2導入路50に導入する。そして、第1流体70が第1導入路40内を第1導入口42から合流部16まで矢印A方向に流れ、第2流体80が第2導入路50内を第2導入口52から合流部16まで矢印B方向に流れることにより、合流部16において第1流体70と第2流体80とが合流する。合流部16において合流した第1流体70及び第2流体80は、主流路10内を合流部16から連通部18まで流れ、連通部18から排出路60における連通部18と反対の端部である排出口62まで矢印D方向に流れ、排出口62からマイクロ流体装置100の外へ排出される。
【0017】
本実施形態においては、例えば、主流路10内において第1流体70及び第2流体80が流れる方向である主流方向と垂直な主流路断面の形状が、合流部16から連通部18まで一定である。そして、主流路断面においては、主流路幅方向(矢印E方向)の流路幅が例えば3cmであり、主流路幅方向に垂直な主流路深さ方向(矢印F方向)の流路深さが例えば200μmである。すなわち主流路10は、流路幅が流路深さよりも大きい幅広マイクロ流路である。
【0018】
そして、合流部16における主流路断面のうち、主流路幅方向に平行な合流線16Cで分断された一方の断面16Aに第1導入路40が連通されており、他方の断面16Bに第2導入路50が連通されている。すなわち、第1導入路40内において第1流体70が流れる方向である第1導入方向(矢印A方向)と垂直な第1導入路断面のうち、合流部16における第1導入路断面が上記断面16Aと同じ形状である。また同様に、第2導入路50内において第2流体80が流れる方向である第2導入方向(矢印B方向)と垂直な第2導入路断面のうち、合流部16における第2導入路断面が上記断面16Bと同じ形状である。
そして、断面16Aの流路幅及び断面16Bの流路幅はいずれも主流路10の流路幅と同じであり、断面16Aの流路深さと断面16Bの流路深さとを合計すると主流路10の流路深さとなる。なお本実施形態では、例えば、断面16Aの流路深さ及び断面16Bの流路深さがいずれも100μmである。
【0019】
また連通部18においては、連通部18における主流路10の主流路断面全体に、排出路60が連通されている。すなわち、排出路60内において第1流体70及び第2流体80が流れる方向である排出方向(矢印D方向)と垂直な排出路断面のうち、連通部18における排出路断面が、連通部18における主流路10の主流路断面と同じ形状である。
以下、主流路10、第1導入路40、第2導入路50、排出路60について、それぞれ説明する。
【0020】
<主流路>
まず、主流路10について説明する。
主流路10内における第1流体70及び第2流体80の流れの状態は、第1流体70及び第2流体80の粘度等の特性や流速等の条件によって変わる。しかし本実施形態のマイクロ流体装置100では、後述するように、第1流体70及び第2流体80が層流で流れやすく、かつ、第1流体70と第2流体80との界面を、主流路10における主流路深さ方向に垂直な方向に形成させやすい。
【0021】
そして本実施形態では、例えば、第1流体70と第2流体80との界面が、主流路10における主流路深さ方向に垂直であり、かつ、合流線16Cを通るような面(以下、「境界面25」と称する場合がある)に形成されることが最も理想的であり、また境界面25に第1流体70と第2流体80との界面を形成させることを目的としている。
以下、第1流体70と第2流体80との界面が、目的とする最も理想的な面(すなわち境界面25)に形成されることを仮定して説明する。
【0022】
主流路10は、合流部16における主流方向に垂直な断面(以下、「第1流路断面」と称する場合がある)として上記断面16Aを持つ第1流路20と、合流部16における主流方向に垂直な断面(以下、「第2流路断面」と称する場合がある)として上記断面16Bを持つ第2流路30とからなり、第1流路20及び第2流路30が主流路深さ方向に並列して構成されている。すなわち、主流路10の上記境界面25において分断された2つの流路のうち、上記断面16Aを持つ流路が第1流路20であり、上記断面16Bを持つ流路が第2流路30である。
【0023】
そして本実施形態では、例えば、第1流路断面の形状が合流部16から連通部18まで一定であり、かつ、第2流路断面の形状が合流部16から連通部18まで一定である。すなわち本実施形態では、例えば、主流路10が主流方向及び主流路幅方向に平行な境界面25で第1流路20及び第2流路30に分断されているため、第1流路20の流路深さ及び第2流路30の流路深さのいずれも合流部16から連通部18にわたって100μmである。
ただし、境界面25は仮想面であり、主流路10の内部においては第1流路20と第2流路30とを隔離する壁は設けられていないため、第1流体70及び第2流体80は接しながら合流部16から連通部18まで流れる。
【0024】
そして本実施形態においては、
図2及び
図3に示すように、例えば、主流路10内を流れる第1流体70及び第2流体80が境界面25上に界面を形成し、層流で流れている。すなわち、例えば、第1流路20内には第1流体70のみが流れ、第2流路30内には第2流体80のみが流れている。
【0025】
第1流路20の第1流路断面は、
図3に示すように、例えば1つの大きな長方形である。そして例えば、第1流路20の内面のうち第2流路30と接している面以外の面には、親水層22が形成されており、親水層22の厚みは例えば0.2μmである。
【0026】
一方第2流路30は、
図2及び
図3に示すように、例えば、主流方向に沿って形成されているとともに主流路幅方向に(例えば一定間隔で)並列した、複数の溝32で構成されている。すなわち第2流路30には、例えば溝32と溝32とを隔離する仕切り板34が、主流路幅方向に(例えば一定間隔で)複数並列して、第2流路30における主流路幅方向に沿った面に設けられ、第2流路30が仕切り板34によって分断されている。なお、
図2(B)は、溝32を通る面における端面図である。
そして本実施形態では、例えば、溝32の内面のうち第1流路20と接している面以外の面と、仕切り板34における主流路幅方向の面36とには、疎水層38が形成されている。
【0027】
主流方向に垂直な溝32の断面である溝断面における主流路深さ方向の流路深さは、前記第2流路断面における主流路深さ方向の流路深さと同じであり、本実施形態では例えば100μmである。そして本実施形態においては、例えばすべての溝32において溝断面の形状が正方形であり、溝断面における主流路幅方向の流路幅が100μmである。また本実施形態においては、例えばすべての仕切り板34において、溝32と溝32との間隔(すなわち仕切り板34の主流路幅方向における幅)が100μmであり、仕切り板34における主流路幅方向の面36が第1流路20に接している。
【0028】
そして本実施形態では、例えば、親水層22として二酸化チタンの層を用い、第1流路20の主流路幅方向に沿った面に形成された親水層22に接する部材である流路蓋24としてガラスの部材を用いている。そして、例えば、流路蓋24が光透過性を有し、マイクロ流体装置100の外部における流路蓋24側から照射した光は親水層22に達する(すなわち、第1流路20の主流路幅方向に沿った面が光透過性を有する)。それにより、光が照射された親水層22中の二酸化チタンが親水性(超親水性)になるとともに、親水層22に接した第1流体70に対して光触媒として作用する。
【0029】
<第1導入路及び第2導入路>
次に、第1導入路40及び第2導入路50について説明する。
図2に示すように、第1導入路40は、主流路10における断面16A(すなわち第1流路20における断面16A)に連通され、第2導入路50は、主流路10における断面16B(すなわち第2流路30における断面16B)に連通されている。
そして第1流体70は、第1導入路40から第1流路20に、主流路方向と同方向で導入され、第2流体80は、第2導入路50から第2流路30に、例えば主流路方向に対して主流路深さ方向に15度の角度を持って導入される。すなわち、例えば合流部16において第1導入路40と第2導入路50とで形成される合流角θの角度が15度である。
【0030】
第1導入路40は、例えば、
図2に示すように、第1導入口42と、第1整流領域44と、第1緩衝領域46と、で構成されている。第1導入路40においては、第1流体70が、第1導入口42を通してマイクロ流体装置100の外部から第1導入路40内に入って第1導入方向(矢印A方向)に流れ、第1整流領域44及び第1緩衝領域46を通って合流部16に到達する。
【0031】
第1導入口42における第1導入路断面の形状は、第1流体70の上流側から下流側にかけて、例えば一定である。
【0032】
また、第1整流領域44における第1導入路断面の形状は、第1流体70の上流側から下流側にかけて、主流路幅方向における流路幅が次第に広くなるとともに、主流路幅方向と垂直な方向(主流路深さ方向)における流路深さが次第に浅くなる。
また第1緩衝領域46における第1導入路断面の形状は、第1流体70の上流側から下流側にかけて、例えば一定であり、前記断面16Aと同じ形状である。
【0033】
すなわち、第1導入路40における第1導入路断面の形状を、第1整流領域44において、第1導入口42における第1導入路断面の形状から前記断面16Aの形状まで徐々に変化させることにより、第1導入路断面の面積の変化を小さくしている。具体的には、例えば、第1整流領域44における第1導入方向の長さにおける第1緩衝領域46側の3分の2以上において、第1導入路断面の面積が一定となっている。
【0034】
第2導入路50についても、第1導入路40と同様に、例えば、第2導入口52と、第2整流領域54と、第2緩衝領域56と、で構成されている。そして第2導入路50においては、第2流体80が、第2導入口52を通してマイクロ流体装置100の外部から第2導入路50内に入って第2導入方向(矢印B方向)に流れ、第2整流領域54及び第2緩衝領域56を通って合流部16に到達する。
【0035】
第2導入口52における第2導入路断面の形状は、第2流体80の上流側から下流側にかけて、例えば一定である。
そして、第2整流領域54における第2導入路断面の形状は、第2流体80の上流側から下流側にかけて、主流路幅方向における流路幅が次第に広くなるとともに、主流路幅方向と垂直な方向における流路深さが次第に浅くなる。
【0036】
また第2緩衝領域56においては、例えば、合流部16から第2流体80の上流側に向かって第2緩衝領域56の一部(合流部16の近傍)に、第2流路30における溝32と同様な溝82が形成された溝領域58を有する。
図5に、第2導入路50と第2流路30とが主流路10に連通した合流部16における、第2流路30の溝32が形成された面及び第2導入路50の溝82が形成された面を拡大した図を示す。
図5に示すように、溝82は、第2導入路50における主流路幅方向に沿った面に第2導入方向に沿って形成されているとともに、主流路幅方向に(例えば一定間隔で)並列している。すなわち第2導入路50の主流路幅方向に沿った面には、例えば溝82と溝82とを隔離する仕切り板84が、主流路幅方向に(例えば一定間隔で)複数並列して設けられている。
【0037】
溝82における主流路幅方向の流路幅は、溝32における主流路幅方向の流路幅と同じであり、溝82と溝82との間隔(すなわち仕切り板84の主流路幅方向における幅)も溝32と溝32との間隔と同じである。
一方、溝82における主流路幅方向と垂直な方向の流路深さは、合流部16においては溝32における主流路深さ方向の流路深さと同じであるが、第2流体80の上流側に向かって徐々に浅くなっていき、溝領域58を過ぎると溝82が存在しなくなる。すなわち、溝領域58では、仕切り板84の高さが合流部16から第2流体80の上流側に向かって徐々に低くなっている。
【0038】
第2緩衝領域56における第2導入路断面の形状は、第2流体80の上流側から溝領域58に達するまでは例えば一定である。そして、溝領域58においては、第2流体80の上流側か下流側にかけて、徐々に仕切り板84の高さが高くなるとともに、主流路深さと垂直な方向における流路深さ(溝82の位置における流路深さ)が高くなって前記断面16Bと同じ形状になる。
【0039】
すなわち、第2導入路50においても、第2導入路断面の形状を、第2整流領域54及び第2緩衝領域56の溝領域58において、第2導入口52における第2導入路断面の形状から前記断面16Bの形状まで徐々に変化させることにより、第2導入路断面の面積の変化を小さくしている。そして例えば、第2整流領域54においても、第2導入方向の長さにおける第2緩衝領域56側の分の2以上において、第2導入路断面の面積が一定となっている。
【0040】
<排出路>
次に、排出路60について説明する。
図2に示すように、排出路60は、主流路10における連通部18に連通され、第1流体70及び第2流体80は、主流路10から排出路60に、主流路方向と同方向で排出される。
排出路60は、例えば、
図1及び
図2に示すように、排出口62と、排出整流領域64と、で構成されている。排出路60においては、第1流体70及び第2流体80が、連通部18から排出方向(矢印D方向)に流れ、排出整流領域64を通って、排出口62からマイクロ流体装置100の外部に排出される。
【0041】
排出口62における排出路断面の形状は、第1導入口42及び第2導入口52と同様に、第1流体70及び第2流体80の上流側から下流側にかけて、例えば一定である。
そして、排出整流領域64における排出路断面の形状は、第1流体70及び第2流体80の上流側から下流側にかけて、主流路幅方向における流路幅が次第に狭くなるとともに、主流路幅方向と垂直な方向(主流路深さ方向)における流路深さが次第に深くなる。
すなわち、排出路60における排出路断面の形状を、排出整流領域64において、連通部18における主流路断面の形状から排出口62における排出路断面の形状まで徐々に変化させることにより、排出路断面の面積の変化が小さくなっている。具体的には、例えば、排出整流領域64における排出方向の長さのうち3分の2以上において、排出路断面の面積が一定となっている。
【0042】
以上説明した本実施形態のマイクロ流体装置100では、主流路幅方向における流路幅が主流路深さ方向における流路深さよりも大きい主流路10を用い、第1流体70を主流方向と同方向で第1導入路40から主流路10に導入し、第2流体80を主流方向に対して主流路深さ方向から鋭角に第2導入路50から主流路10に導入し、かつ、第1導入路40、第2導入路50、及び排出路60が、主流路10に近づくにつれて主流路幅方向における流路幅が広くなるとともに主流路幅方向と垂直な方向における流路深さが浅くなる整流領域(具体的には、それぞれ第1整流領域44、第2整流領域54、及び排出整流領域64)を有する。
【0043】
ここで「鋭角に導入する」とは、90度よりも小さい角度で角度を持って導入することを意味し、具体的には、主流方向のベクトルと、第2導入方向のベクトルにおける主流方向の成分と、が同方向である方向に導入することを意味する。
本実施形態では、第2流体80を、主流方向に対して鋭角に第2導入路50から主流路10に導入する形態に限られず、主流方向と同方向に第2導入路50から主流路10に導入する形態でもよい。
【0044】
本実施形態のマイクロ流体装置100を用いれば、上記構成であることにより、1つのマイクロ流体装置100における時間当たりの処理量が多いことと、主流路10における第1流体70及び第2流体80の界面を主流路10における合流部16から連通部18までにわたって主流路幅方向に満遍なく形成しやすいことと、を両立することができる。
すなわち本実施形態のマイクロ流体装置100では、主流路幅方向における流路幅が主流路深さ方向における流路深さよりも大きくないマイクロ流路を主流路として用いたマイクロ流体装置に比べ、流路幅が広いことにより時間当たりの処理量が多くなる。
【0045】
また本実施形態のマイクロ流体装置100では、第2流体を主流路深さ方向から垂直に第2導入路から主流路に導入する形態や、第1流体及び第2流体の両方を主流方向と異なる方向から(角度をもって)主流路に導入する形態に比べて、合流部16において第2流体80が第1流体70に衝突することによる衝突エネルギーが
小さく抑えられる。そのため、主流路10内における第1流体70及び第2流体80の流れが安定して層流を形成しやすくなり、主流路10における第1流体70と第2流体80との界面を主流路深さ方向に垂直に形成しやすくなる。
【0046】
さらに本実施形態のマイクロ流体装置100では、第1導入路及び第2導入路の少なくとも一方が上記整流領域を有さない場合に比べて、第1導入路断面及び第2導入路断面における面積の変化が小さい。すなわち本実施形態では、第1導入路40及び第2導入路50が上記整流領域を有するため、第1導入路断面及び第2導入路断面の面積をあまり変化させずに、第1導入路断面及び第2導入路断面の形状を、それぞれ第1導入口42及び第2導入口52における形状から、流路幅が大きく流路深さの浅い断面16A及び断面16Bの形状まで、変化させることができる。そのため、主流路10内における第1流体70及び第2流体80の偏流(すなわち、第1流体70及び第2流体80の流速が主流路幅方向にばらつきが出ることであり、例えば、流路幅方向の中心付近における流速が流路幅方向の両端付近における流速よりも速くなること)が抑制される。
【0047】
具体的には、例えば、上流から下流に向かって第1導入路断面又は第2導入路断面を、流路深さが一定のまま流路幅を急激に広くすると、上記断面の面積が急激に広がる箇所が発生する。そのように、上記第1導入路断面又は第2導入路断面の面積が急激に広がる箇所が存在する場合、流路内の圧力が下がり、流体の主流路幅方向における中心部のみが流れやすく流速が速くなってしまう。一方、流体の主流路方向における両端部は、流体が流れる方向と垂直な方向に力を受け、相対的に遅くなってしまう。このように、流速が流路幅方向で異なる現象(すなわち「偏流」)が起こると、流れが不安定化して、主流路幅方向に渡って第1流体70と第2流体80との界面が形成されにくくなる。しかし本実施形態では、上記の場合に比べて上記偏流が抑制されるため、第1導入路40及び第2導入路50においてそれぞれ第1流体70及び第2流体80の流れが整えられ、主流路10における主流方向及び主流路幅方向全体にわたって第1流体70と第2流体80との界面が形成されやすくなる。
【0048】
また本実施形態のマイクロ流体装置100では、排出路が上記整流領域を有さない場合に比べて、排出路断面における面積の変化が小さい。すなわち本実施形態では、排出路60が上記整流領域を有するため、排出路断面の面積をあまり変化させずに、流路幅が大きく流路深さの浅い連通部18における主流路断面の形状から、排出口62における形状まで、排出路断面の形状を変化させることができる。そのため、排出路60内において第1流体70及び第2流体80に排出方向と垂直な方向から圧力がかかることが抑制され、排出路60内においてかかった上記圧力が主流路10に伝播して主流路10内における第1流体70と第2流体80との界面に影響を与えることが抑制される。その結果、本実施形態では主流路10における主流方向及び主流路幅方向全体にわたって第1流体70と第2流体80との界面が形成されやすくなる。
【0049】
また本実施形態のマイクロ流体装置100では、第1流路20の内面に親水層22が形成されており、かつ、第2流路30の内面に疎水層38が形成されている。
そのため本実施形態のマイクロ流体装置100を用いると、親水層22及び疎水層38が形成されていない場合に比べて、特に第1流体70として親水性の流体を用い第2流体80として疎水性の流体を用いた場合において、主流路10における第1流体70及び第2流体80の界面を主流路10における合流部16から連通部18までにわたって主流路幅方向に満遍なく形成しやすい。
【0050】
すなわち、本実施形態のマイクロ流体装置100が上記構成であることにより、親水層22と親水性の流体との親和性が高いため、親水性の流体は第1流路20内に維持されやすい。また疎水層38と疎水性の流体との親和性が高いため、疎水性の流体は第2流路30内に維持されやすい。よって、第1流体70として親水性の流体を用い第2流体として疎水性の流体を用いると、第1流路20と第2流路30との境界面25の位置に、第1流体70と第2流体80との界面が形成されやすい。そのため、第1流体70と第2流体80との界面が回転して主流路深さ方向に沿って形成されることが抑制され、第1流体70と第2流体80との界面を主流路10における合流部16から連通部18までにわたって主流路幅方向に満遍なく形成しやすい。
【0051】
また本実施形態のマイクロ流体装置100では、親水層22として二酸化チタンの層を用い、流路蓋24としてガラスの部材を用いている。すなわち本実施形態では、マイクロ流体装置100の外部における流路蓋24側から光を照射すると、光が流路蓋24を透過して親水層22に達し、親水層22の二酸化チタンが光を吸収できる構造になっている。そして二酸化チタンは、光を吸収することにより、超親水性を示すようになるとともに、光触媒として機能して例えば酸化還元反応を促進するようになる。
そのため本実施形態のマイクロ流体装置100では、親水層22が光を吸収して超親水性になることで、第1流体70と第2流体80との界面が主流路幅方向と平行(すなわち光触媒である二酸化チタンの層の面と平行)に維持されやすくなる。つまり、上記界面が、広い状態で維持されるとともに、光触媒として機能する親水層22と近い距離で対向した状態で維持されやすくなる。
【0052】
よって本実施形態のマイクロ流体装置100を用いれば、従来困難であった2つの流体の界面を利用した二酸化チタンの光触媒反応を、連続的に実施することができる。光を吸収した二酸化チタンは、上記の通り超親水性を示すため、水、アセトニトリル、アルコール等の親水性の液体にはなじむが、ヘキサン、トルエン等の疎水性の液体にはなじみにくい。そのため、疎水性の液体又は疎水性の液体に溶解した化合物を、二酸化チタンに直接接触させて(例えば疎水性の液体中に二酸化チタンの粒子を分散させて)、光触媒反応を実施することは困難である。しかしながら本実施形態のマイクロ流体装置100を用いれば、上記疎水性の液体等を二酸化チタンに直接接触させなくても、間接的に疎水性の液体等を反応(例えば酸化)させることができる。
【0053】
具体的には、例えば、水溶性の液体である第1流体70を光照射された二酸化チタンに直接接触させて活性種(例えばヒドロキシラジカル等)を発生させる。そして、その活性種が第1流体70と疎水性の液体である第2流体80との界面まで移動し、第2流体80に含まれる化合物に対して作用する(例えば酸化させる)。このとき、本実施形態のマイクロ流体装置100では、上記界面が親水層22(すなわち二酸化チタン)と近い距離で対向した状態にあるため、親水層22の表面で発生した活性種が界面までたどり着きやすい。また本実施形態のマイクロ流体装置100では、上記界面が広く維持できるため、界面が狭い場合に比べて、多くの活性種が界面で第2流体80に含まれる化合物に作用することができる。すなわち、本実施形態のマイクロ流体装置100を用いれば、従来困難であった反応(例えば、疎水性の液体そのもの、又は親水性の液体に溶けにくく疎水性の液体に溶けやすい化合物等を対象とする、二酸化チタンの光触媒反応等)を効率よく実施することができる。
【0054】
また本実施形態のマイクロ流体装置100では、第2流路30が、主流方向に沿って形成されているとともに主流路幅方向に並列した複数の溝32で構成されている。
そのため、本実施形態のマイクロ流体装置100では、第2流路が仕切り板によって分断されず全体として1つの流路である場合に比べて、主流路10における第1流体70と第2流体80との界面を合流部16から連通部18までにわたって主流路幅方向に満遍なく形成しやすい。
すなわち、本実施形態のマイクロ流体装置100では、仕切り板34の存在によって第1流体70と第2流体80との界面が分断されるため、前記界面が分断されない場合に比べて1つあたりの前記界面の面積が小さく、表面張力によって前記界面が回転して主流路深さ方向に平行となることが抑制される。そのため、第1流体70と第2流体80との界面を主流路幅方向に平行に維持しやすい。
【0055】
特に、第1流路20の内面に親水層22が形成されるとともに第2流路30の内面に疎水層38が形成されている形態において、第2流路30が複数の溝32で構成されている形態は、さらに望ましく、主流路10における第1流体70と第2流体80との界面を合流部16から連通部18までにわたって主流路幅方向に満遍なく形成しやすい。
すなわち、第2流路30を構成する溝32の内面に疎水層38が形成されていることにより、第2流体80が、溝32内に維持されやすくなることによって第1流路20に導かれることが抑制され、さらに上記界面を主流路幅方向に平行に維持しやすくなる。
【0056】
本実施形態においては、主流路10の流路幅及び流路深さが上記の通りであるが、流路幅が流路深さよりも多いものであればこれに限られない。具体的には、例えば主流路10の流路深さが1mm以下であり主流路10の流路幅が1mmよりも大きい形態が挙げられる。このように、主流路10の流路深さが浅いことにより、マイクロ流路としての利点が得られつつ、主流路10の流路幅が広いことにより、1つのマイクロ流体装置100における単位時間当たりの処理量を多くすることができる。
【0057】
主流路10の流路深さとしては、具体的には、例えば、10μm以上1000μm以下の範囲が挙げられ、25μm以上1000μm以下の範囲が好ましく、50μm以上500μm以下の範囲がより好ましい。
流路深さが上記範囲であると、上記範囲よりも深い場合に比べて上記マイクロ流路としての利点が得られやすくなり、また上記範囲よりも浅い場合に比べて低い圧力で流体を流すことができるため流体の流れが安定になり、第1流体70と第2流体80との界面を主流路幅方向に維持しやすくなると同時に、時間あたりの処理量が多くなるという利点がある。
【0058】
また主流路10の流路幅としては、具体的には、例えば、1cm以上20cm以下の範囲が挙げられる。
流路幅が上記範囲であると、上記範囲よりも狭い場合に比べて単位時間当たりの処理量が多くなり、一方上記範囲よりも広い場合に比べて、流体の偏流による影響が少なく、主流路幅方向に平行な第1流体70と第2流体80との界面が形成されやすくなる。
また主流路10における主流路幅方向の流路幅と主流路深さ方向の流路深さとの比としては、流路幅が流路深さの20倍以上1000倍以下であることが好ましい。上記流路幅と流路高さとの比が上記範囲であることにより、時間当たりの処理量向上と、主流路幅方向に平行な第1流体70と第2流体80との界面の形成容易性と、を両立することができる。
【0059】
また、主流路10の主流方向における流路長さは、第1流体70及び第2流体80の流速や目的の処理にかかる時間等によって好ましい値が決まるものであるが、具体的には、例えば、3cm以上30cm以下の範囲が挙げられる。
【0060】
本実施形態においては、主流路断面、第1流路断面、及び第2流路断面の形状が、合流部16から連通部18まで一定であるが、これに限られない。ただし、第1流体70と第2流体80との界面を主流路幅方向に維持させる観点からは、主流路断面、第1流路断面、及び第2流路断面の面積が合流部16から連通部18まで一定であることが望ましい。また主流路断面の面積が一定でない場合は、第1流路断面の面積と第2流路断面の面積との比が、合流部16から連通部18まで一定であることが望ましい。ここで「面積が一定」とは、面積における最大値が最小値の1倍以上1.05倍以下であることをいう。
【0061】
また本実施形態においては、第1流路20の流路深さと第2流路30の流路深さとが同じであるが、これに限られない。ただし、第1流路20と第2流路30との境界面25の位置を、界面を形成しようとする望ましい位置に設定することが望ましい。第1流体70と第2流体80との界面の位置は、第1流体70及び第2流体80の粘度等の特性や流速等の条件によって変わり、また適用する目的(例えば化学反応に用いる場合は反応系等)によって好ましい前記界面の位置は変わる場合がある。例えば本実施形態のように、親水層22として二酸化チタンの層を用い、界面を利用した二酸化チタンによる光触媒反応に適用する場合は、第1流路20の流路深さが第2流路30の流路深さの0.1倍以上1倍以下であることが好ましい。
【0062】
本実施形態においては、第1流路断面が長方形であるが、これに限られず、例えば、四角形における一部又は全部の角が丸くなった形状、主流路深さに平行な辺や主流路幅に平行な辺が曲線である形状等でもよい。
また本実施形態においては、溝断面が正方形であるが、これに限られず、例えば、長方形、四角形における一部又は全部の角が丸くなった形状、主流路深さに平行な辺や主流路幅に平行な辺が曲線である形状等でもよい。
また本実施形態においては、溝断面における流路幅が、流路深さと同じ100μmであるが、これに限られない。溝断面における流路幅としては、例えば100μm以上500μm以下の範囲が挙げられ、例えば溝断面における流路深さの1倍以上5倍以下の範囲が挙げられる。
また本実施形態においては、仕切り板34の主流路幅方向における幅が100μmであるが、これに限られず、幅が小さければ小さいほど、デッドスペースが縮小され、広い界面が得られやすいため好ましい。具体的には、第2流体80による圧力に対する耐久性、加工性とデッドスペースの縮小との両立といった観点から、例えば20μm以上100μm以下の範囲が挙げられる。また、仕切り板34の幅は、複数の仕切り板34において同じでなくてもよい。
【0063】
また本実施形態においては、第2流路30が複数の溝32で構成されていたが、第1流路20が複数の溝で構成されていてもよく、第1流路20及び第2流路30が複数の溝で構成されていてもよく、第1流路20及び第2流路30のいずれも溝で構成されていなくてもよい。ただし、本実施形態のように、第1流路20及び第2流路30のいずれか一方のみが複数の溝で構成されている方が、他の形態に比べて、仕切り板34における主流路幅方向の面36に接する界面が形成されやすいため、第1流体と第2流体との界面を主流路幅方向と同方向に維持させやすく好ましい。
【0064】
また本実施形態においては、第1流路20の内面に親水層22が形成されているが、第1流路20の内面のうち少なくとも主流路幅方向に平行な面に親水層22が形成されている形態でもよく、親水層22が形成されていない形態でもよい。
そして親水層22を形成する場合、親水層22に用いられる材料としては、二酸化チタンに限られず、例えば、ケイ素ポリマー、その他の親水性有機ポリマー等が挙げられる。
また本実施形態においては、第2流路30の内面(すなわち、溝32の内面のうち第1流路20と接している面以外の面)及び仕切り板34における主流路幅方向の面36に疎水層38が形成されているが、第2流路30の内面のみに疎水層38が形成されていてもよく、疎水層38が形成されていない形態でもよい。
そして疎水層38を形成する場合、疎水層38に用いられる材料としては、例えば、オクタデシル基のような疎水性の官能基が配列された材料、疎水性有機ポリマー等が挙げられる。
【0065】
また本実施形態では、二酸化チタンの層である親水層22に光を到達させるため、流路蓋24の材料として光透過性を有する材料を用いる(すなわち、親水層22が形成された第1流路20における主流路幅方向に沿った面が光透過性を有する)。そのため、疎水層38の材料としては、光透過性を有する材料であっても、光透過性を有さない材料であってもよい。
【0066】
そして、親水層22として二酸化チタンの層を用いる場合であっても、疎水層38が光透過性を有し、かつ、第2流路30の主流路幅方向に沿った面に形成された疎水層38に接する部材である流路蓋39の材料が上記光透過性を有する材料であればよい。疎水層38及び流路蓋39が光透過性を有する形態であれば、第1流体70及び第2流体80として光透過性を有する流体を用いることにより、マイクロ流体装置100の外部における流路蓋39側から照射した光が、二酸化チタンの層である親水層22に到達する。そのため、流路蓋24の材料が、上記光透過性を有する材料であってもよく、上記光透過性を有さない材料であってもよい。
【0067】
上記光透過性を有する材料としては、ガラス(例えば、石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス等)の他に、例えば樹脂等が挙げられる。また上記光透過性を有する材料としては、上記材料の中でも特に、波長が365nmの光を透過する材料が好ましい。
そして、上記光透過性を有する材料であってもよく、上記光透過性を有さない材料であってもよい場合に用いられる材料としては、上記ガラス及び樹脂のほか、金属等の無機材料も挙げられる。
【0068】
また本実施形態においては、親水層22の厚みが上記の通りであるが、これに限られない。例えば本実施形態のように親水層22として二酸化チタンの層を用いた場合、二酸化チタンの光触媒機能の発揮といった観点から、0.1μm以上であることが好ましい。
また、本実施形態のように、親水層22として二酸化チタンの層を用い、かつ流路蓋24として光透過性を有する部材を用いる場合、マイクロ流体装置100の外部における流路蓋39側から照射した光を、親水層22における第1流体70と接する面に到達させることが望ましい。その観点から、親水層22の厚みは、二酸化チタンの層が光透過性を有する程度の厚みであることが望ましく、具体的には1μm以下であることが好ましい。一方、親水層22として二酸化チタンの層を用い、かつ疎水層38及び流路蓋39が光透過性を有する場合は、マイクロ流体装置100の外部における流路蓋39側から光を照射することができるため、親水層22の厚みが1μm以上であってもよい。
また、親水層22として二酸化チタン以外の層を用いる場合、親水層22の親水性を発揮させる観点から、親水層22の厚さが0.1μm以上であることが好ましい。
【0069】
一方、疎水層38の厚みは、特に限定されないが、
疎水層38の
疎水性を発揮させる観点から、0.1μm以上であることが好ましく、具体的には、例えば0.1μm以上1μm以下の範囲が挙げられる。
また、上記のように光透過性を有する疎水層38を用いる場合は、例えば、疎水層38材料としてオクタデシルトリメトキシシラン等を用い、かつ疎水層38の厚みを0.1μm以上1μm以下の範囲とする形態が挙げられる。
【0070】
また本実施形態においては、合流部16における合流角θの角度が15度であるが、これに限られず、例えば0度以上60度以下が挙げられ、上記衝突エネルギーの影響の観点からは0度以上30度以下が好ましく、小さいほどより好ましい。
また本実施形態においては、第2導入路50が直線の流路であったが、これに限られず、第2導入路50が曲線の流路であってもよい。
例えば
図4に示すように、第2導入路50が曲線の流路であり、合流部16における合流角θの角度が0度である形態であってもよい。
【0071】
第1整流領域44の第1導入方向に沿った長さ、及び第2整流領域54の第2導入方向に沿った長さとしては、それぞれ第1流体70及び第2流体80の流速によって好ましい範囲が変わるが、例えば2cm以上6cmの範囲が挙げられる。
また排出整流領域64の排出方向に沿った長さも同様に長いほど好ましいが、例えば2cm以上6cmの範囲が挙げられる。
【0072】
また第1導入路40、第2導入路50、及び排出路60は、それぞれ第1整流領域44、第2整流領域54、及び排出整流領域64を有していればよく、他の領域を有していなくてもよい。
本実施形態では、上記第1導入路40、第2導入路50、及び排出路60において第1流体70及び第2流体80の流れが整えられるため、特に第1導入口42、第2導入口52、及び排出口62は、どのような形状でもよく、また設けられていなくてもよい。
一方、第1緩衝領域46及び第2緩衝領域56についても、特に設けられていなくてもよい。ただし第1緩衝領域46又は第2緩衝領域56が設けられる場合は、第1導入路40又は第2導入路50において整えられた第1流体70又は第2流体80の流れを乱れさせないようにするため、第1導入路断面又は第2導入路断面の断面積が上流側から下流側にかけて一定にすることが望ましい。
さらに第2緩衝領域56には、仕切り板84が設けられていなくてもよい。
【0073】
本実施形態におけるマイクロ流体装置100の製造方法は、特に限定されず、公知の方法によって製造できる。
具体的には、例えば、第1金属板を三次元的に彫って第2導入路50、第2流路30、及び排出路60の一部を形成し、
第1金属板における第2流路30に疎水層38を形成する。次に、
第2金属板の一方の面を三次元的に彫って第1導入路40の一部を形成し、第2金属板を第1金属板に乗せることによって第2導入路50に蓋をする。そして、ガラス板に第1導入路40の一部、第1流路20、及び排出路60の一部を形成し、第1流路20に親水層22を形成する。最後に、
第1金属板及び
第2金属板にガラス板を乗せて第1導入路40、主流路10、及び排出路60に蓋をすることで、マイクロ流体装置100が形成される。
【0074】
本発明のマイクロ流体装置は、上記の通り、2つの流体を、マイクロ流体装置の幅広マイクロ流路に流して用いる。上記第1流体と上記第2流体との組み合わせは特に限定されないが、例えば、液体と液体、気体と液体、又は気体と気体等が挙げられ、同種の流体であっても異なる2種の流体であってもよい。
【0075】
特に、本発明のマイクロ流体装置は、上記の通り、主流路における主流路幅方向に沿った界面を形成させやすいため、第1流体と第2流体との組み合わせとして、相溶性の低い2種の液体や、気体と液体との組み合わせを用いることができ、それらの界面における処理(例えば化学反応や抽出等)に好適に適用できる。相溶性の低い2種の液体としては、例えば水と油のように、親水性の液体と疎水性の液体との組み合わせが挙げられる。
また、上記実施形態のように、第1流路20の内面に親水層22を形成し、第2流路30の内面に疎水層38を形成した場合は、第1流体70と第2流体80との組み合わせとして親水性の液体と疎水性の液体との組み合わせを適用することが望ましい。
一方、第1流体70と第2流体80との組み合わせとして気体と液体との組み合わせを用いる場合は、第1流路及び第2流路のうち、気体を流す流路の内面には、親水層又は疎水層を形成しないほうが好ましい。
【0076】
(試験例)
上記第1実施形態のマイクロ流体装置100を用いて試験を行った。
なお、用いたマイクロ流体装置における第1流路の流路幅と第2流路の流路幅は同じとした。また、第1流路20に親水層22として二酸化チタンの層を形成し、流路蓋24の材料として石英ガラスを用いた。また、第2流路30に溝32(すなわち仕切り板34)を形成するとともに、第2緩衝領域56における溝82(すなわち仕切り板84)も設けた。さらに、親水層22を形成した場合は親水層22の厚みを0.2μmとし、疎水層38を形成した場合は疎水層38の厚みを1μm以下とした。
【0077】
また、親水層22の形成方法は以下の通りである。親水層22の材料として二酸化チタンを用いた。具体的には、チタニウムトリイソプロポキシド(Ti−(−O−iso−C
3H
7)
4)の0.5Mアセチルアセトン溶液を基板(第1流路30を形成した流路蓋24)上にスピンコートし、450℃で2時間処理するというゾルゲル法で、二酸化チタンの膜を形成した。
さらに、疎水層38の形成方法は、以下の通りである。具体的には、トリクロロオクタデシルシランの1%トルエン溶液を、第2流路30を形成した流路蓋39に塗布(例えば部分的に疎水層38を形成する場合)、又は閉じた第2流路30に注入(例えば流路全体にむら無く疎水層38を形成する場合)した後、過剰のオクタデシル基をトルエンにより洗浄、除去して、疎水層38を形成した。
【0078】
<界面可視化試験>
第1流体及び第2流体として下記第1流体及び第2流体を用い、下記流速条件(条件1〜条件8)で、作成した
図1のマイクロ流体装置に流体を流して、第1流体及び第2流体のいずれか一方に着色をするか、又は第1流体及び第2流体の双方に互いに異なった着色をすることにより、第1流体と第2流体との界面を直接目視で観察した。
【0079】
下記条件1から条件4においては、第1流体及び第2流体として、下記第1流体A及び第2流体Aを用いた。
・第1流体A:純水
・第2流体A:トルエン
条件1から条件4は以下の通りである。
・条件1:第1流体Aの流速2.0μm/s、第2流体Aの流速2.0μm/s
・条件2:第1流体Aの流速3.3μm/s、第2流体Aの流速2.0μm/s
・条件3:第1流体Aの流速2.0μm/s、第2流体Aの流速3.3μm/s
・条件4:第1流体Aの流速2.0μm/s、第2流体Aの流速3.3μm/s
【0080】
上記条件1及び条件2においては、第1流体A及び第2流体Aの層流が形成され、第1流体Aと第2流体Aとの界面が主流路幅方向と平行に形成されていることが確認され、偏流は確認されなかった。一方、条件3においては、一部偏流が確認された。また条件4においては、ひどい偏流が確認された。
【0081】
条件5から条件8においては、第1流体及び第2流体として、下記第1流体B及び第2流体Bを用いた。
・第1流体B:純水
・第2流体B:メタノール
条件5から条件8は以下の通りである。
・条件5:第1流体Bの流速0.7μm/s、第2流体Bの流速0.7μm/s
・条件6:第1流体Bの流速2.0μm/s、第2流体Bの流速2.0μm/s
・条件7:第1流体Bの流速3.3μm/s、第2流体Bの流速2.0μm/s
・条件8:第1流体Bの流速4.5μm/s、第2流体Bの流速2.0μm/s
【0082】
上記条件5、条件6、及び条件7においては、第1流体B及び第2流体Bの層流が形成され、第1流体Bと第2流体Bとの界面が主流路幅方向と平行に形成されていることが確認され、偏流は確認されなかった。一方、条件4においては、乱流が生じていることが確認された。
【0083】
以上の結果から、例えば従来の幅広マイクロ流体装置においては主流路幅方向に平行な界面を形成することが不可能な条件においても、本発明のマイクロ流体装置を用いれば、主流路幅方向に平行な界面の形成が可能になることがわかる。特に、上記結果のうち純水とトルエンを用いた条件1〜条件4においては、従来の幅広マイクロ流体装置(特に、第1導入路40、第2導入路50、及び
排出路60が整流領域を有さない幅広マイクロ装置)の主流路内で、主流路幅方向に平行な界面を形成することが不可能であったが、上記試験例で示されたとおり、本発明のマイクロ流体装置では主流路幅方向に平行な界面が形成されることが分かる。
【0084】
<光触媒反応試験>
作成した
図1のマイクロ流体装置100において、主流路10における第1流体及び第2流体の偏流が抑制されていることを確認するために、以下の試験を行った。
第1流体C及び第2流体Cとして、いずれもp−メトキシトルエンの0.1%アセトニトリル溶液を用い、マイクロ流体装置100に流体を流して、光照射(光照射強度500mW/cm
−2、光照射時間140秒)を行った。二酸化チタンの光触媒作用によるp−メトキシトルエンの酸化反応によって生成したアニスアルデヒド(p−メトキシベンズアルデヒド)の生成量から反応収率を求め、上記反応の効率を評価した。
【0085】
具体的には、第1流体C及び第2流体Cの合計の注入量を120μl/minとし、上記二酸化チタンによる光触媒反応を行った。その結果、収率3.0%でアニスアルデヒドが生成した。
比較のために、流路幅500μm、流路深さ25μmのシングルチャネルマイクロリアクターを用いて同様の試験を行ったところ、流体の注入量が0.5μl/minであり、アニスアルデヒドの収率は4.6%であった。
【0086】
以上の結果から、本発明のマイクロ流体装置を用いた試験例では、流路幅方向も流路深さ方向も1mm以下である従来のマイクロ流体装置に比べて、時間当たりにおけるアニスアルデヒドの合成量が157倍にも拡大したことがわかる。さらに、上記結果から、本発明のマイクロ流体装置を用いた試験例では、アニスアルデヒドの収率が、従来のマイクロ流体装置を用いた場合の収率と同等であり、主流路(幅広マイクロ流路)内における偏流が抑制されていることが分かる。